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JAIST Repository: 「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造化の具体化に向けた検討

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造 化の具体化に向けた検討 Author(s) 己斐, 裕一; 佐野, 多紀子; 松尾, 敬子; 星野, 悠哉 Citation 年次学術大会講演要旨集, 29: 701-705 Issue Date 2014-10-18 Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/12544

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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2F17

「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造化の

具体化に向けた検討

○己斐裕一,佐野多紀子,松尾敬子, 星野悠哉(科学技術振興機構) 1 はじめに 「科学技術イノベーション政策の科学」では、科学技術イノベーション政策を形成するための科学的方法 論の開発に終わらず、その成果を実際の政策形成の場で活用することが目指されている。本稿では、「科学技 術イノベーション政策の科学」の成果を実践で活用するために必要な取組について考察する1 まず、科学技術イノベーション政策の形成における課題を的確に捉え、これらに資する研究を進めること が不可欠である。そのための基盤として、科学技術イノベーション政策の課題を俯瞰的・構造的な視野で捉 えつつ、各課題に関連・対応する研究領域を俯瞰していくことが必要となる。次に、このような俯瞰的な視 座のもとで集約された研究成果を、政策形成及び実践で活用されやすい知識体系として構造化し、蓄積して いく必要がある。さらには、このように形成された知識体系が、政策形成や社会の実践において、どのよう な場面で、どのように活用されていくべきかなど、プロセスに関する検討を行っていくことも必要である。 本稿で取り上げる「俯瞰・構造化」は、これら一連の取組を指している。 科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST-CRDS)では、「科学技術イノベーション政策の科学」に関 連する海外動向の調査や、その構築に向けた提言活動と並行して、「科学技術イノベーション政策の科学」の 俯瞰・構造化に関する検討を行ってきた2。本稿では、この検討に関する理論的整理を試みつつ、俯瞰・構造 化の具体化に向けた、これまでのいくつかの試みを紹介する。 2 「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造化に関する理論的整理 繰り返しになるが、「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造化は、同分野の研究成果が実際の 科学技術イノベーション政策の形成の場において活用されることを目的とする取組である。単純化すると、 研究成果が実践において活用されるためには、以下が必要である。 (1) 実践において活用可能な研究成果が存在すること。 (2) (1)の研究成果が実践者に認知されること。 (3) 実践者が研究成果を活用可能な機構や制度が存在すること。 以下、これまでの検討を上記の項目ごとに整理していく。 (1)科学技術イノベーション政策の形成において活用されうる研究成果 科学技術イノベーション政策を形成していくうえでの課題を解決する知見の創出に向けた研究活動を行い、 成果を蓄積しておくことが、「科学技術イノベーション政策の科学」の実践における活用の前提となる。この 意味で、まずは科学技術イノベーション政策の形成における課題を洗い出し、それに対応させる形で研究ア プローチや成果を俯瞰・構造化しておくことが必要である。これに向けて我々は、次の図1に示すフレーム を試行的に考案した。横軸に政策立案に至るプロセスを模式化したものを取り、縦軸に「科学技術イノベー 1 「科学技術イノベーション政策の科学」全般については、[1]を参照。 2 科学技術政策研究所及び政策研究大学院大学との共催により「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会を開催[2][3]。

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ション政策の科学」と関わりが深い学問分野を取り、それぞれに対応する研究アプローチや成果を構造化で きるようにした場合のイメージである。学問分野によって分類される個別の研究アプローチや成果が、政策 形成プロセスのどの段階に活用可能なものなのかを示すことが目的である。 [図 1]政策プロセスと学問分野による研究アプローチ・成果の構造化イメージ このようなフレーミングを用いて既存の研究成果を整理すれば、現在どのような研究アプローチや成果が 存在しているのか、逆にどのような研究が手薄であるか、ひいては必要とされているかが可視化される。こ れは「科学技術イノベーション政策の科学」の研究者や、研究を推進する側にとって、どのような研究を実 施すべきかについての指針になる。 俯瞰・構造化を念頭に置いた視野のもとで集約された研究成果を、政策形成及び実践で活用されやすい 知識体系として構造化していくためには、個別に行われた複数の研究成果を、一定の基準のもと評価した上 で統合するメタ分析を行い、総合的な評価をしていくことが重要となる。この際、政策課題との関連付けが 非常に重要となる。これを念頭に置いて研究成果の統合を行っている事例としては、ロンドン大学の「エビ デンスによる政策と実践のための情報連携(EPPI)センター」による活動3や、マンチェスター大学「イ ノベーション政策のエビデンス抄録プロジェクト」4等がある。 (2)「科学技術イノベーション政策の科学」の研究成果の実務者による認知 しかし一方では、個別の具体的事例を集約し評価を事後的に行うだけでは、対象とする政策の目標や意図 に合致しないこともあり、その結果、政策形成において研究から得た知見を活用できるとは限らない。科学 3 特定の政策課題に対応する研究を収集し、定量的及び定性的な方法を用いた研究統合(Research Synthesis)を行って いる。研究統合の方法論の開発と、エビデンスが政策形成においていかに利用されるか、プロセスに関しての研究も行う。 研究統合の方法として、系統的レビューを行う。http://eppi.ioe.ac.uk/cms/ 4 政策手段ごとに、その科学技術的・社会経済的効果についてのエビデンスを集積し、レポートの形で公開している。ま た、関心を持つ主体を幅広く集めたワークショップを開催し、プロジェクトに対するフィードバックと対話を推進してい る。http://www.innovation-policy.net/compendium/

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技術イノベーション政策の形成における課題は、実務者が日々の実践の中で認識していくものである。本来、 「科学技術イノベーション政策の科学」の研究対象は、それらの課題に対して科学としてどこに知見を提供 できるかを考察して抽出されるべきものであり、研究成果もこうした実務家の問題意識に従って構造化され るのが望ましい。また、実務者の問題意識に寄り添う形で課題の抽出を行い、「科学技術イノベーション政策 の科学」の研究成果を構造化していく必要がある。 前項で示したような方法で構造化された研究アプローチや成果を実際の運用に繋げるためには、政策形成 の実践における課題を構造化するフレーミングの妥当性をさらに検証する必要がある。図1では、政策立案 プロセスを模式化したものを用いているが、実際の政策形成に関わる行政官や政治家が、自らが政策立案に おいて抱える課題をこのように分類して認識するとは限らない。実務者が課題を認識するフレーミングに寄 り添う形で構造化することが、成果が活用される可能性を高めると考えられる。そのためには、政策形成サ イドの問題意識を適当に吸い上げて構造化しておく必要がある。 例えば政策課題の俯瞰には以下図2 のような形も考えられるだろう。ここでは、第 3 期及び第 4 期科学技 術基本計画を参照し、現行における科学技術イノベーション政策の課題を、政策目的、政策手段、政策の対 象、そして政策形成過程という側面から整理を行っている。 STI政策の対象 STI政策目的 人 材 研究 基 盤 組 織・ネットワー ク 研究 開 発 マネ ジメ ント・評 価 知識 基 盤 経 済的 成 長 知 識 創出 STI政策手段 法・規制 ・規 範 政 府が 主 体 と して 実 施 財 政 (税 ・補 助 金) 3 STI政策形成過程 社会と の 対 話 社 会経済の現状認 識 課 題 解決 ・STI関係人材 の需給・流 動・循環構 造の 把握 、 効 果的 なST I人 材開発・育 成の あ り方 、 ポ スドク ・若 点 人材 問題 の解 決等 ・科学 技 術・学術 情 報の 体 系的 整備 、 研 究資 源の オ ー プン・ アク セス 、標 準 化 ・知 財 戦略 への 対 応等 ・ 効果 的な推進 体 制の 設計 や 産 官学 間・ 地 域間 ・ 国 際間 の知 識 移 転の 促進 等 ・研究 資 金の 性格 別 マ ネジメ ント手 法 、 効 果的 ・ 効率 的評 価 のあ り方等 ・大規 模 施設 の整 備 ・ 共 同 利用 の 設 計、 施 設・設 備 の計 画的 整備 等 ・実効 性 のあるPD CA サイ クルの実 現、 効 果的 な重 点分 野 の設 定等 ・効果 的 な政 策効 果の 説 明、科 学 技術 コミ ュ ニケ ー ショ ンの 促進 、 社会 の 声を 政 策形 成に どの ように 反映 す るか 、 新 たな 合 意形 成手 法の 方 法等 ・政 策 目的 のプラ イオ リ ティ 設定 、 社会 的課 題 の抽 出・ 設 定の 方 法及 び 妥 当 性判 断、 目 的 達成 の把 握の 方 法等 ・ 投資 規 模の 妥 当性 判断 、 政 府 の役 割 、 政策 手段 間 の効 果 の 違いの 把握 等

C opyright (C )2011 J ST All Rights R es erved.

[図 2]科学技術イノベーション政策形成における課題の構造化の例 「科学技術イノベーション政策の科学」の研究アプローチや成果をどのようなフレーミングで構造化する のが相応しいかについては、研究成果を活用する側の意見も踏まえて引き続きの検討が必要である。 (3)研究成果が科学技術イノベーション政策の政策形成で活用されるためのプロセス・仕組み 上の条件が揃ったうえで、政策形成プロセスで研究成果が活用される仕組みを構築しかなければならない。 現行の政策評価制度の改善も含め、研究成果を活用していく仕組みを制度化していくことが重要である。こ の際、政策形成プロセスの可視化、構造化とともに、プロセスに係る関与者のネットワーク化が必要である。 これらの基盤として、研究者、行政・政治、社会における幅広い関与者が、信頼関係の下で、各自が担うべ き適切な役割と責任を明確にすることも重要である[3]。 このようなプロセスの構築に至る段階の試行として、文部科学省が平成23 年度から実施している「科学技

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術イノベーション政策における『政策のための科学』」推進事業5では、平成25 年度に「SciREX(サイレッ クス)政策形成実践プログラム」として、糖尿病の予知予防技術の研究開発を課題とした政策オプションを 作成した[4]6。ここでの政策オプションは、特定の政策課題に対応する選択可能な政策の選択肢と、その経済 的・社会的影響の予測から構成されるものであるが、政策の選択肢の抽出や経済的・社会的影響の予測にお いて、「科学技術イノベーション政策の科学」の研究成果を、政策形成に適用可能な形で効果的に集約してい く有力な方法のひとつであると考えられる。 図3 糖尿病対策を課題とした政策オプション作成のステップ また、成果の実装に向けてさらに進んだ取組として、平成26 年 8 月には、政策研究大学院大学に「科学技 術イノベーション政策研究センター」が設置された7。同センターでは、多様な研究機関が参画した研究や議 論を行うだけでなく、政治・行政・産業界・国民等からの政策ニーズを把握し、実践に繋げる場の構築に向 けた取組みが行われていく予定である。「科学技術イノベーション政策の科学」の学際的な研究を実施するだ けにとどまらず、実践のプロセスとのアラインメントを積極的に実施していく先駆的な活動となることが期 待される。当初から実務者サイドのニーズを読み込んだ形で設計される研究活動も、今後は重要になってい くと考えられる。 3 今後に向けて 「科学技術イノベーション政策の科学」が、科学的方法論の開発に終わらず、その成果が科学技術イノベ ーション政策の形成や社会の実践の場で真に活用されていくためには、構造化の概念的議論にとどまらず、 具体的課題における検討を進めていくこと、さらに、政策形成の実践の場での活用自体を実験的に行ってい 5 http://www.jst.go.jp/crds/scirex/ 6 糖尿病対策に関する政策オプション作成の詳細については以下のリンクも参照。 http://www.jst.go.jp/crds/scirex/resources/download/grips14.pdf 7 「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』」推進事業において、同センターは「中核的拠点機能」 を持つものとして位置づけられている。本構想については、同事業の推進委員会資料を参照。 http://www.jst.go.jp/crds/scirex/committee/download/minutes14/2-2.pdf

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くことが重要である。 一方、多くの有識者が指摘するように8、研究成果の実践における活用にあたっては、実務者サイドのニー ズのくみ上げ、実装までの時間軸の整理、個別の成果が対象とする政策の粒度の、科学技術イノベーション 政策における固有性等、様々な困難な課題があり、それらを整理した上で、今後さらに検討を行っていく必 要がある。 謝辞 本検討を進めるにあたっては、文部科学省科学技術・学術政策局政策科学推進室及び科学技術政策研究所 等の関係機関、「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会に参加いただいた、また個別の意見交換 にご協力いただいた研究者の方々との意見交換が多いに参考になっている。紙幅の都合により個々のお名前 を挙げることはできないが、ご協力に感謝申し上げる。

参考文献

[1] JST-CRDS (2010)、「エビデンスに基づく政策形成のための「科学技術イノベーション政策の科学」の構築」 [2] JST-CRDS (2011)、ワークショップ報告書「「科学技術イノベーション政策の科学」の俯瞰・構造化に向けた検討」 [3] JST-CRDS (2014)、平成 24 年度開催報告書「「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会」 [4] JST-CRDS (2011)、戦略提言 「政策形成における科学と政策の役割及び責任に係る原則の確立に向けて」 [5] 星野悠哉他(2013)、「科学技術イノベーション政策における、政策オプション作成の方法論:ライフサイエンス分野を例として」 研究・技術計画学会年次学術大会講演要旨集, 28: 925-930. 8 2014 年 7 月 17 日に開催された第 6 回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会においては、多くの有識 者より、実装までの時間の意識、運用目的の設定、行政サイドのニーズの把握・ターゲット化等、様々な論点が指摘され た。実務者のニーズに基づく構造化はもとより、成果活用のフラッグシップとなる事業の実施においても、今後さらなる 検討が必要である。

参照

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