博 士 ( 歯 学 ) 衣 斐 美 歩 学位 論文題 名
Establishment of cell lines that exhibit pluripotency ●
from miniature swlneperiodonta11igamentS
( ミニ ブ夕 歯根 膜か ら採 取し た多 分化能カをもつ細胞株の樹立)
学位論文内容の要旨
【 緒言 】歯 根膜は 顎骨 と歯 根と の間 に存 在す る線 維性の結合組織であり,歯の 顎 骨内 への 保持の ほか に歯 周組 織へ の栄 養補 給や 恒常性の維持,また咬合カの 緩 衝と して 重要な 役割 を果 たし てい る. 歯根 膜組 織中には線維芽細胞様細胞,
セ メン ト芽 細胞, 骨芽 細胞 のほ かに ,上 皮細 胞( マラッセの上皮遺残)や血管 を構成する細胞(血管内皮細胞,血管平滑筋細胞及び周皮細胞)などさまざまな種 類 の細 胞が 存在し てい る. 一方 ,歯 根膜 には 歯小 嚢由来のいわゆる未分化間葉 系 細胞 もし くは前 駆細 胞と よば れる 細胞 が存 在し ていると考えられている.し か し, この いわゆ る未 分化 間葉 系細 胞も しく は前 駆細胞の細胞分化の運命づけ に 関す る詳 細につ いて は, 未だ 明ら かで はな い. そこで、本研究ではクラウン 系 医 用 ミ ニ ブ タ 歯 根 膜 か ら 採 取し た歯 根膜 由来 細胞 にヒ トTERT 遺 伝子発 現プ ラスミドを導入し歯根膜組織の特性を反映したクローン化した細胞株を樹立し,
こ れ ら の 細 胞 株 を 用 い て 多 分 化 能 カ を 調 べ る こ と を 目 的 と し た .
【 材料 と方 法】 雄280 月齢 のク ラウ ン系 医用 ミニ ブタ (ジ ャパ ンフ ァーム ,鹿 児 島) の下 顎より 前臼 歯を 抜去 し,
Somennanらの 方法に準じ,歯根中央部周囲 に 付着 した 歯根膜 組織 を剥 離し ,10 %ウ シ胎 仔血 清および1 ng /m1 ヒト組換え
nbroblaStgrowthfactor(FGF ) ̄2 を含むMEM 培地で37 ℃,5 %C02 存在下にて培養を 行 い, 分離 増殖し た細 胞を 歯根 膜由 来細 胞と した .分離増殖した歯根膜由来細 胞 を3 回 継代 後,
I型コ ラーゲンコートしたディッシュに細胞をlX106 個/dish で 播 種し ,コ ンフル エン トに 近い 状態 にな った とこ ろでヒトTEIH 発現プラスミド
(
pCIー
neohlERT)を りン酸カルシウム法によルトランスフェクトした.トラン
ス フェ クト
1週間 後, アミ ノグ リコ シド 系抗 生物 質で ある
G418によ ルトラ ンス
フ ェク タン トの選 別を 行っ た.
10日 後,
G418耐性 クローン細胞がコンフルエン
ト に近 い状 態にな った とこ ろで ,限 界希 釈法 を用 いて細胞のクローニングを行
った.得られた細胞株をTeSPDL (TelomeraseS 蜥nePeriodontalLigament )と名付
け,うち4 種類の細胞株(TesPDL1 ‐4 )にっいてI 型コラーゲンコートしたディッ
シ ュ に て 細 胞 を 培 養 し 位 相 差 顕 微 鏡 に よ り 細 胞 の 形 態 , reverse transcriptase‑polymerase chain reaction法によるmRNA発現,ALP活性染色及ぴフオ ンコッサ染色を行った.細胞のテロメラーゼ活性はTeloChaserを用いた方法で測 定し た, 細胞 培養 の条 件を 変えTeSPDL‑3及びTesPDL‑4細胞を,石灰化誘導培地 (50 yg/mlア スコ ルビ ン酸 ,10 mMp.glyCerophosphate,5uMデキサメサゾンを 添加 )に て21日問 培養 した .ま た,T・eSPDL・3は ,10n如1もしくは20n如1の FGF ̄2存 在下 で2日間 培養 を行っ た.vWF抗体 を用 い細 胞を染 色しvWFの発現を 調べた.
【結 果】TeSPDL14細胞 の形 態を 観察したところ,すべての細胞が線維芽細胞様 の形 態を示し,TeSPDL1‐3細胞は紡錘形で細長いのに対し,TeSPDL4細胞は星型 に近いような形態をしていた.各TeSPDL細胞は,テロメラーゼ活性が認められ,
Runx2,ペリオスチン,a1(I)コラーゲン,オステオポンチンならびにsmoothmuscle a‐actinのmRNAを 発現 して いた .また,各TeSPDL細胞は,いずれもアルカリフ オス ファ ター ゼ活 性染 色で 陽性 となったが,各細胞間でその程度に違いが見ら れ,TeSPDL4細胞 では 他の3種類 と比 較し て活 性が 低か った.TesPDL3細胞なら びにTeSPDL4細胞 を, 石灰 化誘導 培地にて培養を行ったところ,TesPDL3細胞で は, フエ ンコ ッサ 染色 にて 陽性 の石 灰化 塊の 形成 が見 られた .他方,TeSPDL4 細胞 では フオ ンコ ッサ 染色 にて 陽性 では なか った .TesPDLー3細胞を,10n伽1 のFGF‐2存 在 下 で2日 間培 養し たと ころ ,CD31,VE−cadherin及ぴvWFmRNAの 発 現 が 増 加 し た . ま た ,vWF抗 体 に て 陽 性 に 染色 され た細 胞が 観察 され た・
【 考 察 】 調 べ た4種 類 のTeSPDL細 胞 は , 細 胞 の 形 態 及 びRunX2, ペ リ オ ス チ ン,a1(I)コラーゲン,オステオポンチンならびにsm0( thmusclea.actinのmRNA を発 現し てい たこ とか ら, 歯根 膜の線維芽細胞様の性質を有していることが考 えら れた.TesPDL3細胞は,石灰化誘導培地によって石灰化物の形成が認められ たこ とか ら, 骨芽 細胞 もし くは セメント芽細胞に分化しうる可能性が考えられ た.TesPDL4細胞は,この石灰化物形成を起こさなかったことから,細胞株間に よ る 分 化 の 方 向 付 け が 異 な っ て い る こ と が 考 え ら れ た .TesPDL3細 胞 は , CD31,VE−cadherin及びvVVF因子の発現が見られたことから,血管内皮細胞ヘ分化 しうる可能性が考えられた.
【結論】ミニブタ歯根膜由来の線維芽細胞様TeSPDL.3細胞は,培養条件下でそ の培 養条 件に よっ て骨 芽細 胞( もしくはセメント芽細胞)及び血管内皮細胞に 分化 しう るこ とが 示唆 され た. 本研究より,歯根膜組織中に,骨芽細胞(もし くは セメ ント 芽細 胞) およ び血 管内皮細胞に分化しうる線維芽細胞様の前駆細 胞が存在する可能性が示唆された.
学位論文審査の要旨
学位論文題名
Establishment of cell lines that exhibit pluripotency from mlniature swlneperiodonta11igamentS (ミニブ夕歯根膜から採取した多分化能カをもつ細胞株の樹立)
審査は、主査、 副査が一堂に会し、論文提出者が論文内容の要旨を説明 しながら、その内容 に っい て審 査担 当者 が口 頭試 問 を行 った 。以下に提出論文の要旨と審査の内容を述べる。
論 文 要 旨
歯根膜は顎骨と歯根とのあいだに存荏する線維 陸の結合組織であり、歯の顎骨内への保持の ほかに歯周組織への栄養補給や恒常陸の維持、ま た咬合カの緩衝として重要な役割を果たして いる。歯根膜中にfま線維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞など多数種の細胞群が混在している。
一方、歯根膜には重要な細胞成分として、歯小嚢由来の未分化間葉系細胞または前駆細胞とよば れる細胞が存在している。しかし、これらの細胞が歯根膜中の各細胞の共通の前駆細胞であるの か、それともそれぞれの細胞に分化することを運命づけられた前駆細胞が存荏して、それぞれの 成熟した細胞に分化していくのかはいまだ明らかになっていない。そこで、本研究ではクラウン系 医 用 ミ ニ ブ タ 歯 根 膜 から 採取 した 歯 根膜 由来 細胞 にヒ トTERT遺fn子 発現 プラ スミ ド(pCI‑
neohTERT)を導入し、 樹立された細胞株を用いてこれらの細胞の多分化能カとその分子メカニズ ムを明らかにすることを目的とした。
hTERTを 導入しクローン化されたミニブタ歯根膜由来線維芽細胞 様細胞4種(TesPDLl−4)を 用いて、これらの細胞株の各種遺伝子発現等の特 徴を調べた。いずれの細胞株も線維芽細胞様 の形態をしており、歯根膜関連遺伝子であるRunx2、ベリオスチン、I型コラーゲン、オステオポンチ ンならびにSmoothmuscle釘act血rnRNAの発現やア ルカリフォスファターゼ漕陸が認められた。
次に、TesPDL3細胞が 多分化能カをもっかどうかにっいて検討した。TesPDL3細胞は石灰化誘導 培地にて培養すると骨芽細胞あるいはセメント芽細胞様に細胞問基質石灰化能カをもつことがわ かった。また、TesPDL3細胞は血管内皮細胞マーカーであるCD31,VE―cadhe血及ぴ1^^乍因子を 発現しており、それらの発現はFGF−2存荏下によって促進された。
以上の結果より、歯根膜中には多分化能カをもつ細胞が存在すること、またこれらの細胞が血管 構成細胞の起源となる可能性が示唆された。
郎 人
明
敦 正
邦
山 村
木
横 田
鈴
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
審査の内容
1.歯根中央部から歯根膜組織を剥離する理 由にっいて
歯 根膜 組織 を採 取す る際 、 根尖 部付近では歯髄細織の細胞が、また歯頚 部付近では歯 肉組織の細胞が混在する可肓旨陸があるため、より1蝌艮膜細織のみを採取するため歯根中 央部とした。
2. 樹 立 し た ミ ニ ブ タ 歯 根 膜 由 来 細 胞 株CIbSPDL cells)の ´ 陸 質 に っ い て ◎typeI collagenを コ ー ト し て い な い 培 養dishで 培 養 し た 場 合 に つ い て ◎ 各細 胞株 によ る増 殖時 の変 化に つい て
RSPDLl‑3細 胞 に 関 し て は 、dish底 面 に 接 着 す る が 、RSPDL4細 胞 で はdish底 面 に接 着す るこ とも でき ず、 全く 生育 でき なか った 。ま たTeSPDL3細胞は長期培養する とpde upし て く る が 、IbSPDL4細胞 では まっ たく みら れな かっ た。 これ らの 結果 か らTeSPDL4細 胞 は 他 の 細 胞 と は 異 な っ た 性 質 を も つ こ と が 推 測 さ れ た 。
3.FGF‑2を最初から添ルロして培養細胞を採取 した理由について
FGF‑2をJロえて培養すると細胞がout growthしやすいことから本研究では添ルロした。
もし 、こ の段 階でFGF‑2を添冊せずに細胞を単離した 場合でfまI生質が異なった細胞株 が単離された可能陸も考えられた。
4. 増 殖 中 のTeSPDL3細 胞 の オ ス テ オ ポ ン チ ン のmRNAの 発 現 の 低 下 に っ い て TeSPDL3細 胞 に お い て 、 オ ス テ オ ポ ン チ ン のmRNAの 発 現 が 他 の 細 胞 と 比 べ て 低 いが 発現 は認 めら れた 。こ の細胞を石灰化誘導培地で培養すると石灰化 塊を形成し、
mRNAレ ベ ル で も 明 ら か に 発 現 が 増 加 す る こ と か ら 、RSPDL3細 胞 が 骨 芽 細 胞 あ る レ ヽ は セ メ ン ト 芽 細 ロ 包 様 に 分 化 し う る と し ヽ う こ と が 推 測 さ れ た 。
5. 歯根膜細胞の前馬区糸口月包の存在について
本 研究 の結 果よ り歯 根膜 中に は多分化能をも つ前駆細胞が存在することが示された。
ま た一 方で は個 々の 細胞 に運 命づけられた前 駆細胞が存在しているのではという報告 もされている。従ってもし かするとどちらか一方だけというわけではなく、両方の前駆 細 胞 (多 分化 能カ を有 する 前駆 細胞とそれぞれ の細胞に分化することを運命づけられた 前駆細胞)が存荏している可 育旨陸も考えられた。
本研究は、歯根膜由来ネ田月包には多分イ匕胄旨力(骨芽孫ロ胞もしくはセメント芽細脆汲ぴミ血 管 構 成 細 胞 へ の 分 化 ) を も つ 細 胞 が 存 在 する こ と を 示し た 。 こ れは 歯 科 臨 床で あ る 歯 周 病 や イ ン プ ラ ン ト 治 療 に お い て 歯 根 膜 再 生の 可 き 旨 陸と し て 大 変有 意 義 な 研究 で あ る と 評 価 で き る 。 よ っ て 学 位 申 請 者 は 博 士 ( 歯学 ) の 学 位授 与 に ふ さわ し い も のと 認 め た 。
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