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佐藤博樹・小泉静子 著『不安定雇用という虚像─パート・フリーター・派遣の実像』(PDF:286KB)

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Academic year: 2021

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た職業安定所のみならず, 民間職業紹介所や学校でも 行われている。 こうした機関における職業相談にも応 用が可能であると考えられるため, こうした点からも 本書は重要な知見を与えることになるであろう。 No. 575/June 2008 80 よしだ・けいこ 桃山学院大学経済学部講師。 労働経済専 攻。 非正規雇用は 4 割の大台に乗る勢いで増加し, 常 用代替が進んでいる。 スポット派遣を生計の基盤に している若者たちの実態も注目を浴び, 非正規雇用 は 「ワーキングプア」 の代名詞となり, 不安定低賃 金雇用としての側面に焦点があてられるようになっ た。 そんな折, 不安定雇用という虚像 は, 非正 規雇用を働き方の多様な選択肢としてポジティブに とらえ, 多様性を尊重し, 人々がそうした働き方を 選択できるようにして, 仕事や役割にふさわしい待 遇を確保していく必要を唱えている。 非正規雇用は, 契約の短時間性, 有期性, 間接雇用性の一つまたは 複数の組み合わせによって成り立つ雇用形態である が, これらの類型ごとに労働者のニーズや選択のポ ジティブな側面を把握し, 生活や社会の将来の可能 性につなげる接着剤を用意することは, 労働政策の 重要な課題といえる。 その点で, 各種調査に表れた 非正規雇用で働く人たちのニーズがどこにあるかを 分析し, 「多様性の尊重」 というにふさわしい新し いシステムを展望しようとする本書の主眼は理解で きる。 しかし, これによって 「不安定雇用」 を虚像 となしうるか, については疑問なしとしない。 まず, 何が働き手のニーズであるかは, 働き手を とりまく生活と文化の反映であり, 各種アンケート に対する回答も実は多様性をその中に含んでいて非 常に奥深い。 「選択」 に表れた行動の外形のみから 推し量れないことが非常に多いことは, 労働相談の 現場に身を置く者として日々痛感させられることで ある。 「満足している」 という回答がまさにそれで あって, 非正規雇用の身分的ともいえる固定性と正 規雇用との大きな格差を前に, 「気持ちを切り替え なければ働けない」 「格差がある分だけ働かない」 という選択に向かうことがいかに多いことだろう。 それを数量化して説明するものはないのだが, その 結果としての 「現状に満足」 という回答をその言葉 通りのものとして分析対象とすることへの違和感は 免れない。 人は, 生きるために, 差別や暴力, 不正を受け入 れることがよくあるものだが, 「受け入れることへ の納得」 や 「自分に言い聞かせた満足」 が 「解消な いし改善すべきもの」 として自覚されるには, 「挑 んで変えることが可能だ」 という理性の獲得が必要 だ。 それだから, 「満足している」 という調査回答 は, その言葉通りポジティブには受け止められない 側面がある。 本書も, 主婦パートの時間給について 「妥当と思う」 が最も多いことを指摘しながら, 安 いと思うものも決して少なくなく, 不満は自分のス キル評価が高いほど多くなるといった, 前述のよう な問題の端緒をつかんでいる。 しかし, その傾向が 佐藤 博樹・小泉 静子 著

不安定雇用という虚像

パート・フリーター・派遣の実像

中野 麻美 (弁護士)

読書ノート

● さ と う ・ ひ ろ き 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 教 授 。 ● こ い ず み ・ し ず こ 元 ㈱ リ ク ル ー ト ワ ー ク ス 研 究 所 主 任 研 究 員 。 ●勁草書房 2007 年 11 月刊 B6 版 ・171 頁・ 2100 円 (税込)

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●BOOK REVIEWS

日本労働研究雑誌 81 何によるものか, 「賃金に満足」 の深部にあるもの を可視化できているわけではない。 また, 非正規雇用に指摘される 「企業との包括無 定量な支配 (拘束)」 からの解放といった (短時間 であって残業がない, 有期や派遣であって契約本位 に好きな時に働ける) ポジティブな評価の反面で, 経済的自立が不可能で, 明日の生活がみえないとい う低賃金不安定雇用としての側面をとらえる座標軸 も問題となる。 企業からの拘束性を排して契約本位 に働く 「労働からの自由」 が, 低賃金不安定雇用と 引き換えに成り立つことを容認するのでは, 非正規 雇用の反対形相としての正規雇用の深刻な側面は可 視化できないだろうし, 日本型雇用=正規雇用シス テムの何を改善するのか, その方向性は見えてこな いのではないだろうか。 むしろ, 「均等待遇」 の名 の下に低位平準化を後押しすることになりかねず, これでは未来の展望への接着剤とはいえなくなって しまう。 そもそも人間の生活と労働にとって, 自立と安定 性は欠かせない価値である。 非正規雇用の低賃金不 安定雇用としての実態や, そうした契約の締結を拒 否できない自然人としての脆弱性を無視できないこ とは, 誰もが認めるのだろうが, 「多様性の尊重」 であるとか 「多様な選択肢」 の用意がそれらを克服 する処方箋となりうるのか。 本書は, 労働における 「自己決定」 と雇用・労働 条件の公正決定を当然の前提とするのだろうが, 非 正規雇用がそうした価値を実現することなど不可能 に近いくらいに困難な買い叩きの構造をもっている こと, それを人々がどう克服しているのかという非 常に重い課題のあることを再認識させる。

参照

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