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炎症性疼痛に関わる侵害受容ニューロン活動に対する

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Academic year: 2021

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88 麻布大学雑誌 第 29 巻 2017 年

37

回麻布環境科学研究会 一般学術講演

3

炎症性疼痛に関わる侵害受容ニューロン活動に対する ルテイン の慢性投与による抑制効果

〇東海林 由巳子

1

,小林 良太

1

,宮村 菜子

1

,久保田 喜子

2

魚津 伸夫

2

,島津 徳人

1

,武田 守

1

1

麻布大学 生命・環境科学部 食品生理学研究室,

2

㈱ファンケル総合研究所

【研究背景】

ルテイン(Lutein)は,カロテノイドと呼ばれる天 然色素の一種で,ホウレンソウやブロッコリーなどの 緑黄色野菜に含まれる食品成分であるとともに,㈱

FANCLの「楽のび」(機能性表示食品)に含まれてお

り,関節の痛みを和らげる効果が期待される健康食 品の成分として知られている。

ルテインには,三叉神経節(Trigeminal ganglion:

TG)ニ ュ ー ロ ン の 機 械 受 容 チ ャ ネ ル 候 補 で あ る Transient receptor potential ankyrin: TRPA1)の活性 化により誘導される細胞内Ca2+濃度の上昇を抑制 すること(Hovath et al., 2012; Kwan et al., 2009)が 報告されている。また,ルテインは炎症時にアラ キドン酸からプロスタグランジンE2(prostaglandin E2: PGE2)を 産 生 す る シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ2

(Cyclooxygenase-2: COX-2)を抑制する効果が報告さ れている(Izumi-Nagai et al., 2015; Choi et al., 2006)。

最近, 我々は食品成分のひとつであるレスベラトロー ルを用いて三叉神経支配領域で発現する炎症性痛覚 過敏とこれに関わる三叉神経脊髄路核尾側亜核広作 動域(Trigeminal spinal nucleus caudalis: SpVc WDR)

ニューロンの過興奮性がCOX-2の産生の抑制により 緩和されることが示唆された(Sekiguchi et al., 2016)。

これらの知見より,ルテインの慢性投与により炎 症性痛覚過敏とこれに関わる侵害受容ニューロンの 過興奮が減弱される可能性が推測される。そこで本 研究の目的は,in vivo条件下において,ラット三叉 神経系の炎症モデルを用いて慢性炎症によるSpVc

WDRニューロンの過興奮を減弱するか否かを行動学 的解析と電気生理学解析を用いて検証を行った。

【実験方法】

① 行動学的解析:

Wisterラットの雄(B.W.180~200g)を以下の3群に 分けた。(1)溶媒(生理食塩水)を顔面皮膚(左口ひげ 部分)へ皮下投与した対照群,(2)同部位にComplete Freund’s Adjuvant(CFA)を投与した炎症群,(3)CFA の投与前日よりルテイン(10mg/kg, ip)を投与したル テイン投与群を作成した。行動学的記録は溶媒の投 与前日から3日目の逃避反射の閾値をvon Frey hairs を用いて測定して痛覚過敏の有無を同定し,ルテイ ン投与群では炎症に対する痛覚過敏が緩和されるか 否かを検討した。また,各群における左口ひげ部分 の腫脹の程度を定量化した。

② 電気生理学解析:

電気生理学的記録では,各群のラットをペントバ ルビタール(45mg/kg B.W. i.p.)で麻酔し,SpVcに刺 入した微小ガラス電極(2%ポンタミンスカイブルー 含有0.5M酢酸Na水溶液)と交流アンプに接続し顔面 皮膚へのvon Frey hairによる機械刺激(非侵害・侵害)

およびピンセットによる侵害性ピンチ刺激に応答す るSpVc広作動域(WDR)ニューロンの細胞外単一ユ ニット放電(活動電位)を導出した。これらの細胞外 単一ユニット活動をデータ解析装置PowerLabを用い てポストステミュラスヒストグラムを作成すること により解析した(Takehana et al., 2016)。

(2)

第 37 回麻布環境科学研究会講演要旨 89

【結果】

行動学的解析:

正常群に比べてCFA投与による炎症群ラットの左 口ひげ部分の腫脹は増大し,ルテイン(10mg/kg)を 腹腔内に連日投与することで有意に減少する傾向が みられた(p<0.05)。CFA投与による炎症群ラットの von Frey Hairsに対する逃避反射閾値は正常群と比較 して低下し,逃避反射閾値の低下はルテイン連日投 与群(10mg/kg, i.p.)により回復する傾向を示し,炎 症誘導3日目において有意に正常群レベルに回復し た。(p<0.05)

電気生理学解析:

炎症群で観察された,顔面皮膚侵害刺激に応じる

SpVc WDRニューロンの①機械刺激の閾値の低下,

②機械刺激に対する放電頻度の増大,③自発放電頻 度の増大,④侵害刺激後後発射の増大,⑤受容野サ イズの増大などの痛覚過敏に関するパラメーターは ルテイン(10mg/kg, i.p.)投与3日目に正常レベルに有 意に回復した。(p<0.05)

【結論と考察】

本実験により食品の化学成分であるルテインの慢 性投与が炎症性疼痛に関わる侵害受容ニューロン

活動をTRPA1やCOX-2シグナルカスケードを介

する末梢性感作の抑制により炎症性痛覚過敏を減 弱させることが示唆された。

本実験より,副作用のない食品由来成分のルテ インが,鎮痛・鎮静薬の代替となる可能性,すな わち薬に頼らない安全性の高い治療「補完代替医 療」に貢献する可能性が推察された。

【文献】

● Hovath et al., J Mol Neurosci 2012; 46: 1-9

● Izumi-Nagai et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 2007; 12:

2555-62

● Sekiguchi et al., Mol Pain 2016; 12:1-11

● Kwan et al., J Neurosci 2009; 15: 4808-19

● Choi et al., Nutrition 2006; 6: 668-71.

● Takehana et al., Brain Les Bull 2016; 120: 117-22

組織炎症時において,ルテインは侵害機械刺激を受容するTRPA1チャネルおよびCOX-2を抑制することで侵害受容 ニューロンの末梢性感作を減弱させる。その結果,三叉神経節ニューロンから放出されるグルタミン酸などの神経伝達 物質の放出を減少させることで,SpVc WDRニューロンの興奮を減少させ,高位の中枢への疼痛シグナルを減弱させ炎 症性痛覚過敏を緩和すると推測される。(ARA:アラキドン酸/PKA:プロテインキナーゼA)

参照

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