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うつ病患者の薬局薬剤師に対する相談行動の実態とその妨害要因

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うつ病患者の薬局薬剤師に対する相談行動の実態とその妨害要因

野田 久美子*、後藤 奨一、櫻井 秀彦 北海道科学大学薬学部 薬学科 社会薬学部門 薬事管理学分野

TheRealitiesandPreventiveFactorsinConsultingBehaviorofDepres-sivePatientswithCommunityPharmacists

KumikoNoda*,ShoichiGotoh,HidehikoSakurai

Department of Pharmacy Administration, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Hokkaido University of Science

Abstract:Objective:Itistruethatdepressivepatientsreceiveinstructionontheuseofthemedicinesfrom communitypharmacists,butitisunclearwhetherthesepatientsthemselvescomeincontactwithpharmacists dependingontheneedsforrelievingtheirworriesaboutthetherapy.Thisstudyaimstorevealwhatprevents depressivepatientsfromconsultingpharmacistsinordertohelpimprovethepharmacyenvironmentforthe patients.Methods:Weaddressedanonlinequestionnaireto1,038depressivepatients,asking“Haveyouever consultedpharmacistsabout1)medicine,2)therapyand3)difficultiesinlifecausedbydepression?”and“Haveyou evergivenupconsultingpharmacistaboutthesamethreeitemsthoughyouwanttoconsultthem?”Iftheanswer was“No”fortheformerquestion,andiftheanswerwas“Yes”forthelatter,thereasonswerealsoasked.Result: Availabledatafrom988patientswerecollected.23.8%,42.7%,46.6%patientshavenotconsultedabout1)medicine, 2)therapyand3)difficultiesinlifecausedbydepression,respectively,thoughtheywantedtoconsultpharmacists. Oneofthereasonsforthiswasthattheyhadfeltrefusedbypharmacistsbefore.Otherswere,forexample,they didn’tlikecrowdedsituationandlackofprivacyinpharmacy.Conclusion:Thisstudyrevealedtheexistenceof patientshesitatingtoconsultwithpharmacists.Pharmacistsneedtorecognizethattheircarefulresponsetothe patientscouldencouragethepatients’recovery,andthattheyshouldprovidecomfortablecircumstances for patientstoconsultpharmacistswithouthesitation. Key words:depressivepatients,consultationwithpharmacist,abandoningconsultation,preventivefactor ──────────────────────────────────────────────── 緒論  うつ病は「精神障害の統計と診断マニュアル第 5 版 (DSM-5)」において大うつ病性障害として分類される有 病率の高い疾患であり、WHO は世界全体で罹患者数は 3 億人と推計している(2017 年)。2 週間以上の悲しみ・ 空虚感や喜び、楽しさの喪失などを特徴とし、再発を繰 り返しやすい疾患として知られる。初発のうつ病患者の うち 60% が再発し、再発を繰り返すごとに難治化リス クは上昇する1)。本邦では 95.8 万人(2011 年)が罹患し2) うつ病による失職や自殺などを原因とする社会的経済損 失は約 2.7 兆円(2009 年)に達するといわれている3)  うつ病治療では薬物療法の継続が再発を 70% 予防す ることが知られており1)、症状の緩解後、初発例では 4〜 9 か月かそれ以上、再発例では 2 年以上の抗うつ薬維持 療法が再発防止に必要として推奨されている1,4,5)。しか し、うつ病患者では、薬効・副作用に対する誤解や依存 への不安、症状改善などを理由として抗うつ薬を自己中 断する頻度が高く6,7)、患者本人の治療薬に関する知識 や、起こりえる有害事象に対する理解と納得が不足して いると自己判断での服薬中止の原因になると考えられて いる8)。そのため、服薬上の留意点や起こりえる副作用 とその発現時期などについて説明を行う薬剤師の役割は 大きい。  我々は既報9)においてうつ病あるいはうつ症状を呈す る患者を性別や職業の有無といった特性ごとに分類し、 薬剤師が行う説明項目の重要性の認識度や薬局に求める 機能との関係を分析した。その結果、うつ病患者におい ても薬剤師への相談行動といった自らの治療に対する情 報の取得・理解は患者ニーズを充足することを示した .  うつ病患者が薬剤師に対する相談をする機会は、保険 薬局や保険医療機関における服薬指導の際が主として考 えられる。この服薬指導の中で、薬剤師による薬物治療 に関する患者教育が服薬アドヒアランスを向上させるこ とについてはいくつか報告がある10〜12)。しかし、患者 から薬剤師へ相談出来ているかの実態について報告はな く、どのような理由により出来ずにいるのかは不明であ る。  そこで本研究は既報9)と同じデータソースを用い、相 談内容を薬、病気、生活面の 3 種類に分類し、相談した 患者・相談出来なかった患者の割合とその理由に焦点を 当てることにより、うつ病患者の薬剤師への相談に対す る妨害要因を分析し、相談しやすい薬局環境への改善の (受付日:2020 年 4 月 14 日;受理日:2020 年 11 月 4 日) 著者連絡先:北海道科学大学薬学部薬学科社会薬学部門薬事管理学分野 野田久美子 E-mail:[email protected]

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73 一助とすることを目的とした。 方法 1. 調査方法  対象はアンケート調査会社である株式会社インテージ に登録しており、過去 1 年間に外来でうつ病あるいはう つ状態に対して医師から薬剤の処方を受けた患者 1,290 名のうち、本調査に参加の同意を得ることができた患者 とした。さらに、国内在住かつ医師、薬剤師、看護師免 許に関る高等教育を受けていないこと、精神科以外に定 期受診している診療科がないこと、過去に薬剤による副 作用を経験していないことを条件とした。調査は 2018 年 1 月 19 日〜22 日の期間に実施し、Web にて回答を 得た。質問は、Fig.1 のフローチャートに沿って、薬剤 師に対する a. 薬について、b. 自分の病気について(病 気について)、c. 治療を受ける上での生活面について (生活面について)の相談頻度を、「頻繁に相談した」、 「時々相談した」、「まれに相談した」、「ほとんど相談し なかった」、「全く相談しなかった」、「相談したいと思っ たが出来なかった」の 6 段階で得た。d. その他の事項 の相談の実施については「相談した」、「相談しなかっ た」、「相談したいと思ったが出来なかった」の 3 段階で 回答を得た。e.薬剤師に相談しなかった場合の理由につ いては、「もともと相談する内容がなかった」、「薬剤師 は相談する相手ではないと思った」、「医師に相談した」、 「職場や学校のカウンセラーに相談した」、「看護師に相 談した」、「家族や友人に相談した」、「その他」から複数 回答可の選択式とした。f.「薬剤師に相談したかったが 相談出来なかった」理由についても、「薬剤師への信頼」、 「薬剤師の姿勢・雰囲気」、「プライバシーへの配慮」、 「薬局の混雑」、「体調不良」、「その他」の中から複数回 答可として選択式により行った。e、f における「その 他」の選択肢には自由記載欄を設け、任意で回答を得 た。患者情報(年齢、性別、就業の有無)については本 人の同意の下、アンケート調査会社への登録情報より得 た。  なお、本研究における患者からの回答は既報9)の分析 で用いた回答を一部使用しているが、異なる方法により 分析しており、引用以外の情報の重複はない。 2. 倫理的配慮  アンケート調査は無記名とし、対象者本人に対する説 明と同意の上で行った。なお、本研究は「人を対象とす る医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、北海道科学 大学倫理委員会の承認の下に実施した(承認番号 17-04-011)。 結果 1. 患者背景  アンケート実施により得られた回答者数は 1,038 名で あり、そのうち回答結果に欠損のある 50 名を除外した 988 名(男性 497 名、女性 491 名)を対象とした。患者 背景は男女がそれぞれ 497 名および 491 名、平均年齢 46.0±9.7 歳、就業あり・就業なしはそれぞれ 428 名、 558 名、学生が 2 名であった。また、通院暦は 9.7±6.3 年(2 か月〜50 年)であった(Table1)。 2. 薬剤師に対する薬・病気・生活面についての相談の 有無  薬剤師に対する薬、病気、生活面についての相談の有 無を 6 段階に分けて質問し、得られた回答を頻繁に相談 した患者、時々相談した患者、まれに相談した患者を 「相談した患者」、ほとんど相談しなかった患者、全く相 談しなかった患者を「相談しなかった患者」に分類し、 「相談したいと思ったが出来なかった患者」と合わせて 3 群とした(Table2)。その結果、薬についての相談は、 「相談した患者」が 53.6%(530 名)、「相談しなかった患 者」が46.4%(458 名)、「相談したいと思ったが出来な かった患者」は 0%(0 名)だった。病気についての相 談は、「相談した患者」が 36.0%(356 名)、「相談しな かった患者」が63.2%(624 名)であり、「相談したい と思ったが出来なかった患者」は 0.8%(8 名)だった。 生活面についての相談では、「相談した患者」が 27.1% (268 名)、「相談しなかった患者」が 71.9%(710 名)で あり、「相談したいと思ったが出来なかった患者」は 1.0%(10 名)だった。 3. 薬剤師に対するその他の事項についての相談の有無  薬剤師に対するその他の事項についての相談の有無に ついては「相談した患者」が 0%(0 名)、「相談しなかっ た患者」が 73.6%(727 名)、「相談したいと思ったが出 来なかった患者」は 11.6%(115 名)だった(Table2)。 なお、146 名は無回答だった。 4. 薬剤師に相談しなかった理由  薬、病気、生活面、その他の事項について薬剤師に相 談しなかった理由を質問したところ(Table3)、「もと もと相談する内容がなかった」との回答は薬について: 48.7%(223 名)、病気について:32.5%(203 名)、生活 面について:35.2%(250 名)、その他について:44.4% (323 名)だった。  「もともと相談する内容がなかった」と回答した患者 を除いた、「相談する内容はあったが薬剤師には相談し なかった」患者の割合は、薬について:51.3%(235 名)、 病 気 に つ い て:67.5%(421 名 )、 生 活 面 に つ い て: 64.8%(460 名 ) で あ り(Table3)、 そ れ ぞ れ 全 体 の 23.8%、42.6%、46.6% だった。その理由として、「薬剤 師は相談する相手ではないと思った」との回答は薬につ

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75 いて:25.1%(115 名)、病気について:35.3%(220 名)、 生活面について:34.3%(244 名)、その他について: 28.6%(208 名)だった。また、「医師に相談したため」 との回答は薬について:40.0%(183 名)、病気につい て:51.0%(318 名)、生活面について:45.5%(323 名)、 その他:36.0%(262 名)だった。「カウンセラー、看護 師等や家族等に相談した」との回答は薬について:3.5% (16 名)、病気について:8.0%(50 名)、生活面につい て:10.1%(72 名 )、 そ の 他 に つ い て:10.3%(75 名 ) だった。これらの回答は「もともと相談する内容がな かった」との回答に重複して得られた。 5. 薬剤師に相談したいと思ったが相談出来なかった理由  薬剤師に相談したいと思ったが出来なかった患者につ いてその理由を尋ねたところ(Table4)、「薬剤師の姿 勢・雰囲気」を理由とする回答は、病気について、生活 について、その他の事項についてそれぞれ 50.0%(4 名)、 90.0%(9 名)、14.8%(17 名)だった。「プライバシー配 慮」については病気について、生活面について、その他 についてそれぞれ 12.5%(1 名)、10.0%(1 名)、22.6% (26 名)だった。「薬局の混雑」を理由とする回答は、 Table 1 患者背景 全体 988 名 性別 (男性/女性) 497 名/491 名 年齢 (平均±S.D) 46.0±9.7 歳 就業有無(有/無/学生) 428 名/558 名/2 名 通院暦   1 年未満 24 名   1 年以上 2 年未満 52 名   2 年以上 3 年未満 52 名   3 年以上 5 年未満 108 名   5 年以上 10 年未満 274 名   10 年以上 15 年未満 281 名   15 年以上 20 年未満 118 名   20 年以上 79 名 S.D.:標準偏差 Table 2 相談内容別の薬剤師への相談頻度 相談した 相談しなかった 相談したいと思ったが 出来なかった 合計 1  7.0%(69 名) 4 26.7%(264 名) 薬について 2 21.1%(208 名) 5 19.6%(194 名)     0%(0 名) 100% 3 25.6%(253 名) (988 名) 合計 53.6%(530 名) 合計 46.4%(458 名) 1  7.6%(75 名) 4 30.2%(298 名) 病気について 2 13.0%(128 名) 5 33.0%(326 名)    0.8%(8 名) 100% 3 15.5%(153 名) (988 名) 合計 36.0%(356 名) 合計 63.2%(624 名) 1  5.1%(50 名) 4 28.5%(282 名) 生活面について 2 10.0%(99 名) 5 43.3%(428 名)   1.0%(10 名) 100% 3 12.0%(119 名) (988 名) 合計 27.1%(268 名) 合計 71.9%(710 名) その他   0%(0 名) 73.6%(727 名) 11.6%(115 名) 842 名 (無回答 146 名) 1:頻繁に相談した、2:時々相談した、3:まれに相談した、4:ほとんど相談しなかった、5:全く相談しなかった Table 3 薬剤師に相談しなかった理由 回答者数 薬について 458 名 病気について 624 名 生活面について 710 名 その他 727 名 もともと相談する内容がなかった 48.7%(223 名) 32.5%(203 名) 35.2%(250 名) 44.4%(323 名) 相談する内容はあったが相談しなかった 51.3%(235 名) 67.5%(421 名) 64.8%(460 名) 55.6%(404 名)  薬剤師は相談する相手ではないと思った 25.1%(115 名) 35.3%(220 名) 34.3%(244 名) 28.6%(208 名)  医師に相談した 40.0%(183 名) 51.0%(318 名) 45.5%(323 名) 36.0%(262 名)  職場や学校のカウンセラーに相談した  0.9%(  4 名)  1.9%( 12 名)  2.1%( 15 名)  1.9%( 14 名)  看護師に相談した  0.4%(  2 名)  0.3%(  2 名)  0.8%(  6 名)  1.1%(  8 名)  家族や友人に相談した  2.2%( 10 名)  5.8%( 36 名)  7.2%( 51 名)  7.3%( 53 名)  その他  1.7%(  8 名)  0.8%(  5 名)  0.8%(  6 名)  1.2%(  9 名) 複数回答あり

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病気について、生活面について、その他についてそれぞ れ 62.5%(5 名)、60%(6 名)、44.3%(51 名)だった。 6. 薬剤師に相談しなかった具体的な理由  薬剤師に相談しなかった具体的な理由について自由記 載にて回答を得た(Table5)。特に薬については「何か 聞いても、「先生(医師)に相談して下さい」という答 えしか返ってこなかったから」、あるいは患者から相談 する前に「薬剤師側から色々と聞かれたから」、病気・ 生活面については「薬剤師が先に質問してくれるから」、 「医師を信じているから」、「精神保健福祉士(PSW)に 相談している」との回答があった。その他については 「PSW・就労支援センター・弁護士・社労士に相談して いる」、「誰も助けてくれないから」といった理由が挙げ られた。 7. 薬剤師に相談したいと思ったが相談出来なかったそ の他の理由  薬剤師に相談したいと思ったが相談出来なかったその 他の理由についても同様に自由記載にて回答を得たとこ ろ、「薬剤師には話しにくいから」、「上手く薬剤師に伝 えられなかったから」、「精神科医に相談するべきだと 思ったから」といった理由が挙げられた(Table6)。 考察  本研究は、うつ病患者の薬剤師への相談行動に対する 妨害要因を分析し、相談しやすい薬局環境への改善の一 助とすることを目的とした。  はじめに薬剤師に対する薬・病気・生活面についての Table 5 薬剤師に相談しなかった具体的な理由 1.薬について ・ネットを用いて自分で調べたから ・何か聞いても、「先生(医師)と相談してください」 という答えしか返ってこなかったから ・あまり細かい情報を薬剤師は知らないから ・先に薬剤師側から色々と聞かれたから 2.病気について ・医師を信じているから ・何を相談したらよいかわからないから ・薬剤師が先に質問してくれるから 3.生活面について ・PSW*に相談している ・薬剤師が先に話をしてきたから ・何と伝えればよいのか分からない 4.その他 ・PSW*に相談したから ・就労支援センターに相談したから ・その他の職種(弁護士や社労士など)に相談したから ・誰も助けてくれないから PSW:精神保健福祉士 Table 6 薬剤師に相談したいと思ったが出来なかった具体的 な理由 ・薬剤師には話しにくいから ・精神科医に相談するべきだと思ったから ・専門外のことは聞きたくないから ・カウンセラーが常駐していたから ・何を相談したらよいかわからないから ・上手く薬剤師に伝えられなかったから Table 4 薬剤師に相談したいと思ったが相談出来なかった理由 回答者数 薬について 0 名 病気について 8 名 生活面について 10 名 その他 115 名 薬剤師への信頼 0%(0 名) 12.5%(1 名)   0%(0 名)   7%( 8 名) 薬剤師の姿勢・雰囲気 0%(0 名) 50.0%(4 名) 90.0%(9 名) 14.8%(17 名) プライバシーへの配慮 0%(0 名) 12.5%(1 名) 10.0%(1 名) 22.6%(26 名) 薬局の混雑 0%(0 名) 62.5%(5 名) 60.0%(6 名) 44.3%(51 名) 体調不良 0%(0 名) 12.5%(1 名) 10.0%(1 名) 26.1%(30 名) その他 0%(0 名)   0%(0 名)   0%(0 名)  8.7%(10 名) 複数回答あり

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77 相談の有無を質問したところ、薬について 53.6% の患者 は相談をしていた。反対に、薬について相談しなかった 患 者 は 46.4% 存 在 し た が、 そ の う ち の 48.7%(223 名/458 名)は「もともと相談する内容がない」患者だっ た。「もともと相談する内容がない」患者を除いた「相 談する内容はあったが薬剤師には相談しなかった」患者 は、薬について相談しなかった患者のうちの 51.3%(235 名/485 名、 全 体 の 23.8%(235 名/988 名 )) だ っ た (Table2、3)。その理由の中には、薬に関してでさえ 「薬剤師は相談する相手ではないと思った」、「職場・学 校のカウンセラーに相談した」、「家族・知人に相談し た」との回答があり、本来、医療職の中で最も薬物に関 する知識が豊富な薬剤師が、薬の相談相手として認識さ れないことが、薬剤師への相談の妨害要因の 1 つとなっ ていることが明らかとなった(Table3)。うつ病の薬物 治療においてはアドヒアランスの低さがしばしば再燃を 繰り返す原因となることが報告されている6,7,13)。患者が 自らの薬物療法を十分理解していないにもかかわらず、 薬に関して薬剤師から情報を得られなかった場合、自己 中断などによる薬物治療の失敗が起こり得る。薬剤師に 対して、薬について相談したいと思ったが出来なかった と回答した患者は 0% であり、薬剤師を薬に関する相談 相手として認識している場合には、薬についての情報を 薬剤師に求めていた。しかし、薬剤師を薬に関する相談 相手と認めていない場合には、薬の専門教育を受けてい ない職種に情報を求めることにより誤った情報を得る、 あるいは必要な情報が得られていない可能性がある。薬 剤師の職能を周知する活動などを通じて、薬剤師に対す る患者の一般的認識を改善していく余地がある。  病気・生活面について薬剤師に相談しなかった患者は 薬について相談しなかった患者と比較して多かった (Table2)。そのうち、「薬剤師は相談する相手ではない と思った」患者は、病気について 35.3%(220 名/624 名、 全 体 の 22.3%(220 名/988 名 ))、 生 活 面 に つ い て は 34.3%(244 名/710 名、24.7%(244 名/988 名))存在し た。これらの患者は薬について「薬剤師は相談する相手 ではないと思った」患者 25.1%(115 名/458 名、11.6% (115 名/988 名))と比較して多く、薬以外に関しても薬 剤師が患者を支援する余地が大きいことが示された。一 方で、薬・治療・生活面について薬剤師に相談しなかっ た患者のうち医師に相談した割合は、40〜51% だった (Table3)。岩田ら7)はうつ病治療において薬も含めた 治療や治療方針について医師から十分な説明を受けてい ない、あるいは十分に理解出来なかったと感じている患 者は 13.8〜53.2% 存在することを報告している。すなわ ち、医師への相談は薬や治療についての十分な理解に直 結しているとは限らず、その理解を助ける薬剤師からの 情報提供のニーズが、うつ病患者にはあるといえる。薬 剤師による患者の相談窓口としての機能の充実は、患者 の薬物治療に対する理解不足を補い、治療を成功させる 上で重要ではないだろうか。  今回の結果では、薬・病気・生活面について薬剤師に 相談したいと思ったが出来なかった患者は少数であり、 ほとんどの患者がこれらについては相談出来ていた (Table2、4)。しかし、「その他」について相談したい と思ったができなかった患者は 115 名(全体の 11.6%) 存在し(Table2)、その理由として「薬局の混雑」、「プ ライバシーへの配慮」、「体調不良」、「薬剤師の姿勢・雰 囲気」が多く挙げられていた(Table4)。この中でも 「薬局の混雑」と「プライバシーへの配慮」は環境要因 として患者の相談を妨害していることを示しており、そ の改善が、患者が相談しやすい環境づくりにつながるも のと考えられる。昨年より医薬品医療機器等法にも記載 されたオンライン服薬指導や調剤後の薬学的管理は環境 要因の解決ツールとして有益な可能性がある。  その他の自由記載欄の多くは無回答のため相談の具体 的な内容は不明だったが、患者には広い領域で薬剤師に 相談ニーズがあり、保険薬局での服薬指導、治療・生活 に関する情報提供が患者を救済する大きな手段である可 能性が示された。一方、その他の理由には「薬剤師には 話しにくい」、「精神科医に相談するべきだと思った」な ど、薬剤師に相談したい事項があっても薬の専門家とし ての印象が強く、その先入観が薬以外の事項に関する相 談の妨害要因となっている可能性が示された。ここでも 薬剤師の職能に対する一般的認知度の低さが現れており、 薬剤師が薬以外の医療にも対応出来る職種であることを 患者に広く周知する必要性を裏付けるものと考える。  うつ病は強いストレスにより主観的認知が障害され、 抑うつや不安が増大する疾患であり、その治療には薬物 療法と共に認知行動療法や個人・集団精神療法が実施さ れている14)。今回、相談しなかった具体的な理由には 「薬剤師が先に質問してくれるから」といったポジティ ブな理由がある一方で、「何か聞いても、「先生(医師) に相談してください」という答えしか返ってこなかった から」、「あまり細かい情報を薬剤師は知らない」といっ たネガティブな理由も挙げられていた。認知行動療法で 対人コミュニケーションの修正を図る中で、患者に相談 しにくいと感じさせる薬剤師の姿勢・雰囲気、患者への 回避的行動は、うつ病の治療を妨げ、あるいは増悪させ る可能性がある。患者個々に立案される治療方針などに ついて根拠のない情報を患者に提供することは出来ない が、少なくとも薬剤師は、薬の使い方や治療について医 師とどのような話し合いがあったかを聴取する、薬だけ ではなく、生活面において困っていることがないか確認 するといった、患者に対する受容の姿勢と態度をもっ て、患者自身の情報取得のサポートをしていくことは可

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能である。それにより、「誰も助けてくれない」と感じ ている患者の救い上げにもつながるものと考えられる。 限界  本調査では、患者が服用している薬の種類や用法用量 についての情報、疾患の重篤度に関する情報は収集して いない。そのため、多剤服用患者と単剤服用患者を一母 集団として分析しており、服用薬剤数や疾患の重篤度の 違いが結果に影響している可能性がある。また、Web 調査であることから回答する患者の母集団が偏っている ことや、疾患の重篤度により患者の社会的状況(就業状 況、生活形態、受給する生活保障等の状況)が異なるこ と、さらに、ごく稀とは思われるが院内調剤を医師の指 示の下に薬剤師以外の職員が行い、薬剤師による薬剤交 付を受けていない患者の混在が予測され、これらもまた 結果に影響している可能性がある。しかし、その分析に ついては今回行うことができなかった。 結論  現在、国の政策の中でうつ病は、病期や個別の状態に 合わせた医療を提供するべき対象疾患(五疾病)の 1 つ となっている。うつ病は過剰労働や介護、生活不安など によっても発症する疾患である。今回の研究において、 うつ病患者は薬剤師に対する病気や生活に関する相談を 薬に関する相談と比べて行っておらず、その要因とし て、薬剤師の姿勢・雰囲気や薬局環境、薬剤師の職能範 囲に対する患者の認知度の低さが影響している可能性が 示された。在宅医療やかかりつけ化を通じて患者と薬剤 師との距離が近くなっている現在、生活に関る制度も含 めたうつ病の全体像を把握して患者を見守ること、患者 に対応するためのツールも選択しながら治療をサポート することは、地域を支える保険薬剤師の重要な役割の 1 つともいえる。薬剤師への相談を阻害した要因を改善 し、治療方法を理解した上で、うつ病患者が相談しやす い薬局環境を構築することが求められる。 利益相反  開示すべき利益相反はない。 引用文献 1)GeddesJR,CarneySM,DaviesC,FurukawaTA,Kupfer DJ,FrankE,etal.Relapsepreventionwithantidepressant drug treatment in depressivedisorders : a systematic review.Lancet2003;361:653-61. 2) 厚 生 労 働 省. 精 神 疾 患 の デ ー タ,https://www.mhlw. go.jp/kokoro/speciality/data.html(2020 年 1 月 17 日アク セス) 3)川上憲人.精神疾患の有病率等に関する大規模疫学調査研 究:世界精神保健日本調査セカンド WMHJ2,2013-2016: 総合研究報告書厚生労働省厚生労働科学研究費補助金(障 害者対策総合研究事業)国立研究開発法人日本医療研究開 発機構障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)平成 28(2016)年 5 月,2016,pp32-3. 4)WorkGrouponMajorDepressiveDisorderinAmerican PsychiatricAssociation:Practiceguidelineforthetreat-mentofpatientswithmajordepressivedisorder,third edition,USA:AmericanPsychiatricPublishing,2010. 5)BauerM,BschorT,PfennigA,WhybrowPC,AngstJ, VersianiM,etal.WorldFederationofSocietiesofBiologi- calPsychiatry(WFSBP)guidelinesforbiologicaltreat-mentofunipolardepressivedisordersinprimarycare. World J Biol Psychiatry2006;8(2):67-104.

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Fig. 1 アンケートにおける質問のフローチャート

参照

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