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第34回山梨医科大学CPC記録:間質性肺炎を伴った慢性関節リウマチに合併したANCA 関連腎炎の1剖検例 利用統計を見る

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xxviii 症例提示 熊代尚記医員(内科学 3) 症例:T.K. 64 歳 女性(ID112-468-8,AN1327) 主訴:発熱,食欲不振 既往歴:平成 3 年慢性関節リウマチ。平成 7 年 間質性肺炎,壊死性肉芽腫性リンパ節炎。平 成 8 年膜性増殖性糸球体腎炎。平成 11 年 4 月大腸ポリープ。 家族歴:母親が 69 歳で慢性関節リウマチ,子 宮癌でなくなっている。 現病歴:平成 2 年 4 月に手首の腫脹,発赤を伴 う痛みが出現した。平成 3 年 1 月に当院整形 外科を紹介受診し,慢性関節リウマチと診断 された。(3 つ以上の関節炎,手関節炎,対 称性関節炎,リウマトイド結節があり,赤沈, CRP 高値,リウマトイド因子は±であった。) 以後 DMARDs,NSAIDs,PRL 内服によりフ ォローされていた。平成 7 年 2 月にかぜ様症 状(熱 39 ∼ 40°C,咳,痰)あり,胸部 X 線 で両側下肺野の網状陰影,肺門リンパ節腫脹 認められ,当院第二内科紹介入院し,慢性関 節リウマチに伴う肺線維症,リンパ節生検に より necrotizing granulomas と診断された。 以後第二内科で慢性関節リウマチによる間質 性肺炎としてフォローされ慢性関節リウマチ に対しプレドニン 5 mg 内服していた。平成 8 年 6 月プレドニン内服中止となった。平成 8 年 9 月 Cr 2.76 と腎機能悪化により第二内 科再入院し,膜性増殖性糸球体腎炎が疑われ, ステロイドパルス療法,プレドニン 20 ∼ 5 mg 内服,D-dimer の高値続くためワーフ ァリゼーションも開始された。その時のデー タでは抗核抗体 160 ∼ 320 倍,Cr 3.5 から 2.0 と Cr の改善を認めていた。平成 9 年 10 月血 痰,平成 11 年 1 月鼻出血出現し,2 月にも再 び鼻出血があり,顔面浮腫があり,3 月鼻出 血,皮下出血あり食欲低下出現,4 月 2 日食 欲低下,腎性腎不全改善傾向なく,全身状態 の悪化が見られ,当科入院し,4 月 5 日泌尿 器科転化し,透析導入となり,5 月 28 日退 院した。以後近医で血液透析行ったが,38 ∼ 39°C の発熱持続し,6 月 29 日泌尿器科へ 再入院し,7 月 1 日発熱精査のため当科入院 となった。腎機能(血清 Cr)は次のように 推移した。 98.11.12 99.3.8 99.3.25 99.4.2 1.49 5.24 7.41 10.34 入院時身体所見:身長 155 cm,体重 44.85 kg。 血圧 102/62 mmHg,体温 38.3°C,脈拍 63/ 分,整。全身状態良好であった。リンパ節は 触知しなかった。眼瞼結膜に貧血を認め,眼 球結膜には黄疸は認めなかった。下肺野に乾 性ラ音を認めた。心雑音は認めなかった。腹 第 34 回山梨医科大学 CPC 記録 日時:平成 12 年 2 月 2 日(水)午後 5 時 15 分∼ 7 時 場所:臨床講堂大講義室 司会:女屋敏正教授(内科学 3),加藤良平助教授(病理学 2)

間質性肺炎を伴った慢性関節リウマチに合併した

ANCA 関連腎炎の 1 剖検例

要 旨:本例は 64 歳の女性で,慢性関節リウマチの経過中に間質性肺炎を合併し,その後腎不 全が併発した。臨床的には血中 ANCA の高値が特徴的で,その値が腎不全の発症や症状と一致し ていた。剖検では肺は肺線維症の所見で,腎には半月体形成性糸球体腎炎の像が確認された。最 終的に患者は,全身性アスペルギルス症を併発し,肺のびまん性肺胞障害(DAD)が直接死因と なった。

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部には異常は認めなかった。神経学的所見で は,精神状態,見当識は良好であった。脳神 経系,知覚,協調運動,反射には問題なかっ た。筋骨格系では,肘関節の疼痛をみとめ, 手関節,両拇指に亜脱臼を認める他,関節の 可動域制限,疼痛,腫脹はなく,び慢性に筋 萎縮を認めていた。左上肢にブラッドアクセ スのため内シャント造設されていた。筋力は 下肢を中心に両側性に,対称性に低下してい た(徒手筋力テストで 3 ∼ 4 程度)。四肢に 浮腫は認めなかった。維持透析施行中のため 無尿であった。 入 院 時 一 般 検 査 : 【 血 算 】 WBC 5330/µl, RBC 223 万/µl,Hb 6.2 g/dl,Ht 20.3 %, MCV 91.0 fl,MCH 27.8 pg,MCHC 30.5 g/dl, Ret 0.97 万/µl,Ret 0.4 %,Plt 17.7 万/µl, 血液像(Band 82.0 %,Seg. 7.0 %,Eosino. 2.0 %,Mono. 3.0 %,Lym. 6.0 %),ESR 92.0 mm/h【凝固】PT 10.7 秒,PT 活性 90.9 %,APTT 38.5 秒,フィブリノーゲン 500 mg/dl,ATIII 79 %,FDP-D 7.7µg/ml 【生化学】TP 5.3 g/dl,Alb 2.9 g/dl,A/G 1.21,CHE 180 IU/l,ALP 347 IU/l,γ-GTP 45 IU/l,LDH 196 IU/l,AST 72 IU/l,ALT 32 IU/l, TG 117 mg/dl, HDL-Chol 23 mg/dl, LDL-Chol 99 mg/dl, BUN 55 mg/dl,Cr 10.61 mg/dl,UA 6.8 mg/dl, Na 139 mEq/l,K 5.4 mEq/l,Cl 105 mEq/l, Ca 8.1 mg/dl,P 4.0 mg/dl,Fe 7µg/dl, TIBC 129µg/dl,CRP 14.8 mg/dl,【内分泌】 TSH 2.300µU/ml,ACTH 8.08 pg/ml【血清】 IgE 48 IU/ml, 免 疫 グ ロ ブ リ ン ( IgG 904 mg/dl,IgA 97 mg/dl,IgM 100 mg/dl) ASO 500 Todd,ASK 40 倍,直接 Coombs(−) 間接 Coombs(−) 寒冷凝集反応 8 倍,抗 核抗体 320 倍,LEtest(−),C3 72 mg/dl, C4 25 mg/dl, CH 50 44.4 U/ml, MPO-ANCA 663 EU, C-MPO-ANCA10EU, EPO 38.2 mIU/ml,クリオグロブリン(−),イン フルエンザ ACF(−),インフルエンザ BCF(−),水痘帯状疱疹 GFA 2560 倍,水 痘帯状疱疹 MFA(−)水痘帯状疱疹 CF(−), 抗 RNP 抗体(−),Scl-70Ab(−),JO-1Ab (−),サイトメガロアンチゲネミア(−) 【 感 染 症 】 T P ( ガ ラ ス 板 法 − T P H A − ) HBsAg(−) HCVAb(−)【血液ガス】 pH 7.461 PCO2 35.8 mmHg, PO2 61.1 mmHg,BE 1.6 mmol/l,SO2 92.9 %。 入院時画像:胸部 Xp 胸郭は Symmetric,下肺 野にすりガラス状,網状粒状陰影を強く認め, 肺門のリンパ節腫脹も認めた。RA に伴う lung fibrosis と考えられた。CTR 57 %と拡大 認めていた。腹部 Xp では腸腰筋陰影は正常 で,異常ガス,石灰化は認めなかった。軽度 の骨粗鬆症を認めた。手 Xp 左右はぼ対称性 変化となっていた。拇指亜脱臼,多発性の骨 透梁像を認めた。手関節,撓骨,手根骨(特 に月状骨)の骨癒合を認めた。尺側偏位は認 めなかった。Stage III のリウマチであった。 頚椎 Xp では環軸椎亜脱臼はなく,第 3 ∼ 5 椎の骨融解,骨粗鬆症様変化を認めた。神経 根圧迫はないと思われた。単純 CT(99.7.15) 下肺野背側胸膜直下に粒状,輪状影,ブラ, 蜂窩肺,線維化を認めた。95 年より増悪し ている間質性肺炎の所見であった。縦隔に有 意に腫大したリンパ節は認めなかった。心嚢 水 , 胸 水 の 貯 留 を 認 め た 。 腹 部 超 音 波 (99.7.2)肝内に石灰化を認めた。腎は萎縮 していた。動脈硬化を認めた。ガリウムシン チ(99.7.8)肺門リンパ節の集積亢進,右上 縦隔リンパ節の集積亢進も認められた。左肺 舌区,その周辺に集積亢進が認められたが, 活動性の間質性肺炎を思わせる所見はなかっ た。腎への集積亢進も認められた。手関節, 膝関節の集積は軽度亢進していたが,慢性関 節リウマチとしてはあまり強くはなかった。 入院後経過:別紙経過表参照 入院時より発熱を認め,ANCA 関連血管炎 と診断した後,プレドニン治療を 40 mg より 開始した。治療に反応し,解熱し,ANCA, CRP,FDPD ダイマーが改善し,治療に良好 に反応していた。しかし,8 月下旬よりとき

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おり透析後にスパイキーな発熱が見られ, CRP が上昇してきた。胸部 X 線にて肺門部 の間質影が増強し,胸部 CT 上間質性変化と 地図上のスリガラス陰影がみられ肺炎と診断 し,チエナム,フロリード,バクタ,γ-グロ ブリン製剤等の投与を開始した。培養にてカ ンジダが検出され,カンジダ肺炎と診断した。 9 月 13 日頃一時悪化した呼吸状態は改善し, CRP も 8.0 から 2.9 へと改善したが,9 月 15 日より再び呼吸状態が急速に悪化し,胸部 X 線上肺実質影が増強し,ARDS と診断しステ ロイドパルス療法を施行したが反応せず,9 月 18 日気管内挿管,呼吸器管理となった。 また 9 月 13 日頃より血小板の著明な減少が 見られ,DIC スコア 7 点と DIC を併発して いたため,9 月 15 日より FOY,ノイアート の投与,新鮮凍結血漿,血小板輸血など DIC に対する治療も開始したが,DIC 改善なく, 骨髄抑制も遷延し,呼吸状態はさらに悪化し, 多臓器不全となり,9 月 26 日死亡した。 臨床的考察: (診断)急速に進行した腎機能の低下と発熱 の鑑別として以下の事を考えた。 1)発熱の原因 ① ANCA 関連血管炎 MPO-ANCA が 4 月 5 日 483,5 月 17 日 641, 6 月 30 日 663 と高値であり,ANCA 関連血管 炎によるものと考えられる。ANCA 関連血管 炎の診断基準によれば, A.臨床所見の 1.1)血尿,2)間質性肺炎 2.鼻出血,皮下出血 B.検査所見 MPO-ANCA 陽性 組織所見は不明であるが基準によれば診断確 実例と言えた。 ②感染症 感染症が ANCA 関連血管炎に関連している 可能性が考えられた。ウイルス(インフルエ ンザ,水痘帯状疱疹,サイトメガロ),真菌 (β-D グルカンで検索)感染や,血液,喀痰, 膀胱バルーン洗浄液,髄液培養により細菌感 染や髄膜炎など検索したが,陽性所見は得ら れず,フルマリン投与によっても解熱せず, なお CRP 上昇傾向にあったので感染症は否 定的であった。 ③膠原病 自他各症状に膠原病様症状はなく,抗核抗体 3 2 0 倍 n u c l e a r パ タ ー ン で あ っ た が , RAHA80 倍弱陽性の他は,抗 RNP,Jo-1, Scl-70 抗体,LE テストは陰性であった。ま た MRA に関しては間質性肺炎は存在した が,血清補体価は低下しておらず,皮下結節 や多発神経炎などの特異的な臓器障害は認め なかった。 ④悪性腫瘍 ガリウムシンチ,胸腹部 CT,頭部 MRI など にて検索したが,明らかな腫瘤は見つからな かった。 以上①∼④から,発熱は ANCA 関連血管炎 によるものと考えられた。 2)さらなる診断 ① ANCA 関連血管炎の組織所見について 診断を確実にするために,さらに病名確定の ためには組織所見が必要で,さらに活動的な 血管炎がみられた場合,治療にも大きな参考 になる。生検する場合の部位については,皮 膚,鼻粘膜,肺,腎,筋肉などが考えられる が,皮膚については皮疹(顔面,頚部,胸部 に渡り,径数 mm の紅色丘疹)現われるも 2 xxx 図 1.臨床経過表

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∼ 3 日で消退し,皮膚科では正常組織しか得 られないであろうとの事で生検はしなかっ た。耳鼻科でも異常なしということで生検は せず,腎については透析導入となっており, 萎縮あり,皮質も菲薄化しており,生検は危 険(できなくもなかったが)であり,しなか った。肺についてはガリウムシンチでは特に 活動的な炎症像見られず,部位として確実に 血管炎像を捕まえられそうなところはなかっ た。TBLB での生検可能な範囲よりは胸腔鏡 下生検のほうが確実であると考えられたが, 侵襲が大きいのでしなかった。治療上は必ず しも生検は必要はないと考えた。 ②病名診断について ANCA 関連血管炎の中でも MPO-ANCA が強 陽性であり,mictroscopic PN(MPA),アレ ルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症 候群),Wegener 肉芽腫症(C-ANCA 陽性率 が高い)等が考えられた。それぞれの診断基 準から考えると,MPA,Wegener 肉芽腫症 が考えられたが(アレルギー性肉芽腫性血管 炎は否定的),もともと慢性関節リウマチの 既往があり,血性痰も本当に肺からの出血で あったのか,過去 1 度しか見られず,はっき りしなかった。診断基準,ANCA 陽性率から すると,どちらかといえば MPA が考えられ たが,確診には組織が必要であった。 剖検の目的: 1)ANCA 関連血管炎の診断が正しかったか。 2)血管炎の広がりと程度,腎炎の所見はど うであったか。 3)ARDS,間質性肺炎の診断は正しかった か。 4)T-bil(D-bil 優位)の異常な上昇(GOT, GOT,胆道系酵素はほとんど動かず)の 原因 5)DIC の治療に非常に抵抗していたが,凝 固亢進,血栓症の程度は? 6)ARDS の原因となった肺炎はカリニ肺炎 であったか,カンジダまたは細菌による ものか? 7)肺門部,縦隔リンパ節と思われる部位へ の Ga の集積あり,その原因は? 検査値分析 尾崎由基男教授(臨床検査医学) 平成 9 年より,血痰,鼻出血等の症状が記載 されているが,血小板数,凝固因子等の変化は あったのであろうか。また,出血時間は延長し ていたのであろうか。 出血傾向は,血小板機能,凝固線溶系,血管 周囲組織の 3 系統のいずれかの異常により出現 する。通常,出血時間延長は,血小板機能異常 によることが多い。血小板機能は,血小板の数 的異常,質的異常により低下する。血小板数が 10 × 104/µl 以下では出血傾向は通常認めない が,5 × 104/µl 以下では出血症状が起きること が多い。血小板数に異常がないのに,出血時間 が延長する例では血小板機能異常症を考え,血 小板凝集能,血小板膜蛋白解析等の検査を施行 する必要がある。 凝固系の異常では,皮膚出血斑,鼻出血など はあまり起きない(DIC などの重篤な例を除く が)。第 VIII 因子欠乏症などに代表されるよう に,関節などの深部出血が多い。第 XIII 因子 欠乏症では,一旦止血はするがあとでじわじわ 出血するという後出血が特徴である。 血小板機能,凝固線溶系異常が無いのに出血 傾向がある場合,血管,血管周囲組織の異常に より出血する可能性を考える。血管性紫斑病, Ehlers-Danlos 症候群が代表的なものであるが, アミロイドーシス,また ANCA 関連血管炎で も出血傾向が認められる。この症例は ANCA が陽性であり,出血傾向を認めた時点で血小板 数低下,凝固機能異常が無いとすると,以上述 べたように,血管性の出血が最も疑わしい。 画像診断 遠山敬司助手(放射線医学) クエン酸ガリウムは,静注後 24 時間までに は尿中排泄が終了し,その後は腸管排泄が主な 排泄機序とされている。通常,静注後 48 ∼ 72 時間後に撮像するのが一般的で,当院では静注 後 72 時間で撮像している。

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xxxii この症例は腎不全があり透析をしている。完 全無尿で腎機能が廃絶しているなら,腎への集 積は炎症(腎炎)への集積としてよいと思われ る。すこしでも尿の生成があるのなら,腎の集 積が排泄遅延によるものか,炎症によるものな のか,判別が難しくなる。一方,間質性肺炎へ もガリウムはよく集積し,炎症の活動性を示す とされている。原発性(特発性)でも二次性で も薬剤性でも,間質性肺炎の活動期に集積し, その成因・機序には関係しない。また関節炎 (滑膜炎)でも集積がみられ,こちらも活動性 の指標となると言われている。 発言 石原 裕講師(内科学 2) ARDS の原因になる疾患として成書には呼吸 器感染症も挙げられているが,臨床的には単に 重症の呼吸器感染症なのか,あるいは,ARDS を合併しているのかを鑑別することは大変困難 である。ARDS の臨床的特徴と言われる酸素投 与に反応しない低酸素血症はどちらでも見られ るし,ARDS の基本的病態である透過性亢進に よる肺水腫を臨床的に証明することも困難であ るからである。他方,胸部以外の疾患や外傷に ともなって急激に呼吸不全が発症し,レントゲ ン上に肺水腫に相当する浸潤陰影が出現する場 合は,高い確立で ARDS であろうということが できる。 間質性肺炎は原因の明かでない特発性間質性 肺炎と,結合組織病に関連する間質性肺炎とが あるが,病理像から両者を鑑別することはでき ないといわれている。またどちらも UIP の病 理像をとるものが多いと理解されている。 病理所見と診断 剖検番号: 1327,死後 8 時間 20 分 開胸開腹 にて剖検。 <病理所見> 1.(慢性関節リウマチ)PIP 関節・ MP 関節 腫脹,PIP 関節の屈曲拘縮,筋萎縮。 2.肺,左 620 g,右 780 g。右肺上葉では壁側 胸膜との線維性癒着あり。割面では両肺とも 含気の低下,肺胞壁の肥厚,両後下肺に限局 性に蜂巣肺を認める。肉眼的に後下肺に点状 ∼斑状の白色結節を肺実質に多数認めた。上 葉,中葉には点∼斑状の出血が散在していた。 組織学的には肺胞壁に硝子膜の形成と,肺胞 内浮腫,II 型肺胞の増生,肺胞壁の軽度肥厚 がみられた。肺の白色結節は多数の好中球浸 潤,壊死からなる膿瘍で内部にアスペルギル スの菌塊が多数みられた。上∼中葉の斑状の 出血部位にもアスペルギルス菌塊を多数認め た。肺胞壁の線維化は下肺の蜂窩肺の部分で は高度に認められるが,上葉∼中葉では軽度 ∼無しで,線維化のみられる部分と正常の部 分が混在していた。血管炎,びまん性肺胞出 血はない。 3.心臓,440 g。心筋層内に点∼斑状に肺と 同様の白色結節が多数見られた。組織学的に は膿瘍内にアスペルギルス菌塊がみられた。 一部血管内に菌塊が充満し,血管周囲に好中 球浸潤を伴なっていた。心外膜表面にフィブ 図 2.両肺の含気の低下と肺胞壁の肥厚,両側 後下肺に限局性に蜂巣肺を認める。後下 肺には点状∼斑状に白色結節が多数認め られる。

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リンの付着と軽度の炎症細胞浸潤を認め,線 維素性心外膜炎の所見を呈していた。 4.腎,左 70 g,右 70 g,両腎ともに強い萎縮。 糸球体は 90 %以上が強く変性,硝子化し, 腎不全の終末像である。比較的糸球体の構造 が保たれている部分では線維性半月体に圧排 されたような像も散見され,膠原線維の染色 (マッソン・トリクローム染色)ではほとん どの変性した糸球体が全周性に線維に囲まれ ていた。膜性増殖性腎炎の所見は明らかでは ない。一部にアスペルギルス菌塊を認めた。 5.肝,1140 g。割面では黄疸がみられるが, 肝内胆管拡張はみられない。組織学的には胆 汁うっ滞,ヘモデローシスがみられるが,肝 細胞壊死,線維化はない。門脈域の石灰化し た住血吸虫卵を認める。 6.縦隔の腫大したリンパ節には線維性の結節 とアスペルギルス菌塊とその周囲の炎症細胞 浸潤を認める。 7.その他。1)脾臓 100 g,脾炎,髄外造血, 2)甲状腺 33 g,真菌感染(+),3)副腎 左 5.5 g,右 6 g,萎縮有り,4)膵臓 170 g, 5)胸水 左 160 ml,右 200 ml,黄褐色,6) 腹水 400ml,黄褐色,7)子宮・卵巣・卵管 著変なし,8)骨髄 正形成,赤芽球増加,9) 体重 44.4 kg,身長 153 cm。 <病理診断> 1.(慢性関節リウマチ) 2.間質性肺炎 1)肺線維症,蜂窩肺 2)びまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage) 図 3.肺胞壁に硝子膜形成,肺胞内の高度な浮 腫,II 型肺胞上皮の増生,肺胞壁肥厚を 認める。Diffuse alveolar damage の所見。 対物× 10。60.878 図 4.菌塊を肺内に多数認める。対物× 2。 図 5.分節状の菌糸で,約 45 度の角度を持って 分岐して増殖する。アスペルギルスの所 見である。対物× 40。 図 6.両腎ともに皮質の萎縮を認める。

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3.末期腎(半月体形成性糸球体腎炎疑い) 4.アスペルギルス感染症,真菌血症 1)両肺,2)心臓,3)肝臓,4)胆嚢,5) 脾臓,6)胃,小腸,大腸,腸間膜,7)甲 状腺 最終死因: DAD(ARDS),肺線維症およびア スペルギルス肺感染症による呼吸不全 <考察> 1.まず ANCA 関連の全身性血管炎があった かについてであるが,MPO-ANCA 関連血管 炎でみられるびまん性肺胞出血,毛細血管炎 も明かではなく,その他の臓器にも血管炎の 所見は得られなかった。肺胞壁には一部好中 球浸潤もあるが,真菌感染,DAD に伴なう 炎症細胞浸潤と考えられる。 2.腎不全の原因は,すでに透析が施行されて いる末期腎であるため,確定的な判断はでき ない。90 %以上の糸球体が変性しており, さらにそのはとんどが全周性に線維性半月体 の形成を認める。細胞性半月体ではないが, 半月体形成性糸球体腎炎の終末像としても矛 盾ない所見と考える。わずかに残る比較的構 造の残った糸球体からは膜性増殖性糸球体腎 炎の所見は明かではない。 3.肺は多彩な所見が混在する。下記のとおり 考察した。肺には両下葉の蜂窩肺と強い線維 化がみられる。上∼中葉では線維化は軽度に みられるが,正常に近い部分と混在してみら れる。肺線維症/usual interstitial pneumonia

(UIP)に類似の像で,慢性関節リウマチに 伴なう膠原病肺として矛盾ない。アスペルギ ルス感染は両肺にびまん性にみられるが,特 に蜂窩肺のみられる下葉では膿瘍を形成して いた。その他にカンジダ,カリニ原虫などは 認めなかった。さらにびまん性に肺胞壁硝子 膜の出現と肺胞浮腫,II 型肺胞上皮増生など がみられる。臨床的に矛盾なければ,ARDS でみられる diffuse alveolar damage(DAD) の所見と考える。 4.黄疸の原因であるが,肝臓には強い胆汁う っ滞を認めるが,肝内胆管の拡張,肝細胞壊 死などなく,また胆嚢,肝外胆管にも結石な ど器質的な閉塞はみられない。以上から薬剤 または敗血症に伴なう胆汁うっ滞が考えられ る。 5.腎臓,他臓器に血栓症はみられず,DIC の 組織学的な証拠はない。 6.H7 年のリンパ節生検では中心に壊死を伴 なう肉芽腫性病変を認め,結核,非定型抗酸 菌,その他感染症が疑われる。今回の肺門, 縦隔の腫大したリンパ節には瘢痕となった線 維性の結節と,高度の好中球浸潤を伴なうア スペルギルス感染を認めるが,肉芽腫性病変 はなく,陳旧性の病巣にアスペルギルス感染 を合併している所見である。 7.本例は慢性関節リウマチに関連する肺線維 症および MPO-ANCA に関連する腎不全を基 礎にアスペルギルス感染症を合併し,最終的 には DAD による呼吸不全が死因となったと 考える。 考察 熊代尚記医員(内科学 3) 間質性肺炎を伴う慢性関節リウマチに ANCA 関連腎炎が合併した稀な症例を経験した。(RA の治療薬は ANCA 関連血管炎発症前には特に 変化なく 1 年以上継続されており,RA の治療 により発症したとは考えにくく,合併したと考 える。) この症例では腎機能が廃絶していたため, ANCA 関連血管炎に対し中等量のステロイドに xxxiv 図 7.糸球体は 90 %以上が強く変性,萎縮し, ほとんどの糸球体は全周性に近い線維性 の半月体に囲まれている。対物× 20。

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て治療し反応は良好であったが,カンジダ感染 症を併発し,不幸な転帰に終わった。透析患者 などの免疫能の低下した患者に対する治療はス テロイドを早めに減量する必要があったとも考 えられた。血管炎の所見は,剖検時腎以外には 認められなかったが,それはおそらく,カンジ ダ感染症によりマスクされてしまったこと,ス テロイド治療により軽快した可能性があったと 思われた。 慢 性 関 節 リ ウ マ チ 患 者 に 高 頻 度 に M P O -ANCA が検出されることが知られているが,そ の中から糸球体腎炎を起こしてくる症例は非常 に稀である。MPO-ANCA のエピトープには 様々なものが今までに報告され,現在もその詳 細は不明であるが,慢性関節リウマチに出現す る MPO-ANCA にも様々なものを認識する抗体 が 存 在 し て お り , 糸 球 体 腎 炎 を 引 き 起 こ す MPO-ANCA のエピトープは特殊なものではな いかと思われる。今後 MPO-ANCA の詳細な検 討が行われれば MPO-ANCA 関連腎炎に特異的 な抗体が判明し,その病態がさらに明らかにな るであろう。 まとめ 若杉正清医師(山梨県立中央病院内科) 1.慢性関節リウマチ(RA)に合併する腎障害 について 本例は RA の経過中に腎障害を併発し,この 発症原因につき検討が必要である。RA に伴う 腎障害は,RA という疾患と関連して生じてく るものとしてアミロイドーシス,シェーグレン 症候群,SLE などの他の膠原病の合併が考えら れる。また,治療に用いた薬剤として非ステロ イド系消炎剤,抗リウマチ薬他の副作用が考え られる。本例は非ステロイド系消炎剤と抗リウ マチ薬が使用されており,この副作用は否定で きない。さらに,この時にすでに後述する顕微 鏡的多発血管炎が合併していた可能性もある。 2.顕微鏡的多発血管炎(microscopic poly-angitis, MPA)について 古典的結節性多発動脈炎が中∼小動脈の壊死 性血管炎を呈するのに対し,MPA は,毛細血 管,静脈,細動脈などのさらに小血管の血管炎 を主体とする。MPA の特徴として,好中球細 胞質内のミエロペルオキシダーゼに対する自己 抗体 MPO-ANCA が高率に陽性となり,MPO-ANCA 関連疾患の代表ともなっている。さらに, MPA はしばしば壊死性半月体形成性腎炎によ る急速進行性腎炎症候群をきたし ANCA 関連 腎炎としても分類される。 本症例は腎臓のほとんどの糸球体に全周性の 線維性半月体形成を認め ANCA 関連腎炎の終 末像として矛盾ない。本症例の腎不全の主な原 因は ANCA 関連腎炎によるものと考えられ, 組織像より数年前に発症していたと推測され る。 3.慢性腎不全における感染症について 透析患者の死亡原因において感染症は心不全 に続き依然第 2 位を占めている。腎不全により 主として細胞性免疫能が低下しており,弱毒菌, 結核,真菌による感染が一般の人と比べて多い。 本例のように原疾患の治療のために副腎皮質ス テロイド剤を使用する場合は特に注意が必要で ある。深在性真菌症も疑い抗真菌薬を使用して いるが十分な効果なくアスペルギルス感染症を 合併し不幸にも死亡した。

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添付)。これらの成果より、ケモカインを介した炎症・免疫細胞の制御は腎線維