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特許進歩性判断における「示唆」の概念の現状について—インターネット上の検索技術の発展と進歩性判断との関係に関する若干の考察と共に—

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(1)

研究ノート

特許進歩性判断における「示唆」の概念の現状について

̶インターネット上の検索技術の発展と

進歩性判断との関係に関する若干の考察と共に̶

Trend of A Concept, Suggestion

In Determining Inventive Step with Some Implications

on the Relationship between Development of

Search Technology on Internet and Inventive Step

時井 真

†,

*

Shin TOKII

抄 録:

特許進歩性の判断においては、①主引用例を提出し請求項発明と主引用例の間の

相違点を認定した上で(第一ステップ)、次いで②当業者が請求項発明を容易に想

到することができたかという手順を経る(第二ステップ)。現在、IT や検索エンジ

ンの進展により急速に引用例検索技術が進展して第一ステップの難度が下がり、そ

の結果、相対的に第二ステップの判断の重要性が増している。本稿の第一の目的

は、第二ステップの判断の主役の一つである「示唆」の概念の現況を、直近の裁判

例から明らかにすることにある。その結果、日本の裁判例では、従来技術に主引用

例と副引用例を結びつけ請求項発明を想到する動機付けとなる示唆以外に、逆に引

用例と副引用例との結びつきを妨げ、動機付けを否定する逆示唆の裁判例が多数存

在することが判明した。最後に補論としてこの第二ステップ(示唆及び逆示唆)と

情報ネットワーク社会との関係についても若干考察した。

Abstract :

In determining inventive step, we submit a principle cited invention and identify the

dif-ference between a claimed invention and the principle cited invention (first step), and then

examine whether a person having an ordinary skill in the prior art would easily reach at the

claimed invention(the second step). As Internet search engine makes dramatic progress, it

† 弁護士・北京大学 博士(法学)杉村萬国特許法律事務所 〒100‒0013 東京都千代田区霞が関 3‒2‒1 霞が関コ

モンゲート西館 36 階 * [email protected]

(2)

is reducing the difficulty of the first step, and as a result, the importance of the second step

judgment increased. The first purpose of this paper is to clarify current state of the concept

of suggestion, which is one of factors playing an important role in the second step. It is

found that many cases in Japan use the concept of Teach Away (the opposite concept of

suggestion) in addition to the concept of suggestion which combines a principle cited

inven-tion and a secondary cited inveninven-tion. This paper also discussed the relainven-tionship between the

second step and IT technology.

キーワード:

検索エンジン、AI、進歩性の判断、示唆の基準

Key words :

Search engine, AI, Inventive step, Criteria of suggestion

1 .

 はじめに

1 . 1

 知財高裁発足から現在までの足跡

−情報ネットワーク社会の進展との関係の視点から−

特許無効審判および特許侵害訴訟における無効の抗弁中で特許無効を主張する場

合、新規性・進歩性(特許法 29 条 1 項・2 項)の判断は、ほぼ一体化した一連の

作業になっている。簡略化すると、①最も近い引用例(主引用例)を提出し、無効

判断の対象となっている発明(以下、「請求項発明」という)と主引用例の間の相

違点を認定した上で(以下、「第一ステップ」という)、次いで②当業者(その発明

の属する技術の分野における通常の知識を有する者が主引用例から出発して請求項

発明を容易に想到することができたかという手順(進歩性の判断)を経る(以下、

「第二ステップ」という)。

ここで情報ネットワーク社会との密接な関係を有する社会的事実として、こと特

許については、2000 年代初頭以降、インターネットを利用した検索能力が各段に向

上し、Google をはじめとした多数のオンライン上の検索エンジンや(当時の)特許

電子図書館(IPDL)のみならず、引用例検索に特化した専門の有料オンラインサー

ビス業者が多数起業したために、こうしたオンラインサービスを利用して、膨大な

数の先行技術(特に公開公報)から、第一ステップ、すなわち、技術的に見て請求

項発明と最も近い主引用例を見つける作業が質・量ともに格段に向上になったこと

が挙げられる。進歩性の判断の手法という法的側面の変化のみならず、こうした社

会的事実の変化を背景として、新規性・進歩性の判断においては、第一ステップの

ハードルが下がったことも、2004 年‒2006 年の知財高裁の黎明期の極めて高い特許

(3)

無効率(新規性あるいは進歩性無し)との判断に至った一因であると思われる

1

進歩性の欠如を主因としたこうした高い無効率を背景として2006 年頃から特許

無効率の引き下げが謳われ

2

、進歩性について TSM テスト(引用例に、周知技術

等との組み合わせを教示したり示唆したり、あるいは両者を組み合わせる動機が

あることがない限り、進歩性を肯定するという基準である

3

。)類似の基準を採用し

た2009 年の知財高裁平成 21 年 1 月 28 日[回路接続部材判決]を代表例に

4,5

、日

本の知財高裁は次第に、第二ステップの判断を厳格化し、特に当業者が主引用例か

ら出発して無効判断の対象としている発明に至る動機づけを厳格に判断することに

よって無効率を引き下げ、現在では史上まれにみるプロパテント時代に突入してい

る(ここでいう検索技術等の発展が具体的にどのようなものであり、検索技術の発

展等が従前に比べて目標とする公知文献をどのようにして入手の機会を増やしたか

については注釈で述べる)

6

。こうした取り組みは、引用例のオンライン検索サービ

スの飛躍的発展

7

に伴い社会的事実として無効判断の対象としている発明の各構成

要素自体は上記オンライン検索サービスで容易に発見できるという点で第一ステッ

プのハードルが下がった(= 無効率上昇)分、検索された各構成要件要素を結び

つける動機付けの有無(示唆を含む)という第二ステップの法的要求水準を上げる

(= 無効率下降)ことによって、均衡を回復しようという試みであったと位置づけ

ることができるように思われる。

1 本文でその後に紹介する 2009 年の知財高裁平成 21 年 1 月 28 日[回路接続部材判決]の裁判長であった飯村敏 明裁判長による指摘として、知財高裁黎明期の高い無効率につき、進歩性判断の基準の変化(法律論のレベルの問 題)が原因であることは否定しないものの、年々公知技術は増加するため、進歩性の判断基準が変わらなくても 年々進歩性が肯定されるハードルは高くなる傾向があることを挙げる(事実レベルの原因)(飯村敏明「特許権侵 害訴訟における一回的な解決と進歩性の判断」知財ぷりずむ 8 巻 86 号 6 頁(2009 年)。 2 飯村敏明「特許訴訟における進歩性の判断について」第二東京弁護士会知的財産法研究会編『日米の特許比較』 (2009 年、商事法務)192‒193 頁、その評価として田村善之「考察・知財高裁」『現代知的財産法』(2015 年、発明 協会)33 頁。

3 もっとも近時、TSM テストの厳格な運用を否定した裁判例として米国 KRS 最高裁判決((Telefl ex, Inc. v. KSR Intl Co.,119 Fed. Appx. 282, 2005 U.S. App. LEXIS 176(Fed. Cir., 2005))がある。

4 ほかに前掲知財高判[回路接続部材]と同様に TSM テスト類似の基準を示した当時の裁判例として知財高判平 成 20.12.25 判時 2046 号 134 頁[レーダ]、課題把握の後知恵防止を強調する裁判例として、知財高判平成 21.1.31 判時 2107 号 131 頁[換気扇フィルター及びその製造方法]。以上につき、田村善之・時井真・酒迎明洋『プラク ティス 知的財産法 I 特許法』(2020 年、信山社)138‒142 頁。 5 同判決は、版を改めても判例百選に掲載され続けている点で、学習・研究上も進歩性判断において重要な地位 を占める判決であると考えられる。大野聖二「進歩性の判断基準̶回路用接続部材事件」特許判例百選[第 4 版] (2012 年、34‒35 頁)、時井真「進歩性(1)̶引用文献における示唆等の必要性[回路用接続部材事件]」特許判例百 選[第 5 版]132‒133 頁。 6 今井優仁=奥村直樹「平成 29 年における特許審決取消訴訟の概況」パテント 71 巻 9 号 100 頁。 7 特に近時は、2010 年代半ばにまず、従来は商用ベースでしか利用できなかった高度な特許検索技術の一部が無料 で利用できるようになり、次いで 2018 年に工業所有権情報・研修館が特許、実用新案の検索精度を飛躍的にバー ジョンアップした新 J-PlatPat につきインターネットによる無償提供を開始した。直近では、2020 年には、日本の特 許庁自らが、AI を駆使して「言語及び特許分類」「の種類が様々である世界中の特許文献を、希望する言語や特許 分類(例えば、日本語、及び、日本の詳細な特許分類である FI)にて、一括して検索することを可能とする特許文 献検索システムやそのための管理システム」を開発し自ら特許を取得しており、その目的の一つに、国内外の特許 庁が当該特許技術を広く活用することを挙げている。

(4)

1 . 2

 本稿の目的について

以上のような社会的事実の変化により、現在では、以前にも増して、第二ステップ

の重要性は年々増しつつあるといえる。そして、第二ステップである進歩性の判断に

おいて、いわゆる設計的事項の概念とならび重要な判断手法の一つとして、当業者

(= 当該業界において通常の技術常識を有する者)が主引用例に副引用例を結びつけ

る動機があるために請求項発明に到達することが良いであったかどうかを判断する、

いわゆる動機づけの判断がある。そして、特許庁「平成 18 年進歩性検討会報告書」

124 頁によれば、動機づけの判断要素としては、①技術分野の共通性、②課題の共通

性、③作用、機能の共通性、④内容中の示唆(四者の関係は OR で結ばれている)が

挙げられており、中でも実務上、課題の把握と並んで最も主要な役割を果たしている

動機づけの要素が④の、いわゆる示唆の概念である。例えば、副引用例に主引用例

と結びつける示唆がある場合、当業者は両者を組み合わせて請求項発明に到達する

動機付けがあるとして、進歩性の欠如を理由に特許無効に至るのである。

そこで本稿では、情報ネットワーク社会の到来の結果、以前よりもその重要性を

増した、特許進歩性の判断における「示唆」の概念を直近の裁判例から立体的・網

羅的に整理することにしたい。具体的には、裁判例では「示唆」とはいかなる意味

で使われているか、また、いかなるケースで示唆があり、いかなるケースで示唆が

ないと判断されているのか、示唆に関する多数の直近の裁判例を立体的に把握する

ことによって、「示唆」の概念を網羅的に整理していきたい(本稿の目的)。

2 .

 本稿の研究手法について

データベースは TKC ローライブラリーを使用し、キーワードを「容易想到」「示

唆」とした。また、2014 年から2017 年分の4 か年分の裁判例を検討対象の裁判例

とすることにした。以上の手法により、479 件の裁判例が検索されたが、このうち、

「示唆」の用語が訴訟当事者の主張においてのみ用いられ、裁判所の判断において

は「示唆」の用語が登場しない裁判例は検討の対象から外すことにした。そこで最

終的に本稿で分析した裁判例の総数は33 件となり、これらの裁判例をを一定の視点

に整理・分類し(3.2「示唆」の用語が従来技術と同等の役割を果たす裁判例の一群

(引用例と引用例を結びつける示唆ではなく、単に技術的事項を開示しているという

意味の示唆、3.3 どの程度の記載があると示唆なのか?さらに、技術常識による示

唆の記載の補充について、3.4 主引用例以外の文献(副引用例、周知技術)におけ

る示唆の扱いについて、3.5 逆示唆、技術常識との関係)、それぞれの項目で示唆に

関する裁判例が形成している実質的な下記規範を探ることとした。裁判例の具体的

な事案とその判旨については、注釈で各項目のうち代表的な裁判例を紹介している。

(5)

3 .

 「示唆」の概念の現在

3 . 1

 従来の議論

「示唆」に関する近年の主導的ともいえる判決は、前掲[回路接続部材判決]で

あり、特に同判決の一般論では、「当該発明が容易想到であると判断するためには、

先行技術の内容の検討に当たっても、当該発明の特徴点に到達できる試みをしたで

あろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、当該発明の特徴点に到達する

ためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきである

のは当然である。」と、「示唆」の内容まで具体的に明示し「示唆」を正面に据えた

一般論が提示されている。そのために、同判決のいう「示唆」に関する論考につい

ては、同判決が判示された2009 年から2010 年の間に多数出版されている

8

。当該

一般論の射程として、当時の代表的な分析としては、同判決を判示した知財高裁第

三部自身、当該一般論の言い回しを、その後の裁判例で次第に後退させ、「示唆等」

を要求することについての断定の程度が徐々に弱まっているとの指摘がある

9

それでは、同判決が判示された2009 年から相当に時間を経た現在では、裁判例、

とくにその規範の部分ではなく、具体の事案(あてはめ)との関係では、「示唆」

の基準はどのように用いられているのであろうか

10

。そのような視点から、「2. 本

稿の研究手法」により検索された裁判例につき、そのあてはめ(ルールの適用部分)

部分で重視されている以上を一般化して表現することにより、より現在の裁判例に

おける示唆の概念を正確に把握できるものと考えた。その結果は、近時の裁判例に

おける「示唆」の概念の現況は、以下のとおりである。

3 . 2

 「示唆」の用語が従来技術と同等の役割を果たす裁判例の一群(引用例と引

用例を結びつける示唆ではなく、単に技術的事項を開示しているという意

味の示唆)

最も多く見受けられた裁判例は、代表的には「開示または示唆」という表現を用

8 代表的なものとして、鮫島正洋=高見憲「回路用接続部材事件」ビジネス法務 10 巻 11 号 37 頁(2010 年)〈実務 を変えた!最新ビジネス判例 30 選/知的財産法〉、中所昌司「進歩性判断における公知技術の組み合わせ」知財管 理 60 巻 11 号 1827 頁以下(2010 年)、高橋淳「進歩性の判断」知財ぷりずむ 8 巻 95 号 10 頁(2010 年)。特に、上 記最判[回路接続部材判決]の一般論の読み方については、加藤志麻子「進歩性の判断」飯村敏明先生退官記念『現 代知的財産法』(2015 年、発明推進協会)417 頁が詳しい。 9 中所昌司「進歩性判断における公知技術の組み合わせ」知財管理 60 巻 11 号 1827 頁以下(2010 年)1832 頁。 10 比較的最近の「示唆」に関する裁判例の体系的研究として、平成 25 年度特許委員会第 1 部会「近年の進歩性の 判断について」パテント 67 巻 13 号 59 頁がある。(示唆については、審査基準においては、「第 III 部第 2 章第 2 節 進歩性(4)引用発明の内容中の示唆」において、「引用発明の内容中において、主引用発明に副引用発明を適用する ことに関する示唆があれば、主引用発明に副引用発明を適用して当業者が請求項に係る発明に導かれる動機付けが あるというための有力な根拠となる」とされ、具体的な判断例が 1 例挙げられている。こうした審査基準と裁判例 が用いる「示唆」の概念との違いについて、同研究では、「審決では、引用文献から直接読み取れる事項から、示 唆の有無が検討される傾向があった。一方、判決では、引用発明から直接読み取れる事項から更に踏み込んで、当 該事項から当業者であれば理解したであろう事項を導き出すというステップを経て、示唆の有無が検討される傾向 があった」と分析されている。

(6)

いて、端的に、主引用例と請求項発明の相違点に相当するところの、引用例(周知

技術を含む)が開示する技術的要素を検討するものである。この場合、示唆の対象

は、端的に請求項発明と主引用例との相違点であることが多い。これらの場合の

「示唆」は、「開示」と基本的に同じ役割であって、記載の程度が「開示」に及ばな

いものにすぎないととらえることができよう

11

3 . 3

 どの程度の記載があると示唆なのか?さらに、技術常識による示唆の記載

の補充について

引用例において別の物質や構成でも引用例発明を実施「代えて∼でもよい」とい

う公報の記載

12

あるいは、「適用できる」

13

という形で「示唆」の字義通りの明確

11 そのような裁判例として、平成 16 年 11 月 15 日東京高等裁判所(第一審)平成 15 年(行ケ)第 186 号、引用例 で開示されている構成を「示唆」とするものとして、平成 16 年 6 月 14 日大阪地方裁判所(第一審)平成 15 年(ワ) 第 608 号。ここでは最も代表的なものとして、平成 16 年 11 月 15 日東京高等裁判所(第一審)平成 15 年(行ケ) 第 186 号を説明したい。事案は、発明の名称を「サービスクラス自動ルーティング」とする特許出願について、拒 絶査定を受けた原告が請求した不服審判請求に対し、請求不成立とした特許庁の審決について、その取消訴訟で原 審を維持した事案である。判旨は、「原告は、「引用発明において、『サービスクラス(COS)パラメータ』の取得、 『入力呼が特殊通話サービスかまたは非特殊通話サービスか』の決定、『特殊通話サービス呼の処理』、『特殊通話サー ビス呼と非特殊通話サービス呼に対する呼のルーティング』の設定及び実行を、加入者線交換システムにおいて行 うよう変更することは、上記周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものである」とした審決の判断について、 甲 6 公報∼甲 8 公報及び乙 1 文献のいずれにも「加入者線交換システム」において、本願発明にいう「ルーティ ングの設定」、すなわち、原告主張のルーティング処理を行う構成に想到するための開示又は示唆はされていない から、本願発明は、引用発明並びに甲 6 公報∼甲 8 公報及び乙 1 文献に記載された周知技術に基づいて、当業者が 容易に想到し得たものであるとは到底認めることができず、審決の上記判断は誤りである旨主張する。しかしなが ら、上記(3)のとおり、「加入者線交換システムに特殊通話サービス呼の処理を行うとともに、特殊通話サービス呼 と非特殊通話サービス呼のルーティングを設定し、実行する機能を持たせること」は周知技術であると認められる から、相違点(1)に係る本願発明の構成を、加入者線交換システムにおいて行うよう変更することは、上記周知技 術に基づき当業者が容易に想到し得たものであるとした審決の判断にも誤りは認められず、以上によれば、原告の 取消事由の主張は理由がない。」とする。 12 平成 29 年 7 月 27 日平成 28 年(行ケ)第 10202 号、平成 29 年 1 月 18 日平成 28 年(行ケ)第 10005 号。発明の 名称を「曲げ可能な構造および曲げ可能な構造の作動方法」とする特許出願について拒絶査定を受けた原告が、不 服審判請求に対し、特許庁がした請求不成立の審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。「4 取消事由 2(相違 点 1 の容易想到性の判断の誤り)について (1)引用文献 1 には、前記 3(1)エのとおり、第 1 実施例の SMA ワイヤの代わりに SMA コイルを設けた第 2 実 施例について、「SMA アクチュエータ 43 のコイル部 45 は、高温相で収縮状態を記憶させ、低温相では伸長状態と なる 2 方向性のものに限らず、高温相で収縮する 1 方向性のものでもよい。」と記載されており、引用文献 1 のカ テーテルに使用される可撓管の湾曲機構において、高温相で収縮状態を記憶させ、低温相では伸長状態となる二方 向性の形状記憶合金に代えて、高温相で収縮する一方向性の形状記憶合金を用いることについての示唆がある。ま た、前記 2(3)ウのとおり、本願優先日当時、カテーテルの湾曲部の内部に配置される形状記憶合金からなるパイプ について、一方向性の形状記憶合金と二方向性の形状記憶合金とを交換的に用いた公知例(甲 2)がある上、前記 2(4)∼(6)のとおり、一方向性の形状記憶合金を医療用チューブの湾曲部を湾曲する手段に用いること、一方向性 の形状記憶合金線材を複数用いて曲げ状態の移行動作のみならず曲げ状態からの復帰動作を行うアクチュエータが 知られていたこと、高温相で収縮する一方向性の形状記憶合金をアクチュエータとして用い、加熱による収縮で生 じる収縮力をアクチュエータの駆動力とする場合には、あらかじめ低温相において母相(高温相)で記憶された収 縮した形状と異なる形状に変形させておく必要があることは、本願優先日当時の技術常識であった。そうすると、 当業者において、引用文献 1 の上記示唆に基づいて、引用発明の第 1 及び第 2 の SMA ワイヤ 12 において、高温相 で収縮状態となり、低温相で伸長状態となる二方向性の Ti‒Ni 合金に代えて、高温相で収縮する一方向性の形状記 憶合金を採用し、あらかじめ低温相において応力を加えて母相(高温相)で記憶された収縮状態と異なる伸長状態 に変形させておくことは、容易に想到し得るものと認められる。」

(7)

な示唆があり、さらに当該物質や構成が周知のときは、引用例中の示唆の存在を認

め、これを請求項発明の進歩性否定の有力な一事情としうる。

技術常識による補充については、以下の通りである。引用例に直接の記載はない

ものの、引用例の記載に技術常識を補って読むことで技術思想ないし技術的事項が

開示されているという意味で示唆という表現を使う裁判例は多い。すなわち、示唆

と認められるにあたり、引用例に直接記載されているとは読めない場合であって

も、引用例上の記載のみならず、同一技術分野の周知技術を補うことによって示唆

と認めうる場合がある

14

。さらに、(技術常識のみならず)引用例発明の他の箇所

や実施例の記載の技術的意義を補うことにより示唆の有無を判断することももちろ

ん可能である。示唆の有無について、示唆とは別の箇所にある同一明細書中の他の

図表の技術的意義などを参酌して判断した判決がある

15

。さらに、主引用例に上位

概念で示唆されている場合、技術常識で当該上位概念を構成する個々の物質を当業

者が用いることについては(選択発明のようなものを除き)原則として示唆がある

としてよい

16

一方で、技術常識は、引用例中の記載の解釈のほか、課題解決のため引用例に記

載された夥しい化学物質の数を絞り込む方向で用いることもできる

17,18

。なお、発

明の実施に当たり改変すべき部位を特定した上で、ただし「必要に応じて任意の組

合せとすることができる」程度の弱い示唆については、技術常識でそれを補うこと

が許されるにしても、他の進歩性肯定要素、すなわち、複数の引用例が同一技術分

野であることや作用共通、設計的事項等の他の進歩性判断要素とならんで、「示唆」

13 平成 28 年 1 月 29 日民事第 29 部判決東京地方裁判所平成 26 年(ワ)第 34467 号。名称を「家畜の人工授精用精子 または受精卵移植用卵子の注入器及びその操作方法」とする発明の特許権者である原告が、被告製品は本件特許の 技術的範囲に属するとして被告ら三社に対し差止請求及び損害賠償請求を求めた事案である。判旨は関連個所(進 歩性欠如による無効の抗弁成立)につき「(イ)相違点 9-2 について 上記(ア)のとおり、本件特許の出願前に、乙 9 発明を牛に適用することは、当業者において容易想到であったと認められるところ、乙 9 発明を大型哺乳動物であ る牛に適用するのであれば、カテーテル、ビーズ及びステンレス管とは別部材として把握することができる部材で あって、かつ、乙 9 発明を牛に適用する場合には必要とならない部材である光ファイバー内視鏡や膣鏡を除外した 構成とすることは、本件特許の出願前に、当業者が適宜なし得たものというべきであり、容易想到であったと認め られる。」としている。 14 平成 26 年 9 月 25 日知的財産高等裁判所平成 25 年(行ケ)第 10266 号。判決は、「甲 1 文献によれば、エチレン/ 酢酸ビニル共重合体は、従来から、有用な高分子材料として、様々な分野において、用途に適した酢酸ビニルの含有 量のものを用いることが広く行われてきたと認められる。そして、甲 1 文献には、エチレン/酢酸ビニル共重合体の 問題点として、これに含まれる遊離酢酸がこれと接触する機器での腐食を誘発するとの記載があり、エチレン/酢酸 ビニル共重合体が機器と接触する部材として用いられることが示唆されている。」とする。 そして、確かに、「被告は、相違点 1 に関して、甲 1 文献には太陽電池用封止膜や合わせガラス用透明接着剤層 の用途について一切記載も示唆もなく、甲 1 発明に係るフィルムを太陽電池用封止膜等の接着性を必要とする用途 に用いることの動機付けは存在しないと主張する(前記第 4 の 4(3)イ)。」ものの裁判所は、上記示唆を周知技術と 組み合わせて請求項発明の構成(甲 1 文献を太陽電池用防止膜として使うこと)に対する示唆があるとしていると 思われる。 すなわち、「これに加え、太陽電池用封止膜が、甲 1 文献に示唆のある機器と接触する部材であることに照らす と、甲 1 文献に接した当業者にとって、甲 1 発明のフィルムを、架橋された透明なものとして太陽電池用封止膜の 用途に用いることは、容易に想到し得ることであるということができる。よって、相違点 1 、3 及び 4 に係る本件 発明 1 の構成は、甲 1 発明及び周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものと認められる。」である。

(8)

を肯定していることに留意を要する

19

3 . 4

 主引用例以外の文献(副引用例、周知技術)における示唆の扱いについて

示唆は副引用例にあってもよく

20

、とりわけ、主引用例と副引用例が同一の課題

解決手段を採用する場合、あるいは、副引用例に、理想的な数値や、発明の効果を

妨げる物質名が特定されているという意味においてかなり明確な記載がある場合、

15 平成 27 年 7 月 16 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10232 号。「発明の名称「動的な触覚効果を有するマルチタッ チデバイス」の国際特許出願をした原告の拒絶査定不服審査請求不成立審決の取消訴訟である。審決は、前記第 2、 3(3)のとおり、甲 1 には、タッチ面上のユーザの接触位置に基づき、コンピュータの処理部に位置信号を入力する ようタッチ面を操作したときの位置信号を用いる態様として、「位置信号に基づいて、ディスプレイ装置上に表示 されたオブジェクトの画像の回転、再配置、拡大および/または縮小に用いることができる」こと、「コンピュー タ機器にその他の所望の入力を行うために用いてもよい。この入力には、グラフィック環境において、テキストま たは表示された画像の上下左右への移動、回転、または拡大縮小するスクロール入力を含んでもよい」ことが記載 されていることを、少なくとも 2 つ以上の同時接触の感知を導く根拠として指摘する」。しかし、判決では上記図 表とは別の箇所を参酌して次のように判示した。「しかし、上記は、甲 1 の[0009](甲 2 の【0009】)の記載であ るが、ここには、前記(1)アに摘記したとおり、グラフィック環境においてカーソルによる位置づけを行うことや、 グラフィック環境においてスクロール操作を行うことが記載されているにすぎない。そして、グラフィック環境に おけるズームイン又はズームアウト、回転に関し、甲 1 の[0105](甲 2 の【0103】)に「最後に図 29、30 および 31 を参照すると、これらの図は、タッチパッドおよび/もしくはタッチスクリーンまたは類似のタッチ式入力装置 の領域をどのように利用することができるか示している。各図において、タッチ式入力装置のタッチセンサ式表面 の領域は、特定の入力と関連づけられている。図 29 では、「+」領域と「−」領域とが設けられる。これは、例えば、 画像を図的に提示するグラフィック環境におけるズームイン(+)またはズームアウト(−)に用いることができる。 図 30 は、「+X」及び「−X」、「+Y」及び「−Y」を有するバージョンであり、これは、オブジェクトの並進又は回 転や、グラフィカルに示されたオブジェクトと相互作用するなど、要望どおりに用いることができる。最後に、図 31 は、図 30 に示すものと類似の構成を示すが、直観的な方法で中間値(例えば、同時にある程度の−X とある程 度の+Y)を入力することができる。…」と記載され、以下の図 29∼31 が示されている。これは、タッチセンサ式 パネル表面の一定の領域に特定の機能を持たせ、当該機能と結び付けられた当該領域に接触することでオブジェク トの拡大、縮小や回転を実現するというものであり、接触箇所としては、1 箇所を想定したものである」。 16 平成 26 年 2 月 19 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10129 号「前記ア(イ)のとおり、引用例 1 には、複数のポリフェ ノール成分を含有する原料として、「リンゴ、ナシ、モモなどのバラ科植物の果実(未成熟果実をも含む)」を使用 することができる旨の記載がある。この記載及び引用例 1 記載のポリフェノールの分離精製方法の上記目的によれ ば、引用例 1 記載のポリフェノールの分離精製方法において、原料として使用するリンゴ、ナシ、モモなどのバラ 科植物の果実は、成熟、未成熟を問わず、また、その品種を特に限定するものではないことを理解できる。」。 17 裁判例として平成 26 年 5 月 28 日知財高判平成 25(行ケ)第 10221 号。「インキやワニスの技術分野において、 溶媒は樹脂を溶解できるものの中から当業者が適宜選択して使用することが一般的である。もっとも、引用例で列 挙された溶媒の選択肢の数は非常に多く、その組合せも更に多く、グライム系溶媒を積極的に使用する動機付けや 技術常識(技術的背景)がなければ、実際には置換は必ずしも容易ではない。しかしながら、ジグライム、トリグ ライム等のグライム系溶媒は、単独あるいは他の溶媒と混合して、ポリイミドシロキサン用溶媒として本願出願日 前から広く用いられてきたものであるという技術常識が認められる(乙 1∼5、7)。そうすると、ポリイミドの溶解 度やインクとしての性能を考慮して、引用発明の溶媒成分のうちγ-ブチロラクトンをグライム系溶媒に変更したも のを選択することに格別の困難性を見出すことはできず、引用発明のインキにおいて混合溶媒の 2 成分のうちの片 方をグライム系溶媒に変更してみることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。」。 18 なお、「課題」を中心とした進歩性判断において示唆の役割は以下のとおりであった。すなわち、仮に主引用例 発明の課題と請求項発明の課題(副引用例ではない)が広い意味で同じでも両者が採用する課題解決手段や技術思 想が異なることを、引用例発明に示唆がない一事情としうる。さらに進んで、主引用例発明と請求項発明の課題及び 課題解決手段の双方共に異なる場合はもちろんのこと、従来技術では請求項発明の課題を解決できない旨が引用例に 明示の記載がある場合も、請求項発明の進歩性を否定するには引用例発明から出発して請求項発明に至る明確な示唆 が求められ、そうではない限り進歩性が肯定される。また請求項発明が採用した課題が新規である場合は、請求項発 明が採用した課題解決方法に対する従来技術における示唆も認められず、進歩性が肯定されることが多い(平成 29 年 4 月 12 日成 27 年(行ケ)第 10256 号)。これに対して、請求項発明提案の課題解決手段が従来技術に示唆されて いると進歩性は否定される傾向があった(平成 28 年 3 月 8 日知財高判平成 27 年(行ケ)第 10121 号)。

(9)

示唆は、上記裁判例にように主引用例にある場合のみならず、副引用例の記載で

あっても示唆と扱われる場合がある

21

一方で、副引用例まで示唆の範囲を広げるにしても、副引用例の行為が請求項発

明では別の目的でなされる場合は、示唆はないものとされる

22

。そして、示唆と認

められるにあたり、引用例に示唆となりうる可能性のある記載があっても、法令に

19 平成 26 年 10 月 29 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10043 号。発明の名称「車両トランスミッションをシフトす るためのシフト装置」につき原告が特許出願、特許庁の拒絶査定不服審判請求不成立審決の取消訴訟(原審維持)。 以下のように作用共通、設計的事項、示唆が並べられて判断されている。「前記(ア)及び(イ)によれば、引用例 1 記載の手動入力装置と引用例 2 記載のハプティックコントローラは、①ノブの操作フィーリングを良好にしてノブ の操作を確実なものにするため、ノブにその操作量及び操作方向に応じた抵抗感や推力を付与するフォースフィー ドバック機能付き手動入力装置であって、自動車におけるバイワイヤ方式のハンドル装置やトランスミッションの ギアシフト装置、車載された各種の電気機器(例えば、エアコン、ラジオ等)の機能調整装置として適用される点 で技術分野が共通すること、②従来技術として挙げた手動入力装置の具体的構成が共通し(引用例 1 につき別紙 2 の図 17、引用例 2 につき別紙 3 の図 9)、その技術的課題も、ノブに外力を負荷するアクチュエータの制御を検知 手段又は位置センサから出力される検知信号のみに基づいて行うことによって生じる問題点を解決し、手動入力装 置の操作性及び信頼性を高める点において共通することが認められる。そして、一般に、センサとアクチュエータ 等との配置構成は、検知手段に及ぼすノイズ等の発生源の有無、アクチュエータに給電するためのケーブルの取り 回し、所用空間の制限等の設計仕様に応じて適宜選択する設計的事項であるといえる。また、引用例 1 記載の手 動入力装置のように、動力伝達部を設けてアクチュエータの軸とシャフト軸線をずらすか、引用例 2 記載のハプ ティックコントローラのように、アクチュエータをシャフトと同軸に配置するかは、必要な伝達トルクを得るため の減速歯車の要否や、装置全体の所要空間の制限等の観点から適宜、相互に代替、選択し得る設計的事項であると いえる。加えて、前記(ア)c のとおり、引用例 1 には、「本発明」の手動入力装置におけるノブの形状、筐体に対す る操作軸の配列、検知手段の種類、アクチュエータの種類については、各実施形態例に例示した組合せに限定され るものではなく、必要に応じて任意の組合せとすることができる旨の示唆があり、また、前記(イ)c のとおり、引 用例 2 には、「本発明」のアクチュエータとしては、公知に属する任意のアクチュエータを用いることができる旨 の示唆がある。以上によれば、引用例 1 及び引用例 2 に接した当業者においては、手動入力装置の設計仕様に応じ て、引用例 1 発明に引用例 2 記載の位置センサ等の配置構成(前記(ウ))を適用する動機付けがあることが認めら れる。そうすると、引用例 1 及び引用例 2 に接した当業者は、引用例 1 発明に引用例 2 記載の位置センサ等の上記 配置構成を適用して、引用例 1 発明において、一端にノブを配置した操作軸であるシャフトの他端に回転角検出装 置を配置し、その間のシャフト上にアクチュエータを配置し、ノブ、アクチュエータ及び回転角検出装置がその順 にシャフト上に配置され、アクチュエータの軸とシャフト軸が同軸である構成(相違点 1 に係る本願補正発明の構 成)とすることを容易に想到することができたものと認められる。」 20 裁判例として平成 16 年 7 月 12 日東京高判平成 15 年(行ケ)第 459 号「周知例 4 でも「運転者と助手席の乗員 とのアイポイントの高さが異なっている場合や、道路状況等によって運転席と助手席とに入射光の入射状態に差が ある場合に、減光部の減光領域を運転席側と助手席側とで別異に設定して各々の最適状態を得ることができる。」 (9 頁 12 行∼17 行)との記載がされており、アイポイント(目線の高さ)と入射状態が減光領域を定める上で重要 であることが示唆されている」 21 平成 26 年 12 月 24 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10083 号「判決は、主引用例と副引用例の共通性について以 下の様に判示する。「以上のとおり、引用発明 1 と刊行物 2 に記載された事項とは、いずれも、体液凝固剤を遺体 内に供給することによって、遺体の孔部を塞いで、体液が漏出するのを防止する技術に関するものである点で共通 する。」。そして、判決では、「この咽喉からの体液の漏出を抑えることが重要であるという刊行物 2 の記載」(また は示唆)に基づいて、主引用例について「引用発明 1 において、体液凝固剤を特に咽喉に集中的に圧入することが できるように構成することには動機付けがあるといえ、人体の所定の部位に薬剤等を供給するために供給管の長さ をその所定部位に達する長さとすることも、技術常識に照らせば、当業者において容易に想到しうると認められる こ」と判示し、請求項発明の進歩性を否定した。」。 22 平成 26 年 11 月 5 日知財高判平成 26(行ケ)10061 号「副引用例の示唆に該当する行為が主引用例では別の目的 で行われていることも示唆を否定する一事情として進歩性を肯定している(「Ti の添加は、あくまでも、胴外殻厚 肉部に発生する偏析及びそれに付随した組織欠陥を排除するためであって、甲 1 発明のように、MC 型炭化物の晶 出核を生成し、炭化物の大きさを減少し、かつ、分散晶出させるためではない。したがって、甲 7 は、連続鋳掛け 法により複合ロールの外層部を形成する際に、MC 型炭化物の晶出核として作用する Ti を添加する時期や場所を示 すものではない」)とした。」。

(10)

反してその記載を拡張することはできない

23

。また、示唆は、請求項発明と同じ技

術分野の引用例に記載されていることを原則として要するととらえられる。すなわ

ち、請求項発明と引用例発明が異なる技術分野にある場合、引用例発明に、かなり

明確な示唆、例えば、別分野の相当する構成にも適用可能である旨の記載または示

唆がなければ「示唆無し」として、進歩性は肯定されるとされる傾向があった

24,25

3 . 5

 逆示唆、技術常識との関係

裁判例における逆示唆の概念は機能的である。すなわち、裁判例において、「示

唆がない」と認定する時は、単に「開示ないし示唆」がないこと

26

を判示するのみ

ならず、続けて「かえって」あるいは「むしろ」と続けることでむしろ反対方向の

示唆(逆示唆)があることを、示唆が無いことの補強として使う裁判例が多いこと

が特筆に値する。そして、こうした逆示唆の事例、すなわち、(阻害要因或いは阻

害要因とまではいかなくても)当業者の思考過程において、主引用例の一部を、出

23 平成 26 年 9 月 24 日知財高判平成 26(行ケ)10010 号。被告の有する「送付用情報記録冊子」の特許権につき、 原告の特許無効審判請求不成立審決の取消訴訟(結論維持)。「原告は、段落【0006】には、郵便料金におけるコス ト削減について示されていること、情報記録冊子を直接郵送することは、郵便法施行規則 22 条 2 号において許容 されており、周知技術であること、甲 2∼4 のように情報記録冊子を直接郵送する発明が周知であることから、甲 1 の段落【0006】の記載と、周知技術を見ると、当業者であれば、甲 1 の「インデックス製本」を、封筒等を使わず に直接送付しようと考えることは自然であると主張する。しかし、前記のとおり、甲 1 には、インデックス製本自 体を封入せずにそのまま送付することについて記載又は示唆されているとはいえず、段落【0006】に軽量化による 郵送料金のコスト削減が記載されているとしても、かかるコスト削減の要請から直ちに封筒に封入せずに直接送付 することが想起されるものではない。そして、郵便法施行規則 22 条 2 号(平成 19 年 3 月総務省令第 33 号による 改正前は、同規則 16 条 2 号)に、郵便物の基準として、「イ封筒若しくは袋を用いて又はこれに代わるもので包装 し、その納入口又はこれに相当する部分の全部を送達中容易に開かないように封じたものであること。ロ包装しな くても送達中にき損せず、他の郵便物に損傷を与えないものであること。」と規定されていることからすれば、綴 じ部と対向する対向辺が何らかの形で封止されていなければ、冊子自体をそのまま郵便物として送付できないもの であるから、そのような封止のための構成を有していない甲 1 発明を直接送付しようと考えることが不自然といえ る。また、甲 1 発明のインデックス製本を封筒に封入せずに直接送付することについての動機付けがない以上、「各 葉の少なくとも綴じ辺の対向辺の封止領域は、所定の接着パターンで接着剤を塗布し、綴じ辺の接着力よりも弱め に設定された接着力で接着することによって相互間の剥離が可能に接着・封止」する構成を甲 1 発明に適用しよう と動機付けられることもない。したがって、甲 1 発明に、相違点に係る本件発明 1 の発明特定事項を採用すること が当業者が容易になし得ることではないとした審決の判断に誤りはなく、原告の主張には理由がない。」 24 平成 26 年 3 月 25 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10214 号「引用同士が異なる技術分野に属していたり、逆示 唆がある場合は、かなり明確な形の(引用例同士を結びつける)示唆がないと示唆無しとして進歩性は肯定される。 この趣旨に読める裁判例として平成 26 年 6 月 25 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10057 号平成 25 年(行ケ)第 10151 号がある。 25 平成 29 年 1 月 17 日知財高判平成 28 年(行ケ)第 10087 号、平成 26 年 7 月 10 日東京地判平成 24 年(ワ)第 30098 号(スピネル型マンガン酸リチウムの製造方法)。例えば、平成 29 年 1 月 17 日知財高判平成 28 年(行ケ) 第 10087 号は、無効審判請求を不成立とした原審決を維持した審決取消訴訟であるが、判旨は「イ引用発明 3 の認 定(ア)引用例 3(甲 5)には、本件審決が認定したとおりの引用発明 3(前記第 2 の 3(2)カ)が記載されているこ とが認められる。(イ)原告は、引用発明 3 の技術は、静電容量計測に特化したものではなく、レーザー光によるパ ターン形成に関する一般的技術であると主張する。しかし、本件審決の認定した引用発明 3 は、「被覆基板」に係 るものであり、その用途を静電容量計測に特化してはいないので、原告の上記主張は前提を異にし、理由がない。」 としている。 26 (大まかな)解決原理についての示唆すらない場合を示唆なしとしたものとして、平成 27 年 10 月 30 日東京地判 平成 24 年(ワ)第 36311 号がある。

(11)

願当時の技術常識の上では請求項発明の課題達成は困難あるいは他の技術的な問題

を含むと認識されていた物質や行為が従来技術に開示ないし示唆されている事例で

は、これらの問題を抱えていると認識されている物質や行為で置き換えるような、

出願当時の当業者の技術常識からしても希ともいえる行為により請求項発明に到達

するようなケースは、裁判例では基本的に進歩性があるとされている。すなわち、

進歩性を否定するには明確な示唆等、動機付けを肯定する強い要素が証拠関係に求

められる(示唆は一例

27,28,29,30

)。

振り返ってみると、前掲知財高判[回路接続部材]の事例も主引用例から出発し

27 直接的には判決文に「示唆」という言葉を使わない判決として、平成 16 年 11 月 11 日東京地判平成 16 年(行ケ) 第 51 号。さらにこれとほぼ同趣旨のものとして、主引用例から出発すると当該部材の機能上、ありえない作業に より請求項発明に到達するときは、進歩性がある。示唆の言葉はないが、平成 16 年 5 月 12 日東京高判平成 14 年 (行ケ)第 604 号の事案である。「引用発明は、前記のように、「シリンダーノズル」(可動部材に対応)の内に「シ リンダー(切り替えバルブ)」(ガス通路制御部に相当)、その内にピストン A、その内側にピストン B が設けられ た構造となっていること、そして、シリンダーノズルの内側とシリンダー(切り替えバルブ)の外側の間の空間を、 弾丸を発射するガスが通過するものであり、一方、シリンダー(切り替えバルブ)の内側壁とピストン A、B の前 部ないし前面部との間の空間にガスが注入されることで、ピストン A、B の前部ないし前面部が受圧部となり、ピ ストン A 及び B が、続いてピストン B がスライド部を押して後退させる構成となっていることが認められる(甲 4-1・2)。このような構成において、上記のようにガス圧を作用させる構成においては、シリンダーノズル(可動部 材)の後端をピストンの前部ないし前面部(受圧部)よりも前方に配置することは、機能的にみてあり得ない。(中 略)そうすると、引用例記載のものにおいて、本件発明のように構成要件 G を採用することは当業者が容易に想到 できることとはいえない。」とした判断は、是認し得るものである。」。 28 平成 26 年 6 月 25 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10057 号平成 25 年(行ケ)第 10151 号「また、甲 2 には、緊 急サービスなど、即時の通信のためのアクセスを必要とする子局が存在すること及びこのような即時のアクセスを 必要とする子局を所定のユーザクラスに所属させることによって、他の子局より優先的にアクセスさせることを開 示又は示唆する記載はない。かえって(下線は本稿で付加)、甲 2 には、「アクセス制御値と乱数の値とにより制御 局 3 に対してアクセスできるか否かが決まるので、通信を希望する子局にとって平等であり、制御局 3 との距離の 条件等によりある決まった子局のみが常にアクセスが受け付けられるという不平等もなくなる。」(3 頁左下欄 16 行 ∼3 頁右下欄 1 行。前記ア(オ))との記載がある。そうすると、(中略)適用する動機付けを認めることができな い」。 29 平成 27 年 3 月 3 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10263 号「また、甲 2 には、緊急サービスなど、即時の通信の ためのアクセスを必要とする子局が存在すること及びこのような即時のアクセスを必要とする子局を所定のユーザ クラスに所属させることによって、他の子局より優先的にアクセスさせることを開示又は示唆する記載はない。か えって(下線は本稿で付加)、甲 2 には、「アクセス制御値と乱数の値とにより制御局 3 に対してアクセスできるか 否かが決まるので、通信を希望する子局にとって平等であり、制御局 3 との距離の条件等によりある決まった子局 のみが常にアクセスが受け付けられるという不平等もなくなる。」 (3 頁左下欄 16 行∼3 頁右下欄 1 行。前記ア(オ)) との記載がある」。 30 平成 29 年 1 月 23 日知財高判平成 27 年(行ケ)第 10010 号「しかし、甲 18 公報の記載をみても、「アルミニウ ムをベースとする被覆材」におけるアルミニウム以外の成分については、8∼11% の珪素と 2∼4% の鉄を含むもの や 2∼4% の鉄を含むものが記載されている(段落【0011】等)のみであり、亜鉛については何らの記載や示唆はな く、また、アルミニウム以外の成分をアルミニウムと同程度(45∼50%)まで含ませることについても何ら記載や 示唆はない。加えて、上記アのとおり、本件特許の優先日当時の当業者の間で、溶融亜鉛めっきの被膜に 900°C 程 度の高温を作用させることが不適切なこととして認識されていた事実に照らせば、鋼板に 850°C∼950°C の高温を 作用させる甲 18 発明において、「アルミニウムをベースとする被覆材」として、多量の亜鉛を含む「アルミニウム 55%‒亜鉛 45%」のめっきや「アルミニウム 50%‒亜鉛 50%」のめっきをあえて用いることは、考え難いことといえ る(本件発明 1 において、「亜鉛または亜鉛ベース合金」の被膜が用いられているのは、「亜鉛又は亜鉛合金で被覆 した鋼板を熱処理又は熱間成形を行うために温度を上昇させたときに、従来の定説と違って、被膜が鋼板の鋼と合 金化した層を形成し、この瞬間から被膜の金属の溶融が生じない機械的強度をもつようになる」という新たな知見 が得られたことに基づくものであるから、このような知見を前提としない本件特許の優先日当時の当業者が、甲 18 発明において多量の亜鉛を含む被覆材を用いることは考え難いことである。)」。

(12)

て、接続信頼性と補修性に優れた本願発明に到達するのに、良好な耐熱性が求めら

れるはずの回路用接続部材に用いるフェノキシ樹脂として、格別の問題点が指摘

されていないビスフェノール A 型フェノキシ樹脂に代えて、あえて耐熱性の低い、

すなわち従来の技術常識では不利と考えられていたビスフェノール F 型を用いた

点に、最大の特色があり、先行文献に逆示唆があった事案である。そうであるとす

ると、同判決の一般論の射程は措くとしても、具体的事案との関係で逆示唆の存在

を立証できたようなときは、進歩性を肯定する扱いは、今日でも継続しているとい

えるだろう

31

。ここまでは、技術的に不利と考えられていた要素による引用例の置

き換えについて分析した。

以上に加えて、技術的効果が不明なもので置き換える場合にも進歩性があるとさ

れていた

32

。より特定の例として、引用例発明の構成が開示されていたとしてもそ

れが当該引用例発明とは異なる別の有利な用途を持つことが当業者に一般には知ら

れていないような場合、このような有利な用途を生かした請求項発明の進歩性が否

定されるには、当該引用例上に別用途に対する開示または示唆が求められる

33

これに対して、分析対象である2014 年から2017 年の進歩性に関する裁判例を俯

31 なお、たとえ逆示唆(請求項発明採用の課題解決手段が出願時点における技術常識では不利と考えられていたこ と)と思われる公知文献があっても、示唆に至る文献が上回る場合は、示唆があるとしてよい。そのような裁判例 として、平成 26 年 12 月 18 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10020 号がある。 32 平成 27 年 3 月 26 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10139 号「確かに、甲 1 発明の L3M の式で表される Ir(ppy) 3 と、甲 4 記載の L2MX の式で表される錯体 16-21 とは、Ir(ppy)2 という部分構造を有すること及び発光波長が 緑色であること等においては共通するものの、甲 4 記載の L2MX の式で表される錯体 16-21 の N‒O 配位子が、発 光特性にどのような影響を及ぼすかについては、本件優先日当時において何らかの知見があったことを認めるに足 りる証拠が全くない以上、上記部分構造と発光波長の共通性等に基づいて、甲 1 発明の L3M の式で表される Ir 88 (ppy)3 を、甲 4 記載の L2MX の式で表される錯体 16-21 により置換することが可能であることを当業者が容易に 想到することができたとまでいうことはできない」。そのほか、平成 28 年 2 月 17 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10272 号。 33 平成 27 年 4 月 21 日知財高判平成 26 年(行ケ)第 10156 号。 34 平成 26 年 7 月 30 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10058 号。平成 29 年 11 月 21 日知財高判平成 29 年(行ケ) 第 10003 号、平成 29 年 10 月 25 日知財高判平成 29 年(ネ)第 10093 号。例えば、平成 26 年 7 月 30 日知財高判平成 25 年(行ケ)第 10058 号は、名称を「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的 眼科用処方物」とする被告らの発明について、原告は、特許無効審判請求をしたが、特許庁が審判請求不成立の審 決をし、その請求認容事例である。関連個所は。「上記のとおり、本件特許の優先日当時、ヒトのアレルギー性結 膜炎を抑制する薬剤の研究及び開発において、当該薬剤における肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどの 各種の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)に対する拮抗作用とそれらの化学伝達物質の肥満細胞からの遊離 抑制作用の二つの作用を確認することが一般的に行われており、甲 1 記載の KW-4679 を含有する点眼剤をヒトに おけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みるに際し、当業者は、KW-4679 が上記二つの作用 を有するかどうかの確認を当然に検討するものといえること、さらには、前記(3)ウ(ア)認定のとおり、本件特許 の優先日当時、薬剤による肥満細胞に対するヒスタミン遊離抑制作用は、肥満細胞の種又は組織が異なれば異なる 場合があり、ある動物種のある組織の肥満細胞の実験結果から他の動物種の他の組織における肥満細胞の実験結果 を必ずしも予測することができないというのが技術常識であったことに鑑みると、甲 1 に、モルモットの動物結膜 炎モデルにおける実験において KW-4679 がヒスタミン遊離抑制作用を有さなかったことが記載されていることは、 KW-4679 がヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用を有するかどうかを確認する動機付けを否定する 事由にはならないものと認められる。」である。なお、技術的な困難性と異なり、引用例に経済的に困難であるこ とが記されていても、逆示唆(実現が困難である旨を教示すること)にあたらないとされている(進歩性否定、平 成 16 年 5 月 31 日東京高判平成 15(行ケ)489 号。)

(13)

瞰すると、出願時点で請求項発明の課題達成にあたり(同等ないし)有利な効果が

あることが既に知られていた物質ないし行為で従来技術を置き換えることには進歩

性はないと判断されていた

34

4 .

 結びに代えて

−情報ネットワーク社会の到来と特許進歩性との関係に関する若干の再考察−

以上のように、本稿は、2014 年から2017 年の裁判例に基づいて、第二ステップ

の重要な判断要素である「示唆」の概念を整理してきた。

具体的には、「3.2 「示唆」の用語が従来技術と同等の役割を果たす裁判例の一群」

の項目においては、「示唆」の概念が引用例における「開示」と同様の役割を果た

している裁判例を紹介した。また、「3.3 どの程度の記載があると示唆なのか?」及

び「3.5 逆示唆、技術常識との関係」も、それぞれ、引用例における示唆の記載の

程度(前者)及び引用例の具体的記載の内容(後者)について裁判例を分析した。

そしてここで、情報ネットワーク社会の到来と進歩性の関係を再考すると、示唆の

存在を立証するこれらの引用例は、非特許文献(技術文献)の場合もあるが、その

中核は特許文献(中でも公開公報)であることが着目される。そうだとすれば、第

二ステップにおいて「示唆」あるいは「逆示唆」の存在を裏付ける公開公報を検索

する有力な手段もまた、Google を初めとした多数のオンライン上の検索エンジン

や引用例検索に特化した専門の有料オンラインサービスなのである。この意味にお

いて、示唆の裁判例分析とインターネット上の検索技術の発展は密接な関係があっ

たといえる。

換言すれば、社会的事実のレベルでみると、オンラインや AI による引用例の検

索技術の発展は、「1. はじめに」で述べたように、特許無効を主張する側が検索エ

ンジン等を利用して最も請求項発明に近い主引用例を見つけ出しやすくなったため

に、第一段階の難度を下げ進歩性を否定する方向に機能した。しかしその一方で、

第二段階においては、審判ないし訴訟開始後においては、特許無効を主張する側と

特許有効を主張する側の両当事者が示唆の有無をめぐって両者ともに検索エンジン

を駆使して引用例を提出するために、検索技術の発達は、検索により提出された文

献に示唆があると認定された場合は進歩性を否定する方向に機能する一方(「3.2 ど

の程度の記載があると示唆なのか?」)、検索により提出された文献に逆示唆がある

と認定された場合は進歩性を肯定する方向にも機能しているといえる(「3.4 逆示

唆、技術常識との関係」)。

そうした意味では、情報ネットワーク社会の到来、とりわけ検索技術の飛躍的発

展は、「1. はじめに」で述べたように、第一ステップの難度を事実上引き下げたた

め、第二ステップの進歩性の法的基準を引き上げる遠因となったのみならず、肝心

(14)

の次の焦点である第二ステップにおいても目下、第二ステップの難度を社会的事実

として、上げる方向にも下げる方向にも影響を与えている。第一ステップのみなら

ず第二ステップについても前記検索技術の発展により第二ステップの主役の一つで

ある示唆や逆示唆を導く引用例や文献を、検索エンジンや AI 等の最新の検索技術

で探し出す場面が益々増えることにかんがみるとこのことはより一層妥当するだろ

う。その意味では、情報ネットワーク社会の到来は、今なお進歩性判断全体の陰の

主役であり続けているといえるのかもしれない。

従前、発明が生まれる実験等の過程で AI を使用した場合の特許法上の諸論点に

ついては検討がなされているが

35

、本稿は、発明が生まれ、その後、出願後の審判

あるいは訴訟に至り、主張立証の過程で AI や検索エンジンを駆使して引用例や文

献の検索を行った場合に進歩性判断にもたらす影響を「示唆」の概念から具体的に

考察したものである。

(ときい・しん)

35 代表的な文献として、中山一郎「AI と進歩性」パテント 72 巻 12 号のうち「4.2 当業者による AI の利用可能性 と非自明性判断」(190 頁以下)及び「5.1 当業者による AI 利用可能性を考慮することの是非」(193 頁以下)。

参照

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