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自動運転システム制御車両が混在する交通流における運転者のストレス・精神的負担の計測 平成29年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

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自動運転システム制御車両が混在する

交通流における運転者のストレス・精神的負担の計測

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研究実施メンバー

研究代表者

大阪大学大学院工学研究科

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報告書概要

近年,公道上で自動走行システムを搭載した車両が走行する交通社会の到来が間近に迫って いる.内閣府では,2025 年を目途に完全自動走行システムの市場化が可能となるよう,研究開 発を進めることを目標として挙げている. しかしながら,自動運転車両の増加が交通環境にどのような影響を及ぼすのか,ドライバー が自動運転技術の支援により生まれた余裕をどのように使うかなどの知見は,十分に蓄積され ていない.また,自動運転車両は一般車両と挙動が異なる.これにより,自動運転車両が多く 混在する交通流が,周囲のドライバーにどのような影響を与えるのかも不明である. 以上の課題に対し,研究代表者らは,自動運転技術の根幹をなす定速走行・車間距離制御装 置(Adaptive Cruise Control,以下 ACC)に着目して,ドライビング・シミュレータを用いた 室内走行実験により,ACC を搭載した車両(以下,ACC 車両)が混在する交通流を仮想空間上で 生成する技術を開発した. そして,先行研究(平成 28 年度助成研究)では,作成された交通流に対して,交通流の円滑 性および安全性に関する調査研究を行った.その結果,道路線形によらず,ACC 車両混在比率 (以下,混在比率)の上昇によって交通流率が高くなる事例を確認した.また,コンフリクト 指標の比較から,サグ部や急カーブにおいて,混在比率の上昇に伴い,追突事故リスクが低減 することも確認した. 本研究(平成 29 年度助成研究)では,①先行研究のデータに基づく精神的負担評価を含む運 転者の挙動把握,②ACC 車両が混在する高密度交通流の特性把握および③高密度交通流におけ る運転者の挙動把握を行った. 先行研究のデータに基づく運転者の挙動把握では,実験参加者に,先行研究で生成した交通 流中を運転してもらい,走行中の運転行動や視線行動を計測するとともに,走行直後に,気に なっていた対象やリスク評価をヒアリングした.視線行動より,ACC 車両運転時は脇見運転と 解釈できる回数が有意に多くなったほか,追越車両への注意が低下するという負の効果が認め られた.ヒアリングデータより,ACC 車両を運転する事で,非 ACC 車両(以下,MD 車両)を運 転するときより,運転の注意度が低下することが示唆された.また,心電の HF 成分のバンド幅 のパワーは,以上の結果と整合する反応を示すことを確認した. 上記の結果より,ACC 車両の運転が精神的負担を含む運転者の挙動に影響を及ぼす可能性が 示唆されたため,先行研究より高密度な交通流を再現する実験を実施した.この交通流におけ る円滑性と安全性を先行研究と同じアプローチで評価した.結果として,高密度交通流であっ ても,ACC 車両の混在比率が増えることで円滑性は向上することが確認された.しかし,安全 性に関しては,MD 車両が ACC 車両の動きに追従できず,潜在的な事故リスクが増えるケースが 確認された. また実験走行中に計測したヒアリングの結果から,ドライバーの前方への注意負荷およびス トレスは,ACC 車両の混在比率が高い場合軽減されることを確認した.また,視線データから, ACC 車両混在比率が上昇することによって,ドライバーは前方車両に注意するだけでなく,走 行車線の車両に注意を向ける余裕が出てくることを確認した.

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目次

第 1 章 はじめに ... 1 1.1 研究の背景 ... 1 1.2 研究の目的 ... 3 第 2 章 ACC 車両が混在する臨界密度交通流における運転者挙動 ... 4 2.1 実験概要 ... 4 2.1.1 実験に用いた機器とコース ... 4 2.1.2 ACC 車両の混在比率が異なる交通流の再現 ... 5 2.1.3 被験者および実験条件 ... 5 2.1.4 計測データ ... 6 2.1.5 データ解析手法 ... 6 2.2 結果・考察 ... 8 2.2.1 アイカメラデータ計測結果に基づく分析・考察 ... 8 2.2.2 ヒアリングデータ結果に基づく分析・考察 ... 15 2.2.3 心電データ結果に基づく分析・考察 ... 17 2.3 第 2 章のまとめ ... 21 第 3 章 ACC 車両が混在する高密度交通流の特性 ... 22 3.1 実験概要 ... 22 3.1.1 実験に用いた機器とコース ... 22 3.1.2 ACC 車両の混在比率が異なる高密度交通流の再現 ... 22 3.1.3 被験者および実験条件 ... 23 3.1.4 計測データ ... 23 3.2 交通流特性と車両挙動の把握 ... 25 3.2.1 分析方針 ... 25 3.2.2 減速波の発生伝播状況 ... 25 3.2.3 交通流率の変動の把握 ... 31 3.2.4 コンフリクト指標を用いた安全性評価 ... 35 3.3 第 3 章のまとめ ... 39 第 4 章 ACC 車両が混在する高密度交通流における運転者挙動 ... 40 4.1 分析方針 ... 40 4.2 ドライバーの注意傾向の把握 ... 40 4.2.1 注意対象物の発話数の分析(混在比率パターン比較) ... 40 4.2.2 視線データの分析(混在比率パターン比較) ... 41 4.2.3 注意対象物の発話数の分析(混在比率 50%における ACC と MD の比較) ... 43

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4.3.2 混在比率条件(MD 車両運転)によるドライバーのストレス度合いの把握 ... 46

4.4 心電データ結果に基づく分析・考察 ... 47

4.5 第 4 章のまとめ ... 50

第 5 章 おわりに ... 51

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第1章 はじめに

1.1 研究の背景 わが国の交通事故死者数は 2017 年において 3694 人1)であるが,政府が目標として掲げる「24 時間死者数 2500 人以下」2)を達成するためには,事故削減に向け更なる取り組みが必要である. 一方,都市間高速道路における渋滞損失時間の合計は 1.9 億人・時間で3),大きな問題である. その渋滞の約 8 割は単路部で発生しており,無意識な速度変化に起因していることが分かる4) その中で,交通事故の削減や交通渋滞の緩和といった道路交通の安全性・円滑性の向上を期 待して,自動運転技術の開発が進められている.自動運転技術には,システムがカバーする領 域に応じて,数段階のレベル分けが様々な機関で提唱されており,代表的なものとして SAE International の J3016 の定義5)が挙げられる.その概要を表 1.1 に示す. 表 1.1 自動運転レベルの定義(J3016)5)の概要 レベル 概要 安全運転に係る 監視,対応主体 運転者が全てあるいは一部の運転タスクを実施 SAE レベル 0 運転自動化なし 運転者が全ての運転タスクを実施 運転者 SAE レベル1 運転支援 システムが前後・左右のいずれかの車両制御に 係る運転タスクのサブタスクを実施 運転者 SAE レベル 2 部分運転自動化 システムが前後・左右の両方の車両制御に係る 運転タスクのサブタスクを実施 運転者 自動運転システムが全ての運転タスクを実施 SAE レベル 3 条件付運転自動化 限定領域内でシステムが全ての運転タスクを 実施するが,作業継続が困難な場合,システム の要求に対して運転者が応答しなければなら ない システム SAE レベル 4 高度運転自動化 限定領域内でシステムが全ての運転タスクを 実施し,作業継続が困難な場合でも,運転者が 応答する必要はない システム SAE レベル 5 安全運転自動化 全ての領域でシステムが全ての運転タスクを 実施し,作業継続が困難な場合でも,運転者が 応答する必要はない システム 現在わが国では,官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 6)において,2020 年までに準自動パイ ロット(SAE レベル 2),2020 年を目途に自動パイロット(SAE レベル 3),2025 年を目途に高速 道路での完全自動運転(SAE レベル 4)の市場化を目標としている. 上記の市場化に向けて,内閣府の自動走行システム研究開発計画7)では,2017 年 9 月より常 磐道~首都高速~東名高速~新東名高速 300km(往復 600km)で大規模実証実験を開始している. 大規模実証実験の概要を表 1.2 に示す.

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表 1.2 SIP 大規模実証実験の概要6) 試験場所 試験内容 高速道路 ・ カーブなど様々な走路環境でのダイナミック・マップの有効性,精 度検証(車線レベル位置参照手法を考慮した動的情報の利用方法の 検討を含む) ・ 車車間通信による分合流部走行支援に係る実証 ・ 2~3 時間(200~300km)連続走行時のドライバー状態検証等 一般道 ・ 次世代都市交通システム試作車を用いた走行検証 ・ 公共車両優先システム(PTPS)を用いた機能検証 ・ インフラ等より提供される動的情報と車載機上に配信されたダイナ ミック・マップデータとの車載機上での紐付けの検証等 テストコース ・ サイバー攻撃などセキュリティ上の脅威に対する動作検証等 大規模実証実験において,技術・インフラ面では,カーブなどの様々な走路環境でのダイナ ミック・マップの有用性,精度を検証し,制度面では,自動運転レベル 3 実現に向けた HMI (Human Machine Interface)のガイドライン策定および国際標準化に向け評価法を確立し,2 ~3 時間(200~300km)連続走行時のドライバーの状態を検証している.また,社会受容面に 関しても,自動走行システムの技術や効果に関する知識を一般市民に伝える理解活動に加えて, 自動運転車両が普及したとき,市民がどう受け入れていくのか,また,自動運転車両が事故を 起こした場合,誰がどのように責任を問われるのかということに関して市民と直接対話を行う 活動 8)を実施している.この市民参加型イベントに加え,大規模実証実験を活用したイベント も企画している.しかしながら,大規模実証実験では自動運転車両が増加することによる交通 環境や周辺のドライバーの影響に関しては検証していない.当面は,自動運転車両と運転者が マニュアルで制御する車両の混在が想定されるため,自動運転車両が増加することによって交 通の円滑性や安全性にどのような影響が生じるのか,また周辺のドライバーにどのような影響 を与えるのかといった課題を明確にする必要がある.しかし,これらに関する知見はまだ十分 に蓄積されていないのが現状である. ここで,筆者らは自動運転技術として,SAE レベル 1 の定速走行・車間距離制御装置(ACC: Adaptive Cruise Control)搭載車両(以降,ACC 車両)に着目した.ACC 車両とは,システム が前方車両との車間距離を自動的に監視し,前方車両との距離が十分に離れている,あるいは 前方車両が存在しない場合はドライバーが設定した速度で巡航し,前方車両との距離がある程 度短い場合は,安全な車間距離を確保しながら前方車両に追従するシステムのことである. ACC 車両に関する研究としては,ACC 車両の混入による渋滞緩和効果を,ミクロ交通シミュ レーションによる推定結果に基づいて把握した岩崎ら 9)の研究や,サグ部での渋滞緩和を期待 し,ACC の性能や混在比率が異なる交通流をシミュレーションした鈴木ら10)の研究が挙げられ る.これらの既往研究では,ACC 車両混在比率が上昇すると,渋滞削減率の上昇や渋滞発生確 率の減少などの渋滞緩和効果が確認されている.しかし,これらの研究では車両挙動のモデル 化によるシミュレーションを基に検討を行っており,ACC 車両が混在する交通流において,車 両挙動の相互関係,特に,ACC 車両に追従する車両の挙動は調査されていない.ACC 車両を用い た車両挙動に関する研究として,ACC を使用してキープレフト走行のドライバーの受容性を検 証した鈴木ら11)の研究が挙げられ,ACC の使用により,キープレフト走行による追従走行時に, 交通流率が向上することが確認されている.しかし,この研究では,渋滞を避けた日に行って おり,車両が相互に影響し合うような交通流での調査を行っておらず,この点について調査す る必要がある. 以上の背景のもと,本研究の先行研究12)では,車両が自由に走行できる臨界流に近い交通流 を対象とし,ACC 車両をドライビングシミュレーター上(以下,DS)で再現し,ACC 車両が混在 した交通流を仮想空間上で生成した(以下,第 1 実験).そして,交通流率に基づき交通流の円

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滑性を,PICUD に基づき潜在的な追突事故リスクを評価した.その結果,ACC 車両混在比率上昇 によって,サグ部や急カーブといった,従来,交通流率が低下すると考えられていた箇所で, 交通流率の低下が抑えられる事例を確認した.また,ACC 車両の混在比率上昇に伴い追突事故 リスクが低下することも確認した12) ここで当然のことながら,ACC 車両はサグ部や急カーブといった道路構造で減速することな く走行する.従来の人が制御する車両挙動とは異なるこの挙動の違いが,ACC 車両を運転する ドライバーや周辺のドライバー(特に後続のドライバー)に心理的負荷をもたらすことが予想 される.また,ACC 機能により車両速度や車間距離維持タスクから解放されたドライバーがそ の余裕をどのように使うのかも不明である. 1.2 研究の目的 以上の課題に対して,第 1 実験12)で構築した交通流中の特定場面を複数の実験参加者に運転 してもらい,走行中の運転行動や視線行動を計測する(以下,第 2 実験).さらに走行直後に, 気になっていた対象やリスク評価をヒアリングする.これらのデータを分析することにより, 自動運転車両の混在比率の変化がドライバーに与える影響や,ドライバーが自動運転車両を運 転することにより周辺に対する注意や,運転行動がどのように変化するか,明らかにする. ここで,実際の交通状況は先行研究12)のような車両が自由に走行できる臨界流に近い密な交 通流だけではない.臨界流よりも交通密度が低く,車両が単独走行する交通状況や,臨界流よ りも交通密度が高く,急激な車両の加減速や車間距離の変動が起こる交通状況が存在する.そ こで,自動運転車両導入・普及の背景にある渋滞緩和という観点から,臨界流よりも交通密度 が高く,急激な車両の加減速や車間距離の変動が起こる交通流(以下,高密度交通流)を対象 とする.そして,ACC 車両混在比率の違いによって,交通流の円滑性と追突事故リスクを評価 し,第 1 実験12)の知見と比較するとともに,ドライバーの運転の注意傾向やストレス度合いを 明らかにする.

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第2章

ACC 車両が混在する臨界密度交通流における運転者挙動

2.1 実験概要 2.1.1 実験に用いた機器とコース 実験環境を図 2.1,コースを図 2.2 に示す.これらは第 1 実験12)で使用した物と同じである. DS 上に再現した ACC の機能は,現実社会で普及している ACC 車両の走行中の特性と同様,先行 車両が速度を上げても,事前設定速度を維持して単独走行する(以下,ACC クルージング条件). 一方,先行車両の速度が設定速度よりも低ければ先行車両に追従する(以下,ACC 追従条件). この機能を再現した ACC 車両を使用し,実験を行う. 図 2.1 ドライビングシミュレータ(DS)

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図 2.2 道路線形図(3〜11km の範囲) 2.1.2 ACC 車両の混在比率が異なる交通流の再現 被験者として運転免許を保有する学生 32 名に高速道路の模擬走行をしてもらった.再現し た交通流を図 2.3 に示す.これはコースの 6~7km の部分を表している.縦軸を走行位置(kp), 横軸を実験開始からの経過時刻として,先頭車群を含む各車両の軌跡を描画した図に,各車両 の地点速度から算出される等速度線を重畳した図である.車両軌跡の線が途切れている場合は, その地点で車両が車線変更をしたことを表す.また,ACC 車両の軌跡を太線で示し,必要に応 じて被験者の ID を赤色の数字で示してある. 0%では車頭距離が大きい場面が多数確認できる.例えば,0%の ID5(非 ACC 車両,以下 MD 車両)は,6.0~6.3kp にかけて 100km/h 以上で走行している一方,後続の ID7 は 100km/h 未満 で走行しており,この間の車頭距離が大きいことが確認できる.ここで,この区間は最大 2.82% の上り勾配を有するものの,緩やかな平面曲線のため設計速度は 120km/h であり,高速で走行 しやすい区間である.ドライバーが各自の希望速度で走行した結果,車頭距離が増加する場面 が多数生じ,交通流率が低下したと理解できる. 一方,ACC 車両の混在比率が 50%では,80~90km/h で走行する車両が多数を占めており,全 体的に速度が低いことが確認できる.ACC 車両は道路線形の影響を受けないということは,ACC の機能にドライバーが介入しない限り,設定した目標速度を超える速度で走行しないことを意 味する.つまり,ACC 車両で走行する被験者の多くが ACC に速度制御を委ね,さらに,MD 車両 で走行する被験者が ACC 車両に追従した結果,速度が低くなったと理解できる.しかし,同時 に ACC の効果によって交通流が密になったことで,交通流率は高い値を維持したと考えられる. このように,高速で走行しやすい道路線形の場合,ACC 車両の混在比率が高くなると,ACC 車両 の速度制御によって,混在比率が低いときに比べて速度が相対的に低くなる一方,速度が低下 しても車間距離制御により交通流率の低下には至らないことが確認された.

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ACC 車両の混在比率を 0%と 50%の 2 条件,ACC 混在比率 50%の際には前方車両が ACC クルージン グ条件と ACC 追従条件の 2 条件,自車両が ACC 車両と MD 車両の 2 条件という組合せ,計 6 条件 での走行を行った.走行は,ACC 車両運転時を 3 走行,MD 車両運転時を 3 走行してもらった. 2.1.4 計測データ 走行の際には図 2.4 のアイカメラ(ナックイメージテクノロジー社 EMR-9)を被験者に装 着し,運転中の視線を計測した.各走行後には,運転中に注意を払っていた対象物や運転中の 注意度,眠気などをヒアリングした.また,生理指標計測装置(キッセイコムテック社製マル チセンサー生理指標計測システム Nexus-10 及びディスポーサル電極,呼吸計測用バンド)によ って心電および呼吸を計測する.データの記録は Nexus-10 から BioTrace+という専用ソフトウ ェアをインストールした PC にデータを送信する. 2.1.5 データ解析手法 アイカメラデータより,被験者が走行中,車両周辺に存在する様々な対象物をどれくらい注 視したか,注視回数および注視時間を対象物ごとに算出し,条件間で差があるかをt検定によ り解析した.また,対象物として設けた 10 項目を表 2.1 に示す. ヒアリングデータより,ACC 運転時と MD 運転時,項目別で各々の平均を算出し,自車両の違 いによって変化があるのかt検定により解析した. 表 2.1 注視とする 10 項目 前方 左風景 右風景 前方車両 追越車両 左ミラー 右ミラー ルームミラー メーター カーブ先

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2.2 結果・考察 2.2.1 アイカメラデータ計測結果に基づく分析・考察 (1)走行中の対象物に対する平均注視回数(車両別比較) アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視回数を算出した.ACC 車両運転時と MD 車両運転時の違いを把握するため,走行全体の平均注視回数を比較した.その結果を図 2.5 に示す.その中で有意差が認められた項目を抽出したものを図 2.6 に示す.メーターに関して は速度調整を行わなくてよい ACC 運転時の方が有意に少ないことが認められた.また本研究で は,遠方の山や木など運転中に必要な情報が含まれないものへの注視を風景と区分している. その風景に関して図 2.7 に示す.その他の項目に関しても画像で補足説明する.そこで,運転 中の脇見の指標として風景への注視回数に着目する.左風景の注視回数は,MD 車両運転時が平 均 6.3 回(S.D.=7.2),ACC 車両運転時が平均 11.1 回(S.D.=13.2),右風景の注視回数は,MD 車 両運転時が平均 5.2 回(S.D.=6.2),ACC 車両運転時が平均 10.4 回(S.D.=13.5)となった.すな わち,ACC 機能の使用により,脇見と解釈できる回数が有意に多くなる結果となった. 図 2.5 走行中の対象物に対する平均注視回数(全項目) 図 2.6 走行中の対象物に対する平均注視回数(有意差が認められた項目)

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図 2.7 運転時の風景等の項目 (2)走行中の対象物に対する平均注視時間(車両別比較) アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視時間を算出した.その注視時間を ACC 車両運転時と MD 車両運転時で比較を行った.有意差,有意傾向が認められた項目を図 2.8 に 示す.注視回数と同様,有意差,有意傾向が認められた項目はメーター,カーブ先,左風景, 右風景となっている. 図 2.8 走行中の対象物に対する平均注視時間(ACC と MD の比較) 右風景 左風景 追越車両 前方車両

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(3)走行中の対象物に対する平均注視回数と注視時間(交通流別算出)

アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視回数と注視時間を,走行パターンご とに算出した.ACC 車両の混在比率が 0%・自分が ACC 車両を運転している場合と MD 車両を運 転している場合を比較し,注視回数を図 2.9,注視時間を図 2.10 に示す.交通流の乱れが少な い,ACC 車両の混在比率が 50%(前方車が ACC クルージング条件)・自分が ACC 車両を運転して いる場合と MD 車両を比較し,注視回数を図 2.11,注視時間を図 2.12 に示す.交通流の乱れが 少ない,ACC 車両の混在比率が 50%(前方車が ACC 追従条件)・自分が ACC 車両を運転している 場合と MD 車両を比較し,注視回数を図 2.13,注視時間を図 2.14 に示す.こちらの結果から, 注目すべき箇所をピックアップしたものを次の章から説明する.

図 2.9 走行中の対象物に対する平均注視回数(ACC と MD の比較・混在比率 0%)

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図 2.11 走行中の対象物に対する平均注視回数(ACC と MD の比較・混在比率 50%追従条件)

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図 2.13 走行中の対象物に対する平均注視回数(ACC と MD の比較・混在比率 50%クルージング条件)

図 2.14 走行中の対象物に対する平均注視時間(ACC と MD の比較・混在比率 50%クルージング条件)

(4)走行中の対象物に対する平均注視回数と注視時間(交通流別比較・自車両 ACC)

アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視回数と注視時間を走行のパターンご とに算出した.ACC 車両の混在比率が 0%・自分が ACC 車両を運転している場合と,交通流の乱 れが少ない,ACC 車両の混在比率が 50%(前方車が ACC クルージング条件)・自分が ACC 車両を 運転している場合を比較した.注視回数で有意差が認められた項目を図 2.15 に示す.追越車 両に対する注視回数は混在比率 0%で 19.6 回(S.D.=10.1),50%(ACC クルージング条件)では 13.1 回(S.D.=7.8)と有意差が認められた.また,注視時間において,有意傾向が認められた項目を 図 2.16 に示す.注視回数と同様,追越車両に対する注視時間に有意傾向が認められた.よっ て,ACC 車両の増加に伴って交通流の乱れは小さくなる一方,追越車両への注意が低下する負 の効果が認められた.

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図 2.15 走行中の対象物に対する平均注視回数(混在比率 0%と 50%の比較・自車両 ACC の場合) 図 2.16 走行中の対象物に対する平均注視時間(混在比率 0%と 50%の比較・自車両 ACC の場合) (5)走行中の対象物に対する平均注視回数と注視時間(交通流別比較・自車両 MD) アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視回数と注視時間を,走行のパターン ごとに算出した.ACC 車両の混在比率が 0%・自分が MD 車両を運転している場合と,交通流の 乱れが少ない,ACC 車両の混在比率が 50%(前方車が ACC クルージング条件)・自分が MD 車両を 運転している場合を比較した.有意差が認められた項目を図 2.17 に示す.右風景に対する注 視回数は混在比率 0%で 3.2 回(S.D.=5.3),50%(ACC クルージング条件)では 8.2 回(S.D.=7.5)

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図 2.17 走行中の対象物に対する平均注視回数(混在比率 0%と 50%の比較・自車両 MD の場合)

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2.2.2 ヒアリングデータ結果に基づく分析・考察 (1)走行中の運転に対する注意度 高速道路模擬走行終了後,その走行に対する運転の注意度(0:注意していない~3:注意し た)を取得した.その取得したデータの平均値を自車両が ACC の場合と自車両が MD の場合で比 較を行った.その結果を図 2.19 に示す.MD 運転時は平均 1.31(S.D.=0.87)に対して,ACC 運転 時は平均 0.87(S.D.=0.81)となり ACC 運転時の方が有意に低かった.ACC の機能により,運転手 は運転に対する注意が散漫になることが示唆された. (2)走行中の眠気 高速道路模擬走行終了後,その走行での眠気の状態(1:非常にはっきり目覚めている~9:と ても眠い)を取得した.その取得したデータの平均値を自車両が ACC の場合と自車両が MD の場 合で比較を行った.その結果を図 2.20 に示す.MD 運転時は平均 3.10(S.D.=1.87)に対して, ACC 運転時は平均 2.88(S.D.=1.85)と有意な差は認められなかった.すなわち,今回の実験環境 においては,速度調整が不要な ACC を運転する事による眠気が生じるという負の効果は認めら れなかった. 図 2.19 運転中の注意度

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(3)走行中の対象物に対する発話 振り返り走行中,被験者が運転中に気になる対象として発話した内容についての解析を行っ た. その結果を図 2.21 に示す.今回は,振り返り走行で気になる対象として発話された対象 物の中から「車間距離」「追越車線の車両」に関するものに着目し,振り返り時における発話の 有無を,一般化線形混合モデル(従属変数はベルヌーイ分布に従う)を用いて予測した.固定 効果は,システム,kp,話題,混在比率,及びシステムと kp の交互作用であった.変量効果は, 実験参加者であった.解析の結果,ACC クルージング(図 50%Cruise)条件ではその他の混在率 条件と比べて,発話が生じにくかった(b = -0.68,p < .05).ACC クルージング条件は,先行 車両(ID11)が車両速度 90km/h で走行しているため,他の条件と比較すると速度の変動が少な く,交通流の乱れが小さい.このような交通流において,気になる対象物の発話が生じにくか ったという今回の結果は,ACC 車両の普及によって交通流の乱れが小さくなれば,ACC 車両を運 転しているドライバーだけでなく,MD 車両を運転しているドライバーの注意負荷も軽減する可 能性があることを示唆する. さらに,システムと kp の間に有意な交互作用が認められたため(b = 1.36, p < .01),下 位検定を行った.その結果,7.5kp 地点においてのみ,有意なシステムの効果が認められ(b = 0.26, p < .05),ACC 機能あり条件では,ACC 機能なし条件よりも発話が生じにくかった.こ の結果は, 4.0kp(走行開始地点から 1km)においては ACC 機能の有無によって注意すべき対 象物の発話に差が生じなかった一方で,7.5kp(走行開始地点から 4.5km)においては差が生じ たことを示す.このことから, ACC 機能ありの場合,運転時間が長くなると自車両周辺の車両 に対する注意が少なくなることが示唆される. 図 2.21 走行中の対象物に対する発話量

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2.2.3 心電データ結果に基づく分析・考察 (1) 心電データの計測 本項では生理指標計測装置(キッセイコムテック社製マルチセンサー生理指標計測システム Nexus-10 及びディスポーザブル電極)によって計測した心電データを解析し,ACC 車両の混在 比率が異なる交通流が運転者に与える影響を生理指標の観点から把握することを目指す. 心電図の誘導方法として本研究では電極ケーブルが動作の障害にならない 3 点誘導法を用い た17).ディスポーザブル電極 3 本はそれぞれ+の電極が赤,-の電極が黒,グランドが白を示 す.心電データに筋電が影響することを可能な限り避けるため,電極は骨の上に設置するもの とし,-の電極(黒)は右鎖骨上,+の電極(赤)は左肋骨の一番下,グランド(白)は左鎖 骨上に設置した(図 2.22). 図2.22 ディスポーザブル電極の設置位置 (2) 生理指標 自律神経系とは,血液循環・呼吸・体温調節など,生命維持に欠くことのできない機能を自 律的に制御する神経であり,内分泌系や免疫系とともに,身体のホメオスタシス(恒常性)の維 持を担っている18).自律神経には,交感神経系と副交感神経があり,多くの臓器はその両方に より調節されている(二重支配).心拍数は心臓交感神経が賦活すると上がり心臓副交感神経が 賦活すると下がるように二つの神経系の綱引きで決まる(拮抗支配).交感神経は身体の活動レ ベルや運動能力を高める方向に働き,緊張時やストレス時に活発になる.副交感神経は心身の 沈静化・エネルギーの消費抑制と蓄えの方向に働き,リラックスしている時や睡眠時に活発に なる. 一方,心電は心筋の筋電位であり,P 波・Q 波・R 波・S 波・T 波・U 波により構成されている (図 2.23).心拍変動とは R 波の間隔(以下 R-R 間隔)の変動19) 20),つまり瞬時心拍数の変動を 意味する.

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R-R 間隔の変動にはいくつかの特徴的な揺らぎがあり,1 つは 0.04~0.15Hz 帯に出現する LF 成分(低周波成分)で,血管の血圧のフィードバック調節に伴う交感神経・副交感神経の変調に 由来する.もう一つは 0.15~0.40Hz 帯に出現する呼吸に同調した変調,すなわち呼吸性不整脈 (以下 RSA)を反映する HF 成分(高周波成分)である.RSA は副交感神経遮断薬(atropine)を投与 した時に消失し,交感神経遮断薬(propranolol)を投与した時に増加する.これは副交感神経の 変化と同期していると裏付けされているため RSA は副交感神経の活動指標として表される.本 研究では,運転者の漫然運転に入る徴候の前段階としてリラックス状態を調べるための生理指 標として HF 成分を用いた.具体的には,運転中に HF 成分が高まることがあれば,リラックス している,もしくは漫然運転になりつつあると判断する. (3) 生理計測指標の算出 収集した心電データ(図 2.24)にはノイズが含まれているため基線の動揺(ドリフト)が認め られる.そのため,ドリフトを除去するためにハイパスフィルタ(カットオフ周波数 3Hz)を適 用した上で, R 波のピークを検出する(図 2.25). 図 2.24 計測した心電データ 図 2.25 ハイパスフィルタを適用し R-R 間隔(図中の赤点)を算出したデータ例 サンプル数(256Hz) サンプル数(256Hz)

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検出した R-R 間隔は不均等間隔でサンプリングされているためスプライン補間を施し均等間 隔サンプリング(256Hz でのサンプリング間隔)に変換する.変換した R-R 間隔の時系列波形に 周波数解析(Complex Demodulation 法)を行い,0.15~0.45Hz 帯の振幅成分を求めた(以降,こ の振幅成分を HF 成分と呼ぶ).HF 成分の値は個人差が大きいため,実験参加者ごとに HF 成分 が高いと判断する閾値を設定する必要がある.本項で述べる解析では,同一実験参加者の全走 行の HF 成分の時系列データから平均μと標準偏差σを算出し,μ+3σを超えた値を HF 成分が 高いとみなす. (4) 心電データの解析結果 本項では,20 名の実験参加者のうち,試行的に 3 名(ID1~3)の心電データの解析を行った. まず,実験参加者(ID1)の MD 車両,ACC 車両運転時の HF 成分の時間的変動を図 2.26 に,ヒ アリング結果の抜粋を表 2.2 に示す.なお,ID1 の HF 成分の閾値は,前項で述べた手順に沿っ て算出した値 454.7 とした. 図 2.26 ID1の HF 成分の時間変動(左図:MD 車両運転時,右図:ACC 車両運転時) 表 2.2 ID1 のヒアリング結果抜粋(図 2.26 と対応) 表 2.2 をみると ACC 車両運転時には,2.5km〜4.5km の区間において安心したという発話があ る.図 2.26 の右図をみると 3.6km 地点で閾値を超えた HF 成分の値がみられ,この地点で被験 者がリラックスしている事が生理指標から読み取れる.また,ACC 車両運転時には 4.5km 地点 以降で漫然運転に陥り,眠気を感じたという発話がみられたが,図 2.26 の右図からは 5.2km,6.0km 地点で HF 成分の値が閾値を超えており,被験者がリラックスしていることが生理 指標から読み取れる.一方,MD 車両運転時には,全体的に周囲の車両を気にして不安を感じた という発話が認められた.図 2.26 の左図をみると閾値を超えた HF 成分の値は見られなかった. 次に,実験参加者(ID2)の MD 車両,ACC 車両運転時の HF 成分の時間的変動を図 2.27 に, ヒアリング結果の抜粋を表 2.3 に示す.なお,ID1 の HF 成分の閾値は,前項で述べた手順に沿 って算出した値 1673.6 とした.図 2.26 の右図をみると,ACC 車両運転時,2.5km 地点付近に て HF 成分の値が高くなっているものの,ヒアリングデータからは該当する発話は認められなか った.一方で,4.5km 地点以降,眠気を感じたとの発話があり,実際,4.5km 付近で HF 成分の

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図 2.27 ID2 の HF 成分の時間変動(左図:MD 車両運転時,右図:ACC 車両運転時) 表 2.3 ID2 のヒアリング結果抜粋(図 2.27 と対応) (5) 運転中の注意度と生理指標との関連性検討 本項では,解析対象とした実験参加者 3 人(ID1~3)の全 17 走行(機器の不調により ID1 の 1 試行分がデータ欠損)における HF 成分のピーク値の平均値と,ヒアリングで取得した運転中 の注意度との間にどのような関係があるのか検証した.各実験参加者の HF 成分と注意度との相 関を表 2.4 に,散布図を図 2.28 に示す. 表 2.4 各実験参加者の HF 成分と注意度の相関 実験参加者 ID1 ID2 ID3 ID1〜3 HF 成分と注意度の相関 -0.4152 -0.5489 -0.5227 -0.6926 図 2.28 各実験参加者の HF 成分と注意度の散布図 各被験者の HF 成分と注意度の間には相関係数=-0.69 と有意水準 1%未満で有意差があり負の相 関がみられた.このことから注意度が低くなると生理指標の HF 成分の値が高くなる傾向にある ことが分かる.すなわち HF 成分の値により,運転者がどの程度注意しながら運転しているのか, ある程度推測できることが分かった.

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2.3 第 2 章のまとめ 本章では,ACC 車両の混在比率がドライバーに与える影響を考察するため,ACC 車両の混在 比率を変化させた交通環境で実験参加者に走行してもらった.その走行中の視線移動をアイカ メラデータから取得した.また走行中の運転時の注意度や眠気に関してヒアリングした. アイカメラデータより,ACC 車両を運転する事により,運転時に必要な情報が含まれていな い風景に対する注視が有意に多い結果となり,ACC 車両を運転する事によって脇見運転を誘発 する可能性が示唆された.ACC 車両が増加することにより,自車両が ACC の場合,追越車両に 対する注意が低下する結果となった.また,自車両が MD である場合では,脇見運転を誘発する 可能性が示唆され,自車両の違いによらず,運転時に負の要因とみなせるものが発生するリス クがみてとれた. ヒアリングデータより,ACC 車両を運転する事で,MD 車両を運転するときより,運転の注意 度が低下することが示唆された.注意低下より,新たな事故リスクが発生しかねない.しかし, ACC 車両を運転する事によって,眠気が生じるという負の効果は,今回の実験では認められな かった.また,ACC 車両の普及によって交通流の乱れが小さくなれば,ACC 車両を運転している ドライバーだけでなく,MD 車両を運転しているドライバーの注意負荷も軽減する可能性と,ACC 機能ありの場合,運転時間が長くなると自車両周辺の車両に対する注意が少なくなることが示 唆された. アイカメラデータとヒアリングデータの結果をまとめると,ACC 車両を運転することによっ て,運転に対する注意の低下,自車両周辺の車両に対する注意の低下,脇見運転を誘発する可 能性が挙げられる.MD 車両を運転する場合でも,自車両周辺の車両に対する注意の低下,脇見 運転を誘発する可能性が挙げられる.このように,ACC 車両の増加がドライバーに一定の負の 影響を与えることが明らかとなった.さらに,注意度が低くなると生理指標の HF 成分の値が高 くなる傾向にあることが分かった.すなわち HF 成分の値により,運転者がどの程度注意しなが ら運転しているのか,ある程度推測できることが分かった.

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第3章

ACC 車両が混在する高密度交通流の特性

3.1 実験概要 3.1.1 実験に用いた機器とコース 2.1.1 で示したものと同じ機器と実験コースを使用した. 3.1.2 ACC 車両の混在比率が異なる高密度交通流の再現 本実験では,被験者に臨界流よりも交通密度が高く,急激な車両の加減速や車間距離の変動 が起こる交通流の中を走行してもらうため,筆者らが,先頭車両を含む 20 台の車列(以降,先 頭車群)を作成した.具体的には,まず,中央道区間(0~3.0kp)における先頭車両の速度推 移は,既往研究13)より,減速波の増幅伝播が最も大きい,下り勾配区間(1.0kp 付近)から速 度が低下し,分析区間終端でも回復傾向が見られない速度推移を参照した. そして,山陽道区間と高松道区間(3.0~11.0kp)の先頭車両の速度推移は,先行研究 12) で得られた空間平均速度のデータから,山陽道区間の上り坂付近(6.0~7.0kp)と高松道区間 の急カーブ(8.5~10.0kp)において,最も平均速度が遅くなった,ACC 車両混在比率 50%かつ, 走行車線の先頭車両が ACC 車両であるパターンの空間平均速度を参照した. 本実験で参照した先頭車両の速度推移を道路線形図とあわせて図 3.1 に示す. 図 3.1 本実験で参照した先頭車両の速度推移

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次に,この先頭車両に続いて,19 台の車列を追従積み重ね走行 14)により作成した.この 20 台の積み重ね走行によって,中央道区間のサグ部(1.0kp 付近)と高松道区間の急カーブ手前 (9.0kp 付近)において,20 台目の速度が 40km/h 以下にまで減速することとなった.したがっ て,1 人目の被験者には,先頭車群の 20 台目に追従してもらうことにより,減速や車間距離の 変動が激しい交通流を走行してもらうこととした. 3.1.3 被験者および実験条件 本実験では,被験者として,日常的に運転する 33~50 歳の男性 30 名を一般募集した.この 30 名の年齢の平均値は 41.3 歳で,標準偏差は 5.1 歳である.参加者募集に際し,アイカメラ 装着のため,裸眼あるいはソフトコンタクトレンズ着用の者を選定した.また,職業ドライバ ーや高速道路の利用頻度が極端に少ないものは被験者から除外した.上記に加え,心拍を計測 することから,睡眠障害や心臓系疾患の既往歴がないものを条件とする. 本実験では,3.1.2 で述べた通り,追従積重ね実験14)と呼ばれる手法を適用し,運転特性が 異なる車両で交通流を作成することとした.なお,一般に交通量が増大すると追越車線利用率 が高くなり,先に追越車線から低速な車列が出来上がるという知見15)から,本実験では,追越 車線を対象とした.また,走行車線の車両は先頭車両を自車速度にロックし,後続に 38 台の車 両を配置して,車線変更ができない車列を再現した. ここで,ACC 車両の混在比率は 0%,50%とした.混在比率 50%については,各被験者が MD 車 両と ACC 車両それぞれで走行してもらった.ただし,ID2 が混在比率 50%を ACC 車両で 2 度走行 したため,混在比率 50%となるよう ACC 車両と MD 車両の台数を合わせなければならない関係上, ID21 は混在比率 50%を MD 車両で 2 度走行することとなった.表 3.1 に混在比率パターンと各 混在比率における ACC 車両及び MD 車両の台数を示す. 表 3.1 混在比率パターンと各混在比率における ACC/MD 車両の台数 パターン名 p1 p2 p3 混在比率 0% 50% 50% ACC 車両 0 台 15 台 15 台 MD 車両 30 台 15 台 15 台 それぞれの走行で,ACC 車両と MD 車両のどちらを運転するかは,混在比率に基づき,ランダ ムに割り当てた.なお,どちらの車両を運転するかは,各走行の前に被験者に伝えた. 3.1.4 計測データ 走行の際には図 2.4 のアイカメラ(ナックイメージテクノロジー社 EMR-9)を被験者に装 着し,運転中の視線を計測した.各走行後には,運転中に注意を払っていた対象物や運転中の 注意度,ストレスなどをヒアリングした.また,生理指標計測装置(キッセイコムテック社製 マルチセンサー生理指標計測システム Nexus-10 及びディスポーサル電極,呼吸計測用バンド) によって心電および呼吸を計測する.データの記録は Nexus-10 から BioTrace+という専用ソフ トウェアをインストールした PC にデータを送信する.計測したデータの一覧を表 3.2 に示す.

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表 3.2 取得データ 方法 取得データ アンケート ・運転免許を取得してからの経過年数 ・自動車の運転頻度(回/月) ・普段の高速道路での運転頻度(回/年) ・普段走行する車線 ・高速道路を運転する際の追い越しや車線変更頻度 ・ACC に関する知識および ACC の運転経験 ・性別 ・年齢 ・自動車運転中の交通事故/交通事故遭遇経験(過去 5 年以内) DS ・車両の車長・車幅・車高 ・走行車線 ・走行位置(kp)

・走行状態(MD,ACC クルージング,ACC フォローイング,ACC オーバーライド,自 動ブレーキ) ・速度 ・加速度 ・アクセル・ブレーキ開度 ・車両の x,y,z 座標 ・ヨー角,ピッチ角 ・車線中心軸からの距離 ・前方車両との距離 ・前方車両との TTC EMR ・被験者の走行時の視線 (注視点を 0.02sec ずつ項目ごとにラベリング) 心拍計 ・被験者の走行時の心電 ・被験者の走行時の呼吸 ビデオカメラ ・ドライバーのハンドル操作や頭部の挙動の映像 ヒアリング (走行全体) ・どれくらい周りに注意して運転していたか(10 段階評価) どのようなことに注意していたか ・眠気の状態(10 段階評価)と選んだ数字の理由 (区間別)<0.8~2.0kp,5.0~6.0kp,8.5~9.5kp> ・どれくらい周りに注意して運転していたか(10 段階評価) どのようなことに注意していたか ・周辺の車両の動きは気になったか(10 段階評価) 前方車両・後方車両・走行車線の車両のどれが気になったか(複数回答可) ・運転中に「イライラ」や「ストレス」をどれくらい感じたか(10 段階評価)と 選んだ数字の理由 ・眠気の状態(10 段階評価)と選んだ数字の理由 ・運転にどのくらい集中していたか(10 段階評価)と選んだ数字の理由 ・運転中ぼんやりとしたことがあるか(10 段階評価)と選んだ数字の理由

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3.2 交通流特性と車両挙動の把握 3.2.1 分析方針 本研究では,高密度交通流を対象として,ACC 車両混在比率の違いによる交通流の特性を把 握する.具体的には,各区間(中央道区間・山陽道区間・高松道区間)で速度コンター図(図 3.2~3.10)を作成し,各区間の減速波の発生伝播状況を読み取る.また,各区間で交通流率 を算出し,混在比率パターン間で比較して,交通流率に違いが出た要因を,速度コンター図か ら考察する.速度コンター図から原因を特定できない場合,車頭距離と空間平均速度から考察 する.ここで,速度コンター図とは,各車両の地点速度を計算することで描画される等速度線 を Time-Space 図に重畳した図である. 次に,個々の車両挙動に着目して,ACC 車両混在比率の違いによる影響を把握する.具体的 には,各区間でコンフリクト指標の 1 つである PICUD を算出し,各車両の潜在的な追突事故リ スクを評価する. 3.2.2 減速波の発生伝播状況 各区間での減速波の発生伝播状況と減速波が発生した要因を作成した速度コンター図から 読み取り,混在比率パターン間で比較し,考察する. (1)中央道区間における減速波の発生伝播状況 中央道区間における p1 の速度コンター図を図 3.2 に,p2 の速度コンター図を図 3.4 に,p3 の速度コンター図を図 3.5 に示す. 図 3.2 p1(混在率 0%)の速度コンター図(中央道区間)

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次に渋滞発生の起点となる減速波の上流増幅伝播に着目する.図 3.3 と図 3.4 の 0.1~0.5kp では,上述のような速度低下や車頭距離の増加がほとんど見られず,図 3.2 の①のような低速 域が発生していないことが読み取れる.

図 3.3 p2(混在率 50%)の速度コンター図(中央道区間)

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また,図 3.2 から,ID2 が 1.2kp 付近のサグ部下り坂において,車頭距離が大きい状態で減 速している.ID3 以降の車両が車頭距離を維持して追従しているため,反応遅れにより 1.2kp 付近において ID15 が 40 ㎞/h まで減速し,1.1kp 付近で ID20 が 20km/h まで減速している.以 上より,ID2 の減速が起点となり,②の減速波の上流増幅伝播が起こったと考えられる.一方, 図 3.3 において,区間全体で ID8 の車頭距離が大きく,0.9~1.1kp にかけて 100km/h から 60 ㎞/h まで減速している.しかし,ID9 以降の ACC 車両が前方車両の減速に対し,遅れなく緩 やかに反応し,車頭距離を維持して追従しているため,後続車両に減速は伝播するものの減速 の増幅は見られない.結果として,図 3.3 では低速走行が長く続いて,③のように減速波が下 流に伝播している. 以上を纏めると,ACC 車両は前方車両の減速に対し,遅れなく緩やかに反応し,これが ACC 車両に追従する MD 車両も急ブレーキにも影響するため,ACC 車両の混在比率増加によって,低 速域の発生,減速波の上流増幅伝播が抑制されると考えられる.ただし,ACC 車両の混在比率 が上昇しても,車両の減速が生じやすいサグ部を有する中央道区間において,高密度の交通流 では減速波が伝わり,また,減速波は下流に伝播することが確認された. (2)山陽道区間における減速波の発生伝播状況 山陽道区間における p1 の速度コンター図を図 3.5 に,p2 の速度コンター図を図 3.6 に,p3 の速度コンター図を図 3.7 に示す.これらの図から,区間全体で減速波が発生している状況は 読み取れない.この山陽道区間は上り勾配を有するものの,平面曲線は緩やかであり,高速で 走りやすい区間であったため,どの混在比率パターンにおいても減速波は発生しなかったと考 えられる.

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図 3.6 p5(混在率 50%)の速度コンター図(山陽道区間)

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(3)高松道区間における減速波の発生伝播状況 高松道区間における p1 の速度コンター図を図 3.8 に,p2 の速度コンター図を図 3.9 に,p3 の速度コンター図を図 3.10 に示す. 図 3.8 p7(混在率 0%)の速度コンター図(高松道区間) まず,図 3.8 では,④のような減速波の上流増幅伝播が起こっており, 8.2kp 付近では ID24 が 10 ㎞/h 以下にまで減速している.減速波④について時間をさかのぼってみると, 8.8kp 付 近で ID4~7 の車両が車頭距離を維持して追従しており,ID6 は 40 ㎞/h まで速度が低下してい る.しかし,ID8 以降の車頭距離が大きい状態で追従している車両が多くみられるため,ID4~ 7 が起点となり,減速波④が伝わったと考えにくい.さらに時間をさかのぼってみると,先頭 車群 ID16~20 が 9.0kp 付近の急カーブ手前において強い減速を伴っており,70 ㎞/h から 40 ㎞/h まで減速している.ここでの急減速が起点となり,④の減速波の上流増幅伝播が起こった と考えられる. 図 3.9 では,8.7kp 付近の急カーブ手前で先頭車群 ID16~20 が 100 ㎞/h から 60 ㎞/h まで減 速しており,強い減速が起こっているが,ACC 車両の前方車両の減速に対し,遅れなく緩やか に反応するという特性により,車頭距離を維持して追従しているため,後方車両に減速は伝播 するものの減速の増幅は見られない.結果として,低速走行が長く続いて,⑤のように減速波 が下流に伝播したと考えられる. 図 3.10 においても,図 3.9 と同様に,ACC 車両の混在により,減速波が下流に伝播している

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図 3.9 p8(混在率 50%)の速度コンター図(高松道区間)

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3.2.3 交通流率の変動の把握 各区間で交通流率を算出し,混在比率パターン間で比較する.交通流率に違いが出た要因を 速度コンター図から読み取る.速度コンター図から要因を特定できない場合,各区間で車頭距 離と空間平均速度を算出し,交通流率に違いが出た要因を考察する.ここで,本研究では,車 頭距離をその定義に基づき,車間距離と前方車両の車長の和により算出する.また,空間平均 速度を地点速度の調和平均値を求めることにより算出する. (1)交通流率の算出 本研究では,交通流率をその定義に基づき次の式(3-1)により算出する(図 3.11). (3-1) ここに; 𝑞𝑞𝑥𝑥:地点𝑥𝑥での交通流率 [台/h](1 車線あたり) 𝑁𝑁𝑥𝑥:地点𝑥𝑥を通過した車両台数 [台] 𝑡𝑡𝑛𝑛,𝑥𝑥:地点𝑥𝑥において,𝑛𝑛台目の車両か通過した時刻 [s] 𝑡𝑡0,𝑥𝑥:先頭車群の最後尾の車両の通過時刻 [s] 図 3.11 交通流率の定義 各混在比率パターンについて,0.5kp おきに交通流率を算出した結果を図 3.12 に示す.中央 道区間の 0~0.5kp や高松道区間の 7.0~8.5kp において,p1 の交通流率が大きく低下している ことが読み取れる.全体としては,p1 の交通流率のほうが p2 や p3 の交通流率よりも低下する ことが読み取れる.また,高松道区間の 8.5~9.0kp において,p3 の交通流率が大きく上昇し ており,同じ混在比率 50%であっても交通流の違いによって p2 と p3 で交通流率の変動に違い があらわれた.

・・・

・・・

1台目

台目

地点

台目

先頭車群の最後尾

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(2)中央道区間における交通流率 中央道区間における交通流率の推移を縦断線形図と合わせて図 3.13 に示す.この図から, サグ部の下り坂勾配である 0~1.0kp において、全てのパターンで交通流率が低下しているが, 特に p1 では,他の混在比率パターンに比べて大きく交通流率が低下している.p1 と p2 では, サグ部の下り坂勾配である 1.5kp より前に交通流率が一度低下して,サグ部の上り坂勾配であ る 1.5~3.0kp において上昇しているが,p3 では,そのような変化は見られない. そこで,中央道区間における速度コンター図(図 3.2~図 3.4)を参照すると,図 3.2 より, 0~0.2kp において,ID15 の車頭距離が増加し,70 ㎞/h まで減速している.ID16 以降の車両で は,特に 0.5~0.7kp において,ID23~ID28 にかけて車頭距離が増加して,減速しているのが 読み取れる.以上より,p1 では,0~1.0kp において,交通流率が大きく低下していると考えら れる. 図 3.3 から,1.0kp 付近で,ID8,ID24,ID29(いずれも MD 車両)の車頭距離が増加して減 速していることが確認できる.以上より,p2 では,0~1.5kp で交通流率の低下が見られる.し かし,p2 において,0~1.5kp では ID8,ID24,ID29 以外の車両が車頭距離を維持して走行して いるのが確認できる.これは,ACC 車両が前方車両との車間距離を自動的に調節するため,ACC 車両の混在により,車頭距離が増加する車両が p1 よりも減少したためであると考えられる.以 上より,p2 の交通流率は,p1 の交通流率ほど低下しなかったと考えられる. 一方,図 3.4 から,1.0kp 付近で ID11 の車頭距離が増加して減速しているが,その他の車両 は,車頭距離を維持して追従していることが確認できる.したがって,0~1.5kp において p3 の交通流率は,p2 の交通流率ほど低下しなかったと考えられる. このように,同じ混在比率 50%でも,交通流率に違いが生じた要因として,MD 車両を運転 する個々のドライバーの挙動が交通流に影響したと考えられる.以上より,高密度交通流を対 象としたとき,交通流率が低下しやすいサグ部を有する中央道区間において,ACC 車両の混在 比率が 50%のとき,交通流率の低下が抑えられると考えられる. 図 3.13 中央道区間における交通流率の推移

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(3)山陽道区間における交通流率 山陽道区間における交通流率の推移を縦断線形図と合わせて図 3.14 に示す.この図から, 5.0~6.0kp において,全パターンで交通流率がわずかに低下している.また,7.0kp 以降の下 り坂勾配で p1 の交通流率が大きく低下している. そこで,山陽道区間における速度コンター図(図 3.5~図 3.7)を参照する.いずれの場合 も 5.0~6.0kp において速度低下が起こっている箇所や,車頭距離が増加した車両が存在せず, 速度コンター図からは原因を特定することはできない.また,図 3.5 から,7.0kp 付近におい て減速している車両が複数見られる.しかし,どの車両も車頭距離を維持して減速しており, 複数の車両の減速により交通流率が低下したとは考えにくい.

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そこで,山陽道区間において,車頭距離と空間平均速度を算出し,交通流率の変動の考察を 行う.山陽道区間における車頭距離と空間平均速度を,交通流率の推移とともに図 3.14 に示 す.5.0~6.0kp において,空間平均速度と車頭距離を参照すると,p1 と p3 では車頭距離の増 加,p2 では空間平均速度の低下が原因で交通流率が低下したと考えられる.また,7.0~8.0kp では,p1 の車頭距離が大きく増加したため,p1 の交通流率が大きく低下したと考えられる. 以上より,山陽道区間においては,4.0~7.0kp では上り勾配であるが,中央道区間や高松道 区間に比べ,比較的高速で走行できる区間であるため,全ての混在比率パターンで減速を強い られている箇所はなく,混在比率の違いによって交通流率に差は見られなかったと考えられる. しかし,7.0~8.0kp では,下り勾配であり,車両が加速し,車間を開けて走行する箇所となる ため,混在比率 0%では交通流率が低下する.一方,混在比率 50%では,ACC 車両の混在により, 車間を維持して走行する車両が増加するため,交通流率の低下が抑制されると考えられる. (4)高松道区間における交通流率 高松道区間における交通流率の推移を平面線形図と合わせて図 3.15 に示す.この図から, カーブ手前の 7.0~8.5kp において,p1 の交通流率が大きく低下している.また,カーブ直前 の 8.5~9.0kp において,p3 の交通流率が上昇している. そこで,高松道区間における速度コンター図(図 3.8~図 3.10)を参照する.図 3.8 から, 8.0~8.5kp において減速波④が存在し,ほとんどの車両が 100km/h から 40km/h にまで短時間 で減速していることが読み取れるため,8.0~8.5kp において p1 の交通流率が大きく低下した と考えられる. また,図 3.10 から,9.0kp 付近においてほとんどの車両の車頭距離が減少していることが読 み取れる.また,ほとんどの車両が 100km/h から 50km/h にまで緩やかに減速している.ACC 車 両は前方車両の加減速に対して遅れることなく緩やかに反応して追従するという効果により, 多くの車両がカーブ直前の減速箇所において,緩やかに減速し,かつ,車頭距離を維持して追 従していることが確認できる.その結果,交通密度が増加し,p3 の交通流率が上昇したと考え られる.したがって,高密度交通流を対象としたとき,カーブ直前の減速箇所で ACC 車両の混 在比率が上昇することによって,交通密度が増加し,交通流率が上昇することが確認できた. 図 3.15 高松道区間における交通流率の推移

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3.2.4 コンフリクト指標を用いた安全性評価 (1)評価指標と評価方針 本研究では,各車両の潜在的な追突事故リスクを評価するため,コンフリクト指標の 1 つで ある PICUD を基に考察を行う.PICUD16)は,式(3-2)で定義され,前方車両が仮に急減速した場 合に,後続車両が反応遅れを伴い急減速して,両者が停車したときの相対的な位置を表すコン フリクト指標である.PICUD が負値となる場合は,前方車両の急減速に対して,後続車両が急 減速しても衝突を回避できない可能性を示す. (3-2) ここに; 𝑉𝑉1:前方車両の減速開始時の速度 [km/h] 𝑉𝑉2:前方車両の減速開始時の後続車両の速度 [km/h] 𝑠𝑠0:前方車両の減速開始時の車間距離 [m] ∆𝑡𝑡:反応遅れ時間 [s] 𝑎𝑎:減速時の加速度 [m/s2] 各パターンについて,0.02kp おきに PICUD を算出する.ここで,反応遅れ時間∆𝑡𝑡,減速時の 加速度𝑎𝑎は,既往研究18)にならい,∆𝑡𝑡 = 1 [s],𝑎𝑎 = 3.3 [m/s2]とした. さらに,各地点について, PICUD が負値となった車両の全車両に対する割合を負値 PICUD 検 出率として算出し,これをパターン間で比較する.すなわち,ある地点で負値 PICUD 検出率が 高いことは,その地点において追突事故リスクが潜在的に高いことを表している. (2)中央道区間における負値 PICUD 検出率 まず,中央道区間(1.0~3.0kp)における,各混在比率パターンの負値 PICUD 検出率を図 3.16 に示す. 図 3.16 中央道区間(1.0~3.0kp)における負値 PICUD 検出率 図 3.16 から,全体的に p1 で負値 PICUD 検出率が高いことが確認できる.また,1.0kp 付近 で p2 の検出率が高く,1.1kp 付近で p3 の検出率が高いことが確認できる. ここで,ACC 車両は前方車両の減速に対し,遅れなく緩やかに減速するため,その後続車両 が MD 車両であっても緩やかに減速する.したがって,ACC 車両に追従する MD 車両も反応遅れ は小さくなり,負値 PICUD 検出率は低くなると考えられる.しかし,本研究では,混在比率 50% のときでも高い検出率が確認されたため, p2 では 1.0kp 付近を対象に,p3 では 1.1kp 付近を 対象に前方が ACC 車両,後続が MD 車両という組み合わせの車両の挙動に着目し,上記結果が得

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減速に対し,3 秒ほど遅れて ID21(MD 車両)が減速を開始していることが読み取れる.この間, ID21 の ID20 に対する相対速度は増加し,かつ,ID21 の車頭距離が低下している.その結果, PICUD が急激に低下して,114 秒(0.9kp)付近で負値となることが確認できる.前方車両が ACC 車両であるにもかかわらず,ID21 が前方車両の減速に対し,反応遅れを伴った要因として,前 方車両が ACC 車両であるかということ,あるいは,ACC 車両であることがわかっても,ACC 車両 がどのような挙動をするのかということが後続車両はわからない可能性がある.そのため,ID21 は前方車両が MD 車両の挙動をするという想定で走行すると,ACC 車両の緩やかな減速に気づか ないので,後続車両の減速開始が遅れたと考えられる.また,本実験では,ACC 車両減速時に ブレーキランプが点灯しない仕様であったこともあり,より ACC 車両の緩やかな減速に気付か なかったと考えられる.以上より,減速や車間距離の変動が激しい高密度交通流において,p2 の ID21 の挙動をする車両が存在したために,追突事故リスクが高まったと考えられる. 図 3.17 中央道区間における p2 の車両挙動と PICUD 次に,p3 の 0.9~1.3kp を対象として,ID27(ACC 車両)と ID28(MD 車両)の車両挙動に着 目する.図 3.18 に p3 の ID28 とその前方車両の Time-Space 図,および速度と PICUD の推移示 す.ID27(ACC 車両)が 133 秒(1.0~1.1kp)付近で減速を開始し,ID28(MD 車両)が前方車 両の減速に対してほとんど遅れることなく減速しているが,135 秒(1.0~1.1kp)付近で PICUD が負値となっている.Time Space 図から,127~147s 頃まで ID28 の車頭距離が小さい状態であ る.速度と PICUD の関係から,ID28 が減速しているところで,PICUD が負値となっているので, 車頭距離が小さい状態の走行が,PICUD が負値となった原因と考えられる.このように,前方 車両が ACC 車両の場合でも,高密度交通流では,車間を詰めて走行すれば,減速した箇所で PICUD が負値となりうる.

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p2 の ID21 の事例は他に,p2 の ID17 でも確認され,p2 で PICUD が負値となった車両の 25% を占めている.また,p3 の ID28 の事例は他に,p2 の ID14,ID19,ID27,p3 の ID6,ID13,ID18, ID25 でも確認され,p2 で PICUD の値が負値となった車両の 38%,p3 で PICUD の値が負値とな った車両の 83%を占めている. したがって,中央道区間において混在比率 50%で負値 PICUD 検出率が高くなった要因として, 高密度交通流において車間を詰めて走行した車両が多いことが挙げられる. (3)山陽道区間における負値 PICUD 検出率 次に,山陽道区間(5.0~7.0kp)における,各混在比率パターンの負値 PICUD 検出率を図 3.19 に示す.図 3-18 から,区間全体で p1 の負値 PICUD 検出率が高く,特に 6.6~6.7kp 付近にお いて検出率が高くなることが確認できる.しかし,中央道区間や高松道区間に比べて検出率が 低いことが確認できる. 図 3.19 山陽道区間(5.0~7.0kp)における負値 PICUD 検出率 (4)高松道区間における負値 PICUD 検出率 高松道区間(7.0~10.0kp)における負値 PICUD 検出率を図 3.20 に示す. 図 3.20 高松道区間(7.0~10.0kp)における負値 PICUD 検出率 図 3.20 から,全体的に p1 で負値 PICUD 検出率が高いことが確認できる.また,8.35kp 付近 で p2 の検出率が高く,8.7kp 付近で p3 の検出率が高いことが確認できる.高松道区間におい ても,混在比率 50%のときに高い検出率が確認されたため,中央道区間のときと同様に,高い

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する.ID13(ACC 車両)が 381 秒(8.3kp)付近で減速を開始し,多少の遅れはあるが,ID14(MD 車両)が前方車両の減速に対してほとんど遅れることなく減速を開始しているが,381 秒(8.3kp) 付近で PICUD が負値となっている.Time Space 図から,376~391s 頃まで ID14 の車頭距離が小 さい状態である.速度と PICUD の関係から,ID14 が減速している間に,PICUD が負値となって いるので,車頭距離が小さい状態の走行が,PICUD が負値となった原因と考えられる.

図 3.21 高松道区間における p2 の車両挙動と PICUD

次に,p3 の 8.5~8.9kp を対象として,ID15(ACC 車両)と ID16(MD 車両)の車両挙動に着 目する.図 3.22 に p3 の ID16 とその前方車両の Time-Space 図,および速度と PICUD の推移を 示す.ID15(ACC 車両)が 402 秒(8.6~8.7kp)付近で減速を開始し,前方車両の減速に対し, 5 秒ほど遅れて ID16(MD 車両)が減速を開始していることが読み取れる.この間,ID16 の ID15 に対する相対速度は増加し,かつ,ID16 の車頭距離が低下している.その結果,PICUD が急激 に低下して,404 秒(8.6kp)付近で負値となることが確認できる.後続車両の減速が遅れた要 因として,8.7kp 付近は急カーブ手前で,前方車両である ACC 車両が緩やかに減速し,後続車 両が減速に気づかなかったためであると考えられる.また,8.7kp より前から,ID16 が ID15 との車間を詰めようとして追い上げてきていることが読み取れる.ACC 車両は,フォローイン グ状態では前方車両との車間が開くと,一定の車間にまで詰めようと制御が働くが,MD 車両は, ドライバーが車間を詰めようとはしない限り,前方車両との車間は開いてしまう.ID16 が追い 上げているときに,ID15 の減速が始まったことで,より前方車両の減速に気づかなくなったと 考えられる. 図 3.22 高松道区間における p3 の車両挙動と PICUD

表 1.2  SIP 大規模実証実験の概要 6) 試験場所  試験内容  高速道路  ・  カーブなど様々な走路環境でのダイナミック・マップの有効性,精 度検証(車線レベル位置参照手法を考慮した動的情報の利用方法の 検討を含む)  ・  車車間通信による分合流部走行支援に係る実証  ・  2~3 時間(200~300km)連続走行時のドライバー状態検証等  一般道  ・  次世代都市交通システム試作車を用いた走行検証  ・  公共車両優先システム(PTPS)を用いた機能検証  ・  インフラ等より提供される
図 2.2  道路線形図(3〜11km の範囲)  2.1.2 ACC 車両の混在比率が異なる交通流の再現  被験者として運転免許を保有する学生 32 名に高速道路の模擬走行をしてもらった.再現し た交通流を図 2.3 に示す.これはコースの 6~7km の部分を表している.縦軸を走行位置(kp) , 横軸を実験開始からの経過時刻として,先頭車群を含む各車両の軌跡を描画した図に,各車両 の地点速度から算出される等速度線を重畳した図である. 車両軌跡の線が途切れている場合は, その地点で車両が車線変更をしたこ
図 2.3  ACC 車両の混在比率 0%(上)と 50%(下)の速度コンター図
図 2.7  運転時の風景等の項目  (2)走行中の対象物に対する平均注視時間(車両別比較)  アイカメラデータより,対象物ごとに対する平均の注視時間を算出した.その注視時間を ACC 車両運転時と MD 車両運転時で比較を行った.有意差,有意傾向が認められた項目を図 2.8 に 示す.注視回数と同様,有意差,有意傾向が認められた項目はメーター,カーブ先,左風景, 右風景となっている.  図 2.8  走行中の対象物に対する平均注視時間(ACC と MD の比較) 左風景 右風景前方車両追越車両
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