• 検索結果がありません。

<シンポジウム>体制転換・ 歴史的記憶・ エスニックアイデンティティ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<シンポジウム>体制転換・ 歴史的記憶・ エスニックアイデンティティ"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

<シンポジウム>体制転換・ 歴史的記憶・ エスニッ

クアイデンティティ

著者

ゼパ ブリギタ

雑誌名

関学西洋史論集

32

ページ

13-16

発行年

2009-03-26

URL

http://hdl.handle.net/10236/12876

(2)

体制転換 ・ 歴史的記憶 ・ エ スニ ツク アイ デ ンテ イ テ イ

ブ リ ギ タ ・ ゼパ

本稿は、 体制転換後の ラ ト ヴ イ ア にお け る歴史的記憶 と エ スニ ツク ・ ア イ デ ンテ イ テ イ と のあ い だ の関係 を理解 し よ う と す る も ので あ る。 最初に、 「集合的記憶」 と い う 用語の解釈 を簡単に検討 し たい。 「集合的記憶」 と い う 用 語 は、 フ ラ ン ス の学者 モ ー リ ス ・ ア ル ブ ウ' ァ ク ス に よ っ て 鋳造 さ れた も の で あ る が、 こ の現象 の研究が実際 に始 ま っ た のは、 エ ミ ール ・ デ ュ ルケイ ムが、 社会的 コ ミ ュ ニ テ ィ の登場す る際の宗教儀式 の役割 を検討 し 始めた時のこ と で あ っ た。 こ れ ら二人 の学者は、 集合的記憶 と い う 概念によ っ て社会的次元 を浮き 彫り にす る伝統 を確立 し たので あ る。 集合的記憶は、 社会環境 と 個人 と のあ いだ の相互作用の結果 と し て みな さ れる。 20世紀後半に集合的記憶の研究は、 いわゆる相互作用論者 ら によ る補完 を受 け て い る。 こ れは、 集合的記憶 を個人 と 社会的エ ー ジ ェ ン ト と のあいだの相互作用過 程 と し て説明す る専門家 た ちで あ る。 集合的記憶 につ いて の も っ と 最近の説明は構築 主義 に よ っ て与 え ら れて い るが、 こ れは、 集合的記憶 を様々の社会的 エ ー ジ ェ ン ト の 利害や価値観の影響下で創造 さ れる社会的構築物 と みな し てい る。 近年、 研究者た ち は言説分析に も焦点化 し て き た が、 こ れは、 集合的記憶 を構築す る際の権力構造の側 面 を強調 す る も ので あ る。 次に、 集合的記憶の経験的研究 と 解釈研究 を提示 し て、 集合的記憶 と アイ デ ンテ イ テ イ構築の諸側面、 つま り 第一に集合的記憶構築過程への新聞の影響、 第二 にマ スメ デ ィ ア におけ る祝祭日言説、 第三 に国民の祝日 と 歴史的記憶、 そ し て最後に ラ ト ヴイ ア人 と ロ シア人 と のあ いだの体制転換 に関す る解釈の調査結果 について分析 し て みた い o ラ ト ウ' ィ ア の ラ ト ヴ イ ア語 マ ス メ デ ィ ア お よ び ロ シ ア語 マ ス メ デ ィ ア の分析 か ら示 さ れ る のは、 以下 のよ う な こ と で あ る。 す な わ ち、 一方 で、 そ れ ら が集合的 ア イ デ ン テ イ テ イ形 成 の き わめ て 積極的 な エ ー ジ ェ ン ト で あ り な が ら、 他方 で、 そ れぞれ異 な る仕方で歴史 を解釈 し て い る。 すなわち、 歴史上の異な る局面に注意 を焦点化 し、 異 な っ た集合的記憶 を 構築 し、 そ う す る こ と で そ れぞれの対象 と す る視聴者 が ア イ デ ン テ イ テ イ を 構築 す る一助 と も な っ て い る。 例 え ば、 ラ ト ヴ イ ア的 ア イ デ ン テ イ テ イ を

(3)

構築す る と い う こ と は、 戦前 の ラ ト ヴ イ ア共和国 と の結合 を 活性化 さ せ る と い う こ と で あ る。 第一共和国は、 全般的成長 の時代、 すな わ ち ラ ト ヴ イ アが経済 その他の領域 で多大 の達成 を と げた時代 と し て、 お お い に理想化 さ れたかた ち で提示 さ れて い る。 他方、 ロ シア語新聞 の な か で ロ シ ア語 話者 住民 は、 ラ ト ウ' ィ ア人 の ナ シ ョ ナ リ ズ ム の成長 に対抗す る国際主義者 と し て描かれる。 ロ シア語話者は、 民族的出自によ って 人 々 を選別 し た り は し な い、 と 強調 さ れて い る。 ロ シア語新聞は、 読者 を素朴で勤勉 な人々と し て示すこ と が多い。 戦時の兵役経験者や労働の場で豊富な経験 を備え た人々 が比較的 よ く 言及 さ れるが、 彼 ら の実際の過程につ いて の感 じ方が描 き出 さ れる。 ロ シア語新聞では執筆者 らが民族間緊張悪化は避けがたいと予言 し たが、 「国民的調和」 と い う 観念 につ いて 書 く こ と のほ う がは る かに多 い し、 公共 の平和 を 維持 す る際 の そ の重要性 を強調 し てい る。 こ う し た新聞は、 独立過程以前 [ ぺレ ス ト ロ イ カ期以前] の社会で諸要素間に存在 し た友好的で好意的 な関係 を強調 し始めていた。 最後 に、 一 般的議論 を示 す こ と と し た い。 こ こ で は、 ラ ト ウ' ィ ア人 の ア イ デ ン テ イ テ イ 構築 と ロ シ ア人 の そ れ と のあ い だ の差異 を説明 す る た め に、 マ ニ ユエ ル ・ カ ス テ ルの ア イ デ ン テ イ テ イ 構築理論 を 援用 し た い。 カ ス テルは、 異 な る二 種類 の ア イ デ ン テ イ テ イ を区別す る試 みを行 っ たが、 彼の思考は、 権力 や統治制度の採用す る立場に 沿 っ た場合 のア イ デ ンテ イ テ イ構築 の広が り、 あ る いは、 抵抗や異議申 し 立 て の一形 式 と し て ア イ デ ンテ イ テ イ が登場 す る際 のあ り 方、 と い っ た も のに依拠 し て い る。 カ ス テルは 「正 統化 ア イ デ ン テ イ テ イ」 と 「 抵抗 ア イ デ ン テ イ テ イ」 につ い て論 じ て い る。 彼は前者 を 「 複数の社会的 ア ク タ ーに自分 た ちの支配 を及ぼ し、 合理化 す る た め に、 支配的社会制度によ っ て導入 さ れる も の」 と 定義 し て い る。 こ の見方か ら す る と、 正 統化 ア イ デ ン テ イ テ イ は、 民 族的 ラ ト ヴ イ ア人 の ナ シ ョ ナル ・ ア イ デ ン テ イ テ イ 構 築 を た いへんよ く 言 い当 て て い る。 市民社会は、 一方 で き わめて 積極的かつ敏感に ナ シ ョ ナル ・ ア イ デ ン テ イ テ イ を構築す るが、 他方 で同時 に、 国家権力 を合理化 し 強化 す る の で あ る。 民族的ロ シア人の集合的記憶は、 ラ ト ヴイ ア人 と は対照的に、 別の記憶に有機的に 根 ざ し て い る。 ラ ト ヴ イ ア に暮 ら す ロ シア人 は、 自分 た ちの集合的記憶 を 「歴史 の回 復」 と 戦間期 に焦点化 す る の を好 む ラ ト ヴ イ ア人 のそ れに対立 さ せ る こ と に よ っ て、 自分 た ちのア イ デ ンテ イ テ イ を形成 し て い る。 異 な る歴史的記憶間 の対立 に依拠 し て 構築 さ れ る のは、 い っ た い ど の よ う な類 の ア イ デ ン テ イ テ イ な の で あ ろ う か。 カ ス テ ル に し た が っ て こ こ で は、 抵抗 ア イ デ ン テ イ テ イ に つ い て 語 り う る。 カ ス テ ルは そ れ を次 の よ う に捉 え て い る。 す な わ ち、 「 支配 の論理 に よ っ て 価値下 落 お よ び / あ る い は ス テ イ グマ化 さ せ ら れた地 位 / 状況 のな かに お り 、 そ れゆえ 社会諸制度 に浸透 し て

(4)

い る の と は異 な り、 あ る いは こ れに対立 す る原理 に基づ いて、 抵抗 と 生 き 残 り のア イ デ ン テ イ テ イ を 構築 し て い る ア ク タ ー に よ っ て 産 み出 さ れた」 ' も の、 で あ る。 さ ら に こ こ では、 歴史的記憶 と 民主主義的価値 と のあ いだの関係 につ いて も議論 し た い。 集合的記憶は、 あ る種の記憶 を強調 し、 他は忘却 す る よ う に し むけ る、 あ る 種 の フ ィ ル タ ー と し て作動 す る。 ラ ト ヴ イ ア の歴史家 た ちは ラ ト ヴ イ ア の第一次独立時 代 を民主主義期 と 権威主義体制期 と に厳密に区分 し て き たが、 こ う し た事実 に もかか わ らず、 公共空間 には ラ ト ウ' ィ アの第一次独立時代 を一 つのま と ま り と し て定義 し よ う と す る言明 ・ 記号 ・ シ ンボル ・ 問い直 し が存在 し て き た。 権威主義体制期の価値観 や理想 が戦間期全体 に合致 す る も の と し て語 ら れて い る。 「 ラ ト ウ' ィ ア人 の ラ ト ウ' ィ ア」 と い う ス ロ ー ガ ンは、 1934年 の [ ウル マ ニ ス に よ る ] ク ー デ タ ー以 降 に人 気 を博 し た も のだが、 今日 では、 急進 ナ シ ョ ナ リ ス ト だけ で はな く て、 多 様な組織の人 々か ら し ば し ば賛美 さ れて い る。 歴史の大衆化 を め ざす人 々は、 戦間期 を 「 ウル マ ニ ス時 代」 と し て言及す る こ と が多 い。 政治家 も ま た、 歴史上の民主主義期 と 権威主義体制 期 と の違いに し ば し ば無頓着で あ る。 ラ ト ヴイ ア政治の民主主義期 と 権威主義体制期 と を区別 し、 民主主義期の達成 を強 調 し、 二つの時期のあいだの価値の相違 を評価 し よ う と す る議論は、 公共空問にはま っ た く 存在 し な い。 集合的記憶は、 「強い指導者」 の手 で達成 さ れた経済成長、 国民的 価値、 人民の統一 と ラ ト ウ' ィ アのイ メ ー ジと の相互連関 を構築 し て い る。 ウルマニ ス 体制が民主主義的諸価値 を破壊 し た と い う 事実 に も かかわ らず、 こ の思考法では民主 主義期は無視 さ れる。 傑出 し た ラ ト ウ' ィ ア人歴史家 で あ る エ ド ガル ス ・ ア ンデル ソ ン スは、 民主主義 と ナ シ ョ ナ リ ズ ムがバル ト 諸国 の二 つ の重要 な次元 で あ っ た、 と 結論 づけ る。 「 バル ト 諸 国は、 ナ シ ョ ナ リ ズ ム と 民主主義 の記号 の も と に創造 さ れた。 し か し な が ら、 バル ト の人 々は間 も な く 、 ナ シ ョ ナ リ ズムと 民主主義は建設力 で あ る だけで な く 、 破壊の源 泉 で あ る こ と も学 ん だ。」 2現実 には、 第一次世界大戦後 の ラ ト ウ' ィ アの政治 シス テ ムはき わめて多 く の多 様な政党 を持 ち、 こ のこ と が民主主義の権威 を傷つけ るのに一 役買 っ た。 ナ シ ョ ナ リ ズ ムの ス ロ ー ガ ンは権威主 義 へ の道 を 舗装 す る の に 使 わ れた。 民主主義 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム と のあ い だ のバ ラ ン スは、 いま も ラ ト ウ' ィ ア政治 の き わめ て重要 な問題で あ る。 ラ ト ヴイ ア語話者 と ロ シア語話者の集合的記憶の構築に際 し て異な る社会的 ア ク タ ー がき わめて影響力 を有 し て い る。 こ こ で特 に重要 な のは、 ロ シア語 マ ス メ デ ィ ア と ラ ト ウ' ィ ア語 マ ス メ デ ィ ア で あ る。 そ の結果、 ラ ト ヴ イ ア人 の あ い だ で 構築 さ れ る 記憶 と ロ シ ア人 の そ れ と が対 極的記憶 を な し 、 そ れが対 極的 ア イ デ ン テ イ テ イ の基 礎 と し

(5)

て も 機能 し て い る。 ラ ト ウ' ィ ア人 の ア イ デ ン テ イ テ イ は正 統化 ア イ デ ン テ イ テ イ と し て 生 起 し 、 ロ シ ア 人 の そ れは、 よ り 典 型 的 に 抵 抗 的 ア イ デ ン テ イ テ イ な の で あ る。 1990年代初頭に実施 さ れた調査 と も っ と 最近に行われた調査は、 相異な る集合的記憶 の構築がま さ に今現在 も継続 し て い る こ と を示 し て い る。 こ れはま た、 国民的祝日の 祝 い が表現 さ れ る 仕方 の点 で も 、 ロ シ ア語 マ ス メ デ ィ ア と ラ ト ヴ イ ア語 マ ス メ デ ィ ア で提供 さ れる歴史的 メ ッ セ ー ジの違 い と い う 点 で も、 確認 さ れて い る。 歴史的記憶の構築は、 特定の価値観 を強調 し、 他の も のを隠蔽す る こ と と 関連 し て い る。 た と えば、 ラ ト ヴ イ ア人 の歴史的記憶 は、 典型的 に、 カ ール リ ス ・ ウル マ ニ ス の人柄 と 彼が確立 し た ナ シ ョ ナ リ ズムを強調す る。 つま り、 こ の国の民主主義期に民 主主義 的 価値 を実現 す る た め に な さ れた ラ ト ウ' ィ ア の成果 に は、 さ ほ ど注意 が払 わ れ て い な い。 価値 に お け る こ のバ ラ ン ス を欠 い た状況 は、 現在 の ラ ト ヴ イ ア で も 確認 で き る。 一方 での 「強い指導者」 に た いす る よ り 大 き な信頼が、 他方 で の さ ま ざま の事 柄に及ぼす民主主義的で市民的 な力 の可能性への信頼の不十分 さ と と も に、 存在 し 続 け て い る。 歴史的記憶 の構築は、 ラ ト ウ' ィ ア におけ る民主主義 と ナ シ ョ ナ リ ズム と の あい だ のバ ラ ン スへの攻撃 を助長 し かねな い潜在的可能性 を与 え て い る。 (橋本伸也訳)

<

>

1 Castoffs, M . (2004) . The Power of Identity・ The Information Age・ Economy, Socle and Culture, Vo1.II, Wiley-Blackwell, 2nd ed., p 8.

参照

関連したドキュメント

То есть, как бы ни были значительны его достижения в жанре драмы и новеллы, наибольший вклад он внес, на наш взгляд, в поэзию.. Гейне как-то

岩沼市の救急医療対策委員長として采配を振るい、ご自宅での診療をい

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

[r]

[r]

世紀転換期フランスの史学論争(‑‑)

モノーは一八六七年一 0 月から翌年の六月までの二学期を︑ ドイツで過ごした︒ ドイツに留学することは︑

山本 雅代(関西学院大学国際学部教授/手話言語研究センター長)