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独 立 行 政 法 人 に お け る 労 使 関 係 の 法 的 枠 組 み

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(1)論. 説. 独立行政法人における労使関係の法的枠組み. 清. 水. 四国の統制システムと労使関係. 三. 集団的労使関係. 一 独立行政法人の概要. おわりに. はじめに. 二 個別的労使関係. はじめに. 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶. 一四五. あり︑現在までのところ︑平成一三年度から一六年度までの問に︑九〇近くの機関事務に従事していた職員が独立. 題が少なからず生じている︒とくに︑今次行政改革の﹁目玉﹂の一つは︑いうまでもなく︑独立行政法人の設置で. 昨今の行政改革は︑公務員労使関係の法的枠組みに影響を及ぼしつつあり︑これにともない法的に検討すべき課. 敏.

(2) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一四六. 行政法人職員に移されようとしている︒これにともない︑さまざまな法令の改正がなされ︑また現在も進行中であ. る︒このような法令改正の動向のなかで︑労働法の観点から注目すべき間題は︑特定独立行政法人の労使関係につ. いて国公法の適用を外し︑﹁国営企業労働関係法﹂を適用するとの方針が決定されたことである︒このため︑同法. は︑平成一一年の法改正により︑その名称が﹁国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律﹂︵以下. ﹁国労法﹂という︶に改められるとともに︑特定独立行政法人の労働協約及び仲裁裁定の実施につき従来とは異った. 取扱いがなされることとなった︒また︑独立行政法人設置の趣旨を踏まえて︑組織及び会計処理等において国営企. 業とは異なる新しいシステムが検討されつつある︒その結果︑独立行政法人における労使関係の法的枠組みは︑従. 義. 一. 独立行政法人の概要. 来の国営企業のそれとは一定の差違が生ずることとなる︒以下においては︑改正国労法を中心に︑特定独立行政法 ︵1︶ 人における労使関係の法的枠組みを概観し︑その問題点を検討することとしたい︒. 1 定. 平成一〇年六月二日に公布された中央省庁等改革基本法︵以下︑﹁基本法﹂という︶により︑行政の効率化︑スリ. ム化等を目的にして大幅な省庁再編が実施され︑国家公務員の定数を大幅に削減するとともに︑独立行政法人とい ︵2︶ う新たな行政組織が誕生することとなった︒基本法にもとづいて制定された独立行政法人通則法︵以下︑﹁通則法﹂. という︶によれば︑独立行政法人は︑﹁国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されること.

(3) が必要な事務及び事業であって︑国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが︑民間の主体に委ねた場合に. は︑必ずしも実施されないおそれがあるか︑又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものについて︑こ. れを効率的かつ効果的に行わせることを目的にして︑−ーー設立される法人﹂︵二条一項︶と定義されている︒さら. に通則法は︑独立行政法人を特定独立行政法人と非特定独立行政法人に区分している︒すなわち︑特定独立行政法. 人とは︑﹁その業務の停廃が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるもの﹂等を. 指し︵二条二項︶︑その職員には﹁国家公務員の身分を付与する﹂︵五一条︶と定められた︒また︑この職員は︑﹁行. 政機関の職員の定員に関する法律﹂︵以下﹁定員法﹂という︶による定員規制の対象外とされる︵基本法四〇条四号及. び中央省庁再編推進本部﹁中央省庁等改革の推進に関する方針﹂︿以下﹁方針﹂というv︶︒非特定独立行政法人は︑独立. 行政法人のうち特定独立行政法人以外のものをいうが︑ここにおける労働関係は︑労働契約関係として捉えられ︑. 労働組合法等︑労働三法が全面的に適用されることになる︒もっとも︑現在のところ︑圧倒的多数の独立行政法人. 織. が特定独立行政法人となる予定であり︑非特定独立行政法人はわずか四組織が予定されているに過ぎない︒. 2 組. 従来の行政組織とは切り放して独立行政法人を設ける意義は︑そこで形成される労使関係とも無関係ではない︒. この意義については︑一定の業務を﹁効率的かつ効果的に﹂実施するという目的を達成するために︑独立行政法人. を設置し︑かつこれに自主的・弾力的運営を認めようとするものである︒通則法は︑﹁独立行政法人の業務運営に. 一四七. おける自主性は︑十分配慮されなければならない﹂と定めている︵三条三項︶が︑これこそ︑独立行政法人運営の 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(4) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一四八. 最大の特色となる︒すなわち︑独立行政法人への﹁事前関与・統制を極力排除し︑事後チェックヘの重点の移行を. 図るため︑主務大臣の監督︑関与その他の国の関与を必要最小限のものとする﹂︵﹁方針﹂皿の一︶ことが運営の根. 本方針ということになる︒したがって︑行政組織でありつつも︑国の関与を可能な限り抑制する点にこそ︑独立行 政法人設置の一つの意味があるということになろう︒. これを受けて法人の内部組織については︑通則法及び個別法において役員についての規定を設けるのみとし︑そ. れ以外の内部組織は︑その長が裁量により決定︑変更又は改廃できるとされている︵﹁方針﹂皿の四︶︒すなわち︑ ︵3︶ 独立行政法人の役員については︑独立行政法人を代表し︑﹁その業務を総理する﹂法人の長一名及び監事のほか︑. 個別法によってこれ以外の役員を置くことができるとされている︵通則法一八条及び一九条︶︒そして各独立行政法. 人ごとの個別法によって︑具体的に役員の数が決定されている︒なお︑法人の長は︑主務大臣によって任命され. 源. ︵二〇条︶︑独立行政法人職員の任命権者は︑法人の長とされている︵二六条︶︒. 3 財. 独立行政法人は︑独立採算性を前提とせず︑国はその財源を確保するために予算措置を講ずることとされ︑主務. 大臣が後述する中期計画にしたがって予算要求をすることとされている︒各年度の予算措置については︑主務大臣. が独立行政法人の事業の運営のため︑運営費交付金と施設費等を確実に手当することとされている︒職員の給与等. の人件費は︑運営費交付金から支給されることになるが︑注目されるのは︑運営費交付金がいわゆる﹁渡し切りの. 交付金﹂として措置され︑国の予算においては︑コ項一目を立て︑使途の内訳は特定しない﹂こととされている.

(5) 点である︒この結果︑運営費交付金の支出に関しては︑事前の関与を受けることなく︑予定の使途以外の使途に当. てることができるようになる︒また︑当該年度に予算の遣い残しが生じた場合には︑翌年度に繰り越すことができ. 本稿は︑行政組織の独立行政法人化に関する立法政策の是非を取扱うものではなく︑既に制定された通則法および個別法から. るとされている︵﹁方針﹂皿の一二︶︒ ︵1︶. 独立行政法人の設置に対する行政法学の立場から検討したものとしては︑山本隆司﹁独立行政法人﹂ジュリスト一一六一号﹁. 生ずる労働法上の問題を検討するものである︒. ︵2︶. 個別法においては︑﹁理事長﹂という名称になっている︵たとえば︑﹁独立行政法人青年の法﹂六条一項︶︒また︑法人の長及. 三三頁︑藤田宙靖﹁国立大学と独立行政法人制度﹂ジュリスト一一五六号一〇九頁︒ ︵3︶. 監事以外の役員は︑個別法においては﹁理事﹂という名称となっている︒. 二 個別的労使関係. 考察してみたい︒. 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶. 四九. としての﹁身分﹂を付与される特定独立行政法人職員の場合には︑少々複雑である︒以下において︑これを中心に. 員は︑前記のように︑労働契約にもとづいて法人との労働関係が形成されることになる︒これに対して国家公務員. が採用された結果として︑個別的労使関係の法的枠組みに変化が生じることになる︒まず︑非特定独立行政法人職. 以上のように︑独立行政法人に対する国の組織的および財政的コントロールを最小限にとどめるという基本原則. び.

(6) 1. 用. 早法七五巻三 号 ︵ 二 〇 〇 〇 ︶. 採. 一五〇. 特定独立行政法人職員の採用及び昇進等の任免については︑国公法の規定が全面的に適用︵三三条から六〇条ま. で︶される︒したがって︑この点では︑法人の長の裁量は︑大幅に制約されることになる︒しかし︑独立行政法人. に対する国の関与をできうる限り抑制しようとする基本方針および非特定独立行政法人には国公法が適用されない. ことを考慮すると︑特定独立行政法人についてのみ国公法の任免等の規定を全面的に適用することの根拠が明確と. 給与・勤務時間. はいえない︒これを意識してか︑前記﹁方針﹂は︑採用に関して﹁従来の取り扱いと比較して独立行政法人の長の ︵4︶ 判断により採用を行うことができる範囲を拡大﹂するとしている︵方針mの二五︶︒. 2. 特定独立行政法人職員の給与については︑国家公務員法の給与に関する規定︵一八条︑二八条及び六二条から七〇. 条まで︶及びコ般職の職員の給与に関する法律﹂が適用除外とされた︵通則法五九条一項二号︑四号︶結果︑職員. は給与法定主義の原則︵国公法六三条︶から離脱することになる︒したがって給与は︑法人の長の裁量によって︑. まず就業規則によって定められることになろう︒ただし︑職員の給与に関して︑通則法による規制が存在する︒第. 一に︑給与の根本基準として︑職員の給与は﹁その職務の内容と責任に応ずるもの﹂で︑かつ職員の﹁発揮した能. 率﹂を考慮するものでなければならないとされている︵五七条一項︶︒この規定の文言は︑﹁国の経営する企業等に. 勤務する職員の給与に関する法律﹂にも定められていたものと同一であるが︑﹁方針﹂は︑とくに法人の﹁業務の. 達成目標が大幅に達成された﹂ときや︑逆に﹁未達成﹂のとき等において考慮することが﹁適当﹂だとしている︒.

(7) 第二に︑支給基準としては︑以下の事項を考慮して定められねばならないとしている︒すなわち︑①非現業国家公. 務員の給与︑②民間企業の従業員の給与︑③当該法人の業務の実績︑④中期計画における人件費の見積り︑⑤その 他の事情である︵同条三項︶︒. また︑勤務時間︑休憩︑休日及び休暇︵勤務時間等︶に関しても︑コ般職の職員の勤務時問︑休暇等に関する法. 律﹂及び勤務時間などの勤務条件を人事院規則で定めることを規定する国公法一〇六条が適用除外される︵通則法. 五九条一項二号︑七号︶結果︑長の裁量により就業規則において定められることになる︒通則法は︑勤務時問等に ついて非現業国家公務員の条件その他の事情を考慮すべきものとしている︵五八条二項︶︒. このように︑職員の勤務条件について︑従来の法定主義︵あるいは詳細法定主義︶の原則は適用されないことと. なった︒これは︑独立行政法人設置の趣旨を踏まえて︑勤務条件に対する法的規制を緩和し︑法人の長の決定権限. 移行時の勤務条件の変更. を拡大したものと解することができよう︒. 3. ︵1︶ 勤務条件変更に対する規制. 前記のように︑非特定独立行政法人職貝の勤務条件のみならず︑勤務条件法定主義の原則が適用除外とされた特. 定独立行政法人職員の勤務条件も︑まず︑就業規則で決定されることになる︒その際︑独立行政法人への移行時に. 作成される就業規則において︑従来の勤務条件を変更することが可能か否かが問題となる︒通則法及び個別法にお. 一五一. いては︑前記の通り︑給与及び勤務時間等に関する一般原則以外には︑この点について必ずしも明確な規定は存在 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(8) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一五二. しない︒ただ︑前記﹁方針﹂は︑非特定独立行政法人に移行する職員の退職手当について︑﹁国家公務員退職手当. 法により維持されてきた水準を尊重︵期間通算を含む︶して措置するものとする﹂としている︵皿の二八︶︒そして︑. 非独立行政法人の個別法においては︑この﹁方針﹂に沿った規定が設けられている︵例えば︑﹁独立行政法人国立青. 年の家法﹂附則四条二項︶︒また︑﹁方針﹂は︑﹁身分・処遇関係についての制度的取扱い︵退職手当︑共済給付︑福利. 厚生等︶については︑人事交流の妨げにならないよう措置するものとしている﹂︵﹁方針﹂皿の二九︶︒このように︑. 一部の勤務条件については︑従来の制度を尊重すべき旨の方向性が示されているが︑それ以外の勤務条件について. 特別な定め又は方向性は示されていない︒したがって︑移行時における勤務条件の引き下げを一般的に禁止する規. ﹁身分﹂の変更と勤務条件の変更. 定は存在しないといえよう︒ ︵2︶. 勤務条件の変更を一般的に禁止する規定の欠如は︑無制限な不利益変更を肯定するものであろうか︒これを検討. するに当たっては︑職員の﹁身分﹂変更問題を考慮する必要があろう︒すなわち︑独立行政法人への移行は︑職員. の﹁身分﹂の変更をともなうことになるが︑この変更をいかなる性格のものと捉えるべきかは必ずしも明確ではな. い︒とくに︑非特定独立行政法人への移行は︑職員の国家公務員たる﹁身分﹂の喪失を意味することは明らかであ. る︒それゆえ︑﹁移行﹂は︑従来の行政組織を﹁退職﹂し︑新たに労働契約を締結することによって非特定独立行. 政法人に採用されることを意味する︒問題は︑国公法による身分保障との関連で︑かかる﹁身分﹂の変更を当該職 ︵5﹀ 員の同意なしに一方的になしうるか否かである︒この点に関して︑個別法である﹁独立行政法人国立青年の家法﹂. は︑﹁青年の家の成立の際現に文部科学省の機関で政令で定めるものの職員である者は︑別に辞令を発せられない.

(9) 限り︑青年の家成立の日において︑青年の家の職員になるものとする﹂︵附則二条︶と定めている︒この規定は︑. 素直に解釈する限り︑当該職員の意思にかかわりなく︑﹁別に辞令を発せられない限り﹂当然に国家公務員たる身. 分を失うことを意味しているように思われる︒しかしながら︑果たしてかかる規定を職員の身分を保障した国公法. と矛盾なしに解釈することが可能かという疑問は拭いきれない︒ただ︑当面この問題を棚上げしたとしても︑少な. くとも当該職員の意思と無関係に﹁身分﹂の変更が生じるとするならば︑移行前における基本的な勤務条件は︑移. 行後における合理的な一定期間︑すなわち︑団体交渉等を通じての新たな労働条件形成秩序が実質的に確立するま. での間は︑就業規則において確保すべき努力義務が課せられているというべきである︒これは︑非特定独立行政法. 人に限らず︑個別法の附則において︑同様な規定を含んでいる特定独立行政法人にも同様の努力義務が課せられる と解すべきことになろう︒. これについて前記﹁方針﹂は︑﹁労働関係への配慮﹂という項目を設け︑次のような方向性を示している︒すな. わち︑﹁政府は︑それぞれの独立行政法人に行わせる業務及びその職員の身分等を決定するに当たっては︑これま. で維持されてきた良好な労働関係に配慮するものとされており︑この点に十分配慮する必要がある﹂としている. ︵﹁方針﹂皿の三三︶︒これは︑組織改革にともなって避けることのできない勤務条件の変更については禁止できない. としても︑できうる限り従前の勤務条件を維持すべきことを明らかにしたものといえよう︒以上の点を考慮すれ. ば︑少なくとも︑年間の給与総額︑年問の勤務時間数及び休暇日数等の職員にとって基本的な勤務条件の不利益変 更については︑その必要性など高度の合理性が要求されると解すべきではなかろうか︒. 一五三. なお︑今後とも公務部門における組織改革が継続的に実施されることを考慮するならば︑改革を円滑に行うため 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(10) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一五四. ︵6︶ にも︑立法論としては︑従来の勤務条件を移行時に変更するには︑やむを得ない合理的な理由を職員に明示すると ︵7︶ ともに︑後述のように︑﹁職員団体﹂との交渉を義務づける規定を設けることも検討されるべきであろう︒. 4 定員管理と雇用形態の弾力化. 現在︑国家公務員が厳格な定数管理のもとに置かれていることは周知の通りである︒すなわち︑﹁行政機関の職. 員の定員に関する法律﹂では︑五〇九︑五〇八人とし︑かつ﹁行政機関職員定員令﹂︵以下では︑﹁定員法等﹂とい. う︶において︑内閣の機関のみならず国営企業職員も含めて各組織ごとに詳細に定員が定められている︒これに対. して︑非独立行政法人の職員のみならず︑国家公務員たる﹁身分﹂を引き続き維持することとされた特定独立法人. 職員についても︑定員法等の規制の対象外とされることになった︵基本法四〇条四号及び﹁方針﹂mの二一︶︒特定独. 立行政法人については︑定員法等の規制にかわって︑事業年度ごとに常勤職員の数を主務大臣に報告すべき義務が. 課せられる︵通則法六〇条一項︶こととなった︒このように定員法による定員管理の拘束から解放されることによ. って︑法人の長は︑職員定数の管理について大幅な裁量権限を付与されたことになる︒たとえば︑まず職員に退職. 者が生じた場合︑業務の繁閑に応じて︑その補充を行うか否か︑外部委託する否かを判断することになろう︒ま. た︑補充を行う場合でも︑常勤職員か︑それとも非常勤職員等の非正規職員を採用するか又は派遣労働者の受け入. れる等を決定できることになる︒その結果︑常勤職員数に着目すれば︑理論的には長の裁量によって常勤職員の数 を従来以上に増やすことも可能であり︑逆にそれを減らすことも可能となる︒. 次に定員法等の適用除外が職員の﹁身分﹂に与える影響であるが︑後述するように︑総務庁の審議会には︑独立.

(11) 行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関し︑主務大臣に勧告する権限が認められており︵通則法三五条三項︶︑ま. た︑独立行政法人の解散については︑別の法律が予定されている︵六六条︶︒これらの規定は︑独立行政法人にお. いて業務の改廃又は解散による整理解雇が行われることを当然の前提としている︒これに関して︑非特定独立行政. 法人職員の場合︑経営上の理由にもとづく解雇が一般的に可能となると言わざるをえない︒その解雇の成否は︑原. 則として﹁整理解雇の法理﹂に照らして判断されることになろう︒これに対して特定独立行政法人職員の場合︑国. 公法七八条四号にもとづき﹁廃職又は過員が生じた場合﹂︑職員を分限免職処分に付すことができるか否かという. 問題が生ずる︒一九六九年に現行定員法等が成立して以降︑国公法の定めにもかかわらず︑国家公務員の整理解雇. は︑事実上︑行われてこなかったところであるが︑今後ともかかる運用が維持されることになるのか現時点では明. らかではない︒なお︑この分限免職については︑既に︑独立行政法人の解散に関連して﹁廃止される職に就いてい ︵8︶. る公務員が当然に免職される趣旨ではなく﹂︑﹁国会および国家公務員の任命権者全体が︑法人の職に就いていた公. 務員を︑他の行政組織の職に就ける可能性を検討せねばならない﹂との指摘がなされている︒. 独立行政法人も一つの行政組織である以上︑国公法が適用されるべきであり︑任用における諸原則が厳格に適用されるべきだ. 一五頁以下︒. の立場からは︑非特定独立行政法人には国公法が適用されない結果︑任用に関する原則が適用されないことこそ問題だというこ. ︵4︶. 四〇号. 逐条国家公務員法. 従来︑国家公務員が特別職に就任する場合又は計画的な人事交流にもとづき地方公務員となる場合には︑﹁人事当局の勧奨を. 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶. 二条二項︶︒. 一五五. の同意を得なければならないと定められている︵国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律. 六〇七頁︒また一般職の職貝が国際協力等の目的で国際機関等に派遣されることがあるが︑この場合にも︑任命権者は︑当該職員. 契機とした退職﹂と捉えられており︑当該職員の同意を当然の前提としていたようである︒鹿児島重治ほか編. ︵5︶. とになろう︒これについて︑川村祐三﹁独立行政法人の職員の身分﹂行財政研究. と.

(12) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一五六. 企業組織の変更に際して︑既存の労働条件をいかに保護するかは︑労働法上の重大な課題である︒EC法の規制に関して以下. を参照︒本久洋一﹁企業︑事業または︑企業︑事業の一部の移転の際の労働者の権利保護に関する加盟国法の接近に関する77/. ︵6︶. ILO結社の自由委員会は︑九八号条約にもとづき︑企業組織の変更にともなう解雇および労働条件変更について︑労働者組. /EEC指令﹂季刊﹁労働者の権利﹂二三二号一二頁以下︒なお︑この点について︑労働法学会誌九四号の各論文参照︒. 山本. 集団的労使関係. 逐条地方公務員法四五四頁︶︒. 前掲論文二壬二頁︒これに対して︑﹁特定の職が明らかに廃職となった場合︑ーー−1ーその職にある者が降任または免. 三. 職員団体 か ら 労 働 組 合 へ. であるが︑なかには︑例えば一部の国立病院のように︑一連の行政改革のなかで組織の一部が地方公共団体に移管. けではない︒独立行政法人への移行が予定されている行政組織は︑従来の組織が全体として移行するものが大部分. 結果︑周知のように︑団結権に対する規制は︑相当程度緩和されることになる︒しかしながら︑全く問題がないわ. ろが少なくない︒この職員団体は︑独立行政法人化にともない︑国労法上の労働組合へ移行することになる︒この. ︵9︶. 従来︑独立行政法人への移行が予定されている組織には︑国家公務員法にもとづく職員団体が存在しているとこ. ︵1︶. 1 団結権. 職されることには問題がない﹂との見解もある︵鹿児島重治著. ︵8︶. opαOωS 冨ρ腿跨①&賦oP一89℃貰器︒Ooo貸Ooo①Ω. 織との交渉または協議の必要性を強調している︒ω①ρ田鴨馨飢血8莚8§血℃﹃ぎ9巳80津冨牢83ヨ○︷>霧8冨鼠800ヨ且サ. ︵7︶. 餅.

(13) される場合がある︒この移管は︑いうまでもなく︑当該職員の身分を非現業の地方公務員へと変えることになる︒. そこで︑当該職員が地方公務員法上の職員団体を結成するか︑もしくは既存の職員団体に加入するならば間題はな. いが︑従来からの関係を踏まえ︑独立行政法人への移行を契機にその職員が中心となって組織されている労働組合. に加入︵再加入?︶することも予想される︒その結果︑国労法上の労働組合に地公法上の非現業職員が参加するこ. とになる︒定義の仕方にもよるが︑一種の﹁混合組合﹂と見ることもできよう︒そこで問題となるのは︑このよう. な﹁混合組合﹂が国労法上の労働組合と見なしうるか否かである︒国労法は︑労組法二条を適用除外していないの. で︑この問題は︑結局︑かかる﹁混合組合﹂が労組法上の労働組合といえるか否かの判断となろう︒. ところで︑労組法二条は︑同法における労働組合を﹁労働者が主体となって−−−−−組織する団体﹂と定義してい. る︒したがって︑まず同条の﹁労働者﹂の中に非現業の地方公務員が含まれるかが間題となる︒これについては︑ ︵10︶ 地公法が労組法の適用を全面的に排除していることを理由に非現業公務員は︑﹁労働者﹂に含まれないとの見解が. ある︒いま︑仮にこの見解に立っても︑上記の﹁混合組合﹂が労組法適用の﹁労働者が主体となって﹂組織されて. いるならば︑これを労組法上の労働組合と解することには問題はないといえよう︒若干事案及び適用法令を異にす. るが︑判例もこの考え方を支持しているものと解せられる︒すなわち︑地公法の職員団体に地公労法適用の単純労. 務職員が参加している﹁混合組合﹂が市当局との間で締結した﹁協定﹂の法的性質は︑﹁労働協約﹂かそれとも. ﹁書面協定﹂かが争われた帯広市職労事件において︑釧路地裁は﹁労組法の労働者である単労等が当該混合組合の. 一五七. 主体となっている場合には︑労働組合であり︑地公法上の職員である一般職員が当該混合組合の主体となっている ︵n︶ 場合には︑職員団体であると解すべきである﹂と判示している︒ 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(14) 早法七五巻三 号 ︵ 二 〇 〇 〇 ︶. 一五八. もっとも︑非現業地方公務員が独立行政法人職員の労働組合に参加しても︑単に組合員となるだけでは︑その現. 2︶. 実的メリットはほとんどないといわざるをえない︒すなわち︑かかる﹁混合組合﹂は︑地公法上の登録を受ける資 ︵1 格を有しておらず︑それゆえ地方公共団体当局と﹁交渉﹂することすら危ういからである︒したがって︑現行法制. を前提とするかぎり︑労働組合組織内部に地公法上の登録要件を満たすだけの形式と実態を備えた非現業地方公務. 員のみの独立した組織を設けること等の﹁現実的対応﹂が求められることになろう︒また︑これに関連して︑独立. 行政法人職員の労働組合が当該法人の業務・事務を受託した民間企業に雇用される労働者及び派遣労働者を組織化 することは︑労組法二条との関係ではとくに法的問題はないと思われる︒. なお︑昨今の行政組織の改革にともなう職員の﹁身分﹂の移行及び官民間の人事交流の活発化等の動向は︑これ. ︵13︶. 移行時における組織変更. まで公務部門の団結権に関する規制が現実にそぐわなくなりつつあることを示しており︑抜本的な改革が求められ よ・フ︒. ︵2︶. 職員団体から労働組合への移行に際して個別法は︑特別な定めを設けている︒たとえば︑個別法の一つである. ﹁独立法人産業技術総合研究所法﹂によれば︑特定独立行政法人である同研究所が成立する際に存在している職員. 団体であって︑﹁その構成員の過半数が引継職員であるものは﹂︑研究所成立の際︑国労法の適用を受ける労働組合. とみなし︑かつ当該団体が法人であるときは︑法人であるである労働組合として取り扱うと定めている︵附則四条. 一項︶︒そして︑同法は︑この労働組合に対し︑研究所成立の日から六〇日以内に︑労働委員会の資格審査を受け︑. かつ登記することを求めている︵同条二項︶︒また︑成立の日から六〇日以内に限り︑この労働組合には労組法二.

(15) 条ただし書︵第一号に係る部分に限る︒︶の規定は適用しないとしている︵同条三項︶︒これらの規定は︑研究所発足. 時の労働者組織が労組法二条ただし書一号に抵触していても︑なお六〇日間は国労法上の労働組合として取り扱う. ことを定めたものである︒したがってこれらの規定は︑一応︑現に存在する職員団体の組織実態を考慮して︑職員. 団体の組織変更に要する期間を考慮して便宜を図ったものと解することができよう︒しかしながら問題は︑この便. 宜措置の﹁恩恵﹂を受けることができる労働者組織を︑同研究所が発足する時点において現存している職員団体で. あって︑かつ﹁その構成員の過半数が引継職員である﹂ものに限定していることである︒このことは︑例えば︑既. 存の職員団体が同研究所の発足以前の段階で解散し︑独立行政法人へ移ることが予定されている職員の個人加盟を. 原則とし︑個々の独立行政法人を横断する組織を結成した場合には︑この便宜を受けることはできないことにな. る︒すなわち︑独立行政法人発足時において︑﹁現に存する﹂職員団体に該当せず︑また特定の独立行政法人との. 関係では︑﹁その構成員の過半数が引継職員﹂ではない可能性が生ずるかぢである︒この側面からは︑上記の便宜. 措置は︑既存の職員団体を引き続き﹁企業別労働組合﹂へ誘引するものとの見方もできないわけではない︒もっと. も︑四条一項は︑各独立行政法人の﹁成立の際﹂に上記の要件を満たしている職員団体に便宜を図るものであり︑. ︵清水︶. 一五九. 独立行政法人成立後における職員団体の組織形態に干渉するものではないから︑実質的には職員の団結権に制約を. 団体交渉権の保障. 団体交渉権. 及ぼすことは少ないと思われる︒. 2 ︵1︶. 独立行政法人における労使関係の法的枠組み.

(16) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一六〇. 団体交渉は︑独立行政法人の労働組合の組織形態にもよるが︑一般に個別法人ごとの労使交渉が展開されるもの. と予想される︒国公法のもとにおける﹁交渉権﹂は︑きわめて限定されており︑主要な勤務条件は︑法令によって. 一方的に決定されていたため︑﹁交渉権﹂は名目的なものであったといっても過言ではない︒これに対して︑独立. 行政法人においては︑前記のように︑勤務条件に関して法人の長に相当の裁量権が与えられるとともに︑その労働. 組合には団体交渉権が与えられることになる︒したがって︑イギリスにおける行政改革の進展の中でみられたよう ︵14︶. に︑下部の行政組織の管理者に大幅な裁量権が付与されるとともに︑勤務条件決定の場が実質的に中央から各行政. 組織へ移る点において共通する部分があるといえよう︒しかしながら︑この変化がイギリスにおいて生じたよう. に︑わが国においても︑労働組合組織に実質的に決定的な打撃を与えることになるか否かは︑現時点で予測するこ. とは難しいといわざるをえない︒それは︑勤務条件決定の場が各独立行政法人に移ったとしても︑労働組合が勤務. 条件の決定に関与する度合いは︑団体交渉権の保障によって︑従来に比して相当に強められる余地があるからであ. 移行時における交渉. る︒また︑それは︑いかなる団体交渉の方式が定着するかによっても︑異なってこよう︒今後の推移を注目した い︒. ︵2︶. 独立行政法人への移行にともない︑従来の勤務条件が保障されるか否かは︑既に検討したところであるが︑これ. に関連して︑﹁国労法上の労働組合﹂に組織変更を準備中の﹁職員団体﹂は︑独立行政法人発足前に︑独立行政法. 人の長との間において︑発足後発効することとなる就業規則の内容等について﹁交渉﹂又は﹁団体交渉﹂すること. ができるか否かが問題となる︒すなわち︑独立行政法人の正式な発足に先だって︑独立行政法人の長が主務大臣に.

(17) よって任命される︒法人の長は︑主務大臣によって設定された中期目標を受けて︑中期計画を作成し︑これについ. て主務大臣の認可を受けなければならない︒間題は︑この中期計画において職員の勤務条件と密接に関連する事項. が含まれる可能性があることである︒しかも就業規則の内容も︑この中期計画の内容に大きく左右されることにな. ろう︒前記のように︑独立行政法人成立とともに︑一定の職員団体は︑直ちに国労法上の労働組合と見なされる措. 置がとられるがゆえに︑団体交渉権を行使することが可能となる︒しかし︑それにもかかわらず︑職員団体は︑制. 度上︑独立行政法人の成立以前の段階における中期計画の策定およびそれにもとづく就業規則の作成過程に全く関. 与できないのである︒したがって︑前述のように当面︑何らかの形で実質的に職員団体の意見を聴取する機会を設. けることが望まれるとともに︑今後は︑これを可能にする根拠規定を設けることが課題となろう︒. 3 労働協約の締結と実施︑仲裁裁定の実施. 独立法人化にともなう国労法の改正に際してもっとも注目されるのが︑独立行政法人における労働協約及び仲裁. 裁定の実施に関する規制の緩和である︒すなわち︑国労法は︑﹁国営企業の予算上又は資金上︑不可能な支出を内. 容とするいかなる協定も︑政府を拘束するものではな﹂く︑﹁また︑国家によって所定の行為がなされるまでは︑. そのような協定に基づいていかなる資金といえども支出してはならない﹂︵一六条一項︶と規定していた︒また︑. ﹁予算上又は資金上︑不可能な支出を内容とする﹂仲裁裁定についても︑同様な定めが設けられていた︵三五条︶︒. しかし︑改正国労法は︑従来の制度の適用を国営企業︵一六条及び三五条一項︶に限定し︑特定独立行政法人つい. 一六一. ては適用しないこととし︑かつ仲裁裁定に服従する義務は︑特定独立行政法人については無条件で両当事者に課せ 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(18) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一六二. られることとなった︵改正国労法三五条二項前段︶︒また︑特定独立行政法人が仲裁裁定を無条件で実施する義務を. 負うこととなったため︑仲裁裁定の実施の結果︑法人の﹁事務及び事業の実施に著しい支障が生ずること﹂も想定. される︒そこで︑政府に対し︑かかる支障が生じないないよう﹁できる限り努力しなければならない﹂義務が課せ. られた︵三五条二項後段︶︒こうして労働協約および仲裁裁定の実施に関し直接的な国家権力の介入が回避された点. において︑国営企業とは異なったシステムが設けられることになった︒これは︑前記の通り︑独立行政法人の運営. は︑自主性・自律性を基本方針とすることにともない︑従来の国営企業とは異なった財務・会計システムが採用さ. れ︑とくに運営費交付金については﹁渡し切りの交付金﹂と措置されたことの当然の帰結ということができよう︒ ︵15︶. ところで︑周知のように︑国労法の強制仲裁制度が︑果たして争議行為禁止の代償措置として適切な制度である. か否かにいては︑従来から強い疑問が投げかけられできたところである︒ILOの結社の自由委員会及び条約勧告. 専門家委員会も繰り返し︑強制仲裁制度が安易に国家の介入を許す点において代償措置制度として大きな欠陥があ. ることを指摘してきた︒この長年にわたるILOの指摘が︑特定独立行政法人に限定されているとはいえ︑そして. 労働組合運動の成果というよりも︑むしろ規制緩和の流れから派生してきた側面が強いとはいえ︑改正国労法の中 で実現の運びとなったことについては率直に評価したい︒. 敬文堂︶三九頁︒. 判例時報一〇九一号一三九頁︒. 前掲書八五九. ︵9︶ 独立行政法人への移行にともなって︑﹁職員団体﹂から﹁労働組合﹂への組織変更が必要となるが︑これに関する手続きにつ いては︑個別法に定められた関係条文を参照されたい︒ 昭五八・七・二. かかる団体は︑登録の有無以前に︑そもそも地公法の﹁職員団体﹂にも該当しないとの見解がある︵鹿児島. 釧路地判. ︵10︶ 竹下英男﹁現業・公企労働者の権利﹂︵一九八二年. ︵11︶. 2︶ ︵1.

(19) 頁︶︒. 以下︒. ︵B︶. ︵14︶. §鑛鳴ミ鳴ミき山ミ盲§︑N.住8⇒︵げ○づ傷8一≦碧ヨ一=. ⇒︶一器︒. これについては︑拙稿﹁公務における任用の弾力化と公務員法制改革の課題﹂労働法律旬報一四四七/一四四八合併号四六頁. ω鷺く貯頃o博05廼O巴く箆閃餌旨訂ヨ︵亀しSミミ母ミ. ︵15︶ たとえば︑中山和久﹁結社の自由委員会一三九次報告﹂労働法律旬報八四八号一九頁以下︒. 四国の統制システムと労使関係. 以上において︑新しく設置される独立行政法人における労使関係の法的枠組みを検討してきたが︑前記の強制仲. 裁制度の機能も含めて︑この法的枠組みがどのように機能するかが今後注目すべき点である︒現時点で︑到底これ. について予測することはできない︒しかし︑独立行政法人に対する国の統制システムは︑その機能に大きな影響を. 及ぼすことは否定できないところである︒そこで︑最後にこのシステムについて簡単に触れておきたい︒. いうまでもなく︑独立行政法人といえども︑行政実施主体であることから︑実施の最終責任は内閣にあることは. 明らかであり︑そこから主務大臣等による法人業務への統制が加えられることになる︒これについて通則法によれ. ば︑主務大臣は︑概ね︑以下のような方法で監督権限を行使することになる︒まず︑主務大臣は︑法人が達成すべ. き業務運営に関する﹁中期目標﹂︵三年から五年︶を定め︑これを法人に指示する︵通則法二九条一項︶︒法人は︑中. 期目標を達成するための﹁中期計画﹂を作成し︑大臣の認可を受けなければならない︵三〇条一項︶︒この中期計画. 一六三. には︑人事に関する計画を含むものとされ︑人員及び人件費の効率化に関する目標等が含まれる︒そして法人は︑ 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(20) 早法七五巻三号︵二〇〇〇︶. 一六四. 中期計画を踏まえて年度計画を作成し︑主務大臣に届け出なければならない︵=二条一項︶︒さらに︑法人は︑中期 目標終了時点において主務大臣に事業報告書を提出することになっている︵三三条︶︒. また︑独立行政法人に対する評価制度が導入されることになっており︑これも職員の勤務条件に少なからざる影. 響を及ぼす可能性をもっている︒すなわち︑各府省には独立行政法人評価委員会︵以下︑﹁評価委員会﹂という︶が. 設けられるとともに︑総務省には︑政策評価・独立行政法人評価委員会︵以下︑﹁総務省評価委員会﹂という︶が設. 置される︒まず︑評価委員会は︑当該事業年度における中期計画の実施状況を調査・分析して当該法人の業務実績. 全体の評価を行い︑必要があれば当該法人に対して業務運営の改善等を勧告することができることになっている. ︵三二条一項から三項︶︒また︑この評価結果は︑総務省評価委員会に通知され︑必要があれば︑同委員会は︑評価. 委員会に意見を述べることができるとされている︵三二条五項︶︒さらに︑中期目標期間の終了時において︑評価委. 員会はこの期問の法人の業績について評価を行う︵三四条︶︒主務大臣は︑この評価も踏まえて業務継続の必要性︑. その他組織及び業務の全般にわたる検討を行い︑その結果にもとづき︑所要の措置を講ずることとしている︵三五 ︵16︶ 条一項︶︒そして総務省評価委員会は︑主要な事務及び事業の改廃を主務大臣に勧告できることとされている︵三五 条二項︶︒. 以上のように独立行政法人の運営に対する国の事後的統制の網は︑制度上︑かなり綿密に作られている︒事後. 的統制手段の中で︑労使関係にとってとりわけ重要な意味を持つと思われるのが中期計画であろう︒独立行政法人. に対する業績の評価は︑主としてこの中期計画に沿って行われると推測されるからである︒したがって︑例えば中. 期計画において人件費等の内容が詳細に定められ︑かつその実施状況への国の監督が厳格に行われる場合には︑実.

(21) 質的に勤務条件法定主義が適用されいた独立行政法人発足前の状況と近似することになり︑労働協約締結を含む団. 体交渉権保障の趣旨が形骸化されることも予想される︒その意味で今後︑国家の監督権限がどのように機能するか に注目する必要があろう︒. 条一項︶などがある︒. ︵16︶ このほかにも︑主務大臣が法人の長を罷免する権限を有していること︵二三条︶︑常勤職員数の主務大臣への報告義務︵六〇. おわりに. 以上において︑独立行政法人の労使関係の法的枠組みを概観し︑かつ問題点を指摘してきたが︑最後に全体とし. て以上の法的枠組みを運用するに際して留意すべきことを指摘したい︒独立行政法人設置の目的は︑事務・事業の. 効率性の向上︑質の向上及び透明性の確保にあると指摘されている︒その目的を実現するために独立行政法人に. は︑自律的・弾力的な運営を行わせる方法が採用されたといえよう︒この自律的・弾力的運営の基本方針から︑職. 員の勤務条件の決定に関し︑労使自治の原則を尊重すべき要請が派生することとなる︒そして︑これに則り国労法. の改正など一連の法令改正が行われたとみることができよう︒したがって︑上記の法的枠組みを運用するにあたっ. て︑労使関係に関してまず留意されなければならないのは︑労使自治の尊重でなければならない︒しかし︑独立行. 政法人は︑行政の実施主体であることにかわりなく︑また運営費交付金等は税金であることを考慮するならば︑最. 一六五. 低限の国家の統制は避けられないのも事実である︒この結果︑労使自治の尊重と国家的な統制をどのように調整す 独立行政法人における労使関係の法的枠組み︵清水︶.

(22) 早法七五巻三 号 ︵ 二 〇 〇 〇 ︶. 一六六. るかが間題となるが︑上記の独立行政法人における労使関係に関する法的枠組みを踏まえるならば︑従来の国営企. 業の労使関係以上に︑労使自治の尊重が強く要請されていると考えられる︒その意味で︑新しい法的枠組みにおい. ては︑独立行政法人に対する国家の統制権限は︑そこにおける労使自治の原則を損なうことのないよう︑慎重に行 使されるべきこととなろう︒.

(23)

参照

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