博 士 ( 地球 環 境 科学) 吉宗 美紀
学 位 論 文 題 名
分子形状選択性と水中酸機能を有する ポーラスヘテロポリ触媒の設計
学位論文内容の要旨
グリー ンケミストリーは持続可能な未来社会にふさわしい化学 技術体系を目指しており,
ま ずは 化学 合成 プ ロセ スに おけ る環 境負 荷の 高い プロセスの改 善が急がれている.固体触 媒 プロ セス は副 産 物や 廃棄 物の 産出 を極 力抑 制で きることから 環境にやさしいプロセスと い うこ とが でき , 固体 触媒 の選 択性 とい った 機能 の向上やプロ セスの高効率化が望まれて い る. ヘテ ロポ リ 化合 物は ,強 酸性 およ び酸 化カ を有する高機 能な触媒材料である.均一 系に限ら ず,不均一系においても固体触媒として高活性を示すこ とが明らかになっている.
本 研究 では ,ヘ テ ロポ リ化 合物 を素 材と して その 構造を精密設 計することにより,以下の グリーン プロセスの実現を目的とした,
まず ,ポ ーラ ス 材料 によ る形 状選 択性 が重 要な 触媒機能とし て注目されるが,従来のゼ オ ライ トは 酸強 度 が十 分で なく ,ま た細 孔サ イズ の制御が困難 であるなどの問題がある.
そ こで ,ゼ オラ イ ト類 似の 「均 一細 孔に よる 反応 制御」とヘテ ロポリ化合物独自の「強酸 性 」と いう 両者 の 機能 を兼 備し たマ イク ロポ ーラ スヘテロポリ 化合物を合成し,さらにそ の細孔サ イズを目的とする大きさに制御することを目的とした.
細孔 制御 の方 法 とし ては,12 ‑タ ングストリン酸の対カチオンの影響に着目した.12‑タ ン グ ス ト リ ン 酸 に 対 し ,Cs,Rbお よ びKカ チ オ ンを 用い て2.1酸性 塩M2.iHo.9PWi2040 (M2.1;M=Cs,Rb,K)を調 製し ,そ の細 孔構 造に ついての解析 を行った.これらの固体は す べ て マ イ ク ロ ポ ー ラス であ り,Cs2.1とRb2.1は全 表面 積に 対 する 外表 面積 の割 合が 非 常に少な い(3%)という形状選択反 応に有利な構造を持っことが分かった,また,マイクロ 孔 領域 の細 孔径 分 布をSaito‑Foley法お よび 分 子吸 着法 で解 析し た結 果, 対カ チオンをCs
→ Rb→Kと 変 化 さ せ る と そ の 細 孔 径 を0.43 nmか ら0.67 nmま で 制 御 で き る こ と を 明 ら か に し た , こ れ は へテ ロポ リ化 合物 のマ イク ロ孔 サイ ズの 微 細制 御が 対カ チオ ンの 変 換 に よ り 可 能 で あ る こ と を 示 し た 初 め て の 例 で ある .ま た,Rb2.1のキ シレ ン異 性体 の 吸 着 に お け るp. 選 択性 が, 工業 触 媒で あるH‑ZSM‑5より 高い こ とは 注目 に値 する .M2.1 の 細孔 形成 モデ ル は, 結晶 子間 の接 触面 にで きる 隙間であると 推測され,格子定数の大き さが対カ チオンによってあまり変化しないことが,細孔サイズに 反映されたと考えられる.
次 に , マ イ ク ロ ポ ーラ スヘ テロ ポリ 触媒 の機 能を 活か した , さま ざま な分 子に 対応 す る 形状 選択 反応 へ の応 用を 目的 とし て,Ptを 添加 した二元機能 触媒Pt‑M2.iHo.9PWi2040 (Pt‑M2.1;M=Cs and Rb,0.5wt.%Pt)を合成した.これらの細 孔径分布は均一であり,そ のマイク ロ孔サイズがO.5wt.%Pt‑Cs2.1は0.43‑0.50 nm,0.5wt.%Pt‑Rb2.1は0.59‑0.64 nmである ことが分かった,口・ブタン(0.43 nm)とイソブタン(0.50 nm)の完全酸化反応にお いて0.5wt.%Pt‑Cs2.1はイソブタンには不活性でロ゜ブタンのみ に活性を示し,芳香族化合 物の水素 化反応では0.5wt.%Pt‑Rb2.1がm‑キシレン(0.64 nm)や1,3,5.トリメチルベンゼ
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ン(0.75 nm)か ら ベ ン ゼ ン(0.59 nm)の み を 識 別 し て 水 素 化 し た . 非 多 孔 性 の 0.5wt.%Pt/Si02ではこのような選択性はなく,0.5wt.%Pt‑M2.1の細孔サイズによる反応 物形状選択性であることを示している,
さらに,Pt添加マイクロポーラスヘテロポリ触媒のPtと酸による二元機能を皿・ブタン およぴ口・ベンタンの骨格異性化反応で検証した.触媒には0.60 nmの均一なマイクロ孔を 有す るl.Owt.%Pt‑Rb2.1を用 いた,ロ・ ブタン異 性化では ,l.Owt.%Pt/H‑ZSM‑5や 0.5wt.%Pt‑Cs2.1のイソブタン選択性が低かったが,l.Owt.%Pt‑Rb2.1はどちらの反応で も高選択的にイソアルカンを与えることを見出した,その高選択性の要因は,生成物より 大きい細孔サイズを有していることと,選択性の高い反応機構(単分子機構)で反応を促 進できるだけの酸強度を有していることであると推測され,均一なマイクロ孔と強酸性を 兼備するl.Owt.%Pt‑Rb2.1の高い触媒機能を明らかにした.
一方,現在の化学工業で依然として用いられている硫酸やフッ酸などの液体酸プロセス は,強酸性による反応容器の腐食や取り扱いの不便さ,反応後の生成物と触媒の分離・回 収が困難であり ,大量の廃触媒と廃水を産出するため,環境問題として大きな問題を抱え ている.そのため,安全で廃触媒を出さず繰り返し仕様が可能である固体酸プロセスへの 転換が期待されており,さらに無害で安価な水を媒体とする反応は,今後の化学工業プロ セスの根幹となる.これまでに水中で機能する固体酸触媒として12 ‑タングストリン酸 Cs2.5酸性塩(Cs2.sHo.sPWi2040; Cs2.5)が見出されている,しかし,この触媒は反応後 に少量のポリアニオンが水へ溶出するため繰り返し反応するうちに活性が下がり,また水 中に縣濁状態で分散しているため固体の回収が難しいという問題があった.本研究では,
Cs2.5の水中酸触媒としての機能向上・再利用の実現を目的として,Cs2.5と有機ポリマ ーの複合体を合成し,その構造および触媒機能を解析した,
種カのポリマーを検討したところ,アミン系ポリマーが水中へのポリアニオンの溶出を 抑制し,この複合体はろ過により収率良く固体が回収できることを明らかにした,さらに,
アミン修飾シリカとCs2.5の複合体も水に不溶であり,水中での酢酸エチル加水分解反応
でCs2.5に匹敵する高い活性を示すことを見出した,この触媒は繰り返し反応においても
触媒の溶出はなく,高活性を維持することも分かった.これらの複合体においてCs2.5の 多孔性や構造は維持されており,アミン修飾シリカがCs2.5の二次粒子を接合する役割を 持 ち , 細 孔 表 面 の 疎 水 性 を 増 大 さ せ て い る と い う モ デ ル が 推 測 さ れ る . 以上の結果は,ポーラスヘテロポリ化合物の触媒機能について重要な知見を与えるもの であり,本研究で設計した触媒を用いて幅広い形状選択反応や分離膜,水中酸触媒反応な どのグリーンプロセスヘの応用が期待される.
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 奥 原 敏 夫 副 査 教 授 田 中 俊 逸
副 査 教 授 増 田 隆 夫 ( 北大 大学 院工学 研究 科)
副 査 助 教 授 豊 田 和 弘
学 位 論 文 題 名