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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 木 田 勝 己

     学位論文題名

     側頭骨錐体の発生学的研究

―顔面神経管を中心とした錐体の骨形態形成―

学位論文内容の要旨

緒 言

  ヒト側頭骨の発生にっいての記載は、現代の解剖学書あるいは発生学書においても簡単 な ものにと どまって おり、 とくに各 部の骨 形態形成 に言及する具体的な記載は少ない,

本 研究は、胎生期から生後若年にいたる側頭骨錐体部の骨形成過程を観察するとともに、

こ の 部 に学 名 を 有す る 代 表的 部 位 と顔 面 神 経管 を 中 心に そ の 形 成過 程 を 検索し た.

材料と方法

  観察 に用いた側頭骨は、北海道大学医学部解剖学第二講座所蔵の日本人側頭骨晒骨標本 総 計 329例 な ら び に 解 剖 体 実 習 に 用 い た 成 年 側 頭 骨 14例20側 を 用 い た . 晒骨標本は胎児頭蓋310例620側(胎生4ケH,18例36側;胎生5ケH,82例164側;胎生6ケ月,

68例136側;胎生7ケH,62例124側;胎生8ケH,44例88側;胎生9ケE,24例38側;胎生10ケ月,

12例 24側 ) な ら び に 生 後 3ケ 月 〜 7年 の 若 年 頭 蓋 骨 標 本 19例 38側 で あ る .   胎児 骨標本にっいては、肉眼直視下あるいは実体顕微鏡下において、側頭骨の骨化部と その 形態変化 を中心に観察を行い、錐体の軟骨性原基に現れる骨化部の出現時期、位置、

形 状 を 確 認 す る と と も に 、 骨 形 態 変 化 と 形 成 過 程 及 び 完 成 時 期 を 検 索 し た .   若年 頭蓋標本においては、鼓室内を肉眼観察し、生後64〜83年の成年頭蓋にっいては、

鼓室 内壁を露 出し、鼓室内部および顔面神経管の走行を中心に観察を行うとともに、一部 の成 年側頭骨 ではマイ クロカ ッティグ マシンを用い厚さ1〜2 mmの連続切片を作成し、実 体顕微鏡下で観察をおこなった.

観察所見     一

1.側頭骨 の骨化過 程.

胎生4ケ月 の側頭骨 におけ る骨化は 部位に より種々 の段階 にある, 鱗部はすでに骨化を 示し、全観察例で側頭蝋、頬骨突起および下顎窩が観察され、鼓室部鼓室輪の形成をみる.

  胎生5ケ月に おいて鼓 室部は 鼓室輪として全例に観察される.この時期、錐体の骨化形 態は 、6群 の骨化 点として 観察される.最初に認められる骨化点は、蝸牛窓上縁、次いで

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前 半 規 管膨 大 部 に 現れ 、 続 い て蝸 牛 ・ 半 規管 聞 部 、 内耳 孔 周 縁 、錐 体 尖 上 面、 前 半 規 管上 端 に 観 察 さ れ る . こ れ ら6群 の 骨 化 点 が 、 急 速 に 発 達 ・ 融 合 し 、 胎生6ケ 月 に は 錐体 の 概 形 を 形 成 す る .

2.錐 体 各 部 の 形 態 形 成 .     一

胎 生6ケ 月 後 半 に 、 錐 体 の ほ ぼ 全 体 が 骨 化 に いた り 、 学 名を 有 す る 代表 的 部 位 とし て は 、 内 耳 孔 が 骨 性 の 孔 と し て 観 察さ れ 、 弓 状隆 起 、 弓 下窩 と 順 次 形成 さ れ る .こ の ほ か 将来 の 頸 動 脈 管 が浅 い 溝 と して 認 め ら れる よ う に なり 、 顔 面 神経 管の 初期的 な形成 が観察さ れる.

  こ の 時 期 の 顔 面 神 経 管 は、 内 耳 孔 から 入 る と すぐ に 内 頭 蓋底 に 露 出 する 浅 い 溝 とな り 、 顔 面 神 経 管 膝 部 で 屈 曲 し た のち 、 ふ た たび 骨 質 内 を通 っ て 鼓 室内 に 入 り 、鼓 室 内 壁 に沿 つ て 前 庭 窓 後上 部 か ら 錐体 の 後 下 端に 向 か う 溝と し て 観 察さ れ る .

  胎 生7ケ 月 の 側 頭 骨 に お い て は 、 弓 状 隆 起 の 骨化 が 周 囲 の骨 質 と 癒 合し 、 錐 体 上面 に は 弓 下窩の 形成が 顕著と なり、 前庭水 管外口、 蝸牛小 管外口 、頚鼓 小管も 半数以 上で、 その形 態 が 認 め ら れ る よ うに な る . なお 胎 生 期 の弓 下 窩 は 、次 第 に 縮 小し 錐 体 内 側面 に 移 行 する と と も に 学 名 を 有 する 他 の 鼓 室周 辺 構 造 物も そ の 位 置的 変 化 を とる よ う に なる , ま た 顔面 神 経 管 鼓 室 内 部 分 は、 将 来 の 茎乳 突 孔 付 近よ り 骨 性 管の 形 成 が 始ま る , こ の時 期 , 顔 面神 経 管 の 内 頭 蓋 底 側 露出 部 の 溝 をお お う よ うな 骨 性 の 小突 起 が 現 れ、 内 耳 孔 側よ り 顔 面 神経 膝 部 の 形 成が 始 ま る が、 出 生 ま で骨 性 管 の 形成 を み ず内頭 蓋底に 露出し た状態 で観察 される .   胎 生8ケ 月 〜10ケ 月 の 側 頭 骨 で は 細 部 の 骨 化 が 進 み 、 錐 体 尖 付 近 で は 、 三 又 神 経 圧 痕 お よ び 骨 性 管 と し て の 頚 動 脈 管 の 形 成が 始 ま り 、10ケ 月 にお い て は 全例 で 骨 性 の管 壁 構 造 が観 察 さ れ るよ う に な る. 大 錐 体 神経 溝 の 形 成は 胎生9ケ 月では、 大半の 例で観 察され るが、

大 錐 体 神 経 管 の 形 成 は 、 顔 面 神 経 管 膝 部 の 骨 形 成 に 続 く た め 、 そ の 形 成 は 生 後 と な る .

3. 胎 生 期か ら 若 年 およ び 成 年 側頭 骨 の 顔 面神 経 管 の 形成 と 裂 開 .

  顔 面 神 経 管 の 形 成 は 、 胎 生 期 に お いて 顔 面 神 経管 膝 部 と 鼓室 内 の 一 部を 残 し て おお む ね 全 周 性 の 骨 化 を 示 す . 若 年 頭 蓋 標 本 で は 、 顔 面 神 経 管 膝 部 の 形 成 は 生後3ケ 月 よ り 観察 さ れ るよ う に な り、 生 後5ケ 月 以 後す べ て の 標本 に そ の 完成 を み る .鼓 室 内 の顔 面神経 管1ま、

生 後3ケ 月 よ り 骨 性 管 形 成 の 始 ま り を み る が 、 生 後5〜10ケ 月 例 に お い て も 左 右 両 側 と も 未 骨 化 で あ っ た . 生 後1年 以 後 の 若 年 標 本 で は 、 鼓 室 内 部 の 観察 は 不 可 能で あ っ た ため 、 顔 面 神 経 管 の 鼓 室 内 骨 形 成 の 時 期 、 す なわ ち 全 長 にお い て 骨 性の 管 形 成 が認 め ら れ る時 期 の 確 認 は で き な か っ た , ま た 今 回 の 成 年側 頭 骨 観 察で は 顔 面 神経 管 膝 部 の裂 開 は 認 めら れ な かっ た が 、 顔面 神 経 管 膝部 〜鼓室 後屈部に おける 、鼓室 内への 裂開が20%の例 に観察 され、

裂 開 は 前 庭 窓 直 上 の 顔 面 神 経 管 隆 起 と 鼓 室 後 屈 曲 部 と に 位 置 し て い た . 考 察

  側 頭 骨 錐 体 の 骨 化 は 、 胎 生5ケ 月 に 現 れ る6群 の 骨 化 点 よ り 始 まり 、 内 耳 およ び そ の 周 囲 の 骨 化 が 、 中 耳そ の 他 の 部位 に 先 行 して 認 め ら れる , こ れ は内 耳 と 関 連す る 部 位 が比 較 的 早 い 時 期 に 形 成さ れ 、 次 いで 鼓 室 を 中心 と し た 神経 の 通 路 、さ ら に 側 頭骨 表 層 に おけ る 脈 管 の 骨 性 管 壁 構造 の 形 成 へと 続 く こ とを 示 し て いる . ま た 錐体 表 面 に おけ る 各 部 の形 成 過 程 は 、 胎 児 骨 表 眉 を お お う 膜 性 骨 化 の 最 終 段 階 と し て と ら え る こ と も で き る ,   顔 面 神 経 管 の 形 成 は 、 胎 生6ケ 月 よ り 始 ま り 各部 位 の 形 成が 進 む が 、顔 面 神 経 管膝 部 と 鼓 室 後 屈 曲 部 の 形成 は 最 も 遅い 箇 所 と 考え ら れ 、 胎生 期 に は 形成 さ れ ず 裂開 と し て 残る . こ の こ と は 、 生 後に お い て 鼓室 後 部 に 急速 に 発 育 する 乳 突 蜂 巣の 含 気 化 およ び 鼓 室 内腔 の

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膜性骨化が、顔面神経管の形成 とくに鼓室後屈曲部の骨性管形成と、密接に関連している ことを示唆している,

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    児玉 譲 副 査    教 授    井上 芳 副 査    教 授    寺沢 浩

学 位 ゛ 論 文 題 名

側頭骨錐体の発生学的研究

一顔面神経管を中心とした錐体の骨形態形成―

  ヒト側頭骨の発生に関する記載は成書におい て簡単なものにとどまり,とくに各部の骨 形態形成に言及する報告は極めて少ない,本研 究は,胎児晒骨標本310例620側,若年晒骨 標本19例36側を用い側頭骨錐体の骨形成過程を 肉眼観察し,この部に学名を有する代表的 部位と顔面神経管を中心にその形成過程の調査 を報告した,さらに生後64〜83年にL、たる 成年 側頭 骨14例20側の標本につL、ては,鼓室内を開放し顔面神経 管の走行を調査した,

  胎 生4力 月,側頭骨鱗部は観察され側頭鱗・側頭骨頬骨突起・下 顎窩は既に観察され,

鼓室部は鼓室輪として骨形態形成が始まる,こ の時期錐体は軟骨性の原基として観察され 骨化 部位 はな い. 側頭 骨錐 体の 骨化 は,胎生5力月に肉眼で観察可能な6群の骨化点より 始まる.このことは従来,切片標本による比較 的少数の観察標本により,14箇所の骨化点 より始まるとされる錐体の初期骨化過程を,晒 骨標本の観察では同じ群の骨化とみなすこ とにより,位置確認の比較検討が容易な所見と して扱うことができる.よって従来言われ ている側頭骨錐体の骨化点を,位置あるいは骨 化の進行によって同定する際の基本区分と して用いることができる.錐体の骨形成は錐体 下面の蝸牛窓付近に始まり次いで骨半規管 膨大部続いて蝸牛・骨半規管の間におこりすこ し遅れてほぼ同時期に内耳孔周縁・錐体尖 上面 ・前 半規管の上端に観察される, これら6群の観察可能な骨化 点が急速に発達・癒合 して 胎生6力月 には 錐体 の外 観を 形成 するにいたる.また胎生5力 月より20%程度の標本 で内 耳孔 が骨性の孔として観察され始 めるが,全例で認められるようになるのは胎生6力 月である.あわせて耳小骨ではツ手骨が最初に 骨化し,多少遅れてキヌタ骨・アプミ骨の 骨 化 が 観 察 さ れ る . 形 成 時 期 は , ほ ぼ 内 耳 孔 の 形 成 過 程 とそ の時 期 を同 じく する .   このような骨化過程は,蝸牛で早くそののち 骨半規管へと続くk、わゆる内耳形成の時間 的な差異は,らせん構造による塊状をなす蝸牛 では,その後の成長による容量変化が比較 的少ないのに対して,単ループ状を呈する各骨 半規管では成長による長さなどの形態変化 が要求されるためだと考えられ,事実、晒骨の 観察においても,前半規管の上端の骨化点

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か ら 形 成 さ れ る こ と も こ ・ の 長 さ の 成 長 に 関 係 し て い る こ と と 述 べ て い る .   胎生7力月の側頭骨におk、ては、弓状隆起の骨化が周囲の骨質と癒合し錐 体上面に弓下 窩が顕著になり,前 庭水管外ロ,蝸牛小管外ロ,頚鼓小管も半数以上でその 形成が認めら れるようになる.骨 迷路を含むk、わゆる内耳部 分の骨形成と周辺構造物の骨形態形成は,

その機能発現に一致 しておこるものであり,換言すれぱ,内耳の骨形態形成 は,内耳機能 の発現の骨形態学か らみた指標となり得ると述べている.

  報告によれば,内 耳およびその周囲の骨化が,中耳その他の部位に先行して認められる.

これは内耳と関連す る部位が比較的早い時期に形成され,次いで鼓室を中心 とした神経の 通 路の 形成 に続 き, さら に胎生8力月頃より側頭骨表層における神経・脈管の骨性管壁構 造の形成が強く起こ ってくる時期であると述べている,逆にこのことは内耳 すなわち聴覚 平衡覚器の骨形成を 終えた後、錐体表面における神経・脈管の形成が起こっ てくるとし,

また錐体そのものを 一塊の骨としての観察視点に立てば,各部の形成過程は ,胎児骨表層 を お お う 膜 性 骨 化 の 最 終 段 階 へ の 過 程 と し て と ら え る こ と が で き る と 報 告 し た .   顔面神経管の形成 は,胎生期において顔面神経管膝と鼓室内の一部を残し ておおむね全 周 性の 骨化 を示 す. 若年 頭蓋標本では,顔面神経管膝の形成 は生後3力月より観察される よ うに なり ,生 後5力 月以後のす べての標本にその完成をみる.鼓室内の顔面神経管は,

生 後3力 月 よ り 骨 性 管形 成の 始 まり をみ るが ,生 後5〜10カ 月例 にお いて も左 右両 側と も未骨化であった. 生後1年以後の若年標本では ,鼓室内部の観察は不可能であったため、

顔面神経管の鼓室内 骨形成の時期,すなわち全長において骨性の管形成が認 められる時期 の確認はできなかっ た.また今回の成年側頭骨観察では,顔面神経管膝の裂 開は認められ なかったが,顔面神 経管膝ないし鼓室後屈曲部における鼓室内への裂開が20%の例に観察 され,裂開は前庭窓 直上の顔面神経管隆起と鼓室後屈曲部とに位置すると報 告している.

  顔面神経管の骨性 管形成は,胎生6力月より始 まり各部の形成が進むが,顔面神経管膝,

鼓室後屈曲部の形成 は最も遅い部位と考えられ,胎生期には形成されず裂開 として残る.

このことは,生後に おいて鼓室後部に急速に発育する乳突蜂巣の含気化およ び鼓室内腔の 膜性骨化が,顔面神 経管の形成とくに鼓室後屈曲部の骨性管形成と,密接に 関連している と発表した.

  本研究により,側頭骨錐体 における骨形態形成の発生学的過程が明らかになり,歯科・

口腔領域,耳鼻咽喉科,脳神 経外科領域さらには,今後の解剖学ならびに発生学における 基礎的資料としての意義が大 きいものと期待される.

  審査員一同は,これらの成 果を高く評価し,また研究者としても誠実かつ熱心であり,

申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

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参照

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