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溶液法を用いたMnドープZnSナノ粒子の合成およびEL素子の作製

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Academic year: 2021

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(1)

1

平成23年度

溶液法を用いた

Mn

ドープ

ZnS

ナノ粒子の合成および

EL

素子の作製

指導教員

宮崎

卓幸

准教授

群馬大学大学院工学研究科

電気電子工学専攻

植田

達也

(2)

2 1. 序論 ... 4 1.1. 研究背景および目的 ... 4 1.2. 本論文の構成... 5 参考文献 ... 6 2. 試料作製装置 ... 7

2.1. Rapid Thermal Anneal (RTA) 装置 ... 7

2.1.1. 赤外線ランプ加熱炉 ... 7 2.1.2. 加熱試料系 ... 8 2.1.3. 温度制御系 ... 8 2.2. スクリーン印刷法 ... 10 参考文献 ... 12 3. 評価方法および測定条件 ... 13 3.1. X線回折法 (X-ray diffraction : XRD) ... 13 3.2. 光吸収係数測定 ... 15 3.3. 拡散反射法 ... 16 3.4. フォトルミネッセンス法(Photoluminescence)... 17 3.5. エレクトロルミネッセンス法(Electroluminescence) ... 20 3.5.1. キャリア注入型エレクトロルミネッセンス ... 20 3.5.2. 電界励起型エレクトロルミネッセンス ... 21 参考文献 ... 23 4. ZnSナノサイズ蛍光体の作製とその評価 ... 24 4.1. はじめに ... 24 4.2. ZnS:Mnナノサイズ蛍光体の作製方法 ... 25 4.3. 実験結果 ... 26 4.3.1. ZnSナノサイズ蛍光体の評価 ... 26 4.3.2. マイクロ波の効果について ... 29 4.3.3. 保護安定剤の効果について ... 30 5. ZnS:Mnナノ粉末を用いたEL素子の作製 ... 31 5.1. はじめに ... 31 5.2. 実験 ... 32 5.2.1. ZnS:Mn粉末の作製 ... 32

(3)

3 5.2.2. 発光層、絶縁層用インクの作製 ... 32 5.2.3. 電界励起型EL素子の作製 ... 32 5.3. 実験結果 ... 34 5.3.1. ZnS:Mn粉末の評価 ... 34 5.3.2. 窒素中アニールをしたZnS:Mn粉末の評価 ... 35 5.3.3. 大気中アニールをしたZnS:Mn粉末の評価 ... 37 5.3.4. EL測定結果 ... 38 5.4. まとめ ... 41 参考文献 ... 42 6. 結論 ... 43 謝辞 ... 44

(4)

4

1.

序論

1.1. 研究背景および目的 近年、半導体発光デバイスの研究が注目されている。半導体デバイスは、大規模集積回 路に代表される、「Siデバイス」と、光デバイスや高速デバイスなどを実現している「化合 物半導体デバイス」に分けることができる。Si 結晶は優れた物理的、化学的性質を持って いて、超微細化加工の技術により、エレクトロニクスの中核材料をなしている。Si自体は、 間接遷移型バンドギャップを持つ半導体であり、室温でのバンドギャップエネルギー(Eg)は 1.11 eVの赤外領域にある。それゆえに、Si材料は発光素子材料としては不向きとされてい る。しかし、近年、Si をナノ構造化することにより可視領域で発光することが確認され、 ナノSiを用いた発光デバイスへの応用が期待されている。他方、化合物半導体は、多種多 様な特徴を持っているため、従来のSiデバイスでは達成不可能な光デバイス分野、また高 速応答などのより高性能デバイス分野において、それぞれの特性を生かした応用がなされ てきた。 1) 本研究では化合物半導体の中から、ZnSに注目し、エレクトロルミネセント(EL) 素子開発に向けた研究を行った。 また、ZnSは室温で約3.54 eVのバンドギャップを持つワイドギャップ・直接遷移型半導 体である。そのため、青、紫外領域の発光ダイオードやレーザーダイオードへの応用が期 待されるとともに、添加する不純物の種類を変えることで、赤から青まで発光色を変化さ せることができる蛍光体であるために、盛んに研究されてきた。また、近年、ZnS:Mnをナ ノ構造化することで、Mn 2+ の 4 T1(4G)-6A1(6S)遷移に基づく高効率フォトルミネッセンス(PL) 特性を示すことが報告され 2-4) 、ZnSはEL素子の材料として再び注目されている。 これらの背景より、本研究では、溶液法を用いて ZnS:Mn 粉末を作製しその特性を調べ るとともに、実際に発光層にZnS:Mn 粉末を用いて、スクリーン印刷により分散型EL 素 子を作製し、その特性を評価することを目的とした。

(5)

5 1.2. 本論文の構成 本論文は全 6 章からなる。第 1 章は序論であり、本研究の背景および目的について述べ る。第 2 章は本研究で用いた薄膜堆積方法である、スクリーン印刷法の原理および装置の 概要について述べる。第3章は本研究で試料の評価に用いた、X線回折(XRD)法、光吸収係 数測定法、拡散反射率測定、フォトルミネッセンス(PL)法、エレクトロルミネッセンス(EL) 法、について基本原理および解析理論を述べる。第4章では液相法により作製したZnS:Mn ナノサイズ蛍光体について、XRD測定、拡散反射率測定、PL測定の結果を述べる。第5章 では、液相法により作製したZnS:Mn粉末を用いたEL素子について、XRD測定、PL測定、 EL測定の結果を述べる。第6章では結論を述べる。

(6)

6 参考文献

1. 赤崎勇:Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体 (倍風館,1994).

2. D. Adachi, T. Morimoto, T. Hama, T. Toyama, and H. Okamoto, J. Non-Cryst. Solids, 354, 2740 (2008).

3. T. Toyama, D. Adachi, M. Fujii, Y. Nakano, and H. Okamoto, J. Non-Cryst. Solids, 299, 1111 (2002).

4. S. Nakamura, S. Takagimoto, T. Ando, H. Kugimiya, Y. Yamada, and and T. Taguchi, J. crystal Growth 221221221221, 388 (2000).

(7)

7

2.

試料作製装置

2.1. Rapid Thermal Anneal (RTA) 装置

装置名 MINI-LAMP-ANNEALER 型式 MILA-3000 2.1.1. 赤外線ランプ加熱炉 加熱炉は、赤外線ランプを放物反射面リフレクターの焦点に固定して赤外線光を並行に 反射させる加熱方式である。ランプは近赤外線ランプ (100 V-1kW / 本)を使用している。赤 外線ランプは、石英ガラスチューブに封入されているため、発熱体からのガス発生がなく、 クリーンな加熱が出来る。また、炉体はアルミニウム製で、高温までの加熱に耐えられる ように水冷却している。 試料水冷チェンバー 冷却水入口 真空引き口 遮熱板 試料系観察窓 サンプルホルダー 冷却水出口 試料移動フランジ 熱電対挿入口 赤外線ランプ加熱炉 加熱試料系 Oリング 試料移動フランジ 軸スットパー Fig. 2.1 試料系の構造

(8)

8 2.1.2. 加熱試料系 試料系は透明石英製ガラス管の両端の“O リング”より気密シールして水冷アルミニウム 合金製フランジに固定する。試料は、移動フランジの透明石英製ガラスホルダー上にセッ トし、透明石英製ガラス管内に収納され、透明石英製ガラス管の外側の赤外線ランプによ り輻射加熱される。 2.1.3. 温度制御系 PID制御を用いて温度コントロールしている。そのPID制御について説明する。 調節系はFig 2.2に示すように入出力の差を取り出す働きをする。調節系の伝達関数は図 から、

)

1

1

(

)

(

DS IS p PID

T

T

K

s

G

=

+

+

で表せる。ここで、TIS は積分時間、TDS は微分時間である。この伝達関数を見ると、入出 力の差、つまり偏差に比例する項、偏差の積分に比例する項、偏差の微分に比例する項の 三つの和からなる。そこでそれぞれの項を比例(Proportional)動作、積分(Integral)動作、微分

(Derivative)動作という。この調節系はしたがって、PID動作を行う。またこの調節系をPID

調節系という。 次に、各動作の説明をする。 1. 比例要素 現在の偏差に応じて、修正動作を行うがオフセットが残る。 2. 積分要素 過去の偏差を積分してオフセットを取り除き、ゼロになる。 3. 微分要素 応答が速くなるがノイズに弱いのであまりパラメータを強めない。

(9)

9

G

c

(s)

G

p

(s)

C(s)

R(s)

+

-G

PID

(s)

調節系

G

c

(s)

G

p

(s)

C(s)

R(s)

+

-G

PID

(s)

調節系

Fig. 2.2 真空層内構造

(10)

10 2.2. スクリーン印刷法 スクリーン印刷法は、印刷したい部分にのみ開口したスクリーン印刷版上でスキージを 揺動させ、インクをメッシュ状の開口部に充填、押し出すことによって基板にパターン転 写する方法で、古くからある孔版印刷技術の一つである。近年では、プラズマディスプレ イパネルを始めとするフラットパネルディスプレイの分野で、電極や発光体層などのパタ ーン形成に多く用いられている。 1) Fig. 2.3に印刷製版上からヘラを揺動させて、インクを開口部に充填・開口部からインク を吐出させて基板に転写する様子を示す。 Fig. 2.3 スクリーン印作法

(11)

11 スキージは、耐溶剤性のあるウレタンゴムが多く利用され、ゴム硬度で 60°~90°程度、 形状についても多くの種類がある。 インクは、ペースト状で流動性のある状態であれば大抵のものが利用できる。従って、 インクに含有される各成分は比較的自由に設計でき、各用途に応じて選択できる。この点 が広く利用される理由の1つとなっている。 ポスターなどの画像を形成するのであれば各種色材を有しているが、電子機器の分野で は、導電性のものや誘電体、磁性体から発光体など様々に開発されている。 スクリーン印刷における製版は、一般的にはシルク、メッシュなどと呼称される織物が 利用されていて、利用時には製版枠と呼称される枠に、テンションを掛けた状態で固着し て使用する。

(12)

12 参考文献

(13)

13

3.

評価方法および測定条件

3.1. X線回折法 (X-ray diffraction : XRD) Fig.3.1に原子面における回折の様子を示す。 結晶にX線を照射すると、原子に当たったX線はあらゆる方向に散乱される。しかし、 原子の配列が周期的であれば互いに干渉し合って、ある特定の方向にのみ強いX 線が進行 することになる。原子の配列が三次元的で、結晶面が層を成すと上下の面からの反射光が 互いに干渉し合い、反射は入射角がある特定の値の時しか起こらなくなる。この反射条件 を与える式が下のBraggの法則である。 2d sin θ = nλ ここで、d:面間隔、θ:入射角、λ:X線波長、n:反射次数である。 測定に用いたX 線ディフラクトメーターはこのBraggの法則を応用したもので、試料に X線を照射し、その試料を中心とした円周に沿って計数管を回転させ、X線強度の検出を行 う。そして、そのX線強度を計数管の角度(回折角)の関数として記録する。その回折 曲線から分かる回折角度、半値幅、回折強度を通して結晶を評価する。回折角は格子面間 隔(格子定数)や面方位を、半値幅は格子面の配列の安全性を、回折強度は原子の種類や 結晶の厚さを反映している。 1)

Fig. 3.1

X

線回折

(14)

14 X線回折法による測定条件をTable 3.1に示す。

Table 3.1

X

線回折法による測定条件

ターゲット(X線波長) Cu (Kα : 1.542 Ǻ) 管電圧 32 (kV) 管電流 20 (mA) スキャンスピード 4 (deg / min) 試料照射幅 20 (mm) スリット幅 0.10 (mm)

(15)

15 3.2. 光吸収係数測定 入射する光エネルギーが禁制帯幅より大きくなると、電子が価電子帯から伝導帯へ励起 されることによる光吸収が起こる。 本研究では分光光度計(日本分光株式会社 V-570)により、作製した試料の透過率を測定 して以下の関係より吸収係数 α を求めた。また、Table 3.2に本研究で使用した分光光度計の 測定条件を示した。

100

1

ln

1

=

T

d

α

ここで、d:膜厚(cm)、T:透過率(%)である。

Table.3.2

分光光度計の測定条件

測定モード %T レスポンス Fast バンド幅 (nm) 2.0 走査速度 (nm/min) 400 測定波長 (nm) 200 ~ 2500

(16)

16 3.3. 拡散反射法 粉体試料に光を照射すると、種々の方向に反射する。一部は粉体表面で正反射しますが、 粉体の形状が様々であるために、鏡面上の正反射光に比べてその方向性は多様である。残 りの光は粉体内に屈折して浸入し、その粉体内で反射したり、あるいは他の粉体表面で反 射されたり、再度屈折浸入を繰り返したりして拡散する。このように拡散した光の一部は 再度空気中に放射される。 拡散反射光が粉体内を通過したり反射したりする間に、粉体に吸収があればその光が弱 められ、結果として透過スペクトルに類似した拡散反射スペクトルが得られる。ただし、 粉体が強い吸収を示す領域では長い光路長の拡散反射光はほとんど吸収され、短い光路長 の拡散反射光のみが空気中に放射さる。逆に弱い吸収帯の場合には、長い光路長であって もすべてが吸収されるわけではなく、その拡散反射光が空気中に放射されるために、透過 スペクトルに比べて強いピークとなって現れる。このように拡散反射スペクトルでは、吸 収波数位置は透過スペクトルと同じだが、透過スペクトルでの弱いピークが比較的強くな って現れるために、ピーク間の相対強度が透過スペクトルと異なる。このため透過スペク トルとの比較や定量的な分析にはクベルカ-ムンクによって導かれた、いわゆるK-M関数が 用いられる。

( ) (

)

S

K

R

R

R

f

=

=

∞ ∞ ∞

2

1

2 ここで、 ∞

R

は絶対反射率、

K

は吸収係数、

S

は散乱係数である。

(17)

17 3.4. フォトルミネッセンス法(Photoluminescence) 半導体に光を照射し吸収させると、非平衡の電子・正孔が生じる。それらはいくつかの順 安定状態を経由し、さらに再結合する事によって初めての熱平衡状態に戻る。この過程で 発光性再結合により放出された光がフォトルミネッセンス(PL)である。 Fig. 3.2に代表的な発光性再結合過程を模式的に示す。(A)は伝導帯の自由電子と価電子帯 の自由電子の再結合過程である(帯間遷移)。これらの電子と正孔がクーロン力により結合し、 ペアとなった状態が自由励起子(free exciton:FE)であり、その再結合過程が(B)である。(B)の 発光エネルギーは(A)よりも励起子形成エネルギー分(EX)だけ小さい。EXはSiの場合で約1.5 meV である。これらの発光では、電子、正孔、励起子が運動エネルギーを持つので、それ を反映して発光帯形状I (hν)は高エネルギー側に裾を引くMaxwell-Boltzman型分布

}

)

(

exp{

)

(

)

(

0 2 1 0

h

E

kT

E

h

h

I

ν

=

ν

ν

で与えられる。E0は運動エネルギーが零の場合の発光遷移エネルギーである。以上(A)、(B) の発光はバンド端発光と呼ばれ、結晶固有の発光であり、発光エネルギーから結晶の組成 を求める事ができる。また、バンド端発光は結晶のライフタイムを反映しているので、そ の解析からライフタイムに影響を与えている結晶中の非発光センターや表面状態などを評 価できる。 (C)は不純物・欠落準位に励起子が捕らえられた状態において、励起子が再結合する際の発 光である。(D)はドナーに捕らえられた電子と価電子帯の自由正孔の発光である。発光エネ ルギーは禁制帯幅エネルギーよりのドナーのイオン化エネルギー分だけ小さくなる。深い ドナー準位の場合には、(E)に示すように、価電子帯の電子が空のドナー準位に捕らえられ る際の発光も観測される。(F)はドナー・アクセプター・ペア発光を呼ばれる発光遷移で、ド ナーに捕らえられた電子とアクセプターに捕らえられた正孔との再結合過程である。 Fig. 3.3に本研究で用いたPL測定の測定機器の配置図を示した。 また、Table 3.3に本研究のPL測定時の測定条件を示した。

(18)

18

(19)

19

Table 3.3

PL

測定装置の仕様及び測定条件

励起光源

He-Cd LASER 金門電気(株)製 IK3302R-E 波長 325 nm (3.81 eV)、出力 30 mW

フィルター UTVAF-34U(レーザー直後)、UTF-34U(分光器前) 受光器 CCD

(20)

20 3.5. エレクトロルミネッセンス法(Electroluminescence) エレクトロルミネッセンスとは、物質がエネルギーにより励起され起こるルミネッセン ス(発光)現象の1つで、半導体などに電圧を加えて起きるもののことである。蛍光体物 質が励起源から受け取ったエネルギーを発光して放出することをルミネッセンスという。 この励起源に電界を用いたものがエレクトロルミネッセンス(EL)である。 EL発光とは、電界によって加速された自由電子が発光物質中に存在している発光中心と なる特定の不純物の電子を励起し、それが元に戻るときにエネルギーを放出することによ って得られる。 3.5.1. キャリア注入型エレクトロルミネッセンス キャリア注入型 EL は、電界により、外部からキャリアとして陰極から注入された電子、 陽極から注入された正孔が、発光層内で出会い励起子、エキシトンを形成し、この励起子 の発光、再結合による発光が起こる。 Fig. 3.4にキャリア注入型エレクトロルミネッセンスの発光機構を示す。

Fig. 3.4

キャリア注入型

EL

発光機構

(21)

21 3.5.2. 電界励起型エレクトロルミネッセンス 電界励起型エレクトロルミネッセンス、電界により加速された発光層の電子が、発光中 心に衝突し、励起させることによって発光させるELことである。例えば、薄膜EL素子な どがこれにあたり、薄膜EL素子は、厚さ0.5 mm程度の発光板の面上で、均一、広範囲に わたる発光が可能であるという特徴を持っている。 この電界励起型エレクトロルミネッセンスの発光機構をFig. 3.5に示す。 また、Fig. 3.6に、本研究で使用したELスペクトル測定概略図を示す。

Fig. 3.5

電界励起型

EL

発光機構

(22)

22

(23)

23 参考文献

1. 理学電機株式会社 分析センター:X線回折の手引き 改訂再版 (1982). 2. 河東田 隆:半導体評価技術 (産業図書).

(24)

24

4. ZnS

ナノサイズ蛍光体の作製とその評価

4.1. はじめに 半導体物質は、励起光を吸収して遷移した励起状態から基底状態に戻るときに、発光が起 こる。そのバンド構造は、それを構成する原子数に相当する分子軌道の集合と考えられ、 ナノサイズ化し、原子数が減少すると、バルク状態のような縮退が解け、準位が離散的に なる。つまり、価電子帯のHOMOのエネルギーは下がり、伝導帯のLUMOのエネルギー は上がるので、バンドギャップが大きくなり、励起波長のブルーシフトが起こる。これが、 半導体ナノサイズ蛍光体の特性の一つである量子サイズ効果である。 この半導体ナノサイズ蛍光体に Mn2+をドープした ZnS ナノサイズ蛍光体は 1994 年に Bhargavaらによって、ナノサイズ化による量子閉じ込め効果によって発光量子効率が増大 することが報告された。また、共沈法を用いて作製したZnS:Mn2+のZnSとMn2+の金属イ オンは、リン酸基またはカルボン酸基と相互作用するため、励起されたZnSのエネルギー は、リン酸基またはカルボン酸基へと移動し、さらにMn2+へ移動することにより発光強度 が増大することが本発明者等により報告されている。 また、ナノサイズ化し、励起光を照射すると、バルク状態に比べて狭い空間に電子と正 孔が閉じ込められるために(量子閉じ込め効果)、比較的安定に励起子が生成され、発光エ ネルギー効率の増大や、発光強度の増大が起こる。 一方、ナノサイズ化により表面のダングリングボンドが増えることによる発光効率の低 下や、比表面積の増大により、表面エネルギーが増大し、凝集が起こりやすくなる。また、 表面欠陥の増加により発光特性の減少が起こるという欠点も有する。そこで、これらの欠 点を克服するために、保護安定剤を表面に吸着させることが行なわれている。

(25)

25 4.2. ZnS:Mnナノサイズ蛍光体の作製方法 次の手順でZnS:Mnナノサイズ蛍光体を作製する。 1. 以下のように、酢酸亜鉛二水和物、酢酸マンガン四水和物、硫化ナトリウム九水和物 を純水に溶解する。 ① 酢酸亜鉛二水和物( 3

10

4

×

− mol)+酢酸マンガン四水和物+純水(30 ml) ② 硫化ナトリウム九水和物( 3

10

4

×

− mol)+純水(10 ml) 酢酸マンガン四水和物は最適な濃度を調べるため、ZnS に対してMn の濃度がそれぞ れ1 %、3%、5 %になるように試料を作製した。 2. ①と②をスターラーで混ぜる。 3. 沈殿物が下に堆積したら、上澄み液を取り除き、ホットプレート上 100℃で加熱し、 ZnS:Mnナノサイズ蛍光体の粉末を得る。

(26)

26 4.3. 実験結果 4.3.1. ZnSナノサイズ蛍光体の評価 Fig. 4.1にMnをドープしていないZnSナノサイズ蛍光体のXRD測定の結果を示す。ZnS の(111)面、(220)面、(311)面からの回折ピークが観測され、液相法により作製して試料は ZnSであることが確認できた。 また、ZnSの(111)面の回折ピークの半値幅から、Scherrerの式より求めたナノサイズ蛍光 体の粒径は約3 nmであり、結晶がナノサイズ化していることが分かった。 Fig. 4.2にMnの濃度がそれぞれ0%、1%、3%、5%になるようにドープしたZnSのPL 測定の結果を示す。PL測定より、Mnをドープした試料からは600 nm付近にピークを持 つ、目視でオレンジ色の強い発光が観測された。これはMn2+イオンの4T1→6A1遷移による 発光であると考えられ、Mnの濃度が3%で発光強度が最大になるのが分かった。Mnの濃 度が5%で発光強度が弱くなっているのは、濃度消光によるものと考えられる。 また、 450 nm 付近にもピークが観測され、Mn の濃度を増やすことでこのピークが減 少するのが観測された。

20

30

40

50

60

70

80

Z

n

S

(

1

1

1

)

Z

n

S

(

2

2

0

)

Z

n

S

(

3

1

1

)

2

θ

(deg)

In

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

400

500

600

700

800

0%

1%

3%

5%

Wavelength (nm)

P

L

i

n

te

n

si

ty

(

a

rb

.

u

n

it

s)

Fig. 4.1 XRD測定の結果 Fig. 4.2 PL測定の結果

(27)

27 Fig. 4.3 にZnS の拡散反射率測定の結果を示す。拡散反射率測定より、閃亜鉛鉱型構造 のZnSの吸収波長である350 nm付近で吸収が起こっているのが観測できた。 Fig. 4.4に拡散反射率測定の結果とクベルカ-ムンクの式

( ) (

)

S

K

R

R

R

f

=

=

∞ ∞ ∞

2

1

2 ∞

R

:絶対反射率、

K

:吸収係数、

S

:散乱係数 を用いて求めた吸収係数の結果を示す。バルクのZnSのバンドギャップ3.54 eVから3.70 eVにブルーシフトしているのを観測した。これはナノサイズ蛍光体の量子サイズ効果によ るものと考えられる。 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 Wavelength (nm) R ef le ct an ce ( % ) 3 3.2 3.4 3.6 3.8 4

Photon energy (eV)

(E

α

)

2

(28)

28 Fig. 4.5とFig. 4.6にZnとSのモル比X=[S2-/Zn2+]を変えて作製した試料の拡散反射率 と吸収係数の結果を示す。Znに対してSの量を増やすとバンドギャップがレッドシフトす るのを観測した。 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 X=0.9 X=1.0 X=1.1 Wavelength (nm) R ef le ct an ce ( % ) 3 3.2 3.4 3.6 3.8 4

Photon energy (eV)

(E α ) 2 X=0.9 X=1.0 X=1.1 Fig. 4.7にZnとSのモル比X=[S2-/Zn2+]を変えて作製した試料のPL測定の結果を示す。 Znに対してSの量を増やすことで、450 nm付近の発光強度が減少しているのが観測でき た。このことから、450 nm付近のピークはS空孔ドナー準位が関係していると考えられる。

400

500

600

700

800

Wavelength (nm)

P

L

i

n

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

X=0.9

X=1.0

X=1.1

Fig. 4.5 拡散反射率測定の結果 Fig. 4.6 吸収係数の結果 Fig. 4.7 PL測定の結果

(29)

29 4.3.2. マイクロ波の効果について ZnS に対してマイクロ波(MW)による急速加熱焼成を行なうことで、不純物を含まな い純粋なZnSからスポット状の青緑色EL発光を確認したとの報告から、本研究では作製 したZnS粉末に対して電子レンジで加熱することで、その特性の変化を観察した。 電子レンジ10分 Z n S ( 2 2 0 ) Z n S ( 3 1 1 ) 20 30 40 50 60 70 80 In te n si ty ( ar b . u n it s) 2θ (deg.) 電子レンジ3分 Z n S ( 1 1 1 ) 300 400 500 600 700 800 P L i n te n si ty ( ar b . u n it s) Wavelength (nm) ZnS ZnS(電子レンジ3分) Fig. 4.8にXRD測定の結果を示す。どちらの試料もZnSの(111)面、(220)面、(311)面か らの回折ピークが観察され、作製した試料はZnSであることが確認できた。回折ピークの 半値幅からシェラーの式より粉末の粒径を求めると、どちらの試料も4 nm程度であった。 また、電子レンジ10分で加熱した試料の回折ピークが若干弱くなるのが観察された。 Fig. 4.9にPL測定の結果を示す。どちらの試料も450 nm付近にピークがあるのが観察 された。これはZnSの欠陥準位による発光であると考えられる。また、電子レンジ3分で 加熱することでピークが強くなることが観察された。 Fig. 4.8 XRD測定の結果 Fig. 4.9 PL測定の結果

(30)

30 4.3.3. 保護安定剤の効果について 蛍光体はナノサイズ化により表面のダングリングボンドが増えることによる発光効率の 低下や、比表面積の増大により、表面エネルギーが増大し、凝集が起こりやすくなる。ま た、表面欠陥の増加により発光特性の減少が起こるという欠点も有する。そこで、これら の欠点を克服するために、保護安定剤を表面に吸着させることが行なわれている。本研究 では保護安定剤にドデシルりん酸を使用した。 ドデシルりん酸がZnSに対して0.5%と1.0%になるように加えた試料を作製し、XRD測 定とPL測定を行なった。 Non-capping 0.5mol%ZnS In te n si ty ( ar b . u n it s) 20 30 40 50 60 70 80 1.0mol%ZnS Wavelength (nm) 400 500 600 700 800 Wavelength (nm) P L i n te n si ty ( ar b . u n it s) 1.0mol%ZnS 0.5mol%ZnS Non-capping Fig. 4.10にXRD測定の結果を示す。粒径はNon-cappingが2.7nm、0.5%が2.7nm、1.0% が2.6nmでほとんど変化はなかった。また、ドデシルりん酸の加える量を増やすと回折ピ ークの強度が下がるのが観測された。 Fig. 4.11にPL測定の結果を示す。Mn2+イオンの4T1-6A1遷移による600nm付近のピー クの強度はあまり変化がなかった。また、どの試料においても450nm付近にピークが観測 された。これはS空孔ドナー準位が関係していると考えられる。 Fig. 4.10 XRD測定の結果 Fig. 4.11 PL測定の結果

(31)

31

5. ZnS:Mn

ナノ粉末を用いた

EL

素子の作製

5.1. はじめに ZnSは添加する不純物の種類により、青から赤まで発光色を変えることができる蛍光体と し て 、 古 く か ら 知 ら れ て い る 。 液 相 法 に よ り 作 製 さ れ た ZnS:Mn ナ ノ 結 晶 は 、 Mn2+4T1(4G)-6A1(6S)遷移の高効率の PL測定が報告され、しかも容易に作製できる。また、 材料のナノサイズ化によって、PL発光が高効率になることが報告され 1-2) 、ZnS系がEL素 子材料として再び注目されている。バルクのZnS:Mnは無機EL素子の代表的な発光材料で あるため、ZnS:Mnナノ結晶はEL材料として期待できる。 半導体ナノ結晶の発光特性に現れるサイズ効果はバンド間遷移や励起子を介した発光に 限らず、ナノ結晶に添加された遷移金属イオンや希土類金属イオン党の発光中心からの発 光においても確認されている。 3-4) 本研究では、酢酸亜鉛、硫化ナトリウム、酢酸マンガンを用い溶液合成によって作製し たZnS:Mn粉末結晶についてX線回折測定(XRD)測定、フォトルミネッセンス(PL)測 定を行った。また、このZnS:Mn発光体およびBaTiO3誘電体粉末を有機樹脂に混合・ペー スト化し、スクリーン印刷法によりITO/ガラス基板上に塗布することで、分散型EL素子を 作製し、その発光スペクトルをEL測定により評価した。

(32)

32 5.2. 実験 5.2.1. ZnS:Mn粉末の作製 次の手順でZnS:Mn粉末を作製する。 5) 1. 以下のように、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、硫化ナトリウムをZn:S:Mn=1:1:0.012とな るように純水に溶解する。 ①(酢酸亜鉛二水和物1.3 g+酢酸マンガン四水和物0.02 g)+純水12 ml ②硫化ナトリウム九水和物1.5 g+純水60 ml 2. ①と②を混ぜる。 3. 上積液を取り除き、ホットプレート上で100℃で加熱し、残った水分を除去すること で約1.2gのZnS:Mn粉末を得る。また、得られたZnS:Mn粉末に対してTable 5.1に 示したアニール処理を行なった粉末も作製した。アニール条件は、Table 5.1に示した ように窒素中400、700、800℃ 1時間および大気中800℃で行なった。 5.2.2. 発光層、絶縁層用インクの作製 1. 有機溶剤の1-メチル-2-ピロリドンに、高い誘電率を持つ有機ポリマーのシアノレジ ンを、濃度が20%、30%となるように融解し、シアノレジン溶液を作製する。 2. 20%のシアノレジン溶液に、作製したZnS:Mn粉末を、ZnS:Mn粉末とシアノレジン 粉末の重量比で 3:1 となるように加え、よく混ぜ、均一に分散させる。これを発光 層用インクとする。 3. 同様に、30%のシアノレジン溶液に、BaTiO3粉末を、BaTiO3粉末とシアノレジン粉 末の重量比で 5:1 となるように加え、よく混ぜ、均一に分散させる。これを絶縁層 用インクとする。 5.2.3. 電界励起型EL素子の作製 1. ITO/ガラス基板をトリクロロエチレン、アセトン、メタノールの順に各10分間超音 波脱脂洗浄を行い、洗浄した基板をホットプレートで加熱し乾燥させる。 2. ITO/ガラス基板上に、シアノレジン溶液に分散させた ZnS:Mn 粉末(発光層用イン ク)をスクリーン印刷法を用いて塗布し、発光層とした。発光層の中に有機溶剤や 水分が残っていると、EL素子の寿命を縮めたり、絶縁破壊の原因となるため、ホッ トプレート上で十分に乾燥させる。 3. ITO/ガラス基板上に作製した発光層の上に、絶縁層として、シアノレジン溶液に分

(33)

33 散させたBaTiO3粉末(絶縁層用インク)をスクリーン印刷法を用いて塗布し、同様 にホットプレート上100℃で加熱し、有機溶剤や水分を除去する。 4. 作製した絶縁層の上に背面電極として、Auを真空蒸着法によって成膜する。または Agペーストを塗布する。作製したEL素子の構造をFig. 5.1に示す。また、EL素子 の作製条件およびZnS:Mn粉末のアニール条件をまとめてTable 5.1に示す。

Table 5.1

EL

素子の作製条件

基板 ITO/ガラス基板 シアノレジン溶液 (%) 20 (発光層)、30 (絶縁層) ZnS:Mn粉末:シアノレジン粉末 3:1 BaTiO3粉末:シアノレジン粉末 5:1 ZnS:Mn粉末 アニール時間 (h) 1 ZnS:Mn粉末 アニール温度 (℃) 400、700、800 アニール雰囲気 窒素中、大気中

Fig. 5.1

EL

素子構造

(34)

34 5.3. 実験結果 5.3.1. ZnS:Mn粉末の評価 Fig. 5.2 に作製した ZnS:Mn 粉末のアニール前の XRD 測定結果を示す。ZnS(111)面、 ZnS(220)面、ZnS(311)面からの回折ピークが観測され、液相法により作製した粉末はZnS粉 末であることが確認できた。また、ZnS(111)回折ピークの半値幅から、Scherrer の式より求 めた結晶の粒径は約3 nmとなり、ナノ結晶が形成されていることがわかる。 Fig. 5.3に作製したZnS:Mn粉末のPL測定結果を示す。PL測定により、約600 nmにピー クを持つ、目視でオレンジ色の強い発光が観測された。これはMn 2+ イオンの 4 T1→6A1遷移 による発光であると考えられる。 20 30 40 50 60 70 80 Z n S (1 1 1 ) Z n S (2 2 0 ) Z n S (3 1 1 ) 2θ (deg) In te n si ty ( a rb . u n it s) 400 500 600 700 800 Wavelength (nm) P L i n te n si ty ( a rb . u n it s) Fig. 5.2 XRD測定の結果 Fig. 5.3 PL測定の結果

(35)

35 5.3.2. 窒素中アニールをしたZnS:Mn粉末の評価 Fig. 5.4に窒素雰囲気中でアニール処理をしたZnS:Mn粉末のXRD測定結果を示す。アニ ール温度は 400℃、700℃、800℃とした。400℃でアニールした ZnS:Mn 粉末はアニールを していないものと比べて、回折ピークが鋭くなっており、結晶サイズが大きくなっている ことがわかる。700℃、800℃でアニールしたZnS:Mn 粉末からはZnOのピークが観測され た。これによって、高温で熱処理をすることによってZnS主体からZnO主体の結晶粉末に 変化することがわかった。800℃でアニールした試料から、41°、43°、45°付近にピークが観 測されたがこれについては調査中である。 アニールなし Z n O (1 0 0 ) Z n O (0 0 2 ) Z n O (1 0 1 ) Z n S (2 2 0 ) o r Z n O (1 0 2 ) Z n S (3 1 1 ) o r Z n O (1 1 0 ) Z n O (1 0 3 ) Z n O (1 1 2 ) 700℃

20

30

40

50

60

70

80

400℃

2

θ

(deg)

In

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

20

30

40

50

60

70

80

800℃

2

θ

(deg)

In

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

Fig. 5.4 XRD測定の結果

(36)

36 Fig. 5.5に窒素雰囲気中でアニール処理をしたZnS:Mn粉末のPL測定結果を示す。PL測 定結果より、アニールすることでPL 強度は弱くなるが、400℃、700℃、800℃とアニール 温度を高くしていくと、PL強度も強くなることがわかった。また、アニールなしのZnS:Mn 粉末のピーク位置は約600 nm付近であるが、800℃でアニールしたものはピーク位置が約 630 nm付近なっており、レッドシフトすることがわかった。これは、アニールによってZnS 主体の結晶粉末から、ZnO 主体の結晶粉末に変化していること、また、アニールによる粉 末の粒径の変化が関係していると考えられる。

500

600

700

800

アニールなし

窒素中

400

窒素中

700

窒素中

800

Wavelength (nm)

P

L

i

n

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

Fig. 5.5 PL測定の結果

(37)

37 5.3.3. 大気中アニールをしたZnS:Mn粉末の評価 Fig. 5.6に大気中800℃でアニールをしたZnS:Mn粉末のXRD測定結果を示す。大気中で アニールした試料からの回折ピークは、窒素雰囲気中でアニールした試料のXRD測定結果 とほぼ同じ結果になった。また、窒素中 800℃でアニールした試料から観測された、41°、 43°、45°付近からの回折ピークは観測されなかった。窒素中アニールで ZnO が生成されて しまうのは、ZnS:Mnの作製過程で粉末に取り込まれた酸素の影響ではないかと考えられる。 Fig. 5.7に大気中800℃でアニールをしたZnS:Mn粉末のPL測定結果を示す。窒素中800℃ でアニールしたZnS:Mn粉末のPLピークは、630 nm付近にあり、アニール前よりレッドシ フトしたが、大気中800℃でアニールをしたZnS:Mn粉末のPLピークは、590 nm付近にあ り、逆に、若干ではあるがブルーシフトした。また、500 nm付近に、窒素中アニールした ものには見られなかった、弱いピークを観測した。 0 1000 2000 3000 4000 大気中800℃ 窒素中800℃ Z n O (1 0 0 ) Z n S (2 2 0 ) o r Z n O (1 0 2 ) Z n S (3 1 1 ) o r Z n O (1 1 0 ) Z n O (1 0 1 ) Z n O (0 0 2 ) Z n O (1 0 3 ) Z n O (1 1 2 ) 20 30 40 50 60 70 80 0 1000 2000 3000 4000 5000

400

500

600

700

800

アニールなし 大気中800℃ 窒素中800℃

Wavelength (nm)

P

L

i

n

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

Fig. 5.6 XRD測定の結果 Fig. 5.7 PL測定の結果

(38)

38 5.3.4. EL測定結果 Fig. 5.8に大気中800℃でアニール処理を行ったZnS:Mn粉末を用いて作製したEL素子の EL測定結果を示す。EL素子の発光層には、大気中800℃でアニールしたZnS:Mn粉末を使 用した。測定結果より、PL測定で観測されたMn 2+ の遷移からの発光と考えられる約600 nm 付近のピークがEL測定からも観測され、EL素子からも、Mn 2+ イオンの 4 T1→ 6 A1遷移の発 光が起こっていると考えられる。大気中アニールしたZnS:MnのPL測定で観測された、500 nm 付近の弱いピークは、EL 測定からは観測されなかった。また、アニールを行っていな いZnS:Mn粉末を用いて作製したEL素子からはEL発光は観測できなった。また、Fig. 5.9 に 実際のELの様子を示す。

400

500

600

700

800

PL

EL

Wavelength (nm)

In

te

n

si

ty

(

ar

b

.

u

n

it

s)

Fig. 5.8 EL測定の結果 Fig. 5.9 EL素子の写真

(39)

39 Fig. 5.10に周波数を変化させたときのELスペクトル、また、Fig. 5.11に周波数を変化さ せたときの発光強度―周波数特性を示す。印加する交流電圧の周波数を高くすることで、 EL発光の強度もほぼ比例して高くなることがわかった。発光強度は周波数に依存するのは、 無機分散型ELは、高電界下で発光層の電子が加速され、発光中心に衝突して励起され発光 するため、高周波数のほうが発光中心に衝突する電子の数が多くなるので発光強度が強く なる。

400

500

600

700

800

100 Hz

1000 Hz

5000 Hz

E

L

i

n

te

n

si

ty

(

a

rb

.

u

n

it

s)

Wavelength (nm)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

E

L

i

n

te

n

si

ty

(

a

rb

.

u

n

it

s)

Frequency (Hz)

Fig. 5.10 周波数を変化させたときのEL Fig. 5.11 発光強度―周波数特性

(40)

40 Fig. 5.12にEL素子に印加する電圧を変化させたときのELスペクトル、また、Fig. 5.13 に電圧を変化させたときの発光強度―電圧特性を示す。 Fig. 5.13より、EL素子に印加する電圧を高くすることで、発光強度は指数的に増強する ことがわかる。このように発光強度が指数的に強くなるのは、使用したZnS:Mn粉末の粒径 が均一でないため、粉末にかかる電界強度に差が生じ、電圧が上昇したときに電界強度の 高い蛍光体から発光するためであると考えられる。 6)

400

500

600

700

800

100 V

150 V

200 V

E

L

i

n

te

n

si

ty

(

a

rb

.

u

n

it

s)

Wavelength (nm)

100

150

200

E

L

i

n

te

n

si

ty

(

a

rb

.

u

n

it

s)

Voltage (V)

Fig. 5.12 電圧を変化させたときのEL Fig. 5.13 発光強度―電圧特性

(41)

41 5.4. まとめ 液相法によりZnS:Mn粉末を作製し、それを発光層に用いた無機分散型EL素子を作製し た。作製したZnS:Mn粉末のPL測定結果より600 nm付近にピークを持つ、オレンジ色の 発光が観測された。これは、Mn 2+ イオンの 4 T1→6A1遷移による発光であると考えられる。 アニールしたZnS:Mn粉末のXRD測定結果より、高温でアニールすることでZnS主体から ZnO主体の粉末結晶に変化した。また、アニールしたZnS:Mn粉末のPL測定結果より、ア ニールすることでPL強度は弱くなるが、高温でアニールすることで、PL強度が低温でア ニールしたものより強くなることがわかった。また、アニールによってPLピークのレッド シフトが観測された。 アニールしたZnS:Mn粉末を使用して作製したEL素子のEL測定結果より、ZnS:Mn粉末 のPL測定で観測されたのと同じ、600 nm付近からEL発光を観測した。EL発光強度は周 波数を上げることによって比例的に強くなり、また、印加電圧を上げることで指数的に強 くなることがわかった。アニールをしていないZnS:Mn粉末を使用して作製したEL素子か らはEL発光は観測できなかった。

(42)

42 参考文献

1. T. Toyama, D. Adachi, M. Fujii, Y. Nakano, and H. Okamoto, J. Non-Cryst. Solids, 299, 1111 (2002).

2. T. Kezuka, M. Konishi, T. Isobe, and M. Senna, J. Lumin. 87, 418 (2000). 3. B. Steitz, Y. Axmann, H. Hofmann, and A. Petri-Fink, J. Lumin. 128, 92 (2008).

4. S. Nakamura, S. Takagimoto, T. Ando, H. Kugimiya, Y. Yamada, and T. Taguchi, J. crystal Growth 221, 388 (2000).

5. D. Adachi, T. Morimoto, T. Hama, T. Toyama, and H. Okamoto, J. Non-Cryst. Solids, 354, 2740 (2008) .

6. 佐藤利文:スクリーン印刷による分散型EL素子の作製 (日本印刷学会誌、第46巻第 1号)(2009).

(43)

43

6.

結論

本研究では、多種多様な光学的性質を持っている化合物半導体の中から、添加する不純 物を変えることで、発光色を赤から青まで変化させることができる ZnS に注目し研究を行 った。 第1章では、本研究の背景、序論を述べた。 第2章では、試料作製に用いた装置を説明した。 第3章では、本研究で用いた、XRD測定、光吸収係数測定、PL測定、EL測定の測定原 理を述べた。 第 4 章と第 5 章では、酢酸亜鉛、硫化ナトリウム、酢酸マンガンを用い溶液合成によっ てZnS:Mn粉末を作製した。また、このZnS:Mnナノ粉末を用いて、スクリーン印刷法によ り、分散型EL素子を作製した。作製したZnS:Mn粉末のPL測定結果より600 nm付近にピ ークを持つ、オレンジ色の発光が観測された。これは、Mn 2+ イオンの 4 T1→ 6 A1遷移による 発光であると考えられる。アニールしたZnS:Mn粉末のXRD測定結果より、高温でアニー ルすることでZnS主体からZnO主体の粉末結晶に変化した。アニールしたZnS:Mn粉末を 使用して作製したEL素子のEL測定結果より、ZnS:Mn粉末のPL測定で観測されたのと同 じ、600 nm付近からEL発光を観測した。アニールをしていないZnS:Mn粉末を使用して作 製したEL素子からはEL発光は観測できなかった。

(44)

44

謝辞

本研究を進めるにあたり、常に真剣に御指導、御意見を頂きました宮崎卓幸准教授に深 く感謝いたします。 研究を行う上での心構えや、論文について数々の御意見を頂きました安達教授に深く感 謝いたします。 装置の使い方、実験手順、実験を行う上での注意事項を御指導頂きました尾崎俊二准教 授、中村俊博助教に深く感謝いたします。 実験装置を作製して頂き、実験を行う上での助言を頂きました、尾池弘美技官に深く感 謝いたします。 最後に、御世話になった安達・宮崎研究室の先輩、後輩、また、同学年の皆様に深く感 謝いたします。

Fig. 3.2    半導体結晶の発光再結合
Fig. 3.3    PL 測定系
Fig. 3.6 EL スペクトル測定概略図
Fig. 4.1 XRD 測定の結果 Fig. 4.2 PL 測定の結果
+7

参照

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