ミツバチ科学20(3):135-137 HoneybeeSclenCe(1999)
タイの ミツパ テ と養 蜂
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タイの在来種である トウヨウ ミツバチを用 い た伝統養蜂 は南部, タイ湾 にあるサムイ島の コ コナツ農園周辺で始 まった. しか しその時期 を 示す記録 は残 っていない.一方,北京 にある中 国農業科学院蜜蜂研究所 の博物館が所蔵す る文 献 に,雲南省 に住む タイ族の養蜂 は約1,000年 前 に, シーサ ンパ ンナ地域で始 まったとある. また, タイの伝統医薬 の製法を記 した古 い医学 書 には,ハチ ミツを数種 の薬草 と共 に使 う例が 多数見 られる. これ らの生薬 は今 日で もタイの 民間薬 を扱 う漢方薬局で販売 されている. ミツバチ種 現在知 られ る9種の ミツバチの うち, トウヨ ウ ミツ バ チ (A.cerana), コ ミツ パ テ (A jlorea),ク口コ ミツパテ (A.andreniformis),オオ ミツバチ (A.dorsata)の 4種が タイに在 来種 と して生息 し,南部 ナラテ ィワッ トの海岸 平野 (海抜10m)か ら北部 タイの最高峰 (Do主 lnthanonドイ イ ンタノ ン 海抜2,loom)ま で広 く分布 して い る. セ イ ヨウ ミツバ チ (A. mellifera) は, 1940年代中頃に研究 目的でチ ュラロンコー ン大学 に初 めて輸入 された.現在 はタイ北部 の養蜂企業のハチ ミツ生産 を担 う主 要養蜂種である. コ ミツバチは樹木 の小枝を包み込むように し て一枚巣をっ くる.全国 に多数生息す るが,中 部地域では特 に盛んに採集 している.バ ンコク 南西の町サム ッ トソンクラム ( SamutSongk-hram)では枝を振 った り,煙 をかけて蜂を追 い 払 い,蜂のいな くなった巣を切 り取 っている. コ ミツバ チの巣 の年 間採 集量 は 1万 コロニ ー 以上 あ り,そのハチ ミツと幼虫 はタイの人 々に 大変好 まれている. ク口コ ミツパテの巣の大 きさと構造 はコ ミツ バチと変わ らないが,腹部の色 に特徴があ り, 同所 的 に生 息す る他 の ミツパ テ種 と区別 され る. ク口コ ミツパテの生息が確認 されているの はタイ国内では10県 に限 られ る. このためそ のハチ ミツや蜂児が市販 され ることはない. 熱帯地域 に分布す るオオ ミツパテ (タイ語で は "プ ンルワンphung luwang")は最大の蜂 で,長 さ0.45-2.0m,幅0.15-1.10mにもなる大 きな垂れ下が る一枚巣をっ くる.営巣場所 はせ り出 したバル コニーや上水 タンクの下側,崖の 張 り出 しの下部,高 い木 か ら横 に伸 びた太 い枝 の下側 などである (図 1). オオ ミツパテのハニーハ ンテ ィング オオ ミツバチが高 い木 につ くる大 きな巣を採 集す る-ニー- ンティングは、 普通5, 6名の チームで行 われ る. タイでは2-3月に採集が 行われ, これ らの月 は "蜜月 (ナムプ ン ドゥア ン- nan phungduan ha)"と呼ばれ る.営 巣後-か月以上 たった巣が対象 となる.竹で作 ったは しごを登 り,7-25mもの高所 にあるオ
136 オ ミツバチの巣を切 り取 る. これを巣 ごと押 し つぶ して-チ ミツを搾 り,癒 したのち 1.52入 り の ビンに保存す る.昔 なが らの方法なので,花 粉 や蜂児が-チ ミツに混入 している. しか しオ オ ミツバチは多 くの野生植物 に訪花 して蜜を集 めるので, その-チ ミツは強 く鋭 い甘みがある と して, タイでは他の ミツバチの もの と比べ, 大変人気がある.オオ ミツバチ-チ ミツの価格 は 1ビンで約250バーツ (1000円)である. タイの伝統医療でオオ ミツバチのハチ ミツは止 血,腎臓病,皮膚の手入れ,滋養強壮 に効果が あると して広 く使われて いる. 蜂児 (有蓋,無蓋 とも) はタンパ ク源 として 調理 され (蒸す,揚 げる)食卓 に上 る. また飲 み物 と一緒 に唐揚 げの蜂児 をスナ ックと して食 べ るの も大変好 まれ (Chenetal.1997). トウヨウ ミツパ テの養蜂 タイ南 部 を中心 に約8,000群 の トウヨウ ミ ツバチが飼養 され,その内約2,000群 はサムイ 島,少数がプーケ ッ ト島で飼われている.巣箱 は南部やサムイ島ではココヤ シの幹 を使 った丸 太巣箱や,木箱である. タイ北部では観光 ツア ーやバ タフライ ・ファームに トウヨウ ミツバチ を織 り込む養蜂家が ごくわずかみ られ るが,お おむねセイ ヨウ ミツバチの養蜂 になって しまっ たといえる. アジア地域の他の国々と同様, トウヨウ ミツ バチに関す る最大 の課題 は逃去である.-チ ミ ツ収穫後 は70-85%の蜂群が,可動巣枠 の近 代的巣箱 に移 した場合 はほぼすべての蜂群が巣 を捨てて逃 げ去 る. このため養蜂家 は トウヨウ ミツバチ群 を積極的に近代的巣箱 に移 そ うとは しない.丸太巣箱の蜂群 の年間-チ ミツ生産量 は5-10kgと大変少 な く, セイ ヨウ ミツバ チ の1/5か ら1/10程度 に しかな らない. トウヨ ウ ミツバチの養蜂家が蜜源 の乏 しい時期 に も給 餌 を行わないのがよ くないとの考えか ら,蜂群 を近代的巣箱で飼養 し,流蜜時期 に合わせ,例 えば ココナツ農園, ゴム農園, ランブータン農 園 と移動養蜂を行 い,ハ チ ミツ収量 を高めよう との動 きがは じまっている. しか し現状では夕 イの トウヨウ ミツバチ養蜂 は,中国 ほど着実 に 成果を上 げているとはいえない. セイ ヨウ ミツパ テの養蜂 1970年代 に台湾か ら養蜂家の手 で再度導入 されたセイ ヨウ ミツバチが,チェンマイを中心 と した北部 タイで盛 ん に飼養 されて い る (図 2).1986年 の蜂群飼養数 はセイ ヨウ ミツバチ 32,000群, (トウヨウ ミツバチ8,000群) であ ったが,現在ではチ ェンマイ県の北部養蜂協会 (NBA)に属す る280名 の会員で, 合計20万 群, そ の は か 南 部 に 約500群,東 北 部 に 10,000群,中央 (バ ンコク)部 に500群 いる. NBAの数字 が示す よ うに, トウヨウ ミツパテ は驚 くべ き速度でセイ ヨウ ミツバチに取 って代 わ られている. 飼養蜂群数 によ り養蜂 家 を分類 す ると,50 群 以 下 が40%,100群 ま で が50%,1 00-2,000群 を飼 う養蜂家 は10%である. 養蜂家 は中国の移動用単箱 を基 に した形の巣 箱 を使 い,内蓋や継巣箱 は使わない.11月か ら 3月の主要流蜜期 には一群 を巣板5-7枚程度 の大 きさにす る.Eu
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torium odoratum(フジ バカマの仲間)が11月上旬 に咲 き始 め,つづ 図2 セイヨウ ミツパテ (上)は-チ ミツ生産 (下)の主力種であるいてCeibapentandra (パ ンヤノキ),Democ -arpuslongana (ロンガン,龍眼),Litchichi -nensis(ライチ-)が開花する. タイ南部の主 要 蜜 源 はHevea brasiliensis (ゴム ノキ) や Nephelium lapaceam (ランブータン)である. 北部 タイのセイヨウ ミツバチの年間-チ ミツ 生産量 は平均すると 1群当 り35kgであるが, 主要流蜜期に限れば, 50kg/群 になる.1996 -97年 にチェンマイで3,000tのハチ ミツが生 産 された. ローヤルゼ リーは年間1.5kg/群, 全体で15tの生産量で, その内5tは国内で消 費 され
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が 日本や,台湾に輸出された, 王 室 と養 蜂 開発 プ ロジ ェク ト タイの シ リキ ッ ト王妃 は村落地域 の董 しい 人々の収入増加のため,養蜂,漁業,養鶏など 多彩なプロジェク トを奨励 している.王妃の言 葉 によれば,
「タイの野生 ミツバチを用 いた養 蜂,およびオオ ミツバチの-ニーハ ンティング は我が国の伝統的文化遺産であるが,今 日野生 ミツバチは急速に生息数が減少 し,それにかか わる文化 も消え去ろうとしている.私たちは速 やかに研究を進め,その保護を計 らなければな らない, コロニーすべてを焼 き尽 くす従来の-ニーハ ンティングは, ミソバチの生息数を減 ら すだけでな く,熱帯雨林 にも大 きな打撃を与え るものである.なぜな ら野生の ミツパテが送粉 者 としての役割を果たす ことによって,森林内 の数え切れないほどの種類の植物が結実 し,坐 い茂 り,そこで烏,野生動物,あるいは ミツバ チ自身が生 きてい くための環境が整え られてい るのである. もしミツバチが消えて しまえば, 森の植物 は野生動物の食料 となる果実を結ばな くな り,動物 は生存できない.やがて花 も咲か な くなって, タイの森林 は消滅す る,森林が消 滅すると,我が国の水資源 も枯渇する. このように,野生の ミツバチは我 々の地球環 境を維持する上で,極めて重要な要素なのであ る.私たちは急激に減少 している ミツバチを救 い,-ニー- ンティングや伝統養蜂の文化遺産 137 を護 るためだけでな く,私 たちの環境を美 しい 調和の取れた状態で持続するためにも,努力を 積み重ねなければな らない.
」
王妃の提案 に基づ き,"山岳地域養蜂''プロジ ェク ト (MB)が陸軍 と森林省の ジョイン ト事 業 として始 まった.この MBの目的は山岳地域 に住む-ニー- ンクーを対象に,養蜂の研修を 実施 し, ミツバチとそれが果たす森林生態系で の重要 な役割を認識 して もらうことである. 第7
回 熱 帯 養 蜂 会 議 と第5
回 ア ジア養 蜂 研 究協 会大 会 の開催 2000年3月19-25日に 「管理法 と多様性」 をテーマに,国際 ミツバチ研究協会(IBRA)の 第7回熱帯養蜂会議 が第 5回 ア ジア養蜂研究 協会大会 との共催で,チェンマイ市の ロータス ホテルで開催 される. ◎-チ類が熱帯環境ではたす役割の重要性を 認識す る,◎ 21世紀 における ミツバチ科学研 究 と実際的蜂群管理法 との新 しい協力関係樹立 を促す,◎最新の発見や, アイディアを持 ち寄 り,検討する場を提供す る,◎熱帯の農林業環 境における-チ類の持続可能な方法での利用を 奨励する,などを目的 とした会議 には,世界か ら約2000名の参加者が予想 される. タイとアジアの多様な ミツバチと養蜂に貢献 する,実 りある会議にす るために,準備を進め ており,日本からも多 くの参加をお待ちしている. (著者の住所は下記参牌) (翻訳 榎本ひとみ) 参考文献 中何 ら,1991. ミツパテ科学12(1):27-30. Wongsil-1,S.1989.ミツバチ科学10(4):160 -164.Wongsiri.S etal.(eds).1991 BiodlVerSityof Honey Bees ln Thailand BBRU,
CllulalollgkornUniv.111pp.
SIRIWAT WoNGSIRIand SuREERAT DEOWANISH. lloneybeesand beekeepinginThailand.Honey -beeScle77Ce(1999) 20(3).135-137.Bee Biology Research Unit,DepartmentofBIOlogy,Faculty ofScience,Chulalongkorn UniveI■Sity,Bangkok,