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〈論文〉人口減少と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動についての一考察

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Academic year: 2021

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(1)人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢をふまえた部落解放運動にっいての一考察. ●論文. 人 口減 少 と近 年 の社 会 情 勢 を ふ ま え た 部 落解 放 運 動 につ い て の一 考 察 近畿大学人権 問題研究所教授. 北. 口. 末. 広. は じめ に 日本 社 会 は経 済 状 況 の厳 しさ と と もに 閉塞 感 が 一 層 強 ま って い る。 と りわ け 経 済 状 況 の悪 化 は多 くの 問題 に悪 影 響 を 与 え 、 社 会 的 矛 盾 を拡 大 した。 年 収200万 年 の20%か. 円 以 下 の 労 働 者 が1000万 ら10年 後 の2005年. 人 を超 え 、 非 正 規 労 働 者 の 割 合 は1995. に は30%を. 超 え た。 今 日 で は40%弱. に達 し. て い る。 正規 労 働 者 も賃 金 カ ッ トで 収 入 が 大 き く落 ち、 経 済 の難 病 と もい わ れ るデ フ レス パ イ ラル は深 化 して い る。 不 動 産 の下 落 は い うま で もな く、 消 費 者 物 価 の 下 落 も明 確 にな って い る。 これ らの物 価 下 落 は 消 費 を さ らに 冷 え 込 ませ 、 さ ら な る物 価 下 落 にっ なが って い る。 そ れ は サ ー ビス や モ ノを 提 供 す る企 業 の 賃 金 を 一 層 下 げ る こ と に な り、 実 体 経 済 を悪 化 させ て い る。 安 倍 政 権 が 誕 生 し、 経 済 不 況 、 デ フ レスパ イ ラル克 服 の方 向性 が打 ち 出 され て い るが 、 予 断 を許 さ な い状 況 に あ る こ と に変 わ りは な い。 こ う した状 況 は行 財 政 を悪 化 さ せ、 行 政 の 人 権 政 策 や 部 落 解 放 運 動 に も多 大 な影 響 を与 え て い る。 経 済 の 矛 盾 が 集 中 的 に現 れ る と い わ れ る被 差 別 部 落 の生 活 は一 層 厳 し くな って お り、 これ まで の 部 落 差 別 撤 廃 行 政 の成 果 が大 き く損 な わ れ て きて い る。 一 方 、 土 地 差 別 調 査 事 件 に代 表 され る差 別 事 件 は、 部 落 差 別 の 根 幹 に関 わ る 問 題 で あ り、 部 落 差 別 の 根 強 さを 顕 著 に示 した。 関係 業 界 は、 マ ンシ ョ ン購 入. 一1一.

(2) 人権 問題研究所紀要. 人 口減少 と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 にっ いての一考察. 予 定 者 の 差 別 意 識 を無 批 判 に受 け入 れ、 被 差 別 部 落 の 存 在 を 詳 細 に 調 べ 、 土 地 調 査 報 告 書 ・立 地 特 性 等 の項 目 に明 記 して い た。 購 入 予 定 者 の 被 差 別 部 落 や 同 じ校 区 に は住 み た くな い と い っ た差 別 意 識 に基 づ く忌 避 意 識 の 根 深 さを 改 め て 示 した。 こ う した 状 況 を 改 善 し部 落 差 別 の完 全 撤 廃 と人 権 確 立 を前 進 させ る こ と は部 落解 放 運 動 の 重 大 な 使 命 で あ る。 しか し部 落 解 放 運 動 の パ ワー は確 実 に 低 下 し て きて い る。 以 上 の よ うな 問 題 意 識 の下 、 「① 人 権 ・福 祉 立 国 と経 済 の活 性 化 、 ② 人 口減 少 社 会 と部 落 差 別 の撤 廃 、 ③ 時 代 の 特 徴 をふ ま え た運 動 の課 題 、 ④ 社 会 シス テ ム と社 会 意 識 ・関係 ・基 準 、 ⑤ISO26000と. 部 落 差 別 の撤 廃 、 ⑥ 多様 な法 人. を活 用 した運 動 組 織 を、 ⑦ 法 人 を 活 用 した運 動 の積 極 面 」 とい う7っ の テ ー マ に つ い て考 察 して い きた い。. 1、 人 権 ・福 祉 立 国 と 経 済 の 活 性 化 まず 人 口 は 日本 経 済 に お け る最 も重 要 な 基 盤 で あ る こ と を再 確 認 して お きた い。 日本 の人 ロ ピー ク は2005年 口(15歳. ∼64歳)の. で あ る。 そ の10年. 前 、1995年 に 生 産 年 齢 人. ピー クを す で に迎 え て い た 。 人 口減 少 以 上 に生 産 年 齢 人. 口の 減 少 は急 速 で あ る。 近 代 国 家 が 成 立 して か ら人 口 が減 少 して栄 え た 国 は な い。 しか し人 口 の少 な い国 で 栄 え て い る国 は存 在 す る。 そ の一 つ が フ ィ ン ラ ン ドで あ る。 人 口約540 万 人 で 、 一・ 人 当 た りのGDP(国. 内総 生 産)は2008年. 時 点 で 世 界7位 前 後 を. キ ープ して い る。 日本 は19位 前 後 で あ っ た。 OECD(経. 済 協 力 開 発 機 構)の 学 力 調 査 で も、 フ ィ ン ラ ン ドは 日本 よ り高. い。 日本 で批 判 され た 「ゆ と り教 育 」 よ り も 「ゆ と り教 育 」 の フ ィ ン ラ ン ドで、 な ぜ 日本 よ り も学 力 が 高 い のか 。 この事 実 は経 済 と密 接 に結 び っ い て い る。 ま た学 力 と差 別 も明 確 に リ ンク して い る。. 一2一.

(3) 人権問題研究所紀要. 人 口減少と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 にっいての一考察. 日本 にお いて 全 体 平 均 が 低 くな る の は、 成 績 の下 位 層 が 経 済 的 に厳 しい状 況 に 置 か れ て い るか らで あ る。 学 力 と家庭 の 経 済 状 況 の 相 関 関 係 は す で に指 摘 され て い る と こ ろで あ る。 格 差 社 会 も大 き く影 響 して い る。 フ ィ ン ラ ン ドは格 差 社 会 で はな い。 全 体 と して 学 力 が高 い の は下 の 層 が 少 な く、 経 済 的 に安 定 して い るか らで あ る。 っ ま り学 力 問題 を解 決 す るた め に は、 格 差 拡 大 社 会 や経 済 問題 を 重 視 しな け れ ば な らな い の で あ る。 新 自 由主 義 的 な 政 策 で は格 差 拡 大 は 一 層 進 ん で し ま い、 経 済 的 困難 層 の学 力 は伸 びな い。 それ らの政 策 は部 落 差 別 撤 廃 と も逆 行 す る。 日本 も こ う した 国 の政 策 に学 ぶ 必 要 が あ る。 それ が 教 育 実 態 の低 位 性 を は じ め とす る差 別 実 態 の 改善 に も貢 献 す る。 日本 が 抱 え る問題 は人 口減 少 だ けで はな い。 人 口問 題 と関 連 した 問題 だ けで も多 くの課 題 が存 在 す る。 社 会 的 課 題 が 飛 躍 的 に増 加 して い く中 で、 人 口減 少 と りわ け生 産 年 齢 人 口の 減 少 が 進 み 、 働 く人 々 が 減 少 し続 けて い る の で あ る。 生 産 年 齢 人 口 は、 先 に指 摘 した よ うに1995年. か ら一 貫 して 減 少 し続 けて い る。. 一 般 的 に 生 産 年 齢 人 口が 減 少 し、 高 齢 者 人 口 が 増 加 す る こ と は、 税 収 が 減 り、 社 会 保 障 関 連 費 が増 加 す る こ とに っ な が る。 こ う した状 況 の 中 で経 済 を好 転 させ て 活 力 あ る社 会 を築 く こ とが差 別 撤 廃 に もっ な が る。 そ の基 本 は人 権 ・福 祉 立 国 に あ る。 人 口減 少 が 経 済 の足 を 引 っ張 り、 経 済 の 悪 化 が 人 口 の減 少 を さ らに加 速 す る よ うな政 策 を取 って い る限 り 「人 口 減 少 」 と 「デ フ レ」 が 絡 み合 い な が ら 「ス パ イ ラル状 」 に悪 化 して い く。 そ れ らを 阻 止 す る よ うな政 策 が タイ ム リー に実 行 さ れ て い け ば一 人 一 人 の生 活 が 悪 化 して い くこ と は避 け られ、 経 済 の活 性 化 にっ な が るQ 上 記 に示 した フ ィ ンラ ン ドは堅 実 に経 済 が 回 って い る。 確 か に今 日の 厳 しい 欧 州 経 済 の影 響 は受 けて い るが 、 一 人 あ た りのGDPは 一3一. 一 定 の範 囲 を キ ープ し.

(4) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動にっ いての一考察. て い る。 つ ま り日本 が 人 口減 少 して い く中 で、 人 口 の 少 な い国 の 経 済 政 策 か ら 学 ぶ こ とが 極 めて 重 要 だ と指 摘 した い の で あ る。 先 に 「人 口減 少 が 経 済 の足 を 引 っ張 り、 経 済 の悪 化 が 人 口の 減 少 を さ らに加 速 す る よ う な政 策 」 と述 べ て い る の は、 経 済 が悪 化 す れ ば 多 くの 人 々 の 収 入 は 落 ち 込 み 、 結 婚 して 子 育 て で き る賃 金 が 確 保 で きな くな るか らで あ る。 さ らに 結 婚 率 も減 少 す るか らで あ る。 ち なみ に国 立 社 会 保 障 ・人 口 問題 研 究 所 の 人 口 統 計 資 料 集 の2005年. ・未 婚 率 を 見 れ ば 一 目瞭 然 で あ る。 男 性 未 婚 率 は25歳. ∼29歳 で71 .4%、30歳 59.0%、30歳. ∼34歳. ∼34歳. で47.1%で. で32.0%で. 、 女 性 未 婚 率 は25歳 ∼29歳. で. あ る。 こ の世 代 の 人 口 そ の もの が減 少 し、. 未 婚 率 が増 加 す れ ば 出生 率 が 増 え る こ と は な い。 この ま ま推 移 す れ ば 日本 の人 口減 少 は予 測 以 上 に さ らに加 速 す る可 能 性 が 高 い。. 女 性 の 就 業 率 を上 げ る こ とが 重 要 以 上 の よ うな状 況 の 中 で、 生 産 年 齢 人 口 が減 少 して も、 事 実 上 その 減 少 を緩 や か にす る こ と に よ って、 政 策 選 択 の幅 を増 や す こ とが で き、 経 済 の 活 性 化 に もっ な げ る こ とが で き る。 そ の た め に は生 産 年 齢 人 口 の就 業 率 を 増 加 させ る こ とで あ る。 と りわ け女 性 の 就 業 率 を上 げ る こ とが 重 要 な の で あ る。 日本 の 就 業 率 は主 要 国 と比 較 して も決 して 低 くな い。 ドイ ッ71.2%や と並 ぶ70.1%で. あ り、 男 性 の就 業 率 は80 .0%と. イ ギ リス70.3%. 主 要 国 の 中 で 最 も高 い。 し. か し女 性 の就 業 率 は上 昇 して きた と は いえ 、主 要 国 の 中 で60 .1%と も し女 性 の 就 業 率 が デ ン マ ー クや ス ウ ェ ー デ ンの よ う に70%以 女 性 の就 業 者 は約400万 こ う した こ とを2025年 年 か25年. ま で に約960万. 最 も低 い。. 上 になれば、. 人 増 加 す る。 ま で に計 画 的 に実 現 で きれ ば 、 生 産 年 齢 人 口が2010 人 減 少 して も就 業 者 は約300万. 年 度 の就 業 者 の 減 少 は平 均20万. 人 しか 減 少 せ ず 、 単. 人 前 後 と な る。 これ に高 齢 者 が 働 き や す い シ. ス テ ムを 創 れ ば 、 就 業 者 の 減 少 は さ らに緩 やか に な る。 日本 の場 合 、 す で に高 一4一.

(5) 人権問題研究所紀要. 人 口減少 と近年の社会情勢をふ まえた部落解放運動にっいての一考察. 齢 者 と りわ け男 性 高 齢 者 の就 業 率 は、 生 産 年 齢 人 口 の男 性 就 業 率 と同 じよ うに 高 いが 、 これ に プ ラス して生 産 年 齢 人 口 の 女 性 の就 業 率 が高 ま れ ば高 齢 女 性 の 就 業 率 もさ らに高 ま って い く とい え る。 しか し この よ うな状 況 を 創 り出 して い くた め に は、 女 性 が働 きや す い社 会 シ ス テ ム と働 きた い と思 うよ うな 社 会 を 創 造 しな け れ ば な らな い。 当然 の こ とな が らそ れ は男 性 も働 きや す い シ ス テ ムで あ り、 出生 率 の 向上 に も貢 献 す る。 共 働 きの世 帯 の方 が 子 ど もの 数 が 多 いの はす で に明 らか に な って い る。 共 働 き世 帯 の方 が経 済 力 が あ り、 そ れ が 子 育 て パ ワ ー に結 び っ い て い るか らで あ る。 以 上 を実 現 す るた め に も仕 事 と家 庭 の 両 立 支 援 、 短 時 間 正 社 員制 度 の 充 実 、 賃 金 や職 場 復 帰 を 含 め た職 場 環 境 の改 善 、 中途 採 用 機 会 の 拡 大 等 が 求 め られ て い る。 そ れ ら は不 可 能 で は な い。 なぜ な ら多 くの 先 進主 要 国 で はす で に確 立 し て い るか らで あ る。 なぜ 先 に紹 介 した デ ンマ ー クや ス ウ ェ ー デ ンで は女 性 の 就 業 率 が 、 男 性 と ほ ぼ同 じよ うな70%を. 超 え る数 字 に な って い るの か 。 それ は. す で に女 性 も男 性 も子 育 て しや す く職 場 復 帰 しや す い雇 用 ・就 業 シス テ ムが 成 立 して い るか らで あ る。. 社 会 的 課 題 を事 業 化 し雇 用拡 大 を そ う した社 会 シス テ ム の重 要 な 分 野 が 雇 用 ・就 業 と並 ぶ 社 会 福 祉 の分 野 な の で あ る。 社 会 福 祉 が 充 実 して い な けれ ば 、 性 別 役 割 分 担 論 が根 強 い 日本社 会 の 中 で、 家 事 の 多 くを 担 わ な けれ ば な らな い 日本 の女 性 は、 十 分 に 能 力 を 発 揮 し て 働 く こ とが で きな い。 子 育 て の 福 祉 制 度 が 充 実 して い な けれ ば 、 子 育 て と社 会 に 出 て 働 くこ と は両 立 で き な い。 あ る い は高 齢 者 へ の 福 祉 が 充 実 して い な け れ ば、 自力 で 生 活 で きな い高 齢 者 へ の 家 庭 介 護 に追 わ れ て 働 く こ と もで き な い。 就 業 率 の向 上 と福 祉 の充 実 は一 体 な の で あ る。 こ う した取 り組 み の前 進 は 女 性 差 別 撤 廃 を は じめ とす るあ らゆ る差 別 撤 廃 の 前 進 に もっ な が る。 以 上 の よ う に福 祉 の 充 実 は経 済 の 活 性 化 と対 立 しな い こ とが 実 証 され て い 一5一.

(6) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動にっ いての一考察. る。 一 っ の デ ー タを紹 介 した い。 OECD等 長)が. の デ ー タ を 基 に 神 野 直 彦 東 京 大 学 名 誉 教 授(地. 方 財政審 議会会. 作 成 され た もの で 、 社 会 保 障 と経 済 成 長 率 、 貧 困 率 等 を比 較 した デ ー タ. で あ る。 フ ラ ン ス 、 ド イ ツ 、 日 本 、 ス ウ ェ ー デ ン、 イ ギ リ ス 、 ア メ リカ の 六 力 国 を 比 較 し た も の で あ る 。 そ の 中 で ドイ ッ 、 日 本 、 ス ウ ェ ー デ ン、 ア メ リカ を 比 較 す る と 興 味 深 い 傾 向 が 分 か る 。 ま ず 社 会 保 障(公 を 比 較 す る と ス ウ ェ ー デ ン が 最 も 高 く27.3で リ カ16.2と. な っ て い る 。 一 方 、2000年. デ ンが 最 も 高 く2.19で. ドイ ッ25.2、. ∼2010年. 、 ドイ ッ1.89、. ス ウ ェ ー デ ン5.3%と. 日本18.7、. アメ. の平 均 経 済 成 長 率 は ス ウ ェー. ア メ リ カ1.82、. い る。 相 対 的 貧 困 率 は ア メ リ カ が 最 も 高 く17.1%で 11.0%、. 的 社 会 支 出 のGDP比). 日 本1.59と. 、 日 本14.9%、. な って ドイ ツ. な っ て い る。. これ らの 数 字 を 見 れ ば福 祉 の充 実 と経 済 の活 性 化 は矛 盾 せ ず、 福 祉 の 充 実 が 経 済 に 好 影 響 を 与 え て い る と い うこ とが 理 解 で き る。 この デ ー タが全 て を語 っ て い る と い う こ と で は な い が 、 少 な く と も福 祉 の 充 実 が 国 際 競 争 力 を 弱 め た り 経 済 に悪 影 響 を 与 え る ので は な い と い う ことが 分 か る。 ま た 雇 用 の パ イ を 増 や す た あ に も先 に 紹 介 し た よ う な 社 会 的 課 題 を 事 業 化 し、 そ れ を 行 政 公 共 セ ク タ ー と 民 間 企 業 セ ク タ ー 、 非 営 利 セ ク タ ー が 協 力 して 解 決 して い く こ と が 求 め られ て い る 。 す で に マ イ ケ ル ・ポ ー タ ー 教 授 がCSV 理 論(CreatingSharedValue)と. し て 打 ち 出 し、 社 会 的 課 題 の 解 決 と 企. 業 利 益 、 競 争 力 向 上 を両 立 させ 、 社 会 と企 業 の両 方 に価 値 を生 み 出 す取 り組 み を 紹 介 して い る が 、 そ う し た 発 想 が 企 業 セ ク タ ー に さ ら に 浸 透 して い け ば 、 人 口 減 少 の 中 で も人 権 ・福 祉 立 国 と 堅 実 な 経 済 の 両 立 は 実 現 す る と い え る。 こ う し た 人 権 ・福 祉 立 国 は 差 別 撤 廃 に も積 極 的 な 影 響 を 与 え る。 以 上 の よ う な 視 点 に 立 っ て 部 落 差 別 撤 廃 の 取 り組 み に つ い て 後 に 詳 し く述 べ た い。. 一6一.

(7) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢をふ まえた部落解放運動にっいての一考察. 2、 人 口 減 少 社 会 と 部 落 差 別 の 撤 廃 高 齢 化 を と も な いつ つ 地 方 か ら人 口減 少 と こ ろ で17年 後 の2030年 90.3%に. な り、子 ど も(0歳. 時 点 で 高 齢 者 人 口 と生 産 年 齢 人 口 を 合 わ せ る と ∼14歳)人. 口 は9.3%に. な る と予 測 され て い る。. 少 子 高 齢 化 の 問 題 を解 決 す る の は極 め て 困 難 な こ とで あ り、 す で に最 も子 ど もを 生 む 年 齢 層 で あ る25歳 か ら35歳 の女 性 が 少 な い と い う現 実 が あ る。 女 性 一 人 当 た りの 子 ど も を生 む 数 が 増 え た と して も、 生 む 女 性 の 人 口が 少 な く簡 単 に人 口 は増 加 しな い。 例 え ば8年. 前 の2005年. 北 海 道 は562万. と22年 後 の2035年. の 人 口推 定 は 次 の よ うに な る。. 人 か ら441万 人 に、 奈 良 県 は142万 人 か ら110万 人 に 、 和 歌 山. 県 は103万 人 か ら73万 人 に、四 国 四 県 は合 わ せ て408万 人 か ら314万 人 に な る。 そ して2025年. 以 降 に、 す べ て の都 道 府 県 で 人 口 が 減 少 して い く。. この人 口減 少 に は二 っ の 特 徴 が あ る。 一 っ は高 齢 化 を と もな い っ っ 人 口 が 減 少 し、 も う一 っ は周 辺 部 か ら人 口 が 減 少 す る と い う こ と で あ る。 人 口減 少 が 周 辺 部 に比 べ て 緩 や か な都 市 部 で は人 口 減 少 以 上 に高 齢 化 が 大 き な 問 題 に な る。 そ の最 た る都 市 が 東 京 で、2005年 か ら2035年 の34.7%に. 対 して 、 東 京 で は67.5%に. の高 齢 者 増 加 率 は全 国 平 均. な る。 ま た東 京 都 の高 齢 化 は現 在 の. 2013年 か ら2015年 で 大 き く進 む。 団 塊 世 代 と呼 ば れ る人 々 が65歳. を超 え る. か らで あ る。 これ らの変 化 は行 財 政 に も大 き な影 響 を与 え る。 生 産 年 齢 人 口 が 減 少 す る こ と に よ って税 収 は減 少 し、 社 会 保 障 関 連 費 は増 加 す る。 大 阪 や 東 京 は、 かっ て団 塊 世 代 が集 団 就 職 で 集 ま って き た都 市 で あ る。2001 年 か ら2005年 で 、 最 も生 産 年 齢 人 口が 減 少 した の は 大 阪 府 で あ る。 集 団 就 職 で 来 た人 々が 高 齢 者 人 口 の仲 間入 りを した こ と も大 き く影 響 して い る が、 そ れ だ けで は な い。 大 阪 か らは本 社 機 能 が 東 京 に移 転 し、 工場 が 減 少 した こ と も影 響 して い る。 一 方 、 東 京 は首 都 と して地 方 か ら多 くの 人 々 を集 め て き た こ とに よ って、 これ ま で は大 阪 の よ うに な らなか った。 今 後 は一 挙 に高 齢 化 が 進 む 。. 一7一.

(8) 人権問題研究所 紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動 についての一考察. 大 阪 の 経 済 的 地 盤 沈 下 は、 以 上 の よ うな生 産 年 齢 人 口 の減 少 が 大 き く影 響 して い るの で あ る。 地 方 にお いて も高 齢 化 と周 辺 部 が 一 層 減 少 す る傾 向 を と もな い なが ら人 口減 が 加 速 す る こ と に よ って、 周 辺 部 及 び生 産 年 齢 人 口 が よ り早 く減 少 して い くこ と に な る。 2035年 の 推 定 人 口 で は、 北 海 道 は先 に 示 した よ う に120万 これ らの減 少 は経 済 に圧 倒 的 な影 響 を与 え る。 例 え ばJR北 入 が さ らに減 少 し経 営 は さ らに厳 しくな る。 これ はJR北. 人 少 な くな る。. 海 道 な ど は営 業 収 海 道 やJR四. 国 だけ. の問 題 で は な い。 す べ て の産 業 に 大 きな 悪 影 響 を 与 え る。 こ れ は産 業 だ け で は な く部 落 解 放 運 動 に も大 きな影 響 を 及 ぼ す 。 水 平 社 発 祥 の地 、 奈 良 で も30万 人 減 る。 も と も と奈 良 県 は奈 良 市 内 に人 口 が集 中 して い る県 で あ る。 そ れ が 周 辺 部 の 町 の 人 口減 少 に よ って、 一層 顕 著 に な る。 全 国 各地 の地 方 に存 在 す る運 動 体 は、 そ の地 域 そ の もの の 人 口減 少 と高 齢 化 を と もな い な が ら構 成 員 の 激 減 と高 齢 化 が 一 層 進 ん で い る。 和 歌 山 県 で も、 和 歌 山 市 内 の 人 口 も減 少 す る が、 周 辺 部 は さ らに 減 少 す る こ とに な り、 農 業 や 漁 業 に大 き な悪 影 響 を もた らす。 私 た ち は そ う した 人 口動 向 の基 盤 の 上 に部 落 解 放 運 動 が あ る と い う こと を 直視 す る必 要 が あ る。 これ まで 社 会 の 矛 盾 が 被 差 別 部 落 に集 中 して現 れ る と い って きた が 、 人 口 問 題 も被 差 別 部 落 に集 中 して 現 れ て い る と い う こ とを再 確 認 す る必 要 が あ る。 先 に 述 べ た よ う に生 産 年 齢 人 口 の ピー ク は、1995年 以 後 、 減 少 が 続 い て い る。 日本 経 済 は1996年. で8717万. 人 で あ った。. が 小 売 販 売 高 の ピー クで、 以 後. 2011年 ま で 下 が り続 け て い る。 全 体 と して 生 産 年 齢 人 口 の減 少 と と もに 内 需 が 縮 小 し小 売 が 落 ち て い る。 総 収 入 が 減 少 し総 支 出 も下 が り、1998年 か ら は 自殺 者 が 年 間3万 人 を超 え、2011年. まで14年. 間続 い て い る。. 以 上 の よ うに人 口減 少 は部 落 解 放 運 動 に も多 大 な 影 響 を 与 え て い る。 少 子 高. 一8一.

(9) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動 にっいての一考察. 齢 化 を と もな う人 口減 少 や 国 内外 の 変 化 を ふ まえ た根 本 的 な改 革 を行 わ な い 限 り部 落 解 放 運 動 は、 よ り一 層 速 い ス ピー ドで 衰 退 し影 響 力 は低 下 して い く。 し か し人 権 課 題 は社 会 の進 歩 、 科 学 技 術 の 進 歩 と と もに、 よ り高 度 で複 雑 で重 大 な問 題 に な って い く。 部 落 解 放 運 動 が 部 落 差 別 だ け で な く、 多 くの差 別 撤 廃 ・ 人 権 確 立 の 課 題 に取 り組 む た め に は、 これ まで 以 上 に多 様 な影 響 力 を持 つ必 要 が あ る。 そ うな らな けれ ば部 落 差 別 撤 廃 も前 進 しな い。 その た め に も発 想 の転 換 と根 本 的 な改 革 が 求 め られ る。. 日本 社 会 の 矛 盾 と衰 退 が 被 差 別 部 落 に集 中 日本 社 会 の 矛 盾 と衰 退 が 、 そ の ま ま集 中 的 に部 落 解 放 運 動 に も現 れ て い る。 日本 各 地 で 増 加 して い る限 界 集 落 の よ うに、 地 方 の 被 差 別 部 落 の 限 界 集 落 化 が 急 激 に 進 ん で い る。 限 界 集 落 と は、 住 民 の50%以. 上 が65歳 以 上 で、 生 活 道 や 林 野 の 整 備 、 冠 婚. 葬 祭 な ど共 同 体 と して の 機 能 を 果 たせ な くな り、 維 持 が 限 界 に近 づ いて い る集 落 の こ とで あ る。55歳 以 上 が過 半 数 の 「準 限 界 集 落 」 と併 せ て 年 々増 加 して い る。 国 土 交 通 省 に よ る2006年. 調 査 で は、 全 国 に7878の. 限 界 集 落 が あ り、 う ち. 423集 落 が10年 以 内 に消 滅 す るお そ れ が あ り、2220集 落 が い ず れ 消 滅 す る可 能性 が あ る と述 べ られ て い る。 こ う した状 況 は 地 方 経 済 や 地 方 公 共 団 体 の活 力 を失 わ せ る と と も に部 落 解 放 運 動 の パ ワー を 限 りな く減 退 させ て い る。 都 市 部 に お い て も同 様 の 傾 向 は進 行 して い る。 高度 経 済 成長 に と も な って 都 市 部 に形 成 さ れ た ニ ュー タ ウ ン は、「高 齢者 集 住 タ ウ ン」 にな り、 都 市 部 の限 界 集 落 の よ うに な って きて い る。 同 様 に 都 市 部 に お け る被 差 別 部 落 の 少 子 高 齢 化 も確 実 に進 ん で い る。 部 落 解 放 運 動 に結 集 して い る人 々 の高 齢 化 は、 都 市 部 ・地 方 部 を 問 わ ず 一 般 社 会 の 高 齢 化 よ り速 い ス ピー ドで 進 み、 地 域 に お け る リー ダ ー層 の 高 齢 化 も顕 一9一.

(10) 人権 問題研 究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動 にっいての一考察. 著 で あ る。 高 齢 化 一 般 が悪 い の で はな い。 本 来 、 長 生 きす る こ とは素 晴 ら しい こ とで あ り、 高 齢 者 が地 域 の リー ダ ーを 担 う こ と も評 価 され るべ き こ とで あ る。 問題 は 次 の時 代 を担 う後 継 者 が 十 分 に 育 って い な い こ とで あ る。 後 継 者 が い な くな れ ば そ の組 織 は確 実 に 消滅 す る。 中小 零 細 企 業 の後 継 者 不 足 も深刻 で あ るが 、 後 継 者 の い な い中 小 零 細 企 業 は 合 併 や買 収 を さ れ な い限 り市 場 か ら消 え て い く。 日本 の 中 小 零 細 企 業 や 自営 業 者 は猛 烈 な ス ピー ドで減 少 し、 そ れ らが シ ャ ッタ ー通 り商 店 街 を 増 加 させ て い る。 同 様 の こ とが 部 落 解 放 運 動 を は じあ 各分 野 で 起 こ って い る。 全 国 各 地 の 運 動 組 織 は、 組 織 内 の著 しい若 年 減 少 と高 齢 化 傾 向 を 十 分 に理 解 して い る。 しか し後 継 者 育 成 も進 ん で い な い。 よ り正 確 に いえ ば 地 方 にお いて 育 成 す べ き若 年 層 が 被 差 別 部 落 に も少 な い。 こ う した 状 況 は 日本 社 会 全 体 の問 題 で もあ る が、 部 落解 放 運 動 に と って は死 活 的 な 問題 で あ る。 ま た若 年 層 の被 差 別 部 落 出身 者 の意 識 は 大 き く変 化 して い る。 よ り正 確 に い え ば 出 身 者 と して の意 識 格 差 が 多 様 に な り、 出 身者 と して の 意 識 が希 薄 な若 年 層 が 大 き く増 加 して い る。 自身 の 自覚 と密 接 に結 び っ い て い る 「自 己認 定 」 意 識 を基 準 にす れ ば 「被 差 別 部 落 出身 」 の若 年 層 は さ らに減 少 して い る。 っ ま り後 継 者 育 成 が 極 め て 困 難 な状 態 に な っ て い る の で あ る。 これ らの基 盤 的 な原 因 が、 先 に 述 べ た 少 子 高 齢 化 を と もな った人 口減 少 問題 な ので あ る。 人 口が 減 少 して栄 え た 国 は な い よ うに 、 人 口が 減 少 して 栄 え た地 方 も、 組 織 人 員 が 減 少 して 活 性 化 した組 織 もな い。 過 去 に そ う した モ デ ルが な けれ ば容 易 な こ とで は な いが 、 新 しい モ デ ル を創 造 す る しか な い の で あ る。 す で に世 帯 減 少 も始 ま りっ っ あ る こ と を考 え る な らな お さ らで あ る。 また 人 口減 少 は あ らゆ る面 に マ イ ナ ス効 果 を もた らす。 そ れ らの マ イ ナ スを チ ャ ンス に す る よ う な発 想 が な けれ ば企 業 も行 政 機 関 も組 織 も活 性 化 しな い。 一10一.

(11) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢をふまえ た部落解放運動にっいての一考察. 日本 は 明 治 維 新 か ら2005年. ま で 一 時 を除 い て 、 一 一貫 して 人 口増 加 に 対 応 した. 政 策 を採 用 して きた。 そ れ は民 間企 業 に お いて も同 様 だ 。 そ の発 想 を変 え人 口 減 少 に 対 応 し た種 々 の 政 策 と評 価 シ ス テ ム が な け れ ば次 の 成 功 に っ な が らな い。 人 口減 少 時 代 に明 治 以 降130年. 以上続 いた人口増加の発想で政策立案すれ ば. 必 ず 誤 っ た方 針 に な る。 人 口増 加 時 代 の発 想 で少 子 化 対 策 を 行 って も成 功 しな い よ う に、 同 様 の 発 想 で 経 済 政 策 や経 営 方 針 、 組 織 方 針 を 立 案 し実 践 して も成 功 しな い。 以 上 の よ う な人 口減 少 に と もな う危 機 を好 機 に す るた め の 出 発 点 は、 現 実 の 直 視 で あ る。 そ れ が 厳 しい現 実 を味 方 に す る最 短 の道 で あ る。 部 落 解 放 運 動 も同 様 で あ る。 今 一 度 、 組 織 形 態 の在 り方 を 根本 的 に見 直 す 時 期 に きて い る と いえ る。 す で に上 記 に指 摘 した こ とが末 端 か ら静 か に 進 行 して い る。 そ れ らの 状 況 を 根 本 的 に改 革 せ ず 、 場 当 た り的 な方 針 で は組 織 は確 実 に 衰退 して い く。 さ らに 時 代 の 変 化 は人 口減 少 だ けで は な い。 人 口減 少 に と もな うそ の他 の 多 面 的 な 変 化 も組 織 に大 き な変 革 を 迫 って い る。 人 口減 少 以 外 の変 化 も組 織 の 変 革 を 強 く求 め て い る。. 3、 時 代 の 特 徴 を ふ ま え た 運 動 の 課 題 社 会 的 変 化 と とも に 運 動 内 の 状 況 も大 き く変 化 時 代 の 特 徴 を 上 げれ ば 時 代 の 変 化 は部 落 解 放 運 動 に何 を求 あ て い るの か と い う こ とが 明 確 に な って くる。 例 え ば先 に述 べ た こ と と重 な る部 分 が あ るが 、 ① 少 子 高 齢 化 ・人 口減 少 化 、 ② 日進 月 歩 で進 むIT革. 命 に と もな う情 報 化 、 ③ デ. フ レ ・経 済 不 況 下 の低 成 長 化 、 ④ 経 済 の グ ロー バ リゼ ー シ ョ ンに と もな う グ ロ ーバ ル化 、 ⑤ 不 況 に と もな う税 収 の著 しい低 下 に よ る行 財 政 の 悪 化 、 ⑥ 格 差 拡 大 社 会 に と もな う貧 困 層 の固 定 化 、 ⑦ 企 業 の社 会 的 責 任 の 明 確 化 、 ⑧ 遺 伝 子 一11一.

(12) 人権 問題研究所紀 要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動にっいての一考察. 差 別 の顕 在 化 等 々 で あ る。 これ らの社 会 的 変 化 と と もに運 動 内 外 の状 況 も大 き く変 化 して い る。 ① 組 織 の高 齢 化 、 ② 被 差 別 部 落 出 身 者 の 出 身 者 意 識 の希 薄 化 、 ③ 組 織 人 員 及 び リー ダ ー層 の 減 少 化 、 ④ 特 別 法 失 効 に と もな う同和 行 政 の一 般 施 策 化 、 ⑤ 部 落 差 別 実 態 の 変 化 、 ⑥ 実 態 変 化 に と もな う部 落 解 放 運 動 の 当面 の 目 標 変 化 な ど で あ る。 以 上 の状 況 を 的 確 に受 け止 め た上 で 、 組 織 の 現 状 と 目指 すべ き当面 の 目標 を 明確 に し、 差 別 撤 廃 ・人 権 確 立 を 効 果 的 に進 め る組 織 形 態 と は ど の よ うな もの か とい う こ とを明 らか に で きれ ば、 組 織 の 変 革 ・再 生 は確 実 に進 あ る こ とが で き る。 そ の と き に重 要 な こ と は、 これ ま で の 既 成 概 念 に と らわ れ な い こ とだ。 既 成 概 念 か らは時 代 や 組 織 を変 革 す る よ うな ア イ デ ア は出 て こな い。 以 上 の よ う な状 況 を ふ まえ 、 まず 第 一 に高 齢 化 ・人 口減 少 化 と い う傾 向 を ど の よ うに 活 か す の か と い う問題 で あ る。 社 会 の 高 齢 化 は評 価 す べ き こ と で あ り、 私 た ち の 社 会 は健 康 で 長 生 きが で き る よ うに 医 療 も福 祉 も進 化 させ て き た。 問題 は少 子 化 と人 口 減 少 、 と りわ け地 方 の 著 しい人 口減 少 で あ り、 高 齢 者 に続 く壮 年 層 、 青 年 層 の リー ダー が 減 少 して い る と い う問 題 で あ る。 高 齢 化 が 進 ん で い る の は健 康 な高 齢 者 が増 加 して い る と い う こ とで あ り、 健 康 年 齢 ・能 力 年 齢 ・労 働 年 齢 な ど の概 念 で年 齢 を換 算 す れ ば30年. 前 と は大 き. く異 な る高 齢 者 像 が 見 え て くる。 60歳 代 後 半 や70歳 代 で 現 役 で仕 事 を 精 力 的 に こな して い る人 々が た くさ ん い る。 全 て の 人 が そ うだ と は いわ な いが 、 私 た ち や高 齢 者 自身 の高 齢 者 観 を変 え る必 要 が あ る。 そ うで な けれ ば 高 齢 者 の 持 っ 積 極 面 を活 か し高 齢 化 を強 み に す る こと は で きな い。 例 え ば 高 齢 者 人 口 を どの よ うに 捉 え る の か に よ って 生 産 年 齢 人 口(15歳 64歳)と. 高 齢 者 人 口(65歳. ∼. 以 上)の 比 率 は大 き く変 わ る。 今 日の 定 義 で生 産. 年 齢 人 口 と高 齢 者 人 口 の推 移 を 見 れ ば、2009年 時点 で63 .9%と22.7%で 一12一. あ.

(13) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動 にっいての一考察. り、2030年 時 点 で は58.5%と31.8%に. な る と予 測 さ れ て い る。09年. 年 で生 産 年 齢 人 口 は高 齢 者 人 口の 約2.8倍. か ら約1.8倍. しか し、 生 産 年 齢 人 口 を事 実 上5年. 遅 らせ て20歳. と30. に 縮 小 す る。. ∼69歳 、 高 齢 者 人 口 を. 70歳 以 上 とす れ ば、 この 比 率 は 大 き く変 わ る。 多 様 な高 齢 者 を 同 じよ うに 見 るの は 間違 いで あ る。 高 齢 者 それ ぞ れ の体 力 や健 康 状 態 、 価 値 観 な どに 合 わ せ た役 割 を考 え る こ とが 運 動 の 活 性 化 に もっ な が る。 高齢 者 に は息 子 や 孫 世 代 に一 定 の 影 響 力 が あ り、 社 会 的影 響 力 を 持 っ 人 も多 い。 また 智 恵 や 知 識 、 技 術 、 経 験 も豊 富 で あ り、 時 間 的 余 裕 を 持 っ 高 齢 者 も多 い。 これ らの こ とが 世 代 間 軋 礫 の よ うに マ イ ナ ス に作 用 す るの で はな く、 積 極 的 に活 か され る よ う な運 動 政 策 を考 え る必 要 が あ る。 す で に壮 年 層 ・青 年 層 と タ ッグ を組 ん で部 落解 放 運 動 の 重 要 な 役 割 を 担 って い る人 々 もた くさん い る。 そ の よ うな 発想 で 高 齢 者 の パ ワ ーを 活 か す こ とが で きれ ば、 労 働 組 合 の よ うに定 年 の な い 居住 者 組 織 ・地 域 組 織 で あ る部 落 解 放 運 動 の強 み と な り大 き な力 を得 る こ とが で き る。 そ の と き に私 た ち が考 え な け れ ば な らな い こ と は、 組 織 に寄 与 す る た め の各 自 の負 担 を柔 軟 な発 想 で求 め る こ とで あ る。 高 齢 者 の 場 合 、 年 金 以 外 の収 入 が な い とい う人 も多 い。 各 自 の経 済 的状 況 に よ って 貢 献 の あ り方 を 変 え 、 経 済 的 余 裕 の少 な い 人 は他 の方 法 で貢 献 す る とい う こ とが あ って も良 い と考 え る。 そ の た め に も誰 が どの よ うな 形 で 負 担 す るの か と い った 詳 細 な検 討 を行 う必 要 が あ る。 そ れ は多 くの 人 の 得 意 分 野 や 持 って い る条 件 を 知 る こ とに もな り運 動 パ ワ ーの 新 た な 発 見 に もっ な が る。 現 在 、 部 落 解 放 運 動 に参 加 して い る人 々 の 中 に は多 様 な能 力 や ネ ッ トワ ー ク を持 って い る人 が た くさ ん い る。 そ れ らの能 力 や 条 件 を 十 分 に活 か した運 動 に す る必 要 が あ る。 さ ら に い え ば人 口 減 少 を も活 か す よ うな 方 針 を 掲 げ る こ とが で き るか 否 か 一13一.

(14) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動にっ いての一考察. が、 これ か らの 日本 社 会 や部 落解 放 運動 の 活 性 化 に大 き な影 響 を 与 え る。 以 上 の よ うな発 想 で状 況 を捉 え 、 視点 を 変 え れ ば 少 子 高 齢 化 と い う分 野 だ け で な く他 の分 野 で も時代 の 変化 を 活 用 した 新 た な 展 望 を 開 くこ とが で き る。 時 代 の変 化 を ふ ま え た 第二 の視 点 は 、 日進 月 歩 で 進 むIT革. 命 に と もな う情. 報 化 を部 落 解 放 運 動 の 中 で最 大 限活 用 す る こ とで あ る。 そ の 際 、 情 報 化 を活 用 して い る企 業 に も っ と学 び、 多 様 な サ イ バ ー ス ペ ー ス(電 子 空 間)運 動 を 展 開 す る必 要 が あ る。 企 業 分 野 で は ネ ッ ト通 販 、 ネ ッ ト証 券 、 ネ ッ ト旅 行 社 な ど ネ ッ ト○ ○ が あ らゆ る分 野 に浸 透 し、 サ イ バ ー 時 代 と いえ る よ う な状 況 に な っ て い る。 運 動 は これ らの変 化 を十 分 に生 か しきれ て い な い。 最 先 端 の 技 術 と ノ ウハ ウ を取 り入 れ、 ネ ッ ト上 の情 報 発進 力 を 強 化 し、IT革. 命 の 果 実 を 取 り入. れ た部 落 解 放 運 動 が求 め られ て い る。 この 分 野 で は反 人 権 ・差 別 煽 動 グ ル ー プ に大 き く遅 れ を と って い る。. 部 落 解 放 運 動 の再 編 ・創 造 が 求 め ら れ て い る 第 三 に経 済 状 況 の悪 化 に と もな う社 会 変 化 を十 分 に ふ まえ た 部 落 解 放 運 動 を 展 開 す る必 要 性 で あ る。 時 代 の特 徴 と して の デ フ レ ・経 済 不 況 下 の 低 成 長 化 、 不 況 に と もな う税 収 の著 しい低 下 に よ る行 財 政 の 悪 化 、 格 差 拡 大 社 会 に と もな う貧 困 層 の固 定 化 な ど に対 応 した取 り組 み が求 あ られ て い る。 この よ うな 社 会 的 ク ラ イ シス の時 代 は、 部 落 解 放 運 動 に と って そ の使 命 ・役 割 が 増 大 す る時 代 で あ る。 っ ま り低 成 長 時 代 に求 め られ る人 権 課 題 を敏 感 に 見 っ け 出 し、 新 た な 課題 と それ らへ の 解 決 方 策 を示 す ことが 求 あ られ て い る の で あ る。 そ れ も行 財 政 が 悪 化 して い る状 況 の 中 で 解 決 方 策 を進 め な け れ ば な らな い 時代 で あ る。 部 落 解 放 運 動 は これ ま で地 域 主 権 の取 り組 み の先 駆 者 と して部 落差 別 を撤 廃 す る た め に行 政 の 一 端 を 担 い、 行 政 機 関 と協 働 して ま ちづ く り を展 開 して き た 。 そ の取 り組 み を 積 極 的 に 捉 え 直 す必 要 が あ る。 そ の 豊 富 な経 験 と実 績 は、. 一14一.

(15) 人権問題研究所紀要. 人 口減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動にっいての一考察. 縮 小 す る行 政 に替 わ る新 た な 「公 」 を担 う社 会 的 起 業 の 推 進 者 に な り うる。 多 様 なNPOや. 社 会 福 祉 法 人 を設 立 して行 政 が 担 って い た役 割 を補 完 し、 社. 会 的課 題 を 自 ら解 決 す る た め に活 動 す る こ とは行 政 の 下 請 けで は な い。 これ ま で部 落 解 放 運 動 は生 活 保 護 者 の 自立 ・就 労 支 援 を は じあ とす る種 々 の 取 り組 み を展 開 し大 きな実 績 を 残 して き た。 例 え ば貧 困層 の 固定 化 を 防 止 す る政 策 を提 案 し行 財 政 を活 用 して 起 業 す る こ と や、 高 齢 化 社 会 の課 題 に対 応 した 福 祉 事 業 を展 開 す る こ とは運 動 の重 要 な 課 題 で もあ る。 そ して これ らの社 会 的 起 業 は地 域 の 雇 用 や生 活 課 題 の解 決 に っ な が り、 運 動 の活 性 化 に も結 び っ く。 そ の た あ に も地 域 の リー ダー層 に後 に述 べ る よ うな社 会 的 起 業 を担 い う る能 力 が 求 め られ る。 ま た こ う した社 会 的起 業 を 展 開 し社 会 へ 貢 献 す る こ とは被 差 別 部 落 へ の 貢 献 に もつ なが り、 分 野 に よ って は これ まで 部 落 解 放 運 動 で培 って きた小 零 細 企 業 ネ ッ トワ ー ク を活 用 す る こ と もで き る。 第 四 に以 上 の 取 り組 み を推 進 す る た め に も、 同 和 行 政 の 一 般 施 策 化 を積 極 的 に 捉 え 、 新 た な同 和 行 政 ・人 権 行 政 を構 築 す る視点 が 必 要 で あ る。 特 別 法 の時 代 が 終 了 し10年 以 上 が 過 ぎ た。 一 般 施 策 を活 用 、 創 造 して 同 和 行 政 い わ ゆ る 部 落 差 別 撤 廃 行 政 を 進 め な けれ ば な らな い時 代 で あ る。 政 策 研 究 を 強 化 し一 般 施 策 を活 用 す る発 想 を持 た な けれ ば これ か らの 同 和 行 政 ・人 権 行 政 は創 造 で き な い。 あ らゆ る政 策 ・施 策 に 人権 や 差 別 撤 廃 の 視 点 を 組 み込 あ るチ ャ ンス と して 捉 え な けれ ば時 代 の特 徴 を 活 用 で き な い。 部 落 問 題 を解 決 す るた あ に は被 差 別 部 落 の 問 題 を解 決 す る とい う発想 か ら行 政 シス テ ム も含 あ た 社 会 全 体 を 変 え る発 想 が 求 め られ て い る。 そ れ が 被 差 別 部 落 の 問 題 を 解 決 す る こ とに っ な が って い るの で あ る。 行 政 の一 般 施 策 に よ って 部 落 の 困 難 な生 活 ・教 育 な どの 課 題 が 円 滑 に解 決 で きる よ うな行 政 シ ス テ ム に しな けれ ば な らな い の で あ る。 そ の た め に も運 動 リー ダ ーの 政 策 能 力 を 向上 させ、 行 財 政 悪 化 に対 応 した新. 一15一.

(16) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動にっいての一考察. た な人 権 ・福 祉 ・教 育 政 策 や 行 政 シ ス テ ム の提 案 が 求 め られ て い る の で あ る。 ま た都 市 部 の部 落 に あ って は、 不 良 住 宅 を 除 去 して 建 設 され た集 合 住 宅(公 営 住 宅)の 建 て替 え 時期 を迎 え て い る。 これ らの 建 て 替 え 事 業 も当然 の こ とな が ら一 般 施 策 で あ る。 そ の と き単 な る建 て 替 え で は な く、 住 宅 建 て替 え に と も な う新 た な ま ちづ く り、 魅 力 あ るま ち づ く りを 地 域 の 側 が 提 案 で き る か ど うか が 問 わ れ て い る。21世 紀 型 の理 念 を 明確 に した特 色 あ る 「人 権 推 進 モ デ ル ま ち」 にす る よ うな発 想 が 必 要 で あ る。 以 上 の視 点 と と もに経 済 ・社 会 の グ ロー バ ル 化 や リー ガ ル化(コ ンス ・司 法 重 視 化)な. ンプ ラ イ ア. ど に対 応 した部 落解 放 運 動 の 再 編 ・創 造 が 求 あ られ て い. る。 国 際 的 な人 権 運 動 に学 ぶ 取 り組 み の 強化 も必 要 で あ る。 さ ら に リー ガ ル化 、 コ ンプ ライ ア ンス重 視 の社 会 的状 況 を ふ まえ 、 企 業 の 社 会 的 責 任(CSR)や. コ ンプ ラ イ ア ンス の 視 点 で差 別 撤 廃 ・人 権 確 立 を 提 起 し、. 企 業 との 協 同 作 業 で 人 権 推 進 の取 り組 み を強 化 す る こ と も重 要 で あ る。 ま た運 動 も これ ま で以 上 に訴 訟 戦 術 を 重 視 す る と と もに、 多 くの 人 権 団 体 を バ ッ ク ア ップ で き るよ うな 人 権 リー ガ ル(法 律)セ. ン ター 的 な機 能 も必 要 で あ る。 そ. う した取 り組 み を 通 じて 社 会 的 変 化 に と もな う新 た な人 権 課 題 に対 応 し、 時 代 を リー ドす る組 織 の 先 進 性 を 示 す こ とが 、 これ か らの部 落 解 放 運 動 に 求 あ られ て い る。. 4、 社 会 シ ス テ ム と 社 会 意 識 ・関 係 ・基 準 関 係 を変 革 す る社 会 シス テ ム そ の際 、 先 に記 した社 会 シス テ ムを 変革 す る と い う視 点 を重 視 しな けれ ば な らな い。 「人 」 と 「人 」 との 「関 係 」 を 「差 別 ・被 差 別 の 関 係 」 か ら 「平 等 な 関 係 」 に切 り替 え る ことが で きれ ば差 別 は な くな る。 これ らの 「関 係 」 に密 接 にか か わ って い るの が 、 あ らゆ る分 野 、 あ らゆ る層 の社 会 シ ス テ ムで あ る。 社 会 の シ. 一16一.

(17) 人権問題研究所紀要. 人 口減少と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 につ いての一考察. ス テ ムが 変 わ れ ば 人 と人 との 関 係 は確 実 に変 わ る。 こ こで述 べ て い る 「関 係 」 と は人 と人 と の 関係 で は あ るが 、 狭 い意 味 で 捉 え られ る人 間 関 係 の こ とで は な い。 もっ と広 い意 味 で の 関係 で あ り、 社 会 関 係 的 な もの で あ る。 確 か に社 会 関 係 が 変 化 す れ ば個 々 の人 間 関係 も変 化 す る。 そ う した意 味 か らい え ば 社 会 シ ス テ ム は個 々 の人 間 関 係 に影 響 を与 え るの は 自明 の こ とで あ る。 例 え ば 「男 女 雇 用 機 会均 等 法 」 が 、1986年4月1日. に施 行 され た こ とに よ っ. て、 職 場 に お け る男 性 と女 性 の 関 係 は少 しず っ 変 わ って きた。 そ の後 の 「改正 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 」(1999年4月1日 (2007年4月1日. 施 行)に. 施 行)や. 「新 改 正 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 」. よ って、 男 性 と女 性 、 女 性 と事 業 主 の 関 係 は大 き く. 変 わ って きた。 男 女 平 等 教 育 を行 って もな か なか 変 わ らなか った男 性 や女 性 の 意 識 、 事 業 主 の意 識 が着 実 に変 化 して きた。 多 くの 男 性(時. に は女 性)が. 日常. 的 に行 って き た セ ク シ ャ ルハ ラス メ ン トが 、 「改 正 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 」 と い う シス テ ムが 成 立 して か ら大 き く改 善 され た 。 ま さ に 「均 等 法 」 とい う社 会 シス テ ムが 人 と人 、 男 性 と女 性 の 「関 係 」 を変 え っ っ あ る。 ま だ 「平 等 な関 係 」 で は な い が、 「差 別 ・被 差 別 の 関 係 」 を 少 し ず つ で は あ るが 変 え よ う と して い る。 この社 会 シス テ ム は、 「関 係 」 を 変 え るだ け で は な い 。 上 記 の 「均 等 法 」 で 示 した よ うに人 々 の意 識 や感 覚 に も大 きな影 響 を 与 え る。 私 た ち は差 別 意 識 や人 権 感 覚 に っ い て論 じる と き、 差 別 意 識 を是 正 し人 権 感 覚 を醸 成 す る た め に は、 同 和 教 育 や人 権 教 育 が 重 要 な役 割 を果 たす と強 調 して き た。 それ は間 違 い の な い事 実 で あ るが、 そ れ だ けで は十 分 で は な い。 あ る面 で は差 別 意 識 を是 正 す る と きに 同和 教 育 や 人 権 教 育 以 上 に重 要 な役 割 を果 た す のが 社 会 シス テ ム な の で あ る。 例 え ば労 働 災 害 や交 通 事 故 の後 遺 障 害 に 関 わ る 「障 害 等 級 表 」 を事 例 に して 考 察 して み る。 交 通 事 故 に よ る後 遺 障 害 か 労 働 災 害 に よ る ものか に よ って、 根 一17一.

(18) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 にっいての一考察. 拠 とな る法 律 は 自動 車 損 害 賠 償 保 障 法 や労 働 者 災 害 補 償 保 険 法 な ど異 な るが ベ ー ス は同 様 で あ る。1級. か ら14級 まで 存 在 す る等 級 の7級 に は、 「女 子 の外. 貌 に著 しい醜 状 を残 す もの」 が あ り、 女 子 を 男 子 に置 き換 え た 「男 子 の外 貌 に 著 しい醜 状 を残 す もの」 は、2012年 の は じめ まで は12級 この7級. とい う等 級 で あ った。. と12級 の 違 い は、 交 通 事 故 に よ る後 遺 障 害 で あ れ ば、 労 働 能 力 の 喪. 失 率 が56%と14%と. い う大 きな違 い に な った。 こ う した違 いが 補 償 金 額 や 給. 付 金 額 に格 段 の 違 い を 生 じさ せ た 。 労 働 災 害 に よ る給 付 金 の 場 合 、12級 が 年 間 賃 金 の半 分 弱 で あ る156日 分 を 「一 時 金」 で 受 け取 るだ けで あ っ たが 、7級 は131日 分 を 「年 金 」 と して受 給 で きた。 大 きな 違 いで あ る。 っ ま り この よ うに 「女 子 の 外 貌 」 を 重 くみ な し、 「男 子 の 外 貌 」 を軽 くみ な す 等 級 表 が 存 在 した こ とに よ って、 多 くの 人 々 の心 の 中 に これ まで か らあ っ た 「女 は 外 見 で 男 は 実 力 」 な ど と い っ た意 識 を 存 続 させ る こ とに っ な が って きた。 逆 に言 え ば そ う した意 識 が あ るか ら こそ、 上 記 の よ うな 「等 級 表 」 が 制 定 さ れ 存 続 して き た と い え る。 ま さ に 「等 級 表 」 とい った 社 会 シ ス テ ムが 、 私 た ち の 「意 識 ・感 覚 」 と密 接 に関 連 し、 金 額 を決 あ る 「基 準 」 と して 作 用 して き た の で あ る。 この 「等 級 表 」 も2011年2月 2010年5月27日. に 改 正 され た 。 その 大 き な根 拠 に な った のが 、. の京 都 地 方 裁 判 所 の 判 決 で あ る。 顔 な ど に大 や け ど を 負 い 大. き な傷 跡 が 残 った 京 都 府 内 の 男 性(35歳)の. 労 働 災 害 の 補 償 で、 女 性 よ り も. 男 性 が 低 い 「障 害 等 級 」 とす る国 の基 準 は法 の下 の 平 等 を定 あ た 憲 法14条. に. 違 反 す る と して 、 男 性 が 障 害 等 級 に基 づ く等 級 の認 定 取 り消 しを 国 に 求 め た訴 訟 で あ る。 判 決 は、 国 勢 調 査 を 基 に 「女 性 の方 が 接 客 す る職 種 に多 く就 い て お り、 顔 な どの 障 害 で受 け る制 約 も大 き い」 と した 国 側 の 主 張 に っ いて 、 「不 特 定 多 数 の 人 と接 す るの は、 法 務 従 事 者 、 理 容 師 な ど もあ り、 男 女 差 の 明確 な根 拠 とな ら な い」 と退 け、 「男 性 も障害 を受 け れ ば大 きな精 神 的 苦 痛 を 感 じる こ とが あ る。. 一18一.

(19) 人権問題研究所紀要. 人 口減少 と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 についての一考察. 性 別 に よ る差 別 的 取 り扱 い に合 理 的理 由 は な く、 違 憲 」 と して 認 定 取 り消 しを 命 じた。 これ まで な ら地 裁 の判 断 で、 国側 の主 張 が 通 らな けれ ば 控 訴 す るの が 通 常 で あ った が 、 国 側 は控 訴 せ ず 、 京 都 地 裁 判 決 を受 け入 れ 、 「障 害 等 級 表 」 を 改 正 す る こと に した の で あ る。 賢 明 な判 断 で あ る。 国 が そ う した決 断 を した背 景 に は 、 男 女 の 外 貌 に対 す る意 識 ・感 覚 が 変 化 し た こ とが上 げ られ る。 っ ま り意 識 ・感 覚 が 変 化 した こ と に よ って 、 裁 判 シス テ ム を通 じて 「障 害等 級 表」 の基 準 や シ ス テ ムが 変 わ っ た ので あ る。 た だ判 決 は 、 「社 会 通 念 上 は、 容 貌 の 障害 に よ る影 響 に男 女 差 が あ る と され 、 等 級 の 男 女 差 に 根 拠 が な い と は いえ な い」 と しっ っ 、 「障 害 等 級 表 で は年 齢 や 職 種 、 利 き腕 な ど は障 害 の 程 度 を 決 定 す る要 素 とな って い な い の に、 性 別 だ け で 大 きな 差 を 設 け るの は不 合 理 で 、 憲 法14条. に違 反 す る」 と述 べ た の で あ る。. 判 決 も 「社 会 通 念 上 」「等 級 の 男 女 差 に根 拠 が な い とは い え な い」と述 べ て お り、 今 日 にお いて も 「社 会 通 念 上 」 つ ま り意 識 ・感 覚 に 男女 差 が あ る こ とを 認 あて い る ので あ る。 それ で も上 記 の よ うな判 決 に よ る基 準 や シ ス テ ムの 変 更 が 、 私 た ち の男 女 差 別 意 識 に積 極 的 な影 響 を与 え る こ とは言 う まで もな い。 っ ま り、「社 会 シ ス テ ム」 と 「関 係 」、「意 識 ・感 覚 」、「基 準 」 はす べ てっ な が っ て お り、 この4つ の キ ー ワ ー ドの 一一っ が 前 進 す れ ば、 一っ の ロー プ で結 ば れ た もの の よ うに 全 体 が 前 に進 む の で あ る。 「基 準 」 が 改 善 され れ ば 「意 識 ・感 覚 」 が 改 善 され 、「関 係 」 も変 わ り、逆 に 「意 識 ・感 覚 」が 改 善 され れ ば 「基 準 」や 「社 会 シス テ ム」、 「関 係 」 も大 き く前 進 す るの で あ る。. 意 識 と シ ス テ ムが 関 連 して い る こ と を ふ ま え し か し、 こ れ ら の キ ー ワ ー ドが 、 一 っ の ロ ー プ の よ う に 結 ば れ て い る こ と に よ って、 差 別撤 廃 に マ イナ ス に働 くこ と に もな っ て き た。. 一19一.

(20) 人権問題研究所紀要. 人日減少 と近年 の社会情勢 をふ まえた部落解放運動にっ いての一考察. そ の最 近 の事 例 が 先 に紹 介 した 土 地 差 別 調 査 事 件 で あ る。 こ の事 件 は、 マ ン シ ョ ン等 の不 動 産 販売 会 社 や 広 告 代 理 店 、 土 地 の マ ー ケ テ ィ ング リサ ー チ をす る土 地 調 査 会社 、 実 際 に 建 設 す る デベ ロ ッパ ーが 絡 ん だ 事 件 で あ る。 マ ン シ 司 ン等 の建 設 ・販売 を 企 画 す る不 動 産 販 売 会 社 や 広 告 代 理 店 が 、 マ ン シ ョ ン建 設 予 定 地 を 選 定 す る に あ た っ て、 候 補 地 を 土 地 の マ ー ケ テ ィ ン グ リサ ー チ に か け、 そ の 調 査 報 告 書 に事 実 上 「同 和 地 区 」 を明 示 し、 そ れ らの土 地 を候 補 地 か ら差 別 的 に外 して きた 事 件 で あ る。 そ れ らの 背 景 に は、 マ ン シ ョ ン購 入 予 定 者 で あ る エ ン ドユ ー ザ ー の 同和 地 区 や 同 和 地 区 を 校 区 に含 む 地 域 に は住 み た くな い とい った差 別 意 識 や、 そ の意 識 を 前 提 と した忌 避 意 識 が 存 在 して い た か らで あ る。 これ らの 差 別 「意 識 ・感 覚 」 が 土 地 差 別 調 査 事 件 の 背 景 を形 成 して い る。 これ らの 「意 識 ・感覚 」 が 、 マ ン シ ョ ン等 を ス ム ー ズ に売 却 し利 益 を上 げ た い と願 う不 動 産 販売 会 社 や 広 告 代 理 店 に、 同 和 地 区 や そ の校 区 を避 け さ せ て きた の で あ る。 要 す る に エ ン ドユ ー ザ ー の差 別 的 な 「意 識 ・感 覚 」 が 、 関 係 業 界 にお いて 土 地 差 別 調 査 を業 務 の 「シス テ ム」 と して位 置 づ け させ て きた 。 こ う した動 きを 見 る な らば、 先 に紹 介 した こ と とは逆 に、 遅 れ た 差 別 「意 識 ・感 覚 」 が 、 差 別 を 強 化 す る 「業 務 シス テ ム」 の構 築 に っ な が って きた の で あ る。 そ して 、 それ らの差 別 撤 廃 に と って マ イ ナ ス に な る 「業 務 シ ス テ ム」 が、 「意 識 ・感 覚 」 に 悪 影 響 を与 え、 差 別 ・被 差 別 の 「関係 」 を解 体 す るの で は な く、 固 定 化 す る役 割 を担 って きた の で あ る。 この よ うに4っ の キ ー ワー ドが、 強 く連 関 して い る こ と に よ って 、 キ ー ワ ー ドの 一 っ が 後 退 的 に作 用 す れ ば、 全 体 が 引 きず られ て 後 退 して い く こ と に な り、 差 別 撤 廃 が ス ム ー ズ に前 進 しな い一 っ の 要 因 に もな って き た ので あ る。 差 別 撤 廃 の取 り組 み が一 進 一 退 を繰 り返 す 大 きな 要 因 は以 上 述 べ た こと と密 接 に 関 わ って い る。 こ う した4っ の キ ー ワ ー ドが 密 接 に関 連 して い る こ と をふ ま え た差 別 撤 廃 ・人 権 確 立 政 策 が 強 く求 あ られ て い るの で あ る。. 一20一.

(21) 人権問題研究所紀要. 5、lSO26000と. 人口減少と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動についての一考察. 部落 差別 の撤 廃. 社 会 的課 題 を 解 決 す る 指 針 に 以 上 の 認 識 と社 会 的 特 徴 を ふ まえ 、 部 落 差 別 撤 廃 や 人 権 確 立 の た め に大 き な 礎 に な る国 際 的 文 書 、 ガ イ ダ ンス(手 引 き書)に 行 した 「ISO(国. 際 標 準 化 機 構)26000」. な るの が 、2010年11月. に発. で あ る。 持 続 可 能 な 発 展 を創 造 す. る た あ に、 企 業 以 外 も対 象 に あ らゆ る組 織 に社 会 的 責 任 を果 た す こ とを 求 め て 世 界 各 国 か らの93%と. い う高 い賛 成 投 票 率 で 採 択 され た 。. この 「国 際 的 ガ イ ダ ンス」 を 企 業 だ けで は な く、 真 に あ らゆ る組 織 の手 引 き 書 に す る必 要 が あ る とい え る。 部 落 解 放 ・人 権 確 立 運 動 に と って も、極 あ て重 要 な 国 際 的 ガ イ ダ ンスで あ り、 積 極 的 に活 用 すべ きで あ る。 ま た後 に紹 介 す る よ うに七 っ の 中核 主 題 の一 っ が 人 権 で あ り、 部 落 解 放 運 動 に大 きな 力 を 与 え る もので もあ る。 戦 前 の部 落 解 放 運 動 、 水 平 社 運 動 の 根 拠 は、 いわ ゆ る 「解 放 令 」 で あ り、 戦 後 の 部 落 解 放 運 動 の拠 り所 は、 日本 国憲 法 や 同 和 対 策 審 議 会 答 申、 同和 対 策 事 業 特 別 措 置 法 で あ った。 今 日 に お いて は、 国 際 人 権 規 約 や人 種 差 別撤 廃 条 約 を は じめ とす る 国際 人 権 諸 条 約 も部 落 解 放 運 動 の大 きな基 盤 に な って い る。 しか し これ らの条 約 へ の 関 心 は、 世 界 や 日本 の社 会 で大 きな影 響 力 を 持 っ 企 業 で は、ISO26000と して 圧 倒 的 に低 い。ISO26000は. 比較. 条 約 の よ う に法 的 拘 束 力 を持 っ もの で は な. いが 、 事 実 上 それ ら以 上 に大 きな影 響 力 を 持 って い る。 ISO26000は O14000シ. 、 これ ま で の 「ISO9000シ. リー ズ(品 質 管 理)」 や 「IS. リー ズ(環 境 管 理)」 の よ うな認 証 規 格 で は な いが 、ISO規. 格の. 第 三 世 代 と して 企 業 経 営 そ の もの を包 括 的 に対 象 に し、 企 業 以 外 もそ の対 象 に して い る と い う特 徴 を持 って い る。 今 日 の 日本 社 会 の 課 題 を 克 服 す る た め に大 き な役 割 を果 た す セ ク タ ー(部 一21一.

(22) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえ た部落解放運動にっいての一考察. 門)は 、 ま ず第 一 に行 政 ・公 的 セ ク タ ーで あ り、 第 二 は企 業 ・営 利 セ ク ター で あ る。 そ して第 三 が非 営 利 セ ク タ ーで あ る。 これ ら三 っ の セ ク タ ー の 中 で も企 業 ・営 利 セ ク ター の果 た す役 割 は大 き く、 他 の 二 っ の セ ク タ ー に も大 き な影 響 を与 え て い る。 行 政 セ ク ター は税 を 支 出 す る こ と に よ って 社 会 的 課 題 を克 服 し て い くが 、 そ の税 の多 くの部 分 を負 担 して い るの は、 企 業 ・営 利 セ ク タ ーで あ る。 企 業 ・営 利 セ ク ター は、 利 益 を上 げ っ っ社 会 的課 題 を 解 決 し、 その 利 益 の 一 部 を 行 政 セ ク タ ー に税 と して納 あ て い る。 ま た税 を納 め る多 くの 労 働 者 を 雇 用 して い るの も企 業 だ 。 ま た企 業 は行 政 や非 営 利 セ ク ター で あ る多 くのNPOや 各 種 法 人 と一 体 と して ビ ジネ ス を展 開 す る時 代 に入 って い る。 こ う した 企 業 セ ク タ ー を は じめ とす る三 っ の セ ク ター に、 以 下 に 掲 げ る 「中 核 主 題 」 を 明 示 して 積 極 的 な取 り組 み を求 め て い る の がISO26000な. のであ. る。. 中核 主 題 に人 権 、 環 境 、 労 働 ISO26000は. 、 社 会 的 責任 の 「七 っ の 中 核 主 題 」 と して、 ① 組 織 管 理 ・統. 治 、② 環 境 、③ 人 権 、④ 労 働 、⑤ 公正 な事 業 活動 、⑥ 消 費 者 、⑦ コ ミュ ニ テ ィー を上 げ、 社 会 的 責 任 の 「七 っ の原 則 」 と して、 ① 説 明 責 任 、 ② 透 明 性 、 ③ 倫 理 的 な行 動 、 ④ ス テ ー クホ ル ダー の利 害 の尊 重 、 ⑤ 法 の 支 配 、 ⑥ 国 際 行 動 規 範 の 尊 重 、 ⑦ 人 権 の尊 重 を明 確 に して い る。 一 方ISO26000が. 採 択 され る以 前 の1999年. が 打 ち 出 した 「国連 グ ロ ーバ ル コ ンパ ク ト(10項. 、 当 時 の ア ナ ン国 連 事 務 総 長 目)」 も同 様 の 内容 を参 加 企. 業 に 求 め て い る。 「国 連 グ ロ ーバ ル コ ンパ ク ト」 は、 各 企 業 が 責 任 あ る創 造 的 な リー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 す る こ と に よ って 、 社 会 の 良 き一 員 と して 行 動 し、 持 続 可 能 な成 長 を 実 現 す るた あ の 世 界 的 な 枠 組 み 作 り に参 加 す る 自発 的 な取 り組 み で あ る。. 一22一.

(23) 人権 問題研究所 紀要. 「10項 目」 で は、4つ. 人口減少 と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 にっ いての一考察. の テ ー マ の下 、 ① 「人 権 」 で は 「人 権 擁 護 の 支 持 と尊. 重 」、 「人 権 侵 害 へ の 非 加 担 」、 ② 「労 働 」 で は 「結 社 の 自 由 と団 体 交 渉 」、 「強 制 労 働 の排 除 」、「児 童 労 働 の 実 効 的 な廃 止 」、「雇 用 と職 業 の 差 別 撤 廃 」、③ 「環 境 」 で は 「環 境 問 題 の予 防 的 アプ ロ ーチ 」、 「環 境 に対 す る責 任 の イ ニ シア テ ィ ブ」、 「環 境 にや さ しい 技 術 の開 発 と普 及 」、 ④ 「腐 敗 防 止 」 で は 「あ らゆ る形 態 の 腐 敗 防 止 」 を上 げ て い る。 これ らは差 別 撤 廃 ・人 権 確 立 の方 向性 と明確 に一 致 す る。 こ の 「国 連 グ ロー バ ル コ ンパ ク ト」 に は、2011年12月. 末 で9898社(全. で も365社 が 参 加 して い る。 これ らISO26000も. 世 界)が. 参 加 し、 日本. 国 連 の グ ロ ーバ ル コ ンパ ク. トも人権 を最 重 要 テ ー マ に上 げて い る。 これ らの一 環 と して 日本 企 業 で も取 り組 ま れ るよ うに な って き た ダ イバ ー シ テ ィ ・マ ネ ジ メ ン トも多 くの 企 業 の 関 心 を集 め て い る。 ダ イバ ー シ テ ィ ・マ ネ ジメ ン トとは、 ダイ バ ー シ テ ィ&イ. ンク ル ー ジ ョ ンの こと で、違 い を認 めっ っ 、. 違 い の 強 み を活 か す こ とで あ る。 異 質 な人 の集 団 で イ ノ ベ ー シ ョン(革 新)を 起 こせ る か ど うか が重 要 な の で あ る。 違 い は属 性 や働 く条 件 だ け で は な い。 ジ ェ ンダ ー、 身 体 状 況 の違 い、 人 種 、 国 籍 、民 族 、宗 教 、門 地 、世 代 な どや 働 き方 、雇 用 形 態 、考 え 方 な ど も含 まれ る。 例 え ば人 の視 点 か ら企 業 活 動 を考 え る と よ く理 解 で き る。 企 業 は、 第 一 に 多 様 な人 を 「雇 用 」 し、 第 二 に雇 用 した 多 様 な 人 の 「労 働 」 に よ って製 品 ・サ ー ビス等 を生 み 出 し、 第 三 に製 品 ・サ ー ビスを 多 様 な人 や法 人 に 「提 供 」 して い る。 それ ぞれ の分 野 に企 業 責 任 が 存 在 す る。 っ ま り雇 用 責 任 、 労 働 責 任 、 提 供 責 任 で あ る。 雇 用 責 任 で は、 職 業 安 定 法 遵 守 や就 職 差 別 防 止 な どが 求 め られ、 労 働 責 任 で は、 労 働 基 準 法 等 の遵 守 や業 務 の 中 で の 差 別 防 止 、 セ クハ ラ、 パ ワハ ラ等 の 防 止 な どが 求 め られ る。 提 供 責 任 で は、 金 融 商 品 や 製 造 物 、 そ の他 の販 売 に関 わ る多 数 の法 律 を遵 守 す る とい った こ とが 求 あ られ る。. 一23一.

(24) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動にっいての一考察. 今 日、 多 様 な人 々 が 快 適 に働 け る条 件 を 整 備 しっ っ 、 多 様 な 人 々 の 違 い を チ ャ ンス に す る発想 が 求 め られ て い るの で あ る。. 人 権 監 査 の視 点 が 求 め られ て い る 今 日の 企 業 に 求 め られ る役 割 と責 任 を(財)経 る 「第13回. 済 広 報 セ ン ター が発 表 して い. 生 活 者 の 企 業 観 に関 す る調 査 報 告(2010年)」. か ら見 る と上 記 の. 結 果 が 顕 著 で あ る。 ま ず ① 「省 資 源 ・省 エ ネ や環 境 保 護 な ど に 取 り組 む 」 が 59%で. あ り、 ② 「安 全 ・安 心 で 優 れ た 商 品 ・サ ー ビス ・技 術 を適 切 な価 格 で. 社 会 に提 供 」 が55%、 48%に. ③ 「社 会 倫 理 に 則 した企 業 倫 理 を確 立 ・順 守 す る」 が. な って い る。 こ う した 視 点 を堅 持 す る こ とが ビ ジネ ス チ ャ ン ス に も結. び っ くと い う こ とで あ る。 今 一 度 、 企 業 と人 権 ・環 境 ・安 全 の重 要 性 と、 そ の基 盤 と して の コ ン プ ラ イ ア ンス の 視点 を 堅 持 す る必 要 が あ る。 社 会 の キ ー ワー ドで あ る人権 ・環 境 ・安 全 は、 ビジ ネ ス(チ 祥 事(ク. ャ ンス)の キ ー ワー ドで あ り、 ビ ジネ ス の キ ー ワ ー ドは不. ラ イ シ ス)の キ ー ワ ー ドで あ る こ と も忘 れ て は な らな い。. 企 業 の 社 会 的 責 任 は社 会 的 信 頼 に結 びっ き、 そ れ が企 業 価 値 を 高 め る こ と に な り、 そ れ が 取 引 先 との 関 係 を強 固 にす る。 一 方 、 人 権 時 代 ・情 報 化 時 代 の リー ガ ル(法 的)リ ン ト(管 理)は. ス ク(危 険性)マ. ネジメ. ます ます 重 要 に な って い る。 グ ロー バ ル 時代 に お い て、 国 内事. 業者 で あ って も米 国 を は じめ とす る諸 外 国 の裁 判 所 に訴 え られ る危 険性 も増 し て い る。 イ ンタ ー ネ ッ ト時 代 の企 業 リス ク は国 際 化 、迅 速 化 、巨大 化 、多 様 化 、 情 報 化 して い る。 また 法 令 違 反 が 巨大 リス ク に な って い る。 コ ンプ ライ ア ンス の実 現 を 法 令 自 体 が 求 め て い る時 代 に入 り、 企 業 の社 会 的 責 任 へ の要 請 も高 ま って い る。 以 上 の よ う な状 況 の 中 で 、 事 前 の予 防(問 題 発 見)的. コ ンプ ライ ア ン ス と し. て、 財務 監 査 ・業 務 監 査 の よ うに人 権 監 査 が 必 要 な時 代 に な って い る。. 一24一.

(25) 人権問題研究所紀要. 人口減少 と近年の社会情勢をふまえた部落解放運動 にっいての一考察. 身 近 な事 例 で いえ ば 企 業 内 のパ ワハ ラ も、 人 材 活 性 化 と い う経 営 的 視 点 だ け で は な く、CSRの. 視 点 、 人 権 ・労 働 面 の コ ンプ ライ ア ンス の視 点 か ら も予 防. 的 な人 権 監 査 ・労 働 監 査 が求 め られ る時 代 に な って い る の だ。 2012年3月15日. に厚 生 労 働 省 か ら 「職 場 の い じめ ・嫌 が らせ 問 題 に関 す る. 円 卓 会 議 」 が ま と め た職 場 に お け るパ ワ ーハ ラ ス メ ン トの定 義 が は じあ て公 表 され た 。 そ の 定 義 で は 「職 場 の パ ワ ーハ ラ ス メ ン トとは、同 じ職 場 で働 く者 に 対 して 、 職 務 上 の 地 位 や 人 間 関 係 な ど の職 場 内 の優 位 性 を 背 景 に、 業 務 の 適 正 な範 囲 を 超 え て 、 精 神 的 ・身 体 的 苦 痛 を 与 え る 又 は職 場 環 境 を 悪 化 さ せ る行 為 」 と し、 具 体 的 な 行 為 の 分 類 につ いて も上 げ て い る。 こ う した 定 義 を ふ まえ た具 体 的 な 人 権 監 査 が 求 め られ て い る時 代 に な って い るの で あ る。 上 記 の よ うな 社 会 的 特 徴 と企 業 の変 化 を ふ ま え っ っISO26000を. 活 用 した. 取 り組 み が 、 部 落 差 別 撤 廃 ・人 権 確 立 に積 極 的影 響 を 与 え る。. 6、 多 様 な 法 人 を 活 用 し た 運 動 組 織 を 以 上 の 時 代 的 特 徴 と運 動 内 外 の変 化 をふ ま え た部 落 解 放 運 動 を 担 う組 織 の あ り方 が 問 わ れ て い るの で あ る。 っ ま り経 済 状 況 の悪 化 に と もな う社 会 的 変 化 を 十分 に ふ まえ た部 落 解 放 運 動 の 柔 軟 な組 織 形 態 が求 め られ て い るの で あ る。 先 述 した 時 代 の 特 徴 と して の デ フ レ ・経 済 不 況 下 の低 成 長 化 、 不 況 に と もな う税 収 の 著 しい低 下 に よ る行 財 政 の悪 化 、 格 差 拡 大 社 会 に と も な う貧 困 層 の固 定 化 な どに 対 応 した取 り組 み が 求 め られ て い る。 この よ うな 社 会 的 ク ラ イ シス の 時 代 は、 部 落 解 放 運 動 に と って そ の使 命 ・役 割 が 増 大 す る時 代 で もあ る。 つ ま り低 成 長 時 代 に求 あ られ る人 権 課 題 を敏 感 に見 っ け出 し、 新 た な課 題 と そ れ らへ の 解 決 方 策 を示 す こ とが求 め られ て い るの で あ る。 それ も行 財 政 が 悪 化 して い る状 況 の 中 で 解 決 方 策 を進 め な け れ ば な らな い時 代 で あ る。 部 落 解 放 運 動 は これ まで 地 域 主 権 の取 り組 み の先 駆 者 と して 部 落 差 別 を撤 廃 一25一.

(26) 人権問題研究所紀要. 人 口減少と近年の社会情勢 をふ まえた部落解放運動 にっ いての一考察. す るた め に行 政 機 関 と協 働 して ま ち づ く りを展 開 して きた 。 そ の 豊 富 な経 験 と 実 績 は、 縮 小 す る行 政 に替 わ る新 た な 「公 」 を担 う社 会 的 起 業 の 推 進 者 に な り 得 る。. 多 様 な 法 人 を 設 立 して課 題 解 決 を NPO法. 人 や 社 会 福 祉 法 人 を は じめ とす る多 様 な 法 人 を 設 立 して 行 政 が 担 っ. て い た役 割 を補 完 し、 社 会 的課 題 を 自 ら解 決 す るた め に 活 動 す る こ と は行 政 の 下 請 けで は な い。 これ ま で部 落 解 放 運 動 は生 活 保 護 者 の 自立 ・就 労 支 援 を は じ め とす る種 々の 取 り組 み を展 開 し大 きな実 績 を残 して きた 。 例 え ば 貧 困 層 の 固 定 化 を防 止 す る政 策 を提 案 し行 財 政 を 活 用 して 起 業 す る こ とや 、 高 齢 化 社 会 の課 題 に対 応 した福 祉 事 業 を展 開 す る こ と は運 動 の 重 要 な課 題 で もあ る。 そ して これ らの社 会 的起 業 は地 域 の 雇 用 や 生 活 課 題 の 解 決 にっ な が り、 運 動 の 活 性 化 に も結 びっ い て きた。 そ の た あ に も地 域 の リー ダ ー層 に社 会 的 起 業 を 担 い う る能 力 が 求 め られ る。 また こ う した社 会 的 起 業 を展 開 し社 会 へ貢 献 す る こ と は部 落 差 別 撤 廃 に もっ な が る。 少 子 高 齢 化 を 伴 い な が ら地 方 か ら、 よ り一 層 進 行 して い る人 口 減 少 は 行 財 政 、 経 済 、 福 祉 、 教 育 、 生 活 等 の分 野 に大 きな悪 影 響 を 与 え 、 日本 社 会 だ けで は な く部 落 解 放 運 動 に も大 き な影 響 を与 え て い る。 今 日、 こ う した 日本 社 会 の課 題 を解 決 して い くた あ に 先 述 した よ うに 大 き く 分 類 して3っ の セ ク タ ー(部 門)が. そ の役 割 を果 た して い る。 そ の 一 っ が 「行. 政 ・公 的 セ ク タ ー」 で あ り、 も う一 っ が 「企 業 ・営 利 セ ク ター 」 で あ る。 そ し て この二 っ の セ ク タ ーだ けで は多 くの問 題 が 解 決 で きな くな って きて い る。 日本 社 会 に 未 曾 有 の 危 機 を もた ら した東 日本 大 震 災 の復 興 しか りで あ り、 急 速 な ス ピー ドで 進 む 少 子 高 齢 化 に と もな う問 題 しか りで あ る。 こ う した 課 題 解 決 の た め に ま す ます 大 き な役 割 を 担 って い る のが 「非 営 利 セ ク ター」 で あ る。 一26一.

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