『日本福祉大学社会福祉論集』第 142 号 2020 年 3 月 要 旨 本研究は,消滅可能性都市として指摘されている南知多町の人口流出を防ぐための方 策や人口を増やすことを検討するために,住民意識調査や専門職の意識調査を分析し, 現在,計画内容が検討されている地域福祉計画の策定に寄与できることを目指してい る. 分析結果より,30 歳代および 50 歳代以上の住民には「南知多町に住み続けたい」と 考える人の割合が高いことに比べ,40 歳代の住民は,「南知多町に住み続けたい」と考 える人の割合は低い傾向にあり,その理由として仕事,医療・福祉の面での課題がみら れた. また,住民と専門職の間には学校統廃合の意識に差があった.住民は,学校統廃合に は現状維持を求める意見が約 5 割であることに対し,専門職は,現状維持したほうがよ いと考える意見は約 3 割であった.先行研究では,人口を減少させない方策として,小 中高校の存続に力を注ぐことであると述べられている.このまま学校統廃合を進めて いった場合,さらに人口流出が加速する可能性がある。 これらの分析をふまえ,地域福祉計画を策定していくためには,「専門職参加」「行政 職員参加」だけでなく「住民参加」が必須であり,住民をいかに巻き込むことができる か鍵となることが考察された. キーワード:地域共生社会,人口減少地域,消滅可能性都市,住民意識,専門職意識
1.はじめに
わが国では,少子高齢社会に加え,人口減少社会が深刻な問題となっており,今後,社会保 障,財政,経済にも大きく影響することが予想される.わが国全体の経済・社会の存続の危機を人口減少地域(消滅可能性都市)における人口対策の検討
住民・専門職の年歳別(30 ~ 50 歳代)意識の比較から
末 永 和 也
大 林 由美子
社会福祉論集 第 142 号 乗り越えるためには,ひとつひとつの地域の力を強化し,その持続可能性を高めていくことが必 要であり,福祉の領域を超えた地域全体が直面する課題を改めて直視することが必要であるとさ れている.地域における住民主体の課題解決力を強化すること,各自治体は包括的な支援体制を 構築することが求められている. 本研究は,先行研究「人口減少社会(消滅可能性都市)における人口対策の検討」(大林・末 永 2019)1)の継続研究である.明らかとなった南知多町での人口を減少させない方策としては, 小中高校の存続に力を注ぐこと(松本 2015:7-8),女性の視点や意見を生かした政策を検討す ること(萩原 2016;相藤 2017:101),今地域にある資源を有効活用すること,国の政策動向を 踏まえた都道府県,市町村が施策等に積極的に取り組むことであった(嵩 2017).移住してもら える魅力的な町にするためには,今住んでいる住民が「住み続けたい」と思える町をつくり,住 民が魅力を発信できることが有効であった(嵩 2017).とくに,小学校を維持できないようにな ると,自治体の存続は危うくなると述べられていることは(松本 2015:7-8),学校統廃合を検 討している南知多町にとって注目・共有すべき内容であった. また,質問紙調査結果の分析により,南知多町の 30 歳代,50 歳代の住民は「南知多町に住み 続けたい」と考える人が約 7 割,60 歳代以上では 9 割前後に対し,40 歳代は 5 割弱と他の年代 よりも少ない傾向がみられた. 本研究ではさらなる分析をすすめ,40 歳代のとらえる「住みにくさ」を明らかにし,その課 題を解決することにより,転出者を防ぐことができるのではないか,また,30 歳代と 50 歳代以 上の「南知多町に住み続けたい」理由を分析することにより,転入者を増やすために生かすこと ができるのではないかと考えている.本研究の対象である南知多町は,今後,地域福祉計画の策 定を進めることが決まっており,地域の課題解決のための計画立案に寄与できればと考えてい る. (1)住民参加の地域福祉計画について 2002 年に厚生労働省社会保障審議会福祉部会は,「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉 支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」を公表し,地域福祉計 画の立案には,住民参加が必要であることを強調した.つまり,地域での生活者の視点から地域 の特性を活かした地域福祉の推進について,活発な議論が行われることが期待された(厚生労働 省社会保障審議会福祉部会:2002). 2018 年の社会福祉法の改正により,地域福祉計画は努力義務規定ではあるものの分野別計画 の上位計画として位置づけられた.また法律では,地域における高齢者の福祉,障害者の福祉, 児童の福祉,その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項が加えられている.地域福祉計画 の立案には,住民参加に加え,包括的支援体制を構築していくために,専門職参加と市町村の行 政職員等の参加も求められている(原田 2018:26).
(2)研究の目的 本研究は,消滅可能性都市2)として指摘されている南知多町の人口流出を防ぐための方策や人 口を増やすことを検討することである.本研究の対象である南知多町は,地域福祉計画が未策定 であり,計画策定に向けて南知多町および南知多町社会福祉協議会と連携した合同事務局が発足 している.住民意識調査や専門職意識調査を分析することは,それぞれがとらえる課題を明らか にすることができ,住民参加の計画立案につながる可能性がある.本研究で明らかとなった地域 課題を解決させるため,地域福祉計画の策定に寄与できることを目指している.
2.研究方法
(1)分析方法 本研究では,以下の 2 つの質問紙調査の分析をおこなった. 1)南知多町住民意識調査報告書の分析 南知多町は,2015 年度に『第 6 次南知多町総合計画』の計画期間(11 年間)の中間年度を迎 えることから,地域住民の意識やニーズ,満足度の変化を把握するために住民意識調査をおこ なった.調査時期は 2014 年 8 月に実施し,南知多町在住の 18 歳以上の男女を対象に無作為に抽 出している.1,500 件に質問紙を郵送し,回収数 562 件のうち有効回収数は 559 件(回収率 37.3%)であった.南知多町のホームページには,この住民意識調査報告書が掲示されており, その報告書をさらに分析した. 2)南知多町住民意識調査と同様の質問紙を用いて実施した専門職の意識調査の分析 南知多町の専門職に対して,『南知多町住民意識調査』と同様の質問紙を用いて,意識調査を おこなった3).専門職を対象に 125 件を配布した.有効回収数は 70 件(回収率 56.0%)であった. (2)倫理的配慮 調査協力者には,研究目的,方法,個人情報の保護等について口頭や書面で説明したうえで, 協力の同意を得た. 南知多町住民意識調査報告書に掲載されている調査票の使用については,研究の目的,方法, 調査対象,個人情報の保護等について,南知多町に対して文書および口頭で説明を行い,許可を 得ている.3.結果
ここでは,「南知多町住民意識調査」「専門職を対象におこなった意識調査」の 2 つの分析結果社会福祉論集 第 142 号 について述べる. (1)住民意識調査結果 図 1 は,南知多町での居住意向を年齢別に示している.30 歳代と 50 歳代は,住み続けたい割 合が約 7 割となっているが,40 歳代は約 5 割を切っている.町外に移り住みたい割合について も,30 歳代と 50 歳代は約 2 割であることに対し,40 歳代は約 3 割であった.30 歳代と 50 歳代 に同様の傾向がみられるなかで,40 歳代の傾向に違いがあった. 図 1 南知多町での居住意向(出典:南知多町住民意識調査報告書)
行い、許可を得ている。
3.結果
ここでは、「南知多町住民意識調査」「専門職を対象におこなった意識調査」の つの分
析結果について述べていきたい。
(1)住民意識調査結果
図 は、南知多町での居住意向を年齢別に示している。 歳代と 歳代は、住み続け
たい割合が約 割となっているが、 歳代は約 割を切っている。町外に移り住みたい割
合についても、 歳代と 歳代は約 割であることに対し、 歳代は約 割であった。
歳代と 歳代に同様の傾向がみられるなかで、 歳代の傾向に違いがあった。
図1 南知多町での居住意向(出典:南知多町住民意識調査報告書)
表1は、南知多町に住み続けたい理由について、 歳代~ 歳代別に示している。
歳代は 歳代と 歳代に比べて、「自然豊かな住環境」「 地元で採れる豊かな農・海
産物」「先祖代々の住み慣れた土地だから」の割合が低かった。南知多町の自然豊かな住
環境や豊かな農・海産物が南知多町の強みであるが、 歳代はその強みが住み続けたい理
由に結びつけた人が 歳代、 歳代よりも少なかった。
表 1 は,南知多町に住み続けたい理由について,30 歳代~ 50 歳代別に示している.40 歳代は 30 歳代と 50 歳代に比べて,「自然豊かな住環境」「地元で採れる豊かな農・海産物」「先祖代々 の住み慣れた土地だから」の割合が低かった.南知多町の自然豊かな住環境や豊かな農・海産物 が南知多町の強みであるが,40 歳代はその強みを住み続けたい理由に結びつけた人が 30 歳代, 50 歳代よりも少なかった.表 1 南知多町に住み続けたい理由(筆者作成) 30 歳代 (n=51) 40 歳代 (n=62) 50 歳代 (n=81) 自然豊かな住環境 41.2% 17.7% 42.0% 歴史文化や伝統行事がある 2.0% 0.0% 4.9% 地元で採れる豊かな農・海産物 33.3% 12.9% 27.2% 電車や高速道路などの広域からの交通アクセスがよい 0.0% 3.2% 0.0% 地域の助け合いが残っている 9.8% 14.5% 22.2% 子育てや教育がしやすい 15.7% 6.5% 3.7% 通勤や仕事の関係 33.3% 17.7% 13.6% 医療,福祉施設が立地している 0.0% 1.6% 1.2% 観光,レジャー施設が豊富 0.0% 0.0% 0.0% 住宅に係るコストが安価 7.8% 6.5% 4.9% 先祖代々の住み慣れた土地だから 27.5% 17.7% 34.6% その他 2.0% 1.6% 3.7% わからない 2.0% 0.0% 1.2% 回答なし 0.0% 1.6% 0.0% 表 2 は,南知多町外に移り住みたい理由について,30 歳代~ 50 歳代別に示している.40 歳代 は 30 歳代と 50 歳代に比べて,「住宅環境が悪い」「買い物など生活の利便が悪い」「行事,近所 づきあいが面倒である」「子どもの教育のことが心配である」「医療,福祉施設が不足している」 の割合が高かった.南知多町の住宅,生活,教育などの環境が整っていないことが理由としてあ がっている. 表 2 町外に移り住みたい理由(筆者作成) 30 歳代 (n=51) 40 歳代 (n=62) 50 歳代 (n=81) 住宅環境が悪い 2.0% 6.5% 0.0% 買い物など生活の利便が悪い 9.8% 19.4% 16.0% 交通の利便性が悪い 7.8% 17.7% 16.0% 行事,近所づきあいが面倒である 3.9% 9.7% 1.2% 子どもの教育のことが心配である 3.9% 6.5% 1.2% 通勤や仕事の関係 3.9% 6.5% 6.2% 医療,福祉施設が不足している 3.9% 8.1% 3.7% スポーツ,レジャー,文化施設が少ない 2.0% 0.0% 3.7% 適当な住宅地が確保できない 0.0% 0.0% 0.0% 将来は町外に生活している家族のところへ行きたい 3.9% 0.0% 2.5% その他 2.0% 6.5% 1.2% わからない 0.0% 0.0% 0.0% 回答なし 0.0% 0.0% 0.0% 図 2 は,南知多町の人口を増やすための方策を年齢別に示している.40 歳代に着目してみる と,「福祉・医療制度の充実」の割合が高くなっていた.表 2 でも,同年代は「医療,福祉施設
社会福祉論集 第 142 号 が不足している」割合が高く,医療・福祉の充実を望んでいることが明らかとなった. 図 2 人口を増やすための方策(出典:南知多町住民意識調査報告書) 療、福祉施設が不足している」割合が高く、医療・福祉の充実を望んでいることが明らか となった。 図2 人口を増やすための方策(出典:南知多町住民意識調査報告書) (2)住民、専門職におこなった調査結果 『南知多町住民意識調査』と同様の質問紙を用い、専門職に対してアンケート調査をお こなった。 図3は、今後の学校の配置に関する対応について、 歳代~ 歳代の住民・専門職別 に示している。 歳代~ 歳代の住民は、「小規模校の長所を生かすために、現状を維持 すべきである」「小学校と中学校の連携を進めるなど小規模校の短所を減らす努力をしな がら、現状を維持したほうがよい」を合わせた割合が約 割( 歳代:、 歳 代:、 歳代:)となっているが、 歳代~ 歳代の専門職は約 割( 歳代:、 歳代:、 歳代:)を切っている。各年歳ともに住民のほ うが現状維持を望む割合が高く、専門職のほうが現状維持を望む割合が低い結果となり、 住民と専門職の意識に差があることが明らかとなった。 (2)専門職におこなった調査結果 『南知多町住民意識調査』と同様の質問紙を用い,専門職に対してアンケート調査をおこなっ た. 図 3 は,今後の学校の配置に関する対応について,30 歳代~ 50 歳代の住民・専門職別に示し ている.30 歳代~ 50 歳代の住民は,「小規模校の長所を生かすために,現状を維持すべきであ る」「小学校と中学校の連携を進めるなど小規模校の短所を減らす努力をしながら,現状を維持 したほうがよい」を合わせた割合が約 5 割(30 歳代:58.9%,40 歳代:51.6%,50 歳代:46.9%) となっているが,30 歳代~ 50 歳代の専門職は約 3 割(30 歳代:36.4%,40 歳代:23.1%,50 歳 代:33.3%)を切っている.各年代ともに住民のほうが現状維持を望む割合が高く,専門職のほ うが現状維持を望む割合が低い結果となり,住民と専門職の意識に差があることが明らかとなっ た.
図 3 学校の配置に関する対応(筆者作成) 図3 学校の配置に関する対応(筆者作成) 図4は、学校の統合のあり方を検討することについて、 歳代~ 歳代の住民・専門 職別に示している。「児童・生徒の通学手段」「学校の配置や位置」「学校施設(教育設 備)の充実」の順に割合が高かった。年歳別、住民・専門職別において、学校の統合のあ り方の検討で配慮すべき点の意識に差がみられる結果となった。 図4 学校の統合のあり方(筆者作成) 図 4 は,学校の統合のあり方を検討することについて,30 歳代~ 50 歳代の住民・専門職別に 示している.「児童・生徒の通学手段」「学校の配置や位置」「学校施設(教育設備)の充実」の 順に割合が高かった.年歳別,住民・専門職別において,学校の統合のあり方の検討で配慮すべ き点の意識に差がみられる結果となった. 図 4 学校の統合のあり方(筆者作成)
社会福祉論集 第 142 号
4.考察
「南知多町住民意識調査」「専門職におこなった調査」の分析結果をふまえて,南知多町が人口 対策をすすめていくうえで必要な「40 歳代の住民意識」「学校統廃合」について考察していく. 40 歳代の住民意識に着目したのは,図 1「南知多町での居住意向」で 30 歳代と 50 歳代に同様の 傾向がみられるなかで,40 歳代の傾向に違いがみられたことが理由である. (1)40 歳代の住民意識について 先行研究では,地域住民,ボランティア,専門職が共通してとらえている南知多町の課題は, 「雇用の機会・雇用の場の創出」「道路・公共交通機関の交通網の整備」であった(大林・末永 2019). 表 1「南知多町に住み続けたい理由」「通勤や仕事の関係」は 17.7% と割合は高かったが,表 2 「町外に移り住みたい理由」「通勤や仕事の関係」は 6.5% と割合は低かった.40 歳代は,通勤や 仕事の関係で住み続けたい意識はあるが,町外に移り住みたい理由は他にもあった. 表 2「町外に移り住みたい理由」図 2「人口を増やすための方策」の分析結果から医療・福祉 の充実を望んでいることが明らかとなり,それが町外に移り住みたい理由につながっていること が示唆される.住民意識調査の自由記述にも,「高齢者が多くなり車がないと医療機関に行けな い.定期的に通えないなどデメリットがある.医療機関がもう少しあってもいいと思う」(40 歳 代女性)との意見が見られた.このことから,医療・福祉の充実と道路・公共交通機関の交通網 の整備は関係しているものと考える.40 歳代は,両親,祖父母が福祉や医療,介護が必要とな ることや子どもを車で送り迎えする機会が多くなってくる年代であり,それが負担となっている 可能性がある.そのため,医療機関や福祉施設の増設,海っ子バスの路線やダイヤの見直し,乗 り合いタクシーの料金や乗船料の負担あるいは補助を検討していくことが必要である. 次に,表 1「南知多町に住み続けたい理由」で,40 歳代は南知多町の強みである豊かな自然環 境と落ち着いた住環境が住み続けたい理由とはなっていなかった.それどころか,その強みが町 外に移り住みたい理由とも関連していた.これは,40 歳代に南知多町の良さが伝わっていない ことが考えられる.その他にも,南知多町の強みとしては,住民が地域の課題を「我が事」とし てとらえる意識の醸成ができており,自ら課題を解決する力が住民にあり,人と人とをつなぎ, 支え合いながら,住民同士で課題を解決している良さがある.これまでも,環境の悪さや利便性 の悪さを住民同士で協力しながら,解決につながる仕組みを作ってきた.その一例として,旅館 の女将同士で集う場があり,そこで共有された悩みは子どもを預ける場がないことで,女将たち が町に働きかけをしたことから,島内に子育て支援センターができるに至っている.南知多町の 強みや表 2「町外に移り住みたい理由」で割合が高い項目について,共有する場がないことが原 因としてあるかもしれない.40 歳代に限る必要はないが,30 ~ 50 歳代が南知多町の強みや課題を共有し,南知多町に住み続けるために必要なことを考えることのできる場や機会をつくってい く必要がある. (2)学校統廃合について 表 3 の南知多町の小中学校をみると,小学校は 6 校,中学校は 5 校と基本的には各地区に 1 校 ずつある. 表 3 南知多町の小中学校(出典:南知多町ホームページ 一部修正) 学校名 通学区域 学校名 通学区域 小学校 内海 内海・山海 中学校 内海 内海・山海 豊浜 豊浜・豊丘 豊浜 豊浜・豊丘 大井 大井・片名(新師崎・黒地を除く) 師崎 大井・片名・師崎 師崎 師崎・片名字新師崎・片名字黒地 篠島 篠島 篠島 篠島 日間賀島 日間賀島 日間賀島 日間賀島 南知多町教育委員会は,学校統廃合の基本構想を策定している.南知多町が目指す児童・生徒 像の「自ら判断し,自ら行動できる児童・生徒」を育成する場として,最も優れた学習環境を創 造するとして,中学校は 5 校を統合して 1 校とし,小学校は 6 校を 5 校とするとしている. 図 3「学校の配置に関する対応」では,住民に関しては学校統廃合をおこなわず現状維持を望 む割合が高く,また,図 4「学校の統合のあり方」では,配慮すべき点に「児童・生徒の通学手 段」「学校の配置や位置」の割合が高かった.「学校統廃合についてのアンケート調査結果」で は,通学の安全性への心配が意見としてあがっていた.さらに,「学校規模の適正化に関するア ンケート調査 調査結果中間報告書」では,小学校の統合で配慮が必要だと思われることで「安 全な通学手段(スクールバスの導入など)」(保護者 75.9%,教職員 59.5%),中学校の統合で配慮 が必要だと思われることで「安全な通学手段(スクールバスの導入,乗船料の町負担など)」(保 護者 75.9%,教職員 63.7%)と他の項目よりも割合が高かった.学校が統廃合したことにより, 児童・生徒の通学に支障が出る(これまでよりも通学距離が延び,通学が困難になること)や通 学への安全性を心配し配慮が必要であると感じていることが推察される.このまま統廃合が進め られれば,通学する距離が延びた家庭では,町外へ転出を検討することも想定されるだろう. その他にも,「学校統廃合についてのアンケート調査結果」からは,学校がなくなることによ り過疎化を感じていることや地区の崩壊につながるとの意見もあった.松本(2015)は,小学校 が維持できないようになると,自治体の存続が危ぶまれることを指摘している.徳島県神山町, 広島県三次市青河町では,NPO 法人や有限会社の取り組みにより,小学校を維持することがで きている. 南知多町の小中学校は,維持するのではなく,縮小されようとしている.住民と専門職で学校 統廃合の意識に差がある.また,徳島県神山町,広島県三次市青河町のような NPO 法人や有限
社会福祉論集 第 142 号 会社の取り組みもない.このような状況のなか,地域福祉計画において,専門職あるいは行政職 員主導で計画策定が進められれば,住民の意識を無視したものになってしまい,さらに学校統廃 合が現実となれば,小中学生のいる家庭が町外に転出してしまう危険性がある.専門職や行政職 員だけでなく,住民も含めて検討をおこなっていくことは必須であり,学校統廃合の検討と並行 して,小中学生のいる家庭に町外から新たに転入してもらえるような方策を検討していくことが 必要である.
5.おわりに
40 歳代の南知多町での「永く住み続けたい」と考える人の割合が低い傾向として,仕事,医 療・福祉の面で課題がみられた.さらには,住民と専門職で学校統廃合の意識に差があった. 南知多町は地域福祉計画を策定していくうえで,住民と専門職の意識に差がみられていること からも,住民は地域福祉計画の策定委員として参加し,住民の意見をふまえて計画立案していく 必要がある.つまり,地域福祉計画を策定していくためには,「専門職参加」「行政職員参加」だ けでなく「住民参加」は必須である.住民をいかに巻き込むことができるかが鍵となる. 今後の課題としては,南知多町の課題を解決していくために,どのような資源開発をおこなう ことができるか,具体的な方策を示していく.ニッセイ財団研究プロジェクトとして,世代別の ニーズに対応できる様々な機能を付加した「0-100 しごとづくりサロン」を設立し,住民主体で 運営する仕組みづくりを南知多町や南知多町社会福祉協議会とともにおこなっていく予定であ る. 謝辞 本研究は,2016 ~ 2018 年度日本福祉大学助教研究特別支援の研究助成を受けて行った研究の 一部である.本研究を遂行するにあたり,ご協力いただきました南知多町の皆様に心より感謝申 し上げます. 注 1)本論文の調査概要としては,南知多町が 2015 年度に『第 6 次南知多町総合計画』の計画期間(11 年 間)の中間年度を迎えることから,地域住民の意識やニーズ,満足度の変化を把握するために『南知多 町住民意識調査』をおこなっている.また,筆者らは,2017 年に南知多町で活動するボランティア,専 門職に対して,『南知多町住民意識調査』と同様の質問紙を用いて,意識調査をおこなった.2 つの調査 結果を分析し,地域住民,ボランティア,専門職の意識の違い,あるいは地区ごとの意識を比較するた めに,記述統計をおこなった.施策や生活環境への満足度・重要度の項目間の関係をみていくために, 平均得点を算出し,散布図を作成した.さらに,自由記述から地域の強みと地域課題を抽出して整理し た. 2)消滅可能性都市とは,政策提言機関である「日本創生会議」のもとに「人口減少問題検討分科会」を 設置し,2014 年 5 月に発表された.2040 年に 20 ~ 39 歳の女性が 50% 以上減少する市区町村としている(増田 2014:4,29-31). 3)基本的には『南知多町住民意識調査』と同様の調査票を用いたが,「所有する資格」「専門職の経験年 数」「南知多町の強み・課題」の項目を追加した. 引用・参考文献 相藤巨(2017)「萌芽的研究論文 地方自治体の政策形成における女性の参画に関する考察-『消滅可能 性都市』としての東京都豊島区を事例として」『国際ジェンダー学会誌』15, 86-106. 荻原なつ子編(2016)『としま F1 会議-「消滅可能性都市」270 日の挑戦』生産性出版. 原田正樹(2018)「第 1 章 地域共生社会の理念とパラダイム」公益社団法人日本社会福祉士会編『地域 共生社会に向けたソーシャルワーク-社会福祉士による実践事例から』中央法規出版,2-33. 笠原千絵・永田祐編著(2013)『地域の<実践>を変える社会福祉調査入門』春秋社. 嵩和雄・藤井理江(2017)「地方移住の意義と三重県の実態」『日本地理学会発表要旨集』,100152. 厚生労働省社会保障審議会福祉部会(2002)「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指 針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/01/ s0128-3.html, 2019.11.7). 松本克夫(2015)「消滅自治体とは言わせない」『自治体学:自治体学会誌』28(2), 8-12. 増田寛也編(2014)『地方消滅-東京一極集中が招く人口急減』中央公論新社. 南知多町(2014)『南知多町住民意識調査報告書』. 南知多町ホームページ(2019)(https://www.town.minamichita.lg.jp/,2019.11.4). 南知多町教育委員会(2006)『学校統廃合の基本構想について』. 南知多町教育委員会(2012)『学校統廃合についてのアンケート調査結果』. 南知多町教育委員会(2019)『学校規模の適正化に関するアンケート調査 調査結果中間報告書』. 大林由美子・末永和也(2019)「人口減少地域(消滅可能性都市)における人口対策の検討-地域住民・ ボランティア・専門職のとらえる地域課題と地域の強みに着目して」『日本福祉大学社会福祉論集』141, 27-43. 総務省統計局(2015)『南知多町国勢調査結果一覧』. 知多統計研究協議会(2018)『知多半島の統計 平成 30 年版』.