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土木学会論文集 A1( 構造 地震工学 ), Vol. 71, No. 2, , 矩形断面桁に作用する津波荷重と圧力に関する二次元混相流解析 川崎佑磨 1 中尾尚史 2 伊津野和行 3 1 正会員立命館大学助教理工学部都市システム工学科 ( 滋賀県草津市野

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Academic year: 2021

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矩形断面桁に作用する津波荷重と

圧力に関する二次元混相流解析

川崎 佑磨

1

・中尾 尚史

2

・伊津野 和行

3 1正会員 立命館大学助教 理工学部都市システム工学科(〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1) E-mail:yuma-k@fc.ritsumei.ac.jp 2正会員 国立研究開発法人土木研究所専門研究員 構造物メンテナンス研究センター (〒305-8516 茨城県つくば市南原1-6) E-mail:nakao55@pwri.go.jp 3フェロー会員 立命館大学教授 理工学部都市システム工学科(〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1) E-mail:izuno@se.ritsumei.ac.jp 橋梁に対する津波荷重を考える上で,数値解析手法の整備は欠かせない.本研究では,津波を模擬した 流れによって矩形断面の桁模型に作用する力と圧力を,オープンソースの数値解析コードOpenFOAMで計 算し,水理実験結果と比較して考察した.乱流モデルとして標準k-モデルとSST k-モデルを用い,桁模 型上流における水位と流速の時刻歴を与えて二次元の非圧縮混相流解析を実施した.その結果SST k-モ デルでは,抗力,揚力,流力モーメントとも,時間的な変化をよく再現することができた.圧力分布に関 しては,桁模型下面の波が到達する側において,負圧が生じる部分が解析では実験より小さく評価された のに対し,上面における圧力分布は精度よく再現することができた.

Key Words : OpenFOAM, tsunami, bridge, VOF, RANS, multi-phase flow

1. はじめに 2004年インドネシア・スマトラ島沖地震,2011年東北 地方太平洋沖地震における橋梁の津波被害を受け,多く の機関で橋梁の津波被害に関する研究が進められている. 数値流体力学の進歩にはめざましいものがあり,当該分 野においても種々の適用例が報告されている例えば1)-8).し かしまだ実務レベルで利用できる解析ソフトウェアは少 なく,各研究者が独自に開発したソフトウェアを用いて いる場合が多い. CADMAS-SURF/3D9)は数少ない公開ソフトウェアの一 つであるが,海域施設の耐波設計を目的として開発され たソフトウェアということもあり,構造物の下に空間が ある橋梁の場合,作用する揚力の推定精度が低いという 報告がある10),11).一方,揚力を精度よく求めている研究 もあり12)評価は分かれている. そこで本研究では,オープンソースの数値解析コード であるOpenFOAM13)を用い,なるべく簡易に解析するこ とを目指して二次元混相流解析を行った.そして,矩形 断面桁を用いた水理実験における圧力および作用力の計 測結果と比較し,数値解析の精度を検証した. OpenFOAMを用いた橋梁と津波に関する研究としては, 吉野らの研究10)や,Bricker and Nakayamaの研究14)があり,

また,大阪府の南海トラフ巨大地震土木構造物耐震対策 検討部会において,橋梁の津波に対する安全性評価15) も使われている.これらの研究や評価では必要に応じて ソースコードの改良を行い,水位や流速,橋梁に作用す る力の計算が行われている.それに対して本研究ではソ ースコードの改変は行わず,実験で計測された力と圧力 分布をどの程度の精度で再現できるかに着目して検討し たものである. 2. 数値解析モデル (1) 模擬する実験概要 本研究では,著者らによる既報の実験16)で得られた圧 力と力の計測結果を再現することを考えた.当該の実験 では図-1に示す水路が用いられている.貯水槽は幅 600mm×長さ2000mmで,ゲートを急に引き上げること によって,幅200mm×長さ4000mmの水路に津波を模擬 した水が流れる.ドライベッド上を津波が遡上する実験

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により,河川水面が低い条件における津波作用について 検討したものである.貯水槽の初期水位は200mmである. また,幅の異なる水槽から水路部へ水が流れる際の急縮 にともなうエネルギー損失を軽減するために,水槽のゲ ート付近の側壁は図-2のような曲線形状になっている. ゲートから3000mm下流位置に,桁下空間40mmで図-3 に示す幅80mm×高さ20mmのアクリル製矩形断面模型が 設置されている.水路幅方向の特性変動は無視し,二次 元的な実験として実施した.なお,本研究では津波が来 る側(貯水槽側)を上流,図-1の桁模型右側を下流と表 現することにした. 圧力は,図-3に示す位置に埋め込まれたひずみゲージ 式圧力計により,計14箇所で測定した.圧力計は中尾ら が製作したもので16),直径5mmのゴムシート受圧板の変 形をひずみゲージで感知して圧力を検出した.模型はロ ードセルで支持し,水平力(抗力),鉛直力(揚力), 回転力(流力モーメント)を測定した.図-3の模型図心 において,紙面直角方向にロードセルの支持軸が取り付 けられている.圧力も力も100Hzサンプリングで測定し た. (2) 解析手法 数値解析にはOpenFOAM(Ver.2.2x)の非圧縮混相流解 析ツールinterFoamを用いた.このツールでは,VOF (Volume Of Fluid)法による気体-液体の二層流解析が 行える.DEXCS17)というLinuxにOpenFOAMや後述する groovyBCなどをセットしたシステムを,Windows PC上の VirtualBox内で起動して解析を実行した. 実験を模擬するにあたり,ゲートを上げて水を流す時 点からのシミュレーションではなく,桁模型上流におけ る水位と流速を初期値として与えたシミュレーションを 行った.実務において要求される問題設定としては,沖 合における津波の予測水位と流速の情報から,橋に作用 する力を推定することが多いと考えたためである. よって,まず桁模型を設置しない水路のみの三次元モ デルによって水位と流速を計算した.VOF 法では明確 な水面を定義できないため,各メッシュに存在する水の 割合(流体充填率) により水位を推測した. 1は 図-1 実験水路立面図 ゲート 模擬津波 貯水高 貯水槽 水路 模型 6000 2000 4000 3000 200 40 単位 mm (上下と左右の縮尺は異なる) 2000 1500 500 600 200 200 200 貯水槽 ゲート 水路 図-2 実験水路平面図 図-3 桁模型の圧力計設置位置 図-4 入力に利用する水位と流速の時刻歴 0 10 20 30 40 50 60 70 80 0 2 4 6 8 10 水位( mm ) 時間(s) 実験 解析 図-5 桁模型のない場合における水位の比較 単位 mm 単位 mm 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 0 20 40 60 80 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 流速( m/ s ) 水位( mm ) 時間(s) 水位 流速 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 5 10 20 5 10 12.5 15 12.5 10 80 流れ

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そのメッシュがすべて水で満たされていることを表し, 0   はすべて空気,0  1は一部分が水というこ とを表している. 次章に示す解析の流入境界において,ここで得られた 各時刻の水位より低い位置にあるメッシュに対し, 1   を設定して流入を表現した.しかし,水位の設定 にあたっては,数値解析上,一番下のメッシュでも 1   をわずかに下回る場合があった.そこで,水位を 計算する位置において 0.99以上になるメッシュの 高さで水位を推定した.なお,流速は,流入境界におい て水面より低いメッシュに全て同じ初期流速を与えるた めに,計算位置を水面とした. その解析で得られた桁模型設置位置中心より上流 2500mm の位置における水位と流速の時刻歴を図-4 に示 す.この 2500mm という位置の設定については,次のよ うに考えた.桁模型上流に流入境界を設ける際,桁模型 に近すぎると流入境界から逆流する場合がある.桁模型 で流れが阻害され,桁模型上流側の水位が上昇するため である.そこで,次章に示す解析を,流入境界の位置を 変えて数ケース実行した.その結果,桁模型中心より 2500mm 上流に流入境界を設ければ境界からの逆流がな いことを確認し,この境界位置を採用した. 得られた水位の妥当性については,実験で模型位置よ り上流 90mm の位置で計測された抵抗線式水位計の記録 で確認した.図-5 のとおり最大水位 54mm に対して 62mm と約 15%過大評価しているが,時間的変化は再現 できている.よって,図-4 を入力値として用いること とした.なお,本実験では流速を計測していない. 3. 桁模型に作用する津波荷重 (1) 数値解析モデル 解析領域を図-6に示す.実務レベルでの応用を考えれ ば,なるべく簡易な解析手法の利用が望ましいと考え, 二次元問題としてモデル化した.桁模型設置位置中心よ り上流2500mmの位置に流入境界を設け,前章で得られ た水位と流速を入力した.OpenFOAMには時間的に変化 する流入条件が標準では備わっていない.そのため OpenFOAMの非標準境界条件として公開されている groovyBC18)を利用した. 桁模型および解析領域下面の境界条件は非すべり条件 の壁とし,流速を0,x方向の圧力勾配を0とした.右面 は流出境界とし,流速勾配および圧力勾配を0とした. 上面は大気境界とし,空気が自由に出入りできる開境界 としている.境界の影響を少なくするよう水路底面から 1m上方まで広い空間を設定し,右方向も桁模型中心か ら1m離れたところに流出境界を設置した. メッシュ分割にあたっては,図-7に示すとおり,桁模 型周辺を2mm四方の正方形メッシュとし,離れた部分は 最大10mm四方のメッシュとした.合計152,600個の正方 形および長方形メッシュになる.メッシュの細かさの妥 当性については,後述する無次元化距離y+で判断した. 桁模型近傍におけるレイノルズ数は約6万になり,実 験の観察結果からも乱流解析が必要だと判断した.また, 層流解析による桁周辺流れの流況は図-8のように,結果 的に層流ではない解が得られてしまう.乱流解析には, レイノルズ平均モデルRANSを用いることとし,その中 の標準k-モデルとSST k-モデルを用いて結果を比較し た.標準k-モデルは計算が安定しているが剥離流の再 現には不向きという評価があり19),壁近傍で異なるモデ ルを用いるSST k-モデルでも計算することにした.こ れらのモデルにおいて初期値設定が必要なパラメータは, 乱流エネルギーkと,エネルギー散逸率(標準k-モデル) あるいは比散逸率(SST k-モデル)である.ここでは CFD Online20)を参考に,次式で初期値を設定した. 図-6 数値解析モデル 図-7 メッシュ分割 500@2=1000 桁模型 50@10=500 200@10=2000 130@2=260 74@10=740 960 2460 3500 40 940 80 20 桁模型(壁境界) 大気境界 壁境界 流入境界 流出境界 1000 x y 単位 mm 単位 mm 図-8 層流解析による桁周辺の流況 桁模型

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2 3 ( ) 2 kUI (1) 1.5 k C L    (2) k L  (3) ここで,U は代表速度, I は乱れ強度,Cは定数(= 0.09), L は代表長さである. としては乱流モデルを 使用しない層流計算結果による桁模型位置付近の流速約 2m/s を用い, としては 5%を仮定し, L としては桁幅 0.08m を採用した.式(1)~(3)に代入すると,k=0.015m2/s2, =0.0021m2 /s3,=1.5s-1になる.なお,乱れ強度 I を 1% や 10%にした試計算も行ったが,桁模型に作用する抗力 の差は 0.3N 未満,揚力の差は上向き 4N 未満,下向き 1N 未満,流力モーメントの差は 0.03N.m 未満であった. 上向き揚力の差は大きいが,その他は乱れ強度の影響が 小さい.本研究では,もっとも実験値との整合性が高か った乱れ強度 5%の解析結果を示す. 解析領域の壁境界においては壁関数を用いた.解析後 U I 揚力 抗力 流力モーメント 流れ 図-9 力の正方向 図-11 2.9秒における流況 図-10 抗力 0 2 4 6 8 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 抗力 (N ) 時間(s) 計測波形(フィルター前) 実験 SST k‐ω k‐ε 桁模型 (a)k-モデル 図-12 乱流エネルギーの分布 (b)SST k-モデル 図-13 揚力 図-14 流力モーメント ‐10 ‐5 0 5 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 揚力 (N ) 時間(s) 実験 SST k‐ω k‐ε ‐0.2 ‐0.1 0 0.1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 流力 モ ー メ ン ト (N. m ) 時間(s) 実験 SST k‐ω k‐ε 桁模型 桁模型

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の確認により,桁模型周辺において一番近いメッシュま での無次元化した距離 y+は標準 k-モデルで平均 96, SST k-モデルで平均 57 となり,壁関数を用いる場合の メッシュの細かさの目安とされる 30~200 という値19) 満たしていた. なお,解析時間刻みは,クーラン数が0.5未満になる ように自動設定し,結果として10-4~2×10-3秒刻みの計 算になった.一般的なPCを用いて10秒間のシミュレー ションに要した計算時間は,標準k-モデルで9時間半, SST k-モデルで10時間強だった. (2) 桁模型に作用する力 まず桁模型に作用する力を,実験結果と比較した.力 の正の向きは,図-9のように定義した. 図-10に,桁模型に作用する水平力である抗力の時刻 歴を示す.実験値には,模型の固有振動数より高い振動 数をカットするため,100Hzサンプリングした値に15Hz のローパスフィルターをかけた.図-10にはフィルター をかける前後の波形を参考のため掲載した.以降の図に は,フィルター後の波形のみを実験値として示す.一方, 解析値は0.01秒間隔で出力した値そのものである.最大 値は,実験が4.9N,標準k-モデルが8.0N(実験値に対す る誤差69%),SST k-モデルが6.4N(誤差33%)であっ た.いずれの解析も実験値より過大評価になっているも のの,SST k-モデルの最大値は2.9秒から続くパルス状 の応答によるものであり,それを除けば5%程度の誤差 に収まる.このパルス状の応答は,図-11のように桁に 当たって真上に発達した波の一部が,桁直前に落下した 影響である.一方,標準k-モデルは誤差が大きくなっ ており,流れに垂直な壁面に水が衝突するところでは乱 流エネルギーkが大きくなりすぎる19)という,標準k-モ デルの特性によるものだと考えられる.図-12に最大値 を示す近傍である2.6秒における乱流エネルギーkの分布 を示す.(b)のSST k-モデルでは,桁前縁で剥離した波 と空気との境界部分と,桁背後の空気が乱れる部分のみ で値が大きくなっている.それに対して(a)の標準k-モ デルでは,桁前面を中心に(b)のSST k-モデルより大き な値を示す部分が広がっていることが確認できる. 図-13に示す揚力は桁模型に作用する鉛直力で,図-9 のとおり上向きの力を正としている.2秒付近でまず下 向きの力が作用し,その後4秒付近で上向きの力が作用 する.実験値では下向きの最大値6.2N,上向き1.3Nだっ たが,標準k-モデルでは下向き8.7N,上向き5.2N,SST k- モデルでは下向き5.4N,上向き2.0Nであった.標準モデルの時刻歴波形は実験結果の再現性が低い.SST k-モデルでは3.1秒付近で上向きの力が作用するところが 実験と異なるが,その他の部分はよく再現できている. 最大・最小値も誤差は1N以内である. 図-14に示す流力モーメントの絶対最大値は,実験値 0.14N.mに対して標準k-εモデルでは0.088N.mと37%過小 評価している上に時刻歴波形の再現性が低い.SST k- モデルの絶対最大値は0.13 N.mと実験値に対して8%小さ いものの差は0.01N.mである.時刻歴波形の再現性も高 い. 図-12~図-14のいずれも,SST k-モデルは力の時間的 変動をよく捉えている.パルス状の応答に注意するとと もに,適切な安全率を設定すれば,設計に用いることは 十分可能だと考えられる. よって次節の圧力計算においては,SST k-モデルを 用いた結果について説明する. (3) 桁模型に作用する圧力 図-3の圧力計位置における圧力の時間的変化を図-15 に示す. 図-15(a)~(g)が桁模型下側の圧力である.実験値を表 す点線を見ると,波が到達する側に近いNo.1~No.3(図-15a~c)において,波が到達してすぐに負圧が作用し ている.これは,桁端部において波が剥離し,負圧が発 生したことを示している.No.4~No.7(図-15d~g)に はあまり負圧が生じず,正圧が徐々に発生している.こ のあたりでは剥離が生じず,水が桁下面にすぐに当たっ て正圧がかかることを表している. これに対して解析値を表す実線では,No.1~No.3(図-15a~c)における負圧が実験値より小さい.例として 図-16に,波が到達して0.5秒後(図-15の時間軸で2.8秒) における圧力分布を示す.青い部分が負圧の生じている 部分を示しており,桁模型下面に負圧が生じているもの の,左下の一部分のみが濃い青になっており,大きな値 が一部分に集中していることがわかる. 図-16と同じ時刻の桁模型下面における圧力値を,実 験と解析とで比較した図を図-17に示す.横軸は桁の左 端0mmから右端80mmまでの位置を表している.解析で はOpenFOAMのsampleというポスト処理ツールを用いて, 1mm単位の位置で圧力を補間したものをプロットしてい る.左半分が負圧,それより右ではほぼ0になっており, 負圧が大きいのは左5mm程度と実験より急なピークを示 している.桁下面における水の剥離状況の再現性は低い と言える. 実験結果において各圧力計の幅で圧力が一定だと考え て積分すると,桁模型下面に作用する力の合計は下向き 6.4Nとなる.一方,数値解析結果を積分して求めた力は 3.6Nとなり,44%過小評価になる.これが,前章に示し た図-13の揚力で,同じ2.8秒における下向きの力が,実 験値5.9Nに対して解析値4.4Nと25%過小評価になった大 きな原因だと考えられる. 桁模型上側の圧力No.8~No.14(図-15h~n)に関して

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は,実験値と解析値の差は少ない.波が到達してから, ずっと正圧が作用していることがわかる. 以上をまとめると,圧力の再現に関しては,桁模型下 面の波が到達する側において,負圧が生じる部分が解析 では実験より小さく評価されたのに対し,上面における 圧力分布は精度よく再現することができた. (4) 桁模型周辺の流況 図-18 に,水が桁模型左面に到達した 0.2 秒後の画像 を示す.(a)が実験結果,(b)が解析結果である.実験写 真では上から光を当てて撮影しており,砕波した箇所が 白く写っている.解析の画像は中央の白い長方形部分が 桁模型部分である.2 章の(2)節で述べた流体充填率 を プロットした.計算格子を水が満たしている部分を濃い (a)No. 1 図-15 圧力分布の時刻歴 (b)No. 2 (c)No. 3

(d)No. 4 (e)No. 5 (f)No. 6

(g)No. 7 (h)No. 8 (i)No. 9

(j)No. 10 (k)No. 11 (l)No. 12

(m)No. 13 (n)No. 14 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 1 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 2 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 3 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 4 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 5 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 6 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 7 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 8 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 9 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 10 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 11 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 12 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力 (kP a ) 時間(s) No. 13 実験 解析 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 圧力( kP a ) 時間(s) No. 14 実験 解析

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青に,空気が満たしている部分を灰色に,水と空気が混 ざっている部分を色の濃淡で表現している. 図-18の(a)も(b)も桁端に波が当たって真上に波が発達 している.解析(図-18b)の方が,波の発達する角度が 直角に近いのは,解析上,桁模型がまったく不動だとし ていることが影響している.実験ではわずかながらも波 の作用により回転しており,それにともない波の発達す る角度が多少小さくなったものと考えられる.また,桁 表面における境界条件を非すべり条件としたことによる 影響も考えられる.なお,流れの先端が通過してからか なり時間が経過しているため,図-18(a)の上流側に見ら れた微小擾乱が下流側では認められなかった. 図-19に,水が桁模型に到達して0.5秒後の画像を示す. 桁の左上角において波が剥離し,図の右斜め上に向かっ て波が発達している.上面における波の剥離など,ほぼ 流況を再現できているものと考えられる. 4. おわりに 本研究では,矩形断面の橋桁モデルに作用する力と圧 力を,オープンソースの数値解析コードOpenFOAMで計 図-16 津波到達 0.5秒後の圧力分布 ‐2.0 ‐1.5 ‐1.0 ‐0.5 0.0 0.5 0 20 40 60 80 圧力( kP a ) 桁左端からの位置(mm) 実験 解析 図-17 桁下面の圧力分布 (a)実験結果 図-18 津波到達 0.2秒後の流況 (b)解析結果 (a)実験結果 図-19 津波到達 0.5秒後の流況 (b)解析結果 桁模型 桁模型 桁模型 桁模型 水路底部 水路底部

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算し,水理実験結果と比較して考察した. 本研究で得られた主な結論は以下の通りである. 1) 標準k-モデルとSST k-モデルを用い,水理実験から 得られた桁模型に作用する力の再現計算を行った. その結果,本研究の条件では標準k-モデルによる再 現性が低かった.SST k-モデルによる結果では,抗 力の最大値は4割ほど大きく評価するものの,揚力と 流力モーメントの誤差は小さく,時刻歴波形の再現 性も標準k-モデルより高かった. 2) 橋桁モデル上面の圧力は,解析により精度よく再現 することができた.一方,下面の圧力は,波が到達 して直後における負圧の分布状況に,解析と実験と で差が生じた.実験よりも桁端部における波の剥離 による大きな負圧の発生域が狭くなった. 3) 流況は,上面における波の剥離など,実験結果を解 析でほぼ再現することができた.実験ではわずかな がらも波の作用により桁模型が回転しているのに対 し,解析では桁模型がまったく不動だとしているこ とにより,波の発達する角度には差が生じた. 謝辞:本研究はJSPS科研費26289148「津波や洪水など橋 梁の水害に対する安全性向上対策に関する研究」(代 表:伊津野和行)の助成を受けた. 参考文献 1) 二井伸一,幸左賢二,運上茂樹,庄司学:津波による 橋梁被害の解析的検討,第11回地震時保有耐力法に基 づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演 論文集,土木学会,pp. 81-88,2008. 2) 杉本健,薄井稔弘,運上茂樹:津波による橋梁被害に 対する水路実験の再現解析,第12回地震時保有耐力法 に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム 講演論文集,土木学会,pp. 81-84,2009. 3) 幸左賢二,二井伸一,庄司学,宮原健太:津波波力に よる桁移動現象の解析的検討,構造工学論文集,Vol. 55A,pp. 483-494,2009. 4) 鴫原良典,藤間功司,庄司学:橋梁構造物に作用する 津波波力の数値計算,土木学会地震工学論文集,第30 巻,pp. 899-904,2009. 5)鴫原良典,藤間功司,幸左賢二,廣岡明彦,二井伸一, 庄司学,宮島昌克,小野祐輔:2004年インド洋津波に おけるスマトラ島北西部沿岸の被災橋梁に関する数値 計算,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol. 65,No. 1,pp. 311-315,2010. 6) 原田隆典,村上啓介,Indradi Wijatmiko,坂本佳子, 野中哲也:津波により桁が流失した床版橋の再現解析, 第14回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポ ジウム講演論文集,土木学会,pp. 103-110,2011. 7) 中村友昭,水谷法美,Xingyue Ren:橋桁へ作用する 津波力と桁の移動に与える津波力の影響に関する数値 解析,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol. 69, No. 4,pp. I_20-I_30,2013. 8) 田邊将一,浅井光輝,中尾尚史,伊津野和行:3次元 粒子法による橋桁に作用する津波外力評価とその精度 検証,構造工学論文集,Vol.60A,pp. 293-302,2014. 9) 一般財団法人沿岸開発技術研究センター:CADMAS -SURF/3D 数値波動水槽の研究・開発,沿岸技術ラ イブラリー,No. 39,2010. 10) 吉野広一,野中哲也,原田隆典,坂本佳子,菅付紘 一:I桁橋に対する津波作用力特性の解析的検討,第 15回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポジ ウム講演論文集,土木学会,pp. 73-80,2012. 11) 中尾尚史,張広鋒,炭村透,星隈順一:上部構造の断 面特性が津波によって橋に生じる作用に及ぼす影響, 土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol. 69,No. 4,pp. I_42-I_54,2013. 12) 片岡正次郎,金子正洋,松岡一成,長屋和宏,運上茂 樹:上部構造と橋脚が流出した道路橋の地震・津波被 害再現解析,土木学会論文集A1(構造・地震工学), Vol. 69,No. 4,pp. I_932-I_941,2013.

13) OpenCFD Ltd.: OpenFOAM, http://www.openfoam.com, 2014年8月閲覧.

14) Bricker, J. and Nakayama, A.: Contribution of trapped air, deck superelevation, and nearby structures to bridge deck failure during a tsunami, Journal of Hydraulic Engineering, ASCE, doi: 10.1061/(ASCE)HY.1943-7900.0000855, 2014. 15) 南海トラフ巨大地震土木構造物耐震対策検討部会:第 7回部会資料4 各構造物の詳細点検結果(津波),大 阪 府 , http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyokanri/doboku-bukai/index.html,2014年8月閲覧. 16) 中尾尚史,糸永航,野阪克義,伊津野和行,小林紘 士:矩形断面桁に作用する津波の圧力特性に関する実 験的研究,土木学会論文集A1(構造・地震工学), Vol. 68,No. 4,pp. I_1145-I_1150,2012.

17) 柴田良一,野村悦治,今川洋造:1CD-Linuxを用いた ポータブルCAEシステム"DEXCS"の開発に関する基礎 的研究,計算工学講演会論文集,計算工学会,Vol. 12, 2007.(http://dexcs.gifu-nct.ac.jp)

18) Unofficial OpenFOAM wiki: Contrib/groovyBC,

http://openfoamwiki.net/index.php/Contrib/groovyBC, 2014

年8月閲覧.

19) 梶島岳夫:乱流の数値シミュレーション,養賢堂, 1999.

20) CFD Online: Turbulence free-stream boundary conditions, http://www.cfd-online.com/Wiki/Turbulence_free-stream_

boundary_conditions, 2014年8月閲覧.

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MULTI-PHASE FLOW ANALYSIS OF TSUNAMI FORCES AND ASSOCIATED

PRESSURES ON A RECTANGULAR-SECTION BRIDGE GIRDER

Yuma KAWASAKI, Hisashi NAKAO and Kazuyuki IZUNO

Numerical analysis of tsunami loads on bridges has become an important issue since the 2011 Tohoku earthquake and tsunami disaster in Japan. This paper details a two-dimensional multi-phase turbulence flow analysis using OpenFOAM, which is open-source software. The wave height and velocity time his-tories were provided at the upstream boundary, and the flow regime was calculated using the k-epsilon and SST k-omega turbulence models. The results were used to simulate a tsunami flow acting on a bridge girder model having a rectangular cross-section, and the tsunami loads and associated pressures on the bridge model were calculated. The results using the SST k-omega turbulence model showed good agree-ment with tsunami loads obtained from actual hydraulic experiagree-ment. Negative pressure was generated on the upstream side at the base of the bridge model, but the estimated negative pressure was lower than the experimental value. The pressure on other parts of the model was estimated with good precision. Fur-thermore, the flow regime around the bridge model was qualitatively reproduced by the simulation.

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