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理想的教師特性における大学生と教師の違い

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

理想的教師特性における大学生と教師の違い

著者 豊田 弘司, 三木 馨

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 33

ページ 101‑106

発行年 1997‑03‑01

その他のタイトル The differences between the underguraduates and the teachers in the traits of ideal teacher.

URL http://hdl.handle.net/10105/6956

(2)

理想的教師特性における大学生と教師の違い*

豊田 弘司・三木  馨*串

(心理学教室)

要旨:112名の大学生と155名の現職小学校教師を対象に理想的教師像におけ る特性項目についての評定値を分析した。因子分析の結果、「人格」、「子ど もに対する受容的態度」、「教師としての資質」、「指導技術」と命名された4 つの国子が抽出された。また被調査者を大学生と現職の小学校教師に分けて 各因子を構成する項目の評定値を比較したところ、大学生の方が現職教師よ りも評定値の高い項目が多かった。ただし現職教師が大学生より有意に高か った2項目はいずれも「子どもへの受容的態度」因子の項目であり、教職経 験により受容的態度が重視される可能性が示唆された。

キーワード:理想的教師像、大学生、現職教師、因子分析

杉村(1979)は、大学生に好きな教師と嫌いな教師の特性を回想させる調査を行い、小学校時 代に好きだった教師は、やさしい、いっしょに遊ぶ、親しみやすい、親切な、おもしろいとい った特性をもち、嫌いだった教師では、えこひいきする、よくおこる、こわい、うるさい、ヒ ステリックといった特性をもつことを報告している。

豊田(1994)は、過去において印象に残っている教師を大学生に回想させ、その教師が好きな 教師であったか嫌いな教師であったかを調査した。その結果印象に残った教師は好きな教師が 圧倒的に多いということが明らかになった。さらに因子分析によって印象に残った好きな教師 の特性を検討したところ、小学校、中学校、高校の各時代に、「信頼感」、「快活さ」、「個人的 な関わり」、「厳しい指導」、「授業のうまさ」という類似した5つの因子が抽出された。その中 でも「信頼感」、「快活さ」及び「授業のうまさ」の因子を構成する項目の評定値は高く、これ

らの特性が印象に残った好きな教師の特性の中で重要なものであることが示された。また、豊 田(1996)では、嫌いな教師の特性についても検討しているが、そこでは男子の被験者では回想 する時代によって嫌いな特性はかなり変化しているが、女子はどの時代においても不公平、自 己中心的というような人格面の特性をあげる場合が多く、回想する時代による変化はあまり認 められなかった。また回想する時代に該当する年齢が高くなるにつれて、「授業のうまさ」が 好き、嫌いの基準として重視されることがわかった。

好き・嫌いという次元だけが教師の価値を規定するものではないが、上述した3つの研究は 教師に求められる特性を知るのに、参考となるものである。ただし、これらの研究は、大学生

*Thedifferencesbetweentheunderguraduatesandtheteachersinthetraitsofidealteacher.

**HiroshiTOYOTAandKaoruMIKl(DepaYtmentqfP坪Chology,Nanthmiersi&dEducation)

(3)

を対象とした調査であり、実際の教職経験を重ねている現職教師との差異については検討され ていなかった。すなわち、教育される側からみた教師に求められる特性は明らかになるとして も、教育する側からみた教師に求められる特性については明らかではない。教師に求められる 特性を明らかにしていくには、実際に教職についている教師の側からも調査することが必要で ある。

そこで、豊田・三木(1996)は、大学生と現職教師それぞれに理想的な教師に求められる特性

(以下、理想的教師特性)を自由記述によって報告させ、両者の理想的教師特性の違いについ て検討した。その結果、大学生、現職教師ともに共通して「やさしい」、「明るい」、「いっしょ に遊ぶ」といった特怪が多くあげられ、杉村(1979)が好きな小学校教師の特性として報告し たものとほぼ対応していることが明らかになった。また、大学生と現職教師が異なる点として は、大学生では「対等につきあう」という特性が多いのに対して、現職教師では「児童を理解 する」、「愛情をもって接する」、「教育への情熱がある」等が数多くあげられていた。すなわ ち、大学生では教師の人間性に関する特性が重視され、現職教師では、児童の理解が重視され ているといえよう。したがって、教職徳験を積むことによって児童・生徒の理解が教育にとっ て重要であることを実感していく可能性がうかがえる。

本研究ゼ丘、豊田・三木(1996)の自由記述によって得られた理想的教師特性を項目として用 い、それぞれの項目の示す特性が理想的教師がもつ特性としてあてはまる程度を評定してもら うことにした。そして、この評定値に基づいて理想的教師像の因子構造を明らかにし、あわせ て個々の項目に対する評定値の比較によって大学生と現職教師における理想的教師特性の違い を明らかにすることを目的とした。なお、被調査者の現職教師が全員小学校の教師ということ を考慮して、.小学校における理想的教師特性について調査を行った。

方   法

調査対象 被調査者は第一著者の「教育心理学」を受講した大学生112名(男子38名、女子 74名、平均年齢19.4歳)及び認定講習会における、第一著者の「教育心理学」を受講した現職 小学校教師155名(男子84名、女子71名、平均年齢36.9歳)であった。

材  料 小学校の理想的教師像の特性を評定してもらうための用紙はA4判であり、上部 には「これから調査者の読みあげていく項目が、あなたの考えている理想的教師像に、どの程 度あてはまるかを評定していただきます。評定は次の4段階からお選びください」という教示 が印刷されてあった。そして、その下に「全くあてはまらない」を1として、順に「あまりあ てはまらない」を2、「少しあてはまる」を3、「よくあてはまる」を4というように回答すべ き数字の意味が示されていた。さらにその下には、1から40まで縦に並んだ数字が印刷されて おり、各数字の右横には()内に評定した数字を記入する欄が設けられていた。なお、小学 校の理想的教師特性に関する項目は豊田・三木(1996)の自由記述による結果をもとにして40項

目作成された。

手  続 大学生、現職教師それぞれ別々に集団調査を実施した。上述の用紙を配布後、調

(4)

査者がそれぞれの番号を読み上げた際に項目の内容も同時に読み上げ、被調査者はそのつど評 定した数字を記入していくという形式で進められた。なお、すべての被調査者が評定を終える

のに、10分を要した。

結 果 と 考 察

大学生、現職教師を込みにした全被調査者のデータについて因子分析を行った。因子分析を 行う前に、主成分分析によって因子数をいくらに設定するかを検討した。固有値の差が大きく なっているところを区切りとして、4因子の設定で因子分析を行った。因子分析は主因子法を 用い、その後バリマックス回転をかけた。さらに因子を構成する項目が他の因子と重複するこ とを防ぐため、各因子を構成する項目の因子負荷量が.30以上で、他の因子への負荷量に対し て.10以上の差のある項Hを削除し、再度主因子法とバリマックス回転による因子分析を行っ た。その結果が表1に示されている。

因子構造 第1因子には「子どもが親しみやすい」、「おもしろい」、「やさしい」、「明るい」

などの、教師の明朗さや親しみやすさなど、教師のパーソナリティについて言及する項月が含 まれていた。そこで、第1因子は「人格」の因子と命名した。これらの特性は、杉村(1979)に よる、大学生を対象とした好きな小学校教師の特性の報告と近似したものであった。

第2因子には「子どもと信頼関係がもてる」、「子どもを理解する」、「相談できる」などの項 目が含まれているので、「子どもに対する受容的態度」の因子と命名した。

第3因子には「まじめである」、「信念をもっている」、「責任感がある」といった、教師の誠 実さ、教育に対する姿勢などに言及する項目が含まれたので、「教師としての資質」の因子と 名づけた。

第4因子は「ほめ方や叱り方がうまい」、「子どもの疑問に答えられる」「子どもをうまくの せる」などの、教師の指導技術に関する項目が集まり、「指導技術」の因子と命名した。豊田

・三木(1996)では、「授業がうまい」、「幅広い知識」、「専門的な知識」等が、指導技術に関連 する項目として中学校、高校において上位にあがったが、小学校においてはそのような項目は ほとんどあげられなかった。ここで得られた「指導技術」の因子を構成する個々の項目を見て も、教科的な指導に関して直接言及した項目は認められなかった。

因子ごとの平均評定値の比較 表2には、各因子を構成する項目の平均評定値が示されてい る。因子ごとに評定値間の差に関するt検定を行った。その結果、有意な差には至らなかった が、第2因子のみ現職教師の評定値が大学生のそれよりも高い傾向がみられた。この結果は、

豊田・三木(1996)と類似しており、実際の教育現場で経験を積み重ねていくにつれて、児童 の理解を含む「子どもに対する受容的態度」の重要性が認識されていくことがうかがえる。一 方、第2因子以外の因子では、大学生の評定値が現職教師のそれよりも高かった。この結果 は、大学生が項目の示す特性の意味によって評定するのに対し、現職教師はそれぞれの項目の 示す特性から多くの体験を連想し、必ずしもその特性が理想的教師特性にあてはまらない場合 もあるなどの可能性を考慮しているからであろう。すなわち、理想的教師像が単純に言葉で表

(5)

表1理想的教師像の因子構造と項目ごとの平均評定値

項     目    FI F2 F3 F4  h2大学生 現職教師 第1因子 人格 α=.75

子どもが親しみやすい おもしろい

やさしい 明るい

楽しい授業をする いっしょに遊ぶ 面倒見がよい

クラスの問題を解決する

−.72 .26 −.05 −.06

−.70 .04 .05 .15

−.60 .19 .16 .01

−.53 .33 .23 .03

−.52 .30 .04 .31

−.50 .02 −.01 .08

−.50  −.02 .11 .35

−.32 .15 .15 .16

.59 3.71  3.65

.42 3.41 >3.27 *

.42 3.31  3.39

.44 3.54   3.68

.46 3.75   3.73

.25 3.54 >3.37 *

.39 3.45   3.26

.17 3.37 <3.56 *

第2因子 子どもに対する受容的態度 α=.77 子どもと信頼関係がもてる

子どもを理解する 思いやりがある 相談できる

ひいきしない 心が広い

一.24 .73 .18

−.09 .62 −.13

−.22 .62 −.12

−.31 .61 .24

−.01 .60 .02

−.36 .49 .28

07 .64 3.72   3.83 26 .47 3.74   3.73 19 .49 3.76 < 3.92 ***

01 .53 3.64   3.72 14 .38 3.80   3.87

06 .45 3.46 < 3.62 *

第3因子 教師としての資質 α=.73 まじめである

信念をもっている 威厳がある 厳しい指導をする 責任感がある 頭がよい 道徳的である 経験が豊富である 我慢強い

一.02  .17

.04  .16

−.06  −.17

−.14  −.07

−.01 .21

−.14  −.10

−.07  −.10

−.26  .00

−.10  −.17

.73 −.08 .57 2.97

.61 −.18 .44 3.15

.57 .32 .46 2.48

.54 一.03 .32 2.53

.49 .15 .31 3.74

.48 .36 .38 2.71

.48 .32 .34 3.38

.44 .21 .31 3.16

.39 .28 .28 3.23

2.91 3.33

>2.20 ***

2.48 3.69

>2.43 **

>2.87 ***

>2.82 **

3.11

第4因子 指導技術 α=.67 はめ方や叱り方がうまい 子どもの疑問に答えられる 子どもの話をよく聞く 話し上手である 子どもをうまくのせる 感情的にならない

一.03  .31

−.08  .02

−.04  .29

−.32  .16

−.30  −.03

−.03  .19

.05 .63

.13 .63

一.03 .56

.15 .53

.09 .51

.08 .47

.50 3.79   3.75

.42 3.71>3.31***

.39 3.91>3.81*

.43 3.50   3.42

.35 3.37   3.37

.26 3.38   3.31

寄与率(%)    11.0510.4910.18 9.57

*p<.05 **p<.01***P<.001

(6)

表2 因子ごとの平均評定値

因子名  人格 芸芸孟芸芸する教師としての資質 指導技術

大学生      3.52

(.68)

現職教師     3.48 仁60)

3.69

(.59)

3.78

仁44)

3.06

(.86)

2.86

仁85)

3.61

仁63)

3.49

(.64)

()内はSDを示す 現できない側面があるという認識を持っているために、どうしても理想的教師特性の基準が高 くなり、その結果、評定値が低くなったのではないかと考えられる。なお、第3因子は大学 生、現職教師ともに全因子中で最低の評定値であり、現職教師群においては2点台であった。

このことは、「教師としての資質」が当然のこととしてとらえられているために、あえて理想 的教師特性として意識されにくかった可能性が考えられよう。

項目ごとの評定値の比較 個々の項目の評定値の差に関するt検定を行い、大学生と現職教 師の比較を行ってみたところ、全因子を構成する29項目中、11項目に有意な差が見られた。そ の11項目のうち大学生が現職教師よりも高く評定した項目は8項目あり、大学生が現職教師よ りも評定値が高い項目が多いことが示された。

因子ごとに差のあった項目を見ていくと、第1因子では、「おもしろい」、「いっしょに遊ぶ」

の2項目が、大学生の方が現職教師よりも評定値が高かった。反対に、現職教師の方が大学生 より高かった項目は、「クラスの問題を解決する」であった。この結果から、大学生は明るく て親近感があり、子どもとよく接する教師を理想とし、実際に教育に携わっている現職教師の ほうは、教育現場において生ずる問題に対応する、実践的な対処能力のある教師を理想的な教 師の特性として高く評価していることがうかがえた。

第2因子においては「思いやりがある」、「心が広い」の2項目において大学生よりも現職教 師の評定値が有意に高かった。第2因子は、唯一現職教師が大学生よりも因子の平均評定値が 高かった因子である。豊田・三木(1996)では、理想的教師特性として、「児童を理解する」、

「愛情をもって接する」、「児童が親しみやすい」が現職教師において上位にあげられていたが、

これらの特性は、まさにこの因子に対応するものといえよう。

第3因子においては「威厳がある」、「頭がよい」、「道徳的である」、「経験が豊富である」と いう4項目において大学生が現職教師よりも評定値が高かった。これらの項目の値は大学生、

現職教師両群ともに決して高くはないが、現職教師は大学生よりもさらに過小評価している結 果となった。知識のみの教職イメージにとどまる大学生よりも、実際に現場に就き、自らの教 育観を構築していく現職教師は、「教師としての資質」と命名されたこの因子に含まれるよう な特性に対して、身近な理想的教師特性として意識しにくくなっているように思われる。

第4因子においても「子どもの疑問に答えられる」、「子どもの話をよく開く」の2項目にお

(7)

いて大学生のほうが現職教師よりも評定値が高かった。豊田・三木(1996)では、小学校の理想 的教師像において指導技術に関する項目は大学生、現職教師の両群においてほとんど重視され ていなかった。しかし、本研究では「はめ方や叱り方がうまい」、「子どもの話をよく聞く」の 2項目は大学生、現職教師ともに評定値が高く、子どもの情操的な面にむけての指導技術を両 群ともに重視していることが新たに示されたのである。

引用文献 杉村 健1979 教育心理学 近畿大学通信教育部

豊田弘司1994 回想による教師像と教師に対する印象の関係 奈良教育大学教育研究所紀 要,30,93−98.

豊田弘司1996 回想された好きな教師と嫌いな教師像 奈良教育大学教育研究所紀要,32,

93−98.

豊田弘司・三木 馨1996 理想的教師像における大学生と教師の違い 奈良教育大学教育研 究所紀要,32,133−136.

参照

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