研削液の効果について
織岡貞次郎
村田誠
Effects of Grinding Liquid on the State
of Grain Trips
TeijiroORIOKA MakotoMURATA
1 ま え が き
一般に、砥粒を用いる加工法においてはその先端状 況が問題になるが、研削加工法においても砥石表面に おける砥粒切れ刃の先端状況が重要である。著者らは さきに乾式研削を行ない、その際の砥石衣面における 砥粒切れ刃先端の高さの分布・切れ刃先端の形状の分 布およびそれらの研削量による変化について報告した が1)2)、今回は各種研削液を用いた湿式研削を行な い、砥粒切れ刃の先端状況に及ぼす研削液の効果につ いて検討した。 研削液を使用すると、その潤滑作用・冷却作用・清 浄作用のために、研削抵抗の減少・研削温度の低下が 生ずることはよく知られているが、砥粒切れ刃の先端 状況に対しても研削液は影響を及ぼすものと考えられ る。さきの乾式研削の場合には、砥石表面の近くに存 在する砥粒切れ刃の先端形状が、研削の進行に伴ない 鈍化の方向に変化することが明らかにされたので、今 回の湿式研削の場合にも、それぞれの砥粒切れ刃の存 在する砥石表面からの深さを念頭において、データを 整理した。表1 使用した研削液の種類
なお、使用した研削液は表1に示す5種であるが、 そのうち乳化油は市販のもの、他の4種はユシロ化学 製である。2 実験装置および実験方法
2.1実 験 条 件 平面研削盤を用い、図1に示す方法で研削液を供給 しつつ平面研削を行なった。表2に示す研削条件によ り、砥石幅の全面が被加工物を研削するようにして、 1回の砥石切込み量を数μ∼10数/.eにして、研削回 数を数回から20数回行ない、研削蛋を変化させた。そ の際、ドレッシングは毎回やり1自した。なお、ドレッ G〕耐嚇 種 類 タ イ プ 稀 釈 率 乳 化 油 ユシローケンN
ユシローケン SS lO4 ユシローケン SE 502 ユシローケン SE 504 Emulsion Chemical Solution Soluble (界面活性剤主休) Soluble (S系EP剤添加) Soluble (ei系EP剤添加)20倍稀釈
70倍稀釈
40倍稀釈
40倍稀釈
50fr[!’稀釈 t Fig.1 ApParatus of grinding operation ee昭和36年11月4日口本機械学会・精機学会連合 山梨地方講演会にて発表シングは、はじめに5.5μの切込みでスパークアウト まで2度行ない一定の砥石面を作ったのち、11μの切 込みで1往復のドレッシングを行なった。
表2 研削条件
1) 五氏 イ了 種 類〃 直径
〃 幅
〃 速度
:GC60K(Vit) :168∼165mm :14.6mm :1,600m/min j ll
l 2) 被加工物材質:0.2%炭素鋼 〃 〃 速度:4.5m/min 3) ドレッシング条件 横送り速度 : 666mm/min 砥石一一個転あたりの送り:0.244mm/rev2.2測定方法
図2に示すようなダイヤモンド製ナイフエッジ型触 針を取り付けた大越式表面あらさ検査機により、砥石 表面の凹凸のプロフィル(図3)を求め、図3のbお よびhの寸法を工具顕微鏡により実測し、プロフィノレ の縦横の倍率を考慮して、その実寸から、b/h=r= 2tanφより、それぞれの砥粒切れ刃に対して、 rの値 および砥粒先端角(2φ)を求めた。 さきの報告2)における乾式研削実験の場合の測定に r† Fig.3 Shape of grain tips Fig.2 Shape of knife−edge type needie あたっては、主としてタンガロイ製触針を用いたの で、触針の先端形状を常に注意して再研磨する必要が あったが、今回の湿式研削実験においては触針をダイ ヤモンドで特別に作り測定したので精度が向上した。 図3のプロフィルで先端が平らに出たものを、”フ ラット”な切れ刃として、先端のとがった切れ刃とは 別に取扱った。測定の倍率を考慮すると、”フラット” な切れ刃として測定したものは、砥粒切れ刃先端にお けるフラットな部分の幅が2μ乃至数μ以上のものと 考えられる。 なお、先端に丸みのある砥粒切れ刃も存在するもの と考えられるが、図3のプロフィルは縦倍率が1000倍 で横倍率が50倍であるために、プロフィノレ上ではとが った形状として現われる場合がある。その詳細につい ては前報2)に譲る。3実 験 結 果
乾式および湿式研削のそれぞれの実験において、砥 粒切れ刃先端の形状の分布の研削量による変化を、そ れらの切れ刃先端の存在する砥石表面からの深さ別に 分類整理し、これをrの平均値およびフラッ1・な切れ 刃の数について示したのが表3∼表8である。 表 3 乾 式 研 削砥石表面からの深さ
1
砥石表面の単位面積 あたり研削撤 0 ∼ 4 μmm3
^mm2
鵬し1フラ・曄嚇
…た切れ1な切れ (フラ:刃の数刃の数磁ζ
0 1 18
1 0.0310 150.0521 {23
0.0671 i30
1 0.0981 1 31 1 0 12.5 3 20.2 2 12.9 7 13.3 12 29.2 4 ∼ 8 μ 測定し た切れ 刃の数 フラット な切れ 刃の数 r の 平均値 (フラ ットを 除く)221
20 24 9 16 0 13.5 0 17.5 3 13.2 2 13.0 5 19.7 8 ∼ 12 μ 測定し た切れ 刃の数 10 15 3 6 3 フラット な切れ 刃の数 1 3 0 2 0 r ゐ一 平均値 (フラ ットを 除く) 16.9 |6。5 9.0 15.6 18.6表4 乳 化 油(20倍稀釈)
砥石表面の単位面積 あたり研削量mm3
^mm 20
0.0142 0.0436 0.0797 0.1764砥石表面からの深さ
0 ∼ 4 μ 測定し た切れ 刃の数 14 5 15 15 30 フラット な切れ 刃の数 0 1 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 11.9 11.2 9.4 9.73戸1・7
4 ∼ 8 μ 測定し た切れ 刃の数 7 4 20 11 17 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 1 1 8 ∼ 12 μ車遍測定し
(フラ た切れ蔭げ刃の数
11.8 11.3 10.9 7.9 12.3 12 11 8 20 8 フラット な切れ 刃の数 0 0 1 1 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 9.2 8.5 14.7 11.1 10.8 表 5 ユ シ ロ 一ケン N(70倍稀釈) 砥石表面の単位面積 あたり研削量mm3
^mm2
砥石表面からの深さ
9−∼±一』
1測定し 1た切れ ,刃の数0
0.0075 0.0300 0.0532 0.0702 0.1180 0.1607 0.2112 46 6 13 12 35 16 9 19 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 1 1 1 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 15.5 11.3 10.0 13.1 14.9 11.5 17.4 12.7 4 ∼ 8 μ 測定し た切れ 刃の数 1 25 17 9 12 20 18 8 フラット な切れ 刃の数 0 2 0 0 1 1 1 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) (23.6) 11.6 10.5 13.1 11.8 11.3 12.3 16.1 8 ∼ 12 μ 測定し た切れ 刃の数 0 12 10 15 0 3 22 13 フラット な切れ 刃の数 0 1 0 1 0 0 0 1 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 14.0 9.9 13.2 6.3 14.8 12.5 表 6 ユシロー一ケンSS 104(40倍稀釈) 1 i 砥石表面の単位面積 あたり研削量 mm 3^Mm2
0
0.0312 0.0536 0.0819 0.1106 0.1552 0.2196砥石表面からの深さ
0 ∼ 4 μ 測定し た切れ 刃の数 13 32 13 31 10 16 20 フラット な切れ 刃の数 0 0 1 3 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 10.2 10.5 11」 11.9 8.0 14.4 10.9 4 ∼ 8 μ 測定し た切れ 刃の数 23 15 17 10 3 20 11 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 11.4 10.3 10.4 10.2 7.4 10.9 10.2 8 ∼ 12 μ 測定し た切れ 刃の数 13 2 9 5 16 5 14 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 10.9 9.4 10.9 11.0 6.3 11.2 11.5表 7 ユシローケンSE 502(40倍稀釈) 砥石表面の単位面積 あたり研削量 mm 8
^mm2
砥石表面からの深さ
0 ∼ 4 μS 測定し た切れ 刃の数0
0.Ol85 0.0768 0.1240 0.1556 0.2163 9 5 23 46 14 21 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 10.0 10.1 12.0 11.9 13.5 9.0 4 ∼ 8 μ 測定し た切れ 刃の数 フラット な切れ 刃の数 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 8 ∼ 12 μ 14 23 24 0 8 11 0 0 0 0 0 0 測定し た切れ 刃の数 11.5 12.8 10.6 9.8 7.5 9 8 2 0 18 18 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 11.0 15.5 12.4 12.4 9.9 表 8 ユシローケンSE 504(50倍稀釈) 砥石表面の単位面積砥
∼ 4 /t石表面からの深さ
あたり研削量mm3/Mm2
0 1測定し l iた切れ 1刃の数 フラツト な切れ 刃の数 4 ∼ 8 メ‘ r の ’P均値 (フラ ットを 除く) 測定し た切れ 刃の数 フラット な切れ 刃の数 r の 平均値 (フラ ットを 除く) 8 ∼ 12 μ0
0.0072 0.0359 0.0702 0.1217 0.1511 0.1985 20 6 17 28 4 6 10 0 1 1 0 0 0 0 8.6 16.0 15.3 11.2 14.3 8.7 10.{ 15 12 18 12 6 6 10 0 0 2 0 1 0 0 測定し た切れ 刃の数 7.7 10.1 13.4 11.1 13.4 9.4 9.8 8 16 11 7 6 8 10 フラット な切れ 刃の数 0 0 0 0 0 0 0 r の 平均値 (フラ ットを除○
10.4 10.8 15.0 9.1 7.3 9.4 8.4 表3に示す乾式研削の場合には、砥石表面の近くに 存在する砥粒切れ刃先端(砥石表面からの深さ0∼4 μ)は、研削量の増加に伴ない著しく鈍化する。乳化 油を研削液として使用した研削実験(表4)において は、rの平均値は研削量の多少によって殆んど変化し ないが、フラットな切れ刃の数は研削量の増加につれ て多くなる。Chemical Solution Nを使用した場合 (表5)には、砥石表面の近くの切れ刃は鈍化する傾 向にあるけれども、乾式研削の場合ほど著しくはな い。表7に示すSE 502を研削液として使用した実験 においては、研肖騰{が増加しても、rの平均値も変化 せず、またフラットな切れ刃もiUl現しない。 これらの実験結果を比較するために、それぞれの研 削液を使用した実験において、砥石表面からの深さが 0∼4μに存在する砥粒切れ刃先端について、rの平 均値と研削量との関係を示したのが図4である。乾式 削の場合には、その程度の研削量ではrの平均値は殆 んど変化せず略々一一一一一定とみなせる。また、乾式研削の 場合と研削液SE 502を使用した場合を、砥粒切れ刃 先端の形状の分布について比較したのが図5である。 図5においては、r=b/hの出現個数をヒストグラム として示した。なお、rの平均値も附記した。研削液 を使用した場合には、とがった砥粒切れ刃先端が研削 量の増加によってもなかなか鈍化しないことが知られ る。4 あ と が き
乾式研削実験の場合には、砥石表面の近くに存在す る砥粒切れ刃の先端は、研削量の増加に伴ない著しく 鈍化し、rの値が極めて大きくなるけれども、湿式研 削実験の場合には、実験したどの研削液に対しても、 その傾向が非常に小さい。先端の平らになったフラッこのことは、乾式研削と比較して湿式研削において は、砥石の切れ味が研削量が増加してもなかなか落ち ないことが研削焼けその他の状況から知られることと 符合する。 文 献 1)織岡:”砥粒切れ刃の分布に基く研削の幾何学的 考察”、1」」梨大工報、10(1959)、131 2)織岡、村田:”砥石表面における砥粒切れ刃の先 端形状について”、山梨大工報、12(1961)、44。
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Fig. 4 Relation between r and stock remova1 tB ⑳{0