第 3 章 ACC 車両が混在する高密度交通流の特性
3.2 交通流特性と車両挙動の把握
3.2.4 コンフリクト指標を用いた安全性評価
減速に対し,3秒ほど遅れてID21(MD車両)が減速を開始していることが読み取れる.この間,
ID21のID20に対する相対速度は増加し,かつ,ID21の車頭距離が低下している.その結果,
PICUDが急激に低下して,114秒(0.9kp)付近で負値となることが確認できる.前方車両がACC
車両であるにもかかわらず,ID21が前方車両の減速に対し,反応遅れを伴った要因として,前 方車両がACC車両であるかということ,あるいは,ACC車両であることがわかっても,ACC車両 がどのような挙動をするのかということが後続車両はわからない可能性がある.そのため,ID21 は前方車両がMD車両の挙動をするという想定で走行すると,ACC車両の緩やかな減速に気づか ないので,後続車両の減速開始が遅れたと考えられる.また,本実験では,ACC 車両減速時に ブレーキランプが点灯しない仕様であったこともあり,よりACC車両の緩やかな減速に気付か なかったと考えられる.以上より,減速や車間距離の変動が激しい高密度交通流において,p2 のID21の挙動をする車両が存在したために,追突事故リスクが高まったと考えられる.
図3.17 中央道区間におけるp2の車両挙動とPICUD
次に,p3の0.9~1.3kpを対象として,ID27(ACC車両)とID28(MD車両)の車両挙動に着 目する.図3.18にp3のID28とその前方車両のTime-Space図,および速度とPICUDの推移示 す.ID27(ACC車両)が133秒(1.0~1.1kp)付近で減速を開始し,ID28(MD車両)が前方車 両の減速に対してほとんど遅れることなく減速しているが,135秒(1.0~1.1kp)付近でPICUD が負値となっている.Time Space図から,127~147s頃までID28の車頭距離が小さい状態であ る.速度とPICUDの関係から,ID28が減速しているところで,PICUDが負値となっているので,
車頭距離が小さい状態の走行が,PICUD が負値となった原因と考えられる.このように,前方 車両がACC車両の場合でも,高密度交通流では,車間を詰めて走行すれば,減速した箇所でPICUD が負値となりうる.
図3.18 中央道区間におけるp3の車両挙動とPICUD
p2のID21の事例は他に,p2のID17でも確認され,p2でPICUDが負値となった車両の25%
を占めている.また,p3のID28の事例は他に,p2のID14,ID19,ID27,p3のID6,ID13,ID18,
ID25でも確認され,p2でPICUDの値が負値となった車両の38%,p3でPICUDの値が負値とな った車両の83%を占めている.
したがって,中央道区間において混在比率50%で負値PICUD検出率が高くなった要因として,
高密度交通流において車間を詰めて走行した車両が多いことが挙げられる.
(3)山陽道区間における負値PICUD検出率
次に,山陽道区間(5.0~7.0kp)における,各混在比率パターンの負値PICUD検出率を図3.19 に示す.図 3-18から,区間全体でp1の負値PICUD検出率が高く,特に6.6~6.7kp 付近にお いて検出率が高くなることが確認できる.しかし,中央道区間や高松道区間に比べて検出率が 低いことが確認できる.
図3.19 山陽道区間(5.0~7.0kp)における負値PICUD検出率
(4)高松道区間における負値PICUD検出率
高松道区間(7.0~10.0kp)における負値PICUD検出率を図3.20に示す.
図3.20 高松道区間(7.0~10.0kp)における負値PICUD検出率
図3.20から,全体的にp1で負値PICUD検出率が高いことが確認できる.また,8.35kp付近 で p2の検出率が高く,8.7kp付近でp3の検出率が高いことが確認できる.高松道区間におい ても,混在比率 50%のときに高い検出率が確認されたため,中央道区間のときと同様に,高い
する.ID13(ACC車両)が381秒(8.3kp)付近で減速を開始し,多少の遅れはあるが,ID14(MD 車両)が前方車両の減速に対してほとんど遅れることなく減速を開始しているが,381秒(8.3kp)
付近でPICUDが負値となっている.Time Space図から,376~391s頃までID14の車頭距離が小 さい状態である.速度とPICUDの関係から,ID14が減速している間に,PICUDが負値となって いるので,車頭距離が小さい状態の走行が,PICUDが負値となった原因と考えられる.
図3.21 高松道区間におけるp2の車両挙動とPICUD
次に,p3の8.5~8.9kpを対象として,ID15(ACC車両)とID16(MD車両)の車両挙動に着 目する.図3.22にp3のID16とその前方車両のTime-Space図,および速度とPICUDの推移を 示す.ID15(ACC車両)が402秒(8.6~8.7kp)付近で減速を開始し,前方車両の減速に対し,
5秒ほど遅れてID16(MD車両)が減速を開始していることが読み取れる.この間,ID16のID15 に対する相対速度は増加し,かつ,ID16の車頭距離が低下している.その結果,PICUDが急激 に低下して,404秒(8.6kp)付近で負値となることが確認できる.後続車両の減速が遅れた要 因として,8.7kp付近は急カーブ手前で,前方車両であるACC 車両が緩やかに減速し,後続車 両が減速に気づかなかったためであると考えられる.また,8.7kp より前から,ID16 が ID15 との車間を詰めようとして追い上げてきていることが読み取れる.ACC 車両は,フォローイン グ状態では前方車両との車間が開くと,一定の車間にまで詰めようと制御が働くが,MD車両は,
ドライバーが車間を詰めようとはしない限り,前方車両との車間は開いてしまう.ID16が追い 上げているときに,ID15の減速が始まったことで,より前方車両の減速に気づかなくなったと 考えられる.
図3.22 高松道区間におけるp3の車両挙動とPICUD
p2 のID14の事例は他に,p2のID7,ID17,p3のID6,ID9でも確認され,p2とp3ともに PICUDが負値となった車両の29%を占めている.また,p3のID16の事例は他に,p2のID21,
ID24,p3のID6,ID13,ID20でも確認され,p2でPICUDの値が負値となった車両の29%,p3
でPICUDの値が負値となった車両の43%を占めている.
したがって,高松道区間において混在比率50%で負値PICUD検出率が高くなった要因として,
高密度交通流において車間を詰めて走行した車両や,ACC 車両の減速に気付かず反応遅れが生 じた車両が存在したことが挙げられる.