教養物理の題材(I) : 原子力発電,核融合炉の物理
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 5巻 第1号. 平成6年10月. lo f Hokka i do Un i i fEducat i i l Journa tyo t ve r s on(Sec onIC)Vo ‐45 .l , No. oc tobe r ,1994. 教養物理の題材 1 -原子力発電, 核融合炉の物理-. 岡. 崎. 隆. 北海道教育大学札幌校物理学教室 Subjects of lntroduct ion to Physicsl ics on atomic energy and nuclear fusion- ‐Phys Takashi oKAZAK1 Phys i to cs Labo ra o Ca i : npus l y,Sappor , ‐ Hokka i do Un ive i f Educa i ty o t r s on Sappor o o02. 1 98 5年から1 9 89年の間, 一般科目の 「一般物理学」 (半期) を担当し, 岩波新書 「物理学とは何だろうか (上) 」 (朝永 振一郎) をテキストとしてニュートン力学の形成史を中心に講義を行ってきた‐ 一般 科目は教養科目と名称も変更さ れ, この領域での必修単位数を大幅に削減するカリキュラム改革が行われる時期に 「教養物理」 として再びこの講義を 担当することになった‐ 物理を専門としない学生たちに何を目標に, どんな内容を, どのように講義したらよいのか , 新カリキュラムのなかでの教養科目の位置づけはかならずしも明らかにはなっていないが, ここ数年間 物理専攻の学 , 生達と卒業研究を通 じて深めてきたもののうちいく つかを講義の題材として一般の学生達に聞いてもらってもよいので はないかと考えた‐ 「教養物理」 の内容を考える試みのひとつとしてその内容を以下にまとめておく‐. 1. 原子力発電とはどんな物理現象か 1 9 88年, 北海道で初の原子力発電が泊原子力発電所で開始されようとしており, チェルノブイリ原子力発電所での深 刻な事故の後だけにその安全性, 是非が議論の的となった‐ この年, 電磁気学の講義で使用 していたテキストにあった 原子核の静電エネルギーを計算する例題 (1) と北海道電力による原発の効率を宣伝する新聞広告 (2) が卒業研究 1 「原子核反応におけるエネルギー放出機構の研究」(有沢博学1 9 88年度))の始まるきっかけとなった‐ それらは, つぎの ような内容である‐. の 半径aの球内に電荷 跡 -様に分布し ひ ろ場合, この電荷分布は静電工 籾 ネ. 鳥. 誓 を持つ 従っ. Z て,この電荷分布で近似される原子番号z,質量数Aの原子核には, u 47 2 ; ね び[ e” の静電エネルギーが蓄えら A 2. れ て お り, この こ と か らウ ラ ン原 子 核 が 二 つ に 分 裂 した と き 約300 [Mev] の エネ ル ギ ー が 開 放 さ れ る こと が分 か る ) ‐. 3 (2) 北海道電力による新聞広告 ( 1 988年7月)) 「た っ た 1 g (1 円玉 1 枚 の 重 さ) の ウ ラ ン235で石 油 (重 油) な ら ドラ ム 缶12本 ぶん の 熱 を 生 みま す 」 ‐. 電磁気学で学んだ基本法則を適応することによって数値的に考察しうる例題として ( )は格好の題材となった‐ ,2 これがき そして, っかけとなってすすんだ卒業研究は, 原子核反応の巨大さを改めて認識する機会になると同時に, 物理の基本法則と現実の問題との関わりを考える契機ともなった. その後今日まで泊原発は発電開始のときほど話題になることもなく営業運転を続けているが 全国各地の原子力発電 , 255.
(3) . 岡. 崎. 所でたびたび発生する事故はこの発電の難しさを示している. 隆. 身近にある原子力発電にたいする我々の関心がけっ して. 高いとは言えない一方で, 我が国の原発の存在が, 核廃燃料の再処理-プルトニウム輸送という形で海外諸国を巻き込 2 )で行われているような限定 んでいる現実もある‐ 原子力発電の効率を論ずることは容易なことではないが少なくとも( 4 ) 的な評価は物理の基礎知識の適応範囲であり, その基本原理の物理的側面は教養物理のテーマになりうるであろう‐ 物 理を専門としない学生達が物理に接する数少ない機会に, 身近に存在する原子力 発電をひとつ の物理現象と してとら え, こうした題材に基づいて物理の諸概念や法則を論ずることを試みる. 1. 静電気力とはどんなものか 火力発電が重油の燃焼による発熱をエネルギー源にしているのに対し, 原子力発電はウラン原子核の核分裂による発 熱をその源としている. 重油の燃焼は化学反応すなわち炭素の酸化反応であり, それぞれの発電における典型的な反応 過程は次式で表される‐. C十02 → C02十Q,. 1 9 グラ フ ァイ ト [ 6×10‐ 2【 c副1 Q=4 eV]=1 - ‐ , C;. 2Sr十2n+Q 鰯U+n →1 4 2Xe十9 ,. 【 Q#2×108 evl. (1. 1) (1. 2). これらの反応過程における発熱量の桁違いな違いこそ二つの発電の質的相異を表すものであり, 以下にその違いが何 に よる も の な の かを 考 え る‐. 化学反応, 核反応による発熱 (エネル ギー放出) のメカニズムを理解するに当たって, 静電気力とは どんなものであ るかを知っている必要がある‐ 我々がよく知っている力に重力があるので, この力との対比で静電気力の特徴をとらえ よう‐ 地球上では質量を持つ物体には重力が働き, その大きさは, 2 8 F=mg [m/s ] ‐ , 9=9. (1‐ 3). で与えられる‐ (物理量の単位としてとりあえずMKSA単位系を採用する が, これから行う量的考察にこの単位系は かならずしも適当ではない‐ 長さにm (メートル), 質量に庭 (キログラム), 電荷量にC (クーロン) を単位とするこ とは我々が日常体験する世界を考察するには適しているが, これから問題にする原子・分子, 原子核の世界では不適当 ) 我々はこの力を物体の重さや落下という現象を通じて日常的に体験 しているが, これが地球と であることが分かる. 地上の物体との間に働く万有引力の一形態であることを知っている‐ 質量m・ , m2の二物体が距離r離れているとき, 物体間には次式で与えられる万有引力が働く.. Fず G 聾. 2 1 1 1 {Nm2/kg 67×10‐ . , Gヱ6. (1‐ 4). 静電気力 (クーロン力) を, このよく 知られた力と対比させてみよう‐ 我々は静電気力の効果を日常 どこで目にする だろうか? 静電気力 (クーロン力) は電荷間に働く力 として知られており二電荷q 2が距離r離れているとき次式 . ,q で表される‐ 9 /C2 1 [Nm2 Fq= 艦 碧 k=9×10. (1‐ 5). 万有引力と違って静電気力 は, 電荷の正負の組み合わせによって引力または斥力になる. 二つの力の大きさはその係 数を比較して静電気力のほうがけた違いに強し・ように思われるが, この係数はそれぞれ単位質量, 単位電荷間に働く力 を表すだけで, 単位はそれぞれかってにきめたものに過ぎないからこの比較には意味がない.「公平」 な比較は, 自然な と静電気力の大きさの比較す かたちでこの二つの力 が共存するところで行う必要がある‐ 例えば電子間に働く万有引力- 256.
(4) . 教養物理の題材. 1. る と, Fq k qe2 ‐. 匡「ーで 記す. 2×1び2,. 9 1 6×10‐ 【C] q。=1 . ,. 3 1 1kg 1 m =9×10‐. (1‐ 6). 陽子間に働く力で比較すると. 3 6 2×・ 0 きー 語 ;‐・ ‐ 1 9[C1 m =17×10‐『k 1 6×10- qp-1 g ‐ , p ‐. (1. 7). 5 となり, いずれにしても二つの力はこの程度けた違いに違うことが分かる‐) 静電気力のけた違し・の強さと引力・斥力の存在によって, 自然界では電荷はほぼ完全に中和してしまっておりこの力 を目にすることはまれである‐ 静電気力は原子, 分子などの微視的世界を支配する力としてその効果を発揮し, 化学結 合, 化学反応, 分子間力などはいずれも静電気力によるものである‐ 物質の構成単位である原子は, 原子核中に含まれ る陽子と原子核の周りに存在する電子の電気的引力による強固な結合体である‐ 分子はいくつかの原子の結合体である が, この結合 (化学結合) を担っているのも構成要素である陽子と電子の間に働く電気力である‐ 分子は全体として電 気的に中性であるが正負の電荷分布のわずかなずれが分子間力を生み出す. 例えば水の特異な物理化学的性質は水分子 6 ) の電 気 的 性質, 双 極 子 モ ーメ ン ト1‐84D (ID =q [C] × 1 [A]) に よ っ て 担 わ れ て い る.. 2. 静電エネルギーについて 力の働くところではエネルギーが蓄えられる. よく知られているのは重力の位置エネルギーで, 質量mの物体が地表 から高さhにあるとき, 重力の位置エネルギーは u= m9h. (2- 1). である‐ 物体を重力に逆らって高さhまで引き上げるのに必要とした仕事量= (外力×距離) が位置エネルギーとして 蓄えられ,rこの物体が再び地表に戻るまでに外部に同量の仕事をする‐ 物体の高さが少 し低くなる (dh ) ときエネル ギーdu=m9dhが解放されるがこれは物体自身の運動エネルギーになることもあるし, 他の物体のエネルギーを増加さ せることもある‐ 水力発電は, 水の持つ重力の位置エネルギーをタービンの回転エネルギーに変換して発電を行ってい る と い え る.. 2つの電荷 q . 2が距離r隔てて存在するときこの電荷対は ,q qq u=k . 2. (2. 2). の静電エネルギーを持つ. 接近していた二つの電荷q , 2をここまで引き離すのに必要とした仕事量と考えれば上の例 ,q と対応がつく‐ 二つの電荷の距離が少し接近 ( d ) したとき解放されるエネルギーは r du=u M o‐u(“. r ¥d. (2. 3). 従って原子や分子のように正負の電荷が接近している状態には静電エネルギーが蓄えられており, この電荷分布を少し 変 え る こ と に よ っ て エ ネ ル ギー を と りだ す こ と が で き る. エ ネ ル ギー は 熱 エ ネ ル ギ ー の 形 態 を と る こ とも ある が, これ. は分子の運動エネルギーとして理解される‐ 化学反応による発熱は原子・分子のもつ静電エネルギーの一部が解放され 257.
(5) . 岡. 崎. 隆. たものであり, 火力発電は炭素や酸素に蓄えられていた静電エネルギーの一部を熱エネルギーとしてとりだして発電を 行 っ て いる と い える.. r. 化学反応における発熱量をこうした観点から評価してみよう‐ 原子の基本的なサイ ズ (ボーア半径) - l o[m] を 用 い て (2 2) 式から原子の持つ静電エネルギーとして =0‐5×10‐ ‐ , 8 1 1×10‐ 【 8【 Cぬ =28 u=1 eV] . .. (2‐ 4). が得 られ, これは原子の電離エネルギーの大きさを与える‐ エネルギー (熱量) の単位としてはカロリーが日常よく用 I S[C]) いられるが原子一個あたりのエネルギー単位としてはあまりに大きすぎる‐ 電子の持つ電荷量 ( q =1‐6×10‐ が1[V] の電位差でもつ静電エネルギーをもって1[ eV] とし, 原子・分子の世界のエネルギー単位とする‐ 0 2 9m =4×10‐ 1[ 6× 10‐1 【 ev〕=1 can .. (2‐ 5). 水素, 炭 素, 酸 素 の 第 一イ オ ン化 エネ ル ギ ー は eV 単 位 で, 水素 ;13‐60, 炭 素 ;11‐26, 酸 素 ;13‐61と な っ て お り, ほ. 7 } ぼ (2. 4) で評価した大きさである‐ 化学反応では化学結合に関わる電子 (価電子) の移動すなわち電荷の配置の変 0%変わったとして (2. 3) 式から 更が起こる. 例え ば原子のサイ ズが1 cxo 1=2 du=k 筆号 9 [ l ev ‐ ‐. (2- 6). が得られる. 化学反応によって解放されるエネルギーは,r .程度離れた電荷 q 対に蓄えられた静電エネ ルギーの一部 で, 大 き さは数 eV で あ る と い え る‐. 3. 核反応による発熱. 核反応による発熱を考察するに当たって, 原子核とはどんなものかを明らかにしておく‐ 原子の中心部の狭い領域に は陽子, 中性子 (核子) が集中して存在しており原子核とよばれる. 電気的には正に帯電しており, 原子の質量はこの 1 5 ‐ -5 核 に よ っ て担 われ て い る. 原 子 核 の 基 本 的 な サイ ズ は・ N=1‐2×10 [m] 鴛10 危で, こ の 領 域 内 に 核 子 が ほ ぼ一様 な. 密度で分布しており, 核の体積は核子数にほぼ比例して増大する‐ 原子の結合力 (F) に比べると原子核中の陽子間に は強力な反発力 (FN ) が働くが核力 (引力) がこの電気的反発を押さえている‐. k 誓 た 貯7 N t ] 2 9×F k 詩 #1 0 0 -N- 1. (3‐ 1). 核力は核子 (陽子, 中性子) 間に働く非常に強い引力であるが静電気力と違って力の及ぶ範囲が狭い (≦1 0× rN)‐ そのため自然界に存在する原子核の大きさには限りがあり, その上限付近の核は電気的反発力と核力とのバランスが微 妙であり不安定で, 電気的反発力によって分裂しやすい. 半径aの内部に合わせてQの正電荷が一様に分布しているとき, この電荷分布が持つ静電エネルギーは Q2 u= 三k 5. a. (3. 2). で 与 え られ る. この 式 の 導 出 は こ こ で は 行 わ な い が, (2. 2) 式 に よ っ て Q/2づ つ の 電 荷 がa/2だ け 離 れ て い る と 近. 似すれば. 258.
(6) . 教養物理の題材 I. 2 2 ) uギ宅劣 ず番. (3‐ 3). でほぼ正しい答えを与える. 原子核は上でのべたような電荷分布で近似できるの で原子番号Z (原子核中の陽子の総 数), 質量数A (原子核中の核子の総数) の原子核がもつ静電エネルギーは, 3r / Q=Zq” a= AI N ,. (3- 4). 5U 即ち凝 6Uが真二つに分裂したとき 分裂前のエネルギー 中性子を1個吸収した” 島, 分裂後のエネルギーu , fは, そ ,. れぞれ Z=92A=236 ) #986×106{ uF u( evl , Z-46A=118 ) に622×106[ u.-2u( e切. (3‐ 5). 従って核分裂によって放出されるエネルギーは Q=u;-uf=364×106[ evl鞘364[Mev]. (3‐ 6). 原子核の持つ表面エネルギーなども考慮すると核分裂によって放出されるエネルギーはおよそ20 0[Mev]= 2 ×108 [ 5の核分裂によって発生するエネルギーu ev] となる‐ 従ってウラン23 Nと炭素 (C) の燃焼 (酸化) によって発生する エネルギーu cを比較すると 8【 uN=2×10 2[eVi ev] . , uc=4 , uN 1× 8 = 10 2 uc. (3. 7). 8倍のエネルギーを発生する すなわち, 一素過程あたり核反応は化学反応の約1 0 ‐ 1gの ウラ ン235お よ び C が 生 み 出 す エ ネ ル ギー UN Ucはそ れ ぞ れ の原 子 量235 12お よ びア ボ ガ ドロ 数N = 6 ×10ぉか , A , ら, 次 の よ う に求 め られ る‐. 1 0 o U 一 . 増 r xl 【叫,. U副. 3 0 4×1 1 t cm 誉 8 .. (3- 8). これらからもわかるように, そもそも核反応は化学反応と比較にならないほど莫大な けた違いのエネルギーを発生 , するものである. 核爆発と火薬の爆発の相異もここにあり, 二つは量的にも質的にも全く 異な っ た過程 であるといえ る.. 4. 重油と核燃料の発熱量の比較. 8 ) 理科年表によれば重油の比重, 発熱量について次のデーターが得られる‐. 259.
(7) . 岡 崎. 隆. 比重 ; 0‐82一0‐961. l ] 0 0[kca 0 0一1 1 1 1[鯖] あたり 90. 発熱量;. (4. 1). 5嘘) あたりのの発熱量Qは 200リ ッ トル = 2×1 0 これ らの データ ー を用 い る と ドラ ム 缶 1本 ( 3 5×09×10- l /kg 】 kg [ )[ IXI07 2×10 ca Q#( . l l ca =2×109【. (4‐ 2). (3. 8) を 使 っ て, UN/Q = 10つ ま り 1 g の ウラ ン235の 核 分 裂 に よ っ て 発 生す る エ ネ ル ギー は 重 油 ドラ ム 缶約10本. の発熱量に相当すること, 北電の広告はこうした計算に基づくものであることが分かる‐ 火力発電は重油を燃焼させて発生する熱を利用して発電を行い,(4‐ 2) のような発熱が期待される‐ それでは原子 5を燃料として使っているのだろうか? 原子炉内で 「燃える」 核燃料とはいったいどん 00%純度のウラン23 力発電では1 9 ) なものなのだろうか, また核燃料は原子炉内でどのように 「燃えて」 いるのだろうか. 核燃料体は核分裂によって発生 した熱を外部につたえ, 反応が進行してもその形状が保たれるものである必要がある‐ また反応生成物のなかには強い 放射線を長期にわたって放出するものが含まれており廃棄物処理を可能にするために核燃料体はこれらを閉じ込めるも のでなければならない‐ これらの条件を満たす燃料体として,「天然のウラン鉱石から二酸化ウランをつくり, 高温で指 3 } 先大のせともの状に焼き固めたもの」 ペ レットが核燃料体として使われる‐ このペ レットのウラン含有率は約3% で あるが北電の広告のなかにこの含有率は書かれていない.(1. 2) の核反応は反応によって生じた中性子によって次の 5Uとの反応には (1 2) よう 核反応が引き起こされるというように連鎖反応によって継続する‐ ところが, 中性子と漆 . な発熱を伴う核分裂の他に, 中性子捕獲, 弾性・非弾性散乱があり, 核分裂の割合を高くするためには中性子の持つエ ネルギーを低く調節する必要がある‐ 核反応によって発生した高エネルギー中性子を, 核反応を起こしやすい 「遅い中 性子」 に減速するために減速材として水, 黒鉛などが用いられ核燃料体の間に配置される‐ 反応によって生じた2個の 中性子がそれぞれ鰯Uの核分裂を引き起こすとすればこの連鎖反応は急激に進み莫大なエネルギーが瞬時にを放出され てしまうため, 原子炉内では連鎖反応が増殖することなく しかも途切れることなく持続するよう核反応が制御されなけ ればならない‐ また必要に応 じて核反応を停止させるためにホウ素, カ ドミウムなど中性子を吸収しやすい元素から作 られる制御棒が用意される. こうして原子炉内では核燃料体, 減速材, 制御棒が適切に配置され連鎖反応がコントロー ルさ れ て い る‐. ところで実際に原子炉内で 「燃える」 核燃料で考えると, 重油との発熱量の比較は次のようになる‐ 2本×3% 核燃料体1g当たりの発熱量 = 重油 ドラム缶1 = 72リ ッ トル = 18リ ッ トル 缶 4 本. (4‐ 2). また嫌Uは天然ウラン中には0 .7%しか含まれていなので, 上記の燃料体にするために精製, 加工される必要がある‐ 重 油は原油からガソリン, 灯油, 軽油などを精製した残留物 であるであることを考えると 「たった1g (1円玉1枚の重 2本ぶんの熱を生みます‐ さ) のウラン2 3 5で石油 (重油) ならドラム缶1 」 という原子力発電の効率の宣伝は誇大広告と 言わざるを得ない‐ ここでは, 燃焼によって発生する熱に限定して二つの発電を比較してきたが反応生成物にも大きな違いがあり比較 は単純には終わらない‐. =. 核融合炉の物理 原子核反応を利用する発電方法として核融合炉の研究が行われている‐ 典型的な核融合反応は次の ようなものであ 260.
(8) . 教養物理の題材. 1. る;. 2H FH→3H +n十3 31Me可, .. 2H十3H→4H 十n十176[Mev] .. 電気的に中性な分子同士によって生じる化学反応と違って, 正に帯電し互いに電気的に反発し合う原子核同士を反応 させることは容易なことではない‐2Hと2Hまたは3Hを核力の到達距離まで静電気力に逆らって近付けてや っ て初め て核融合反応が起こる‐ このために,2H,3Hを高温 (一億度) 高密度ガス状 (プラズマ) に保ち,2Hと2豆また は3H 原子核が電気的斥力に打ち勝って反応する機会を作る必要がある‐ このような高温, 高密度のプラズマをどんな方法で 保ってやればよいか, 一億度のプラズマを閉じ込める容器 (核融合炉) を作り上げることが課題となる. 電磁気学の基 本法則に基づき磁場によるプラズマの閉じ込めるが試みられる. 磁場中の荷電粒子の運動は三次元シミュ レーショ ンの 格好な題材であり, 卒業研究 「プラズマの閉じ込めについての数値的解析」(真鍋-史,1 9 90年度) では現在研究が進め られているトカマク型核融合炉の原理を調べ, コンピューターを使ってトロイダル磁場中での荷電粒子の運動をシミュ o ) i レー ト した J ま た1993年 度 に は 「Mathema t caに よ る プ ラ ズ マ の 磁 場 閉 じ込 め シミ ュ レー シ ョ ン」 (佐 藤 充,1993年 度. hema i 卒業論文) で数式処理ソフト Ma t t caを使い三次元グラフィックを用いながら同じ現象の解析を試みた‐ 1. 磁場中における荷電粒子の運動 磁場 B [T] 中で速度v[m/ ], 帯電量q [C] の荷電粒子が受ける力 (ローレンツ力) は, 次式で与えられる‐ s F=qvXB. (1. 1). こ こ で, 二 つ の ベ ク トル の 外 積 AXB は, 次 の よ う に 定 義 さ れ る ;. i A×B=c c 1 A=Bーs nβ, 夕 は A, B 2 つ の ベ ク ト ル の な す角 ,l. C・A淑0 , C.B端。. (1- 2). す なわ ち, AXB は 2 つ の ベ ク ト ルか ら つ く ら れ る 大 き さ がABs i nβ, 方向がA,B双方に垂直 (A→Bで右ネジの進む. 方向) なベクトルである‐ この力によって荷電粒子にはvに垂直な方向に加速度が生じ, 粒子の運動方向が変化する. 磁場中に置かれた導線に電流を流すと導線は力を受けるが, これは導線中を運動する荷電粒子が受けるローレンツ力に よるものと理解される‐ 電流によって回転するモーターはこの原理に従っている‐ 逆に, 磁場中を動く導線の中で電子 はこの力によって加速され導線には電流が流れることになる‐ 磁場中に置かれた回転するコイルから交流電力を取り出 す 発 電 のメ カ ニ ズ ム も こ こ に あ る.. ここで, 力を受けた物体がどのような運動をするかニュートンの運動法則を振り返っておこう. ニュートンの運動法 則は, 物体に働く力 Fが加速度をもたらすことを示している‐ m α =F. (1‐ 3). t(速度ベクトルの変化/変化に要した時間) すなわち, 1秒当たりの速度ベク αは加速度ベクトルで, α = dv/d トルの変化と考えればよい‐ ある瞬間の速度を v, 1秒後の速度をザ としたとき, ザ =▽+αのようにベクトルの和 としてぜ が得られる. 従って, 力は速度ベクトルの変化 (大きさ及び方向の変化) を引き起こす‐ 力を受けなければ物 体の速度は不変 (大きさも方向も変わらない) で, 物体は等速直線運動を続ける‐ 例として, 太陽との間に働く万有引力のもとでの地球の公転運動を運動法則に基づいて考察してみよう. 実際には地 l l 球は太陽を焦点の一つとする楕円軌道上を速さを変えながら運動する が, 単純化して軌道半径r=1 ‐5×lo [m] の円 261.
(9) . 岡. 崎. 隆. 周上の等速円運動として考える‐ 地球が円軌道を1年でまわるとして公転周期はT. 7 [s] 冗 ×1 0 ,. 地球の公転速度. 4[m/s ベ ベ は v=2ズ /T=3×10 ] r , 速 度 ク トル は 1年 か け て 2zラ ジア ンま わ る か ら 1秒 あ た り の 速 度 ク ト ル の 変 化 す なわ. ち加速度の大きさは. 飼. 7 2 ] [m/s 亭 た2vxlo-. (1. 4). 2がもたらす加速度は太陽の質量 (M= と求められ, その方向は軌道中心を向いている. 地球に働く万有引力F=GMm/ r 0[ 2×1 03 ] ), 万有引力定数Gから大きさは kg ‐G 拳 #6xlが 廟/〆] , ー r. (1. 5). であり (1‐ 4) で求めた地球の加速度が万有引力によるものであることが確かめられる. この例のように, 運動方向 に常に垂直に一定の大きさの力が働く場合, 物体の速さは変わらず運動の方向のみ変化し, 物体は力と速度両ベクトル s=Fsco の作る平面内を等速で円運動する. この際物体に働く力のなす仕事W= F・ s夕はゼロであり運動エネルギー は不変に保たれる‐ 一様磁場中, 磁場に垂直に入射した荷電粒子はロー レンツ力のもとでどのような運動をするだろうか? 荷電粒子は 運動方向 (速度ベクトル) に常に垂直な一定の力を受け, 速度ベクトルは大きさを変えず方向だけを変える‐ 結局, 荷 電粒子は前に述べた例と同様に力と速度両ベクトルの作る平面内すなわち磁場に垂直な平面内を等速で円運動をするこ とになる‐ 円運動の周期をT, 軌道半径を・とすると, 前の例と同じように v=. 2オr ’ T. α=v. 2冗 T. (1- 6). 2 /α、 と ころ で ロ ー レンツ力 に よる 加 速 度 は α=qvB/m だ か ら 円 軌 道 の 半 径 は 従 っ て, r=v. qB. (1‐ 7). と求められる‐ 荷電粒子の速さが速いほど, 磁場が弱いほど粒子は大きな円軌道を描くことが分かる‐ 同じ運動エネル ギーをもつ重水素原子核と電子が磁場中で運動するとき軌道半径の比は次式で与えられる‐. キー 器 ‐ 倍 -o. (1‐ 8). ) 等速直線運動を続ける‐ 以上から一般に荷電 一方, 磁場と平行に入射した荷電粒子は力を受けず (F=qv×B=0 粒子は, 上の二つの運動を合成した運動すなわち 「らせん運動」 をする. 磁場中の荷電粒子は磁力線に巻き付く運動を すると言える‐ 従って, 磁力線が閉曲線を描くような磁場を作れ ば荷電粒子をこの磁力線の周辺に閉じ込めることがで き る‐ こ の こ とを 手 がか り に 磁 場 に よる プラ ズ マ の 閉 じ込 め を 考 え て ゆ こ う‐. 2. トカマク型核融合炉. まずはじめに磁場について基本的な事柄を押さえておこう‐ 磁場の強さは MKSA 単位系でT (テスラ) と呼ばれる. -4[T] という単位を用いて表され 例え 0 我々にもっとも身近な磁場の一つは地磁気であるがその強さは1ガウス=1 , ば理科年表によれば, 北海道女満別で0 ‐4ガウスなどである. 磁場は電流が存 ‐5ガウス, 南極0 .6ガウス, ニューギニア0 在するところにそれをとりまくように生ずる. 例えば, 直線電流1[A] はそれをとりまく半径d[m] の円周上, 円の 接線方向に次式で与えられる強さの磁場を生む.. 262.
(10) . 教養物理の題材 1. (2‐ 1) 1[A] の 電流 か ら 1[cm] =10-2 [m] 離 れ た と こ ろ に は, 地 磁 気 に 匹 敵 す る B = 2 ×10‐5 [T] =0.2[ガウス] の磁. 場ができる. 垂直に長く垂らした導線に数アンペアの電流を流し机などの水平面に方位磁針を置くと, 磁針は電流が作 る磁場Bと地磁気BEの双方から力を受け南北から一定な角度をなして静止する‐ 磁針が南北方向に対 してなす角度を βとすると二つの磁場の強さの比は次式を満たし, (2‐ 2). 電流から磁針までの距離を測定することによって (2. 1) を確かめることができる‐ 単位長さ当たり導線をn 回巻いたコイルに電流1を流したとき, コイル内部には軸方向に次式で与えられる一様な磁 場ができる‐ B=〆 nl 。. (2- 3). コイルの両端をつなく こ と に よ っ て ドー ナ ッ ツ 状 の 閉 じた 磁 力 線 群 (トー ラ ス 磁 場) を 作 り 出 す こ と が で きる‐ こ の 磁 場中にある荷電粒子群 (プラ ズマ) は磁力線に巻き付くらせん運動を行い, 磁場領域に閉じ込められることになる‐ ア ンペールの法則によればトーラス内部の半径Rの円周上の磁場はこれを縁とする 円を貫く電流で決まり, nl B = ”。. (2‐ 4). 2汀R. 従って, トーラス内部の磁場は一様ではなく外側に向かって弱くなっている. 磁場に垂直な面内での荷電粒子の円運動 の 半 径 は (1‐ 7) から磁場の強さに反比例するため, トーラス内部では 荷電粒子は閉じた円を描かない 磁力線が , ‐. 円周に沿って湾曲していることも併せて荷電粒子のらせん運動には ドリフトが生 じプラズマを構成するイオン (重水素 原子核) と電子はそれぞれトーラスの上方, 下方にらせん運動の中心を移して分離してゆくことになる‐ (図1) 0.2. 0‐I 0‐05. ‐0‐05. ー ー .・. 0.2. ー, ▼ ▼. …. 俗 陵尋 剥 彊 瞳翌 影 \-”. 0‐15. r .▼ー. \ 、. … 三. ▼ー▼ :. . 0.15. … …. 0‐l 0‐05. 三. ′{\ ′. …. ノ. 三. ‐0‐l. … ….…. =▲. …. ‐0‐05 ‐0・l. ‐0.15. ‐0‐15. ‐0 ‐2. ‐0‐2. 0.9. ・ ー▼ -. ”多 \\ 例ド. W 洲 雫 ア. :. 1. 1-1. 1‐2. 図1‐ トー ラス 磁 場 中 の 重 水 素イ オ ンの ドリ フ ト. 人\. /. = =. .▲▲・ Q.9. …. … … …. 1.1. 1.2. 図 2‐ ポ ロイ ダル 磁 場 に よる ドリ フ トの 変 化. トカマク型核融合炉ではポロイ ダル磁場を加えることによってこれを防いでいるがその原 理は次のようなもの であ ID る‐. ファラデーの電磁誘導の法則によれば, 変動する磁場中におかれた導線には電流が誘導される‐ 導線の近く で磁 263.
(11) . 岡 崎. 隆. 石を動かすと導線に電流が誘導されることが容易に確かめられるが, これは変動する磁場が, そのまわりに電場を誘導 すると理解される‐. この法則に基づいて, トーラス型容器の中心 (ドーナッツの穴の部分) で磁場を変動 させると. トーラス内部の円周に沿って電場が発生しプラズマを構成する荷電粒子が加速され プラ ズマ電流が発生する. この電流 (トーラスの大半径に沿った電流) がその周りにポロイ ダル磁場 (トーラスの小半径方向の磁場) を生み出す‐ トーラ ス型容器の中心にコイ ルを置き, これに流す電流を変化させることによって (2‐ 3) で与えられるコイル内部の磁場 が変動し, まわりに電場及び電流が生じるとしてこの現象をシミュ レートすることができる. ポロイ ダル磁場の効果で 荷電粒子は中心が円周を描くらせん運動を行いトーラス型容器の内部に閉じこめられることになる‐ (図2) ここで図 示したシミュ レーショ ンの結果は, それぞれ同じ強さのトーラス磁場中で, 磁場の勾配によって重水素イオンが ドリフ トしてゆく様子とポロイ ダル磁場が加えられて ドリフトに変化が生じた様子をイオンの旋回運動を追いながらあらわし た も の で ある‐. 司TERでは巻き数2 40のD字 20 0 5年の完成をめざして建設が進められている日米欧, 旧ソ連による国際熱核融合実験炉. 2 1 ) 型 コイ ル (内径4.3m ×8‐4m) を 半 径 6 m の 円周 上 に16個 配 置 して トー ラ ス 磁 場 を 作 り 出す‐ コイ ル に3500[A] の 電. 0万倍の磁場が作られる計画である‐ この核融合炉内で重水素原子核がどのような 0[T], 地磁気の2 流を流し, およそ1 4[ 0 eV], 重水素原 運動をしているか評価してみよう‐ 一億度のプラズマ中で構成粒子が持っている運動エネルギーは1 子核の運動速度は次式から求められる. ‐ 5U] (m 4 1 o [ ev] 輔 ×10 をmデ ー・ ,. 鮎). 【m/s } V= 106. (2‐ 5). 0[T] の磁場中で重水素 このように大きな速度を持つ荷電粒子を有限領域に閉じ込める為に強い磁場が必要であり,1 原子核の行うらせん運動の半径は次のように求められる. 7×106 33×10‐2 mv 3 ーm] r= - - - . に 2×10- ‐ qB. 9×lo I 6×10 1 .. (2- 6). 500[A] という 巨 計画されている核融合実験炉ではプラズマを維持するためのトーラス磁場をつくるためだけでも3 大な電流を流し続けなければならず, このために超伝導の技術が使われる‐ トーラス磁場を作り出すD字型コイルには 超伝導材が使われこれが液体ヘリウムによって4 .5[K] に冷却された容器に一億度のプラズ .5[K] に冷却される‐4 マを閉じこめるという極限的な物理環境が 巨大なエネルギーをそそぎ込むことによって作り出される‐ このように, 核 融合による発電にはこれを維持する容器にさえ莫大な電力やその他のエネルギーが必要である. はたして, そそぎこん だエネルギーを上回るエネルギーを取り出すことができるだろうか?. m. 教養物理 0名 が受講している‐ ここで紹介したものは, 半期の講義のお 教養物理は半期2単位の教養科目として開講され60一7 0回分の内容である‐ 物理という名前がつくだけで敬遠される傾向があり他の教養科目に比べて受講生 よそ2/3, 約1 は多くはないが, 受講生の所属学科は自然科学から国語, 社会, 教育, 美術, 音楽など多岐にわたっている‐ そうした ことから当然, 数式を用いることは極力 さけざるを得ず, 内容としても基礎的な物体の運動や電気の法則などを取り上 げても学生の興味を引きつづけることは難しい‐ 原子力発電, 核融合のような科学用語は一般の学生にも知られてお り, ある程度関心を引くテーマではないかと思われる. 1 では北海道電力の新聞広告のコ ピーを配り, その中にある宣伝文句を紹介することから講義をはじめる‐ これは非 常にわかりやすく印象的な文章であり効果的な宣伝であることは受講生自身も語っている. 講義の中では, 数量的な比 0の 較を受講生が自分の手を動かして計算できるように配慮した‐ 数量的な比較はまさにけた違いな比較になるため,1 べき計算に慣れることがポイ ントになる. 講義中に繰り返しこうした計算を行ったが, そのことが講義を漫然と聞くこ 264.
(12) . 教養物理の題材. 1. とを防ぎ, 量的な違いを実感する助けとなったことが受講生の感想文からもうかがうことができ 「実際に自分の手で確 かめる事の重要性に気付」 いたとの感想が述べられている‐ よく知られている静電気力についてその巨大さを認識することから始め そのうえで原子 分子が正電荷をもつ原子 , , 核と負電荷をもつ電子の結合体として静電エネルギーのかたまりであること 化学反応によってその一部が発熱という , かたちで取り出されること, 火力発電は基本的にこうしたエネルギー反応を利用 している ことを解説す る 原子核で . は, 原子よりはるかに小さな領域に正電荷が分布しているため そこには強力な電気的反発力に基づく巨大な静電エネ , ルギーが蓄えられていることが分かると, 核反応による発熱と化学反応によるものとの本質的な相違が浮か び上が る . 「原 子力 と い う も の は 今 ま で あま り 身 近 な も の と して か ん が え る こ と が で き な か た が っ. …. ウランというものはもの. すごいエネルギーをひめているんだなとおどろいた」 との率直な感想が述べられている ‐ しかしながら, 原子力発電に燃料として実際使用されるのはウランを3%しか含まない核燃料体であり 天然に産出 , するウラン鉱石からこの核燃料体を作り出すのに必要なエネルギーのいっさいを無視したとしても宣伝される効率は大 幅に減じられる‐ 「 … 宣伝の ドラム缶1 2本分のウラン発熱量が, 今日の講義の中の約5分程度の計算でいっきに0 ‐3 本に減少したのはなかなか興味深く … 」 との感想は はじめの宣伝文句が効果的だっただけに 「だまされた気持ち , になる」 度合いが大きいことを示すことになる. 原子力発電に対して肯定的な考えをもっている学生からも 「正確に , データ ー を だ して 宣 伝 して も ら い た い」 「正 直 に や っ て も ら い た い」 「(比 較 の) 前提 を は っ き り さ せ て ほ しい な どの , 」. 感想が述べられている‐ 「自動車の燃費がカタログと違っていたり」 「宣伝とは 本質的に嘘である」 「どこの企 業でも , や っ て いる よ う な も の で不 思 議 で は な い」 「こ う い う 数 字 を 使 っ た トリ ッ ク は こ の 宣伝 に 限 らず 世 の 中 で は よ く あ る ,. こと」 など冷ややかな見方が少なからずあることは気になる 点で あ る‐ 1 1では, 高温のプラズマを磁場によって閉じこめるトカマク型核融合炉の基本原理を電磁気学の基本法則に基づいて 解説する. 磁場中での荷電粒子の運動すなわちローレンツ力のもとでどのような運動が実現するか プラズマを閉じこ , めるためにどんな磁場をどのように作り出すかが問題となる‐ ロー レンツ 力 の も と での 荷 電 粒 子 の 運 動 は 三 次 元 運 動 と して コ ン ピ ュ ータ ー ・ シミ ュ レー シ ョ ンの 格 好 の テ ー マ と な. り卒業研究で二年度にわたって取り組まれた‐1 9 9 3年度にはMa hema i t t caを使ったシミュ レーショ ンで荷電粒子の三次 元運動の様子を容易に表現することができるようになり, こうした計算結果を受講生に提供できるようになった 力学 ‐ の法則を, 必要最小限の範囲で説明しておく必要があるので, 地球の公転運動をモデル化して考察し万有引力の下で実 現する等速円運動を一様磁場中での荷電粒子の円運動を理解するための導入とした 荷電粒子が磁力線に巻き取られる . 運 動 を する こと を 理 解 す る こ とが ポイ ン トに なる‐. 磁場が電流によってどのように作 られるかは, 天下り的にならざるを得ないが直線電流が作 り出す磁場を理解するこ とが基本となる. 自然科学科一年生を対象とした物理実験のなかで 直線電流が作り出す磁場を方位磁針を使い地磁気 , と釣り合わせることによって測定する実験を行っており, この様子なども紹介しながら電流 による磁場形成を 説明す る. ドー ナ ッ ツ 状 の コイ ル を 用 い る こと に よ っ て 閉 曲 線 を 描く 磁 力 線 群 (トー ラ ス 磁 場) を作 り 出 す こと が でき こ れ ,. によって荷電粒子群を閉じこめる可能性があることを示す‐ 磁場が一様でないためによって生ずる ドリフトが誘導電場 によ っ て 生ず る ポ ロイ ダル 磁 場 に よ っ て 解 消 さ れ る こ と は フ ァ ラ デ ー の 電 磁 誘 導 の 法 則 か ら 説 明 さ れ コ ン ピ ー , ュ , タ ー によ る シミ ュ レー シ ョ ンの 結 果 が 併 せて 紹 介 さ れ る.. 力学や電磁気学など物理学の基本法則を一から解説することはせず 学生たちの記憶にとどめられている物理法則や , 現象を掘り起こしながら, 先端科学の一端を紹介することがここでの目的のひとつである ここで紹介した二つの内容 ‐ はいずれも物理科に所属した学生が卒業研究として取り組んだ成果に基づいており講義の中ではそのことを強調し 折 , に触れ彼らの問題意識や試行錯誤, 失敗談なども紹介した‐ そのことによって ここでとりあげた科学技術 その原理 , , や問題 点などが学生たちにとって決して理解し得ない無縁で遠い世界の事柄ではなく, 身近なものとしてとらえること ができたのではないかと考える.. 265.
(13) . 崎. 岡. 隆. 参考文献 1) 有沢博学 2) 加藤正昭. 「原子核反応におけるエネルギー放出機構の研究」,19 88年度北海道教育大学札幌校卒業論文 「電磁気学」 東京大学出版会. 3日 8年7月1 3) 北海道新聞 198 「 原子力発電の諸問題」 4) 日本物理学会. 東海大学出版会. 5) ファイマン, 坪井忠二訳 「ファイマン物理学1力学」 6) 荒川きよし 「4℃の謎」 北海道大学図書刊行会 7) ポーリング, 関集三他訳 「一般化学」 岩波書店 8) 国立天文台編纂 「理科年表」 丸善 9) 日本科学者会議編 「原子力発電」 合同出版 10 ) 真鍋ー史. 岩波書店. 「プラズマの閉じ込めについての数値的解析」,1990年度北海道教育大学札幌校卒業論文, 佐藤充. 3年度北海道教育大学札幌校卒業論文 よるプラズマの磁場閉 じ込めシミュ レーショ ン」,199 「 ) 近藤都登 現代物理学読本」 丸善株式会社, 河村和孝, 馬場宣良 「エネル ギーの工学と資源」 11 2 )R 1 .W‐コソ他, 伊藤公孝訳. 266. 「国際熱核融合実験炉ITERJ. 日経サイエンス,1992年6月. 「 i 1 M [ thema t a caむこ. 産業 産業図書株式会社.
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