エドテック:7.「つくる」を軸に自由に,分野横断的に学ぶ -ファブラーニングの実践とその可能性-
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(2) 「つくる」を軸に自由に,分野横断的に学ぶ. 7. 国において 21 世紀の産業を 支えていく人材に必要なリテ ラシーや,学習意欲を高める 政策として STEM が位置付け られ,2016 年度には 31 億ド ル( 約 3,700 億 円 ) が STEM 関連予算として計上されてい ます.日本国内でも 2020 年 から小学校でのプログラミン グ教育の必修化の動きに伴い, プログラミングに対しての取. 図 -2 福岡雙葉学園 SGH プログラム. り組みが注目を集めています. 何をどう教えるのかは,教育現場でも切実な課題に なっています. STEM の要素を多く含むファブラー ニングは,日本で注目されているプログラミングに 加えて,ディジタル工作機械を使った,3D モデリ. 日本国内での取り組み. ööゴールを示し,辿り着き方は学習者が 導き出す. ングなどのディジタルファブリケーションスキル. 以下では,文部科学省の SGH(スーパーグローバ. (造形力) ,制作物を通信でつなぐフィジカル・コン. ルハイスクール)に認定されている福岡雙葉学園の. ピューティング(IoT やロボットなどの分野)も含. プログラムを紹介していきます.毎年夏に開催して. まれています.この分野における指導者不足は,米. いるプログラムで,私たち実施者はゴール設定と学. 国や日本,世界各国でも共通している課題です.. 習環境を提供し,学習者がゴールまでの道筋を導き. öö教えるを手放し,学び合いを促す. 出す実践型の事例です.2015 年度は,スタンフォー ド大学と連携し,同年 12 月に FAB × Education に. フ ァ ブ ラ ー ニ ン グ を 進 め る に あ た り, 私 た ち. 関する国際会議を開催した年でした.そこで,福岡. は 新 し い 学 習 ス タ イ ル を 実 施 す る こ と を 推奨 し. 雙葉学園の高校一年生に「現役の女子高生が考える,. て い ま す. 指 導 者 が 一 方 的 に 知 識 を 教 授 す る 従. 女子の興味を引くワークショップを企画し,国際会. 来の方法ではなく,今日の Web メディアのよう. 議で教員および来場者に実施せよ」と課題を出しま. に 学 習 者 が 双 方 向 に 学 び 合 い, 教 え 合 う ス タ イ. した.生徒たちは,集中合宿でディジタル工作機械. ルです.SNS や e ラーニングなどの普及もあり,. の基本的な使い方を習得し,企画,準備をしていき. 日 本 で も 以 前 よ り も 共 通 認 識 と し て, テ ク ノ ロ. ました.放課後に作業を進め,国際会議当日,全国. ジ ーを 介 し た 学 び 合 い は 受 け 入 れ や す く な っ て. の教員や社会人に対してオリジナルワークショップ. い ま す. 幸 い に も「 つ く る 」 と い う 学 習 ス タ イ. を行いました.試行錯誤しながらも実施まで行えた. ル は, 学 習 者 に 合 わ せ て 創 造 的 な 余 白 を つ く る. 経験を通じて,臨機応変に対応する応用力を身につ. こ と が 可 能 に な る た め, 得 意 な 人 が 分 か ら な い. けていきました(図 -2) .. 人 を 教 え る な ど, 学 習 者 同 士 が 緩 や か に つ な が. 2016 年のプログラムでは,「米国から来日してい. り, 課 題 を 解 決 し て い く 環 境 が つ く り や す い 傾. るアメリカ人研究者一家に日本流のおもてなしパー. 向にあります.. ティを企画し,テクノロジーを駆使して開催せよ」 としました.2 日間という時間的制約もあり,1 カ 月前にオンライン講座であらかじめ 3D モデリング. 情報処理 Vol.58 No.3 Mar. 2017. 193.
(3) 特集. エドテック. 方法を学べるよう学習環境を整. 入出力設定をする. 備しました.スキルを伝授する. すべてのチェックを外してから, 下図と同じようにチェックを入れる. 講師が不在でも,オンラインで 生徒たちは学び合い,分からな ければ Web で調べ,質問はク ラウド上で集め,情報を共有し ていきました.そうしたプロセ スにより,研修当日はスムーズ. 図 -3 FAB WALKER. に作業に入ることができました.海苔をレーザカ. ングのみにとどまらずファブラーニングまでの拡張. ッターで加工したり,3D プリンタで作成した金魚. 性を見据え,ディジタルものづくりを組み合わせた. の型を使ってデザートをつくるという挑戦をして. 講座を展開しています .. 3). いきました.STEM や FAB 学習と聞くと,ロボッ トやプログラミングと連想される方も多いですが, 大切なのはテクノロジーを活用し創造性や課題解 決能力を高め,目的を達成することです.学習者 が経験を通じて社会的な関係性を見出すことは,ア. ööFabLearn. Asia 2015 /ネットワークの. 構築. クティブ・ラーニングの目的そのものです.さらに. 国際 STEM 学習協会では,国内外の架け橋になる. 加えて,実際に「つくる」まで実践して行うのがフ. ため,2015 年 12 月に STEM 学習領域に特化した国. ァブラーニングにほかなりません.. 際会議 FabLearn Asia 2015(ファブラーンアジア). ööオープンな教材開発:FAB. をスタンフォード大学と慶應義塾大学 SFC 研究所. WALKER. ソーシャル・ファブリケーション・ラボと連携して. ファブラーニングの分野横断的な活動を促進す. 開催しました.教育関係者,研究者,企業,保護者,. るために開発しているのが,FAB WALKER(ファブ. 学生,自治体など分野を超えて 200 名以上の方が. ウォーカー)という歩行ロボットです. STEM や. 参加する国際会議となりました.分野横断的な新た. FAB の機材としてよく使用される,レーザカッター,. な学習方法だからこそ,相互理解,情報共有,ネッ. 3D プリンタなどのディジタル工作機材を活用して. トワークの構築が重要となります.. 制作できるオープンな教材です.データから作成す. つくりながら学ぶ行為は,学習者のみならず実施. ることができるため,制作者は好きな素材を選び,. 者にとっても体験的かつ実践的な取り組みです.多. 自ら加工することが可能になります.地域資源を使. くの方々と連携しながら,日々探求しています.. ったロボットに仕上げたり,オリジナルの動きなど 自由に設定することができます(図 -3) . 2016 年度,総務省の事業で FAB WALKER を活用 した取り組みが採択され,山口県山口市大殿小学校 にて全 6 回の特別プログラミング講座を実施して います.この事業は,プログラミング教育を地域内 でサポートできるメンター育成が主な目的です.山. 参考文献 1) デ ジ タ ル メ デ ィ ア と 学 習 拠 点(the Digital Media and Learning Research Hub) , 「つながりの学習(Connected Learning)」レポート (2013) ,http://dmlhub.net/wp-content/uploads/2012/12/CLJapanese. pdf 2) 総務省:ファブ社会の基盤設計に関する検討会報告書(2015) , http://www.soumu.go.jp/main_content/000361195.pdf 3) 総務省: 「若年層に対するプログラミング教育の普及促進」事 業(2016) ,http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/ kyouiku_joho-ka/jakunensou.html (2016 年 11 月 15 日受付). 口大学教育学部などから応募してきた大学生が中心. 渡辺ゆうか ■ [email protected]. となり,実際に教材開発などを一緒に行い,実施ま. 多摩美術大学環境デザイン学科卒業,2011 年ファブラボ鎌倉を田 中浩也氏と共同設立し,2012 年より FabLabKamakura を立ち上げ 代表をつとめる.慶應義塾大学 SFC 研究所訪問研究員.. での準備や運営を協働で行っています.プログラミ. 194. 知の共有を促進する. 情報処理 Vol.58 No.3 Mar. 2017.
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