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日本臨床麻酔学会 vol.32

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Academic year: 2021

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はじめに  レミフェンタニルは本邦での発売後 5 年以上が経 過したが,レミフェンタニルの登場により,麻酔管 理に対するわれわれ麻酔科医の考え方が大きく変化 し,鎮痛を十分に図った麻酔管理が容易に行えるよ うになったことは特筆に値する.さらに,レミフェ ンタニルならではの特性を活かした,さまざまな麻 酔管理が試みられ,なおかつそれらの有用性は広く 認識されてきている.本稿では,レミフェンタニル が持つこれらの種々多様な優れた特徴について,自 験例でのデータを交えながら概説する. Ⅰ レミフェンタニルの特性  すでに多くの麻酔科医を魅了しつつあるレミフェ ンタニルであるが,その薬理など,ユニークな特徴 の要点を再確認してみたい.  レミフェンタニルは選択的μ- オピオイド受容体 アゴニストで,強力な鎮痛作用を持つ超短時間作用 型の麻薬性鎮痛薬である.レミフェンタニルのほと んどが,カルボキシル酸代謝物のレミフェンタニル 酸となる1).レミフェンタニル酸のオピオイド受容 体に対する親和性は,レミフェンタニルと比較する と 1/800 ∼ 1/2,000 程度と無視できるほど低い2).薬 理学的特徴は,フェンタニルに代表される選択的μ 受容体作動薬と同様である3)  薬物持続投与時の臨床効果消失の目安として重要 な指標に,context-sensitive half-time(CSHT;一 定の血漿濃度を維持するために持続静注したとき, 投与中止後の血漿濃度が 50%に減少するのに必要

レミフェンタニルは必要である

─レミフェンタニルが変えた麻酔管理の概念─

中山禎人

*1, 2 [要旨]レミフェンタニルの登場により,麻酔管理に対するわれわれ麻酔科医の考え方が大きく変 化し,鎮痛を十分に図った麻酔管理が容易に行えるようになった.特に筋弛緩薬を使用しない全身 麻酔管理や気管挿管,awake craniotomy や気管・気管支ステント留置術などの麻酔管理には, 本薬剤は最適と考えられ,また術中ストレスホルモン分泌の抑制や尿量の確保,高血糖の予防目的 でも有用性は注目されつつある.その一方,本薬剤は効果発現までが約 1 分と著明に短時間であ るため,ロクロニウムを用いた気管挿管など,麻酔導入においても非常に有用である.麻酔科医に とって,レミフェンタニルの特性を熟知して使いこなすことは,よりよい周術期管理にとって,も はや必須と考える. キーワード: レミフェンタニル,ロクロニウム,術中ストレスホルモン,全身麻酔,麻酔導入 著者連絡先 中山禎人 〒 060-0063 北海道札幌市中央区南 3 条西 6 丁目 札幌南三条病院麻酔科 * 1札幌南三条病院麻酔科 * 2札幌医科大学医学部麻酔科学講座

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な時間)がある.現在繁用されている他のオピオイ ドの CSHT は,排泄半減期とは大きく異なり持続 静注の時間に依存して延長する(図 1).特にフェン タニルは multicompartment model であるため投与 時間に大きく影響を受け,また分布容積や代謝率の 個人差が大きい4).その一方で,レミフェンタニル は独特な代謝経路を持つ1), 5).レミフェンタニルは エステル結合を構造内に持ち,血中や組織に広く分 布する非特異的エステラーゼによって急速に加水分 解されるため(半減期:3.8 ∼ 8.3 分,表 1)6),血中半 減期が非常に短く,再分布を考慮しなくてよい.代 謝産物は薬理作用をほとんど持たず,さらに他の薬 物との相互作用や遺伝的変異性も考えなくてよ い7).したがって,血中の消失速度は,投与方法1) 肝腎機能8), 9),性別,あるいは薬物相互作用などの 因子に依存しない(図 1).  レミフェンタニルのもう一つの大きな特徴とし て,作用の発現がおよそ 1 分と非常に速いことがあ げられる(図 2)10).これは,血中(pH 7.4)でのオク タノール/水分配係数が 17.9 と高く,よって容易に 脳内に移行するためである.つまり,レミフェンタ ニルは血液と脳内濃度が平衡に達するまでの時間が 短く(t1/2Ke0 = 1.3 分),体内の薬物動態を single compartment model に基づいて考えることができ る1), 10)  レミフェンタニルの薬理作用としては,イソフル ランの MAC(最小肺胞濃度)を 50%下げるのに必要 なオピオイドの投与量を比較した検討11)によれば, レミフェンタニルの力価はフェンタニルと同程度で あり,アルフェンタニルの 60 倍,スフェンタニル の 1/10 倍である.  以上をまとめると,レミフェンタニルの利点は, 以下のようになる. 1.長時間投与においても蓄積する危険性がない. 2.鎮痛・麻酔用量の調節性が非常に優れている. 3.呼吸抑制の遷延するリスクが低い. 図 1  レミフェンタニルならびに他のオピオイドが血中(あるいは 血漿)から 50%消失するまでかかる時間(≒半減期)とその 投与時間(量)依存性(context-sensitive half-time) 他のオピオイドは,投与時間(量)依存性が高いが,レミフェン タニルは依存しない. 〔文献 2)より引用・改変〕

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4.投与量に関係なく速やかな覚醒が得られる. 5.肝・腎障害を持つ患者に投与しやすい. 6. 副作用の作用発現も速いため,予測や対処がス ムーズである. Ⅱ レミフェンタニル麻酔の有用性:術中麻酔管理 1. 重症筋無力症の麻酔管理  重症筋無力症の麻酔管理においては,ベクロニウ ムやロクロニウムなどの非脱分極性筋弛緩薬の使用 は,薬剤の添付文書上では禁忌であることが広く知 られている.その一方で,麻酔管理での必要上,や むを得ず筋弛緩薬を使用したという報告も散見され るが,現状では禁忌とされているため,決して望ま しい事象ではないと言わざるを得なく,筋弛緩薬を 用いない麻酔管理が求められる.Ng ら12)は,重症 筋無力症にて VATS(胸腔鏡下)胸腺摘出術が予定 された症例での筋弛緩薬を使用しないレミフェンタ ニル麻酔を報告している.それによると,プロポフ ォール2mg/kg とレミフェンタニル 2μg/kg 投与後 に,プロポフォール10mg/kg/hとレミフェンタニル 0.5μg/kg/min の持続投与の併用を行い,薬剤投与 開始の約 1 分後にダブルルーメンチューブを気管挿 管し,術中はプロポフォール 10 ∼ 2mg/kg/h とレ ミフェンタニル 0.5 ∼ 0.15μg/kg/min の持続投与を 図 2  レミフェンタニルとフェンタニルを単回静脈内投与したときの効 果部位濃度の推移(シミュレーション) 単回投与後に最大効果部位濃度に達するまで,フェンタニルでは 3 分程 度を要するのに対し,レミフェンタニルでは 1 分程度であり,フェンタ ニルと比較して著明な即効性がある. 〔文献 10)より引用・改変〕 レミフェンタニル フェンタニル スフェンタニル アルフェンタニル 半減期(min) 4 ~ 8 10 ~ 30 15 ~ 20 4 ~ 16 クリアランス(mL・min- 1・kg- 1 40 ~ 60 10 ~ 20 10 ~ 15 4 ~ 10 分布容積(L/kg) 0.2 ~ 0.4 3 ~ 5 2.5 ~ 3.0 0.4 ~ 1.0 他のオピオイドと比較してレミフェンタニルは半減期が短く,分布容積が小さい. 〔文献 1), 6)より引用・改変〕

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行い,筋弛緩薬は術中まったく使用せずに麻酔管理 を行ったところ,挿管時の弱い咳嗽反射が 1 例で確 認された以外は,マスク換気や挿管に支障となる事 象は認められなかった.手術および麻酔管理は全例 で問題なく施行され,手術室で抜管して帰室したこ とを報告している.重症筋無力症に対する筋弛緩薬 を用いない麻酔管理において,レミフェンタニルは 有用かつ推奨される薬剤と考えられる. 2. 気管・気管支ステント留置術の麻酔管理  レミフェンタニルは調節性に優れ,自発呼吸下で 安定した呼吸・循環動態を得ることができるため, 気管・気管支ステント留置術の麻酔管理に用いた報 告も多い.自発呼吸を温存した気管ステント留置術 および気管拡張術の麻酔についてプロポフォール・ フェンタニル併用症例とプロポフォール・レミフェ ンタニル併用症例を後ろ向きに比較検討した報告13) によると,レミフェンタニル群ではフェンタニル群 に比較してプロポフォール総投与量は有意に減少 し,覚醒時間も有意に短縮できたことが示された. また,呼吸困難が出現し,仰臥位が不可能な食道癌 の症例に対して,自発呼吸を温存した軟性気管支鏡 下ステント留置術を行った報告14)では,麻酔導入は 坐位で,レミフェンタニル 0.1μg/kg/min,プロポ フォール 150mg で行い,麻酔維持はレミフェンタ ニル 0.1μg/kg/min,プロポフォール 3mg/kg/h の 持続投与と酸素とし,呼吸抑制や重篤な換気不全や 体動などの致命的な合併症をきたすことなく安全な 麻酔管理が可能であった.自発呼吸を温存した気管・ 気管支ステント留置術では,フェンタニルを用いた 場合,侵襲が急激に増加したときに,過量投与に陥 りやすかったり,プロポフォール増量に頼らなけれ ばならない状況になりやすいが,レミフェンタニル は調節性に優れるため,自発呼吸下で安定した呼吸・ 循環動態を得ることができると考えられる.呼吸抑 制が生じても,投与中止で速やかに自発呼吸が回復 するのが利点であるため,本術式の麻酔管理に適し た薬剤と考えられる. 3. awake craniotomy の麻酔管理  プロポフォールとフェンタニルまたはレミフェン タニルによる awake craniotomy において,鎮静・ 鎮痛レベル,血行動態,呼吸抑制の度合いおよび患 者満足度を調査した報告15)によると,術中記憶・疼 痛の有無と全体の満足度,血行動態,術中合併症に ついては両群で有意差は見られなかったが,フェン タニル群で呼吸抑制が多い傾向が見られ,またプロ ポフォールの総使用量はレミフェンタニル群に比べ てフェンタニル群で有意に多かったことが示され た.フェンタニルは濃度の調節が難しく,使用しす ぎて呼吸抑制を起こす危険性があり,さもなくばプ ロポフォールに頼る麻酔に陥りがちである.プロポ フォールとレミフェンタニルによる awake cran-iotomy 98 例において,薬剤の使用量,症例の反応, 静脈麻酔薬による合併症の有無と種類などをまとめ るために,レトロスペクティブ調査を行った報告16) では,麻酔維持はレミフェンタニル平均 0.05μg/ kg/min,プロポフォール 115μg/kg/min,術中覚 醒に要した時間は平均 9 分で,持続注入時間や手術 時間による影響はなかった.自発呼吸は SaO2 95% (92%-98%),PaCO2 50(47-55)mmHg の範囲でお おむね良好に保たれた.96 例中 69 例において,30 秒程度の無呼吸が 1 回以上確認されたものの,全例 で気管挿管は必要としなかったことを示している. レミフェンタニルは半減期がきわめて短いので,疼 痛刺激が強い開頭時に十分な鎮痛を得る一方でマッ ピング時には確実な覚醒を得ることができ,有用と 考えられる. 4. 術中ストレスホルモン分泌抑制・尿量維持(心臓手術)  開心術症例を対象にレミフェンタニル群および フェンタニル比較的少量,中等量(それぞれ 12, 24μg/kg ボーラス投与)の 3 群に分け,レミフェン タニルが血行動態の安定化や薬剤必要量の低減,ス トレスホルモン分泌の抑制につながるかを調べた報 告17)によると,以下が示された.①フェンタニル少 量群では尿中コルチゾール濃度が最も高く,尿量も

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ンタニル少量群では 3/29 例が術後心筋梗塞を発症 したのに対し,他群での発生はなかった.③レミフ ェンタニル群では尿中コルチゾール濃度が最も低 く,尿量も最も多かった.④フェンタニル中等量群 では抜管が一番遅かった.⑤レミフェンタニル群で はプロポフォール総投与量が最も少なかった.⑥レ ミフェンタニル群では薬剤のコスト自体は他群より 多かったが,入院中の総費用は一番少なかった.以 上より,少量フェンタニル麻酔は,ストレスホルモ ン分泌を抑制しきれていなく,術中・術後に悪影響 を及ぼす可能性があり,中等量フェンタニル麻酔は, ファストトラックが難しい欠点を持つのに対し,レ ミフェンタニル麻酔はストレスホルモン分泌を抑制 し,尿量も確保可能かつ,覚醒も良好で入院期間も 短く済み,総医療費を低減できると結論している. 従来まで,心臓麻酔において,フェンタニルは麻酔 管理に主要な役割を果たしていたが,レミフェンタ ニルの登場により,心臓麻酔においてもフェンタニ ルを主体とした麻酔法は,もはや過去のものと極言 される時代が来る可能性が示唆される. 5. その他  レミフェンタニル麻酔におけるその他の有用性と して,術中の血糖上昇を防止する,高用量レミフェ ンタニル麻酔で,よりストレスホルモン分泌を抑制 するなどの報告があり,通常の麻酔管理においても, その有益性が示唆される. Ⅲ レミフェンタニル麻酔の有用性:麻酔導入時  前項で示したごとく,レミフェンタニルは麻酔維 持に汎用する薬剤という印象が強いのは事実である が,他方でレミフェンタニルは麻酔導入時にもその 有用性が注目される.麻酔導入時での有用性につい て,いくつか事例をあげて紹介する. 1. ロクロニウムを用いた気管挿管時  ロクロニウムの登場で,筋弛緩薬投与後 90 秒程 度で気管挿管が可能となったが,気管挿管時には迅 ニルでは前述のとおり,単回投与後に最大効果部位 濃度に達するまで 1 分程度であり,フェンタニルで 3 分程度を要するのと比較して著明な即効性がある (図 2).ロクロニウムを用いた気管挿管時において, 侵襲制御目的でフェンタニルまたはレミフェンタニ ルの単回投与を行い,その効果を比較検討したので, その自験例について,データの一部を紹介する.  対象:分離肺換気を伴う肺手術が予定された ASA I,II の症例 37 例とし,レミフェンタニル群(R 群)およびフェンタニル群(F 群)に分けた.プロポ フォール 1.5mg/kg 投与後に,それぞれレミフェン タニルまたはフェンタニル 1μg/kg を投与し,直後 にロクロニウム 0.6mg/kg を投与し,90 秒後にダブ ルルーメンチューブを気管挿管した.気管挿管前後 の血圧および心拍数を比較検討した.F 群では,麻 酔薬投与開始 1 分後と比較して挿管直後における収 縮期血圧・心拍数の有意な上昇を認めた.その一方 で,R 群では挿管前後で循環動態の有意な変動は認 めなかった(図 3A,B).以上より,レミフェンタニ ルの単回投与はフェンタニルと比較して有意な循環 変動の抑制効果を示したため,ロクロニウムを用い た気管挿管時において,レミフェンタニルの単回投 与はフェンタニルと比較して,気管挿管による侵襲 の制御により有用であると考えられた(要旨は 3rd World Congress of Total Intravenous Anaesthesia and Target Controlled Infusion, 2011, Singapore に て発表). 2. 筋弛緩薬を用いない気管挿管  レミフェンタニルを用いて,プロポフォールやセ ボフルランなどと組み合わせ,筋弛緩薬を用いずに 挿管を試みた報告は,前述した重症筋無力症12)の場 合はもちろんのこと,健常な成人での報告18), 19)も多 く見られる.外来手術 80 症例をレミフェンタニル 1, 2,3,または 4μg/kg およびプロポフォール 2mg/ kg 投与の 4 群に分けて,投与 90 秒後に気管挿管し, 挿管のためのコンディションを比較した報告18)

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は,プロポフォール 2mg/kg とレミフェンタニル 3μg/kg 投与 90 秒後に安全に気管挿管可能である ことを示しており,挿管後に速やかな自発呼吸の回 復も確認している.  またさらに,レミフェンタニルの特性を利用して, 意識下挿管などにも応用した報告20)もある. Ⅳ レミフェンタニル麻酔のピットフォール  レミフェンタニルの副作用としては,他のオピオ イドと同様に,呼吸抑制,悪心・嘔吐,徐脈,血圧 低下,筋硬直,掻痒感などがある.もっとも,その 大半が,過量投与や投与法の問題に起因すると考え られる.レミフェンタニルの特徴である短い作用時 間,代謝様式,強力な鎮痛作用を麻酔管理に十二分 図 3  両群における気管挿管前後の血圧(A)および心拍数(B)の比較 フェンタニル群(F 群)では,麻酔薬投与開始 1 分後と比較して挿管 直後における収縮期血圧・心拍数の有意な上昇を認めた.その一方 で,レミフェンタニル群(R 群)では挿管前後で循環動態の有意な変 動は認めなかった. * * *

A

* *

B

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理解し,適切な対処を講じながら使用する必要が ある.  レミフェンタニル併用麻酔の注意点として,投与 中止後の効果消失が速いため,術後鎮痛を確実に行 う必要性がある.軽度の疼痛の場合は,非ステロイ ド性消炎鎮痛薬や拮抗性鎮痛薬を使用する.中等度 から高度の疼痛の場合は,硬膜外麻酔などの各種神 経ブロック法を検討するとともにモルヒネやフェン タニルをレミフェンタニルの投与中止前から投与す る方法がよい.いずれにせよ,患者が疼痛を訴える 前に鎮痛を施すことが必要である.  筆者の施設での呼吸器外科手術における術後鎮痛 法の実際を紹介する. ・ 閉胸時,手術終了 10 分程度前にエピネフリン加 1.5%リドカイン 4 ∼ 6mL をボーラス投与. ・ その直後に 0.25%レボブピバカイン 2 ∼ 4mL/h に よる硬膜外持続鎮痛(Th6 ∼ 7 付近より)を開始. ・ どうしても疼痛が強い症例には,肋間神経ブロッ クを併用.または硬膜外持続鎮痛にフェンタニル を追加.  また,レミフェンタニル麻酔の術後には,しばし ばシバリングの出現を経験する.一般に,通常の麻 酔覚醒後に経験するシバリングより激しいものであ ることが多いが,体温低下を伴わない場合が多いこ とより,これは非体温調節性のシバリングである可 能性が考えられる.レミフェンタニルは short offset であるため,μ- オピオイド受容体の占拠率の急速 な低下による withdrawal syndrome の一つとして のシバリングが考えられる.  レミフェンタニルによるシバリングの予防法とし て,以下があげられる.①強制温風加温(核温維持 に有効)・十分な鎮痛(硬膜外麻酔など伝達麻酔を含 む),②フェンタニル,モルヒネ,塩酸ペチジンな どの投与,③クロニジン投与(75 ∼ 150μg),④デク スメデトミジン投与(0.4μg/kg/h 程度,⑤ NSAIDs 投与(体温セットポイントの低下作用),⑥マグネシ  レミフェンタニルを汎用すると麻酔が下手にな る,という「都市伝説」のような風評を耳にする機 会がある.このような風評がまかり通る理由として 考えられるのは,低用量で持続投与すると,術中の バイタルがきわめて安定する場合が多い,手術終了 後も投与中止ですぐ効果が消失し,めったに遷延し ない,ほとんど禁忌症例がないなどの,便利すぎる が故の否定的評価が推測される.しかしながら,わ れわれ麻酔科医は,患者管理に有益な薬剤は,その 使用法を熟知して積極的に取り入れるのがその責務 と考える.ただし,とりあえずレミフェンタニルを 投与すれば麻酔はかかり,切れば醒める,的な安直 な考え方に傾き,「麻酔科医が楽をするためのツー ル」として使用することは,厳に慎まなくてはなら ない.この点に留意して,レミフェンタニルが今後 も麻酔科医の強力な武器となり,また患者を守るた めの素晴らしいツールになることを願って,本稿を 終える. まとめ  レミフェンタニルは,術後の「醒め」を気にせず に存分に除痛できるという,調節性に優れる特性を 持ち,麻酔の概念にパラダイムシフトを起こした画 期的な薬剤といえる.また,麻酔維持のためだけで なく,onset,offset の速さや強力な鎮痛効果は,麻 酔導入時にも最適である.これらの特性を生かし, レミフェンタニルは,もはや必須の麻酔薬と考えら れるケースも少なくない.さらには,もはや,術中 管理の麻薬としてはレミフェンタニルがあればそれ でよく,フェンタニルは術後疼痛管理のための薬剤 で,その術中使用は術後鎮痛のため以外に必要ない と極言できるかもしれない.  その一方で,過量投与や投与法の問題による重篤 な副作用には要注意であり,術後鎮痛にも十分な配 慮が求められる.レミフェンタニルの特性熟知を怠 り,安易な麻酔に陥ることは戒めなければならない.

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また,当然ながら,他の麻酔薬についても十分に精 通しておくことが求められ,その上で,適応を考え ずレミフェンタニルを乱用する行為は差し控え,適 材適所で用いてこそ,レミフェンタニルの真価が発 揮されると考える.  本稿の要旨は日本臨床麻酔学会第30回大会(2010, 徳島)シンポジウム(9)にて発表した. 参考文献 1) Egan TD, Lemmens HJM, Fiset P, et al.:The phar- macokinetics of the new short-acting opioid remifen-tanil(GI87084B)in healthy adult male volunteers. Anesthesiology 79:881-892, 1993

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Yoshito NAKAYAMA*1, 2 *1 Department of Anesthesia, Sapporo Minamisanjo Hospital *2 Department of Anesthesiology, Sapporo Medical University  The unique pharmacology of remifentanil, in particular its profound analgesic effect, has more re-cently attracted clinicians to using it, and this has led to widespread use of remifentanil as an adjunct to general anesthesia in a variety of clinical settings.  Remifentanil has been thought of as one of the most suitable drugs for anesthetic management of certain procedures, such as those for myasthenia gravis, awake craniotomies and tracheobronchial stent insertion. Moreover, it offers advantages such as attenuation of the stress response or of surgi-cal diabetes. It also plays an important role in the induction of anesthesia. Remifentanil appears to be a drug suitable to attenuate cardiovascular responses for endotracheal intubation with rocuronium. Furthermore, adequate doses of remifentanil enable tracheal intubation without neuromuscular relax-ants. From this evidence, it is concluded that remifentanil is now an essential drug for anesthetic management. Key Words : Remifentanil, Rocuronium, Intraoperative stress hormone, General anesthesia, Induction of anesthesia

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