博士学位申請論文審査報告書
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(2) 陸. 超 提出. 博士学位申請論文審査報告書 Estimation and Prediction of Financial Return Volatilities Using Dynamic Volatility Models Ⅰ 本論文の主旨と構成 1. 本論文の主旨 本論文は、株価指数の日次収益率と実現ボラティリティのデータを各種のボラティリテ ィ変動モデルに適用してモデルを推定し、ボラティリティを予測し、結果の評価と比較を 行っている。 ボラティリティ変動モデルは、大きく 2 つに分けられる。一つは、 「自己回帰条件付き不 均一分散(Autoregressive Conditional Heteroscedasticity:ARCH と略される)モデル」 とそれを発展させたモデルであり、もう一つは、「確率的ボラティリティ変動(Stochastic Volatility:SV と略される)モデル」とその発展型のモデルである。 本審査報告書では、前者を「ARCH タイプのモデル」と呼ぶことにし、後者を「SV タイ プのモデル」と呼ぶことにする。本論文は、これら ARCH タイプのモデルと SV タイプの モデルを、包括的に比較している。 ARCH タイプのモデルでは、パラメータは一般には最尤法によって推定される。一方、 SV タイプのモデルでは、最尤法による推定が難しいため、代わりに「マルコフ連鎖モンテ カルロ(Markov-Chain Monte Carlo:MCMC と略される)法」などのシミュレーション による方法でベイズ推定されることが多い。近年は、電子計算機の機能の向上により、計 算にかかる時間はかつてよりも短くてすむようになってきたため、このようなシミュレー ションによる推定法がしばしば用いられているようになっている。 シミュレーションによるサンプリングデータの取り方については、offline と online とい う 2 つの方法がある。各時点でデータを一旦取り切ってしまう手法は offline 法とよばれ、 MCMC 法はこの手法に基づいている。Offline 法に基づく推定法は SV モデルのような状態 空間モデルを推定する際によく用いられるが、観測値が日々更新されている金融市場の分 析の場合、そのたびにデータを取り直さねばならず、計算効率は低い。この点、 「粒子フィ ルター(Particle Filter)法」のような、逐次データを追加していく方法なら、計算効率を 下げずにすむ。粒子フィルター法のように、逐次データを追加していく方法は online 法と 呼ばれる。 しかし、粒子フィルター法は、最初のサンプルを発生させる段階では、データのサンプ ルサイズがまだ小さいために、推定結果はしばしば不安定である。 そ こで 本論 文で は、 MCMC と粒 子フ ィル ター法 とを 組み 合わ せた 「 Semi-Online 2.
(3) Algorithm」という推定手法を新たに提案している。これは、offline 法の MCMC をまず適 用し、推定結果が安定してのち粒子フィルター法を用いることにより、推定の精確さと計 算効率とを両立させることを意図した手法である。本論文の結果より、この Semi-Online Algorithm は、ボラティリティをうまくサンプリングできることと、リスク指標も精確に予 測できていることが示された。 本論文では、SV タイプのモデルの推定・予測において、この Semi-Online Algorithm を 利用し、実際の株価指数のデータに対して実証分析を行った。その結果、Semi-Online Algorithm による予測は、MCMC を用いる場合に比べ、予測のパフォーマンスは遜色がな い一方、シミュレーション時間は大幅に短くて済むことが分かった。 本論文のもう1つの結論は以下の通りである。SV タイプのモデルの仮定は、ARCH タイ プのモデルより合理的だが、実際の推定結果を比較してみると、SV タイプのモデルが、推 定のパフォーマンスにおいてより優れているとは限らない。本論文で使ったデータでは、 ほとんどの場合、ARCH タイプのモデルの一つである「Realized GARCH(本論文では 「RGARCH」と称している)モデル」によって推定された結果の方が優れている。従って、 ARCH タイプのモデルと SV タイプのモデルのどちらのモデルを使うかは、ケースバイケ ースで考えるべき、と結論付けられる。. 2. 本論文の構成 本論文の章立ては、以下のとおりである。. Chapter 1. Introduction 1.1 Background 1.2 Motivation 1.3 Contributions 1.4 Organization Chapter 2. Literature Review 2.1 Introduction 2.2 Dynamic Volatility Models 2.2.1 Development of ARCH-type Models 2.2.1.1 ARCH (q) Model 2.2.1.2 GARCH (p, q) Model 2.2.1.3 EGARCH (p, q) Model 2.2.1.4 GJR (p, q) Model 2.2.2 Development of SV-type Models 2.2.3 Overview of Typical Nonparametric Estimators 3.
(4) 2.2.3.1 Realized Volatility 2.2.3.2 Realized Kernel 2.2.3.3 Scaled Realized Measures 2.3 Literature Reviews on Methodologies 2.3.1 Bayes’ Theorem 2.3.2 The Application of MCMC to State-space Models 2.3.2.1 Gibbs Sampler 2.3.2.2 Metropolis-Hastings Algorithm 2.3.3 The Mechanism of Particle Filter Methods 2.3.3.1 Importance Sampling (IS) 2.3.3.2 Sampling Importance Resampling (SIR) 2.3.3.3 Sequential Importance Sampling (SIS) 2.3.3.4 Drawbacks and Solutions of Applying Particle Filters 2.4 Summary Chapter 3. Specifications and Estimation of GARCH Models 3.1 GARCH Model Specifications 3.2 MLE for GARCH Models 3.2.1 GARCH Models with Gaussian Distribution 3.2.2 GARCH Models with Student’s t Distribution and Skewed Student’s t Distribution 3.3 Empirical Analysis 3.3.1 Data and Descriptive Statistics 3.3.2 Estimation Results of GARCH Models Chapter 4. Specifications and Estimation of SV Models via MCMC 4.1 SV Models 4.2 MCMC Simulation Method for SV Models 4.2.1 Prior and Posterior Densities 4.2.2 MCMC Algorithm 4.3 Estimation Results of SV Models Using MCMC Algorithm 4.4 Summary Chapter 5. Semi-online Simulation Algorithm 5.1 APF Algorithm 5.2 Methodology of Semi-online Algorithm 5.3 Simulation Experiments 5.3.1 Measures for Evaluation 5.3.1.1 Quantile Forecasts 5.3.1.2 Evaluation of Volatilities and Quantile Forecasts 4.
(5) 5.3.1.3 Evaluation Results 5.4 Estimation Results of SV Models using Semi-online Algorithm Chapter 6. Evaluation and Comparison 6.1 Evaluation and Comparison of GARCH Models 6.2 Evaluation and Comparison of SV Models 6.3 Evaluation and Comparison of GARCH and SV Models Chapter 7. Conclusions and Future Work Appendix A. MCMC Algorithm for RSV Model with Long Memory Appendix B. Derivation of the Joint Conditional Posterior Distribution Appendix C. Derivation of the Logarithm of Proposal Density log݃൫ࣁ() ห∙൯ Appendix D. Programming Codes for Estimation and Evaluation References. Ⅱ 本論文の概要 本論文は、第 1 章から第 7 章までの 7 つの章と、A、B、C、D の 4 つの付録から構成さ れている。このうち、第 1 章は序論であり、各節ごとに、本論文の背景、動機、貢献、そ して構成について述べられている。第 7 章は、結論と今後の課題について述べられている。 付録 D は、 本論文における計算のために MATLAB で書かれたプログラムを公開している。 以下では、第 2 章から第 6 章までの各章の概要について述べる。 第 2 章の概要 第 2 章では、本論文に関連する各分野の先行研究のレビューが、まとめて述べられてい る。2.1 節は本章の序論である。 2.2 節では、各種のボラティリティ変動モデルと、ボラティリティのノンパラメトリック な推定量についての先行研究が紹介されている。ボラティリティ変動モデルは、ARCH タ イプのモデルと SV タイプのモデルとに大別される。 2.2.1 では、各種の ARCH タイプのモデルについての先行研究が紹介されている。ここで 紹介されている各種の ARCH タイプのモデルとは、具体的には Engle(1982)による ARCH モデル、Bollerslev(1986)によって提案された、ARCH モデルを発展させた「一般化 ARCH (Generalized ARCH:GARCH と略される)モデル」 、GARCH モデルの派生モデルの一 つである Exponential GARCH(EGARCH と略される)モデル、同じく GARCH モデルの 派生モデルの一つである GJR モデルである。GJR モデルは、その提案論文 Glosten et al. (1993)の著者である Glosten、Jagannathan、および Runkle の頭文字「G」、 「J」、 「R」 をとって、このように呼ばれている。 5.
(6) 2.2.2 では、SV タイプのモデルについての先行研究が紹介される(ただし、具体的なモ デルの紹介は 59 ページ 4.1 節)。 2.2.3 では、ボラティリティのノンパラメトリックな推定量が 3 つ紹介されている。その 3 つとは、「実現ボラティリティ(Realized Volatility:RV と略される)」 、「実現カーネル (Realized Kernel: 「RK」と略される)」、および「Scaled Realized Measures(SRM と略 される)」である。 2.3 節 の 題 目 は 「 Literature Reviews on Methodologies 」 で あ る が 、 こ こ で の 「Methodologies」はこの場合、SV モデルの推定によく使われる、ベイズ統計学に基づく シミュレーションによる推定手法等を指している。 2.3.1 は、上記の手法の解説の準備として、「ベイズの定理」が解説されている。 SV タイプのモデルは「状態空間モデル」と呼ばれるモデルに属するが、2.3.2 では、状 態空間モデルを MCMC 法で推定する方法についての先行研究を紹介する。代表的な MCMC には、Gibbs Sampler とその一般化である Metropolis-Hastings (「M-H」と略さ れる)アルゴリズムがあるが、2.3.2.1 では Gibbs Sampler が、2.3.2.2 では M-H アルゴリ ズムが紹介される。 2.3.3 では、粒子フィルター法が紹介されている。粒子フィルター法は、MCMC に代替 できる推定法であるが、粒子フィルターにもいくつかの手法があり、2.3.3.1 では「重点サ ンプリング(Importance Sampling:IS と略す)法」が、2.3.3.2 では「サンプリング/重点 リサンプリング(Sampling Importance Resampling:SIR と略す)法」が、2.3.3.3 では 「Sequential Importance Sampling(SIS と略す)法」が紹介されている。2.3.3.4 では、 粒子フィルター法の短所とその解決策について紹介されており、さらに「SIS with Resampling(SISR と略される)アルゴリズム」が紹介されている。オリジナルな粒子フ ィルターの欠点を補ったとされる「Auxiliary Particle Filter(APF と略される)アルゴリ ズム」も紹介されている(ただし概略のみで、具体的な紹介は 81 ページからの 5.1 節に譲 る)。 第 3 章の概要 第 3 章は、ARCH タイプのモデルの推定法について解説し、実際のデータを適用した実 証分析例を示している。 3.1 節では、3 種類の ARCH タイプのモデルを紹介している。それらは 2.2.1 でも紹介さ れた、GARCH(1,1)モデル、EGARCH(1,1)モデル、および本節にて初出の RGARCH (1,1)モデルである。RGARCH モデルとは、Hansen et al.(2011)にて提案されたモデ ルで、一般には「Realized GARCH モデル」の名で知られている。 ARCH タイプのモデルは最尤推定(Maximum Likelihood Estimation: 「MLE」と略す) 法で推定されるが、MLE を行う際には尤度関数が必要になる。3.2 節では、GARCH(1,1) 、 EGARCH(1,1)、RGARCH(1,1)の各モデルについて、尤度関数、およびその対数をと 6.
(7) った対数尤度関数を紹介している。尤度関数を定式化するためには、モデルの誤差項の分 布がある特定の分布に従うと仮定しなくてはならない。本論文ではその分布に、標準正規 分布、t 分布、非対称(Skewed)t 分布の 3 つの分布を仮定する。非対称t分布はいくつ か提案されているが、本論文では、Fernandez and Steel (1998)で提案されたものを用いて いる。3.2.1 では、標準正規分布を仮定した場合の対数尤度関数を紹介している。3.2.2 では、 t 分布、非対称(Skewed)t 分布を仮定した場合の対数尤度関数を紹介している。 3.3 節では、3.1 節、3.2 節までに紹介された ARCH タイプのモデルを、EURO STOXX 50 index( 「STOXX50E」と略される) 、Nasdaq 100 index(「NDX」と略される)、Nikkei225 (「N225」と略される)の 3 つの株式指数に適用し、その推定結果を示している。これら のデータは、Oxford-Man Institute’s Realized Library の WEB ページから入手できる。 3.3.1 は、用いるデータの記述統計量等を示している。3.3.2 では、3 つの株式指数ごとに、 GARCH(1,1)、EGARCH(1,1)、RGARCH(1,1)の各モデルについて、モデルの誤差項 の分布に標準正規分布、t 分布、非対称(Skewed)t 分布を仮定した場合について、推定 結果を報告している。 第 4 章の概要 第 4 章では、SV タイプのモデルと、その MCMC による推定法が紹介される。 4.1 節では、この章で推定される SV タイプのモデルが具体的に紹介される。それらは、 SV モデルと、Takahashi et al.(2009)により提案された「Realized SV(RSV と略され る)モデル」である。 SV タイプのモデルは、 MCMC によって推定されるのが普通であるが、4.2 節では、MCMC による RSV モデル推定の手順が、具体的に示される。MCMC はベイズ統計学に基づく手 法なので、推定されるモデルのパラメータにはあらかじめ事前分布が仮定されるが、それ らは 4.2.1 で示されている。さらに導出された事後分布の式も示されている。事後分布の導 出は、本論文の「付録 B」にて行われている。4.2.2 では、RSV モデルの推定を行う MCMC のアルゴリズムが、順を追って解説されている。 4.3 節では、SV モデルと RSV モデルの両方に、STOXX50E、NDX、N225 の 3 つの株 式指数を適用し推定した結果を示している。 4.4 節は要約であるが、本章の推定結果に加え、第 3 章での推定結果についても言及され ている。また、本論文では「RSV with Long Memory(RSV-LM と略される)モデル」も 推定され、 「付録 A」にてその結果が示されているが、本論文では、このモデルは実用的で ないと判断されている。 第 5 章の概要 第 5 章では、本論文において「Semi-Online (Simulation) Algorithm」と名付けられた、 SV モデル推定のためのオリジナルのアルゴリズムが紹介される。この手法は、簡単に言う 7.
(8) と、MCMC 法と粒子フィルター法とを合体させた推定法であり、本論文の結果によれば、 この手法を用いれば、MCMC により安定したパラメータのサンプルを得られる一方で、粒 子フィルター法によりシミュレーションにかかる時間を軽減でき、モデル推定において推 定精度と計算効率を両立させることができる。 5.1 節では、2.3.3 でもその概略について軽く触れられていた、粒子フィルター法が再び 取り上げられる。粒子フィルター法とは、潜在的な状態変数を推定するためのシミュレー ションによる非線形ベイズ推定法に属する手法であり、本論文では、観測データが期を追 うごとに追加されていく場合には、伝統的な MCMC よりも優れているとしている。本節で はまず、粒子フィルター法の背景にある基本概念が紹介される。そして、粒子フィルター 法の手続きが紹介されるなかで、関連した数式中に、「補助変数(Auxiliary Variable)」な る変数が導入される。このような補助変数を含んだ粒子フィルター法は、 「補助粒子フィル ター(Auxiliary Particle Filter:APF と略される)法」と呼ばれる。 5.2 節では、Semi-Online Algorithm の具体的手順が解説されており、それは 86 ページ の表「Algorithm 5.1」にまとめられている。ただし、そこで推定対象としているモデルは、 RSV モデルである。 5.3 節では、誤差項に標準正規分布を仮定して SV モデルを推定する場合の Semi-Online Algorithm シミュレーション推定の頑健性について調べている。この分析には、大きさ 2000 の仮想サンプルが、SV モデルの各パラメータに適当な値を与えて発生させられ、用いられ ている。 5.3.1 は、推定のパフォーマンス評価のための尺度が紹介され、その評価結果が与えられ ている。5.3.1.1 では、2 つの評価尺度、すなわち「バリュー・アット・リスク(Value at Risk: VaR と略される)」と「期待ショートフォール(Expected Shortfall:ES と略される) 」が 紹介される。本論文では、ボラティリティ予測精度の評価基準として、 「平均平方誤差(Mean Squared Error:MSE と略される)」と、 「疑似尤度(Quasi-Likelihood:QLIKE と略され る)」が用いられるが、5.3.1.2 では、それらが紹介される。さらに、VaR の事後的な達成指 標として Kupiec(1995)による「尤度比(Likelihood Ratio:LR と略される)統計量」が 紹介される。VaR の予測値のうちの収益率を上回っているものの数を、作成された VaR の 予測値の総数で割ったものを Empirical Failure Rate(EFR と略される)と呼ぶが、LR 統 計量は、「真の EFR=ある確率α」という帰無仮説を検定する検定統計量である。ES の事 後的な達成指標としては、 「Embrechts et al.(2005)による測度」 (これを本論文では「D(α)」 と記している)が紹介されている。ES の推定がうまくいっているほど、D(α)の値は小さ くなる。5.3.1.3 では、上述の仮想サンプルを用い、5.3.1.2 で紹介された評価方法に基づい た評価結果が与えられている。 5.4 節では、SV モデルと RSV モデルの両方に STOXX50E、NDX、N225 の 3 つの株式 指数を適用し、Semi-Online Algorithm を用いて推定した結果が示されている。. 8.
(9) 第 6 章の概要 第 6 章では、これまで議論されてきた各モデルを、STOXX50E、NDX、N225 の 3 つの 株式指数を用いて推定した結果から、評価・比較検討している。 分析にあたっては、GARCH(1,1)、EGARCH(1,1)、RGARCH(1,1)、SV モデル、RSV モ デルのそれぞれについて、大きさ 3001-k(本論文では k=1、5、10、15、20 とおく)のサ ンプルを適用して推定し、推定されたモデルから、t=3001,…,4000 の期間について、k 日 先の VaR 予測値を、前章の Algorithm 5.2 に沿って計算する。同様にして、1 日先の ES 予測値も計算する。 6.1 節では、GARCH(1,1)、EGARCH(1,1)、RGARCH(1,1)の評価と、それらの優劣の比 較が行われている。表 6.1-6.3 では、MSE を評価基準としている。表 6.4-6.6 では、QLIKE を評価基準としている。各モデルとも、誤差項が標準正規分布、通常のt分布、非対称 t 分布の場合について、1 期先から 20 期先までの予測値が与えられている。MSE や QLIKE によりボラティリティの予測の精度を調べるには、ボラティリティの真の値が必要になる が、真の値は未知であるので、その代理となる「代理ボラティリティ」が必要となる。本 論文では代理ボラティリティとして、Hansen and Lunde(2005)で提案された、 「Realized Variance (10-min)」と「Realized Kernel Variance (Non-Flat Parzen)」が用いられる。ど ちらも Oxford-Man Institute’s Realized Library から入手でき、本論文では前者を Vproxy1、 後者を Vproxy2 と名付けている。表 6.7-6.9 では、各種 ARCH タイプのモデルについて、EFR の値が与えられ、「真の EFR=α」という帰無仮説を検定する LR 検定を行った結果、有意 水準 5%で帰無仮説が棄却「されない」検定結果が出た場合について、EFR の各数値の右 肩に「**」が付けられている。表 6.10-6.12 では、各種 GARCH タイプモデルについて、 D(α)の値が与えられている。 6.2 節では、SV モデルと RSV モデルの評価と、それらの優劣の比較が行われている。表 6.13-6.14 は、SV モデルと RSV モデルのそれぞれについて、MSE と QLIKE を評価基準 として計算した予測精度が、MCMC と Semi-Online の推定手法のそれぞれについて、列挙 されている。表 6-15-6.16 は、SV モデルと RSV モデルのそれぞれについて、EFR の値が 与えられ、 「真の EFR=α」という帰無仮説を検定する LR 検定を行った結果、有意水準 5% で帰無仮説が棄却「されない」検定結果が出た場合について、EFR の各数値の右肩に「**」 が付けられている。表 6.17-1-6.18 は、SV モデルと RSV モデルについて、D(α)の値が与 えられている。表 6.19 では、SV モデルと RSV モデルの推定にかかった計算時間が、MCMC による推定と Semi-online による推定の双方において、報告されている。 6.3 節では、ARCH タイプのモデルのうちの RGARCH モデルと、SV タイプのモデルの うちの RSV モデルの、評価とそれらの優劣の比較が行われている。表 6.20 では、MSE と QLIKE を評価基準として計算した予測精度が、RGARCH モデルと RSV モデルのそれぞれ について比較されている。表 6.21 では EFR の値が与えられ、 「真の EFR=α」という帰無 仮説を検定する LR 検定を行った結果、有意水準 5%で帰無仮説が棄却「されない」検定結 9.
(10) 果が出た場合について、EFR の各数値の右肩に「**」が付けられている。表 6.22 では、 RGARCH モデルと RSV モデルについて、D(α)の値が与えられている。. III. 審査要旨. 本論文の審査結果は、大要以下のとおりである。 1.. 本論文の長所. 本論文には、以下のような長所を指摘できる。 (1)本論文では、各種モデルについてのサーベイが十分になされており、本論文独自の分析も、 オリジナルな手法も含め、きちんと行われている。このことから、著者が、統計・計量経済 分析の専門家として十分な専門性を有し、特にプログラミングについては際立った能力を備 えていることを見て取ることができる。 (2)本論文においては、新しい計算アルゴリズムが考案され、その有効性がデータを用いて実 証されている。考案された新アルゴリズムは、この分野の今後の研究のための有効なツール になることが期待される。 (3)この分野において、ARCH タイプの比較的新しいモデルである RGARCH モデルと、SV タイプの比較的新しいモデルである RSV モデルとの比較検討は、これまでほとんど行われ ていない。本論文の研究は、そのような新機軸の比較検討を、現実のデータを用いた推定を 通じて行ったという点で意義がある。 2.. 本論文の短所. 本論文には、以下のような短所も指摘できる。 (1)本論文の内容について、一部審査委員より、現実の経済現象との関わりについての言及も あった方が良いのではないか、という意見があった。 (2)本論文では、その学術的な貢献である、提案された新アルゴリズムがもたらすメリットに ついてのアピ-ルが弱い。 (3)グラフによる比較だけではなく統計的検定を行ったほうがよい箇所があるなど、細かい点 では改善の余地が見られる。 3.結論 以上で言及したように、本論文では短所も見られるが、それらは本論文の長所に比べれば軽微 なものであり、審査委員会としては、本論文は博士学位申請論文として十分にその要件を満たす と認めるものである。 論文提出者である陸超氏は、2014 年に本学商学研究科修士課程を修了し、同時に本研究科博. 10.
(11) 士課程に入学した。修士課程修了時点では、氏は優秀な成績を評価され、修了生総代に選ばれた。 博士課程入学後も氏は、ファイナンス計量経済の研究に取り組む一方、2017 年からは本学商学 部助手に任用され、その職務に勤しんでいる。陸超氏のこれまでの、本学助手としての業務もこ なしながらの、研究に真摯に取り組む姿勢を鑑みるに、氏は今後、研究者としてこの分野の発展 に大いに貢献できると期待できる。 以上の審査結果にもとづき、本論文の提出者 陸超氏には「博士(商学)早稲田大学」の学位 を受ける十分な資格があると認められる。. (以上) 2019 年 6 月 7 日. 審査員 (主査). 早稲田大学教授. 博士(経済学)京都大学. 坂野. 慎哉. 早稲田大学教授. 博士(経済学). 片岡. 孝夫. 谷川. 寧彦. 高橋. 慎. ロチェスター大学 早稲田大学教授 法政大学准教授. 博士(ファイナンス) ノースウェスタン大学. 11.
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