博 士 ( 農 学 ) ト ー ト ・ ラ ス ロ
学位論文題名
Studies on potato scab pathogenic Streウ め 勿 砂C¢SSpeCieS
(ジャガイモそうか病を引き起こすストレプトミセス属放線菌に関する研究)
学位論文内容の要旨
ジャガイモそうか病菌StreIJtom3icessそal)ies、S.acidisc(1niPSおよびサツマイモ立 枯 病菌S.iD0moedeが生 産すゐ 植物 毒素 (サ クストミン,Tl】aXfomin)については、過去 10年間 に大 きな 研究 の進 展が あっ た。 けク スト ミシ は、ジ ケト ーピ ベラ ジン構造を含む4
― 二 卜 口 イ ン ド ー ル 化 合 物 の 総 称 で 、 そ の 主 要な もの がAで 、宿 主に 非特 異的 な毒 素反 応 を示 す。 また 、未 成熟 のジ ャガ イモ 塊茎 の他、異なる植物の組織に壊死を引き起こす。
1970年 代 以 降 、 そ うか 病は ジャ ガイ モ栽培 の障 害と なっ てき た。S.scabiesは 主要 なそ う か病 菌と 考え られ てき たが 、最 近新 しい そうか病菌が高い頻度で北海道に見出されるよ う に な っ て き た 。 こ の 新 し い そ う か 病 菌 はS.turgidiSCabieSと 命名 され 、ジ ャガ イモ 塊 茎に 典型 的な そうか症状を弓1き起こす他、他の作物にも病原性を有している。この病原 菌 にお ける ーつ の大 きな 疑問 は、 この 菌に よるジャガイモのそうか症状がやはり毒素サク ス トミ ンに よっ て引 き起 こさ れて いる かど うかという点であった。本研究では最初に毒素 の解明を行なった。
1.StreptomyCeSturgidiSCabieSの生産する植物毒素
ジャ ガイ モ塊 茎ス ライ スお よび オー 卜ミ ール液体培地でS.tl.lrgidiScabieS91SY―10 C株を 培養 し、 そう か症 状を誘 導す る毒 素の 分離 を試 みた 。薄 層ク 口マ 卜グラフイーで分 離 さ れ た 物 質 を 高 分 解 能 マ ス ス ペ ク 卜 ル お よ びNMRスペ クト ルで 分析 した 結果 、こ の物 質 が サ ク ス 卜 ミ ンAであ るこ とを 確認 した 。こ の菌 株由 来の サク ストミ シAを単 独で ジャ ガ イモ マイ ク口 チュ ーバ ーに 処理 した とこ ろ、菌の胞子懸濁液を接種した場合と同様の壊 死 病 斑 が 形 成 さ れ た 。S.turgidiscabies|5菌株 を用 いて サク ストミ ンA生産 量の 調査 を 行 っ た と こ ろ 、S.turgidiSCabiesの サ ク ス卜 ミ シA生 産 量 は ほ と ん ど の場 合 でS. scabiesを 上 回 り 、 薗 株 の 病原 性 の 強 さ と サ ク ス 卜 ミ ンA生 産 量 と は 正 の 相 関 を示 すこ と が確 認さ れた 。本 研究 結果 は、S.t‖rgi(IiscabiesがS.scabiesと同様にサクストミ ンAによって病原性が支配されているという最初の報告である。
2・ 土 壌 水 分 条 件 と ジ ャ ガ イ モ 塊 茎 表 面 に 優 占 す る ス ト レ プ 卜 ミ セ ス 属 菌 ―979―
そうか病の発病においては、土壌の水分条件が大きな影響を与えるこどが知られている
(水分量少→発病多発)。本研究では、水分条件の違いによるジャガイモ塊茎上の優占菌 種の違い、塊茎表面の違いに着目し、この現象の機作を明らかにすることを試みた。北海 道大学農場において3年間にわたり、水分条件の異なる土壌中のジャガイモ塊茎表面の放 線菌密度を調査した。その結果、乾燥した(pF〉2.6)土壌の塊茎表面では全放線菌密度が 湿潤土壌の100倍以上であることが明らかとなった。乾燥土壌では通常のそうか病の発 病は少なく、netted scabと呼ぱれる塊茎表面に軽い網目状の病斑型が観察された。これ らの塊茎表面からは単一種と思われる放線菌が高頻度で分離された。72菌株を用いて51 項目の表現型・細菌学的性質を調査レたところ、これらの菌株はこれまで北海道では発 見さ れて いな かったS. acidiscabiesにほぽ一致した。さらに、これらの菌株がS. acidiscabiesに特徴的で同定の指標に用いられているナフトキノン誘導体色素を生産し ていることが高分解能マススペクトルによって確認された。また菌種に特徴的な16Sリ ポソームRNA PCR増幅産物のサイズがS.acidiscabiesと一致したことにより、これら の菌株を最終的にS. acidiscabiesと同定した。アメリカにおけるS.acidiscabiesは そうか病斑からも分離されており、サクストミシAを生産することが報告されているが、
今回分離したすべてのS, acidiscabies菌株はサクス卜ミンAを生産せず、接種試験に おいても典型的なそうか病斑を形成しないことが確認された。また、これらの菌は培地上 でS. scabiesに 拮 抗 作 用 を 示 し 、 そ の生 育 を 抑 制 す る こ と が 明 ら かと な っ た 。 以上の結果より、圃場の水分量が塊茎表面に優占する菌種に影響する事、さらにサク ス卜ミンAの生産がそうか病斑の形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった サクス卜ミンAを生産するSt reptomyces属放線菌(S. scabie.s、S.acidiscabies、S. turgidiscabies)はそうか病を引き起こし、生産しない菌種はわずかに塊茎表面の変化(
net ted)を引き起こすに過ぎなかった。サクストミンAの生産が分類的に類縁性のない菌 種にわたっていることから、これらの菌種が独立にその病原性を獲得したのか、あるいは 何らかの移動因子によって水平伝搬されたのかは現時点では明らかではないが、将来検討 すべき興味深い課題であると考えられた。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
Studies on potato scab pathogenic Streウ め ガ ッC¢SSpeCieS
(ジャガイモそうか病を引き起こすストレプトミセス属放線菌に関する研究)
本 論 文 は 、 図22、 表2を 含 む 総 頁 数118の 英 文 論 文 で あ り 、tLUに 参 考 論 文3編 が 添 えられている。
1970年f℃以 降、 そう か病 はジ ャガ イモ 栽培の 障害 とな ってきた。S.sc.abiesは主要な そう か病 菌と 考えら れて きた が、 最近 新し いそ うか 病菌 が高い頻度で北海道に見出さ抑る よ う に なっ て き た 。 こ の 新 し いそ うか 病菌 はS.turgicliscabiesと 命名 され 、ジ ャガ イ モ塊茎に典型的なそうか症状を弓1き起こすf也、他の作物にも病原性を有している。この病 原菌 にお ける ーつの 大き な疑 問は 、こ の菌 によ るジ ャガ イモのそうか症状がやはり毒素サ クス トミ ンに よって 弓1き起 こされているかどうかという点であった。本研究では最初に毒 素の解明を行なった。
1. Streptomyces turgi(liSCabieSの生産する植物毒素
ジャガイモ塊茎スライスおよびオー卜ミール液体培地でS.tullgi(IiscabiesりlSY−1()
C株を 培養 し、 そう か症 状を 誘導 する 毒素 の分離 を試 みた 。薄 層ク 口マ トグ ラフ イー で分 離 さ れ た物 質 を 高 分 解 能 マ ス ス ベ ク 卜 ル お よ びNMRス ベ ク 卜ル で分 析し た結 果、 この 物 質 が サ クス ト ミ ンAで あ る こと を確 認し た。 この 菌株 由来 のサ クス 卜ミ ンAを 単独 でジ ャ ガイ モマ イク 口チュ ーバ ーに 処理 した とこ ろ、 菌の 胞子 懸濁液を接種した場合と同様の壊 死病 斑が 形成 された 。S.turgidiscabiヒ ヽS35菌株 を用 いて サク ス卜 ミンA生産 量の 調査 を 行 っ たと こ ろ 、S.tLlrgi(1iSCabieSの サクス 卜ミ ンA生産 量は ほと んどの 場合 でS. scabieSを 上 回 り 、 菌 株 の 病 原 性 の 強 さ と サ ク ス トミ ンA生 産 量 と は 正 の 相 関 を示 す こ とが確認された。本研究結果は、S.turgi(liscal)iesがS.scal亅iesと同様にサクス卜ミ ンAによって病原性が支配されているという最初の報告である。
2. 土 壌 水 分 条 件 と ジ ャ ガ イ モ 塊 茎 表 面 に 優 占 す る ス ト レ プ 卜 ミ セ ス 属 舗 ―9811
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そ うか 病 の 発病 に お し丶 て は 、土 壌 の 水 分゛ 条 件 が大 き な 影響 を 与 える ことが 知らオIている
(・′K分量少→発病多発)。: 4彫『究では、水 ・)゛条P仁の違いによるジャガイモ塊茎上の優占菌 鍾 の 違 い 、 塊 茎 表 而 の 違 い に 着 目 し 、 こ の 現 象 の 機 作 を 明 ら か に す る こ と を 試 み た 。 北tf4 道 大 学 農 場 に お い て3年 間 に わ た り 、 水 分 条 件 の 異 な る 土 壌 中 の ジ ャ ヲ ´ イ モ 塊 茎 表 面 の 放 線 薗 密 度 を 調 査 し た 。 そ の 結 果 、 乾 燥 し た (pF〉Z.6) 土 壌 の 塊 茎表 面 で は全 放 線 菌密 度 が 湿 潤 土 壌 のl00倍 以 上 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 乾 燥 土 壌 で は 通 常 の そ う か 病 の 発 病 は 少 なく 、ietIecl sc:al)と 呼 ば れる 塊 茎表 面に軽い 網目状 の病斑型 が観察 された。 こォ′t ら の 塊 茎 表 面 か ら は 単 一 種 と 思 わ れ る 放 線 菌 が 高 頻 度 で 分 離 され た 。7 2薗 株を 用 し ゝて5t 項 目 の 表 現 型 ・ 細 菌 学 的 性 質 を 調 査 し た と こ ろ 、 こ ォLら の 菌 株 は こ れ ま で 北 瓶 道 で は 発 見 さ れ て い な か っ たS. aci(liscabiea,に ほ ぼ 一 致 し た 。 さ ら に 、 こ れ ら の 菌 株 がS. (1Ci(liscal)iesに 特 徴 的 で 同 定 の 指 標 に 用 い ら れ て い る ナ フ 卜キ ノ シ 誘導 体 色 素を 生 産 し て い る こ と が 高 分 解 能 マ ス ス ペ ク 卜 ル に よ っ て 確 認 さ れ た 。 ま た 菌 種 に 特 徴 的 なl(iSリ ポ ソ ー ムRNAI)CR増 幅 産 物 の サ イ ズ がS.acicliscabiesと 一 致 し た こ と に よ り 、 こ れ ら の 菌 株 を 最 終 的 にS. acidi‑scabiesと 同 定 し た 。 ア メ リ カ に お け るS.aci(liscabiesは そ う か 病 斑 か ら も 分 離 さ れ て お り 、 サ ク ス 卜 ミ ンAを 生 産 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 今 回 分 離 し た す べ て のS. acidiscabies菌 株 は サ ク ス 卜 ミ ンAを 生 産 せ ず 、 接 種 試 験 に お い て も 典 型 的 な そ う か 病 斑 を 形 成 し な い こ と が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 こ れ ら の 菌 は 培 地 上 で S. sc.abiesに 拮 抗 作 用 を 示 し 、 そ の 生 育 を 抑 制 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 以 上 の 結 果 よ り 、 圃 場 の 水 分 量 が 塊 茎 表 面 に 優 占 す る 菌 種 に 影 響 す る 事 、 さ ら に → ′ ク ス ト ミ ンAの 生 産 が そ う か 病 斑 の 形 成 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か に な っ た サ ク ス ト ミ ンAを 生 産 す るSt reptomyces属 放 線 菌(S. scal)ies、S.aci(liscabies、S. t.iirgi(Iisca|)ies)Iユそう か病を弓Iき起こし、生産しない菌種はわずかに塊茎表而の変fヒ(
nette(l) を 引 き 起 こ す に 過 ぎ な か っ た 。 サ ク ス 卜 ミ ンAの 生 産 が 分 類 的 に 類 縁 性 の な い 菌 億 に わ た っ て い る こ と か ら 、 こ 十tら の 菌 種 が 独 立 に そ の 病 原 性 を 獲 得 し た の か 、 あ る い は f可 ら かの 移 剄J因 子 に よっ て 水 平伝 搬 さ れた の か は 現時 点 で |ま 明 ら かで は な いが 、 将 来儉 討 すべき興味深い課題であると考えられた。
以 上の 様 に 、本 論 文 はジ ャ ガ イモ そ う か病 菌S.t‖rgidiscahiesとS.acifJiscal)iesの 病 原 性 因 子 と し て の 毒 素 の 役 割 を 明 ら か に し た 。 こ の 成 果 は 学 術 的 ・ 実 用 的 に 高 く 評 価 さ れ る 。 よ っ て 審 査 員 一 同 は 、 卜 … ト ・ ラ ス 口 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受I寸 る に 十 分 な 資 格 を 有するものと認めた。