抄 録
パネルディスカッション1「外傷医療における医療機器の進歩」
5 月27日 10:10 Web 第 2 会場
座 長 藤田医科大学病院救急科 / 済生会横浜市東部病院救命救急センター
船曵 知弘 先生
防衛医科大学校病院救急部
霧生 信明 先生
パネルディスカッション2「次世代に伝えたい匠の技」
5 月28日 14:50 Web 第 1 会場
座 長 島根医科大学 Acute Care Surgery 講座
渡部 広明 先生
日本医科大学付属病院高度救命救急センター
原 義明 先生
パネルディスカッション3「外傷画像診断の最前線」
5 月28日 9 :00 Web 第 3 会場
座 長 筑波メディカルセンター病院救急診療科
河野 元嗣 先生
国立水戸医療センター救命救急センター
土谷 飛鳥 先生
パネルディスカッション4「日本外傷データバンクを用いた研究最前線」
5 月28日 14:40 Web 第 2 会場
座 長 帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター
三宅 康史 先生
Curtin University, Australia
東平日出夫 先生
パネルディスカッション5「頚髄損傷治療の現状と展望」
5 月28日 13:10 Web 第 3 会場
座 長 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター
井口 浩一 先生
大阪府立中河内救命救急センター
山村 仁 先生
パネルディスカッション6「REBOA に関する現状と展望」
5 月28日 10:30 Web 第 3 会場
座 長 山梨県立中央病院
井上 潤一 先生
八戸市立市民病院救命救急センター
吉村 有矢 先生
パネルディスカッション7「外傷に関するAI等の先端科学に関する研究」
5 月28日 16:30 Web 第 1 会場
座 長 順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科
岡本 健 先生
新潟大学医学部救急医学講座
西山 慶 先生
パネルディスカッション8「IVR の基礎を放射線科で学ぶ必要性」
PD1-1 TEG6s, i-STAT, 画像伝送システムを搭載した ドクターカーによる病院前診療と Hybrid ER の効果 島根大学医学部附属病院高度外傷センター 室野井智博,齋藤 保隆,恩田 禎子,秋月 光, 田中 航,松本 亮,山本祐太郎,藏本 俊輔, 岡 和幸,下条 芳秀,木谷 昭彦,比良 英司, 渡部 広明 【背景・目的】我々は外傷症例に対して救急車型ドクター カーを運行してきたが,血液凝固分析装置 TEG6s,血液ガ ス分析装置 i-STAT,画像伝送システムを搭載した新ドク ターカーの運行を開始したので,その効果を検討した.【方 法】2020年10月から2021年 1 月までに外傷症例に対して出 動した新ドクターカーによる病院前診療の効果を後方視的 に検討した.【結果】新ドクターカーは車載する生体モニ ター,エコー,ビデオ喉頭鏡画像,車内カメラ,位置情報 を NTT Docomo 回線を介して,病院内にリアルタイムに 伝送可能とした.また,車載した i-STAT,TEG6s により アシドーシスと凝固障害を迅速に評価し,ポータブル冷蔵 庫内の赤血球病院前輸血体制を構築した.約 3 ヶ月間で61 件の重症外傷症例に出動した.全例において車内映像,生 体モニターおよび FAST の画像共有が可能であった.外傷 性 CPA は 3 例で,全例に蘇生的開胸術および病院前輸血 が開始された.58例はハイブリッド ER に搬入し,CPA を 除く55例は搬入と同時に全身 CT 撮影を行った.i-STAT, TEG6s 測定症例は21例であった.【結語】新ドクターカー により,患者情報を迅速かつ的確に院内と共有することが 可能となり,Hybrid ER との組み合わせにより,より早い 治療開始と安全な出血源の同定が可能となった. PD1-2 外傷医療における医療機器の進歩当施設にお けるハイブリッド ER の運用について 東北大学病院高度救命救急センター1),東北大学大学院医 学系研究科外科病態学講座救急医学分野2) 藤田 基生1), 川副 友1)2),工藤 大介1)2),谷河 篤1), 佐藤 武揚1),久志本成樹1)2) 東北大学病院 HybeidER は2018年 5 月より稼働し,緊急で CT 検査・透視を使用する処置・手術を考慮する症例の入 室を優先とした選定で,年間600例の診療を同診療室で行っ ている.占有面積: 123.6 m2 (110.4 m2)の手術も行える 診 療 ス ペ ー ス に Siemence 社 の CT:SEIMENS SO-MATOM Definition AS+( 128列 , ガントリ開口径 78cm) および 透視装置:SEIMENS ARTIS Pheno (C アーム内フ リースペース 95.5 cm)診療手術台:MAQUET MAG-NUS を設置している.循環動態が不安定な患者であっても 身体の移動なくバイタルサインモニタリング下に種々の検 査・治療をシームレスに組み合わせることができ,良好な 予後を産み出すきっかけとなっている.主に多発外傷・急 性期脳卒中・心肺停止蘇生の初療における各種処置に対し 短い CT スキャン時間,血管造影時の微細な血管描出,高 いモニター解像度等により不必要な被ばくを避けた診療を 進めることが可能である.ハイブリッド ER の運用につき 医療機器に視点をおき報告する. PD1-3 超軽量ポータブルX線装置を活用した外傷診 療の実践 日本医科大学付属病院高度救命救急センター1),日本医科 大学救急医学教室2),日本医科大学付属病院放射線技術部 門3) 五十嵐 豊1)2), 池田 慎平2), 平井 国雄3), 生天目かおる1)2),矢作 竜太1)2),齋藤 研1)2), 富永 直樹2), 瀧口 徹1)2),石井 浩統1)2), 横堀 將司1)2) 【背景】外傷初期診療におけるX線撮影は,primary および secondary survey でそれぞれ行われるため,即時性が求め られる.超軽量ポータブル X 線装置(CALNEO Xair, Fu-jifilm Corporation.以下,本装置)を活用した外傷診療の 実践について紹介する.【概要】本装置は3.5kg とX線照射 装置としては小型軽量であり,部位別のプリセットボタン から選択して撮影するため,医師が撮影条件に関する専門 的知識なく撮影可能である.患者到着前にストレッチャー 上にフラットパネルディテクタを置き,必要時に医師がX 線撮影を行って直ちに画像を閲覧することで,診断や治療 までの時間短縮が期待される.また,処置中にカテーテル やドレーン先端の位置を確認できるため,合併症の回避に 役立ち,気管挿管,中心静脈カテーテル,胸腔ドレーン, 大動脈内バルーン遮断,輪状甲状靭帯切開に使用経験があ る.Cアームや透視では患者の移動が必要になるが,本装 置では移動の必要がなく,移動のリスクや時間短縮に寄与 する.今後は,ドクターカーに搭載し病院前における使用 を予定している.【結語】ハイブリッド ER を導入する施設
PD1-4 一 時 的 閉 腹 法 と Open abdominal manage-ment の進歩
帝京大学医学部附属病院
長尾 剛至,藤田 尚,朝長 鮎美,高野かおり, 中澤佳穂子,伊藤 香,角山泰一朗,三宅 康史, 坂本 哲也
Open abdominal management (OAM) は 外 傷 に お け る damage control surgery に始まり,昨今では非外傷性疾患 に対しても適応が拡大,外科診療においての一般的手技の 1 つと言える.OAM での一時的閉腹法は長い時間をかけ て追求され進歩してきた.米国では2003年には ABTHERA 第 1 世代である V.A.C ドレッシングシステムが使用開始さ れたが,本邦では導入されず Barker 法を中心とした手作 りの一時的閉腹法が一般的となった.2019年 2 月より第 2 世代である ABTHERA ドレッシングキットが使用可能と なり(米国2012年10月),さらに2020年11月からは第 3 世 代の ABTHERA ADVANCE ドレッシングキット(米国 2019年11月)も使用できるようになった.当院でも2019年 2 月より全面的に ABTHERA の使用を開始し,これまで 2 年間で外傷,非外傷症例を含め50症例以上の患者へ使用 してきた.本邦でも最新機器が使用可能となった一方で, その具体的管理や合併症への対応など課題も残っている. 当院での使用経験の紹介と文献的考察を踏まえ ABTHERA による一時的閉腹法と OAM に関して発表する.
PD1-5 外傷医療における医療機器の進歩ともいえる 止血帯(ターニケット)とその特徴について 防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門1),防 衛医科大学校病院救急部2),防衛医科大学校防衛学講座3) 関根 康雅1)2),齋藤 大蔵1)2),霧生 信明1)2),金子真由子2), 寺山 毅郎2), 山田 浩平2), 清住 哲郎2)3),田中 良弘2), 池内 尚司2) 危機的な出血から生命を救うためには,迅速かつ確実な止 血が求められる.四肢の大出血に際しては,止血帯(以下 ターニケット)が有用であり,わが国でも東京オリンピッ ク・パラリンピックの開催が決定されて以降,消防機関だ けでなく,外傷医療に関する応急手当の一環として,ター ニケットを用いた止血帯止血法の教育が行われるようにな り,ターニケットも広く知られるようになってきた.三角 巾と棒による即席止血帯を原点としたターニケットは,時 代と共に幾多の進歩をとげ,製造するメーカーによって使 用方法の異なるターニケットがいくつも市販されるように なった.今回,巻き上げ式(締め上げ式)のターニケットや, カフ(風船)を加圧して膨らます圧迫式のターニケットな ど,現在市販されているターニケットの構造や使用方法の 違いについて紹介し,代表的な巻き上げ式ターニケット Combat Application Tourniquet(CAT),the SOF tacti-cal tourniquet(SOFTT),SAM ターニケットXT(SAMXT) について,非医療従事者を対象とした操作性,信頼性,携 帯性,再現性,使用感の 5 項目について, 5 段階評価でア ンケートを実施した結果をもとに,非医療従者はどのよう なターニケットを好むのかを報告する. PD2-1 手術に対する私のポリシー 深谷赤十字病院外傷・救命救急センター 金子 直之 若手医師の挨拶で「まだ半人前」という言葉を耳にするが, 私はこの言葉が嫌いである.医師の技術は終点のない修練 で,常に改良と改善を求め,一人前がないので半人前もな い.今回は処置・手術に対し私が実践しているポリシーを 述べる.( 1 )時間:全ての手術で時間を意識する.開腹 虫垂切除15分,小児鼠径ヘルニア10分,開腹胆摘30分,胃 切除60分などである.外傷でも同様で,例えば脾摘と小腸 部分切除の際は各々に要した時間を記録する.時間を短縮 するには,創は小さめで,正確で無駄がなく,出血させず, 詳細な解剖学的知識とそれに基づくクリアカットな動作が 必要で,全ての手術に応用が利く.また,ある手技に要す る時間を把握していれば,重症外傷手術30分で何ができる のか判断できる.( 2 )目的:事前に明確にする.止血な のか切除なのか.胸腔ドレナージでは挿入経路が問題では なく,ドレーン尖端位置と効果が問題である.( 3 )手術 記録:野口英世は論文に関し「書けないということは分 かっていないということ」と述べているが,手術記録でも 同様である.( 4 )気管切開:AB に直結し,救急医・外傷 医の最も基本的手技と考える.私は電気メスを用いず,出 血はガーゼ 1 枚湿る程度,執刀からチューブ挿入 5 分を指 導している. PD2-2 肝胆膵領域における外傷外科手術手技
島根大学医学部 Acute Care Surgery 講座 渡部 広明
体幹部外傷のなかでも肝胆膵領域の臓器損傷に対しては適 切な術式を正しく選択して実行することが求められる.今 回,肝胆膵領域の外傷手術手技について解説をする.重症 肝損傷の初回手術戦略の基本は damage control surgery (DCS)である.この際に行われる代表的手技としては perihepatic packing がある.パッキングはガーゼを挿入す るだけではなく論理的パッキングを行う手技能力が必要で ある.肝虚血には計画的再手術(PRO)で肝亜区域切除を 実施する.NOM 後の肝虚血には可能な限り腹腔鏡下肝部 分切除術を考慮する.重症膵損傷の初回手術戦略も同様に DCS である.膵損傷に対する DCS は膵頭部と膵体尾部で は異なる.前者には peripancreatic packing を後者には膵 体尾部切除術を実施する.膵損傷の初回手術では膵周囲の パッキングをしっかり行うことで膵液の拡散を防止し PRO を安全に行うことができる.膵頭部の挫滅が高度な場合は PRO の際に二期的膵頭十二指腸切除術を行う.膵体尾部の 切除においては脾臓温存の観点から初回切除を回避して PRO の際に脾動静脈温存膵体尾部切除術を行う.肝胆膵領 域の外傷手術においては,初回手術は正しい DCS の手技を, PRO の際には肝胆膵領域の専門的手技を適切に実施するこ とが重要である. PD2-3 膵空腸吻合手技の工夫とその実際 旭川医科大学外科学講座肝胆膵・移植外科学分野1),旭川 医科大学外科学講座消化管外科学分野2) 萩原 正弘1),岩田 義浩1),高橋 裕之1),今井 浩二1), 横尾 英樹1),松野 直徒1),角 泰雄2),古川 博之1) 膵損傷は主膵管損傷の有無が治療方針に大きく関与し,適 切な治療を行わないと致命的になる.近年では主膵管損傷 に対する保存的治療例も散見されるが,原則的には外科手 術が一般的である.膵頭部損傷では膵頭十二指腸切除を要 し,膵体尾部損傷では循環動態不安定な場合は膵体尾部切 除を行うが,安定していれば臓器温存手術も考慮される. いずれも膵消化管吻合が必要となり,膵瘻が問題となる. 我々は定期手術では現在,膵空腸吻合を Blumgart 変法で 行っており,同方法での膵瘻はこれまで7/131例と比較的 良好な成績を収めた.外傷外科医にも資すると考えられ, その再建方法,管理を解説する.4Fr 膵管チューブを不完 全外瘻として留置し,まず 4 - 0 プローリン 3 針で挙上空 腸の漿筋層長軸方向に運針後,膵実質を後壁から前壁に貫 通させる.その際,真中の糸は主膵管をまたぐように運針. 膵管粘膜吻合は 6 - 0 PDS RB2で行う.膵管前壁中点にま ず 1 針かけて支持糸とし,中点を12時として 3 時, 9 時の 両端に運針し膵管を三角形にし,吻合を容易にする.後壁 5 針,前壁 5 針の計10針,いずれも主膵管内腔より運針す る.その後空腸短軸方向に 4 - 0 ナイロンを運針,結紮し 吻合終了とし,術後は 3 ~ 4 日でドレーン抜去する.
PD2-4 Don't Feel. Think! ~画像の中に真実あり~ 聖マリアンナ医科大学救急医学救急放射線部門1),聖マリ アンナ医科大学救急医学2) 松本 純一1),昆 祐理1),濱口 真吾1),藤谷 茂樹2) 外傷診療においては,画像検査に頼ることなく速やかに判 断し,処置,治療を行わなければならない場面はある.一 方で,ポータブル X 線写真にせよ,CT にせよ,それらを 最大限活用して,より質の高い外傷診療を行うこともでき る.早い段階での画像診断と IVR のチームの起動に始まり, damage control の 要 素 を 取 り 込 ん だ 血 管 内 治 療 手 技 (DCIR:damage control interventional radiology)で外傷 性出血を治療しようとする PRESTO(prompt and rapid endovascular strategies in trauma occasions)という考え 方では,CT 室滞在時間を可能な限り短くし,画像評価も 最短で行うことが求められる.今回は,次世代に伝えたい 「技」として,受傷機転,受傷時刻,生命徴候の経過など と合わせて画像を解釈し,患者の現在の状態と今後,そし て最適な治療方針を立てるための迅速かつ効率的な画像解 析法を紹介する.重要なポイントは,受傷機転と時間経過 から起こり得る損傷を想定しながら画像を見ていくこと で,しばしば不明となることは多いが,できるだけ正確な 受傷時刻と受傷機転を把握することから始まる.当日は, 実際の症例画像を供覧しながら画像解析のプロセスを解説 する. PD2-5 外傷診療における Interventional Radiology の 匠の技 帝京大学ちば総合医療センター IVR センター 村田 智,鈴木 利直,北村 真樹 外傷診療における Interventional Radiology(IVR),中で も鈍的外傷による腹部実質臓器損傷や骨盤損傷に対する止 血術としての IVR の有用性は広く認識されており,止血が 必要な場合には「頭からつま先」まで損傷部位を選ばず, 出血制御を提供することが可能である.循環動態が不安定 な症例の場合は,迅速性と確実性から外科手術での止血が 選択されることが多いが,case by case で外傷診療チーム の共通認識のもと,IVR での止血を選択することも一つの 選択肢として知っていただきたい.熟練した IVR 医・IVR チームであれば,全身のいずれの血管にもアプローチが可 能で,迅速かつ確実に損傷血管の止血を達成できる.これ から IVR の修練を希望する外傷診療医には頻度の多い体 幹・骨盤領域に限らず,全身の損傷への対応ができるよう になっていただきたい.熟練した IVR 医は外傷診療チーム の一員として患者の救命のために与えられた,時として難 易度の高いオーダーに自身の技術と経験を最大限に用いて 応えるべきである.実際に IVR で治療行った外傷症例を供 覧し,匠の技を伝えたい. PD2-6 重度胸壁外傷患者に対する観血的肋骨固定の 有用性と長期的成績 大阪市立大学医学部附属病院救命救急センター 内田健一郎,日村 帆志,宮下 昌大,野田 智宏, 西村 哲郎,山本 啓雅,溝端 康光 【背景】近年フレイルチェストを含む多発肋骨骨折に対す る Plate & Locking Screw による観血的整復固定(P/SOR-IF)について多くの短期的成績が論じられているが,長期 的成績や合併症を評価した報告は多くない.当院で加療し た P/SORIF の長期的成績およびインプラント関連合併症 を調査した.【方法】2014年 1 月から2019年12月に当院で P/SORIF を施行した患者の現在の仕事能力,日常生活に ついて電話によるヒアリング調査を実施した.結果22人の 患者が対象となった. 2 人の患者は老衰のために死亡し, 20人(91%)から追跡調査を得た.追跡期間は47.5(IQR 22-58)ヶ月であり,研究期間中の有害事象はプレートに よる軽度違和感のみであった (N=2, 10%). 2 人は74歳以 上の高齢女性であり薄い軟部組織のため体表から触知する プレートによって引き起こされるものと推察された.併存 四肢骨折のため 2 人はリハビリ通院中であった.18人はほ ぼ受傷前同等の生活または同じ仕事に戻ることができてい た. EQ-5D-5L の中央値は0.89(IQR 0.84-0.93)であり インプラント除去を要す関連合併症はなかった.【結語】 重度胸壁外傷に対する P/SORIF は良好な長期機能回復を 得られていた.軟部組織の薄い高齢者に対しては術前に通 知する必要がある. PD2-7 出血性ショックに対する右心耳内輸液(IR-RAA)の可能性 公立豊岡病院但馬救命救急センター 永嶋 太,小林 誠人,番匠谷友紀,松井 大作, 高須 惟人,菊川 元博,渡邉 隆明 外傷性ショック症例は末梢静脈の虚脱にて輸液ライン確保 が困難な場合がある.当センターでは外傷性心停止症例に 対する蘇生的開胸術の際に静脈路確保が困難または輸液路 が急速輸血ラインとして使用できない場合,右心耳内に輸 液路を確保(infusion route into right atrial appendage: IRRAA)し,輸液/輸血を行う.Clamshell 開胸時に右心 耳を鑷子で把持し,その周囲にプロリンで巾着縫合をかけ る.右心耳を切開し,ペアンで広げ輸液ラインの先端を挿 入し,プロリンを結紮し固定し,輸液/輸血を開始する. 今回この IRRAA の有用性について検討した.(方法)2011 年から2020年までに Clamshell 開胸を行った外傷性心停止 例で,IRRAA 群(35例):通常輸液路群(36例)で,分時 投与量,ROSC 率,生存率を比較した.(結果) 生存率(%) (2.8: 0 (p=0.3070))は有意差を認めなかったが,分時 投与量(ml/分) 75.2(61.3-97.3):23.1(11.6-37.2) (p< 0.001)及び ROSC 率(%) 17.1:2.9 (p=0.04236)は有 意に IRRAA 群が上昇していた.IRRAA 手技の施行時間 は3.3(2.5- 4 )(分)で,合併症は挿入部周囲からの少量 の漏れで結紮を追加した 1 例以外その他特に認めなかっ た.(結論)右心耳輸液手技は輸液路確保が困難な場合や 大量輸血が必要な場合には有用である可能性がある.
PD3-1 外傷診療における2管球 CT 装置の有用性 国立病院機構水戸医療センター1),日本救急撮影技師認定 機構2) 田中 善啓1)2) 【背景】今日の外傷診療において CT 検査は重要な役割を 果たしている.特に,MDCT の出現により短時間での全身 撮影いわゆる外傷 Pan scan を実現する事ができた.しかし, 高エネルギー外傷のはじめとする重症度の高い患者では, 頻脈の患者が多いほか,呼吸停止ができない,指示が入ら ない等,従来の MDCT 装置を用いた撮影ではモーション アーチファクト,コントラスト分解能不足などで画像診断 の妨げとなることがしばしばある.【目的】当院では2014 年より 2 管球搭載型「SOMATOM Definition Flash」が稼 働している.ガントリー開口径は780mm と広く,正常体 位が取れない,バックボードに乗っているなど多くの処置 が施されている患者においても,ポジショニングが容易且 つ安全である.超高速撮影の Flash Spiral mode は, 2 管 球システムを用いることで,ピッチ3.4の超高速撮像が可 能であるため,外傷症例だけではなく,呼吸状態が悪く息 止め困難な症例の他,大血管領域や急性腹症まで幅広く使 用し,放射線科医及び救急医より高い評価を受けている. また, 2 つの管球から異なるエネルギーを用いた Dual en-ergy 撮影も外傷診療への有用性が報告されており,今回は 経験した 2 管球 CT を用いた外傷症例を元に今後の可能性 についても検討する. PD3-2 胸壁損傷による胸腔内容量変化による肺炎予 測能の検証 既存の評価法との比較 奈良県立医科大学高度救命救急センター 川井 廉之,宮崎 敬太,古家一洋平,高野 啓佑, 前川 尚宜,福島 英賢 【背景と目的】胸壁損傷の治療は選択肢が増加しているが, 最適な治療の選択には正確な重症度評価法が必要である. 今回,胸壁損傷による胸腔内容量変化(第33回外傷学会に て報告)による肺炎発症予測能を,既存の重症度評価法と 比較した.【方法】本研究は,単施設後ろ向き研究である. 2017年 4 月から 3 年間に来院時外傷全身 CT 撮影例から18 歳未満,CPR 施行,鋭的外傷,画像評価困難,両側損傷例 等を除いた例が対象.胸壁非損傷群における左右の胸腔内 容量の関係から,片側胸壁損傷例の損傷側の胸腔内容量変 化(以下,容量変化量)を算出し,肺炎予測能を評価した. 次いで,既存のカテゴリカルデータを用いた胸壁損傷重症 度評価法(Rib Score,Rib Fracture Score,Organ Injury Scale,Chest Trauma Score)を用いて同じデータの範囲 内での肺炎予測能を評価した.統計学的方法は予測能を ROC 曲線の AUC で評価した.有意水準 p<0.05を統計学 的に有意とした.【結果】対象は非損傷群506例,片側群 133例.容量変化量の AUC 0.83,既存の評価法の最大 AUC は CTS 0.79 (p=0.65).【結論】容量変化量は既 存の評価法と比較し肺炎発症をより正確に予測できる可能 性が示唆された. PD3-3 優れた外傷画像診断には多職種チームによる 地道な画像作成適正化が必要である 和歌山県立医科大学救急集中治療医学講座 米満 尚史,柴田 尚明,島 望,渕上 淳也, 三宅 雄一,加藤 正哉 外傷画像診断は MDCT 普及により広範囲撮像・多断面再 構成が一般化し予後改善効果を実感する一方,当施設での 検討では画像上の損傷見逃しが約10%,特に全身 CT 撮影 で有意に多く発生している.見逃し回避の優れた外傷画像 診断は主に 1 )迅速な画像撮像,2 )適正な画像作成,3 ) 正確な読影,の 3 要素を内包するが,各々さらにハード面 の機器進歩と,ソフト面の多職種チームアプローチで構成 される. 1 )画像撮像は MDCT/DSCT や Hybrid-ER に 加え,造影含む体制円滑化や撮像迅速化トレーニング,3 ) 正確読影は院外/遠隔読影システムや AI 読影に加え,放射 線技師・放射線科医のダブルチェック読影,などが主であ る.軽視されやすい 2 )適正な画像作成は,多断面再構成 が当然となったがゆえに,多職種で調整された最適画像が できあがってこないと, 1 )も関連して「関心臓器が撮像 範囲外(特に多発外傷)」「不適切な再構成による画質低下」 「アーティファクト除去不足」などでせっかくの予後改善 効果を取りこぼす要因となる.当施設には救急科専門医兼 放射線科専門医が 2 名常駐しており,画像適正化を日々地 道に続けている.MDCT を中心に各部位ごとに実際の反省 症例やピットフォールを提示し,予後改善に寄与する優れ た画像診断について概説する. PD3-4 四肢外傷における WorkStation を使用した手 術プランニング支援画像の有用性 湘南鎌倉総合病院 清水 利光 【症例】自宅で転倒受傷にて右大腿部痛あり.右大腿の変 形あるが,足背動脈触知可能であった.レントゲンにて右 大腿骨骨幹部骨折.また, 5 年前に他院にて左大腿骨幹部 骨折手術をしており変形があるため右大腿骨折のためのプ ランニング困難症例であった.【方針】手術・リハビリに て自宅退院.(TFNA long/12x300mm/125°/Blade 80mm/ Screw 32,34mm)【対応】CT 撮影を行い, 3 D 処理にて 骨片や骨折部位を受傷時前の状態に戻しその画像によって プランニングを行い手術行った.【まとめ】骨折による手 術では術前プランニングが必要となることがある.大きく 形状が変わっていなければ患側又は健側の情報を使用して 術前プランニングを行い使用デバイスを決定する.しかし ながら,患側が形状を保てない骨折であり健側は数年前の 骨折のため変形しているためプランニングに使用する箇所 がなかった.今回,撮影した CT 画像を workstation にて 受傷前の状態に戻すことによりプランニングを可能とし た.各装置の進歩により多くの有用性を見出しているが, 従来の装置や workstation でも使用法を考慮することに よって臨床に有効な情報を提供できた.
PD3-5 ハイブリッド ER における whole body CT の 実際 -診療放射線技師の立場から- 済生会横浜市東部病院放射線部 藤森 章史,稲垣 直之 当院においては2014年,横浜市における救急医療体制の整 備を目的として,横浜市重症外傷センターを開設し,2017 年10月より 2 ルーム型 Hybrid-ER を稼働させ,外傷診療 を行なっている.Hybrid-ER は初療室,CT 撮影室,血管 撮影室,手術室の機能を集約させており,傷病者の移動を することなく外傷診療が行えるため,診断や根本治療開始 までの時間短縮が期待される.しかし,CT 撮影後から根 本治療開始までの時間短縮を見込めるものの,従来法では 存在していた患者移動の時間がないため,必要とされる画 像の処理時間が限られてしまうことなど課題も挙げられ る.また Hybrid-ER における CT 撮影は,従来方式とは 異なりガントリー自走式であるため,撮影時の注意点や安 全面での対策も必要となってくる.また,Hybrid-ER の外 傷プロトコルのひとつとして当院で行なっている,搬入直 後に直接 CT を撮影する Direct whole-body CT(Dire-CT) についても紹介する. PD3-6 画像は予後を改善しない 聖マリアンナ医科大学救急医学救急放射線部門1),聖マリ アンナ医科大学救急医学2) 昆 祐理1)2),下澤 信彦2),松本 純一1)2),森澤健一郎2), 吉田 徹2), 平 泰彦2), 藤谷 茂樹2) 【はじめに】当院では2001年から救急医学教室内に救急放 射線部門が設けられており,画像診断・IVR を救急診療に 積極活用した歴史があり,それは外傷診療においても行わ れてきた.しかしながら外傷診療における画像診断の有用 性が JATEC ガイドラインに掲載されるようになった昨今 においても,当院で画像診断・IVR を有効に活用できてい るとは言えない現状にある.当院での実際の外傷症例を提 示する.【症例】60歳台男性.10m のはしごから転落し受傷. 意識障害あり当院に搬送された.来院50分後に CT が撮像 され,脳挫傷,急性硬膜下血腫,右血気胸,右後腹膜出血 を認め,来院135分後に TAE が開始されたが,頭蓋内圧亢 進により意識状態は回復なく療養型病院に転院となった. 【考察・まとめ】MDCT の発達により CT の availabirity は 上昇し,あたかもそれだけが有効かと思われ,Hybrid ER 時代に突入している.しかし,それらを有効に活用するた めには,迅速な検査を提供するためのチーム医療,迅速な 読影と診療中に画像を活用するための画像評価者の設定, その人材の育成など,さまざまな課題がある.当院での症 例を通じて外傷診療に画像診断が有効というために必要な 課題について検討し共有する. PD4-1 日本外傷データバンクを用いたテーラーメイ ド医療の展開 順天堂大学医学部附属浦安病院 近藤 豊,三好ゆかり,石原 唯史,平野 洋平, 末吉孝一郎,岡本 健,田中 裕 長い間,外傷患者の病院前・初期診療においては科学的検 証がなされないまま多くの治療がおこなわれてきた.病院 前において外傷患者はロード&ゴーと判断されれば,SpO2 の値に関わらず,基本的に全員に高濃度酸素の投与がおこ なわれる.さらに病院に到着した後は,JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care) の 治 療 指 針 に の っ と り,FAST(Focused Assessment of Sonography for Trauma)検査が外傷患者全員へ施行される.外傷患者 に対してこれらの治療や検査を全員におこなうのは,外傷 初期の診断の不確定さ,最適な治療のエビデンスが乏しい ことによる.現在,日本外傷データバンクを用いたデータ ベース研究が隆盛を迎えた.外傷患者の治療法において, 何が必要で,何が不要なのかを検討すべき時期に入ったと 考える.全ての外傷患者への治療から,患者にあったテー ラーメイド医療を展開するためには,日本外傷データバン クを用いた外傷疫学研究が有用な可能性がある.本発表で は,日本外傷データバンク研究から,外傷初期診療のエビ デンスについて概説する. PD4-2 日本外傷データバンクを用いた予測モデルの 構築と検証 東京都立墨東病院高度救命救急センター 柴橋 慶多,宝田 秀憲,杉山 和宏,濱邊 祐一 我々は,日本外傷データバンクを使用して鈍的外傷性脳血 管損傷の予測モデルを開発した.研究成果は,当該領域の leading journal である米国脳神経外科学会誌(Journal of Neurosurgery)に採択された.本発表では,その概要を提 示し,我々の研究手法を学会員の皆様に応用していただく ための tips についてもご紹介する.【研究の概要】目的: 鈍的外傷性脳血管損傷のリスク因子を特定し,予測モデル を作成する.方法:日本外傷データバンクに登録された鈍 的外傷患者を対象とした.データを training cohort と vali-dation cohort に分割する.まず,training cohort において, 鈍的外傷性脳血管損傷を目的変数,リスク因子候補を説明 変数とするロジスティック回帰分析を行い,有意な変数を 特定し,有意な因子による予測モデルを構築した.次に, validation cohort において,先ほど作成したモデルを実装 し,その診断能を Area under the receiver operating char-acteristic curve (AUC)によって評価した.結果:13個の リスク因子が同定された.Validation cohort において,構 築された予測モデルの鈍的外傷性脳血管損傷診断における AUC は0.89 (95% confidence interval, 0.87-0.92)であっ た.
PD4-3 日本外傷データバンクを用いた血管内治療に 関する研究 済生会横浜市東部病院救急科1),筑波記念病院救急科2) 青木 誠1),阿部 智一2),松本 松圭1) 2004年に日本外傷データバンク(以下 JTDB)が設立され てから,現時点までに JTDB には約40万例の外傷症例が登 録されている.JTDB データは所謂ビッグデータであり, 最大の特徴であるそのデータの規模により様々な研究が手 掛けられ論文報告がされてきている.多くの臨床科はそん なビッグデータである JTDB データを用いて,外傷領域の 中でも自分の関心がある研究を手掛けたいと考えるのでは なかろうか.私自身血管内治療を所謂サブスペシャリティ にしていることもあり,血管内治療についての研究を JTDB データ用いて行いたいと考え,実際に今まで行って きた.一方で JTDB データを用いて関心のある領域の研究 を行おうとする際に,時として自分の行いたい研究が JTDB では行えない事にも気づかされる.JTDB 含めたビッ グデータは特定の治療等に着目したデータセットではない ので,例えば血管内治療の研究に必要と考えられるデータ, 具体的に言うと塞栓臓器や塞栓動脈,塞栓物質といった データは JTDB には含まれておらず,行える研究は限られ る.本講演では,私自身が JTDB を用いて手掛けた血管内 治療に関する研究を例として,「JTDB データを用いてどの ような研究が行えるか」に着目して,研究を企画する際の コツと共に説明をしたい. PD4-4 日本外傷データバンクを用いた研究を促進す る研究チームの構築 大阪大学医学部救急医学1),大阪大学医学部社会環境医学2), 国立病院機構大阪医療センター救命救急センター3),大阪 府立病院機構大阪急性期・総合医療センター高度救命救急 センター4),京都大学環境安全保健機構健康科学センター5), 京都府立医科大学救急医療学6),大阪市立大学医学部救急 医学7),大妻女子大学大学院人間文化研究科8) 中尾俊一郎1),片山 祐介1),北村 哲久2),廣瀬 智也1), 館野丈太郎1),石田健一郎3),小島 将裕3),木口 雄之4)5), 梅村 穣4),松山 匡6),野田 智宏7),清原 康介8), 中川 雄公1),嶋津 岳士1) 【背景】日本外傷データバンクは,外傷に関する国家規模 のデータベースであり,本邦の外傷の疫学や診療行為とア ウトカムの関連を明らかにすることで,外傷診療の質を向 上させるために活用されている.一方で,臨床家が診療行 為を行う上で生じた臨床疑問を,大規模なデータを用いて 解決し,世界に発信するためには,医学部の医学教育のみ では十分とは言えない.我々は,臨床疑問を持つ臨床家と 疫学者とで研究チームを形成し,日本外傷データバンクを 用いた臨床研究を行っている.【方法】2017年 4 月より, 救急医と疫学者が,ウェブを用いて毎月ミーティングを行 い,各々が臨床疑問を持ち寄り,研究デザイン,データの 処理,選択すべき統計解析などについて議論して共同で研 究を進め,論文執筆を行っている.【結果】構成メンバーは, 臨床家と疫学者合わせて2021年現在10名程度であり,2018 年度からの 3 年間で,日本外傷データバンクを用いて英文 誌に掲載された研究論文は10編であった(2018年; 3 編, 2019年; 3 編,2020年; 4 編).【結語】救急医と疫学者で チームを組織し,日本外傷データバンクを用いた研究の着 実な推進をはかることができる. PD4-5 外傷合併症と外傷内科医の重要性 筑波記念病院 阿部 智一,入山 大希,小森 大輝,戒能多佳子 外傷初期診療の整備が進み,予後が改善してきたことを 我々は疫学研究で証明してきた.一方で入院後の外傷診療 の予後に対する影響ははっきりしていなかった.そのため, まず,我々は入院後の外傷診療の質の評価として定時手術 で用いられている Failure to Rescue(FTR)を外傷診療の 業績に当てはめ評価した.FTR とは外傷合併症後の院内死 亡のことである.結果は定時手術の報告と違い,外傷診療 における高死亡率病院は低死亡率病院よりも合併症率が高 く,院内死亡率,FTR が高かった.(Critical Care 2020) つまり,外傷合併症の特徴を調べ,その診療の質を上げて いくことが今後の外傷診療の予後向上につながると考え た.そのため,現在,我々は個別の外傷合併症に対する研 究を行なっている.脂肪塞栓は長幹骨開放骨折に多く,手 術開始までの時間が長い方が起こしやすかった.(Chest 2021)肺塞栓にも同様の傾向があった.また,外傷後の感 染は死亡率を最も高める合併症の一つであった.その中で も予後に対する影響力が大きかったのは外傷の重症度が低 い患者であった.外傷患者の高齢化が進み,救命した後の 外傷診療期間が延長している.外傷内科学の重要性が高 まっている. PD4-6 矛盾値・外れ値・欠測値への対処 亀田総合病院 白石 淳 2019年までの日本外傷データバンクは,372,314例の重症 外傷患者の特徴を記載した267変数を含み,広範な臨床疑 問に高い検出力を提供する巨大データベースである.しか し,巨大さはバイアスの低減を保証しない.その一つが, 矛盾値・外れ値・欠測値である.矛盾値は,変数相互の値 の矛盾である.例えば,緊急室死亡の 11,838例には,生存 退院した 128例 (1.1%) が含まれる.外れ値は極端に大き い(小さい)数値である.例えば,受傷から病院到着まで の時間が計算可能な 202,980例のうち,これが24時間を超 えるものが 4,859例 (2.4%)含まれる.欠測値は値がない ものである.例えば,最も重要な変数のひとつである ISS は 18,405例 (4.9%), 退 院 時 の 生 命 転 帰 は 30,874例 (8.3%) がそれぞれ欠測している.これらの異常値は,臨 床疑問によっては選択バイアスや統計量算出へのバイアス を招く.新しい日本外傷データバンクでは,異常値の入力 を低減するためのアラート機能を実装した.入力者への AIS coding の研修会を行っている.データベースとして配 布されたものには,R や Python を用いて,矛盾値を発見 するロジック,ロバスト回帰などの外れ値を発見する分析 を行って除外し,欠測値には多重代入法を用いる.
PD4-7 外傷患者に対する ECMO 使用の実態 - 日本外 傷データバンクによる解析 -北里大学病院救命救急・災害医療センター 田村 智,栗原祐太朗,丸橋 孝昭,浅利 靖 【背景】外傷の ECMO 使用について本邦からまとまった報 告はなく,適応も治療成績も不明な点が多い.日本外傷デー タバンク(JTDB)は2019年に新システムになり ECMO の 項目が追加された.そこで明らかになった ECMO 使用の 実態と今後のデータ収集の課題を報告する.【方法】2019 年から変更された新 JTDB に登録された ECMO 使用例を 後向きに検討した.【結果】対象は14例( VV-ECMO 5 例, VA-ECMO 8 例,VA,VV-ECMO 1 例).年齢中央値62歳, 男性11例(79%),受傷機転は交通外傷 6 例,墜落 3 例, 刺創 2 例,その他 3 例,ISS 中央値25,病院前 CPA は 8 例 (57%),Ps 中央値0.09,死亡は11例(79%).死亡症例の 入院日数は全て 4 日以内であった.VA-ECMO と VV-EC-MO では死亡,ISS,入院日数など明らかな差異はなかった. 【考察】病院前 CPA 症例が多く,蘇生のフェーズにおける ECMO 使用が数多く登録されたことがわかった.JTDB 入 力において ECMO は蘇生治療の項目にあることから,諸 外国からの報告も多い受傷後数日経ってからの ARDS に対 する VV-ECMO の使用は反映されていない可能性がある. 【結語】JTDB に登録された外傷 ECMO 症例は14例/年で 重症例が多く,死亡率も高い. ECMO 使用の実態をより 正確に反映させるために前向き多施設登録研究が必要であ る. PD4-8 重症鈍的外傷に対する診療実績の施設間評価 東京大学医学部附属病院災害医療マネジメント部1),横浜 市立大学大学院医学研究科救急医学教室2) 問田 千晶1)2),六車 崇2),嶽間澤昌泰2),篠原 真史2), 竹内 一郎2), 森村 尚登1) 【背景】外傷診療の質の向上には,診療実績指標を用いた 施設間における診療実績の比較は重要である.【目的】診 療実績評価指標として標準化死亡比(SMR)を用いたリス ク調整後に施設間の診療実績を比較検証し,本邦における 重症外傷診療体制の課題を明らかにすること.【方法】対 象は2009-18年に JTDB に登録された ISS≧16の重症鈍的外 傷.病着時心停止例は除外.対象例を10年間で50例以上登 録した施設167例を対象施設とし,施設ごとの SMR< 1 群 と SMR≧ 1 群で,症例数,手術件数,搬入から手術開始 までの時間を比較した.【結果】対象は89,047例.SMR< 1 群は150施設,SMR≧ 1 群は17施設.SMR< 1 群は施設 あたりの症例数はで有意に多く(SMR< 1 群 vs. SMR≧ 1 群 平均568例 vs. 226例,p<0.01),SMR≧ 1 群で年平均 150例以上登録された施設はなかった.SMR< 1 群の方が, 予測生存率は有意に低く(0.82 vs. 0.85,p=0.01),開腹 手術数は有意に多く(21件 vs. 5件,p<0.01),開腹手術ま での時間は有意に短かった(162分 vs. 231分,p=0.02).【結 語】実生存率が予測生存率より高い施設(SMR< 1 )は, 施設あたりの診療件数および診療の質ともに高いことが示 された.発表では,JTDB データの検証にもとづく重症外 傷診療の課題と展望を考察する. PD4-9 救急救命士の現場活動関与は外傷患者の転帰 を改善するか 兵庫県災害医療センター1),岡山大学救急災害医学講座2) 西村 健1),野島 剛2),湯元 哲也2),内藤 宏道2), 中尾 篤典2),石原 諭1),中山 伸一1) 【目的】救急救命士は専門的教育・経験を享受し,試験に 合格した者のみに国家資格として与えられ,より質の高い 病院前ケアを提供することを期待されている.しかし外傷 患者に対して救急救命士の有効性は検討されていない.日 本外傷データバンク(以下 JTDB)を用いて,後方視的に 救急救命士の現場活動が外傷患者の転帰に与えた影響を検 討した.【方法】2004年から2017年に JTDB に登録された 16歳以上の患者を対象とした.熱傷,施設間搬送,AIS 6 , データ不足の症例を除外した.少なくとも 1 人の救急救命 士が同乗している症例を ELST 群 ,救命士不在で搬送さ れた症例を BEMT 群とし,Primary outcome を生存退院, Secondary outcome を外傷に対する IVR を含めた止血術の 有無,輸血の有無として群間で比較した.【結果】生存率 は ELST 群で有意に改善 (OR 1.16, 95%CI 1.00-1.34, p= 0.049)していた.緊急介入,輸血の有無に有意差は認め なかった.二次解析において ELST 群の生存率は,軽症者 (ISS<16),高齢者(65歳以上),介入不要症例,早期搬入 症例(30分以内)で有意に高かった.【結論】救急救命士 による病院前ケアは外傷患者転帰の改善に影響を与えた. PD5-1 救命センターにおける頚髄損傷超急性期手術 の取り組み 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 井口 浩一,大饗 和憲,八幡 直志 受傷から 8 時間以内の除圧術は麻痺の改善効果があるとの 報告が散見される.本邦でもいくつかの施設において超急 性期手術が行われているようであるが,当院は頚髄損傷に 対する手術件数が最も多い施設の一つである.経験的に超 急性期手術の麻痺改善効果に関しては確信を持っている が,全国に超急性期手術がひろまることには懐疑的である. ポイントを 3 つあげる. 1 点目は有効性を実証するハード ルが高いこと. 2 点目は重症頚髄損傷であれば生命の危険 性が高いこと. 3 点目は,麻酔科・放射線科・リハ科・看 護部などとの協力体制が不可欠であること.当院では院内 外の理解を得るのに10年近く費やした.集約化が理想的だ が,院内各部署への負担増の覚悟が必要である.今後の展 望として,超急性期手術,再生医療,ニューロリハビリテー ションを組み合わせた治療効果を検証する必要がある.そ のためには多施設研究が必要であるが,急性期の神経所見 はダイナミックに変化するため,介入の有無によらず初診 時,最終経過観察時の神経所見調査時期を一致させる必要 がある.すなわち,初診時神経所見は受傷から 3-5 時間 が望ましく,救命センターの多施設研究参加が不可欠であ る.
PD5-2 頚髄損傷に対する早期手術 in Japan
群馬大学大学院医学系研究科整形外科学 筑田 博隆
頚髄損傷は,日本の脊髄損傷の 9 割弱をしめ,高齢での受 傷が多い.最近の全国調査によれば,最も受傷者数が多い のは70歳代である(Miyakoshi et al, Spinal Cord, 2020). 受傷原因の多くは,平地での転倒といった低エネルギー外 傷であり,しばしば骨折や脱臼を伴わない非骨傷性頚髄損 傷を呈する.この10年で頚髄損傷に対する早期手術を巡っ て,パラダイムシフトが起きた.2012年に北米から発表さ れた STASCIS 試験は,受傷後24時間以内の早期手術が有 効かつ安全であるとし,その結果,早期手術の流れが大き く加速した.今や骨傷がある頚髄損傷に対しては,24時間 以内の早期手術がコンセンサスになっている.その一方で, 早期手術が日本で多くみられる非骨傷頚髄損傷に対しても 同様に有効であるかどうかについては,十分なエビデンス が得られていない.頚髄損傷に対する早期手術は,日本に おいて未だ一般的な治療とはなっていない.受傷後24時間 以内の緊急手術が行われている例は,むしろ少数派である. 24時間体制で緊急の脊椎手術が可能な施設は,ごくわずか に限られる.今後,頚髄損傷に対する早期手術については, 施設間での役割分担やロジスティクスの観点からも議論さ れるべきだろう. PD5-3 頚髄損傷に対する手術療法の現状 関西医科大学総合医療センター救命救急センター脳神経外 科1),関西医科大学総合医療センター救命救急センター2), 関西医科大学救急医学講座3),関西医科大学脳神経外科学 講座4) 岩瀬 正顕1),齊藤 福樹2),中森 靖2),鍬方 安行3), 淺井 昭雄4) 【目的】頚髄損傷に対する手術療法につき中心性脊髄損傷 (ATCCS:acute traumatic central cord syndrome)と軸 椎損傷に注目し自験例をもとに検討し考察を加え報告す る.【方法】2017-2020年救命センター搬入 TSI(traumatic spinal injury)99例のうち頚髄損傷について後方視的に検 討した.【成績】発症年齢は中央値60歳代,性別は男性> 女性,頚髄損傷は ATCCS(ASIA-C)が最多で,受傷形 態は ATCCS 骨傷無,続いて骨傷有 ATCCS の順であった. 頚椎脱臼勘合は全例整復,手術療法は後方除圧,後方除圧 固定,前方の順であった.軸椎骨折が 1 割を占めた.【考察】 米国統計は50年間に脊髄損傷の平均年齢が20歳代から40歳 に高年齢化,年間人口100万発生頻度も40から50代に増加, 日本でも60-70歳代一峰性ピーク有,高齢者の変性疾患既 往の頚髄 ATCCS 最多と報告されている.24時間以内手術 の有効性が,重症脊髄損傷1)に加え骨傷有 ATCCS2) で証明 された.本報告症例も同様の傾向を示した.【結論】1. 救 命救急センター TSI は高齢化し,ATCCS が多数を占めた. 2. 当施設ではこれら報告に準拠した早期手術が行われて いた.
1 )Fehlings MG:STASCIS2012. 2 ) Divi SN: ATCCS:A Narrative Review, 2019.
PD5-4 高度救命救急センターにおける頸椎骨折・頚 髄損傷の検討 横浜市立大学附属市民総合医療センター1),横浜市立大学 附属市民総合医療センター整形外科2) 松本 匡洋1),東 貴行2),川村 祐介1),谷口 隼人1), 高橋 耕平1),岩下 眞之1),竹内 一郎1) 【はじめに】頸椎骨折に伴う頚髄損傷は外傷医療の中でも 機能予後不良な損傷と考えられている.今回,高度救命救 急センターにおける頸椎骨折・頚髄損傷の現状について検 討する.【対象】2015年 4 月から2020年12月までに高度救 命救急センターに搬送された頸椎骨折症例のうち外科的介 入を要した72例を対象とした.【結果】年齢は65.3±20.3歳, 男性53例女性19例,ISS は22.8±9.5,受傷起点は墜落が11 例,交通外傷が25例,転落が25例,転倒が11例であった. 損傷高位は C 2 :11例,C 3 :16例,C 4 :17例,C 5 :11例, C 6 : 2 例であった.入院時の AIS は A:26例,B: 6 例, C:14例,D: 9 例,E:11例,退院時の AIS は A:19例, B: 9 例,C:18例,D:10例,E:11例であり,改善を認 めた例が 9 例,変化なしが57例であった.入院後に気管切 開術を受けたのが33例,再手術を受けたのが 4 例であった. 合併症としては椎骨動脈損傷が 9 例であり,肺炎が15例, 尿路感染症が 6 例であった.【結語】墜落,交通外傷といっ た高エネルギー外傷による症例が半数であった.多くの症 例は 2 日以内に行われ, 9 例で改善を認めた.合併症は肺 炎が16例と最多であったが,椎骨動脈損傷も10例で認めて いた.以上を含めて文献的考察を加えて検討する. PD5-5 脊髄損傷患者に対する再生医療~自家骨髄間 葉系幹細胞による静脈内注射~ 札幌医科大学医学部整形外科学講座1),札幌医大附属フロ ンティア医学研究所神経再生医療学部門2) 押切 勉1)2),山下 敏彦1),本望 修2) 我々はこれまでに脊髄損傷に対する細胞移植療法の基礎研 究を積み重ね,患者自身から得られた骨髄液から採取・培 養した間葉系幹細胞(以下 MSC)を静脈内に投与するこ とにより,機能回復が得られることを明らかにしてきた. これらの研究成果に基づき, 2013年より急性期脊髄損傷患 者に対する医師主導治験を実施し,その有効性と安全性が 認められ,2019年 5 月より細胞生物製剤(再生医療等製品: 静注剤)「ステミラック注」が使用可能となった.治療対 象は外傷性の重度脊髄損傷で,麻痺が AIS A~C であるこ と,頸髄から胸腰髄損傷であること,当院にて骨髄液の採 取が受傷後31日以内に実施可能な方である.さらに,重篤 な疾病・外傷が併存していないこと,悪性腫瘍や感染症の 合併がないこと,などの除外基準も設けている.我々が行っ ている自己培養 MSC の静脈内投与による再生医療は安全 性が高く,標準治療(手術,リハビリ)との併用を妨げない, 患者への負担が少ないという利点があり,脊髄損傷に対す る新たな治療法として期待されている.使用開始から 2 年 が経過し多くの症例を積み重ねてきたため,今回ステミ ラックによる再生医療の実際と今後の展望に関して報告さ せて頂く.
PD6-1 REBOA が消化管機能に及ぼす影響 済生会横浜市東部病院 松本 松圭,船曵 知弘,清水 正幸 【背景】大動脈の蘇生的血管内バルーン閉塞術(REBOA) は,大動脈閉塞時には消化管血流が低下するため,消化管 機能に悪影響を及ぼす可能性がある.本研究の目的は, REBOA が消化管機能を評価すること.【方法】2008年から 2019年までに当院の外傷センターに 4 日間以上入院した全 外傷患者を対象にレトロスペクティブレビューを行った. REBOA 郡と Non-REBOA 郡の間で消化管機能を比較する ために,傾向スコアマッチング分析を用いた.摂食不耐性 (FI),摂食目標達成までの時間に関するデータを取得した. 【結果】計1694名のうち27名が REBOA を受けた患者であっ た. 1 : 1 の傾向スコアマッチングを行った後,REBOA 群と Non-REBOA 群にそれぞれ22人の患者を割り付けた. REBOA 群では,Non-REBOA 群に比べて FI の発生率が 有意に高く(77% vs. 27%;OR,9.1;95%CI,2.31-35.7), 給餌目標達成までの期間が長かった(10日 vs.9日).【結語】 REBOA の使用は消化管機能障害と関連していた. PD6-2 外傷性心肺停止に対する REBOA の施行率と その有効性について 慶應義塾大学医学部救急医学1),済生会横浜市東部病院救 命救急センター2) 山元 良1),船曵 知弘2),佐々木淳一1) 【背景】外傷性心肺停止に対する REBOA は,Resuscita-tive Thoracotomy (RT)と比較して大動脈遮断の遅延が懸 念され推奨されていない.しかし,外傷外科医不在時など 数少ない状況を適切に選択できる施設であれば,効果が期 待できる可能性がある.そこで,施設ごとの外傷性心肺停 止 に 対 す る REBOA 施 行 率 を 調 査 し, そ の 頻 度 別 に REBOA の効果を解析した.【方法】JTDB から外傷性心肺 停止症例を抽出し,病着時心肺停止に対して REBOA ある いは RT を施行した成人症例を対象とした.各施設の患者 数に対する REBOA 施行数の割合を REBOA 施行率と定義 し,施行率ごとに REBOA 症例と RT 症例の院内生存率を 比較した.また,年齢,受傷機転,重症度,搬送時間など の背景因子を Inverse Probability Weighting を用いて調整 した.【結果】対象症例1483例のうち144例で REBOA が施 行された.REBOA 施行率25%以下が96施設,25~50%が 17施設,50%~が 8 施設であった.REBOA 施行率25%以 下の施設では REBOA 症例の生存率は RT 症例より高かっ たが(4.3% vs 0.8%;OR 5.4 [2.5-11.6]),その他の施 設では差がなかった.【結語】外傷性心肺停止に対する REBOA 施行率が低い施設でのみ,REBOA と生存率改善 の関連が認められた. PD6-3 外傷診療における REBOA の外傷手術適用: 日本外傷データバンクを用いた記述研究 帝京大学ちば総合医療センター IVR センター1),亀田総合 病院放射線科2),亀田総合病院救命救急センター3),東京医 科歯科大学医学部附属病院救命救急センター4),McGill University Health Center, Division of General Surgery5), 練馬光が丘病院総合救急診療科救急部門6),帝京大学医学 部附属病院救命救急センター7),石川県立中央病院救急科8), 東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科9),済生 会横浜市東部病院救命救急センター10),沖縄県立中部病院 救急科11),八戸市立市民病院救命救急センター12) 鈴木 利直1)2),白石 淳3),大友 康裕4),伊藤 憲佐3), 内野 隼材5), 遠藤 彰4), 北井 勇也6),角山泰一朗7), 蜂谷 聡明8), 舩越 拓9), 松本 松圭10), 山本 一太11), 吉村 有矢12) 【背景】外傷診療における REBOA は,近年使用が拡大している.本研 究の目的は,REBOA の使用に適切な外傷手術適用を定義し,その定義 を用いて群分けし,患者の特徴と転帰を記述することである.【方法】 2004年から2019年までの日本外傷データバンクを使用した.手術適用42 項目から REBOA の使用に適切な項目を Delphi 法で選択した.この結 果 を 用 い て,REBOA を 使 用 し た 患 者 を,REBOA 適 切 使 用 群, REBOA 不適切使用群,手術非適用群と群分けし,特徴と転帰を記述し た.【結果】11人の外傷診療医に 5 回の調査を行い,REBOA の使用に 適切な手術適用として,1. 腹腔内出血,2. 後腹膜出血,3. 骨盤出血,4.TAE を要する腹腔内臓器損傷,5. 四肢の出血を選択した.REBOA を使用し た1,637人のうち,81.6%に手術が行われ,院内死亡率は61%であった. REBOA 適切使用群,REBOA 不適切使用群,手術非適用群はそれぞれ 1,002人,253人,381人とであり,院内死亡率 (56.4%, 53.8%, 77.7%, P< 0.001)と来院から止血開始までの時間 (94分 , 110分 , 91分 , P =0.009) PD6-4 REBOA の適切な臨床使用に向けて:基礎研究 と教育活動 千葉県救急医療センター集中治療科1),千葉大学大学院医 学研究院救急集中治療医学2),北里大学医学部救命救急・ 災害医療センター3),国立病院機構大阪医療センター救命 救急センター4),東京ベイ・浦安市川医療センター救急集 中治療科5) 松村 洋輔1)2),丸橋 孝昭3),石田健一郎4),舩越 拓5) 【背景】重症体幹外傷の出血性ショックに対する REBOA の有効性の確立には基礎研究と教育活動が必要である.【方 法】 1 ) 生体ブタに REBOA を留置し,大腿動脈脈圧消失 時のバルーン注入量を100%と定義した.0-100%まで遮断 強度(%balloon volume,%BV)を変化させ dynamic 4 D-CT を撮影した.造影後の時間と標的部位の CT 値を描 出(Time-density curve,TDC)し,灌流指標として area under TDC を計算した.4D-volume rendering(VR)を評 価し,非出血時(Matsumura Y et al. Sci Rep 2020)と出 血時を比較した. 2 )DIRECT-REBOA コースを少人数討 論を重視したオンラインに変更し,その教育効果と持続可 能性を評価した.【結果】 1 ) 門脈・肝実質,SMV の TDC は非出血時と同様のパターンだった.%BV が増加すると AUTDC は線形に低下し,静脈系が拡張した.2)背景・理 論などの標準的内容はオンラインでも教育効果が得やすい 反面,手技関連の高度な内容はハンズオンに及ばない.講 師・受講者の移動がなく開催費用負担は圧倒的に少ない. 【結論】 1 ) %BV は腹部臓器灌流を反映し,高度遮断では 静脈鬱滞した.2)オンライン化で標準教育の持続可能性
PD6-5 大動脈内バルーン遮断(REBOA)の意義と応 用 大分大学医学部附属病院高度救命救急センター 石井 圭亮,金崎 彰三,柴田 智隆,武田 裕, 河野 洋平,坂本 智則,鍋田 祐介,塚本 菜穂, 松本 祐欣,梅津 成貴,姫野 智也,松成 修, 坂本 照夫 【緒言】近年,重症体幹外傷に対する蘇生補助や根治的止 血術までの橋渡しとして,大動脈内バルーン遮断(Resusci-tative Endovascular Ballon Occlusion of the Aorta:RE-BOA)が活用されている.当院で経験した最近の症例を提 示し,意義と応用に関して考察する.【対象と方法】2020 年 2 月から2021年 2 月まで,当院にて REBOA を使用した 全11例のうち,内因性 3 例を除く重症外傷 8 例を対象とし て諸項目(結果参照)を検討した.【結果】年齢は,19歳 から81歳の平均53.6歳,性別は,男性 7 例,女性 1 例であっ た.全 8 例中 7 例は,救急外来での出血性ショックに対す る緊急使用例で,主な出血原因は,肝損傷 2 例,肝損傷+ 脾損傷 1 例,肝損傷+骨盤骨折 1 例,腎損傷+脾損傷 1 例, 骨盤骨折 3 例であった. 7 例全例,循環は安定し, 6 例は 根治的止血術を施行した.全 8 例中 1 例は,骨盤骨折手術 の予定使用例であった.全例,手技に伴う合併症はなく, 経過良好であった.【結語】REBOA は,外因性/内因性疾 患を問わず,腹腔および後腹膜腔出血に伴うショック治療 から根治的止血術までの補助,また,術中の出血制御およ び出血点確認における重要な役割を演じる. PD6-6 重症体幹部外傷に対する REBOA の有効な活 用法 Combined use, Prophylactic use の提案
-愛知医科大学病院高度救命救急センター 苛原 隆之,大石 大,津田 雅庸,梶田 裕加, 森 久剛,寺島 嗣明,加藤 浩介 【目的】重症体幹部外傷に対する REBOA の有効な活用法 につき,自験例を検討し考察する.【方法】当センターに おける過去 5 年間の REBOA 使用例35例につき,適応,来 院時ショック or 非ショック or CPA, 止血術開始までの時 間,遮断時間,転帰等を検討した.【結果】適応は内因性 5 例,外傷31例.外傷は非体幹 4 例・体幹27例であり,後 者の内訳は来院時ショック12例,非ショック 4 例,CPA 10例であった.来院時ショック12例の転帰は生存 7 例・死 亡 5 例で,止血術開始までの時間(63.7分 vs 98分,ns), 遮断時間(37.4分 vs 305分,p<0.01)はいずれも生存例 で短かった.非ショック 4 例は全例生存し,いずれも予防 的使用であった.【考察】これまでの自験例同様,遮断時 間と転帰が相関しており,止血術開始までの時間の短縮す なわち迅速な根本止血が最も重要であることが示唆され た.またショック例に対する根本止血術との同時併用 (Combined use すなわち挿入に続けて遅滞なく止血術開 始)や,非ショック例に対する予防的使用(Prophylactic use)も有用であることが示唆された.【結論】重症体幹部 外傷に対し REBOA を有効に活用するには,病態に応じた 適切な使用法が転帰を左右する.特に Combined use と Prophylactic use の有用性を提案したい. PD6-7 ドクターカーに REBOA は必要か 公立豊岡病院但馬救命救急センター 番匠谷友紀,濱上 知宏,松井 大作,永嶋 太, 小林 誠人 目的:当院ではプレホスピタル REBOA を見据え,2018年 度よりシースを病院前診療に導入した.ドクターカー(DC) で REBOA が活用できるか検討する.方法;最初に DC 搬 送中にシースを挿入した症例を抽出し,安全性と問題点を 検討した.次に DC で搬送した外傷症例で緊急止血術を要 した患者を抽出し,搬入後の REBOA 使用や根治的治療ま での時間から,プレホスピタル REBOA の有効症例がある か検討した.結果:DC でシースを挿入したのは 8 例で, うち 7 例は CPA(ECPR 用), 1 例が外傷であった.誤穿 刺や不適切な部位への挿入に伴う合併症は認めなかった が,清潔操作を完遂できたのは12%であった.DC で搬送 した外傷症例は137例で,うち20例に緊急止血術を要した が,DC シース確保例も含め搬入後に REBOA を使用した 症例はなかった.なお 2 例で開腹手術時に用手的大動脈遮 断を併用した.手術室直入症例は搬入後 3 分(中央値)で 手術開始できており,DC の活動時間12分(中央値)の間 で全例挿管済みであった.結論:DC 走行中のシース挿入 は清潔操作が課題であった.緊急手術が可能な体制下では, 重症外傷搬送中は根治手術のための処置が優先され,プレ ホスピタル REBOA の優先順位は低いと考えられた. PD7-1 医療データにおける AI の適用について 防衛大学校電気情報学群情報工学科1),防衛医科大学校防 衛医学研究センター外傷研究部門2) 佐藤 浩1),久保 正男1),齋藤 大蔵2),戸村 哲2) 経済や産業においては,ビッグデータ解析の有効性が認め られており,実践例や成功例も数多く見られる.さらに, 近年ではそこに AI を利用することで,より大規模かつ詳 細な分析や予測への期待が高まっている.一方,医学にお いては,データの蓄積が古くから行われていたこともあり, 統計的な分析は盛んに行われてきたが,分析に AI を利用 しようという試みはようやく端緒についたばかりである. 医療において整備されてきたデータは,日本外傷データバ ンクや頭部外傷データバンクといった,表形式で表される ものが一般的である.本研究では,これらの医療データに, ニューラルネット,サポートベクターマシン,ランダムフォ レスト,勾配ブースティングなど,各種の AI 手法を用い た解析を行った.得られた結果を比較することにより,AI 手法の違いによる性能や適用範囲の違いを示す.また,画 像やテキストといった他のデータ形式における AI 手法の 適用に関する事例についても紹介する.