限定振幅の電磁バイブレーターの解析
谷
口
紀
男
1.緒 言
貴イ瀕及び硝子類等の脆控硬質物質の加工を行ふ場
合に衝撃を與へて材料を少しづふ破砕しつX加工を行
ふことが能率的であることは既に発表したところであ
る(1)。その際に自動的に一定の衝撃力を與へる目的
をもつて考案した電磁バイゾレータ・t−・の作動機構を解
析し設計の資料としたのでその結果を報告する。
2.構 造
第1図 パイブレ・一 X’ 一の構造
雷藤’・イデレ9一
=:二脚=坊
構造は第1図に示す如きばね作用をする曲つた軟鉄
片及びハソマーよりなる機械的な振動系と鉄心をもつ
電磁石よりなる電磁彊制振勤系の組合はさつたもので
ある。実際に用ひたものは交流100ボルト50サイクル
で励振させ100サイクルの振勤を生ぜしむるものであ
る。実際には第1図に示す如きチゼルをハソマ・一で叩
きつ!・.穿孔を行ふものに用ふる目的で考案せるもの
で、ハソマー底部とチゼル頭部との間隙αを常に一定
に保つ糠にすることによつて安定な定常振動を続ける
ことが出來るものである。
この場合その聞隙αの如何によつてチゼルを叩くハ
ソ・?・e一の振幅κは大いに変化するのでその条件を調べ
るのがこの目的である。勿論チゼルの長さ、大さ、材
質、及び被穿孔吻の材質その他でこれら等件は当然変
化することは云ふまでもない。
3.定常振動条件
今このパイプレーターを構i成する機械系の固有角振
動速度をλrad/secとし、電磁的な角強制振動速度
をωrad/secとすればこのバイブ1・・ ・一ターの振勤方程
式はi次の如くなるo
蒙楠一・(・一・…t) …・・…・(・)
qは強制振動力の振幅に相当するものである。勿論
粘性抵抗、摩擦抵抗等を無規して右辺の電磁強制振動
力に相当するもののみを問題にした場合である。電磁
強制振動力は供給する交流が正弦波電流とするとその
2藁に比例することになるので、從つで振動周期は2
倍となり(1)式の如くになる。その場合電磁強制振動
力は振幅Xによらないものと考へて置く。
(1)式を初期条件を入れて解くために一般解を求む
れば次の如くになる。
・−C・ぷ+C・c・s・・t+5一天ゐ・…t…(2)
現実にはこの(2)式の右辺の第1項及第2項は減衰項
を俘つてくるので衝突せしめないで振動をつX“けさせ
れば
・鵡一。,三。,・…t ………(2)’
の形の彊制振動をするのである。
叉入かωに近くなつて振幅が大きくなると前の仮定
の電磁強制力がκによらないといふ仮定がくずれて非
線形の振動となり振幅は無限には大ぎくはならない。
而しこの場合は一一周期以内に衝突をおこすのでこの
項を考へねばならない。從つてこの振動系を解析する
方式として一つの振動漠型を考へて処理することにす
第2図 振勤 援型
PtPt
∼ξ
↑
o
振
f
v=o
∫(t−一一 Cesw±)
一\一一十
_」Lτ1
.L
/↑
.__$一_Ll
ぱ く
ひ(w Lv、(幽
昭和29年7月
山梨大学工学部研究報告
第 5 号
る。EPちハソマーがチゼルと衝突を続け乍ら定常振動
を行ふ模型として第2図に示す如く強制振動力の位相
にたいして少し異つた位相ではあるが周期は全く同一
であるものであるo
この場合初期条件として次のものを考へる。
ま=ア でx=一一ax・=(1一α)v……(3)
t=ア十Tでx== −a ut=: −v V ……(4)
即ち電磁石に電流の流れていない時のハソマー底部
の位置をx=0とし、ヂゼル頭に近い方を負にとる。
時間は強制振動力が0の瞬間を原点とする。從つてハ
ソマーとチゼルとの間の電磁力の働かない場合の間隙
はaであり且つチゼルと衝突する位置がκ=一αである
わけである。又チゼルと衝突する前のハソマーの速度
をvとすると、反嬢する速度がく1一α)vであることに
なる。この場合αは反嬢速度係数とでも云ふ可きもの
で一応Vとは無関係の常数と考へることにする。この
(3)(4)式の条件は(2)式にたいして過剰条件ではあ
るがαが如何なる時にこの模型振動が成tr.するかを見
るためのものである。
そのためにまず(1)式及び(2)式を時間について微
分した型のものに(3),(4)式を代入し夫々より積分
常数C1及びC2を求める。邸ち(3)式の条件よりCl,
C2を求めれば
一(a+S,r−x,9。d,c・…)・・i・…+(・一・)⑭λ・一
謬♂・伽・…入・−Cl入 …・一(3)’
一(a十一q___9 COS λ2 入2一ω2)・…λ・一(・一の・醜入・+
、.一くql9_−szva・LV・Tsin.N7’=C2入 ………(3)ft
入2 一・ cv 2
戴にT=2π/ωである。
(4)式の条件よりC1,C2を求めれば
≦・環㌃そ。,…(・・+・T))λsi・(・・+・T)一
・…(・・+・T)一 A竃,sin(・・+・T)・・1(・・+の
=C1入 …・・ご…(4)’ .
一(a+票一詰冨,c・・(・・+・T))・…(・・+・T)+
魎・・+・T)・x,竺評・(ω.十ωT)蜘・+・T)
==C2λ ・・一・一・・(4)”
(3)’=(4)t,(3)”=(4)”と置いてCt,CL・を
消去し且つωT==2rrを考へに入れると、それらは
夫々
(弓一天ゐω・ωア)・{一・i・…+瓢・・+・T)}
+荒,{一…入・+c・・(・・+・T)}si・・x,・一
一vo(・一・)…入・+…(・・+・T)}…一(5)
(・曝一捻,…ω・)・{一…入・+…(・・+・T)}
+天鑑,{一瓢・・+・T)+si・・v}si・… :
+v{(・一)si・il N7 +Sitl(・・+・T)}一一(6)
上の(5),(6)式よりvを滑去すれば
{・十誌、・・叶・〔{−s・i・n ,・・+瓢・・+・T)}
{(・一・)伽蹄・(・・+・T)}+{(一醐・+
…(・・+・T)}{(・一)…炸+…(・・+・T)}〕
巨竺。、・卿・〔{一…入・+…(・・+・T)}
{(・一)si・n・・7+瓢・・+・T)}+{−si・(・・+の
+・ヒ{(・一・)…λ・+…(・・+・T)}〕一・
一……(7)
之如鴇礪磁郁作剛・の実際の一ソマー底
部とチゼル頭部との卒均間隙になることを考慮に入れ
て整頓すれば吹式の如くになりαがきまる。
_..q lω.2二些.一一L−sゴ拒。+ωsω〔〕
a+!=
λ2入2・ω2・・ a tan rr A ;
ω
………(8)
叉(8)式を(6)式に代入すればvが求められる。
qω .2 .sin vT ・・・・・・… (9)
彩=一
λ2一ω2 α
(8),(9)式よりアを滑去すれば上述の模型の定常
振動が起つた場合の衝撃速度0と静間隙αとの関係が
求められる。即ち
針ぞ・一天・三忌÷三・誌・へ㌢三・;
ω
土シ・一(荒2八菱阿
これらの諸式よりすぐわかることはσ,ω,λ,及びα
等が與へられた場合はaの如何なる値にたいしても必
ず定常振動がおこるわけではないこと、及び最も強い
衝撃力を出す静間隙αがありうることである。この間
題を取扱ふために(8),(9)式を吹元のない形に変換
して調べることにする。
限定振幅の電磁バイプレータ{の解析
今下の如く無次元量を作る。郎ち
・≠耀…λ/・
と置いて、ρを比静間隙と称し、σを比固有振動角速
度比と称することにする。すれば(8)式は吹の如くに
なる。
・==一,:”;,1.1−f−一//i,i.一一・i・…7+・・…〕………(・・)
ω7は0から2πまで変化しうるものだからρとの
関係を求めるためまずρの取りうる最大値を求めてみ
る。自]ち静間wa aの値の中定常振動可能のものの最大
の値を求めてみることである。
儒「:司蕊㊨一輌」・一・
之よりρのとりうる最大値がおこる角度reは
2
−−1
taB (o Te 7=一∫竺
σ抗〃πσ
となり、その場合のρの値をρeとすれば
…函{;認∴…一・(・・)
となる。即ちこのρより大ぎい値では定常振動は起
りえないことをいみするのである。
叉我々が実際に必要なのは衝撃力Fが静間隙αとど
の棲な関係にあるかであるからそれを求めると
F=〃2ψ+(1一α)mV
旦
cv
………(12)
の形となる。弦にεはハソrt・e一とチ
ゼルが衝撃をしてゐる位相角の大き
さ、從つてε/ωはその時間を表はす。
εは2πにたいして充分小さL・も
のと考へるとこのεは衝撃速度に一
応無関係の材質等のみによる常数と
なる。(αにも無関係と考へて置
く)
勿論Fはそのε/ω時間中の4S均
衝撃力である。猶吻を軍純機賊振動
と考へてのハソマー一の質量として今
取り扱つてゐる振動系をmを陽に表 tS・
はしてかけば
擁多裟+P・・==f(1−cos .:1 1‘) …・一一…(・3)
式と比べればλ2=p/mでq=f/mである。依つて(12)
式を書き直し且つφ=F/2アなる比衝撃力を考へれば
φ一6−≒旦・芸・v一え・(2−a)÷
㌃ b−
・・・・・・… (14)
從つて(9)式を用ふれば
2
ψ一亘三.,・・.、i。。丁
ε ω2−一・ ?LZ
2
_1㌃一1 1 .
一、’ 1 L if2si ’i3 ”Lv・ T −一…”(15)
邑防(・5)式よりφの駄値は・・一’・{}喘舗
りその値伽は
‘2
φ。、、==:τ1.・ ………(・6)
1ε 1一σ2
叉その値を出す静間隙に対応する値ρ肌は
1 2 1
,∋・.丁一1 ………(・6)’
ll−・・玩嘉
(10)式及び(15)式を用ひてω〔をパラメーターとし
噺算して2・φ一
?黶i2一α)と己篇絆
㌃
との関係を図表に示せばσ<1の場合は第3
図に示す如くなる。σ>1の場合には(15)式ですぐわ
となり、it}はばね常数であり、∫は強制振動力の振隔
で從つて2∫がその最大の強制ノ」である。從つて(1)
o
第3図 2ε(,bとpの曲線
かる如くsinUl7=−1の場合にφが最大値となり、そ
の場合のρは一(σ/σ2−1)(2/α一1)/♂anπifの形で負
となるので図の曲線が左側の位置にくるので大体第3
昭和29年7月 山梨大学工学部研究報告
第 5 号
図と似た形となる。この場合ρが負といふことは静間
隙・韻であつ誼つ・憶く・賜合で換計れば
電磁力が働いていない時にチゼ、レ頭部がハソ…一一を
1・矧だけ押し上げてゐ端である・叉φ頒
といふことは反撲の際の速度が負であることをいみ
し、從つてハソマーが上に上る時に衝突するのでこの
場合は考へてゐる機構と異るので現実性はないので第
3図では切り捨てxゐるわけである。
4.結 言
以上の計算よりして此の如き限定振幅の電磁パイブ
レー・/e・・一の特性として次のことが言ひ得られる。
(a)静間隙αがある一定値以.ヒ大になるとこの振
動1まり起りえない。その限度は(11)式で示す値であ
る。叉最大衝撃力を生ぜしむる静間wa aの値は(16)’
式で求められその場合の衝撃力は(16)式で求められ
るo
猶この電磁バイプV一ターをチゼルと衝突せしめず
に自由に振動せしめれば(2)式の第1項及び第2項は
実際には減衰項を伴ふ値なので滑失し第3項及び第4
項のみがのこる。郎ちハソマー底部は
_q q
− COSceT
x−− −−−−
λ2 λ2一ω2
の形で振動をすることになる。從つてその場合その
振動の最下端はx=0の原点から測つて負の方に向つ
て暗ω,謡(λ<・の場合)である・岳ぴ
頭部はx=0から負の方に向つてaの位置にある。よ
つて粒・〉。・ζλ,ゴ,なればこ礪突による陛
振幅振動は自然にはおこりえないので初めに人爲的に
初速をハソマーに與へて大きくふらせねばならない。
勿論その場合その静間wa aの値は(11)式の値以内であ
ればそれ以後は安定な振動をつX“けることはいふまで
もない。このことは実際に使用したものについて明か
に認められる現象である。然し電磁石の非線形的な性
質からいつて数値的には勿論相当のつれが認められる
が定性的には確つぎりとこの限界は現はれる。
(b)同じ静間隙αにたいして二つの安定な定常振
動がある如く第3図に現はれてくる△EBち同じσにつ
いてαが小さくなれば、換言すれば衝突の際のエネル
ギー−as失が少ない現象の場合に衝撃力が大となる曲線
(第3図の上側の曲線群)と、その逆の曲線。この二
つが一応可能の定常振動として現はれてゐる。この場
合又同じaにたいしては前者の方が衝撃力の絶対値が
大である。叉両者はρの最大値、即ち振動可能のaの
最大値では一致してゐる△猶強制振動力にたいする位
相の遅れも前者が少ない。
之を具体的に振動の状態を表はすためにσ=0.85
・一・…醐合につ・・て・−5・244・a−4・244(一q一λ2)に
ついて実際に計算してみればその安定な振動は第4図
及び第5図に示す如くなる。皇口ち衝撃反擾速度は
醐P賦振幅振勤 例1神定) te,・・3‘。謝
σエ。・85 0t引oo ア・εぷ α・4・2“(幻
Cl
8
ユ7
↓嘉)6
5
4
3
2
j
N
瑳
」
:1
−6
一工 5
{賜
、;
s
「
鷺
第4図
粥制限定振幅援初 剤 (宕’芝)
信・刷d・脚f・.糾a・酬±ノ,v・・r・・si}’
あ・一…ぷ・刷”一鋼㎡
のちヨムみ(ゆり
! !
i {
,\ ! !
11 1 1⊇_
1‥1i !
・ !
}1 1
ドscノ
斗_)i
・
l l
_.」∠_」_.
r 2「 3cr 叫マ 「i’ct
第5図
限定振幅の電磁バイブレ{ターの解析
vl=3,605q/ω1の=7,025q/・v 1であり、位相のおく
れはωア1=150°,w72 == 77°でVlω71が後者にv2,
ωT2が前者に対応するものである。
問題はこの二種の振動のいつれが実際に存在する可
能性があるかであるが、之は以.ヒの考へ方からして前
者の方が安定であるものと考へられる(第5図)
即ちαが小さくなるといふことは前述の如く衝突の
際の損失が少なくなることで、そうなる時に衝撃力が
大となる曲線群の方がエネルギー概念からいつて妥当
なので安定になる可能性が強いと思はれること。叉強
制振動力にたいして位相のおくれの少ないことはその
方に被強制振動は引きづられるのであるからその方に
移つていつて安定な定常振動をつN“ける可能性が多い
こと。又振動エネルギーの大きい位置の方が安定なこ
と。
以ltの様な事項より第5図の方がより安定と考へら
れる。勿論反嬢力を求める場合の運動量の取扱ひ、又
衝突位相角εの取扱ひ又αの取扱ひ等について仮定を
今少しく考へてxの変数等に考へやれば一つの安定位
置しか表はれえない様になるものと思はれるが電磁力
そのものが仮定の如く線型ではないので、それらのみ
余り嚴重に取扱つても無意味であるから計算の簡軍さ
のために前述の如く取つたのでこの様になつたものと
思はれるが之は止むをえないものと思はれる。
(c)λが1に近いほど同じ間隙αで且つ同じ反援
係数αの場合にFが大となりうるので、機械振動系
としては共振系を用ひた方が良い様に計算hは考へら
れるが之も電磁石の非線型特性等を考慮に入れると実
際にはλ<1の場合の方が安定な振動をつx“けうるも
のの如くであるo
文 献
1) 谷口、 精機学会誌 XVIII 5
谷口、 〃 XIX 2