1. 問題と目的 少子化、核家族化、コミュニケーション力 の低下など、子育てを取り巻く環境は大きく 変化し続けている。このような中、子育てに 対して不安感や孤立感を持って子育てをして いる保護者の支援をどのように強化していく のかが大事にされてきている。 これまで保育所においては、0 歳から就学前 までの子どもの保育を一貫して担い、保護者 支援や地域子育て支援にも積極的に取り組み をしており、子育てに孤立したり、育児に不 安を感じたりしている親子の子育ての支援し ている。 子育て家庭だけで、子どもを育てることは 困難な社会となっていると言われている中、 国は 1990 年「1.57 ショック」を契機に少子化 対策、仕事と子育ての両立支援等の検討をし、 様々な対策が策定された。平成 27 年度からは 子ども・子育て支援新制度がスタートし、す べての子ども、子育て家庭を対象に質の高い 教育・保育を行い、0 歳から就学までの発達の 連続性に配慮した一貫性のある保育が期待さ れており、多様な保育サービスの提供が実施 されている。 これは、保育所保育指針第 6 章「保護者に 対する支援」の章でも、保育所に入所してい る子どもの保護者に対する支援と合わせて、 地域における子育て支援が含まれていること からも、保育所の重要な機能として位置づけ られている。日々の保育、地域の子育て家庭 も含めた支援、子育て相談、情報提供、遊び 場の提供、他の親子との交流の場の提供など の対応が求められている。保育所での保育士 の役割も広くなり、特に保護者に対する子育 て支援の役割は大きく重要視されている。保 育所を利用している保護者や地域の子育て中 の保護者が安心して子どもと関わり、子育て をしていかれるような取り組みを行うために、 保育所及び保育士の資質や専門性の向上が必 要になっている。 保育所保育指針第 1 章総則 保育所の役割 「保育所は、その目的を達成するために、保育 に関する専門性を有する職員が、家庭との緊
保育所保育における保護者との協働・連携のあり方
伊藤 祐子A Proposal for Coopatation with Parents at Childcare Center
Yuko ITO
密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を 踏まえ、保育所における環境を通して、養護 及び教育を一体的に行うことを特性としてい る。」とある。保育を通して子どもの健全育成 を図るためには、保育所及び保育者と保護者 が連携をし、相互の理解を深め信頼関係を構 築していくことが不可欠である。そこで、保 育所での行事、保護者との連絡方法など、保 育の実践事例を通して保護者との連携、協力、 協働の大切さを考察する。 2. 保護者との関わり 保育所での保護者と保育者の関わりは、日々 の子どもの送迎時、保護者会、保育参加、運 動会などの保護者参加の行事、連絡帳、クラ ス内の掲示、保育所全体の掲示、給食の展示 などがある。 保護者との関わりは、朝の登所時、子ども の健康状態の把握をすることから始まる。連 絡事項や健康状態の把握をし、保育者は子ど もを預かり、保護者は子どもの持ち物の整理 などをし、仕事に出かけていく。朝の登所時 は保護者と保育者が直接話せる時間はとても 短い。保護者が安心して子どもを保育所に預 けられるように短時間の中で、子どもの健康 状態を把握するには、昨日の家庭での状況を 手短に聞き取ることが必要になる。子どもの 健康状態の把握は、「いつもの元気な○○さん」 の姿を理解できているかどうかにつながる。 朝の登所時に比べ、夕方の迎え時は保護者 も時間的に少し余裕がある。今日一日の出来 事を保護者に報告する。子どもの昼間の状況 を聞き、子どもの成長を喜び、安心すること ができる。 朝、夕の送迎時は、保護者も保育者も限ら れた時間の中での関わりなので、この時間帯 だけの関わりでは、信頼関係をすぐには築く ことは難しい。 信頼関係を築くには関わる時間数にも関係 していることが考えられるが、保育所を利用 している保護者は、早朝保育、延長保育を利 用している場合がほとんどである。そのため、 保護者は保育者と関わる時間は多くない。 保護者と関わる時間が長くなれば、信頼関 係はできるのだろうか。保育者は保護者に信 頼され、安心して保育所を利用してもらうた めに、コミュニケーション力、説明方法、な どに配慮し、工夫しながら関わりを持つよう に努力していくことが必要になる。 日々の送迎時の関わりは保護者との信頼関 係を築く大切な時間であると考えられるが、 保育時間の長時間化により、保育士の勤務形 態や勤務時間は多様化し、時差出勤による複 雑な勤務体制になっている。このような状況 から、勤務時間の異なる保育者同士が子ども や保護者の状況を共有し、細やかな対応をし、 一人一人の保護者に丁寧に関わることは非常 に難しく、容易なことではない。保育者は、 保護者への連絡が漏れないように「記録をす る」ことをしている。記録をすることは時間 がない中では容易なことではないが、保護者 に確実に連絡ができるようにするために、保 育者は努力をしている。 保護者との日々の連絡方法としては、送迎 時に保護者と保育者が直接話をする、保護者 と保育所間での連絡帳、クラス連絡ボード、
保育所全体への掲示、お便りなどであり、多 くの保護者は、保育者との関わりや連絡は、 日々の送迎時の短い時間や連絡帳、掲示等に 限定されている。 連絡帳を通した家庭と保育所との情報の交 換は、日々の送迎時の会話にもつながり、保 護者から信頼を得る機会にもなっている。連 絡帳のやりとりは、子どもの育ちに関して、 家庭と保育所の相互理解につながっている。 家庭では見ることができない子どもの姿や成 長がわかり、保護者は「子どもの成長がわか る宝物」として、とても大切にそして大事に していることがわかる。 A君の保護者は顔を合わせると話してくれ る。歩きはじめの第一歩は保育園だった。迎 えに行くと一番に「今日Aくん第一歩、歩き ましたよ。」と報告を受け、とても嬉しかった。 保育園でしっかり見届けてくれているんだな と感じ、感激した。 保護者が保育者を信頼するのは、関わる時 間の長さもあるとは思うがそれだけではない と感じる。保護者にとっては、安心して任せ られる、お願いできると感じなければ、信頼 関係はできない。保護者と保育者が一緒に子 どもを育てていることをお互いが意識を持ち、 感謝の気持ち、ねぎらいの気持ちを持つこと により、信頼関係が築けていくのではと考え る。 連絡帳は、保護者支援の重要な方法である と同時に、子どもの生活全体の理解にもなり、 保育者が子どもの育ちに見通しを持ち、計画 的に保育を行うことにつながる。 保護者との関わりを持つ機会として、この ほか、園便り・クラス便りなどがある。お便 りは、子どもの育ちを保育所から保護者に伝 える一方向のものであるので、内容の工夫や 保護者の安心感につながるものでありたい。 内容としては、園やクラスの保育方針などを 伝えるために重要なものだが、「文字ばかりで 読む気がしない」「何を言っているのかわから ない」等の声が聞かれることもある。子ども の姿も「いつもと同じに元気です」では具体 的なことが保護者には伝わらない。おたより を発行するときの工夫としては、わかりやす い内容であること。具体的な内容であること。 情報伝達はスピーディーに。日々の保育所の 様子が伝わるもの。個人情報に注意。内容や 人が偏らないようにする。等の配慮が必要で ある。 保護者と良い関係を築くためには、様々な 方法があるが、日々の関わりでは、保護者と の関係形成を図る工夫を意図的にする必要が ある。それは、保護者と保育者との関係性ば かりではなく、保護者の保育内容の理解や保 育者の子どもの生活内容の理解にもつながる と考えられる。 保育者は、登所時に子どもの家庭での状況 を聞き、保護者が迎えに来たときには子ども の保育所での状況を報告する。保護者は、そ の日の子どもの状況を保育者から丁寧に伝え てもらうことで、子どもの成長を実感し、喜び、 明日からの子育てに期待を持ってのぞむこと ができ、保育所に対して信頼感を持ち、安心 して保育所を利用することができる。 保育者は、時差出勤等の複雑な勤務状態の 中で、保護者に子どもの状況を正確に丁寧に
もらさず伝えるため、職員間の情報共有と伝 達手段を考えながら、保護者対応をしている。 保育所における保護者と保育者との信頼関 係を築くためには、日々の関わりにおいて保 育者が意図的に関わることが必要だと考える。 日々の送迎時だけの関わりだけでは、信頼関 係は築くことは難しい。 保護者は、子どもが保育所で生活している 姿を見たり、一緒に遊ぶなどの経験をするこ とで、保育所での日々の生活や遊びを理解す ることができると考えられる。 保育所で実践している行事を見ると、保護 者会、保育参観、保育参加、運動会、夏祭り、 お楽しみ会(発表会)などの保護者参加の行 事と、ひな祭り、子どもの日、七夕等、保護 者が参加しない行事がある。保護者参加の行 事の一つとして、保育参加があるが、子ども と一緒に保育所での生活や遊びを経験するこ とにより、自分の子どもの姿や子どもと保育 者との関わり方、仲間との過ごし方など、実 際に見て、経験することで保育所保育に対す る理解につながる。保護者は、子どもが保育 所で生活している状況を理解、納得し、子ど も一人一人の成長・発達に合わせた保育者の 援助があることを理解できる。保育参加をし た後の保護者の感想で聞かれることは、「保育 所の先生の仕事は大変だ」「自分の子どもだけ だって大変なのに有り難いなー」「お手伝いも できるんだねー。家では何もしないけどね」 などの意見がある。子どもが過ごしている保 育所での状況をより理解でき、安心でき、信 頼関係が築かれていく。 夏祭りは、保育所と保護者会が協力して作 り上げる行事の一つとしている。保護者会が 中心となる行事は、保護者自身が主体的に積 極的に参加している。このように行事の時は、 日々の送迎時とは異なり、時間にも余裕があ る中での参加となっていることが多いことか ら、保護者と職員との連携、協力体制も作り やすく、信頼関係の構築も行いやすいのでは ないかと考える。夏祭り当日までは、保育所 との打ち合わせも積極的に何度もするが、保 護者同士の連絡や相談も時間を作り工夫して 行っていると思われる。当日は子どもの喜ぶ 姿や嬉しそうな表情から親子のつながりを実 感できる日でもある。 保護者参加の行事の目的は、「保護者に保育 所で子どもが遊び、生活している状況を見た り、一緒に経験することで、子どもの成長を 感じ、喜び、安心して子育てができることに つなげる」ことである。しかし、保護者参加 の行事を企画するだけでは、信頼関係にはつ ながらない。保育者の意図が保護者に伝わり、 保育者と保護者の相互理解がなければ効果は ないと考える。 親の安心や安定した信頼関係の構築は、保 育者にとって必要な専門性としてのソーシャ ルワークの実践が重要になってくると考える。 社会の状況に合わせた保育を展開していくこ とにより、保護者と連携、協力しながら信頼 関係を築きながら、子どもが健全に成長・発 達ができるように援助することが重要だと考 える。 3. 保護者との信頼関係を築くために 保育所の子どもの中には、大人の生活リズ
ムに合わせることにより、就寝時間が遅くな り、翌日の朝は起きられず、朝食も食べずに 保育所に来るため、昼食まで(3 歳未満児は 午前のおやつ)の時間は何もする元気もなく、 お腹がすいているし、眠いしでイライラし、 仲間とも遊べない状況にある子どももいる。 朝食を食べさせる時間がない場合は、「朝ご飯 になるものを持ってきて」と伝えたりする。 このように生活習慣や生活リズムが整わな い家庭に対しては苦慮しているところだ。保 護者は今の状況が良いとは思っていない。仕 事の関係で他に方法がない場合もある。「お母 さん」と声をかけられるだけで、「先生から何 か注意をされるのではないか」と感じている 保護者もいる。保護者が素直に今の状況を話 せることが一番だと思うが、現実には難しい 場合もある。 保育所では子どものより良い成長発達のた めに、保育所での子どもの姿を伝え、子ども の成長を共に喜び合い共有し、保護者の大変 な部分を受けとめ、家庭との相互理解をはかっ ていくことが求められている。このような中 で、保育者が保護者との信頼関係を築き、よ り深めていくためには、保護者とのコミュニ ケーションはとても大切である。 保育者の対応としては、保護者と子どもに 関わり、子どもを愛する気持ちを持ち保育を していることが大事である。このことが、保 護者とのより良い関係を作る上での大切なポ イントになると考えられる。保護者は、わが 子を良く見てくれている。声をかけてくれて いる。気にしてくれている。という実感があ ると、保育者を信頼することにつながる。そ して、一緒に子育てをするパートナーとして 認め、安心して子育てをしていくことができ ると実感できる。 子どもの発達において生活リズムの大切さ への知識が不足している保護者もいる。また、 わかっていても事情によりできない場合もあ る。そこで、保育者は、保護者の表面上の姿 や行動だけで判断するのではなく、本質を見 抜く力や判断する力をつけ、本当の状況を理 解することが大切である。 子どもは、保護者の安定した関わりにより、 生活や遊びに対する関わり方への影響が大き い。障害をもった子どもの親は、わが子の成 長や発達を受け入れられない場合がある。そ の時、保育者が保護者の気持を受容し、共感 し、一緒に子どもの成長の手助けをしていく ことを示すことで、保護者の気持は楽になり、 子どもに対する関わりも余裕を持って行うこ とができるようになる。すると、その頃から、 子どもの姿も成長が見られることが多い。 保育者は、子どもはいつでも親が大好きで あることを伝えながら、親の気持ちが安定し 子どもと関わることができるように親を支え、 援助していくことが大切である。保育所の保 護者は、保育所への送迎も時間の限られた中 で行われていることから、保育所職員も短時 間の中で子どもの生活している姿や育ちの情 報を共有するように努力している。日々の保 育の中での子どもの育ちをいかに保護者に伝 えていくかは、職員全体で常に確認をしなが ら取り組む必要がある。 社会の状況としてコミュニケーション能力 が低下していると言われている。子ども同士
の場合、自分の思っていることを相手に伝え、 相手の話を理解していくことが、難しい子ど もが増加していると言われている。心の育ち やコミュニケーション力は目に見えるもので はないため、保護者に理解を求めることが難 しい。このように配慮を必要とする子どもの 状況を保護者に理解してもらうことは非常に 難しい。 このようなデリケートな関わりが必要な時 には、担任だけではなく、主任や園長などの 協力が必要になる。大切なことは、日頃から の声かけや会話の機会を作るなど、情報提供 の積み重ねや日頃からの関わりが大切であり、 保護者が保育者と心を割って話せる雰囲気づ くりも必要であり、保護者と信頼関係を築く ための基本だと考える。 登退所時の挨拶、保護者懇談会、保育参観 日など様々な場面で保護者との関わりは行わ れている。日常的な子育てに関する悩み、子 どもの発達に関する悩みなど気軽に相談でき るなど、さりげない会話や関わりがとても重 要な意味を持っていると考えられる。 保育者の専門性を生かし、どのように保護 者支援をしていくことが良いのか。保育所保 育指針総則の中にも、保育士の専門性として 「保育所における保育士は児童福祉法第 18 条 の 4 規定を踏まえ、保育所の役割及び機能が 適切に発揮されるように、倫理観に裏付けら れた専門的知識、技術及び判断を持って、子 どもの保育をするとともに、子どもの保護者 に対する保育に関する指導を行うものである」 明記されている。保育者は専門的知識と技術 を持って子どもの同士や子どもと保護者の関 わりなどを見守り、その気持ちに寄り添いな がら適宜必要な援助をしていくための、関係 構築の知識・技術が必要であるとされている。 また、倫理観に裏付けられた「判断力」が強 く求められている。 保育者は、保護者からの相談に対して「応 えなければ」と焦せり、保育者の考えを保護 者に押しつけてしまい、保護者からの信頼を 失うことにもなりかねない。保護者は、自分 の考え方や状況を理解して欲しいと思ってい る。保護者の求めていることは何かを読み取 り、表面の姿や行動だけではなく、心の内面 を理解することが必要である。子育て支援の 1 つとして、相談支援がある。 これは、保育所で行われている園庭開放で の相談事例である。2 歳の男の子と母親がはじ めて、来園し「先生聞いて」と、話し始めた。 今、3 世代で同居しているが、姑となかなかう まくいかず、家にいるのが苦痛であり、働き に出たい。という内容であった。園庭開放は 1 週間に 3 日実施をしていたが、その親子は、 しばらく来園することはなく、半年後くらい に来園した。その後どうなったのか気になり 聞いてみると、「もう大丈夫。私、妊娠したの で、仕事はできなくなってしまった」とのこ と。それを最後にその親子は来園することは なかった。 この母親は、自分の今の気持、状況を聞い て欲しかったのだと思われる。このように聞 いてもらうだけで自分の気持を整理できる時 もある。保護者にとっては子どもを育てるこ とは「楽しい」と感じる時ばかりではなく、 保護者を取り巻く子育て環境や保護者の心情、
子どもの気質、夫や家族の理解など様々な状 況が影響しており、時にはストレス、不安を 感じる時もある。保育者は、保護者の心情を 理解するために、傾聴、受容、共感的理解を していくことが保護者支援につながり、保護 者が心を開いて話せることが信頼関係の構築 にもつながっていく。 相談支援の基本でもある、相手の話を傾聴、 受容し、共感しながら、相手が自分で自己決 定できるように支援していくことが重要であ る。それと、同時に大切なことは、保護者と 共に子どもを育てるという意識を持ち、一緒 に考え、一緒の目線で子どもを理解していく ことである。保育所での保護者参加の行事や 園便り等を活用して、保育者が子どもと関わ る様子や子ども同士の関わりを見たり、生活 や遊びを一緒に経験することで、子育てに自 信を持つことができ、喜びにもつながる。保 護者が直面している課題を自ら解決できるよ うな経験につなげ、親としての役割を意識で きるように支援していくことが求められてい る。 4. 質の高い教育・保育に向けて 2015 年 4 月から子ども・子育て支援新制度 が施行され、幼保連携型の認定子ども園の数 も大きく増加している。この、子ども・子育 て支援新制度は、「量」と「質」の両面から子 育てを支えることを社会全体で支えることを 大事にし、子ども・子育て支援法の基本理念 の 1 つとしては、「子ども・子育て支援給付そ の他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、 すべての子どもが健やかに成長するように支 援するものであって、良質かつ適切なもので なければならない」としている。 保育所では、1965(昭和 40)年に保育所保 育指針が刊行された時から「養護」と「教育」 が一体となって、豊かな人間性を持った子ど もを育成するところに保育所における保育の 基本的性格があることが明記された。長年に わたり、保育士等の保育関係者は養護と教育 が一体となった保育について、養護として示 されている生命の保持と情緒の安定を基本に 教育に関しての内容を保育の中にどのように 展開していくことが良いのかと努力を重ねて きている。幼保連携型認定こども園教育・保 育要領第 1 章総則の中でも、「乳幼児期におい ては生命の保持が図られ安定した情緒の下で 自己を十分発揮することにより発達に必要な 体験を得ていくものであることを考慮して、 園児の主体的な活動を促し、乳幼児期にふさ わしい生活が展開されるようにすること」と 明記されているように、保育所保育指針の「養 護」を基盤とし、教育が展開されることを示 している。 保育所が保育を行ってきたことに加え、① 家庭や地域の実態に即した教育及び保育の内 容に関しては全体的な計画を作成すること。 ②園児の一日の生活の連続性及びリズムの多 様性に配慮すること。③個人差に配慮すると ともに、集中して遊ぶ場と家庭的な雰囲気の 中でくつろぐ場の調和を工夫すること。④家 庭との連携を密にしながら、保健的で安全な 環境の維持及び向上に努めること。⑤家庭と 協力しながら、園児の発達過程に応じた適切 な生活リズムがつくられていくようにするこ
と等が明記され、子どもや保護者の理解をよ り深め、養護と教育の視点で保育の振り返り、 見直し、改善をしていくことが求められてい る。 特に子どもの育ちが保護者によく見えること、 そして情報を共有することが重要であるとし ている。保育の意図、目的、子どもの変化な ど目で見えることが重要である。保育者が、 保護者に理解しやすく、納得のいく説明がで きるのかという保育者としての説明責任も、 より大きく求められる。 保育所保育指針では、保育所の役割や専門 性を明確にしながら、子どもの心身共に健や かな成長のためには、家庭や地域社会との連 携、協力が欠かせないことや人権擁護、虐待 防止の観点からも果たす役割は大きく、保育 所保育の特性を生かした質の高い保育実践が 望まれている。保育所という組織の中で、保 育士をはじめ全職員が保護者や地域の様々な 機関や地域の人々と協働し、共通認識を持つ ためには、「保育の見える化」が保育者に求め られる専門性として重要になっている。 まとめ 保護者と保育者が信頼関係を構築し、協力、 連携を持ちながら子どもの健全育成を図るた めには、保育者の専門性を生かし、家庭との 緊密な連携の下に保育所における環境を通し て、養護と教育を一体的に行うという保育所 の特性を生かした保育実践をすることが保育 所としての重要な役割になっている。子ども・ 子育て支援新制度においても、全ての子ども が健やかに成長していかれるように、「量的拡 充」「質の改善」に向けて取り組むものとされ ている。一人の子どもの最善の利益を考慮し、 健全な心身の発達を図るためには、保育所や 子ども園だけではなく、保護者、家庭、地域、 関係機関などと協力、連携をしながら、地域 の子育て中の親子も含めた子育て家庭を支援 していくことが保育者には求められている。 子どもが育つ基本は家庭だと考えられるが、 社会の状況は核家族化が進み、3 世代同居して いる家庭も少なく、子育ては母親だけが背負っ ている場合も多いと思われる。夫は仕事であ り、子どもの育児について相談したい時には、 そばにいないなどの状況もある。 保育所は、地域においてまた、子育て中の 親子にとって最も身近な施設として、保育だ けでなく、栄養、健康面での専門知識、経験、 技術が蓄積されている場所としてまた、子育 て情報を得ることができる場所としての期待 は大きい。 保育の場では、保護者との関わりには、判 断力が求められる。専門職としての質の高い 関わりをするためには、保育者自身が自己を 知り、自己表現の仕方や対人援助のあり方を 見直し、感性を磨いていかれるよう常に自己 研鑽に努めなければならない。保育者や保育 所に求められる役割は広がり、多様になって いる現在では、保育者は子どもの保育だけを すれば良いものではなく、広く子どもが育っ ている現状を見極める力を持ち、その子ども や家庭の状況に合わせた支援ができるように 保育者の資質を向上させるために、自己研鑽 に努めなければならない。常に学ぼうとする 姿勢と理解しようと努力する態度が大切であ
る。保育所に入所している親子だけではなく、 地域で子育てをしている親子が保育所を利用 し、自分の気持ちを素直に話せるような雰囲 気を作り、安心して遊べる環境を用意するこ とにより、保護者も子どもも保育者を信頼し、 協力・連携の関係が出来上がり、協働して子 育てをしていくことができると考える。 〈参考文献〉 保育所保育指針解説書 フレーベル館 認定こども園 教育・保育要領 チャイルド 小林育子著 演習保育相談支援 萌文書林 保育の友 2016 年 4 月号 全国社会福祉協議会