博 士 ( 理 学 ) 杉 野 寛 佳
学 位 論 文 題 名
Structural Effects for Synthesis and Mobility‑control of Imine‑bridged Rotaxanes and Exploration toward Multi‑interlocked Systems
( イ ミ ン 架 橋 型 ロ タ キ サ ン の 構 築 と 運 動 性 制 御 に 対 す る 構 造 の 影 響
お よ び 多 重 イ ン タ ー ロ ッ ク シ ス テ ム へ の 展 開 )
学位論文内容の要旨
ロタキサン分子は、軸分子が環状分子に貫通し、軸末端の嵩高い置 換基により個々の成分への分離が妨げられた構造を持つ。その中で、
環の回転やシャトリングなどの運動性を外部刺激により制御可能な ロタキサンは、分子デバイスや分子マシンなどへの展開が期待されて いる。ロタキサンの構築のための軸・環の集合テンプレー卜には水素 結合などの非共有結合性相互作用が用いられてきたが、その構造の組 み合わせは極めて限られたものしかなく、汎用性に欠けている。一方、
形成・切断が可能 なイミン結合を集合テンプレートに用いたロタキサン構築法では、共有結 合による仮止めの 効果により、軸・環構造がミスマッチな場合でも貫通構造を構築できると 考えられてきた。 また、貫通構造を安定な化合物として単離できるため、多様な構造修飾が 可能であると考え られる。この観点から本研究では、イミン結合を利用したロタキサン構築 法の汎用性の調査 を行い、その結果をもとにより複雑な構造を持つ多重インターロック化合 物 の 構 築 へ と 研 究 を 展 開 し た 。 本 論 文 は 以 下 の 四 章 で 構 成 さ れ て い る 。
第一章では、軸 ・環分子の構造やエンドキャップの側鎖の構造を変化させたイミン架橋型 ロタキサンを構築 し、次いでイミン結合の加水分解・温度変化による環の挙動を調査するこ とで、イミン結合 を利用したロタキサン分子構築法に対する各構造の与える影響の調査を行 った(スキーム1 )。軸分子
1と環分子2 をトリフルオロ酢酸を酸触媒とするベンゼン還流脱 水条件に付すこと により、イミン架橋型擬ロタキサン3 を得た。先行する研究で用いられて いた軸分子1A と比 較してより嵩高い軸分子1B を用いた場合や側鎖を変えた環(2a ,b ,e )を 用いた場合でも、 イミン架橋体3 が合成可能なことが明らかになった。また、環上置換基の 電子的効果がイミ ン結合形成の容易さに影響を与えることも明らかとなり、電子供与性置換 基がイミン結合形 成を促進させることも明らかになった。一方、イミン結合の加水分解によ る[2] ロタキサン形成においては、軸中央部を嵩高くすることで、平衡を鬪ロタキサン側ヘ大 きく偏らせること に成功した。さらに軸上にトリエチレングリコールエーテル(TEG) .を導 入した場合、加水分解条件下で[2 】ロタキサンが優先して生成するが、その優先性には環上置
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換 基 の 影 響 が 少 な ぃ 一 方 で 、 環 構 造 の 柔 軟 性 が 大 き く 影 響 す る こ と も 明 ら か に な っ た 。 以 上 よ り 効 率 的 な[2]ロ タ キ サ ン 形 成 に は イ ミ ン 結 合 切 断 の 際 の エ ン ト ロ ピ ー 増 が 、 イ ミ ン 架 橋 体 と[2]ロ タ キ サ ン 間 の 効 率 的 な ス イ ッ チ ン グ に は 多 点 水 素 結 合 形 成 が 必 要 な こ と を 明 ら か に し た 。
[5Aaa.TEG.2Hl2+
[6Bb̲XYL.2H]2+ H+, HtGH T
第 二 章 で は 、 イ ミ ン 結 合 に よ り 環 状 分 子 内 に 連 結 さ れ た シ ク ロ ヘ キ サ ン 部 の 回 転 挙 動 に つ い て 調 査 を 行 っ た 。 シ ク ロ ヘ キ サ ン 部 に 小 さ な メ チ ル エ ス テ ル 基 を 導 入 し た イ ミ ン 体 で は 、 シ ク ロ ヘ キ サ ン 部 は 高 速 で 回 転 し て お り 、 ジ ャ イ ロ ス コ ー プ 型 の 回 転 挙 動 が 明 ら か と な っ た 。 一 方 、 よ り 大 き な ビ フ ェ ニ ル メ チ ル 基 を 導 入 し た 場 合 、 シ ク ロ ヘ キ サ ン 部 の 回 転 が ブ ロ ッ ク さ れ 、syn'お よ び antr異 性 体 を 安 定 な 化 合 物 と し て 単 離 す る こ と に 成 功 し た ( ス キ ー ム2) 。
◎ → ◎
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syn‑lsomer第 三 章 で は 、 複 数 の イ ミ ン 架 橋 型 擬 ロ タ キ サ ン の 軸 部 をTEG部 位 に よ り 連 結 し た 主 鎖 型 [n] ロ タ キ サ ン の 構 築 と イ ミ ン 結 合 の 切 断 ・ 温 度 変 化 に よ る 環 の 運 動 挙 動 の 調 査 を 行 っ た ( ス キ ー ム3) 。 イ ミ ン 架 橋 ユ ニ ッ ト が 多 く な る に 従 い 、 環 が ト リ エ チ レ ン グ リ コ ー ル 上 に 取 り 残 さ れ た 準 安 定 状 態 が 現 れ 、 こ の 状 態 を 含 め た3状 態 間 の ス イ ッ チ ン グ が 可 能 と な っ た 。 Scheme3
ShutmW Find
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第 四 章 で は 、 上 記 の 結 果 を 利 用 し 、 軸 末 端 の 一 方 にTEG部 位 を 持 つ エ ン ド キ ャ ッ プ を 導 入 し た イ ミ ン 架 橋 型 擬 ロ タ キ サ ン の 軸 末 端 と 環 部 を 連 結 す る こ と で 環 状 デ イ ジ ー チ ェ ー ン の 構 築 を 行 い ( ス キ ー ム4) 、 そ れ ら の イ ミ ン 結 合 の 切 断 と 温 度 変 化 に よ る ス イ ッ チ ン グ 挙 動 の 調 査 を 行 っ た 。
擬 ロ タ キ サ ン2分 子 に よ り 構 築 さ れ る 【c2lデ イ ジ ー チ ェ ー ン 構 造 で は 、 酸 性 加 水 分 解 条 件 下 、 温 度 変 化 の み に よ る イ ミ ン 架 橋 型 と 水 素 結 合 型 の 間 で の ス イ ッ チ ン グ 挙 動 が 明 ら か と な っ た
( ス キ ー ム5) 。 こ れ は 、 [ 厖 】 デ イ ジ ー チ ェ ー ン では 、 酸 性 条 件 の適 用 と 温 度 変化 に よ り 筋 肉型 伸 縮 挙 動 の 制 御 が 可 能 な こ と を 示 し て い る 。
Scheme5
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以 上 、 申 請 者 は イ ミ ン 結 合 を 利 用 し た ロ タ キ サ ン 構 築 法 の 汎 用 性 を 調 査 し 、 様 々 な 構 造 の 口 タ キ サ ン が 同 手 法 に よ り 構 築 可 能 で あ り 、 軸 中 央 部 や 側 鎖 ・ 環 の 構 造 が ス レ ッ デ ィ ン グ や 加 水 分 解 挙 動 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に し た 。 ま た 、 イ ミ ン 結 合 を 利 用 し た ジ ャ イ ロ ス コ ー プ 型 分 子 の 構 築 に も 成 功 し た 。 さ ら に 、 複 数 の イ ミ ン 架 橋 ユ ニ ッ ト を 軸 部 で 連 結 し た 主 鎖 型[n]
ロ タ キ サ ン や 軸 ・ 環 で 連 結 し た [ 彪 ] デ イ ジ ー チ ェ ー ン を 構 築 し 、 そ れら を 加 水 分 解 挙動 す る こ と で 、 複 数 の 環 の 位 置 の 制 御 や 分 子 長 が 変 化 す る 分 子 筋 肉 型 伸 縮 挙 動 の 制 御 に も 成 功 し た 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Structural Effects for Synthesis and Mobility‑control of Imine‑bridged Rotaxanes and Exploration toward Multi‑interlocked Systems
( イ ミ ン 架 橋 型 ロ タ キ サ ン の 構 築 と 運 動 性 制 御 に 対 す る 構 造 の 影 響
お よび 多重 イン ター ロッ クシ ステ ムへの 展開 )
独 立 し た2つ の 分 子 が 特 殊 な 卜 ポ ロ ジ ー の 関 係 に よ っ て 分 離で き な く な り、 機 械 的 に 結 合し た 状 態 の 化 合 物 は イ ン タ ー ロ ッ ク 化 合 物 と 呼ぱ れ 、 現 在 、超 分 子 化 学 の 分野 で の 主 要 な研 究 対 象 の ーっ に な っ て い る 。 その 代 表 例 は [2:]ロ タ キサ ン で あ り 、直 線 状 の 分 子が 環 状 分 子 に突 き 刺 さ り 、 その 両 末 端 が 封 鎖 さ れ た 構 造 を 持 つ 。 現 在 で は 、直 線 状 分 子 に複 数 の 環 状 分 子が 貫 通 し た より 高 次 な イ ンタ ー ロ ッ ク 化 合 物 や 、 も と も と 環 状 構 造 と 直線 状 部 分 を 持つ 分 子 が 相 互 に貫 通 し 合 っ て生 じ る よ り 複雑 な 超 分 子 構 造 体 の 構 築 も 行 わ れ て い る 。 これ ら は 、 イ ンタ ー ロ ッ ク 化 合物 に 特 徴 的 な環 の 回 転 や 並進 と い う 運 動 を 外 部 刺 激 で 制 御 で き れ ぱ 、 超分 子 構 造 に 特徴 的 な 機 能 が 発現 し 得 る た め、 分 子 ス イ ッチ や 分 子 マ シ ン ヘ の 展 開 が 期 待 さ れ て い る もの で あ る 。 しか し 現 在 の と ころ 、 特 異 な トポ ロ ジ ー を 持っ た イ ン タ ー ロ ッ ク 化 合 物 を 如 何 に し て 構 築す る の か 、 どの よ う に し て 構造 の 明 確 な もの と し て 取 り出 す の か 、 と い う 点 に 主 眼 を 置 い た 研 究 が ほと ん ど で あ り、 超 分 子 構 造 に由 来 す る 新 たな 機 能 の 開 拓に 至 っ て いる 例 は 多 く ない 。
以 上 の よ う な 背 景 の 下 で 著 者 は 、外 部 刺 激 に 応答 す る 高 次 イン タ ー ロ ッ ク化 合 物 と い う 、制 御 性 の 付 与 さ れ た 超 分 子 構 造 体 を 創 生 す る こと を 最 終 目 的と し 、 そ の 構 築法 と し て イ ミン 結 合 を 利 用し た ロ タ キ サ ン 合 成 に 着 目 し た 。 イ ミ ン 結 合を 軸 ・ 環 の 集合 モ チ ー フ と して 利 用 す る 方法 は 効 率 的 な集 合 化 に 適 し て い る ぱ か り で な く 、 温 度 に よる 加 水 分 解 平衡 の 制 御 が 可 能で あ っ た 点 を運 動 制 御 性 に利 用 で き ると 考 え た か らで あ る 。
し か し 、 一 般 に 超 分 子 合 成 法 で は、 そ の 合 成 法に 利 用 で き る構 造 ユ ニ ッ トの 種 類 が 非 常 に限 ら れ て い る た め 、 上 記 の イ ミ ン 結 合 を 利 用 した 手 法 に つ いて 、 そ の 汎 用 性を 調 査 し た 。そ の 結 果 、 様々 な 構 造 の [2]ロ タ キ サ ン が 同 手 法 に よ り構 築 可 能 で ある こ と を 見 出す と と も に 、軸 中 央 部 や 側 鎖・ 環 の 構 造 が 生 じ た イ ミ ン 架 橋 体 の 加 水 分 解 挙 動 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に した ( 第1章 )。 こ の 際 、 一部 の イ ミ ン 架 橋 体 が ジ ャ イ 口 ス コ ー プ 型 分 子と し て の 特 徴を あ わ せ 持 つ こと か ら 、 そ の分 子 内 回 転 挙動 に つ い て も 検 討 を 加 え た ( 第2章 ) 。 つ い で 、[2]ロ タ キ サ ン に つ い て 明 ら か に し た 構 造 ユニ ッ ト の 有 利 性 に基 づ き 超 分 子構 造 体 の デ ザイ ン を 行 い 、複 数 の 環 状 分 子が 貫 通 し た [n]ロ タ キ サン や軸 ―環で 連結 し た[c2]デ イ ジ ー チ ェ ー ン を 新 た に 設 計 し てそ の 構 築 に 成 功し 、 そ れ ら の加 水 分 解 挙 動が 温 度 制 御 性 を 示 す こ と を 実 証 し た 。 こ れ に よ り 、外 部 刺 激 に 応答 す る 高 次 イ ンタ ー ロ ッ ク 化合 物 の 創 製 を達 成 し た 。 複 数 の 環 の 位 置 の 制 御 や 分 子 筋 肉型 伸 縮 挙 動 の制 御 と い う 興 味深 い 内 容 を 含む 本 論 文 の 一部 は 既 に 権 威 あ る 学 術 雑 誌 に 掲 載 さ れ 、 高 い評 価 を 受 け てい る 。 よ っ て 審査 員 は 著 者 が博 士 ( 理 学 )の 学 位 を 受け る に 十 分 な資 格 を 有 す るも の と 認 め る。
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