︿外国判例研究﹀
上 告 不 許 可 の 裁 判
片 野
に良一二
↓二
四 はじめに
上告不許可の裁判の拘束力
上告不許可の裁判と憲法異議
上告不許可の裁判と非常上訴
はじめに
ドイッ民訴法(以ド︑ZPOと略す)五四六条は︑四万DM(一九九一年の改正後は六万DM)を越えない財産権上
の請求および非財産権上の請求についての訴訟においては高等裁判所が上告許可の裁判をするべきであることを︑定め
ているが︑この上告許可の裁判の拘束力(すなわち上告審の再審査を認めないこと)に関しては長い間争われていた︒
そこで︑一九七五年の民事上告法改正法律により︑﹁上告審は許可に拘束される﹂(ZPO五四六条一項三文)とされ︑
高等裁判所による上告許可の裁判に拘束力が認められることは法律上明白となり︑争いに終止符が打たれた︒
他方︑上告不許可の裁判については︑特に非財産権上の請求についての訴訟に関して︑高等裁判所が終極的に上告の
上告不許可の裁判六一(1)
六二(2)
許容性を審査することに対して憲法上の法律上の裁判官の規定あるいは法治国家原則等に違反するのではないかとする
上告事件において︑連邦通常裁判所は上告不許可の裁判について上告審の審査を認めないことは憲法違反ではないと︑
(2)たびたび判示している︒また︑連邦憲法裁判所も同趣旨の判断をしている︒さらに︑民事訴訟において上告不許抗告を
認めることは︑規定の成立史および立法目的に反すると判示する一連の判例が存在する︒
上告不許可の裁判と憲法との関係では︑更に高等裁判所が恣意的に上告を不許可とした場合︑憲法異議が認められる
か否かが問題となる︒呈示手続きに関して恣意性を認あた判例が見られるが︑上告不許可の裁判については恣意性を認
めた判例は見られない︒もっとも︑高等裁判所の判断に恣意性が存在する場合には︑呈示の場合と異別に解する理由は
考えられないのであるから︑当然憲法異議が許されることとなろう︒
最後に︑ドイッの決定手続きにおいて展開されている非常上訴が︑上告不許可の裁判に関して適用されうるか否かが
問題となる︒
;FH(1)Priitting,DieZulassungderRevision,1977,S.265によれば︑およそ許可上告が許されない裁判に対して許可がなされ
るなどの場合は︑例外的に許可の裁判の拘}flF力が否定される°vgl.Linnenbaum,PloblemederRevisionszulassungwegen
σqrundsatzlicherBedeutungderRechtssache,1986,S.115.ただ'Zeiss,ZPR,9.Auflニ1997,S.258は︑連邦通常裁判所
の判決に対する抵触が存在しない場合や事件が原則的重要性を有しない場合にも︑例外的に許可の裁判の拘束力を否定すべ
きであるとしている︒︻判例3︼と︻判例6︼が根拠としてあげてあるが︑︻判例3︼は一九七五年改正前の判例であり︑許可
の裁判の拘束力が規定上認められた現在の法状況においては根拠として引用することは疑問であり︑また︻判例6︼は上告
を不許可としたものであり︑許可の裁判の拘束力を否定する場合としてあげることは適切でない︒
(2)拙稿﹁非財産権上の訴訟における許可上告﹂愛大一三九号(一九九五年)五九頁以下︒
二上告不許可の裁判の拘束力
(1)上告許可・不許可の裁判と連邦通常裁判所の審査権
︻判例1︼連邦通常裁判所(第四部)一九五一年四月二一↓.m決定[BGHZ2,16=NJW1952,143]
﹁高等裁判所による上告の許可は︑法律の明白な文言により︑上告の許容性のための要件である︒高等裁判所が上告を
許可しなかったにもかかわらず提起された上告は︑不適法として却下されなければならない︒上告許可に関する高等裁
判所の裁判が上級裁判所による再審査を受ける可能性は︑存在しない︒高等裁判所が五四六条二項二文の規定に反して
上告を許可しなかった場合でも︑上告は不適法のままである︒上告審が不当になされなかった上告許可を自ら追完する
ことはできない︒このような解釈のみが︑立法者がZPO五四五条以ドの規定によって追行する目的に︑合致する︒こ
のことは︑これらの規定の成立史︑および︑類似の考慮に基づいて発令された婚姻事件における従前の上告制限に関す
る法規についての判例の取り扱いにおいて︑示されている︒
ZPOの従来の規定によれば︑高等裁判所の判決に対する上告は︑原則として適法であった︒このことは︑ライヒ裁
判所に著しい負担加重をもたらした︒ライヒ裁判所の負担を軽減し︑法統一の維持および法の形成に寄与するというラ
イヒ裁判所本来の使命を果たさせるために︑一九二四年一月一五日のライヒ裁判所の負担軽減のための命令が発令され
た(RGB1.I29)°この命令によれば︑婚姻事件における上告は︑判決において上告が許される旨が宣告されている場合
のみ適法であった︒さらに︑ライヒ裁判所は次のように判示した︒上告許可に関する裁判はライヒ裁判所の再審査に服
さないこと︑他の見解をとると︑従前と同じように婚姻事件における高等裁判所の全ての判決が上告に服することに
上告不許可の裁判六三(3)
六四(4)
なってしまうこと︑その場合︑重要とされたライヒ裁判所の負担軽減はこの命令によってもたらされなくなってしまう︑
と(RGZ108,349)°
その後︑婚姻事件における類似の上告制限は︑一九三二年六月一四日の司法緊急命令(RGBI,I299)第一部第二章第
一条において命じられた︒この規定は︑判例によって一九二四年一月一五日の命令の規定と同じように解釈された︒
ZPO五四六条に対応する規定は︑OGHBrZの上告手続きに関する軍政部命令九八の実施命令二九条にも含まれ
N3た(GVBIBZ47,149)°この命令は︑OGHがこの規定を︑一九二四年一月一五日の命令および一九三二年六月一四
日の命令における規定に関してライヒ裁判所が行った解釈と異なって解釈することを︑認めなかった︒
現行のZPO五四六条もまた同じ意味において適用されるべきことは︑この規定の成立史が示している︒政府提案に
はすでに現行の文言の五四六条が含まれていた︒ただ︑政府提案では︑不服対象額として一万DMが提案されていただ
けである︒
連邦議会の第八一回会議における第三回審議に際して︑ライスマン議員は︑上告の許容性は高等裁判所の裁判だけに
係らしめるべきではないとし︑高等裁判所の上告不許可に対して即時抗告を認め︑上告審自身が︑事件が上告の価値を
有するか否かを裁判できるようにすべきであると︑提案した︒連邦司法省はこの提案に反対した︒連邦司法省は︑提案
された内容の変更は非常に費用がかかると指摘した︒
﹃我々は五民事部にかわり八民事部を創設せざるをえないことになろう︒なぜなら︑このような上告不許抗告
を処理することは上告を処理するよりも骨がおれるからである(Amt一゜田ferichto3070E,QQO刈一﹀)︒﹄
ライスマン議員の提案は︑かかる理由から多数によって否定され︑ZPO五四六条は政府提案にそうかたちで現在の
文言に決定された︒
したがって︑高等裁判所が上告を許可しない全ての婚姻事件が連邦通常裁判所へ訴訟を持ち出す可能性を有しないこ
とは︑全く疑いのないところである︒立法者は︑五四六条二項二文にあげられた場合において上告を許可する拘束的義
務を高等裁判所に課すことで十分であると考えた︒そして︑高等裁判所によってこの義務が果たされているか否かを再
審理することを可能とする規定は意識的に創設されなかったのである︒かくて︑ZPO五四六条においては︑FGG二
八条およびGBO七九条と類似の法状態が生ずることとなった︒これらの規定によれば︑高等裁判所は一定の要件の下
で連邦通常裁判所に裁判を得るために再抗告を呈示すべきことを命じている︒この規定を考慮しない場合であっても︑
高等裁判所の裁判の効果には影響がない︒また同じく︑呈示をしないことを理由として高等裁判所の裁判に対して不服
を申し立てることも︑許されていない(<αq一.Schlegelberger,FGG5.Aufi,X28Anm.7andRGZ48,15)°﹂
連邦通常裁判所の右判例は︑上告不許可の裁判に対して上告審は審査権を有しないとする︒その理由として︑上告許
可に関する裁判を上告審が再審査することを認めると︑上告審の負担軽減がなされなくなること︑また立法過程におい
ても︑一部議員による上告不許抗告を認めるべきであるとする提案が否定されていることが︑指摘されている︒引用さ
れているライヒ裁判所一九二四年七月一〇m; 定[RGZ108,349]は︑一九二四年一月一五日のライヒ裁判所の負担軽
減のための命令において高等裁判所の判決はいつ確定するかという問題に関するものであるが︑その傍論でこの命令の
目的︑すなわちライヒ裁判所の負担軽減に言及したものである︒
︻判例2︼連邦通常裁判所(第六部)一九五四年二月六日判決[ピζ伽鰹①N勺OZ罫一①]
﹁高等裁判所は︑判決はZPO五四七条二号︑GVG七一条二項二号により元々上告可能であるので上告許可の余地は
存在しないと︑判示している︒職務上の賠償請求権あるいは不服額にかかわらず︑上告がなされうるその他の請求権が
主張されているのではないから︑このような理由付けは誤りである︒仮に︑控訴審が訴訟の法状態を正しく認識してい
上告不許可の裁判六五(5)