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   網走湖産ワカサギ(Hyp07nesus 7zippon,e7zsis)      初 期 生 活 に 関 す る 生 態 学 的 研 究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 浅 見 大 樹

学 位 論 文 題 名

   網走湖産ワカサギ(Hyp07nesus 7zippon,e7zsis)      初 期 生 活 に 関 す る 生 態 学 的 研 究

学 位論文 内容の要旨

   ワ カサギは淡 水域で産卵 し、海洋で 成長する遡河回遊魚である。オホーツ ク 海と繋がる 網走湖は北 海道内では 最大、全国でも有数のワカサギの生産地 で 、年間約200 トン以上が漁獲きれている。網走湖産ワカサギは春に産卵し、

夏には湖に残留す.る群(湖中残留群)゛と降海する群(遡河回遊群)に分岐す る 。遡河回遊 群は晩秋に 湖に回帰し 、湖中残留群ともに湖内で越冬した後、

春 に産卵して 一生を終え る。これま での研究で、卵から稚魚期に至る初期生 活 過程での生 残率は年に よって大き く変動することが明らかにされている。

漁 獲の対象と なるのは主 として遡河 回遊群であり、その漁獲量は年々大きく 変 動するもの の、その資 源変動要因 にっいては充分解明されていない。   ゛    本 研究は、網 走湖産ワカ サギの資源 変動要因およぴ生活史分岐の要因を明 らかにすることを目的とし、本種の初期生態と環境要因との関係に注目して、

以 下 の 各 項 目 に つ い て 調 査 研究 を 実施 し た( 項 目1 〜 3 に つ い ては 1995 〜 1997 年 、 項 目 4 〜 6 は 1994 〜 1997 年 、 項 目 7 は 1998 年 に 調 査 ) 。 1 )仔魚期の湖沼の生息環境

2 )仔魚の湖沼での水平・鉛直分布特性

3 ) 天 然 湖 沼 お よ び 飼 育 下 に お け る 仔 魚 の 成 長 と 摂 餌 特 性 4 )稚魚期の湖沼の生息環境

5 )稚魚の成長と摂餌特性

6 )生活史分岐と環境要因との関係

7 )沿岸域と湖沼における稚魚の成長比較

   そ れ ぞ れ の 項 目 に つ い て 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。 1 )仔 魚 期を 過 ごす 春 季5 〜 6 月の 湖 沼の 物 理環 境 は水 平 的に極 めて一様で あ った 。 微小 動 物プ ラ ンク トンは、水 温が10 〜 15 ℃に 上昇した時 に急激に 増加し 、その衰退 後はカイア シ類が増加した。しかし、調査した1995 〜1997 年の3 年間のう ち、 1996 年のみ 、カイアシ 類の増加は 認められな かった。微

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小動物 プランク トンは汽 水性のKeratella cNciformis(輪虫類)、カイアシ類は汽 水性のSinocalanus tenellusが優占し た。春季の水温、塩分、クロロフアルロ量、

微 小 動 物 プ ラ ン ク ト ン 個 体 数 密 度 は 、3年 間 の 調 査 を 通 し て 統 計 的 に 有 意 な 年変動を示した。

2) 孵 化 直 後 、 卵 黄 嚢 を 持 つ 仔 魚 が 流 入 河 川 近 く に 多 く 分 布 し た が 、 卵 黄 嚢 を 吸 収 し た 仔 魚 の 湖 内 に お け る 水 平 分 布 や 体 長 組 成 の 水平 分 布 には 、 一定 の 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 、 鉛 直 分 布 に は 明 ら か な特 徴 が 認め ら れ、 仔 魚 は 孵 化 直 後 か ら 日 中 は 深 層 、 夜 間 は 表 層 に 分 布 す る 日周 鉛 直 移動 が 観察 さ れ た。 日 周 鉛直 移 動は 光 環 境に 同 調し た 仔 魚の 能 動的 な 行 動で あ る とと もに、

仔 魚 の 消 化 管 内 容 物 個 体 数 は 明 ら か に 夜 間 に 多 く な っ たこ と か ら、 摂 餌活 動 にも関連することが示唆された。

3) 仔 魚 の 摂 餌 個 体 の 出 現 率 は 、 卵 黄 嚢 保 有 個 体 の 出 現 率 の 低 下 と と も に 増 加 し た 。 摂 餌 を 開 始 し た 仔 魚 は 輸 虫 類 を 良 く 摂 餌 し 、 輪虫 類 の 出現 極 大期 と 摂 餌 開 始 時 期 は 一 致 し て い た 。1995年 と1997年 の 調 査 で は 、 摂 餌 開 始 後 、 体 長 約10mmに 成 長 し た 仔 魚 は 、 よ り 大 型 の 餌 生 物 で あ る カ イ ア シ 類 ( 主 に Sinocalanus tenellus)へと主 餌生物を シフトし たが、1996年 の調査では、消化管 内 に カ イ ア シ 類 は 観 察 さ れ ず 、 ま た1996年 級 群 の 生 残 率 は 最 も 低 か っ た 。 飼 育下 で の 仔魚 の 成長 速 度 は0.12mm day‑Iであった 。乾重量 を単位と した仔魚 の日問 成長率は6.8%、日 間摂餌率 は17.7%であ り、総成 長効率は38.1%と推定 さ れた 。 仔 魚の 摂 餌開 始 時 期の 網 走湖 に お ける輪 虫(監cruciformis) の日問生 産速度(45.9mgm゜day )は仔魚の日間摂餌速度(12.Omg m'dayIl)の約4倍であり、

こ の こ と か ら 摂 餌 開 始 時 期 の 仔 魚 は 餌 制 限 に は な い と 判 断 し た 。 4)1994〜1997年 の 稚 魚 期 (7〜9月 ) の 湖 沼 の 生 息 環 境 ( 平 均 水 温 、 平 均 塩 分 、 平 均 ク ロ ロ フ ィ ルd量 、 甲 殻 類 プ ラ ン ク ト ン 平 均 個 体 数 密 度 ) は 、 塩 分を除いて年による有意な相違は認められなかった。

5) 稚 魚 は7〜8月 (1994年 、1995年 、1997年 ) ま た は8〜9月 (1996年 ) に 指 数 関 数 的 に 成 長 し た 。 湿 重 量 を 単 位 と し た 成 長 速 度 は、1994〜1り97年 の4 年間の 各年級群 で、0.043〜0.075day゜であ った。成長 速度と塩 分の問には有意 な 正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ 、 最 も 低 塩 分 の1996年 級 群 で そ の 成 長 速 度 は 最 小 であ っ た 。ま た 、稚 魚 期 移行 前 の甲 殻 類 プラ ン クト ン が 最も 豊 富 だっ た1997 年 級 群 の 成 長 速 度 が 最 大 で あ っ た 。 胃 充 満 度 指 数 倣 、 朝方 に 高 くな る 場合 と 夕 方 に 高 く な る 場 合 の2っ の 傾 向 が 認 め ら た 。 消 化 速 度 は 水温22℃で0.1974 hour^ と推 定 され、 摂餌量( 日中の10時 間)は、 稚魚湿重 量当たり3.0〜6.1%

(平均4.5%)と推定された。

6) 稚 魚 の 降 海 は 、 湖 内 の 稚 魚 個 体 数 が 最 大 と な っ た 直 後 、 あ る い は 餌 生 物

( 甲殻 類 プ ラン クトン) が低密度 の時か、 急激に減 少した時 に発生し、 毎年7〜8 月 に 集 中 し て い た 。 稚 魚1個 体 が 利用 可 能な 餌 生 物(X;101個体 / 稚 魚) と 降     一177−

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海個体数(Y;個体day")との問には、明瞭な負の相関が認められ(Y=1572.6eo…、

F0.996) 、稚魚の降 海個体数、 稚魚の個体 群密度、餌 生物密度の3者は密 接 に関係 しているこ とが示され た。網走湖 の基礎生産量からワカサギ稚魚生産 量までの転送効率は1.2%と推定された。

7)稚 魚 の沿 岸 生活 期 (7〜 10月 )は宗谷 暖流水(塩 分33psu以上 )の影響 下 にあ っ た。 沿 岸水 温 は約15℃と 比較的一 定であった のに対し、 網走湖水 温 は20℃か ら10℃ ま で大 き く変 化 した 。8月 に 沿 岸域 で 採集 さ れた稚 魚の 体長と 体重は、同 時期に湖内 で採集され た個体よりも大きかった。稚魚の主 な餌生 物となるカ イアシ類の 個体数密度 と現存量は、季節的に常に湖の方が 高く推移した。本来、 冷水性であり遡河回遊魚であるワカサギにとって、両 水域で の体サイズ の違いは餌 条件よりも 、沿岸域の一定した低水温と塩分環 境が稚魚の成長にとって有利であったと推測された。

  以上の結果から、網走湖産ワカサギの資源変動要因として、カイアシ類(&

tenellus)の消長が深く関係し、ワカサギ仔魚が最初の餌生物である輪虫から、

カイアシ類(主に&  tenellus)へと餌生物を替える時期に、カイアシ類が豊富 に存在 しているか どうかが、 仔魚の生残 やそれ以降の成長に密接に関わって いるこ とが明らか となった。 また、生活 史分岐の要因は、遡河回遊群の降海 個体数 が、湖中残 留群のワカ サギ個体数 密度、網走湖内の餌生物個体数密度 と密接 に関連していたこ、とから、稚魚1個体が利用できる餌生物の多寡にあ ること が示唆され た。ワカサ ギにとって 、海洋は捕食などのりスクの大きい 生息場 所ではある が、遡河回 遊群は湖中 残留群よりも、より大きな体サイズ となっ て湖内に回 帰する。一 方、湖中残 留群は体サイズは小さいが、リスク の少な い生息場所 を確保し、 翌春の産卵 加入の可能性は、遡河回遊群よりも より高 いと推察さ れる。この ように、網 走湖産ワカサギの生活史分岐は、沿 岸域と 湖沼で、得 られる餌生 物や生息空 間の資源を分割することによって、

ワカサ ギ個体群を 維持する上 で、成長や 繁殖に重要な機能を持っものと解釈 された。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

網走湖産ワカサギ(llyp07nesus 7zipp07ze7zsis) の 初 期 生活に関する生態学的研究

  北海道の重要水産資源のーつであるワカサギは淡水域で産卵し、海洋で成長する遡河 回遊魚である。オホーック海と繋がる網走湖は北海道内では最大、全国でも有数のワカ サギ の生産地 で、年間 約200トン以上が漁獲されている。網走湖産ワカサギは春に産卵 し、夏には湖に残留する群(湖中残留群)と降海する群(遡河回遊群)に分岐する。遡 河回遊群は晩秋に湖に回帰し、湖中残留群ともに湖内で越冬した後、春に流入河川に遡 上して産卵し、一生を終える。漁獲の対象となるのは主として迦河回遊群であり、これ までの研究では卵から稚魚期に至る初期生活過程での生残は年によって大きく変動し、

それによって漁獲量も大きく変動がすることが示唆されている。しかし、その生残に関 わ る 環 境 要 因 に つ い て は 充 分 解 明 さ れ て い な ぃ の が 現 状 で あ る 。   本研 究は、本 種の資源 変動要因 に直接関 与すると思 われる初期生活過程での生残率 と、湖中残留群と遡河回遊群の生活史分岐の環境要因について、網走湖における詳細な 野 外 調 査 資 料 に 基 づ き 考 察 し た も の で 、 そ の 成 果 は 以 下 の よ う に 要約 さ れ る。

  孵化した個体は5〜6月に仔魚期に達したが、彼らの主要な餌料である微小動物ブラン クトンは水温が10〜15℃に上昇した時に急激に増加し、その衰退後はカイアシ類が増加 した 。しかし 、調査し た1995〜1997年の3年間のうち、1996年のみカイアシ類の増加は 認められなかった。微小動物ブランクトンは汽水性のKeratella cruciformむ(輪虫類)、

カイアシ類は汽水性のSinocalanus tenピllusが優占した。仔魚の摂餌個体の出現率は、卵     ‑ 179―

勉 憲

   

   

泰 直

田 井

池 桜

授 授

   

   

教 教

査 査

主 副

(5)

黄嚢保有個体の出現率の低下とともに増加した。摂餌を開始した仔魚は輪虫類(主に

K. cruciformis)を良く摂餌し、輪虫類の出現極大期と摂餌開始時期は一致していた。1995 年と1997年の調査では、摂餌開始後、体長約10mmに成長した仔魚は、より大型の餌生物 であるカイアシ類(主にSinocalaれus tenellus)へと主餌生物をシフトしたが、1996年の調 査では、消化管内にカイアシ類|よ観察されなかった。さらに、1996年級群の初期生残は他 の2ケ年よりも著しく劣るものだった。これらの結果から、網走湖産ワカサギの資源変動要 因として、カイアシ類(主にS. tenellus)の消長が深く関与し、ワカサギ仔魚が最初の餌生 物である輪虫から、カイアシ類へと餌生物を替える時期に、カイアシ類が豊富に存在して い る か ど う か が 、 仔 魚 の 生 残 と 密 接 に 関 わ っ て い る こ と を 明 ら か に し た 。   仔魚は稚魚へと発育し、稚魚は7〜8月(1994年、1995年、1997年)または8〜9月(1996 年)に指数関数的に成長した。稚魚の成長速度は塩分と密接に関係することを見出し、最 も低塩分であった1996年級群の成長速度が最も遅いことを明らかにした。また、稚魚の日 間摂餌量を、体重(湿重量)当たり約4.5%と見積もった。さらに、稚魚1個体が利用可能 な餌生物密度と降海個体数との問に明瞭な負の相関を認め、稚魚の降海個体数、湖中での 稚魚の個体数密度、餌生物密度の3者は密接に関係していることを明らかにした。これま で、生活史分岐には餌条件が強く関与している可能性が予想されていたものの、実際に餌 条件と生活史分岐との関係を解析したのは本研究が最初である。最後に、生活史分岐の利 点として、遡河回遊群は捕食リスクの大きい沿岸域を生息場所とするがより大きな体サイ ズで湖内に回帰すること、湖中残留群の体サイズは小さいが捕食リスクの少なぃ生息場所 を確保し、産卵加入の可能性を高めることが考えられ、両生活史の存在が網走湖産ワカサ ギ の 個 体 群維 持 に と っ て 極 め て 重 要 な 役 割 を果 たし てい るで あろ うと 結ん でい る。

  上記の内容は、有用水産資源の資源変動機構に係わる資源生態学的現象を長期にわたる 詳細な野外調査資料から解析し、その成果は当該水産資源の持続的有効利用の策定に大き く貢献するものとして高く評価できる。よって審査員一同は本論文が博士(水産科学)の 学位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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