通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価
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(2) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価. ラヒックの典型であるといえる.. SNMP は,ネットワーク上の機器がもつ情報の提供. しかし,こうした異常トラヒックの検出は容易では. 方法,及びその取得方法を定めた規格である.ルータ. ない.シグニチャ型 IDS(2. 1. 2 参照)を用いた場. やスイッチにおいて各インタフェースを通過した転送. 合,新種のワームを検出できない可能性がある.また,. バイト量,転送パケット数を取得し,その時間変化を. 近年の P2P ファイル共有アプリケーションは,特定の. 把握するという利用方法が一般的である.MIB-II [8]. ポート番号の監視やペイロードに対するパターンマッ. に規定された情報であれば,ほとんどのネットワーク. チでは検出困難である.更に,IDS は扱えるパケット. 機器で共通して利用可能であるが,パケットやフロー. レートに限界があり,監視対象ネットワークの帯域に. に関する詳細な情報を取得したい場合は,別の技術を. 制限が生じてしまう.. 利用する必要がある.. 本論文では,異常トラヒックの共通した特徴を利用. ミラーリングではスイッチ上を流れるパケットをコ. し,単位時間当りのユニークな通信先ホスト数に注目. ピーして観測用の機器に転送する方法である.この手. した異常トラヒック検出手法を提案する.そして,提. 法を用いることで通常の通信に影響を与えることなく,. 案手法が従来指標の監視では検出不可能な異常トラ. その通信の全内容を取得することができる.この手法. ヒックを,低コストで,シグニチャに非依存で自動検. は多くのトラヒックが流れる広帯域リンクを監視した. 出が可能であることを示す.また,提案手法による異. 場合にスイッチや観測機器への負荷が高くなるという. 常トラヒック検出の検出精度,及び,広帯域への適応. 欠点がある.. 性,そして,リアルタイムな異常トラヒック検出への 利用可能性を評価する.. 2. では既存の要素技術と異常トラヒック検出に広. NetFlow [2] は Cisco Systems 社 [3] が策定したト ラヒック情報取得技術であり,同社のルータ製品の ほか,アラクサラ社 [1] や Juniper Networks 社 [7],. た異常トラヒック検出手法に必要な機能要件をまとめ. Extreme Networks 社 [4] 等のルータ,スイッチ製品 でも利用できる.NetFlow では,一連の観測パケット を TCP におけるコネクションに近いフローと呼ばれ. く用いられる手法を挙げ,その特徴と問題点を明らか にする.3. では,既存手法の問題点を踏まえ,優れ る.4. では提案手法の目的及び想定環境とその詳細. る単位で集約し,その情報を蓄積する.蓄積されたフ. について述べ,5. でその実装と,動作例を示す.6.. ローの情報は,観測機器へと NetFlow パケットと呼. では提案手法の評価と考察をする.7. では,評価と. ばれる UDP パケットとして出力される.. 考察をまとめ,今後の課題を述べる.. 2. 異常トラヒック検出に関する既存手法. NetFlow には多種のバージョンがあり,取得できる 属性情報がやや異なる.基本的にはレイヤ 3,レイヤ. 2. 1 要 素 技 術. 4 のヘッダ情報,入出力インタフェース番号,バイト 長等が取得可能である.例えば,NetFlow Version 5 では各フローに対して表 1 に示した属性情報が取得で きる.これらの情報は 1 フロー当り 48 Byte とコンパ. 本節では,異常トラヒック検出に用いられている要. クトであり,長期観測での利用が可能である.. 本章では,既存の要素技術と一般的な異常トラヒッ ク検出手法を挙げ,その特徴と問題点を明らかにする.. 素技術について述べる.. NetFlow は,パケットサンプリングを組み合わせ. 2. 1. 1 トラヒック情報取得技術. ることにより広帯域のネットワークリンク上でもトラ. トラヒック情報とは,通信トラヒックを構成するパ. ヒック情報取得が可能であり,既存のネットワークに. ケットの属性情報,パケットの集合体であるコネクショ. 変更を加えることなく,低コストでトラヒック情報の. ン及びフローの属性情報である.また,トラヒックの. 取得ができるという利点がある.. 流量(転送バイト量や転送パケット数)もトラヒック. 2. 1. 2 IDS(Intrusion Detection System). 情報と呼ぶ.異常トラヒック検出のためには,まず,. IDS は,狭義ではシステムへの侵入を検知するシス. これらトラヒック情報を取得し,分析する必要がある.. テムであるが,ワームによる攻撃トラヒックや特定の. 本項では,トラヒック情報を取得するために広く利. アプリケーションによるトラヒックの検出にも広く利. 用されている技術として,SNMP(Simple Network. 用される.本論文では,ネットワーク型 IDS 及びイン. Management System)[12],ミラーリング,NetFlow. ライン型 IDS を単に IDS と表記する.. について述べる.. IDS には,シグニチャ型 IDS とアノマリ検出型 IDS 1923.
(3) 電子情報通信学会論文誌 2005/10 Vol. J88–B No. 10 表 1 NetFlow version 5 で取得できる情報 Table 1 Information provided by NetFlow version 5. ID 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18. information 通信元 IP アドレス 通信先 IP アドレス 次ホップの IP アドレス 入力インタフェース番号 出力インタフェース番号 そのフローに含まれるパケット数 そのフローに含まれるバイト量 最初のパケットを受信した時間 最後のパケットを受信した時間 通信元 TCP/UDP ポート番号 通信先 TCP/UDP ポート番号 IP プロトコルタイプ IP type of service (ToS) TCP フラグの累積論理和 通信元 AS 番号 通信先 AS 番号 通信元 IP アドレスのマスク長 通信先 IP アドレスのマスク長. 急激な変化を異常とするかは,管理者個人の経験や知 識に依存するという欠点がある.受動的な手法は,運 用時の管理者の負担は小さいが,システムによる異常 判断のもととなるしきい値の設定が難しい.しきい値 内を狭く設定すると False-Positive 率(注 1)が上昇する. しかし,逆に広くすると,False-Negative 率(注 2)が上 昇する.False-Positive 率も False-Negative 率も最小 となる適切なしきい値の算出には,一般に長期の試行 錯誤が必要となる.. 2. 1. 4 しきい値算出技術 受動的異常認知手法の実現には,システムが正常/異 常の判断機能を有する必要がある.シグニチャ型 IDS のように,トラヒックがシグニチャにマッチするかど うかの判定であれば容易に実現できる.しかし,トラ ヒックパターンの量的変化に対して正常か異常の判断 を下すことは容易ではない. トラヒックの正常状態と異常状態のしきい値を自動. があり,シグニチャ型 IDS は,ミスユース型 IDS と. 的に算出し,精度の高い通知を実現するために様々な. 呼ばれることもある.シグニチャ型 IDS は,事前に. 手法が検討されている.文献 [14] では,Wavelet 変換. ワームや特定のアプリケーション固有のペイロード等. と Holt-Winters 法を用いて異常トラヒックの自動検. の知識を検出シグニチャとして与えることで,該当す. 出を試みている.Wavelet 変換を用いて転送バイト量. るトラヒックが観測された際に管理者に通知すること. の時間変化を各周波数成分に分離し,成分ごとの偏差. ができる.この IDS は,シグニチャにマッチする異常. からしきい値を算出する手法と Holt-Winters 法を用. トラヒックであれば確実に検出できるという利点があ. いて算出する手法を比較している.いずれの手法も転. る.アノマリ検出型 IDS は,プロファイル型 IDS と. 送バイト量の時間変化を指標としており,転送バイト. 呼ばれることもある.アノマリ検出型 IDS は,本稼動. 量に変化を生じさせる現象については高い精度で検出. 前に学習期間が必要である.学習期間中に観測したト. ができている.しかし,検出された現象が必ずしも管. ラヒックの状態を正常と仮定し,その状態から外れた. 理者が必要とする異常の通知であるかどうかは十分に. トラヒックが発生したときに管理者に通知する.. 評価されていない.. 2. 1. 3 異常認知手法. 2. 2 既存手法とその問題点. ネットワーク管理者が,異常トラヒックの発生を認. 既存の異常トラヒック検出手法は,大きく分け,以. 知する手法には能動的手法,受動的手法がある.能動 的手法では,システムが提供する情報に対して管理者 が何らかの思考をし,管理者が異常かどうかを判断す る.管理者がトラヒック量の推移グラフから,通常量 を超えた上昇や下降等を探す方法がこの手法の例であ る.受動的手法では異常であるか否かの判断主体はシ ステムであり,システムが異常と判断した出来事のみ を管理者に通知する.IDS で用いられる管理者への通 知はこの手法にあたる. 能動的手法では,管理者がシステムの出力を定期的. 下の 4 種類がある.. ( i ) 可視化された転送バイト量,パケット数から, 管理者が能動的に異常を発見. ( ii ) しきい値から外れた転送バイト量,パケット 数を異常として受動的に発見. (iii) シグニチャ型 IDS(2. 1. 2 参照)を利用して 受動的に発見. (iv) アノマリ検出型 IDS(2. 1. 2 参照)を利用し て受動的に発見. ( i ) 及び ( ii ) の手法は,MRTG [9] や FlowScan [5]. に調査しなければならず,管理者への負担が大きい. また,調査間隔を短くすればするほどその負担は増し, リアルタイムな異常検出は難しい.更に,どの程度の 1924. (注 1):正常状態を異常と通知する現象の発生率. (注 2):異常状態を正常と判断し通知しない現象の発生率..
(4) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価. で実現できる.MRTG は,観測対象ネットワーク上. 広帯域ネットワークまで,スケーラブルに対応できな. のルータを通過した転送バイト量,転送パケット数を. いという問題がある.. SNMP を用いて取得し,その時間変化をグラフ化で きる.FlowScan は,NetFlow を入力として利用する ことで,更に利用ポートごとに色分けしたグラフの作 成が可能である.P2P ファイル共有アプリケーション は転送バイト量に,ワームの攻撃は転送パケット数に 変化をもたらすことがある.したがって,管理者が作. 3. 異常トラヒック検出手法の機能要件と提 案手法の目標 本章では,既存手法の問題点を踏まえ,優位な異常 トラヒック検出手法に必要な要件を述べる.. 3. 1 機能要件と既存手法. 成されたグラフに対して能動的な異常認知を行うこ. 2. 2 で述べたように,シグニチャを用いた手法や広. とで異常トラヒックを発見できる可能性がある.しか. 帯域にスケーラブルに対応できない異常トラヒック検. し,異常トラヒックが必ずしも転送バイト量やパケッ. 出手法には問題がある.また,転送バイト量やパケッ. ト数に識別可能な変化を与えるとは限らない.また,. ト数に注目した手法は検出精度が低く優れていない.. これらの指標はユーザがファイルをダウンロードした. 導入コストや運用コストが高い手法も問題がある.. だけで大きく変化する.つまり,これらの指標を用い た異常トラヒック検出は精度が低い.FlowScan によ る利用ポート別の監視も,ランダムなポート番号を使 う P2P ファイル共有アプリケーションやワームの検 出には利用できない.また,( i ) の手法は管理者が能 動的にシステムの出力を監視しなければならず,運用 コストは高い.. ( ii ) の手法は手法 ( i ) の通知方法を能動的から受 動的に変更したものである.MRTG と FlowScan は,. この点を考慮すると,異常トラヒック検出手法には 次の要件が必要となる.. (a) 低コストで利用を開始可能 (b) 検出シグニチャに非依存 (c) 自動で異常トラヒックを検出可能 (d) 高い精度で異常トラヒックを検出可能 (e) 広帯域環境下で使用可能 (f) リアルタイムに異常トラヒックを検出可能 ネットワークトポロジーの変更や高価な機器が不. 観測値があらかじめ設定した上下限しきい値を外れた. 要で,容易に異常トラヒック検出が開始できるという. 際に管理者に通知を送信することができる.受動的異. 点が要件 (a) である.また,シグニチャ等の事前知識. 常認知手法の特性として,運用コストの削減と,異常. に依存せずに,未知の異常トラヒック検出ができると. の発生から認知までの時間短縮が望める.しかし,し. いう点が要件 (b) である.システムが自動的に異常. きい値を管理者が一元的に設定しなければならない.. トラヒックを検出することで,管理者の能動的手法に. 適切な上下限しきい値の設定には,管理者の知識や経. 依存せず,特別な経験や知識をもたない管理者でも利. 験,更に事前の長期観測データが必要となり,導入コ. 用可能という点が要件 (c) である.検出精度が悪く,. ストは高くなる.また,一元的に設定したしきい値で は,トラヒックの周期性等の特徴が考慮されず,早朝. False-Positive や,False-Negative が多発する手法は, 信頼できず役に立たないため,要件 (d) が必要がある.. のトラヒックでも昼間のトラヒックも同じ基準で判断. 要件 (e) として,異常トラヒック検出手法は,低帯域. するという問題点がある.. 環境下でも広帯域環境下でもスケーラブルに対応でき. (iii) 及び (iv) の手法は,2. 1. 2 で述べた IDS によ る通知を利用し,異常トラヒック検出する手法である.. (iii) では,シグニチャが対応しない未知の異常や暗号 化されたペイロードには効果がない.また,(iv) は,. ることが望まれる.異常の発生に即座に対応するため には要件 (f) も重要となる.. 2. 2 に挙げた既存手法と機能要件を比較すると表 2 のようになる.. しきい値の設定が難しく,特定トラヒックの高精度な. まず,要件 (a) を見た場合,導入時に適切なしきい. 検出には長期の事前データと専門家によるチューニン. 値を管理者が算出する必要のある手法 ( ii ) は優れて. グが必要である.また,IDS は,ミラーリングなどの. いない.また,製品の導入やミラーリングのための. 技術を用い,観測対象トラヒック中のパケットをすべ. ネットワークトポロジー変更が必要となる手法 (iii), (iv) も優れていない.次に要件 (b) を見ると,異常ト ラヒックの検出をシグニチャに依存している手法 (iii) は不適切である.要件 (c) を見ると,管理者が能動的. て検査するため,対象となるパケットのレートに比例 して IDS 装置の負荷は上昇する.つまり,IDS を用い た (iii) 及び (iv) の手法は,低帯域ネットワークから. 1925.
(5) 電子情報通信学会論文誌 2005/10 Vol. J88–B No. 10. Table 2. 表 2 既存手法と機能要件 Existing methods and requirements.. 機能要件. (a) (b) (c) (d) (e) (f). (i) ○ ○ × × ○ ×. 既存手法 (ii) (iii) (iv) × × × ○ × ○ ○ ○ ○ × △ △ ○ × × ○ ○ ○. 4. 提案異常トラヒック検出手法 本章では,提案する異常トラヒック検出手法につい て述べる.. 4. 1 提案手法の対象と異常トラヒックの特徴 提案手法は,1. で定義した異常トラヒックの検出 が最も必要とされている場所である,企業や学校など 組織内のネットワークを対象として,異常トラヒック. に異常トラヒックの発見及び判断をしなければならな い ( i ) の手法は優れていない.次に,要件 (d) を見る と,( i ) 及び ( ii ) の手法は,転送バイト量やパケット 数に変化を与えるトラヒックしか発見できず,その変 化が必ずしも異常トラヒックとは限らないので不適切 となる.(iii) の手法はシグニチャにマッチする異常は 確実に検出できる反面,未知の異常や暗号化されたト ラヒックに対しては効果を発揮できず,△とした.ま た,高精度な検出には専門家によるチューニングが必 要な (iv) の手法も△とした.要件 (e) について述べる と,ミラーリング等の手法とともに,すべてのパケッ トを精査する必要のある (iii) 及び (iv) の手法は優れ ていない.要件 (f) について言及すると,異常トラヒッ クの発生から,管理者がそれを認知するまでに時間を 要する ( i ) の手法は不適切となる.. 3. 2 提案手法の目標 提案手法は,前節に挙げた機能要件をすべて満たす 異常トラヒック検出手法を目指す. 提案手法では,既に多くのルータやスイッチに実装 されている NetFlow を用いてトラヒック情報を取得 する.この特徴により,低いコストで検出を開始でき る(要件 (a)).また.NetFlow はパケットサンプリ ングと併用できるため,広帯域への適応性を実現する (要件 (e)).そして,異常トラヒックの一般的な特徴を 考慮した指標を用いることで,シグニチャに依存しな い検出を実現する(要件 (b)) .そして,Holt-Winters 法を利用し,異常トラヒックと正常トラヒックのしき い値を自動算出することで,要件 (c) を実現する. 高い精度で異常トラヒックを検出可能(要件 (c))か 否か,また,サンプリングレートを下げ,広帯域に適 応させたときにその検出制度を維持できるか(要件. (d)),そして,リアルタイムな異常トラヒック検出を 実現できる(要件 (f))か否かは,6. にて明らかに. の検出を目指す. ここで,1. に定義した異常トラヒックの一つ目であ る,ワームによるトラヒックを考える.文献 [18] では, ワームの検出を目指し,ワームによるトラヒックの特 性を様々な角度から分析している.短時間内に多くの 新規ホストに通信をしているホストがワームに感染し たホストの可能性が高いとしているが,自動検出のた めのしきい値設定手法,実トラヒック上での検出精度 については考察がなされていない.ワームの一般的な 性質を考えると,文献 [18] でも述べられているとおり, ワームはより多くのホストに感染しようとする性質を もつ.ワームに感染したホストは,他のホストの脆弱 性を攻撃パケットにより攻撃し,そのホストに感染す る.新たに感染したホストは同様に他のホストの脆弱 性を攻撃する.この動作が再帰的に行われることで, ワームの感染は爆発的に広まる.攻撃先ホストの選択 方法はワームによって異なり,ランダムに選んだアド レスに対して攻撃するワームもあれば,自ホストのア ドレスの周辺アドレスから攻撃を開始するワームもあ る.しかし,より多くのホストに感染しようと,多数 のホストに攻撃パケットを送信する点は共通である. 次に,P2P ファイル共有アプリケーションによるト ラヒックを考える.文献 [15] では,P2P ファイル共有 アプリケーション固有のペイロードからそのトラヒッ クの検出を試みている.しかし,近年,ペイロードを 暗号化する P2P ファイル共有アプリケーションが増 えるにつれ,この手法は効果を失ってきており,ペイ ロードに依存しない別の検出手法を考える必要があ る.一般的な P2P ファイル共有アプリケーションは,. P2P ネットワークに接続されているホストのアドレス 情報,各ホストが提供している共有ファイルの情報等 を各ホストに分散管理している(注 3).また,共有され ているファイルの実体が複数のホストに分散配置され. する. (注 3):一部の情報が特定のサーバホストで集中管理されるハイブリッ ド型と呼ばれる形態もある.. 1926.
(6) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価 表 3 注目指標のカウント例 Table 3 Counting the focused index. Flow ID source (host:port) 1 10.0.0.1:1025 2 10.0.0.2:1025 3 10.0.0.1:1026 4 10.0.0.1:1025. → → → →. destination (host:port) 192.168.0.1:80 192.168.0.1:80 192.168.0.3:80 192.168.0.1:443. 図 1 注目指標の時間変化の周期性 Fig. 1 Self-similarity of the focused index.. る P2P ファイル共有アプリケーションもある.こう した中,P2P ファイル共有アプリケーションはユーザ が要求したファイルを検索し,ダウンロードするため. 利用を想定する.したがって,提案手法は,上り(対. に分散管理された情報を収集する必要がある.そのた. 象組織内から組織外へ向かう)トラヒックに対して注. め,P2P ファイル共有アプリケーションは多数のホス. 目指標を利用する.. トと通信をするという性質をもつ.. アドレス数に注目した既存研究として,文献 [17] や. 4. 2 注 目 指 標. 文献 [16] があり,ともに DDoS 検知のために送信元. 文献 [14] など,IDS 以外の異常トラヒック検出手. アドレスを観測している.ワームや P2P ファイル共. 法及び関連研究は,通過トラヒックのバイト流量,パ. 有アプリケーションによるトラヒックを発生させてい. ケット流量の変化に注目している.この理由は,歴史. る組織内ホストの検出を目的とした本研究とは,その. 的にこれらの指標が SNMP 等を用いて低コストで取. 目的が異なる.. 得ができたからである.しかし,2. 2 で述べたように,. 4. 3 指標の周期性と適合モデル. この指標に注目することが異常トラヒック検出に最適. 注目指標の時間変化は,観測対象ネットワークを利. であるとはいえない.. 用する人々の生活周期と深く関連し,周期性をもつ.. 一方,はじめに定義した異常トラヒックは 4. 1 で示. 奈良先端科学技術大学院大学(以下本学)で観測され. した性質をもつため,共通して単位時間当りのユニー. た注目指標の時間変化は図 1 のようになる.昼間に. クな(重複を除いた)通信先ホスト数(以下,注目指. ピークを迎え早朝が谷となり,土日は平日に比べて値. 標)が上昇する.この注目指標は,単位時間に観測さ. が小さい傾向があることが分かる.また,24 時間周. れた重複を除いた通信先ホスト数である.. 期,1 週間周期に強い周期性が見られることが明らか. 例えば,表 3 に示した始点(source)と終点(desti-. になった.しかし,周期性があるとはいえ注目指標に. nation)をもつ,四つのトラヒックが観測されたとす. はばらつきがある.例えば,先週の注目指標と今週の. る.注目指標は観測された重複を除いた通信先ホスト. 注目指標は似ている可能性は高いが全く同じではない.. (destination host)が, 「192.168.0.1」, 「192.168.0.3」 の二つなので,2 と求められる. 注目指標はファイルのダウンロード,メールのやり. こうした傾向はほとんどの組織で同様に見られる. また,注目指標はアプリケーションには通信継続時 間によっても支配され,現在の注目指標は,1 時間前. 取り等,サーバクライアント型サービスによる変動は. の注目指標よりも 5 分前の注目指標により似ている. 少ない.組織内のホストが,Web サイトや FTP サイ. 可能性が高い.こうした特徴をもつ注目指標に対する. トから巨大なファイルをダウンロードしても,値の変. しきい値計算には Holt-Winters 法が適しており [13],. 化は 1 である.また,多くの組織内ホストからアクセ. 本手法では Holt-Winters 法と呼ばれる手法を用いる.. スされる Web サイトやメールサーバ等が及ぼす影響. Holt-Winters 法は,需要予測分野で実績のある予. も(アドレスベースの負荷分散が行われてない限り). 測手法であり,季節変動のある需要予測に最適である.. たかだか 1 である.. 過去の観測値に対して各種パラメータと信頼水準を与. 本論文では,異常トラヒックによって大きく変動し, 他のトラヒックによる変動が少ない注目指標の時間変. えることで,次の観測値がある一定の確率以上で収ま る範囲(しきい値内)を算出することができる.需要. 化を用いて異常トラヒックの検出を試みる.ただし,. 予測分野では周期を 1 年と設定することが多い.しか. 本手法は,4. 1 で示したように,対象組織内の異常ト. し,注目指標の周期は,その周期性から考慮し,1 日. ラヒックを発生させているホストを見つける目的での. または 1 週間を周期と設定することが妥当である.た 1927.
(7) 電子情報通信学会論文誌 2005/10 Vol. J88–B No. 10 表4 実装環境 Our system specification.. Table 4 CPU Memory HDD Network Interface OS. Intel Xeon CPU 2.80 GHz×2 4 GByte 400 GByte 1 Gbit/s (BCM5703 Chip) Mandrake Linux 9.2 (Linux2.4.22). 0 < CL, α, β, γ < 1 である.CL はしきい値内に次の Fig. 2. 図 2 異常トラヒック検出手法 Mechanism to detect anomalies.. 実測値が含まれる確率を示し,1 に近いほど上限しき い値と下限しきい値の差は大きくなる.信頼水準を 1 に近づければ近づけるほど,False-Positive 率が減り,. 特性が異なる日の精度が悪化するため,本論文では周. False-Negative 率が上昇する. α, β, γ は,直近の観測値を重視してしきい値を求め. 期を 1 週間と設定した.. るか,長期の観測値の変動を重視して求めるかを設定. だし,周期を 1 日とした場合,土,月曜日など前日と. ここで,Holt-Winters 法による予測の信頼水準を. するパラメータである.1 に近いほど直近の実測値を. 高く設定することで,しきい値から外れた値を通常の. 重視し,0 に近いほど長期に実測値を重視する.1 に. パターンから外れた異常なトラヒックとして取り出す. 近い値を利用すれば,トラヒックパターンの急激な変. ことが可能となる.. 化にしきい値が順応しやすくなる.これは,異常トラ. 4. 4 しきい値計算アルゴリズムと異常トラヒック 検出 しきい値計算と異常トラヒック検出の具体的なアル ゴリズムは次のようになる.. ヒックが発生が継続している状況を許容するしきい値 が生成される可能性が高いことになる.逆に,0 に近 い値を設定すれば正常なトラヒックパターン変化に対 するしきい値の順応が遅れ,結果的に False-Positive. 単位時間を N 秒とした場合,現在時刻から過去 M. 率が上昇する.この点を踏まえてパラメータを調整す. 秒に対して N 秒ごとの注目指標の変動を取得する.取. る必要がある.中でも,α は周期より短い変動を,β. 得した値に Holt-Winters 法を適応し,次の N 秒に対. は周期より長い変動を,γ は周期ごとの変動をとらえ. する上限しきい値,下限しきい値を設定する.次の N. るために利用する.. 秒間に実際に観測された注目指標が,設定されたしき. 統計処理ソフトウェアによっては α, β, γ の値を,過. い値内に収まらなかった場合.つまり,上限しきい値. 去の実測値と過去の予測値の誤差が最小になるように. を上回った場合,または下限しきい値を下回った場合. 自動算出できるものもあり,自動算出値を利用する方. に,異常トラヒック発生の可能性ありとして管理者に. 法もある.. 通知する.この作業を N 秒ごとに実行し,しきい値 内に収まらなかった実測値を通知することで,リアル タイムな異常トラヒック検出を実現する.この過程を 図 2 に示す. ここで,M はトラヒック計測を開始してから提案. 5. 実. 装. 本章では,提案手法の実装について述べる.. 5. 1 実 装 環 境 本システムは,一般的な PC で動作する Linux 上に. 手法が利用可能になるまでの期間となる.あまりに. 実装した.使用した PC のスペックは表 4 のとおり. も M を長くすると,運用現場において実用的ではな. である.データベースサーバとしても利用することか. い.しかし,周期変動を正しくとらえるために,設定. ら,ディスク容量は余裕をもって確保されている.し. した周期の数倍以上の長さは必要となる.この点を考 慮し,本論文では,M を 28 日(2419200 秒,4 周期). かし,実際のフロー属性データの容量は 10 カ月分で 10 GByte 程度であり,近年の一般的なコンピュータ. とした.. のハードディスク容量を考慮すると,十分,数年以上. 4. 5 Holt-Winters 法のパラメータ Holt-Winters 法 に よ る し き い 値 設 定 に は ,信 頼 水準 CL, α, β, γ の四つのパラメータが必要となり, 1928. の長期観測に利用が可能である.. NetFlow パケットから属性情報をデータベースに 格納する部分は,再利用可能な個別のソフトウェア.
(8) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価. 的 (d) を満たすためには,提案手法が多くの異常ト ラヒック検出でき,かつ,正常なトラヒックを異常と 通知することが少ない必要がある.そこで,評価項目. ( 1 ) として,単位時間 N と Holt-Winters 法のパラ メータごとに提案手法の False-Negative の発生数と, Fig. 3. 図 3 提案手法の動作例 A sample behavior of the proposed method.. False-Positive 率を評価し,パラメータの設定指針に ついて考察する.同時に,自動算出されたパラメータ の利用が妥当かどうかを評価する.ただし,本論文で. (NetFlow2MySQL [11])として C 言語を用いて実. は,他の手法で異常トラヒックが認められなかった時. 装した.データベースマネジメントシステムとして. 刻に提案手法が異常トラヒック発生の通知を発した場. MySQL [10] を用いる.解析モジュールは Perl を利用 して実装し,Holt-Winters 法によるしきい値の算出. 合,提案手法の False-Positive とする.また,他の手 法により確実に異常トラヒックの発生と認められた出. には,GNU R [6] を利用した.. 来事をリファレンスとし,そのリファレンス異常が提. 5. 2 動 作 例. 案システムによって検出できなかった場合,提案シス. 提案手法を実測トラヒックに対して適応した例を図 3. テムの False-Negative とカウントする.. に示す.注目指標の実測値(Observed Value)に対し. 次に,( 2 ) では,パケットのサンプリングレートが,. て,Holt-Winters 法を用いた上限しきい値(Upper. 提案手法の False-Positive,False-Negative 率に与え. Boundary),下限しきい値(Lower Boundary)を設. る影響を評価する.パケットのサンプリングレートを. 定し,実測値がしきい値から外れた際に管理者に通知. 下げても False-Positive,False-Negative 率に変化が. する.リアルタイムの異常トラヒック検出においては,. 生じなければ,本提案手法はスケーラブルに広帯域に. しきい値の算出と実測値との比較は N 秒ごとに実行. 適応可能であり,(e) の要件を満たす.そして,評価. される.. 項目 ( 3 ) では.提案手法で用いた注目指標が妥当性を. 6. 評価と考察. 評価するために,他の指標を用いて異常トラヒック検. 本章では,提案手法がその設計目標を満たしており,. ついて述べる.提案手法によるしきい値計算に必要な. 異常トラヒック検出に利用可能かを評価する.. 6. 1 評価項目とその意義 提案手法は,3. 1 に述べた要件をすべて満たすこと. 出を試みた場合と比較する.最後に,評価項目 ( 4 ) に 時間を計測し,要件 (f) に適合したリアルタイムな異 常トラヒック検出が実現可能かを評価する.. 6. 2 リファレンス異常. を目標に設計した.要件 (a) 及び (b) の機能要件は提. 提案手法の False-Negative 率を評価するために,次. 案手法の設計段階で満たしている.したがって,本節. の三つの出来事を異常トラヒックのリファレンス(以. では評価対象としない.ここで,要件 (c) から (e) の. 下リファレンス異常)として利用する.. 目標が達成されているかを評価するため,次の ( 1 ) か. ( i ) ワーム感染の拡大 ( ii ) P2P ファイル共有アプリケーションの実行 A (iii) P2P ファイル共有アプリケーションの実行 B リファレンス異常 ( i ) は,Sasser と呼ばれるワーム に感染した PC が学内にもち込まれ,学内ホスト約 40. ら ( 4 ) の評価項目を挙げる. ( 1 ) パ ラ メ ー タ ご と の False-Positive,FalseNegative 率に与える影響 ( 2 ) サンプリングレートが False-Positive,False-. Negative 率に与える影響 ( 3 ) 従来指標に注目した場合との比較 ( 4 ) しきい値計算に必要な時間 まず,( 1 ) の評価項目について述べる.提案手法. ( ii ) は 1 人のユーザが P2P ファイル共有アプリケー ション WinMX を起動し,ファイルを検索と共有をし た事例である.リファレンス異常 (iii) は別のユーザが. は,4. 5 に述べたように各種パラメータを必要とす. 同様に P2P ファイル共有アプリケーション e-Donkey. る.一度パラメータを与えてしまえば,あとは管理者. を使用した事例である.いずれのケースも本提案手法. の判断を必要としない.つまり,妥当なパラメータが. の稼動前に起きた出来事であるが,提案手法を過去の. 決定できれば要件 (c) を満たすことになる.また,目. 観測データに対して適応し,発見可能であったかどう. 台に感染が広まったケースである.リファレンス異常. 1929.
(9) 電子情報通信学会論文誌 2005/10 Vol. J88–B No. 10 表 5 リファレンス異常による影響 Table 5 Effects of the reference incidents. リファレンス異常 (1) (2) (3) 24 時間以上 約 20 分 約 6 時間 978host 89host 14host. 継続時間 注目指標への影響 (/10 min) 転送パケット数への影響 1.63 kbit/s 165 pps 52 pps 転送バイト量への影響 637 kbit/s 141 kbit/s 252 kbit/s. かを評価する.実際の運用現場において,リファレン ス異常 (iii) はワームが攻撃に使用する 445/udp ポー トを監視することで発見され,リファレンス異常 ( ii ) と (iii) はシグニチャマッチング型 IDS で発見された. 提案手法においては,使用するポート番号やシグニ チャ等の事前知識を用いずにこれらのリファレンス異 常の検出を試みる. 表 5 に,それぞれのリファレンス異常の継続時間, 及び,注目指標,転送パケット数,転送バイト量に与 えた影響を示す.ただし,注目指標への影響に関して. 表 6 Holt-Winters 法のパラメータの評価 Table 6 Evaluation of the Holt-Winters related parameters. ID 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20. N (s). CL. α a. A. b c. 600. a B. b c a. A. b c. 2400. a B. b c. γ i ii i ii iii i ii i ii iii i ii i ii iii i ii i ii iii. リファレンス異常 False(i) (ii) (iii) Positive ○ ○ × 3.47% ○ ○ × 5.90% ○ ○ × 4.51% ○ ○ × 4.17% ○ ○ × 4.17% ○ ○ × 1.39% ○ ○ × 2.43% ○ ○ × 1.39% ○ ○ × 1.39% ○ ○ × 1.74% ○ × × 16.67% ○ × × 18.06% ○ ○ × 2.78% ○ ○ × 8.33% ○ ○ × 6.94% ○ × × 6.94% ○ × × 6.94% ○ × × 2.78% ○ × × 4.17% ○ ○ × 2.78%. 1 は, 1000 サンプリング(注 4)に基づいた値である.転送. 1 1000. とした.表 6 中の. パケット数及び転送バイト量はサンプリング後の実測. 単位のサンプリングレートは. 値から実際の流量へ換算している.. ○は,そのパラメータの組合せで該当リファレンス異. 6. 3 Holt-Winters 法のパラメータ評価と考察. 常が検出できたことを,×は検出できなかったことを. まず,False-Negative の評価のため,Holt-Winters. 示す.. 法での CL, α, γ を変化させた場合に,各リファレンス. リファレンス異常 ( i ) はすべてのパラメータの組. 異常が検出できたかどうかを評価する.次に,FalsePositive 率の調査のため,他の手法で異常トラヒック. 合せにおいて正常に検出できており,提案手法による ワームの感染行為の検出は妥当であるといえる.しか. が認められなかった時刻に提案手法が異常トラヒック発. し,リファレンス異常 ( ii ) は N = 300 のときはすべ. 生の通知を発した率を評価する.多くのリファレンス異. て検出できているが,N = 2400 のときは,検出でき. 常を正常に検出できる,言い換えれば False-Negative. るパラメータの組合せと,検出できない組合せがあ. 率が低く,正常時を異常と通知しない(False-Positive. る.リファレンス異常 ( i ) は,発見され対処されるま. 率が低い)パラメータが適しているといえる.. で数日の時間を要し,異常状態の継続状態が長時間に. •. α に対して,40 分以内の実測値に 90%の重み を置く場合 (a),50%の重みを置く場合 (b),自動算出 値(4. 5 参照)を利用 (c) • γ に対して,1 周期前の同曜日,同時刻に 90%の 重みを置く場合 ( i ),50%の重みを置く場合 ( ii ),自. わたった.一方,リファレンス異常 ( ii ) の継続時間は. 動算出値(4. 5 参照)を利用 (iii). についてはいずれのパラメータでも検出に成功してい. •. 信頼水準 CL が,99%の場合 (A),99.9%の場 単位時間 N を 600 秒(10 分)とした場合,2,400. 秒(40 分)とした場合 のそれぞれの組合せについて,リファレンス異常が正 常に検出できたかどうかと,False-Positive 率につい て評価した.その結果を表 6 に示す.また,パケット 1930. 位時間を 2400 秒としたときのリファレンス異常 ( ii ) が,注目指標へ与える影響も半減し,検出できなかっ たと考えられる.その一方で,リファレンス異常 (iii) ない.これは,表 5 から分かるように,(iii) の P2P ファイル共有アプリケーションのトラヒックが注目指. 合 (B). •. 20 分(1200 秒)程度と短時間であった.この結果,単. 標に与える変化が小さすぎ,全体量として見た注目指 標をしきい値内にとどめたためである. ここで,α,γ の設定について考察する.4. 5 の手 (注 4):1000 個に 1 個の割合でパケットをサンプリングし,サンプリ ングされたパケットをもとに作成されたフローの属性情報を利用..
(10) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価 表 7 サンプリングレートごとの評価 Table 7 Evaluation of the sampling rates.. Table 8. サンプリングレート リファレンス異常 False(i) (ii) (iii) Positive 率 1/1000 ○ ○ × 3.47% 1/2000 ○ ○ × 2.43% 1/4000 ○ × × 1.74% ○ × × 1.74% 1/8000 ○ × × 3.13% 1/16000. 表 8 従来指標との比較 Comparison with other indices.. リファレンス異常 (i) (ii) (iii) 注目指標 ◎ ○ × 転送パケット数 × × × 転送バイト数 × × ×. と,信頼水準が等しくても,異常トラヒックの発生に 法で自動算出される α,γ が最適な False-Positive 率. よる注目指標の変化がしきい値内に収まる可能性が高. をもたらすとは限らない.また,高い False-Positive. くなるからである.. 率をもたらすわけでもない.一方,この評価結果から,. 6. 5 従来指標との比較. 特定の α と γ の値が一般に最適とはいうことはでき. 従来から広く用いられている転送バイト量やパケッ. ない.例えば,表 6 の ID1 と ID11 は,α と γ の設定. ト数の変化に注目し,6. 3 で使用したパラメータの組. 方針が同等であるが,ID1 の False-Positive 率は低く,. 合せにより Holt-Winters 法を適応した.その結果を,. ID11 の False-Positive 率は高い.このように,同等の α と γ を与えても,N が変化すると,False-Positive. 表 8 に示す.◎はすべてのパラメータの組合せにおい. 率が急激に変化することもある.この点を考慮すると,. おいて検出できた指標,×はいずれのパラメータの組. 自動算出値の利用も妥当である.. 合せにおいても全く検出ができなかった指標を示す.. また,N 及び,CL の設定について考察する.N. て検出できた指標,○は一部のパラメータの組合せに. 転送バイト量や転送パケット数を指標に用いた場合,. が大きいと,短時間の変化しかもたらさない異常ト. 本論文で定義した異常トラヒックは全く検出できてい. ラヒックは検出できていない.この点を考慮すると,. ない.提案手法では,リファレンス異常 ( i ) 及び,リ. 対象とする異常トラヒックの一般的な継続時間より. ファレンス異常 ( ii ) の検出に成功しており,注目指標. 短い N を設定する必要があることが分かる.また,. は妥当であるといえる.転送バイト量やパケット数に. ID14 と ID19 の比較で分かるように,高い CL の値は False-Positive 率を下げ,検出できない異常トラヒッ. 注目した場合に検出されたトラヒックは,http や ftp,. scp 等によるファイルの転送がほとんどであった. 6. 6 しきい値計算に必要な時間の評価と考察. クを増やすことが分かる. これらの指針によって N 及び CL を設定し,自動. リアルタイムな異常トラヒック検出には N 秒間隔. 算出された α,γ を利用することで 6. 1 に述べた目的. でしきい値の計算が必要である.5. 1 で挙げた実装環. (a) を達成することができる.. 境上で,N = 300 のときの,単位時間のしきい値計算. 6. 4 サンプリングレートごとの評価と考察. の所用時間は 0.23 秒,N = 2400 のときの所要時間. 次に,N を 10 に,α を (a) に,β を ( i ) に,信頼. は 0.09 秒以下である.これらの所要時間は,データ. 水準 CL を (A) に固定し,サンプリングレートを低下. ベースから過去の実測値を抽出する時間を考慮しても. させる.6. 3 で用いたサンプリングレート. 十分 1 秒以内に収まる.提案手法は十分リアルタイム. 1 1000. をも. 1 1 1 1 とに, 2000 , 4000 , 8000 , 16000 と低下させたときの,. なトラヒック検出に用いることができ,機能要件 (f). リファレンス異常の検出の可否,及び False-Positive. を満たす.. 率は表 7 のようになった.表 7 中の○は,そのサン プリングレートで該当リファレンス異常が検出できた ことを,×は検出できなかったことを示す. リファレンス異常 ( i ) はサンプリングレートを下げ ても検出ができているが,リファレンス異常 ( ii ) につ 1 4000. 7. む す び 本提案手法は,3. に挙げた機能要件を一部満たす ことができた. まず,従来広く用いられていた転送バイト量やパ. 以下のサンプリングレートでは検出でき. ケット量の監視では発見できなかった,ワームによる. ていない.これは,サンプリングレートが下がるにつ. 攻撃トラヒック,及び,P2P ファイル共有アプリケー. れ,注目指標の正常時の変動係数が大きくなることが. ションによるトラヒックを,検出シグニチャ等の事前. 原因であると考える.正常時の変動係数が大きくなる. 知識を用いずに検出することができた.そして,提案. いては. 1931.
(11) 電子情報通信学会論文誌 2005/10 Vol. J88–B No. 10. 手法はその設計において,要件 (a),要件 (b) を満た. いう問題がある.この問題の解決のために,更なる解. すことができた.次に,α,β の自動算出値が妥当で. 析結果の分析と実地調査の強化が必要となる.. あることを示し,CL 及び,N の設定指針を示した.. 最後に,本論文では P2P ファイル共有アプリケー. これにより,提案手法は管理者の知識や経験に依存し. ションによるトラヒックを異常トラヒックと定義した.. ない,自動異常トラヒック検出を実現でき,要件 (c). しかし,提案手法はその特徴から,P2P 型通信を行. を満たすことができた.そして,提案手法による異常. うアプリケーションによるトラヒックが検出される.. トラヒック検出は,十分短時間で実現できることが分. 検出精度の向上には,検出されたトラヒックが,P2P. かり,要件 (f) を満たすことができた.. ファイル共有アプリケーションによるものなのか,そ. しかし,要件 (d) 及び要件 (e) の実現性については. れ以外の P2P アプリケーションによるものなのかを. 十分とはいえない.まず.すべての異常トラヒックが. 判断する必要がある.それに向けた,P2P ファイル共. 検出できるわけではなく,6. 2 で挙げた,リファレン. 有アプリケーション独自の通信のモデル化が今後の課. ス異常 (iii) のように提案手法では検出できない異常. 題となる.. トラヒックも存在する.しかし,検出できなかった異. 文. 献. 常トラヒックも注目指標に少なからず影響を与えてい. [1]. “ALAXALA Networks,” http://www.alaxala.com/. る.検出できなかった原因は,そのトラヒックによる. [2]. “Cisco IOS Software NetFlow,” http://www.cisco.com/warp/public/732/Tech/. 影響が,全体量として見た注目指標をしきい値外に押. nmp/netflow/index.shtml. し出すために十分でなかったためである.こうした異. [3]. “Cisco Systems, Inc,” http://www.cisco.com/. 常トラヒックの検出には更なる工夫が必要となる.同. [4]. “Extreme Networks,”. [5]. “FlowScan - Network Traffic Flow Visualization and. http://www.extremenetworks.com/. 様に,監視対象ネットワークの利用人数が増加すると,. 1 ホストが注目指標に与える影響が相対的に小さくな. Reporting Tool,” http://www.caida.org/tools/. り,同様に異常トラヒックの検出が困難になる.この. utilities/flowscan/. ような問題に対処するには,全体量としての注目指標. [6]. に注目するだけでなく,あらかじめサブネットごとに. [7]. “Juniper Networks,” http://www.juniper.net/. [8]. K. McCloghrie and M. Rose, “Management informa-. 分割した注目指標について提案手法を適応するという. tion base for network management of TCP/IP-based. 応用が考えられる.このような応用手法の実装と評価 が今後の課題である. そして,数パーセント以上の False-Positive 率も実 運用への投入に向けた課題である.今後,注目指標だ. internets:MIB-II,” RFC-1213, March 1991. [9] [10] [11]. “MySQL,” http://www.mysql.com/ “NetFlow2MySQL,” http://cluster19.aist-nara.ac.jp/public/. [12]. J. Case, M. Fedor, M. Schoffstall, and J. Davin, “Simple network management protocol (SNMP),” RFC. をした場合の False-Positive 率を検証していく必要が ある.. “MRTG: The Multi Router Traffic Grapher,” http://people.ee.ethz.ch/˜oetiker/webtools/mrtg/. けでなく,通信先ホストのアドレス,使用ポート番号 のばらつき等,別の指標を組み合わせて異常の評価. “GNU R,” http://www.r-project.org/. 1157, May 1990. [13]. J.D. Brutlag, “Aberrant behavior detection in time. また,6. 4 で示したように,サンプリングレートを. series for network monitoring,” USENIX 14th Sys-. 下げた際の異常トラヒック検出精度が低下している.. tems Administration Conference (LISA), pp.139–146,. 1 しかし, 16000. といった低いサンプリングレートでも. 2000. [14]. 検出できているリファレンス異常も存在することから,. nal analysis of network traffic anomalies,” Internet. IDS 等のすべてのパケットを検査する手法と比較する と,広帯域への適応性は高い.. Measurement Workshop, pp.71–82, 2002. [15]. plication signatures,” International World Wide Web. で異常トラヒックが認められなかった時刻に提案手法. Conference, pp.512–521, May 2004. [16]. 法のみで検出できた場合も False-Positive とされると 1932. T. Peng, C. Leckie, and R. Kotagiri, “Proactively detecting DDoS attack using source IP address mon-. の False-Positive としている.しかし,この方法では, 他の手法で検出できなかった異常トラヒックが提案手. S. Sen, O. Spatscheck, and D. Wang, “Accurate, scalable in-network identification of P2P trafic using ap-. 更に,6. 1 で述べたように,本評価では,他の手法 が異常トラヒック発生の通知を発した場合,提案手法. P. Barford, J. Kline, D. Plonka, and A. Ron, “A sig-. itoring,” Networking 2004, pp.771–782, May 2004. [17]. 倉上 弘,川田隆夫,“アドレス分布を考慮した分散サー ビス不能攻撃検出方式の検討,” 信学総大,B-7-17, March.
(12) 論文/通信先ホスト数の変化に注目した異常トラヒック自動検出手法の提案と評価 2004. [18]. 塩出一平, “トラフィックの統計指標を利用したワーム検 出手法の提案,” 奈良先端科学技術大学院大学修士論文, March 2005.. (平成 17 年 1 月 7 日受付,5 月 13 日再受付). 藤井. 聖. 平 15 大工大・情報科学・情報システム 卒.平 17 奈良先端大・情報・博士前期課 程了.同年(株)IRI コミュニケーション ズ入社,現在に至る.修士(工学).ネット ワークトラフィック計測技術.ネットワー ク運用技術に関する研究に従事.WIDE プ ロジェクトメンバー.. 中村. 豊 (正員). 平 8 京工繊大・繊維・高分子卒.平 13 奈良先端大・情報・博士課程了.同年阪大 大学院・基礎工・リサーチアソシエイト. 平 14 奈良先端大・情報科学センター・助 手.平 17 九工大・情報科学センター・助教 授,現在に至る.博士(工学).WWW 技 術,サーバ管理手法,インターネット計測技術,ネットワーク 運用技術に関する研究に従事.WIDE プロジェクトメンバー, Internet Society 会員.. 藤川. 和利 (正員). 昭 63 阪大・基礎工・情報卒.平 3 同大 大学院基礎工学研究科博士後期課程退学後, 同年阪大・基礎工・助手等を経て,平成 14 奈良先端大・情報科学センター・助教授,平 成 17 年同大・情報科学研究科助教授,現 在に至る.博士(工学).分散処理システ ム,マルチメディアシステムの研究開発に従事.情報処理学会, IEEE, ACM 各会員.. 砂原. 秀樹 (正員). 昭 58 慶大・工・電気卒.昭 63 同大大 学院博士課程了.同年電通大・情報・助手. 平 6 奈良先端科学技術大学院大学・情報科 学センター・助教授.平 13 同大学・情報 科学センター・教授,現在に至る.工学博 士.インターネット,大規模広域分散環境, ネットワーク,並列処理,オペレーティングシステム,電子図書 館に関する研究に従事.情報処理学会,ACM, IEEE 各会員.. 1933.
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図
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