書
評
平井克彦著「利益計算論」白桃書房 昭和61年10月26日
Katsuhiko Hirai
A C o n c e p t o f P r o f i t a n d M e a s u r e m e n t
1 は じめに
利益概念につ いては、会計学 の領域だけでな く、 経済学、経営学等の領域 において長 い間論ぜ られ て来た課題 であ る。会計学上 の利益概念について も、完全 に意見 の一致は見 られ ないが、利 益 とい うものは存在 し、企業利益 の計算 とい うこ とにつ いて、会計の中心的課題 とす るこ とがで きる。そ して利 益概念は、利益が いかに創 出され、測定 さ れ・ 利用 され るかを観察 で きる場 合にのみ、正確 な 意味を もっ ことがで きるo(1) 測定 された利 益概念は、一層複雑 な意味 合いを 持 つ ものであ るが、それ に先立 って測定方法の研 究が進 め られ るべ きであろ う。 平井教授に よる 「利 益計算論」は、会計理論 と 「利益」概念 の関係について論 じてい る。本書は 皿部か ら構成 され てお り、第 1部 は 「基礎的考察」
として、会計理論、その形成方法、会計 日的、会 計原 則、利 益概念 の相互関係について論 じてい る。 第 Ⅱ部 において 「説明的記述論 とF利益 .1概念」 と題 し、古 くか ら現在 において も制度 として行 な われてい る会計実務 につ いて、説 明的記述論 に よ る会計理論 の形成過程 と利益概念について論 じて い る。第 皿部 では 「践能的規範論 と F利 益 .J概念 」 と題 し、規範的 アプローチに よ り、利益概念を説 明せん としてい る。Ⅰ
本書の特徴 (1)本書 の構成 は前述す るごと く皿部 に分け ら伊
藤
治
郎
Jiroh Itoh
れ てお るが、第1部 は3章 か ら構成 され てい る。 第1章 「二つの会計 と二つの会計理論」,第2章 「会 計 日的 と会計原 則」、第3章 「会計上 の F利 益 J概念」、第 Ⅶ部 は4章 か ら店成 され てお り、 第4章 「制度会計論 の形成方法」、第5章 「原価 主義会計論 と F利益J概念」、第6章 「発生主義 会計論 と F利益 」概念」、第7章 「保守主義会計論 と F利益 J概念 」、 を論 じてい る。第 Ⅲ部 はやは り4章か ら構成 され てい る。第8章 「情 報会計の 形成 方法」、第9章 「経営意思決定会計 論 とF利 益 」概念 」、第 10章 「経営効率計測会計論 とF利 益J概念 」、第11章 「将来予測会計論 と F利益.a 概 念 」 とな っている。 第1部 の第1章では、会計理論形成 の二 つの方 法 と して、記述的 アプ ローチ、規範的 ア プ ローチ を説 明 し、第2章ではペイ トンの主張を中心に、 第3章では、ペイ トン、 リトル トンな どの学説 を ふ まえて論述 してい る。 第 Ⅰ部 の第4葦 では、 リトル トンの主 張 を中心 として、お もに会計原 則の形成過程につ いて説明 して いる。以下第5章、第6章、第7章 において、 原価 主義会計、発生主義会計、保守主義会 計につ いて、利益概念を中心 に考察 してい る。第 皿部、 第8章ではパ ラダイム変更 と情報会計論 の形成、 第9章ではエ ドワーズ ・ベルの主張 を、第 10章で はべ ドフ ォー ドの主張 を、第11章 では レグス ンの 主張 を中心に利 益概念 を追究 してい る。 (2) 会計理論 の展開 についてT .S.ク ーンの 理論展開 に よる 「通常科学 」 と 「科学革 命 」の理 論を あてはめて、新 しい会計理論 の創造 を、各学 説を と りあげて研究 してい る。(
3
)
本文 の要所には、次の説 明文があ らわれ て い る。 自分 自身の論ず る会計 の領域 を宣言す るために は、会計 の中心 目的を定め、その中心 目的に向け て、 自らが展開 しよ うとす る会計理論、理論構成 のための骨組 とな る原理、原 則 とい った ものにつ いて、充分意識 しなければな らない とい うこ とが、 主要 な所にあ らわれ ている。 Ⅲ 本書の内容 第1章、会計理論 の定義は論 者のアプ ローチの 仕方 に よ って、制度会計論、情報会計論 などさま ざまな会計理論が生 まれ る。そのアプ ローチ とし て 「説 明的記述論」 と 「機能的規範論」 とに分け、 そ して両論 とも会計 の中心概念、中 Lh目的を会計 の心蔵 、核心 として明 らかにす ることは重要 なこ とであ る。 現行 の制度会計において時価主義が採用されず、 原価主義が採用 されるのは、現金同等物に裏切 ナされ ない利 益が、分配 可能利益に含めて しま う不 都 合 を引 きおこすためで、未実現の利益の計上 を阻止 す るためであ り、制度会計 の中心 目的が 「分配 可 能利益算定」にあ ることの証明であ るとしてい る。 これ と開通 して、発生主義に よる費用認識、実現 主義 に よる収益の認識、保守主義 の考え方 な どが 成立す るのは、制度会計の中心 目的が分配 可能制 益の算定にあ るためであ る。 また、現在 の会計数値は経営責任の表 明のため に も用い られ てい るが、分配 可能利益算定 のため の会計体系を用い るな らは、不充分 な結果 しか得 られ ない。従 って、経営責任 の表明を中心 目的 と した会計体系を造 り出すべ きだ としてい る。つ ま り著 者は、会計を定義す るときには、会計の中心 目的、形成 しよ うとす る会計理論、採用す るアプ ローチを意識 しなけれ ばな らないことを主張 して い る。 第2章 会計理論は会計 の 目的 との関係におい て存在す る会計 日的に よ って、形成 され る会計理 論が 異な って来 る. この章はベイ ト./の主張 を中 心 として論考 9れ てい るもので、著 者がペイ ン ト の数 あ る著作 を丹念 に読 みあげ、原価主義 と時価 主義 の説明を比較検 討 した もの と思われ る。 ペイ トン評価論 の意味 として、原価評価 と時価評価 と ではその処理 の結果 において大 き く異 な るが、そ れ ぞれ評価 の意味が存す るとし、会計 の 日的 、機 能 の別 に会計原則 を選択 し、会計理論 を構成 して い る。 棚卸資産 の時価値上 り益 について、 これ を分配 可能利益 に含め ることは不都合であ る。 この場合 には原価 評価 が採用 され る。然 らば経営状況 の報 告、収益力、投資分析、の場合 には値上 り益 の表 示 は意味があ る。経営意 思決定 目的 のためには再 調達原価 を用 い ることの方 に意 味が あ る。 ベイ トンの評価論 は会計 目的 の別 に よって原価 主義 を主張 した り、時価主義を主張 した りす る。 一人 の論者が会計 目的別 に複数 の会計理論 を展開 してい るわけであ るが、理論構成 のために大 いに 示唆を与 え るもの としてい る。 第3章 会計理論 の形成方法 と して、基礎概念 を明確 に し、基礎概念 を求め るため の会計原則 を 確立 し、それか ら会計原則 を柱 とした会計理論 を 形成す る。 この基礎概念 に何を求め るかに よって 、 会計理 論 は大 き く異 な る。会計 の 中心課 題 が利 益 の算定 であ るとい うことを是認 した とした場合、 利益 の概念 は論者 に よって異 な る。 こ ゝでの利益 は貨幣額 に よって計 測可能 な利 益 の うちか ら、会 計 の主 目的 と合致 した ものが選 ばれ なけれ ばな ら ない。利 益 の概念 は、会計資料 を受け とる人 の利 用 日的、開示 され た内容 を どう理解 す るか に よっ て決定 され る。 著者は利益概念 として- ソ ドリクセ ンの利益概 念 を例示的 に掲示 し、それ に説 明を加 えてい る。 ① 制度会計 に よる利 益概念 、② 経営効率計 測のための利益概念 ,③ 経営 の予 測手段 とな る 利 益概念 、④ 経営意思決定 のための利益概念。 ① の制度会計 に よる利 益概念 については、現行 の制度会計 について、その主 目的 が分配可能利 益 であ る。 ② の経営効率計 測 のための利 益概念 につ いては、 投資者が関心を示す ものは、経営効率であ るか ら、 その経営効率の計 測が会計 に求め られ る。 しか し 現行 の会計 はそのために充分役立 っていない。 こ ゝでべ ドフ ォー ドの論説 を参考 に してい る。 経営効率 の良 し悪 Lを評価す るための利益 は手段 としての利益であ り、 この利益は経営 の操作 に よって創 出 され る利益 である。 この創出 した利益を、 用役の取 得、用役の利用、取得用役の再結合、用 役 の販売 とい う操作段階の経営効率を評価す るた めに用 い ようとす る。 ③の経営 の予測手段 となる利益概念 について、 企業の将来 の収益力 を予測す る方法 として、 レグ ス ソの例 に よ り(1)将来 の配 当 フ ロー (2) これ らのフローに関連す る リスクを知 る。 ここでの利 益 は、操業活動か ら生れた操業利益 と保有活動か ら生ず る保有利益 (実現可能額的)か ら構成 させ る。 会計 の 目的 を将来 の操業 フローの予測 とい うこ とにお き、 この予測は、資産 の市場価格 の変動が 先行指標 とな り、保 有利益の生ず るような資産価 格 の変動 は将来の収益力の増大 を もた らす と見て、 それを利益 として取扱 う。 ④の経営意思決定 のための利益概念 においては エ ドワーズ ・ベルの利益概念を検討 している。会 計 日的について短期的意思決定 目的 と長期的意思 決定 目的 とに分け、操業利益、保有利益、実現可 能利益の概念に もとづいて現在 の生産過程 を継続 すべ きか否かの判断 をす る。 会計 の 目的に何を選ぶか、何をテーマにす るか に よって利益概念は異 なることの説明である。 第4章、会計理論 はどの特定 の領域についての 理論を構成す るはあいに も、会計 の中心 目的 と関 連 していなければな らない。著者は利益を会計 の 基本概念 と考 える。 そ して利益 とは どの ような も のか、利益 とは分配 可能利益 とい う意味の もので あ ると仮定 し、現行 の会計 においては、原価主義、 発生主義 、保守主義 に よって利益が算定 されてい ることがその証拠 であるとしている。 この章にお いてほ リトル トンの会計理論 の形成に関す る過程 を説明 している。す なわち、現在行 なわれ ている 実務 には、当然にそれな りの 「理 由」が存在す る か らこそ行 なわれ る。 この実務 についての理 由づ け こそが リトル トンのい う会計理論 であ る。 これ が会計原則 に転換す るものであろ う。 第5童、現行の制度会計は、資産 の価額づけの 特 徴か ら原価主義会計 と呼ばれている。 原価主義 と会計責任の項 目で、 1948年 のAA Aの 「財務諸表におけ る会計概念 お よび会計基準」 において、原価主義 が採用 されている理 由に、会 計責任をあげている。つま り原 価主義の有意性 を、 責任 の記録 とい うことに求めている
。
「歴史的原 価が実際 の取 引に基づいた ものであるゆえに会計 責任 の表 明に役立つ」 とい う説 明について、 「現 行 の原価主義会計は会計責任 の表明 とい うことに 役立 たないわけではないが、会計責任の表 明を主 目的 とした体 系 ととらえるならば不充分 な体系の もの としている」。そ して会計 責任 の表 明を主 目 的 に置 くことは、原価主義会計 がなにゆ えにその ように行なわれているかの説 明を充分にはた し待 ない とい う。 原価主義 の限界 とい う節 において、現行 の会計 は原価主義会計であ り、その主 目的は分配 可能利 益 の算定 にある。そ して この会計資料 は分配可能 利 益算定 日的以外の ことに も用 い られ る。 このた め原価主義会計はある日的 のためには不充分に し か役立たない。そのため原価主義会計 を改善すべ きであるとの主張があるが、本来、他 の 目的に用 いる技術でない ものを、他 の 目的に用 いるならば、 欠陥や不充分 な点があるのほ当然なのであ る。 第6章 発 生主義会計は現金主義会計、半発 生 主義会計、発 生主義会計 とい う歴史的展開 を経 た ものであ って、現行 の発生主義会計において、費 用 、収益 についての認識方法 に他の時代 の会計 に は見 られない特徴があるはず である。半発生主義 会計 は、現金 の収支に基 いて収益、費用 を認識す るほかに掛 (債権、債務) に よって も収益、費用 の認識がおこなわれ、その うえで、決算修正取引 として見越、繰延に よって も収益 、費用 が認識 さ れている。発 生主義会計において もこれ と同 じ方 法が導入 され ている。 したが って半発生主義会計 と発生主義会計の区別 を 「引当金」の設 定による 費用 の認識方法 こそ現行の会計 にな ってか ら生れ た認識方法であるとしている。 現行の会計で、費用を認識す るとい うことは ① 現金支出 ② 債務 の確定 ③ 繰延 ④ 見越 ⑤ 引当金設定 とい うことになる。匁論 これは発生主 義 に よって費用 を認識す るとい う前提に立 つ。① ∼④ については、発生主義会計以前の会計処理 で も行 なわれていたので、論理的には 「発 生主義会 計」以前の会計 において 「発生主義」が採用 され ていた とい う矛盾 を見 る。 そ して⑤の 「引当金」 の設定に よる費用 の認識は 「発生主義会計」になってか らの ものであ る。 現行 の発 生主義は、 「発生主義会計」以前 の会 計 において採用 され て いた費用 の認識方法 を使用 し、 さらに、新たに 「発 生主義」 に よって も追加 的 に費用 を認識す る ところに特徴があ るとす る。 現行 の会計 においては、会計事実 を 「実現主義」 に よって認識す るほか に、費用 についてだけは、 「発生主義」に よって も追加的 に認識す るのであ ろ うか。 とい う問題 につ いては、現行 の会計 の主 目的が分配 可能利益 の算定だか らこそ、現行会計 においては、費用は発 生主義 に よって も追加的 に 認識 され てい ると説 明で きる。 この ことか らして、 現行 の発生主義会計 においては、現金主義 に よっ て認識 され る費用 と半発 生主義 に よる費用認識 と 発生主義 に よる費用認 識 の三つに区分 され る。 引当金概念 の説明において、企業会計原則注解 、 注解18「将来 の特定 の費用又は損失であ って、そ の発 生が当期以前の事 象 に起因 し、発生 の可能性 が高 く、かつ、その金額 を合理的 に見積 ることが で きる --・」 とい う説 明文 の中の 「発生の可能 性」 と発生主義 との関係 は どの ような ものか と疑 問をなげかけている。現 行の会計 は発生主義会計 であ るか ら 「発生の可能性」は 「未発 生か」、「発 生」かの観点か らは 「発 生」 とい う概念 で とらえ ることにな る。 した が って、注解 18の 「発生 の 可能性」 とい う言葉 を とらえるな らば、発生主義 は発生 の可能性 のあ る ものまで取 り上げ るとな る と、 「それ は何主義 な のであろ うか」 とい うこと にな る。 しか し、引当金 は発生主義 会計 の産物で あ って見れば、引当金 に よる費用 は まさに発生主 義 に よるものであろ う、 とい うことにな る。 この ことか ら、引 当金 の概念 は 「末発 生」 とい う語 と同一概念 では な く、 「発生」 とい う語 と同 一概念 でなけれ ほな らないはず であ るとしてい る。 引当金につ いては 「将来、実現す ることが予測 され 、その実現す るこ との原因 あるいは原因 の一 部 が、当期 の経営活動 あ るいは経営 の状況にある はあい、それ を当期 の損益計算に取 り上げ ること に よって生 じた貸方 項 目」 とい う文言 を付け加 え ることに よって規定 され るであろ う、 としてい る。 7章 の保 守主義につ いては、会計上 り保守主義 と財務政策上 の保守 主義 との混 同を と りあげ、保 守主義 は分配可能利 益 算定 とい う意味 での損益計 算において こそ、その意味が あるとして いる。 第8童、会計理論 には、静態論 、動態論 、情報 会計論 な どの理論 が存在す るが、それは、その問 い方や答 え方 のモデル、T .S .ク ーソの 「パ ラ ダイム」 のちが いが会計理論 に種 々の理論 を生む。 科学 の発展 の初期段階 には、世界観を観 る観方 の違 い、科学 のや り方 の違 い、理論 的問 い方や答 え方 のモデル、す なわ ち、パ ラダイ ムが異 な り、 何を もって理論 の中心を形成す るか につ いての意 見は、各派一致 しない百家争鳴期 を迎え る。 クーンの考 え方 に よれ は、科学者集団が一定期 間、過去 の科学的業績を受け入れ、 それ を基礎 と して進行 させ る研究 を 「通常科学」 と呼 び、パ ラ ダイムが変更す ること、つ ま り旧パ ラダイムか ら 新 パ ラダイ ム-の移行 を 「科学革命」 と呼んでい る。 会議理論 におけ るパ ラダイムの変革過程 として、 静態論 は財産計算 を、動愚論 は期間損益計算 を主 目的 として構成す る理論 であ り、静態論 か ら動態 論 への移行 はパ ラダイムの変革に よるものであ る。 静態論か ら動態論へ とコペル ニ クス的変革を と げた会計理論 も、早 くも 1960年代 にな ると、新 しい会計理論への変革 の芽が見 られ は じめてい る。 AAAの委員会 の 「基礎的会計理論」 A State一 meれt or Basic accounting Theory 1966
年 において 「会計 とは情報 の利用者 が事情に精通 して判断や意思決定 がで きるよ うに、経 済的情報 を識 別 し、伝達す るプ ロセスであ る。」 と、定義 づけてい る。 これは会計 を情報 とい う観点か ら見 直 し情報 会計論 を展開 してい る。 このこ とはパ ラ ダイムの変革が行 なわれた科学革命 の結果 であ る とす る。 情報会計論 の提唱は、現行 の会計体系 では情報 目的 のために不充分 な体系であ るゆ えに、情報 目 的 に役立 つ会計体系 の創造 を主張す るもので、会 計 の主 目的が異 な るな らば、それ ぞれに会計体系 も異 な ると考 えた ことか ら出発 した ものであ る。 情報会計論 とい って も、その求 め るべ き情報 が 異 な るな らは、各論者が情報 会計論 の内で提唱す る会計体系は互 いに異 な る。 以下第9童 において、エ ドワーズ ・ベルの経営 意思決定 の評価 に役立 つ会計 日的 、第10章 におい て、ベ ドフ ォー ドに よる経営効率 の計測 に役立つ
会計主 目的 、第 11章 において、 レグス ンに よる経 営 の将来 の予 測 に役立 つ会計主 目的 が述べ られ る。 それ ぞれ において、会計 目的 に合致 した会計体 系を示すべ きであ るとしてい る。 第9章、エ ドワーズ ・ベルは会計 におけ る経営 意思決定 の評価 とい う扱能 を強調 し、経営意 思決 定 とい う会計枚能 を会計 の主 目的 に置 いた、新 し い会計理論 を規範論的 に展開 してい る。 つ ま り会 計 を、① 当期 の生産過程 におけ る事象 を統制 し、 ② 将来 におけ る意 思決定 を よ りよい ものに し、 ③ 意思決定方法その ものを改善す ることに貢献 す る、 としてい る。 そ して意 思決定 の評価 のため に、期待値 と実際値 との差異分析 を通 して行 な う 方法を意図 している。利 益概念 に関 しては、客観的 利 益 とし、企業 が資産 の市場価値 を減 少 させ るこ とな しに、期 の終 りに支払 うことを計画 しうる配 当 の大 きさであ ると規定す る。短期的 には実現 可 能利 益 と呼び、長期的 には経営利 益の概念 で とら えてい る。 この章において、エ ドワーズ ・ベルの論 述 につ いて、彼 らが求め る会計資料 は、内部 目的 に役立 せ る経 営意 思決定 の評価 のための もので あ ったは ず で、歴史的原価資料 は、外部 目的 として、外部 利用者 のた め、課税利 益算定 のために役立つ もの であ る。 しか るに内部 目的 のために求めた資料 が、 外部 目的 のために作成 された歴史的原価資料 の補 足資料 であ るとした ことについてその矛盾 を指摘 している。 この矛盾 は技術的 に も、提案に対す る一般 の反 対 を弱 め変更 の実行 可能性を意識す るため カ レン ト原価(current cost)資料 を会計 に導入 したか らであ る。 著者は新 しい会計 の創造 のた糾 こは、 現行 の会計体系 に訣別す る道 を選ぶべ きであ って、 何 ら現行 の会計体系 に とらわれ る必要 はない とし ている。 第10章、ベ ドフ ォー ドに よれば、利 益は経営者 の効率 の良 し恋 しを評価す るための手段 であ ると され、 この利 益は経営 の操作 に よって創 出 され る 操作利 益であ るとされた。その利 益の計測は、費 用 ・収 益対 応の原則 、標準原価 の概念 を念 頭にお いた原価差異 、予算差異 の分析 とい った技法 を応 用 している。 べ ドフ ォー ドの主張 す る情報 会計論 は、物理学 におけ る相対性理論 にインパ ク トを与 えた操作一主 義 を会計学 に と り入れ て、パ ラダイムの転換 を促 そ うとしたに もかかわ らず、現在 の会計 を基礎 に して、実行 可能 性 のあ るところを追加的 に手直 し して、会計 の琉域 を拡大 してゆ こ うとす るもので あ り、決 して新 しい会計 を創 り直 そ うと考 え る も のではない。 第11章 、 レグス ンほ、会計 の 目的 が長期 持分投 資家への情報 の提供 であ ると考 え、 この投資家は、 (1)投資か ら期待 され る将来 の配 当 フロ ーを見積 ること、(2) これ らの フローに関連す る リス クの 両方に関 心 を持 ってい ると仮定 し、論理 の展開 を している。 レグス ンは、利 益概念 を再調達原価利 益 として とらえる。その内容 とす る ところは操業 にかかわ る利益 と保有活動 にかかわ る利 益 とを明確 に区別 し、操業利 益、 と保 有利 益に属す る実現 可能原価 節約 を利 益 として扱 ってい る。 ここで原価節約 と い う語は過去 の保有活動 を評価 す るはあ いの用語 で ある。 レグス ンは将来 の フ ローの予測 を問 うて い るのであ って、 フローの予測 とい うこ とは将来 の収益力 を問 うものであ ってみれば、別 の呼称 、 た とえは 「将来 フ p-転換 益」 とい った よ うな呼 称 を用い るべ きであろ うとしてい る。 また 将来 の フ ローの予 測 とい うことを問 うとすれば 、利 益 と して認識す るものは、現在手 持 の時価変 動分 だけ のはずであ る。 したが って、 この 日的 のた めの会 計 は将来 の フ ローに転換す る、現在手持 ちの資産 の採石利 益部分 に対す る、時価変動分 のみ を認識 す る再調達原価 会計 が有効 な会計体 系 とな るべ き であろ うとしてい る。
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おわ りに
この書 の要所 にいろいろな学 説を と りあげ利 益 概念 、利 益計算 についての考えを比較 ・検 討 され てお るが、そ こでは、会計 を定義す るときには、 会計 の中心 日的 、形成 しよ うとす る会計 理 論 、採 用す るアプ ローチを意識 しなけれ ばな らな い とし、 現行 の会計 の中心概念 は分配 可能利 益算定 のため であ るととしてい る。 この書で掲げ る、経 営効率 計 測、経営 の予測手段、経営意 思決 な どの会計 日 的 のための利 益概念 は分配 可能利 益算定 のため の利 益概念 とは別 に、中心概念 を設定 して論究すべ きであ るとい う考 え方 には同意す る。 発生主義 について、現行 の発生主義 は 「発生主 義 会計」以前の会計 において採用 されていた費用 の認識方法 を使用 し、 さらに 「発生主義」に よっ て も追加的にIFy用 を認識す るとい う説明がな され てい る。 しか し、今 日では費用 の発生 とは、財貨 または用役 の費消の事実 をい う。要望消の事実 とは、 客観的事実 の認識 を意味す る ものではな く、期間 的費用配分 の原則 に したが って、合理的 な期間割 当ての方法 に よる費用見賃 りにはかな らない。(3) この観点 に立 てば、現金主義 も、発生主義 も同 じ結果 にな る。今 日の発 生概念 は、期間的費用配 分 の原則 に よ り、費用 の期 間帰属 を定 め るため、 く註 〉 (1) 藤田幸男、大薮俊哉共訳 「ベ ドフイ利益決定論」 中央経済社 昭 和59年 P.10 (2)こゝでとりあげている文献として共著も含めで次 のとおりとなる。 Principles ofAccounting,1918年 「会計 の原理
」
Accountig Theory,1922年 「会計理論」
Accountig,1924 「会計学
」
AnIntroductiontocorporateAccounting Standard,1940年 「会社会計基準序説」 「費用 の発生の事実 を認識 し、その全額 を測定 し て計上す るための基礎 とな る会計基準」をい うこ とか ら、当然、現金主義 、半発生主義 、発生主義 の三 つを含めて論ぜ られ る もの と思 う。 利 益計算論 については古 くか ら論 ぜ られ、 と く に利 益概念 については、会計上の重要概念 に もか ゝわ らず、 まだ定着 した とは言 えない。利益概念 は、利 益を決定す る 目的 に よって変 化す るので、 その 日的 を確認 、整理 す ることに よ り種 々の利 益 概念が生 まれ る。 今後、社会構造 の変動 に伴ない、経済的要因 も 変わ るであろ うか ら、 これ らか ら派 生す る利 益概 念 、利益計 算論 が、会計理論 の中で考 え られ なけ ればな らない。
Advanced Accounting,1941年 「高等会 計学」
Assets Accounting,1952年 「資産会計」
Corporate AccountsandStatements, 1955年 「会社会計と財務諸表」
(3)黒沢 清著 「近代会計学入門」中央経済社