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【公判判例研究】博多湾人工島埋立事業公金支出差止訴訟・損害賠償請求訴訟

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Academic year: 2021

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(1)[公法判例研究] 博 多湾 人 工 島埋 立 事 業 公 金 支 出差 止 訴 訟 ・損 害 賠 償 請 求 訴 訟. 井 第 一 審 ・福 岡地 方 裁 判 所 平 成6年(行. ウ)第14号 、平 成6年(行. 上. 男. ウ)第15号 、. 平 成6年(行. ウ)第16号 、損 害 賠 償 等 請 求 、 公 金 支 出 差 止 請 求 事 件 、 平 成. 10年3月31日. 第 二 民 事 部 判 決 、 請 求 棄 却 、 却 下(確 定)。 判 例 タイ ム ズ 第. 998号149頁 、 判 例 時 報 第1669号40頁. 禎. 。. 以 下 、Ⅰ お よびⅡ で 事 実 の 概 要 に ふ れ 、 皿 で 争 点 お よび 裁 判 所 の 判 断 を整 理 し、Ⅳ でⅢ に お い て 整 理 した 枠 組 み に そ っ た 検 討 を 行 う。. 博 多 湾 人 工 島 埋 立 事 業 に つ Ⅰ  い て. 福 岡 市 は 、広 域 交 流 拠 点 機 能 の 整 備 の た め の 「 港 湾 機 能 の 強 化 」、 市 の 産 業 の 高 度 化 と人 材 の 定 着 を図 るた め の 「 サ イ エ ン スパ ー ク の 形 成 」、 住 宅 用 地 お よび 親 水 性 の 高 い 緑 地 空 間 の 創 造 を 内 容 とす る 「 快 適 な 都 市 空 間 の 形 成 」、 東 区 和 白周 辺 の 交 通 渋 滞 の 解 消 を 核 とす る 「 東 部 地域 の 交 通 体 系 の 整 備 」 を 目的 と して 、1989年7月. の 博 多 港 港 湾 計 画 の 改 定(当 初 か らの陸続 き約550ヘ ク. タ一ル の埋立 計画 を変 更)に 基 づ き 、 博 多 湾 東 部 の 既 存 の 海 岸 線 お よび 前 面 の 海 域(和 白干潟)を 残 し な が ら、 和 白干 潟 沖 の 南 西 水 域 に 「人 工 島 」(「 アイ ラン ドシティ 地 区」)を建 設 す る 事 業 を推 進 した 。 当該 事 業 は 、 国 、 福 岡 市 に 加 え 、 第 三 セ ク タ ー 方 式 で 福 岡 市 が 国 と博 多 港 開 発 株 式 会 社 と と も に 設 立 した 博 多 港 ふ 頭 株 式 会 社 に よ つ て 行 わ れ た 。 当該 埋 立 工 事 は1994年7月. に 着 手 され 、 人 工. 島 方 式 に変 更 後 の 総 埋 立 面 積 は401.3ヘ ク タ ー ル 、 着 手 後 約10年 間 で全 体 の 土 地 造 成 を 完 了 す る 計 画 で あ る(進捗状 況 として は、2003年 度 まで に、全 体面積 の うちの約212ヘ クタール:53パ ー セ ン トの用 地 が竣工 済み)。 総 事 業 費 は4588億 円 で あ る(1)。 「ア イ ラ ン ドシティ ー 整 備 事 業 」 と称 され る 当 該 事 業(以 下、本 件事 業)は 、 そ の 実 施 ま で に 、 1984年8月28日. の 閣議決 定 に よる 「 環 境 影 響 評 価 実 施 要 綱 」(以下 、閣議 アセ ス)等 に 基 づ く環 境 影. 響 評 価(以 下、本件 アゼ ス)に か か わ る諸 手 続(事 業 者 である福岡市 に よる準備書 の作成 ・広 告 ・縦 覧 、説 明会の 開催お よび意 見聴 取 、事 業者 によ る評価 書 の作 成 ・広告 ・縦覧 等)、 さ ら に は 、 公 有 水 面 埋 立 法 (以下 、埋立法)に 基 づ く埋 立 免 許 付 与 の 諸 手 続(港 湾管理者 の長で ある福 岡市長 への埋 立免許 出願 、出願 の告 示お よび埋 立願 書等 の書類 の縦覧 等 、港湾 管理者 の長 か ら主務大 臣で ある運 輸大 臣(当時)へ の認 可 申請.

(2) 等 お よび 認 可 、 港 湾 管 理 者 の 長 か らの 免 許 付 与 等)を 経 て い る(以 上 、 本 件 ア セ ス と埋 立 法 上 の 両 手 続 を 、 本 件 手 続 と用 い る)。. Ⅱ本 件 訴 訟 と当事 者 の主 張. 本 件 事 業 に つ い て は3つ の 事件(第14号 事件 、第15号 事件 、第16号 事 件)が 提 訴 され 、 本 件 訴 訟 に お い て 併 合 審 理 が 行 わ れ た。 ま ず 、第14号 事 件 で は 、 本 件 事 業 を め ぐ る調 査 ・研 究 等 に 目的 を 限 定 した 、福 岡 市 に 住 所 を有 す る権 利 能 力 な き 社 団 「 博 多 湾 人 工 島 を考 え る 会 」 が 原 告(X1)と して 、 地 方 自治 法(以 下、地 自法)第242条 の2[2002年3月. な り、福 岡 市 長 を被 告(Y1) と. の地 自法 改正 以前 の規 定。以 下、本 条 につ き. 同様。 なお、2002年 に改正 され た地 自法 について は 「 改 正地 自法」 と用 い る]第1項 第1号 支 出 差 止 請 求 お よ び 、 地 自法 第242条 の2第1項. 第4号. に 基 づ く公 金. に 基 づ く損 害 賠 償 請 求 を 行 っ た。. こ こ でX、 は 、 環 境 保 全 へ の 配 慮 の 不 十 分 さが 埋 立 法 第4条. 第1項 第2号(公. 有水面埋 立免 許 の許. 可事 由)違 反 を構 成 し、 さ らに 本 件 環 境 影 響 評 価 の 内 容 お よ び 手 続 の 不 当等 が 、 地 方 公 共 団 体 の 執 行 機 関 で あ るY1の. 誠 実 執 行 義 務 を 定 め る 地 自法 第138条 の2に 違 反 す る こ と、 そ して こ の2. 点 に よ り、 本 件 事 業 に は 「 重 大 か つ 明 白 な 違 法 性 が 存 在 す る 」 こ と を 主 張 した。 さ らに 本 件 事 業 は 「 環境 権」 お よび 「 付 近 住 民 の 人 格 権 」 を 侵 害 す る も の で あ り、 憲 法 第25条 お よび 第13条 に 違 反 す る と主 張 した。 こ れ に 対 しY1は. 、 本 案 前 の 抗 弁 と して 、 そ もそ もX1が. 住 民 訴 訟 を提 起 で き る 「 地方 公 共 団. 体 の 住 民 」 に あ た らず 、 原 告 適 格 を有 しな い こ と等 を 主 張 した 。 さ らに本 案 に つ い て も、 本 件 事 業 に か か わ る本 件 手 続 の 適 法 性 を 主 張 し、 「 条 理 上 負 うべ き 一 般 的 抽 象 的 義 務 にす ぎ 」 な い 誠 実 執 行 義 務 に そ く して も な お 、Yiは. 、 埋 立 法 上 の 適 正 な 手 続 を行 使 して い る こ と 、 さ ら に 、 こ う. した 環 境 に 配 慮 した 環 境 保 全 対 策 を講 じて い る が ゆ え に 、 人 格 権 お よ び 環 境 権 へ の 侵 害(憲 法第13 条お よび第25条 違反)も な い と した 。 つ ぎ に 、第15号 事 件 で は(第14号 事件 の原 告を構成 す る 自然 人 とは別 の)自 然 人 で あ る福 岡 市 の 住 民 ら が 原 告(X2)と 第1項 第1号 こ こ でX2は. な り、(第14号:事件 同様)行 政 庁 と して の 市 長 を被 告(Y1)に. 、 地 自 法 第242条 の2. の 規 定 に 基 づ く公 金 支 出 差 止 請 求 を 行 っ た 。 、 和 白干 潟 等 の 自然 環 境 の 重 要 性 を 主 張 し、 本 件 事 業 が 埋 立 法 第4条 第1項. 第1. 号 に い う 「国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 」 と は い えず 、 事 業 自体 に 必 要 性 お よび 合 理 性 が認 め られ な い こ と 、 ま た 本 件 事 業 に よ っ て 自然 お よび 生 活 環 境 が 著 し く破 壊 され る か ら、本 件 事 業 が 埋 立 法 第4条 第1項. 第2号(埋. 立 に際 しての環境保 全等へ の配 慮規 定)に 違 反 し、 福 岡 市 民 の 人 格 権 お よび 環. 境 権 を侵 害 す る こ と を 主 張 した。 さ ら にX2は. 、 本 件 事 業 が 、 埋 立 法 第4条 第1項. 第3号 の 「法. 律 ニ 基 ク 計 画 」 と して の 環 境 基 本 法 上 の 環 境 基 本 計 画 等 や 、 い わ ゆ る ラ ムサ ー ル 条 約 等 の諸 条 約.

(3) に 違 背 し、 埋 立 法 第4条 第1項 違 反 とな る こ と 、 さ らに 本 件 手 続 が 憲 法 第31条 の 適 正 手 続 の保 障 に も反 す る こ と を 主 張 した。 これ に 対 しY1は. 、 本 案 前 の抗 弁 と して 、 第14号 事 件 と第15号 事 件 の 請 求 内 容 が 重 複 す る た め 、. 第14号 事 件 が 適 法 に係 属 して い るの な らば 、 第15号 事 件 の 訴 えは 地 自法 第242条 の2第4項(別. 訴. 禁止 規定)に 違 反 し不 適 法 で あ るこ と を主 張 した 。 さ らに 本 案 に つ い て も、 本 件 事 業 の 各 目的 に そ っ た 必 要 性 お よび 本 件 事 業 の 手続 上 の 適 法 性 等 を 主 張 し争 っ た 。 最 後 に 、 第16号 事 件 で は 、 福 岡 市 に 住 居 を 有 す る 住 民 ら(第14号 事件 の原 告 を構成 す る 自然 人 と一 部 重複 す る)が 原 告(X、})と な っ て 、 第14号 事 件 の 請 求 原 因 を 引 用 し、 ま ず は(第14号:事件 お よび第15 号事 件同様 に)行 政 庁 と して の 福 岡 市 長 を被 告(Yl)と. して 、 地 自法 第242条 の2第1項. づ く公 金 支 出差 止 請 求 を行 っ た 。 さ らに 第16号 事 件 に お い てX3は. 第1号. に基. 、 市 長 個 人 も被 告(Y、)と して 、. 第14号 事 件 同様 の 損 害 賠 償 請 求 を行 っ た 。 これ に 対 しY2は. 、 本 案 前 の 抗 弁 と して 、 第16号 事 件 に先 立 っ て 第14号 事 件 が 係 属 して お り、. 両 事 件 の 請 求 が 重 複 す る た め に 、 第14号 事 件 が 適 法 に係 属 して い る の な らば 第16号 事 件 の 訴 え は 地 自法 の 別 訴 禁 止 規 定 に よ っ て不 適 法 とな る こ と、 第14号 事 件 が 不 適 法 で 第15号 事 件 が 適 法 に係 属 して い る の な らば 、 第16号 事 件 の 訴 え の うち ヽ 市 長(Y1)を 一 内 容 に な るの で. 被 告 とす る請 求 は 第15号 事 件 と 同. 、 別 訴 禁 止 規 定 に よ っ て 不 適 法 と な る こ と等 を 主 張 した。 本 案 に つ い て は 、第. 14号 事 件 の 主 張 を 引 用 した 。. 争 点 お よび判 旨. Ⅲ . 第14号事 件につ き、却 下。 訴訟費用 は原 告(X1)の 負担。 第15号 事件につ き、原 告 ら(X2)の 請求 を棄却。 訴訟 費用はX2の 負担。 第16号 事件 につ き、本件口 頭弁論 終結 時 に福 岡市に住所 を有 しな い原 告2名 の 訴 えを却下 し、その余 の原 告 ら(X3)の 請 求 を棄却。訴 訟費用 はX3の 負担。. 1.住 X1は. 民 訴 訟 に お け る権 利 能 力 な き社 団 の 原 告 適 格(第14号 事 件の却下理 由) 権利 能 力 な き社団 で あ るが 、 「 権 利 能 力 な き社 団 につ いて も、 法人 と同様 に 、 主 た る事. 務 所 の 所 在 地 を住 所 地 と考 え て 何 ら不 都 合 は な い(地 方税法317条 の2第7項. 参照)か ら、 主 た る事 務. 所 の 所 在 地 が 定 め られ て い れ ば 、 これ を 法 人 と 区 別 して扱 う理 由 は な い 」。 ま た 、権 利 能 力 な き 社 団 に 原 告 適 格 を認 め て も 、 なお 個 人 と して の 住 民 が 住 民 訴 訟 を提 訴 す る こ と は 可 能 で あ り、 さ ら に 代 表 者 の 定 め が あ る権 利 能 力 な き 社 団 は 、 法 人 同 様 に 地 方 税 の 納 付 義 務 を負 う(地方税 法第12 条)か ら、 「 権 利 能 力 な き社 団 で あ る か ら と い っ て 、 そ の こ と の故 の み を も って 、 原 告 適 格 を 否 定 す るの は 相 当 で な い 」。 も っ と も、 権 利 能 力 な き社 団 の 設 立 目的 が 、 「当 該 地 方 公 共 団 体 の 住 民 で は あ っ て も 、 個 人 と して は住 民 訴 訟 を 提 起 す る意 思 の な い 者 た ち が 、 専 ら団 体 の 名 で住 民 訴 訟 を 提 起 す る 目的 で 権 利.

(4) 能 力 な き 社 団 を 結 成 した り… さ らに は 、 住 民 で さ え な い 者 た ち が 住 民 訴 訟 を提 起 す る 目的 で 参 集 して 、 権 利 能 力 な き社 団 を結 成 し、 そ の 主 た る 事 務 所 を 当 該 地 方 公 共 団 体 の 区域 内 に 置 く こ とに よ っ て 、 右 住 民 訴 訟 を提 起 す る」 場 合 に は 、 「 住 民 訴 訟 の 制 度 趣 旨に 反 す る」。 こ う した 場 合 に は 、 当該 社 団 の 原 告 適 格 を否 定 す べ き で あ る。X1は. 「 設 立 時 期 と訴 訟 活 動 開 始 時 期 とが 比 較 的 密 着. して い る こ と、 そ の 後 も右[住 民監査 請求 お よび本 件訴 えの提 起似 外 に は さ した る 活 動 を 展 開 して い な い こ と 、 会 員 資 格 を福 岡 市 民 に 限 定 して お らず 、 現 に福 岡 市 民 で な い者 が 会 員 に な っ て い る こ とが 認 め られ るか ら … 総 合 的 に 考 慮 す る と 、 原 告 に つ い て は 、 右 場 合 に 当 た る 」 。X1に. は原. 告 適 格 は 認 め られ な い 。. 2.Y1・Y2の. 本 案 前 の 抗 弁 な い しは 各 事 件 の 関 連 。 地 自法 上 の 別 訴 禁 止 規 定 と民 訴 法 上 の 共. 同 訴訟参 加 (第15号 事 件) 第14号 事 件 の 訴 え が不 適 法 で あ り、 同 事 件 が す で に 係 属 して い る と の理 由 に よ っ て 、 第15号 事 件 の 訴 え が 禁 止 され る とい う こ とは な い 。 よ っ て 、 第15号 事 件 に お い てY1が. 主張 す る本案 前 の. 抗弁 に は理 由が ない。 (第16号 事 件) 第14号 事 件 の 訴 え が 不 適 法 で あ る 以 上 、 第16号 事 件 の 訴 え が 、 地 自法 第242条 の2第1項. 第4. 号 違 反(損 害賠 償請 求)を 問 わ れ る 理 由 は な い。 も っ と も、 第15号 事 件 と第16号 事 件 との 訴 え の 同 一 性 の 有 無 の 判 断 に 際 して は 、「 単 に請求 の趣 旨 が 同 一 で あ るか 否 か で は な く、 請 求 の 対 象 と な る行 為 が 実 質 的 に 同 一 で あ る か否 か に よ っ て 決 せ られ る 」。 両 事 件 は 「 公 金 支 出 の 対 象 事 業 の 点 で は 殆 ど重 な り合 う関係 に あ る し… 結 局 、 両 者 の 請 求 の 対 象 は 同一 で あ る もの と認 め られ る。 した が っ て 、 第16号 事 件 の うち被 告 市 長[Y1]に 対 す る 訴 え は 、 地 方 自治 法242条 の2第4項. に 違 反 して い る もの とい わ ざ る を 得 な い 」 。 「しか し. な が ら、 こ の よ うな場 合 に お い て も、 後 訴 が 住 民 訴 訟 と して の他 の 要 件 を充 足 して い る の で あ れ ば 、 民 事 訴 訟 法52条 の 共 同訴 訟 参 加 と して の 効 力 が あ る もの と して 扱 うの が 相 当 で あ る か ら、 い ず れ に して も 直 ち に不 適 法 と して却 下 す べ き で は な い 」 。. 本案 につ き、 「 第15号 事 件 の 訴 え と第16号 事 件 の うち 被 告 市 長 に 対 す る訴 え([た だ し、第16号 事 件 につ き本 件 口頭 弁論終結 時に福岡市 に住所 を有 しない原 告2名 の訴 えは除 く])に つ い て は 、 これ を共 同 訴 訟 と して 取 り扱 い 、 こ こ で 一 括 して 判 断 す る こ と とす る 」 。. 3.本. 案 に つ き 、 住 民訴 訟 に お け る 公 金 支 出 の 原 因 行 為 の 違 法 性 に 関 す る 問 題. 「(地自法)242条 の2第1項1号. に 基 づ く差 止 請 求 訴 訟 は[最 判 昭和53年3月30日 が判 示す る、財 務. 会 計上 の違法 な行 為また は怠 る事 実の予防 ・是正 を裁判 所 に請求 す る権能 を住民 に与 える ことによ って、 地.

(5) 方財務 行政 の適 正な運営 を確 保す る ことを 目的 とす る]住 民 訴 訟 の 一 類 型 と して 、財 務 会 計 上 の 行 為 を 行 う権 限 を 有 す る 当 該 執 行 機 関 又 は 職 員 に 対 し、 職 務 上 の 義 務 に違 反 す る財 務 会 計 上 の 行 為 の 差 止 め を求 め る も の に ほ か な ら な い か ら、 右 差 止 め の対 象 とな る 当該 執行 機 関 又 は職 員 の 財 務 会 計 上 の 行 為 自体 が 財 務 会 計 法 規 上 の 義 務 に 違 反 す る違 法 な もの で あ る こ とが 必 要 で あ り、 た と え こ れ に 先 行 す る 原 因行 為 に違 法 事 由 が 存 す る 場 合 で あ っ て も 、 それ の み で は 足 りず 、 更 に 右 原 因 行 為 を 前 提 と して され た 当該 執 行 機 関 又 は 職 員 の 行 為 も違 法 と評 価 され る も の で な け れ ば な らな い ・(最高裁 平成4年12月15日 第3小 法廷判決 民集46巻9号2753頁 参照)」 。, 「た だ 、 原 因 行 為 が い わ ゆ る行 政 処 分 に 該 当す る と き は 、 行 政 事 件 訴 訟 法3条2項. の取 消訴訟. に よ り取 り消 され な い 以 上 、 あ くま で 有 効 な も の と して 取 り扱 わ れ る か ら、 この 場 合 に は 、 単 に 原 因 行 為 が 違 法 で あ る こ とを 主 張 す る だ け で は 足 りな い 」。 「 そ して 、埋 立 法2条1項. に規定 す る. 免 許 は … 右 取 消 訴 訟 の 対 象 とな る 『行 政 庁 の 処 分 』 に 当 た る 」 か ら、 「 右 免 許 は、取 消訴 訟 に よ り取 り消 され な い以 上 は 、一 応 有 効 な も の と して 取 り扱 われ ざ る を 得 な い 性 質 の もの で あ る … 。 そ うす る と、 埋 立 免 許 を 取 得 した 者 と して は 、 右 免 許 が 取 消 訴 訟 な ど の よ り取 り消 され な い以 上 は 、 こ れ が 有 効 で あ る こ とを 前 提 と して 振 舞 っ て よ く、 右 免 許 が 違 法 で あ る か否 か を 検 討 す べ き 法 的 義 務 を 負 っ て い る とか 、免 許 が違 法 で あ る と判 断 した と き は これ に 基 づ く埋 立 工 事 を 中止 す べ き義 務 を負 っ て い る な ど と解 す る こ と は で き な い 」。 「 右 の 理 は 、埋 立 免 許 を取 得 した者 が 地 方 公 共 団 体 で あ る と き もそ の ま ま 当 て は ま る もの とい うべ く 、 した が っ て 、 右 地 方 公 共 団 体 の 長 が 右 免 許 を踏 ま え て 工 事 請 負 契 約 を締 結 す る な ど し、 これ に 基 づ い て公 金 支 出 を した か ら とい っ て 、 右 支 出 行 為 が 直 ち に違 法 とな る こ と は な い 」。 「 た だ し、 右 免 許 が 著 し く合 理 性 を 欠 き 、 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 しえ な い 瑕 疵 が あ る と い う場 合 に は 、 右 免 許 の 有 効 性 を 前 提 と した 財 務 会 計 上 の 措 置 を講 じ る義 務 は な い ば か りか 、 そ の よ うな 措 置 を講 じるべ き で は な い の で あ って 、 そ れ に もか か わ らず 当該 措 置 を 講 じた と き は 、 違 法 性 が あ る も の と解 す るの が 相 当 で あ る(最 高裁 平成4年12月15日 第3小 法廷判決 民集46巻9号2753 頁 参照)」。 「 そ こで 、 本 件 に つ い て これ を 見 る と 、 証 拠 上 、 本 件 免 許 が 取 消 訴 訟 で 取 り消 され た とか 、 港 湾 管 理 者 の 長 た る福 岡 市 長 が 本 件 免 許 を 職 権 で 取 り消 した とい う事 実 は 認 め られ な い か ら、 本 件 免 許 は 一 応 有 効 に存 在 して い る もの とい うべ く、 した が っ て 、本 件 公 金 支 出 等 が違 法 と な るた め に は 、 本 件 免 許 が 著 し く合 理 性 を 欠 き そ の た め これ に 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 し得 な い瑕 疵 が あ る こ とが 必 要 で あ る 」 。. 4.本 (1)同 X2の. 案 に つ き、 埋 立 法 第4条 第1項 違 反 お よ び そ の 他 法 令 違 反該 当 性 条 項 第1号 違 反 主 張 は 、 和 白 干 潟 等 の 重 要 な 自然 環 境 を 犠 牲 に して ま で本 件 埋 立 て を遂 行 す る必 要 は な. い と い う趣 旨 と解 され る。 埋 立 て の 必 要 性 の 要 件 の 具 体 化 に 関 す る証 人 証 言 お よ び 同 旨 のX2の.

(6) 主 張 で ある 「 ① 海 浜 で な け れ ば 立 地 で き な い も の で あ る こ と 、② 必 要 最 小 限 の 計 画 で あ る こ と」 とい う基 準 に つ い て は 、 「 埋 立 て と 自然 環 境 の 保 全 との 調 和 を 図 る とい う観 点 か らは 有 用 な もの で あ り、特 に 埋 立 て の 施 策 を 立 案 ・決 定 す る任 に あ る者 と して は 、 当該 埋 立 て の 是 非 を 慎 重 に 判 断 し、 自然 環 境 へ の 影 響 を 最 小 限 に止 め るた め に右 基 準 を採 用 す る こ とが 期 待 され る の で は あ る が 、 これ を 埋 立 法4条1項1号. の 解 釈 論 と して 採 用 す る こ とが で き る か とい え ば 、 消 極 とせ ざ る. を 得 な い 」。 本 件 埋 立 て の 対 象 が「 重 要 な 自然 環 境 で あ る 和 白 干 潟 の 前 面 浅 海 域 で あ る こ と を 考 慮 す る と」、 埋 立 て の 「 必 要 性 の 程 度 は 相 当 高 度 の も の で な け れ ば な らな い 」 が 、 人 工 島 建 設 の 必 要 性 は 認 め られ る。 ま た 「 本 件 整 備 事 業 に 係 る 予 算 は 福 岡 市 議 会 に お い て 議 決 され て お り」 「必 要 以 上 の 過 大 な も の で あ る との 評 価 は され て い な い こ とが 窺 わ れ る か ら 、 単 に 費 用 負 担 が 大 で あ る こ と を もっ て 直 ち に 本 件 整 備 事 業 に 合 理 的 な 必 要 性 が な い と結 論 す る こ とは で き な い 」。 (2)同. 条 項 第2号 違 反 お よ び 人 格 権 ・環 境 権 の 侵 害. 「(本件整備 事業 にお け る環境影 響)評 価 書 に は 、 そ の 内 容 に お い て 決 して 軽 視 す る こ と の で き な い 問 題 点 が あ る」 も の とい わ ざ る を得 ず 、 「 厳 しい 批 判 を免 れ な い 」。 「これ は 、 環 境 影 響 評 価 を して 本 来 備 え て い な けれ ば な らな い 筈 の 科 学 的 で 客 観 的 な 正 確 と はや や 異 質 な も の を感 じ させ さ え す る 」。 「しか しな が ら、 本 件 環 境 影 響 評 価 及 び 本 件 評 価 書 は お よ そ 環 境 影 響 評 価 の 名 に値 し な い も の と い うべ きか とい え ば 、 そ こ ま で 決 め つ け る こ とは で き な い し、 そ れ 故 、 福 岡 市 が 一 応 の 環 境 影 響 評 価 の義 務 を果 た して い る こ と を 否 定 す る こ と も で きな い 」 。 「そ うす る と、 本 件 整 備 事 業 が 埋 立 法4条1項2号. に 違 反 して い る とか 、 福 岡 市 民 の 人格 権 ・環 境 権 を侵 害 す る と は未 だ い. え ず 、 結 局 こ の 点 に 関 す る原 告 らの 主 張 は 採 用 す る こ とが で きな い 」 。 (3)同. 条 項 第3号 違 反. 環 境 基 本 法 第15条 に 基 づ く環 境 基 本 計 画 お よ び 生 物 の 多 様 性 に 関 す る 条 約 に基 づ く生 物 多 様 性 国 家 戦 略 は 、 「い ず れ も本 件 免 許 時 に お い て は 存 在 しな か っ た の で あ り、 本 件 免 許 が こ れ ら に 違 反 す る か ど うか を 論 ず べ き理 由 が な い 」 か ら、X2の (4)同. 「 主 張 は 失 当 で あ る 」。. 条 項 違 反(自 然 保 護 に 関 す る 条 約 違 反). 「和 白干 潟 が ラ ムサ ー ル 条 約 の 登 録 湿 地 に な っ て い な い こ と は 当事 者 間 に争 い が な く 、 ま た … 福 岡 市 と して は 、 本 件 埋 立 事 業 の 実施 に お い て 、 湿 地 及 び 水 鳥 の保 全 に 一 応 留 意 して い る こ とが 認 め られ る か ら、 本 件 埋 立 事 業 が 右 条 約 に違 反 して い る とは い え な い 」 。「 各2国. 間 渡 り鳥 条 約 に. つ い て は … 努 力 義 務 規 定 しか 置 い て お らず 、 そ もそ も条 約 違 反 を 云 々す る こ とは で き な い 」。. 5.本 X2の. 案 に つ き、 憲 法 第31条 違 反 お よ び 地 自 法 第138条 の2違 反 該 当性 主 張 は 、 福 岡 市 が 法 令 等 所 定 の 意 見 聴 取 手 続 を 誠 実 に 遵 守 して い な い との 主 張 と解 され. る が 、 「福 岡 市 は 法 に 従 っ た 手 続 は 適 正 に 履 践 して い る とい う こ とが で き るか ら」X2の. 主張に. は理 由 が な い 。 環 境 影 響 評 価 につ い て のX2の. 主 張 は 、 結 局 の と こ ろ 市 が 依 拠 した 閣 議 ア セ ス に対 す る 「 批判.

(7) 的 な 立 法 政 策 論 」 に す ぎ な い。 「も っ と も 、福 岡 市 が 真 に 和 白干 潟 等 の 自然 環 境 の 保 全 を 重 視 し、 そ れ と本 件 整 備 事 業 の 調 和 と い うこ と を 目指 して い る の で あ れ ば 、 右 事 件 原 告 ら[X2]の. 主張す. る よ うな環 境 影 響 評 価 の 手 法 を採 用 す る こ と も決 して 不 可 能 な こ とで は な い の で あ る か ら、 そ の 限 りで は 、右 事 件 原 告 ら[X2]の 批 判 を 単 な る 立 法 政 策 論 に す ぎ な い と して 簡 単 に 切 り捨 て て し ま うの も適 当 と は い え な い。 しか しな が ら、本 件 整 備 事 業 の 実 施 の 時 点 にお い て は 、 環 境 影 響 評 価 の 実 施 の 具 体 的 な 拠 り所 と な るの は 実 施 要 綱[閣 議 アセ ス]し か な か っ た の で あ り、 しか も 実施 要 綱 自体 が 閣議 決 定 とい うい わ ば 行 政 機 関 内部 の 取 決 め に す ぎ な い た め 、 実 施 要 綱 に も とづ く環 境 影 響 評 価 も 、 あ く ま で も法 的 拘 束 力 を 有 しな い 行 政 指 導 と して 、 事 業 者 の 任 意 の 協 力 が あ っ て 初 め て 実 施 され る に と ど ま る(…)と い う状 況 に あ っ た こ と も事 実 で あ る 」。 「 そ うす る と、 福 岡 市 が 実施 要 綱 に 規 定 され た と こ ろ 以 上 の環 境 影 響 評 価 を実 施 す べ き 法 的 義 務 を 負 う もの とす る こ と は で き ず 、 した が っ て 、 右 事 件 原 告 ら[X2]の 主 張 は 、 結 局 の と こ ろ 、 本 件 整 備 事 業 な い しは 本 件 免 許 の 違 法性 を 根 拠 付 け る もの た り得 な い 」。 Ylの. 環 境 影 響 評 価 条 例 制 定 へ の 消 極 的 態 度 に つ い てX2が. 行 っ た 批 判 は 、 条 例 制 定 がY1の. 「 政 治 的 裁 量 」 に 属 す る事 項 で あ る以 上 、 不 作 為 の 違 法 と い う こ とは で き な い 。 X3(第16号 事 件原 告)が 疑 問 を呈 す る 、 本 件 環 境 影 響 評 価 書 の 作 成 過 程 を め ぐ る 主 張 に つ い て は 、 い ず れ も採 用 す る こ とが で き な い 。. 6.結 X2お. 論部分 よ びX3のY1に. 埋 立 法 第4条 第1項 のX2の. 対 す る請求 につ い ては 「 い ず れ も理 由 が な い こ とに 帰 す る 」。 も っ と も 、・ 第1号. に つ き 、 埋 立 て の 必 要 性 の 要 件 の 具 体 化 に 関 す る証 人 証 言 お よび 同 旨. 主 張[前 記4一(1)部 分 で示 した①② の2要 件]に 照 らせ ば 、 埋 立 て の 必 要 性 の 有 無 に つ い て. の 結 論 が 異 な る か も しれ な い し 、 「 本 件 環 境 影 響 評 価 の 在 り方 に つ い て も 、 決 して 軽 視 し得 な い 問題 点が あ る」 。 「しか も 、本 件 整 備 事 業 に 対 して は 、 福 岡 市 民 は も と よ り相 当 広 範 に 根 強 い反 対 意 見 が あ る こ と も 既 に 見 た と こ ろ か ら明 らか で あ る の に 、 福 岡 市 と して は右 意 見 に 真 摯 に 耳 を傾 け る 姿 勢 に 欠 け る 嫌 い が な か っ た と は い え な い 」。 「これ らの 諸 事 情 を 踏 ま え る な らば 、 こ の 際 、 本 件 整 備 事 業 を抜 本 的 に見 直 す とい う よ うな こ と さ え一 つ の 政 治 的 な 決 断 と して 考 え られ な い で は な い 」。 「しか しな が ら、 前 記 の よ うな 法 的 判 断 が 導 か れ る以 上 、 当 裁 判 所 が 、本 判 決 に お い て 、 進 ん で 右 の よ うな 対 応 に結 び 付 く結 論 を選 択 す る 余 地 は な い も の とい うほ か は な い 」。. X3に. よ るY2に. 対 す る 損 害 賠 償 請 求 は 、 地 自法 第242条 の2第1項. 第16号 事 件 に お け るX3の. 第4号. に 基 づ く もの で あ り、. 主 張 は 、 原 因 行 為 に あ た る本 件 整 備 事 業 に 重 大 か つ 明 白な 違 法 が あ る. こ との み を 主 張 す る も の で あ る。 「そ の 点 で 第15号 事 件 の 訴 え と 同様 の側 面 を 有 す る か ら、 原 因 行 為 の違 法 性 が財 務 会 計 行 為 の 違 法 性 生に ど の よ うに影 響 を及 ぼ す か に つ い て判 断 す る必 要 が あ る が 、 そ の 判 断 基 準 と して は 、 同項1号. に 基 づ く訴 え と別 意 に 解 す べ き理 由 は な く 、 結 局 は 、 本 件.

(8) 免 許 が 著 し く合 理 性 を欠 き そ の た め これ に 予 算 執 行 の適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 し得 な い 瑕 疵 が あ る か 否 か に 従 っ て 判 断 す べ き で あ る」。 「 そ こで 右 基 準 に 従 っ て 検 討 す る と[前記 判示 の とお り]埋立 法4条1項2号. 違 反 、 憲 法13条 ・25. 条 違 反 及 び 地 方 自治 法138条 の2違 反 の い ず れ の 主 張 も採 用 す る こ とが で き な い 」。 よ っ て 、X3のY2に. 検. 1.は. 対 す る損 害 賠 償 請 求 に は理 由 が な い 。. 討. Ⅳ. じめ に. 2002年 の 地 自法 改 正(以 下 、改正地 自法)に よ る新 た な 住 民 訴 訟 規 定(第242条 の2)の 立 法 趣 旨 は つ ぎ の2点 に あ る。 そ の ひ とつ は 、 違 法 な 財 務 会 計 行 為 の 事 前 抑 制 を 図 る 一 方 で 、 き わ め て 例 外 的 な い しは 限 定 的 な ケ ー ス を想 定 す る とい う留 保 の も とに 、 人 の 生 命 へ の 危 険 な い しは 身 体 へ の 重 大 な危 害 、 そ れ に 匹 敵 す る よ うな 重 大 な 利 益 侵 害 の 際 に 差 止 請 求 を認 め な い こ とで あ る。 い ま ひ とつ は 、 第1項 第4号. の損 害 賠 償 請 求 規 定 が 、 個 人 を被 告 とせ ず 、新 た に 地 方 公 共 団 体 の 執 行 機. 関 を被 告 とす る こ とに よ って 、 地 方 公 共 団 体 の積 極 的 な施 策 の 展 開 を 期 待 す る こ と で あ る(2)。 本 件 訴 訟 は こ う した 改 正 地 自法 施 行 前 の住 民 訴 訟 で あ り、 しか も 、 閣 議 ア セ ス の 手 続 が 問 題 に され た事 案 で あ る。 した が っ て 、 そ の今 日的 な意 義 に つ い て は 、 確 か に 稀 薄 の感 を免 れ な い 。 しか し、 本 件 に お け る前 記5つ. の 争 点(皿 一1∼5)は. 、 き わ め て ユ ニ ー ク な も の で あ り、 そ れ. は 「環 境 住 民 訴 訟 」 上(3)、 看 過 で き な い 論 点 を提 示 す る も の とい え る。 そ の 意 味 で 本 訴 は 、 改 正 地 自 法 へ の移 行 後 も な お 参 酌 され る べ き ケ ー ス で あ る よ うに 思 わ れ る。 す な わ ち 本 訴 に お い て 注 目す べ き は 、 さ しあ た り、 い わ ゆ る 閣 議 ア セ ス 等 を根 拠 とす る アセ ス メ ン トが 実 施 され て い た 時 期 に もか か わ らず 、 市 の 行 っ た ア セ ス メ ン トに対 して 、 実 質 的 か つ 批 判 的 な 司 法 判 断 が 下 され た 点 、埋 立 法 や 条 約 を め ぐ る環 境 関 係 法 令 に お け る詳 細 な 議 論 の 展 開 を み た 点 、 権 利 能 力 な き社 団 の 原 告 適 格 性 の 問題 や 別 訴 禁 止 規 定 と共 同 訴 訟 参 加 の 問 題 とい っ た 争 点 が 正 面 か ら取 りあ げ ら れ た 点 、 に な るだ ろ う。 なお 、 本 訴 に つ い て は 、 判 例 タ イ ム ズ お よび 判 例 時 報 冒 頭 に あ る識 者 コメ ン トの ほ か に 、 参 照 の 限 りで 、 す で に 安 本 典 夫 教 授 に よ る 判 例 評 釈 が 公 表 され て い る(4)。 以 下 は 、 こ う した 先 行 研 究 に も適 宜 ふ れ な が ら 、 前 記Ⅲ で 示 した 争 点 と判 旨 に そ く した 検 討 を 行 う。. 2.判. 示Ⅲ 一1部 分 の 検 討. 判 決 は 、 権 利 能 力 な き 社 団 で あ るX、 に 、 主 た る事 務 所 の 所 在 を理 由 とす る住 所 要 件 を認 め 、 地 方 税 の 納 付 義 務 の 観 点 か ら これ を 法 人 同 様 に 解 し、 さ らに 個 人 た る 「 住 民 」 の住 民 訴 訟 提 起 を 妨 げ る も の で は な い こ と を理 由 に 、 ひ と ま ずXlの. 原 告 適 格 を 肯 定 した 。 しか し な が ら判 決 は 、.

(9) X1の. 設 立 目的 に 着 目 した 場 合 、XIが. 「 住 民 」 で は な い者 を も含 み 、 訴 訟 提 起 の 活 動 を 目的 と. す る団体 で あるか ら 「 住 民 訴 訟 」 の制 度 趣 旨 に反 す る と して 、 結 果 的 に 原 告 適 格 を 有 しな い と結 論 づ け て い る。 判 示 に した が え ば 、 住 民 訴 訟 に お け る権 利 能 力 な き社 団 の 原 告 適 格 の 判 断 基 準 は 、① 「 住民訴 訟 」 の 制 度 趣 旨 に か な う団 体 構 成 要 素 と して の 「 住 民 」 の 存 在 と 、② 設 立 時 期 と訴 訟 活 動 の 開 始 時 期 の 切 迫 性 を 基 準 とす る 、 「 住 民 訴 訟 」 の制 度 趣 旨 に か な っ た 当該 団 体 の 設 立 目的 の 存 在 、 と い う こ と に な る(以下 、本件判断基 準①②)。 判 決 も危 惧 す る よ うに 、 当該 地 方 公 共 団 体 の 「 住 民 」 で は な い 者 が 、 も っ ぱ ら訴 訟 を 目的 と し て当該 「 団 体 」 を 結 成 す る こ と に な れ ば 、 確 か に 、 濫 訴 抑 止 の 観 点 か らす る批 判 が 説 得 性 を もつ 。 ま た こ う した 批 判 は 、 判 決 が 念 頭 に 置 く 「 住 民 訴 訟 」 の 制 度 趣 旨 に か な うも の と して 是 認 され る こ と に な る。 後 述 す る よ うに 、 こ こ で どの よ うに 、 ま た どの 程 度 「 住 民性 」 と 「団 体 性 」 に コ ミ ッ トす る か に よ っ て 、 判 断 な い しは 評 価 は 分 か れ る こ と に な る だ ろ う。 本 件 判 断 基 準 ① ② に 拠 れ ば 、判 示 が 「 住 民 訴 訟 」 に お け る 「団 体 性 」 の 意 義 と 「 団 体」 にお け る 「住 民 性 」 の 強 調 とみ るほ か は な い か ら、 いず れ か 一 方 の 問題 と して 論 じ る こ と は で き な い 。 そ こ で ま ず は 、判 決 が 言 及 す る 「 住 民訴訟 」概 念 にふれ な けれ ばな らない。 ここでの私 見 は、 住 民 訴 訟 が い わ ゆ る 「客観 訴 訟 」 で あ り 「 民 衆 訴 訟 」 で あ る こ と を前 提 に して も、 や は りそ こで の 原 告 の 利 益 が 「一 般 の 権 利 保 護 訴 訟 に お け る 原 告 の 利 益 と 全 く異 質 な もの で あ る と は い え な い 」 こ と(5)に 、 留 意 す べ き で あ る と考 え る。 そ の た め に 、 「主 観 訴 訟 」 的 な 要 素 へ の 配 慮 を 当 然 に 除 外 す る こ と は で き な い(6)。 お そ ら く は こ の こ とが 、 「 住 民」 に よる 「 団 体」 の構 成 、 「 団 体 」 を構 成 す る 「 住 民 」 の性 格 を考 え る メ ル クマ ー ル に な る。 前 記 の 観 点 に 立 て ば 、 本 訴 の場 合 、X1に. 対 して 、 本 件 判 断 基 準 ① に つ い て福 岡 市 民 で な い 者. が 一 部 含 ま れ て い る こ と を摘 示 し、 ま た 、 あ く ま で 本 件 判 断 基 準 ② に応 じて そ の 枠 内 で の 「 設立 目的 」 を課 す こ とが 不 可 欠 の 要 請 とい え た の か は 、 疑 問 で あ る。 そ して 、 む し ろ この 種 の 団 体 の .「設 立 趣 旨」 に 照 ら し団 体 の 権 利 能 力 を 重 視 す る立 場 に 拠 れ ば(7)、 特 定 の 事 業 に か か わ る もの で あ っ て も 、 地 方 公 共 団 体 の"一. 定 の"「 住 民 」 を 主 体 と しな が らひ ろ く財 務 行 政 の 適 法 性 の 保 障. に 資 す る 団 体 な ら 、従 来 か らそ れ を 肯 定 的 に 解 す る 見 解 に倣 い(8)、 原 告 適 格 を肯 定 す べ き こ と に な る。 こ こ で 「 財 務 行 政 の適 法 性 の保 障 に 資 す る 」 意 義 は 、 前 記 の よ うな 「 住 民訴 訟」 の 「 主 観 訴 訟 」 的 要 素 へ の 配 慮 の 必 然 性 を認 め て も失 わ れ な い 。 ま た 、 「団 体 」 の 「 設立 趣 旨」 に 照 ら して 「 財 務 行 政 の適 法 性 の 保 障 に 資 す る 」 か 否 か を 判 断 す る 際 に 、 あ え て 本 件 判 断 基 準 ② に み ら れ る よ うな 「 時期 」 の 「 切 迫 性 」 の 要 件 を問 題 にす る こ と もな い 。 こ の ことは、判 決 が前提 にす る 「 住 民 訴 訟 」 理 解 に 依 拠 して も 同 様 に 論 ず る こ とが で き る の で は な い か 。 結 局 、 本 判 決 が 本 件 判 断 基 準① ② の 併 用 を も っ て 考 慮 事 項 とす る 「 住 民性 」 と 「 団体 性 」 の 理 解 に あ っ て は 、 多様 な 「 住 民 性 」 を 容 認 す る こ と に な る は ず で あ る。 こ こ で 従 来 か ら 「 住 民 性 」 を 重 要 視 す る 見 解(9)に 照 ら し て み て も 、 本 判 決 は そ の 射 程 に 収 ま る も の で は な い だ.

(10) ろ う。 そ れ は 、 本 判 決 にお け る"ひ. と ま ず の"X1の. 原 告 適 格 の 肯 定 と は相 容 れ な い か らで あ る。. 本判 決 が、個 人 たる 「 住 民 」 の 住 民 訴 訟 提 起 を妨 げ る も の で は な い こ と に 言 及 しな が ら、 権 利 能 力 な き社 団 で あ るX1の. 原 告 適 格 を"ひ. と まず"認. め た こ とは 、 監 査 請 求 人 と して の 地 位 お よび. 実 体 要 件 の 充 足 の 観 点 か ら原 告 適 格 性 を 否 認 す る 先 例(10)と は 明 らか に 異 な る もの で あ る。 い ず れ にせ よ 、X1の. 原 告 適 格 の 問題 に 限 れ ば 、 本 判 決 が 決 して 「団 体 性 」 の み に 固 執 した 判. 断 を 行 っ て は い な い こ とは 確 か で あ る(そ の意 味 で本件 と注(9)事 件 とを対 照す る意 義 は失われ ない だ ろ う)。 ま た 、 こ こ で独 自の 判 断 枠 組(本 件 判断 基 準① ②)を 示 す こ と に よ っ て 、判 断 の 明 確 性 を 指 向 して い る よ うに も解 され る。 そ の意 味 で 、 本 判 決 に は 、積 極 的 な 評 価 の 余 地 が あ る(11)。 しか し、 前 記 の観 点 か らす れ ば 、 本 件 に お け るX、 の 原 告 適 格 は本 来 的 に 認 め られ る も の に な る か ら、 第14号 事 件 を却 下 す る 必 然 性 は な く な る こ とに な ろ う。 た だ し、 本 訴 にお け るX1の. 原 告 適 格 を め ぐ る 問 題 を 検 討 す る際 に は 、 本 訴 が 併 合 審 理 で あ る. こ と が よ り大 き な 意 味 を もつ 。 つ ま り 、 本 訴 が 併 合 審 理 で あ っ た こ とは 、 第14号 事 件 に お け る X1の 原 告 適 格 を否 認 し却 下 判 決 を 導 い た もの の 、 結 果 的 に は 、 第15事 件 と、 第14号 事 件 の 請 求 原 因 を 引 く第16号 事 件 とを ひ ろ く同 一 の 請 求 と して 扱 い 、 共 同 訴 訟 参加 を認 め た。 つ ま り、 第14 号 事 件 の 審 理 は 事 実 上 、 自然 人 で あ るX3を. 原 告 とす る 第16号 事 件 に移 行 す る こ と に よ っ て 、 そ. の 限 りに お い て で は あ る が 、 実 現 を み た わ け で あ る(こ の点は 、直接 的 には 、以下皿 一3で の検 討課題 に なる)。 そ して 、 併 合 審 理 の 事 情 を考 え る と き に さ ら に 注 目す べ き は 、 第15号 事 件 の 原 告X。 が4号. 請. 求 を 行 っ て い な い こ と で あ る。 この 点 で 本 訴 に は 、 さ ら な る 「 一 定 の 見 解 」(12)を読 み 込 む こ と が 可 能 で あ る。 つ ま り、 あ くま で帰 結 か らの 推 測 で しか な い が 、 裁 判 所 が そ れ に 応 じた こ と も含 め て 、 あ る種 の 訴 訟 技 術 上 の 工 夫 と もみ れ る 本 訴 特 有 の 事 情 が 類 推 され る こ とに な る。 本 訴 に お け る こ う した特 徴 を どの よ うに 考 慮 す べ き か 、 こ の 点 は 容 易 で は な い 。 そ の た め 、 こ こ で の 類 推 が 本 件 の 原 告 適 格 性 の 判 断 に どの よ うに影 響 した の か 、 こ の 点 を加 味 して も な お 、本 訴 が 住 民 訴 訟 に お け る権 利 能 力 な き社 団 の 原 告 適 格 性 を め ぐ る 問題 一 般 に つ い て の 先 例 に な り得 る の か 、 明 言 す る こ と は で き な い。 そ れ で も あ え て 、 こ う した い わ ば 個 別 特 殊 な 事 情 を 内 包 した 本 訴 に お け る原 告 適 格 性 の 問題 を 結 論 づ け る の な らば 、 つ ま る と こ ろ 福 岡地 裁 は 、 何 よ り も濫 訴 な い しは 「 制 度 の 濫 用 的 な 訴 え」 へ の 危 惧 を 重 視 した とみ る こ とが で き るq3)。 そ して本 件 に お い て 、 第16号 事 件 に お い て 口頭 弁 論 終 結 時 に福 岡 市 に 住 所 を 有 しな い 原 告2名 の 訴 え が 却 下 さ れ た こ と も 、 こ う した 危 惧 か ら説 明 す る こ と は 困 難 で は な い 。 前 記 した 「住 民 性 」 の重 視 と 「 住 民」 要 件 の厳 格 理 解 に依 拠 す る ま で も な く 、 訴 えの 提 起 か ら口 頭 弁 論 終 結 時 ま で の 一 貫 した 「 住 民 た る資 格 」 は 、 学 説 ・判 例 に お い て もひ ろ く支 持 され て い る ω 。 「 住 民 訴 訟 」 の 「主 観 訴 訟 」 的 性 格 の 強 調 は 、 お そ ら くは 、 本 件 判 旨 とは 相 容 れ な い も の で あ る。 「 団 体」 にお ける 「 住 民 」 を 問題 に す る場 合 に も、「客観 訴 訟 」 と して の 「 住 民訴訟 」 にお け.

(11) る 「団 体 」 の 「 住 民 」 に は 、 「"一貫 した"住. 民 た る 資 格 」 が な じむ の で あ ろ う。. しか し、 ステ レオ タイ プ の"濫 訴 な る もの"へ の 危 惧 が どれ ほ ど の現 実 性 を もつ もの な の か 、 ま して や 「 住 民 訴 訟 が 客 観 訴 訟 で あ り、誰 で も 出訴 で き る と い い な が ら現 実 に は 最 高 裁 判 決 ま で 十 数 年 か ら20年 余 も か か る か も しれ ぬ 訴 訟 期 間 を 考 慮 す る と 、 お よ そ 転 勤 ・転 職 の な い 定 住 自営 業 者 お よ び そ の 家 族 程 度 しか こ の 権 利 を行 使 しえ ぬ とい う こ と に な る 」(15)とい う事 実 に どの よ うに 対 処 す べ きだ ろ うか 。 こ こで"出口"で. 問 う こ との 意 義 よ り も、 住 民 監 査 請 求 時 お よ び 出 訴. 時 と い う"入 り口"の 問 題 で 考 え る ほ うが 、 は る か に説 得 的 で あ る よ うに 思 う(16)。. 3.判. 示Ⅲ-2部. 分の検 討. 住 民 訴 訟 に お い て 別 訴 が 禁 止 され る 同一 請 求 の 範 囲 を画 す る 基 準 に つ い て 、判 例 は こ れ ま で に 必 ず しも 明 確 な判 断 を 示 して お らず 、 ま た 、 同 一 請 求 の 範 囲 に つ い て の 学 説 は 、① 「 訴 訟物 の同 一 性 に よ っ て 画 す る 」 か 、 ②(監 査 請求 を前 置 してい るか否 かの判 断基 準に 同 じく)「請 求 の 対 象 と な る財 務 会 計 上 の 行 為 又 は怠 る事 実 の 同 一 性 に よ っ て 画 す る」 か に 分 か れ る、 と説 か れ る(17) 。 別 訴 禁 止 違 反 の 不 適 法 な 訴 え の 却 下 を め ぐっ て は 、 た だ ち に 却 下 を 導 くべ き で は な く、 継 続 中 の 訴 訟 へ の併 合 可 能 性 を探 る 見 解 もあ れ ば 、 あ くま で 適 法 な も の と して扱 うこ とが で き な い 以 上 、 却 下 す べ き とす る 見 解 もあ る(18)。 本 件 の 場 合 に は 、 第 一 に 、 第14号 事 件 が 却 下 され 第15号 事 件 が 別 訴 禁 止 規 定 に 違 反 しな い と さ れ た。 こ の こ とは 、 と も に 地 自法 第242条 の2第1項. 第1号. を根 拠 に す る 、(第14号 事 件の請 求原 因. を 引 く)第16号 事 件 に お け る公 金 支 出 差 止 請 求 の 審 理 と、 第15号 事 件 に お け る審 理 の 重 複 を め ぐ る 問 題 を 生 じ る。 こ こ で 本 判 決 は 、 こ の 第15号 事 件 と第16号 事 件 の 関係 を 「 最 も 広 い 『同 一 請 求 』 概 念 」(19)として 取 り扱 い 、 結 果 的 に請 求 対 象 を 同 一 視 しな が ら も た だ ち に 却 下 す る こ と な く、 後 訴 の住 民 訴 訟 と して の 他 の 要 件 の 充 足 を理 由 に 、 共 同 訴 訟 と して 一 括 判 断 して い る。 第 二 に 、Y2(市 に お け るX3の. 長個 人)を 被 告 と した 地 自 法 第242条 の2第1項. 損 害 賠 償 請 求 は 、Y1(行. 第4号. を根 拠 とす る 第16号 事 件. 政庁 と しての市長)を 被 告 と した 第14号 事 件 で のX1の. 請求. 原 因 を 引 く も の で あ っ た 。 こ の 点 に つ い て 判 決 は 、 第14号 事 件 却 下 に よ る 請 求 理 由 の 継 続 可 否 に 明 言 す る こ とな く 、X3のY2に. 対 す る請 求 を 独 自の も の と して 取 り扱 い 、 実 質 的 に 判 断 した 。. こ の 第 一 の 点 に つ い て の 本 判 決 の 特 色 は 、 ま さに 「 参 加 人 の 請 求 項 目の 方 が 当 初 原 告 の請 求 事 項 よ り も広 く、 そ の 下 で 、 あ え て 『請 求 の 同 一 性 』 を ひ ろ く と らえ た と こ ろ 」 に あ り、 そ れ ゆ え こ こで は と く に 、 上 訴 の 段 階 で(本 判決 は確 定 してい るが 、それ で も)請 求 項 目の 広 狭 の 整 合 性 を ど の よ うに と る か とい う問 題 を 残 す(20)。 本 判 決 の 不 明 確 さは 、第 一 の 点 の み な らず 第 二 の 点 につ い て も同 様 で あ る。 こ こで も前 記 請 求 理 由 の 継 続 可 否 に つ い て の 判 断 理 由 が 示 され て しか る べ きで あ る が 、 本 判 決 は こ の 点 に 言 及 しな い。 関 連 して 、 本 判 決 が 「 結 論 部 分 」 に お い て 、 埋 立 免 許 の 合 理 性 と予 算 執 行 の適 正 確 保 が 担 保 され て い る か ら、 本 件 で 問 題 と され る 各 法 令 違 反 を構 成 しな い 、 と して 損 害 賠 償 請 求 に理 由 が な.

(12) い と判 断 した こ と、 す な わ ち1号 請 求 と4号 請 求 を別 意 に 解 さず に 、 市 長 個 人 を 被 告 とす る損 害 賠 償 請 求(4号 請 求)に 固 有 の 判 断 枠 組 み を 示 さな か っ た こ と も非 常 に 不 可解 で あ る(21)。この 点 に つ い て は 、 以 下4で 検 討 す る公 金 支 出 の原 因 行 為 の 違 法 性 を め ぐ る 問 題 で 取 りあ げ る。 い ず れ に せ よ、 こ う した 観 点 か らみ た 場 合 の 本 判 決 の特 異 性 は 、 際 立 っ た も の とい え るだ ろ う。 本 判決 は 、 「 別 訴 の 提 起 が あ っ た場 合 に は 、 他 の 訴 え の 提 起 の 要 件 を備 え て い る限 り不 適 法 と して 却 下 す る こ とな く、 民 事 訴 訟 法75条[注:現. 行規 定 は52条]に よ る共 同 訴 訟 参加 の 申 し出 と して. の 効 力 が 認 め られ る 」 とす る先 例(22)の 枠 組 み に 、 倣 っ た も の か。 た だ 、 こ う した 先 例 同様 に 、 別 訴 禁 止 と訴 訟 参 加 を 「 訴訟行 為 の転換 の一 一種 と して 認 め た も の 」 と考 えれ ば 、 こ こで 「 裁判 所 が 釈 明 して 共 同 訴 訟 参 加 の 医 師 の 有 無 を 明確 に した うえ で 、 そ の 効 力 を認 め るべ き 」 な の か も し れ な い(23>。そ れ で も、 本 判 決 に み られ る こ こ で の"不 明 確 さ"な い しは"特 異 性"は. 、本 訴 特. 有 の 事 情 も し くは 「一 定 の 見 解 」 か らの 帰 結 と して 語 れ ば 足 りる も の な の だ ろ うか。 結 論 か らす れ ば 、 こ う した 別 訴 禁 止 と共 同 訴 訟 を め ぐ る本 判 決 の 判 断 枠 組 み は 、却 下 を 導 くた め の 形 式 主義 的 な 判 断 を 回 避 して い る 点 で 、 お そ ら くは 肯 定 的 に評 価 され る べ き も の だ ろ う。 し か しそ れ な らば 、 実 質 的 な 観 点 か ら、 ま た 「 訴 訟 行 為 の 転 換 の 一 種 」 で あ る な らば な お さ ら の こ と、 こ こ で の 判 断 理 由 の 不 十 分 さ、 不 可 解 さ を 可 とす る こ と は で き な い 。. 4.判. 示Ⅲ―3お. よび結 論部分 の検 討. 公 金 支 出原 因 行 為 の 違 法 性 判 断 に あ た っ て 本 件 福 岡 地 裁 が 依 拠 す る先 例 は 、 い わ ゆ る 「 東 京都 一 日校 長 事 件 」 の 平 成4(1992)年. 最 高 裁 判 決 で あ る(21) 。 教 育 委 員 会 に よ る校 長 の 名 目的 な 嘱 任 行. 為 の 決 定 と、 長 の 補 助 機 関 で あ る 出納 処 理 機 関 の 公 金 支 出 と を切 り離 して と ら え な が ら も、 両者 の関連 にお い て先行 す る非財務 会計 上の行 為が 「 著 し く合 理 性 を 欠 き 、 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 し え な い瑕 疵 が あ る と い う場 合 に は 」、 後 行 す る財 務 会 計 上 の 行 為 に そ の 違 法 性 が 引 き継 が れ る 、 とす る 事 案 で あ る。' 公 金 支 出 原 因 行 為 を"違 法 支 出 行 為"と. して 措 定 す る こ う した 最 高 裁 の 審 理 傾 向 は 、 「 著 しく. 合 理 性 を欠 き 、 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 し え な い 瑕 疵 」 の 実 体 な い しは許 容 範 囲 の 問 題 を 残 す に せ よ 、 こ こ で の"積 極 性"を. 志 向 す る もの と解 され る(25)。本 判 決 も 、 い わ ば こ う し. た傾 向把握 のー 一端 に位 置 づ け られ る もの だ ろ う(26)。 そ れ な ら ば 、 非 財 務 会 計 上 の 行 為 で あ る先 行 行 為 と して の 公 金 支 出 原 因行 為 にお け る違 法 が 、 後 行 の 支 出 行 為 た る財 務 会 計 行 為 に 引 き継 が れ る こ とで 説 明 す れ ば 足 りる の だ ろ うか 。 こ の 点 で 本 件 に お い て な お 注 目す べ き は 、や は り、 先 行 す る公 金 支 出原 因 行 為 が 「 整 備事業 」 であ り 「 免 許」 とい う 「 行 政 庁 の 処 分 」 で あ っ た 点 に な ろ う。 こ の 点 を敷 衍 す れ ば 、判 決 は 、 そ れ が 争 訴 も し くは 職 権 で 取 り消 され な い の な らば 「 一 応 有 効 に 存 在 して い る 」 とす る か ら " 一 応"と. 判 示 す る含 意 は 果 た して ど の よ うな も の か―. 前 提 と して の. こ こで あ え て. 、い わゆ る 「 公 定力 」 理. 論 を 完 全 に 排 除 す る もの で は な い と考 え られ る。 も っ と も 、 この 点 に か か わ る理 解 は 、 そ も そ も.

(13) 「 公 定 力 」 概 念 を どの よ うに み る か に も 拠 る し、 他 方 、 こ こ で 判 決 が 明 言 しな い 「 公 定 力 」 を推 認 す る こ とは 、 違 法 な 原 因 行 為 が 「 行 政 処 分 」 で あ る こ と に い わ ば 親 和 的 で あ る にす ぎ な い と解 す る こ と もで き る。 住 民訴訟 に おい て先行 行 為の 「 公 定 力 」 の 存 在 を前 提 にす る こ とは 、損 害 賠 償 請 求 で あ る4号 請 求 な らば 格 別 、1号 請 求 上 で は 一 般 に 可 能 と され る。 す な わ ち 、 両 行 為 の連 続 性 に 着 目 し、先 行行 為 の 「 重 大 か つ 明 白 な瑕 疵 」 を問 題 に して 無 効 原 因 該 当性 を 説 く こ と で 、 い わ ゆ る 「 違 法性 の 承 継 」 理 論 を"準 用"す. る こ とが で き る わ け で あ る(2η 。 しか も 、 「 行 政 処 分 」 が先 行 す る ケ ー. スに おいて は とくに、 「 違 法 性 」 の 問 題 が 審 理 対 象 の 中 心 に な るか ら(28)、な お さ ら 「 重 大かつ 明 白 な瑕 疵 」 概 念 に 依 拠 す る 意 味 は あ る。 しか し本 件 の 判 断 手 法 に 拠 れ ば 、 こ う した 「 公 定 力 」 理 解 に 基 づ く従 来 の 瑕 疵 理 論 を 前 提 とす る 「 行 政 処 分 」 性 を 、 こ と さ らに 意 識 しな い 用 ではな い. した が っ て厳 密 な 意 味 で の 違 法 性 承 継 理 論 の 引. とみ る こ と も 不 可 能 で は な い 。 そ こで 注 目す べ き は 、 本 判 決 にお い て 「 著 し く合. 理 性 を欠 き 、 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の見 地 か ら看 過 しえ な い 瑕 疵 」 が メ ル ク マ ー ル と して 立 て られ た こ と で あ る。 こ う した 見 解 に 依 拠 す れ ば 、 違 法性 を め ぐ る メル ク マ ー ル 上 で の 瑕 疵 を め ぐ る議 論 が 、 必 ず し も一 般 的 な 「 公 定 力 」理 解 か らの 要 請 に縛 られ ず と判 示 した の か. そ れ ゆ え に 、 判 決 は"一 応". 従 来 の 瑕 疵 理 論 の 俎 上 で論 じ られ る無 効 な い しは 取 消 の観 点 か らす る 「 法主. 体 ・機 関 」 の 問 題 を精 査 す る 必 然 性 と も距 離 を とる こ とが で き る(29)。そ れ ゆ え 、 「 免許 」 の 「 合 理性 」や 「 有 効 性 」 に 対 して 、 果 た して ど の程 度 立 ち 入 っ た 判 断 を行 う こ とが で き るの か とい う 疑 義 に つ い て は ひ とま ず 措 く と して も 、 ま ず は こ こ で 「 予 算 執 行 の適 正 確 保 の 見 地 か ら」 と した 判 示 の含 意 は重 要 で あ る(繰 り返す が、それ で も当該 メル クマール の実 体ない しは許容範 囲の問題 は残 る)。 そ して本 件 に お い て 、 ま ず1号 請 求 上 で 先 行 ・後 行 の 違 法 性 の 問 題 が 論 じ られ て い る こ とか らす れ ば 、 こ う した メル ク マ ー ル 自体 に つ い て は 、 ひ とま ず 評 価 す べ き も の と思 わ れ る。 しか し、 第16号 事 件 を め ぐ る4号 請 求 の 問題 に進 ん だ と き 、 判 決 は 、 こ こで 原 因 行 為 と して の 本 件 整 備 事 業 の"重 大 か つ 明 白な 違 法"の. み を原 告 が 主 張 す る こ と を摘 示 しな が ら、1号 請 求 と. 同 じメ ル クマ ー ル に 拠 る判 断 を行 っ た。 す な わ ち 、 損 害 賠 償 請 求 と して の4号 請 求 の場 合 に お い て も、 「 判 断 基 準 と し て は 、 同 項1号. に 基 づ く訴 え と別 意 に 解 す べ き理 由 は な く 、 結 局 は 、 本 件. 免 許 が 著 し く合 理 性 を 欠 き そ の た め これ に 予 算 執 行 の 適 正 確 保 の 見 地 か ら看 過 し得 な い 瑕 疵 が あ る か 否 か に 従 っ て 判 断 す べ き 」 とす る。 さ らに 、 こ こで の 結 論 は 、 「 右 基 準 に従 っ て検 討 す る と」 「 埋 立 法4条1項2号. 違 反 、 憲 法13条 ・25条違 反 及 び 地 方 自治 法138条 の2違 反 の いず れ の 主 張 も. 採 用 す る こ とが で き な い 」 か ら、X3のY2に. 対 す る損 害 賠 償 請 求 に は 理 由 が な い 、 とす る の み. で あ る。 前 記 し て き た よ うな 、 先 行 行 為 が 「 行 政 処 分 」 で あ る こ と の 特 性 に か か わ る メル クマ ー ル 上 の 議 論 を ひ と ま ず 措 い て も(30)、こ こ で は や は り、1号 請 求 の 問 題 と して 論 じ られ る 先 行 ・後 行 の 違 法 性 の 問 題 が 、4号 請 求 の 問題 と同 列 に論 じ られ て い る こ と を問 題 視 しな けれ ば な らな い 。.

(14) こ の 点 に 関 して は や は り、 「 『職 員 個 人 に 対 す る』 『損 害 賠 償 請 求 』 の 訴 え と して の 特 有 の 構造 に つ い て の 検 討 が 全 然 な され て お らず 、 妥 当 で は な い 」 と評 す る以 外 に は な い だ ろ う し、 さ らに こ の点 もふ ま えて メ ル ク マ ー ル の 問 題 に立 ち戻 る の な らば 、 結 局 、 判 決 は 、 通 常 の 「一般 的 な 無 効 原 因 た る瑕 疵 理 論 」 と は 異 な る瑕 疵 類 型 に 依 拠 す る こ と を 明 らか に した(31)に す ぎ な い の か も しれ な い 。 しか しそ れ で も 、 こ こ で メ ル クマ ー ル 自体 に 注 目す れ ば 、 や は り評 価 す べ き もの な の だ ろ う。 つ ま る と こ ろ本 判 決 もま た 、 こ こ で 厳 密 な"場 合 分 け"に 基 づ く理 論 構 成 を採 ら な か った 、 と い う こ と に な る。 も っ と も 、 判 例 理 論 にお け る こ う した メル ク マ ー ル を め ぐ る"積 極 性"志. 向が 、. 救 済 可 能 性 に 直 結 す る の か とい う問 題 も考 え な け れ ば な らな い。 仮 に こ の 観 点 か ら本 件 に お け る メル クマ ー ル の 立 て か た 自 体 を評 価 す る こ とが で きて も、 前 記 「 特 有 の 構 造 につ い て の 検 討 」 を 本 判 決 が 放 棄 した 点 は 、 な お 非 難 を免 れ な い だ ろ う。. 5.判. 示Ⅲ 一4部 分 の 検 討. ひろく 「 環 境 訴 訟 」 上 の 問 題 と して 公 有 水 面 の 埋 立 を争 う場 合 に は 、 埋 立 免 許 の 取 消 訴 訟 や 埋 立 工 事 に つ い て の 民 事 の 差 止 訴 訟 の 手 法 も可 能 で あ る。 しか しな が ら、 取 消 訴 訟 に つ い て は 、 そ もそ も一 般 的 に 要 件 審 理 に お け る原 告 適 格 性 判 断 の 厳 格 さが 障 害 に な る と され る(32》 。ま た 、 埋 立 の 目的 ・用 途 が 「 裁 量 処 分 と して の免 許 処 分 をお こな う場 合 の 判 断 材 料 」 に と どま り、 免 許 の た め の環 境 保 全 配 慮 義 務 も 職 量 処 分 を なす に あ た り、 か か る配 慮 義 務 が 要 求 され る に と ど ま る」 も の で あ る 以 上 、 当該 手 法 を 用 い る こ とは 「 極 め て 限 定 され た 場 合 に のみ 可 能 」 で あ る と説 か れ る(33)。民 事 差 止 訴 訟 に つ い て も、 埋 立 免 許 が 「 他 人 の 生 命 ・健 康 へ の 侵 害 に つ き受 忍 義 務 を課 して い な い 」 こ とか ら、 「 他 人 の 生 命 ・健 康 へ の 侵 害 」 を根 拠 とす る 限 りに お い て 認 め られ る と 解 され る(34)。 そ こで 、 こ こ で住 民 訴 訟 を 利 用 す れ ば 、 「 住 民 」 で あれ ば 足 りる 点 で 訴 訟 要 件 が 緩 和 され 、 「 地 域 環 境 に対 す る住 民 の 環 境 保 全 利 益 と い う観 点 」 か ら、 さ らに は 「 環 境 の 保 全 に 反 しな い行 財 政 の 運 用 を 求 め る と い う訴 訟 の 目的 」 か ら、 よ り適 合 的 で あ る こ と が 指 摘 され て い る(35)。あ え て こ の 訴 訟 形 式 を選 択 して 争 っ た の が 「 織 田が 浜 訴 訟 」 で あ り、 こ こで もま た 、 埋 立 法 第4条 第1 項 の 第1号 お よ び 第3号 違 反 が 主 張 され た(同 条項第2号 違反 を原告 は主張 しな かった)(36)。 こ こで は 、 そ もそ も支 出 行 為 の 違 法 を争 うな か で 埋 立 免 許 の 違 法 を 主 張 で き るの か 、 とい う点 を 問 題 に す る こ と も で き る(37)。しか し、 「 織 田が 浜 訴 訟 」 の 差 戻 し後 の 高 裁 判 決(高 松高判 平成6 年6月24日 判例地 方 自治第126号31頁)は 、 実 際 に 本 案 審 理 に ま で 踏 み 込 ん で 、(い わ ゆる瀬 戸 内法の解 釈 問題 とな らんで)埋 立 免 許 の 性 格 や 埋 立 法 上 の 免 許 基 準(要 件)の 問題 を 審 理 した 。 埋 立 法 上 で は 、 埋 立 法 第4条. 第1項 第1号. 違 反 に つ い て 「国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 」 の判 断 基 準(要 件)と 、 同 条. 項 第3号 違 反 に つ い て 瀬 戸 内 法 に 基 づ く愛 媛 県 「 計 画 」 の 違 背 が 問 題 と され た。 当該 「 織 田が 浜 」 判 決 で は 、 と く に 第1号 違 反 に つ い て 、 「国 土利 用 上 の 観 点 か ら、 ① 当該 埋.

(15) 立 の 必 要 性 、 ② 埋 立 の 公 共 性 、③ 当該 自然 海 浜 の保 全 の 重 要 性 、④ 当該 埋 立 自体 お よ び 埋 立 後 の 土 地 利 用 が 周 囲 の 自然 環 境 に及 ぼ す 影 響 等 と を比 較 衡 量 の 上 、 諸 般 の 事 情 を 考 慮 して 、 ⑤ 瀬 戸 内 海 に お け る 自然 海 浜 を で き る だ け 保 存 す る とい う瀬 戸 内 法 の 趣 旨 を踏 ま え つ つ 、 合 理 的 ・合 目的 的 に判 断 す べ き もの2と. され た 。 しか しな が ら、 結 論 と して は 、 裁 量 権 の 逸 脱 を認 め る に は 至 ら. な か っ た(38}。 前 掲 判 示Ⅲ 一4部 分 に お け る埋 立 法 第4条 第1項. 第1号. につい ての本件 福 岡地裁 の判 断に も、. あ る 程 度 こ う した 「 織 田 が 浜 訴 訟 」 差 戻 審 判 決 に み られ る基 準(要 件)の 枠 組 み との 共 通 項 を 見 出 す こ と が で き る。 しか し、 基 準(要 件)の 立 て 方 か ら して も、 具 体 的 な 裁 量 統 制 の 審 理 の 観 点 か ら み て も、 本 訴 の ほ うが"か な り緩 や か な 実 体 審 査"を 行 っ て い る こ と は否 め な い。 本 訴 で は 、 第1号 る具 体 的 要 件2つ. 違 反 に か か わ るX2の. 主 張 につ い て 、 「 基 準 」 と され る 埋 立 の必 要 性 に 関 す. の 有 用 性 が認 め られ た 。 しか し、 そ れ は 裁 判 所 が み て 「 有 用」 で あって も、同. 号 の 解 釈 論 か らは 採 用 で き な い と結 論 づ け られ た 。 ま た 、 対 象 と され る 自然 環 境 の 重 要 性 自体 を 認 め な が ら も 、 人 工 島 建 設 の 必 要 性 につ い て は 、 議 会 に よ る 予 算 執 行 の 議 決 と い う事 実 、 さ ら に は 費 用 負 担 額 の 観 点 か ら許 容 す べ き と され た 。 本 訴 や 「 織 田 が 浜 訴 訟 」 差 戻 審 判 決 の よ うな事 案 に お い て は 、 ま ず も っ て疑 い な く、(事実上)「埋 立 出願 者 と埋 立 権 者 が 同 一 で あ る こ と を 考 慮 す る と、 具 体 的適 用 に 関す る審 査 の基 準 ・過 程 に は 問 題 が 残 」され る は ず で あ る(39)。 つ ま り、 この 種 の訴 訟 に お い て 埋 立法 違 反 を 持 ち 出 し て も、 そ もそ も審 理 され な い か 、 仮 に 両 判 決 の よ うに 審 理 され て も、 そ こで の 「 裁 量 権 の 逸 脱 」 が認 め られ る こ とは 事 実 上 あ り得 な い と 考 え ざ る を 得 な い(40)。 「 織 田 が 浜 訴 訟 」 差 戻 審 高 松 高裁 判 決 は 、 埋 立 法 に お け る埋 立 免 許 を め ぐ る裁 量 が そ も そ も 自 由裁 量 な の か に 関 し、 従 来 か らの 「自由 裁 量 性 を 否 定 し、 同 時 に 要 件 判 断 に 関 して は免 許 権 者 に 裁 量 の 余 地 が あ る こ と も認 め 」 た(41) 。 解 釈 に つ い て は 評 価 の 余 地 が あ る だ ろ うが 、 そ れ を む し ろ 「 埋 立 免 許 に 関 す る要 件 、効 果 とい っ た 各 要 素 の 判 断 か らす れ ば 、 自 由 裁 量 とは 解 され ず … 基 準 の 充 足 が 免 許 付 与 の 最 小 限 度 と解 す べ き 」 も の と して と ら え(42)、進 ん で 、 「1号 要 件 は 『適 正 』 『合 理 的 』 と い う不 確 定 概 念 を用 い 、 ま た 、 開 発 と環 境 保 護 と い う政 策 的 要 素 が 強 い の で 完 全 な 法 規 裁 量 で は な い が 、 大 幅 な裁 量 も認 め られ ず 、3号 要 件 は 法 規 裁 量 とす る見 解 が あ る」 と み る 立 場 に 依 拠 す れ ば(43)、こ こ で の 司 法 審 査 の あ りか た は 、 理 論 上 、 第3号 要 件 に つ い て は 明 らか に 、 ま た第1号. 要 件 に 関 して も 相 当 の確 実 さ を も っ て 、 裁 判 所 に よ る判 断 代 置 審 査 を認 め る. こ とに な る は ず で あ る。 仮 に こ う した 審 査 の あ りか た に つ い て 、 よ り慎 重 に な っ た と して も、 免 許 決 定 に 至 る プ ロ セ ス に お け る 環 境 保 全 措 置 へ の 配 慮 や 適 切 な 自然 環 境 へ の 認 識 、 他 者 の 意 見 の 考 慮 等 の 観 点 を 精 査 す る 手 法 を 採 る こ とも 不 可 能 で は な い は ず で あ る(44)。 い ず れ に せ よ 、本 訴 に お け る裁 量 統 制 を め ぐ る判 断 の あ りか た 自 体 が 、 「 織 田が浜訴 訟 」差 戻 審 高 松 高 裁 判 決 に もま して 不 明確 で あ る以 上 、 所 詮 、 本 訴 の 第1号 要 件 の 審 理 に 関 して も 「 裁量 権 の 逸 脱 」 に よ る免 許 の 違 法 を 帰 結 す る こ とは 不 可 能 な の だ ろ う。.

(16) な お 、 本 訴 に お け る 埋 立 法 第4条. 第1項. 第3号. の 判 断 を め ぐっ て は 、 「法 律 ニ 基 ク 計 画 」 と し. て 環 境 基 本 法 上 の 環 境 基 本 計 画 等 が 主 張 され 、 ま た い わ ゆ る ラ ム サ ー ル 条 約 等 の 諸 条 約 に 違 背 す る こ とに よ っ て 、 埋 立 法 第4条 第1項 違 反 と な る こ とが 主 張 され た。 争 い か た と して は 非 常 に 興 味 深 い が 、 前 記 裁 量 審 査 の 問 題 を別 に して も、 そ もそ も こ の 点 で の 裁判 所 の 判 断 に は 理 由 が あ る もの と思 われ る。 た だ 、 こ こで よ り注 目す べ き は 、 埋 立 法 第4条. 第1項 第2号 違 反 お よび 「 人 格 権 ・環 境 権 」 侵. 害 に か か わ る 判 示 部 分 で は な い だ ろ うか。 こ の 点 は 「 織 田が浜訴訟 」では 争われ なか った論 点 で あ る が 、 こ こ で本 件 福 岡 地 裁 判 決 が(Ⅳ ー1で もふれ た よ うに)い わ ゆ る 閣 議 ア セ ス 等 を 根 拠 とす る ア セ ス メ ン トが 実 施 され て い た 時 期 に も か か わ らず 、 市 の 行 っ た 本 件 ア セ ス に 対 して 、 実 質 的 か つ 批 判 的 な 司 法 判 断 を下 した 点 は 、 本 訴 の 大 き な 特 色 で あ る と思 わ れ る。 判 決 は 、 「(本件整備事業 にお ける環境 影響)評 価 書 に は 、 そ の 内 容 に お い て 決 して 軽 視 す る こ と の で き な い 問題 点 が あ る」 もの と い わ ざ る を得 ず 、 「 厳 しい 批 判 を免 れ な い 」、 「これ は 、 環 境 影 響 評 価 を して 本 来 備 え て い な け れ ば な らな い 筈 の 科 学 的 で 客観 的 な 正 確 とは や や 異 質 な も の を感 じ させ さ えす る」 と判 示 した 。 しか し、 こ こ で の 結 論 も ま た 、 「 一応 の環境 影 響評価 の義 務 を果 た して い る こ とを 否 定 す る こ と も で き な い 」 以 上 、 第2号 違 反 に は あ た らな い とす る 。 判 決 が あ え て こ こ ま で 言 及 す る の な らば 、 む しろ 第2号. 違 反 と結 論 づ け る こ と も不 可 能 で は な い よ うに も思. わ れ る。 しか し、 当時 の 制 度 の 枠 組 み に あ っ て は 、 や は り司 法 に 当 該 判 示 以 上 の 帰 結 を 期 待 す る ほ うが 難 しい と み るベ き な の だ ろ う。 あ る い は 、X2が. 主 張 した 「 批 判 的な 立法政 策 論 」 を裁 判. 所 が 結 論 と して排 除 しな か っ た とみ て 評 価 す べ き もの か 。 さ らに 、判 決 は こ こ で 、 「 本 件 整 備 事 業 が … 福 岡 市 民 の 人 格 権 ・環 境 権 を 侵 害 す る とは 未 だ い え ず 」 と判 示 す る。 こ こで は 前 提 に な る 「 福 岡 市 民 の 人 格 権 ・環 境 権 」 な る もの の 意 義 を 、 別 途 精 査 す る余 地 もあ ろ う(45)。 「 織 田 が 浜 訴 訟 」 差 戻 審 高 松 高裁 判 決 同様 に 、 本 件 福 岡 地 裁 判 決 で は 、 先 行 行 為 の 違 法 性 判 断 に あ た っ て 埋 立 法 上 の免 許 の 適 法性 に 立 ち 入 っ た 判 断 が な され た 。 この 点 の み を と らえ て も 、 お そ ら く は十 分 に 「 環 境 住 民 訴 訟 」 上 の 特 徴 た り得 る は ず で あ る。 も っ と も、 こ う した 問題 を 検 討 す る 際 に は 、 や は り埋 立 法 自体 の 問 題 点 に も言 及 せ ざ る を得 な い 。1973(昭 和48)の 法 改 正 に よ っ て 、 埋 立 法 第4条 所 定 の 環 境 配 慮 規 定 が 盛 り込 ま れ る こ と に な っ た にせ よ 、 依 然 と して 法 自体 が1921(大 正10)年 制 定 当時 の ま ま に 「 埋 立 て は 善 で あ る と い うそ の 基 本 的 発 想 に は な ん ら の 変 更 も加 え られ て い な い 」 も の で あ る 以 上(46)、現 行 法 制 度 上 の 機 能 不 全 は 必 然 だ ろ う。 両 訴 訟 で 問 題 に され た 条 項 も含 め て 、 も は や 解 釈 論 の 域 を超 え て 、 「住 民 参 加 に よ り定 め られ た 沿岸 域 全 体 の利 用 計 画 に 従 っ た 埋 立 を 含 む 沿 岸 域 の 利 用 と管 理 に 関 す る制 度 の 確 立 の 検 討 を 行 うべ き」 で あ る(47)。少 な く と も 、 現 行 の 埋 立 法 上 で 段 階 的 な 措 置 を採 る程 度 の こ とは積 極 的 に 行 わ れ て よい は ず で あ る。 具 体 的 に は 、 埋 立 法 自体 に 計 画 段 階 で の 情 報 開 示 を 徹 底 させ 、住 民 の 意 見 表 明 の 機 会 を確 保 す る こ とに よ っ て 「 住 民 参加 の 実 質 化 」 を 図 る こ とや 、.

(17) "埋 立 出 願 者 と埋 立 権 者 の 事 実 上 の 同 一 性"に. 対 して 収 用 委 員 会 等 の独 立 した 第 三 者 機 関 に よ る. 審 査 を組 み 込 む こ とで処 方 す る こ と、 さ らに は 、 条 文 上 免 許 付 与 が 可 能 な 公 益 上 必 要 な 場 合 を 限 定 列 挙 す る こ と等 が 考 え られ る(48)。こ う した 現 行 の 埋 立 法 上 の 課 題 が 解 消 され な い 限 り、 「 環境 住 民 訴 訟 」 に お け る 当該 論 点 を め ぐ る抜 本 的 な 進 展 が み られ る こ とは な い 。. 6.判. 示Ⅲ 一5部 分 の 検 討. 本 件 手 続 の 問 題 を 考 え る 際 に こ こ で 憲 法 第31条 と地 自法 第138条 の2違 反 を 主 張 す る こ と は 、 前 記 した 埋 立 法 第4条 第1項 第3号. を め ぐ る 主 張 同 様 、 争 い か た と して は 非 常 に 興 味 深 い。. しか し こ の 点 に つ い て も、 や は り地 自法 第138条 の2が 抽 象 的 な行 為 規 範 で あ る こ と を免 れ な い 以 上(49)、ま た 本 件 で 問 題 と され た の が 閣 議 ア セ ス で あ っ た こ とか ら して も 、 裁 判 所 の 判 断 に は 理 由 が あ る と考 え ざ る を得 な い 。. 7.結. 語. 本 訟 が 併 合 審 理 を も っ て判 断 され た こ とは 、 か な り複 雑 な 判 断 の 枠 組 み を提 示 す る こ と に な っ た。 この 点 で本 訴 の 特 異 性 は 先 例 を み な い もの で あ る。 そ してお そ ら くは 、今 後 も類 例 をみ な い もの と考 え られ る。 本 訴 で は 、 「 環 境 住 民 訴 訟 」 上 の 考 え 得 る争 点 が 網 羅 的 に 取 りあ げ られ る こ とに な っ た 。 仮 に 本 件 が 上 訴 され て い た な らば 、 本 訴 は い っ そ う注 目を集 め る事 案 に な っ た の か も しれ な い。 しか し、 本 訴 の 弁 護 団 お よ び原 告 は 、 控 訴 の 必 要 性 を認 め な か っ た 。 そ の 理 由 は 、 と くに 結 論 部 分 の 判 示 箇 所 か ら明 瞭 に され る(5°1。 評 釈 と して 判 決 を検 討 す る 際 に も、 本 訴 にお い て 裁 判 所 が つ ぎ の くだ りを 判 示 して い る こ とは 、 や は り き わ め て 異 例 な こ とで あ る と考 え ざ る を得 な い。. 「 本件 環境影 響評価 の在 り方 につ いて も、決 して軽 視 し得 ない問題 点が あ る」 。 「しか も、 本 件整備事 業に対 しては、福岡市 民は もとよ り相 当広範 に根強 い反 対意見 があ るこ とも 既 に見 た ところか ら明 らかで あるの に、福 岡市 と して は右意見 に真摯に 耳を傾 ける姿勢 に欠け る嫌 いがな かった とはい えない」 。 「これ らの諸事情 を踏 まえ るな らば、 この 際、 本 件整備事 業を抜本的 に見直す とい うよ うな こ とさえ一 つの政 治的な決断 として考 え ら れ ない ではない」 。. -1で る。. もふれ たが. Ⅳ 、本 訴 が今 後 に 向 け て も参 酌 され る意 義 は 、 決 して 失 われ な い も の と考 え.

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