中学校理科教員から見た科学の甲子園ジュニアの実態
―大分市及び別府市における指導経験者と指導未経験者の視点からの調査―
三次 徳二*・ 室田 一成**
【要 旨】 学校現場における科学の甲子園ジュニアの実態を明らかにす るために,大分市及び別府市の国公立中学校に所属する理科教員に質問紙調 査を行った。指導未経験者(80%),指導経験者(20%)の回答を分析した結 果,以下の諸点が明らかになった。(1)指導未経験者の多くは大会の名称や チームで参加することは知っていたが,具体的な競技内容を把握している者 は少なかった。(2)行われた指導は,競技説明や過去に出題された問題の練 習が大半であった。(3)科学の甲子園ジュニアの指導は難しいという印象を 抱いている教員は,指導未経験者と指導経験者ともに多い。(4)科学の甲子 園ジュニアを新しい取組として,普段の職務に上乗せすることは,教員にと って負担が大きい。(5)公立の中学生には参加しづらいと感じていたり,大 会の目的と実施している活動が一致していないと感じていたりする教員がい た。これらの実態を踏まえて,出題内容や周知活動の見直し,指導経験者と の知見等の共有及び学校外での発展的な学習による効果の提示といった提言 を行った。
【キーワード】 中学校 理科教員 科学技術コンテスト 質問紙
1.問題の所在と研究の目的
我が国では,初等中等教育を通じて,科学技術に関する能力・才能の伸長を促すとともに,
理数好きの児童生徒の拡大を図ることが重要であると指摘されている(例えば,内閣府,2016)。
これらに関与した取組は,多くの団体や個人が行っており,例えば山岡(2009)が,日本理科 教育学会の全国大会で報告している。国レベルの大きな取組として,国立研究開発法人科学技 術振興機構は次世代人材育成事業を行っており,初等中等教育段階から優れた才能を発掘し,
その才能を伸ばすための一貫した取組を推進している(科学技術・学術審議会,2015)。
(独)科学技術振興機構理科教育支援センター(2010)は,科学技術系の才能教育の目標を,
以下のように捉えたと述べている。
○才能教育Ⅰ:才能を育む基盤として,個に応じて,個のもつ能力を最大限に伸長させること。
令和2年2月20日受理
*みつぎ・とくじ 大分大学教育学部理数教育講座(理科教育)
**むろた・かずあき 大分大学大学院教育学研究科(現所属:日田市立三隈中学校)
○才能教育Ⅱ-a:個の潜在的な能力を見出し,発揮させること。
○才能教育Ⅱ-b:高い才能を有する生徒に高度な専門的能力を育むこと。
例えば,理科授業における個に応じた学習や青少年のための科学の祭典は,才能教育Ⅰに相 当する。また,科学技術の研究・開発の体験や科学技術分野のチーム対抗競技会は,才能教育
Ⅱ-a に相当する。そして,能力に見合った教育プログラムの提供は,才能教育Ⅱ-b に相当す る。才能を育成する施策に必要な視点の一つとして,(独)科学技術振興機構理科教育支援セン ター(2011)は,中学校理科教員の参画を挙げている。教員は,普段から授業等で生徒と接し ているため才能を見出しやすく,学校外の取組と学校での学びをつなげることができるからで ある。
本研究では,中学生を対象とした数少ない取組の一つである,科学の甲子園ジュニアに注目 した。科学の甲子園ジュニアは 2013 年に創設され,その目的は科学好きの裾野を広げるととも に,未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成することである(国立研究開発 法人科学技術振興機構,2015b)。中学生がチームを組んで理数分野の筆記及び実技競技を行い,
各都道府県における代表選考会を経て,全国大会では各都道府県の代表チームが競い合う。大 分県においては,代表選考会である科学の甲子園ジュニア大分県大会(以下,大分県大会と呼 ぶ)が同年から開催された。これまでの大分県大会では,各中学校で 6 人 1 チームを編成し,
各チームで競い合っていた。そして,筆記競技である 1 次予選を通過し,1 次予選と実技競技 である 2 次予選の合計得点が 1 位のチームが,代表チームとなっている。
科学の甲子園ジュニアは中学生を対象とした人材育成の事業である。一方で,生徒への事業 の紹介や各大会への引率など,教員もこの事業に関わるため,教員の視点からも科学の甲子園 ジュニアについて考察する必要がある。田中ほか(2014)は科学の甲子園ジュニアに参加した 生徒,並びに関与した引率教員や保護者を対象とした質問紙調査の結果を報告している。特に 引率教員に対しては「代表選考会や全国大会を通じた生徒の変化」や「来年度も生徒に参加さ せたいか」といった質問をしている。また,室田・三次(2019)は大分県大会に向けて行った 指導の内容やねらい,教員が抱いた印象を明らかにするために,参加した理科教員に聞き取り 調査と指導の観察を行った結果を報告している。しかし,これまでに公表されている文献では,
関わってきた教員の事業に対する意識しか明らかにできていない。さらに,科学の甲子園ジュ ニアに向けて中学校理科教員がどのような指導を行ったのかを数値化した研究はない。
本研究の目的は,科学の甲子園ジュニアに参加していない学校も含めた学校現場において,
理科教員の視点に立って科学の甲子園ジュニアの実態を解明することである。このことは,代 表選考会を含めた事業の拡大や方向性の検討,並びに指導を初めて行う教員への情報提供とし て有用であると考えられる。さらに,学校外での発展的な学習を生徒に促す教員が増えること で,科学技術に関する能力・資質の伸長や理数好きの生徒の拡大に資することが期待される。
2.調査内容
2.1 調査内容の設定
本調査における科学の甲子園ジュニアの指導とは,生徒に事業を紹介したり,参加する生徒 を選出したり,代表選考会前の練習に携わったりすることを想定している。そして,科学の甲 子園ジュニアの指導者経験が 0 回である教員を指導未経験者,1 回以上ある教員を指導経験者
として定義する。
指導未経験者と指導経験者の双方への質問として,科学の甲子園ジュニアについての把握状 況,指導への印象について設定した。さらに,科学の甲子園ジュニアの指導並びに科学の甲子 園ジュニアの目的についての感想や意見を自由記述で回答を求めた。指導未経験者には,科学 の甲子園ジュニアへの参加に至らなかった経緯,他の教員との指導内容の共有状況を尋ねた。
指導経験者には,科学の甲子園ジュニアへの参加に至った経緯や参加する生徒の選出,複数指 導の経験並びに大分県大会 1 次予選に向けての指導回数や時間,指導内容について尋ねた。
2.2 調査対象及び方法
大分市及び別府市の国公立中学校に所属する,講師を含めた理科教員を対象に調査を行った。
この二つの市は,大分県大会の会場となった市であり((独)科学技術振興機構,2013,2014;
国立研究開発法人科学技術振興機構,2015c,2016,2017a,2018),何度か代表チームとして選 ばれた中学校を含み,市内の中学校が大分県内の他市に比べて多く参加していたので(大分県 教育委員会,2017,2018),調査対象として選定した。なお,国立と公立の中学校の間では教員 の人事交流が行われているため,一つの集団として捉えた。対象となる中学校,計 39 校(国立 1 校,公立 38 校)に対して質問紙を送付し,勤務する全理科教員に対して回答を依頼した。
2.3 調査の実施
第 6 回大分県大会 1 次予選が終了した後の 2018 年 8 月 7 日に,対象となる中学校宛に調査 票を郵送し,9 月 7 日までに返送を依頼した。その後,9 月 14 日に督促状を発送し,改めて 10 月 5 日までに返送を依頼した。この日までに到着した分を分析の対象とした。39 校中 34 校の 100 名分を回収でき,学校を単位とした回収率は 87%となった。
2.4 結果の処理及び分析方法
対応する質問への回答が記入されていなかったり,一つ選んで回答するように要求した質問 に対して複数回答されていたりした場合は,その質問に限って分析対象から除外した。
独立性の検定を行うため,2×2 の Fisher の正確確率検定(両側)を採用した。変数の一つ は指導経験の有無,すなわち指導未経験者と指導経験者で行った。もう一つの変数は,2 件法 の場合は「はい」と「いいえ」で行った。4 件法の場合は「そう思う」「ややそう思う」を肯定 側,「ややそう思わない」「そう思わない」を否定側と区別し,肯定側と否定側で行った。統計 分析ソフト HAD(清水,2016)を用いて,前述した 2 変数で分析した。
自由記述の分析は,大谷(2008,2011)による Steps for Coding and Theorization(SCAT)
を一部改変した手法(福士・名郷,2011)を用いた。環境教育では土井・林(2015)が学習者 を対象に採用している。分析の手順は,次の通りである。
1.グループ化:似たようなテキストデータをまとめ,分類する。
2.言い換え:グループ全体の文脈を踏まえて他の語句へ言い換える。
3.概念化:グループ同士の関係から浮かび上がる潜在的テーマを概念化する。
4.ストーリーライン:データを組み入れた概念化の全体像を文章化する。
自由記述では,複数の内容を有する回答もあった。その場合は,内容ごとにデータを分割し た。また,無回答,わからないといった回答,質問に対して意味的に不明瞭であった回答は,
分析の対象から外した。よって,回答人数とテキストデータの数が一致しない場合が生じる。
3.調査結果
3.1 調査対象者全体の特性
調査対象者の性別の内訳は,男性が 62 名,女性が 31 名,無回答が 7 名であった。
講師を含めた中学校理科教員としての教職勤務年数の内訳は,10 年未満が 22 名,10 年以上 20 年未満が 22 名,20 年以上 30 年未満が 29 名,30 年以上が 18 名,無回答が 9 名であった。
指導者になった経験回数を,数値による記述法で尋ねた結果を表 1に示す。第 6 回大分県大 会1次予選後に調査を行っているため,6 回が最高値となる。
表 1 科学の甲子園ジュニアの指導経験状況
経験回数 0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 計 該当する教員数 80 11 2 4 1 0 2 100
3.2 科学の甲子園ジュニアの把握状況
教員の科学の甲子園ジュニアの把握状況を,選択肢法で尋ねた結果を表 2に示す。指導経験 の有無と質問に対する「はい」「いいえ」の 2 変数による独立性の検定を行った。Fisher の正 確確率検定によって両側確率を算出した。質問項目①は p=.117(>.05)で有意差なし,質問項 目②は p=.001(<.01)で有意差あり,質問項目③は p=.290(>.05)で有意差なし,質問項目④ は p=.000(<.01)で有意差あり,質問項目⑤は p=.000(<.01)で有意差ありと判断した。
表 2 科学の甲子園ジュニアについての把握状況
質問項目 指導未経験者(n=80) 指導経験者(n=20)
はい いいえ はい いいえ
①科学の甲子園ジュニアという名称を知っていた 68 12 20 0
②筆記試験と実技試験があることを知っていた 47 33 19 1
③チームで参加することを知っていた 67 13 19 1
④出題された問題文を読んだ経験がある 20 60 19 1
⑤競技に取り組んでいる様子を見た経験がある 10 70 15 5
3.3 参加に至らなかった経緯と至った経緯
指導未経験者に,科学の甲子園ジュニアへの参加に至らなかった一番の経緯を,選択肢法で 尋ねた結果を表 3に示す。その他として,「生徒自身の関心がない」「時間的に余裕がない」「十
表 3 参加に至らなかった経緯 表 4 参加に至った経緯
選択肢
指導未 経験者 (n=78)
選択肢
指導 経験者 (n=18)
自身が興味を抱かなかった 18 自身が興味を抱いた 6
所属校の生徒に合っていないと判断した 15 所属校の生徒に合っていると判断した 3
知らなかった 16 学校の引継ぎで行った 4
参加人数が足りなかった 4 自身や学校の成果を得たかった 0
自身の都合がつかなかった 14 周囲から勧誘された 4
その他 11 その他 1
分な指導ができるか不安だった」「内容がわからないので指導できない,指導方法がわからない」
「引率時の送迎に問題がある」「部活動の大会が重なった」「別学年の担任だった」「日程等を知 らなかった」という回答があった。
指導経験者に,科学の甲子園ジュニアへの参加に至った一番の経緯を,選択肢法で尋ねた結果 を表 4に示す。その他として,「生徒から参加希望があった」という回答があった。
3.4 指導未経験者の指導の共有状況
指導未経験者に,他の教員が行った指導をどの ように共有したかを,選択肢法で尋ねた結果を表 5に示す。すなわち,科学の甲子園ジュニアの指 導内容を共有したかと尋ねた質問である。
3.5 指導経験者が行った指導状況
科学の甲子園ジュニアに参加する生徒の 選出方法を,選択肢法で尋ねた結果を表 6 に示す。その他として「全員に呼びかけた」
という回答があった。
大分県大会 1 次予選に向けて,事前に指 導した回数及び時間を,数値による記述法 で尋ねた結果を表 7に示す。10 分という回 答が最短時間であり,150 分という回答が 最長時間であった。
大分県大会 1 次予選に向けて行った 指導を,選択肢法で尋ねた結果
を表 8に示す。その他として未 習内容である「第 3 学年で学習 する内容についての指導」とい う回答があった。科学の甲子園 ジュニアは第 1,2 学年のみ参 加可能である。競技説明のみ行 った教員は 2 名であった。
表 8 1次予選に向けて行った指導(複数回答可) 表 9 科学の甲子園ジュニアの複数指導の経験
選択肢 指導経験者
(n=20) 選択肢 指導経験者
(n=20)
競技内容を説明した 16 単独指導のみ行った 15
チームでの動き方を考えさせた 4 複数指導をした 5
各自で過去の問題を解かせた 12 複数人で過去の問題を解かせた 13 本番に近い模擬競技をした 5
その他 2
選択肢 指導未経験者
(n=80)
共有していない 59
文書や口頭のみで共有した 19
実際に指導を見た 2
選択肢 指導経験者
(n=20) 生徒に協議させて人数を絞った 1 生徒に試験を課して人数を絞った 5 教員が生徒を呼び出して参加を促した 12 教員が希望者に他の生徒を勧誘させた 10 教員は特に何もしないで済んだ 0
その他 1
時間 1回 2回 3回 4回 5回 計 30 分未満 1 2 0 0 0 3 30 分以上 60 分未満 0 4 0 1 0 5 60 分以上 90 分未満 2 2 0 2 0 6 90 分以上 120 分未
満
0 0 0 1 0 1
120 分以上 1 1 0 0 1 3
無回答 0 0 0 1 0 1
計 4 9 0 5 1 19
表 5 科学の甲子園ジュニアの指導の共有状況
表 6 参加する生徒の選出方法(複数回答可)
表 7 1次予選に向けて指導した回数及び時間
複数指導の経験を選択肢法で尋ねた結果を表 9に示す。詳細を記述法で尋ねたところ,「同じ 学校の理科教員と指導した経験がある」教員は 4 名であり,「高等学校の教員と指導した経験が ある」と「同じ学校の数学教員と指導した経験がある」教員がそれぞれ 1 名いた。
3.6 指導への印象の比較
科学の甲子園ジュニアの指導のしやすさ,楽しさ,今後行う意欲についての印象を,選択肢 法で尋ねた。また,指導経験の有無と肯定側・否定側の 2 変数による独立性の検定を行った。
指導のしやすさに関する印象について,指導未経験者には指導しやすそうだと思うか,指導 経験者には指導しやすかったと思うかと尋ねたところ,表 10に記した結果が得られた。Fisher の正確確率検定で両側確率を算出したところ,p=.225(>.05)であり,有意差なしと判断した。
指導の楽しさに関する印象について,指導未経験者には指導が楽しそうだと思うか,指導経 験者には指導が楽しかったと思うかと尋ねたところ,表 11 に記した結果が得られた。Fisher の正確確率検定で両側確率を算出したところ,p=.595(>.05)であり,有意差なしと判断した。
指導を今後行う意欲に関する印象について,指導未経験者と指導経験者のどちらにも,今後 指導をやりたいかと尋ねたところ,表 12に記した結果が得られた。Fisher の正確確率検定で 両側確率を算出したところ,p=.002(<.01)であり,有意差ありと判断した。
表 10 科学の甲子園ジュニアの指導のしやすさに関する印象
肯定側 否定側
そう思う ややそう思 計 う
ややそう思わない そう思わない
指導未経験者 0 7 37 35 79
指導経験者 0 4 10 6 20
計 0 11 47 41 99
表 11 科学の甲子園ジュニアの指導の楽しさに関する印象
肯定側 否定側
計 そう思う ややそう思
う
ややそう思わない そう思わない
指導未経験者 7 46 15 12 80
指導経験者 4 11 3 2 20
計 11 57 18 14 100
表 12 科学の甲子園ジュニアの指導を今後行う意欲に関する印象
肯定側 否定側
計 そう思う ややそう思
う
ややそう思わない そう思わない
指導未経験者 4 27 37 11 79
指導経験者 4 12 2 2 20
計 8 39 39 13 99
3.7 指導への感想や意見
指導未経験者と指導経験者の双方に,科学の甲子園ジュニアの指導について感じたことや考 えたことを,文章による記述法で尋ねた。空欄であった人数は,指導未経験者が 80 名中 35 名,
指導経験者が 20 名中 2 名であった。表 13は福士・名郷(2011)の手法で分析した結果である。
なお,「」は代表的なテキストデータ,〈〉はグループ化した言い換え,【】は概念を表す。言い 換えや概念の横にある()内の数値は,該当するテキストデータの数である。
ストーリーラインを次のように作成した。
【参加への抵抗感】を抱いている未経験者の記述が多く見受けられ,実際に指導を経験した 教員も【指導して実感した厳しさ】について述べている。公立中学校に所属している教員を対 象にしているので,【公立中学生にとっての障害】を触れていた記述は指導経験の有無に関わら ず一定数いた。【情報提供の必要性】が読み取れる指導未経験者の記述もあった。【指導者への 興味】を抱いている指導未経験者や,実際に指導して【教育的効果の実感】や【多くの生徒に 経験させたい思い】を表した教員の記述は少数ではあるが存在していた。
表 13 科学の甲子園ジュニアの指導についての感想や意見 指導未経験者
【参加への抵抗感】(24)
〈職務への負担〉(15) 「日々の雑務におわれ,指導したい気持ちはあるが,実現できない」
〈専門性への悩み〉(5) 「指導方法などむずかしく,興味はあっても参加には至らなかった」
〈他の活動との連携〉(3) 「科学部等が学校にあれば,指導する時間も確保できそう」
〈不平等〉(1) 「理科の力は伸びると思うが一部の生徒にかたよる」
【情報提供の必要性】(7)
〈周知活動〉(3) 「生徒にも教員にもあまり周知されていないように思う」
〈指導等への疑問〉(2) 「どのくらいの期間,指導にあたるのが一般的なのか」
〈出題内容の非公開〉(2) 「内容が公表されていないため,指導をどのようにすればよいかがわからない」
【公立中学生にとっての障害】(3)
〈高すぎる難度〉(1) 「中学校のレベルでは大変難しい」
〈公立と私立の差異〉(1) 「私立にはかなわない。学校でしていることが違う」
〈学校規模の違い〉(1) 「小規模校では 6 人の生徒をあつめるのがむずかしい」
【指導者への興味】(1)
〈参加への意欲〉(1) 「興味のある生徒がいれば,ぜひやってみたい」
指導経験者
【指導して実感した厳しさ】(12)
〈指導時間確保〉(3) 「部活指導と両立するのが,教員・生徒とも難しい」
〈専門性への悩み〉(2) 「指導できないような問題が出て,困る」
〈出題内容の非公開〉(2) 「過去問題は公表すべきである。初めは何から手をつけて良いかわからなかった」
〈数学分野の指導〉(2) 「理科教員のみが参加させているような要素が強い」
〈指導後の反省〉(2) 「生徒の主体性と学習能力の両立のための指導と呼びかけが大切」
〈他の活動との連携〉(1) 「他県のように科学部のとり組みをするとしやすくなると思いました」
【公立中学生にとっての障害】(4)
〈出題範囲への指摘〉(1) 「2 年生までで(特に夏)の問題にしてもらいたい」
〈高すぎる難度〉(2) 「やはり 1 年から取り組まないとむつかしい。」
〈公立と私立の差異〉(1) 「通常カリキュラムでは公立中は私立中に歯がたたない」
【教育的効果の実感】(2)
〈有効性〉(2) 「関心の高い理科好きの生徒達には,効果のある大会だと感じます」
【多くの生徒に経験させたい思い】(2)
〈予選通過の緩和〉(1) 「なるべく多くの生徒が2次予選まで参加できることが望ましい」
〈活動の広がり〉(1) 「このような機会を生徒にもっとさせるとよいと思った」
3.8 目的についての感想や意見
科学の甲子園ジュニアは冒頭で述べた通り,二つの目的が掲げられている。各目的について 感じたことや考えたことを,文章による記述法で尋ねた。
目的[1]は“科学好きの裾野を広げる”であり,目的[2]は“未知の分野に挑戦する探究 心や創造性に優れた人材を育成する”である(国立研究開発法人科学技術振興機構,2015b)。
目的を補足説明するために,次世代人材育成事業で推進している“理数好きの子供たちの裾野 の拡大”,“理数系に優れた素質を持つ子供たちの才能の更なる伸長”(国立研究開発法人科学技 術振興機構,2015a)を,それぞれ目的[1]と目的[2]に書き添えた。
目的[1]における空欄であった人数は,指導未経験者が 80 名中 25 名,指導経験者が 20 名 中 2 名であった。目的[2]における空欄であった人数は,指導未経験者が 80 名中 25 名,指導 経験者が 20 名中 1 名であった。表 14は目的[1]について,表 15は目的[2]について前節の 手法と同様に分析した結果である。目的[1]と目的[2]に共通する概念が多かったため,一 括して目的への感想や意見についてのストーリーラインを次のように作成した。
指導経験の有無に関わらず,【目的の受け入れ】を表した記述が多く存在した。一方で科学の 甲子園ジュニアの【目的と活動のギャップへの気づき】を述べた記述についても,指導経験の 有無によらず一定数見受けられた。指導未経験者の中には,目的を踏まえて【参加への抵抗感】
に触れた記述もあった。
表 14 目的[1]“科学好きの裾野を広げる”についての感想や意見 指導未経験者
【目的の受け入れ】(35)
〈シンプルな肯定〉(26) 「良いと思います」「そのように思えます」
〈理科嫌い〉(5) 「理科嫌いが多ので大切だと思う」
〈理科好き〉(2) 「理数好きな子どもがさらに好きになるのを考えられるのはよい」
〈活動内容〉(2) 「思考して取り組む課題に挑戦できるので,興味深いものになる」
【目的と活動のギャップへの気づき】(11)
〈違和感〉(8) 「もともと理科好きな人が参加している」
〈高すぎる難度〉(3) 「問題がむずかしく,裾野を広げるのは難い」
【参加への抵抗感】(10)
〈職務への負担〉(3) 「とても良いと思うが,他の仕事におわれる」
〈代替案〉(7) 「行っている事は興味深いが,科学の甲子園よりも科学館がほしい」
指導経験者
【目的の受け入れ】(10)
〈シンプルな肯定〉(7) 「とても良いと思います」「十分に達成できていると思う」
〈生徒の姿〉(3) 「内容はいつも子どもが面白というので達成されていると感じる」
【目的と活動のギャップへの気づき】(8)
〈違和感〉(1) 「理数マニアがさらに好きなるだけで裾野が広がることはない」
〈高すぎる難度〉(2) 「やや好き,くらいの生徒には敷居が高く感じる」
〈条件付き肯定〉(3) 「この大会に出場するような生徒には効果があると思う」
〈出題内容〉(2) 「中 3 の内容だと先行学習した学校のみ 2 次に進み,裾野は広がらない」
〈参加人数〉(1) 「もっと参加校,人数が広がるべき」
表 15 目的[2]“未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成する”についての感 想や意見
指導未経験者
【目的の受け入れ】(37)
〈シンプルな肯定〉(24) 「良い機会になる」「大切こと」
〈資質・能力〉(10) 「探究心は育つと思います」「対応する力はつくと思います」
〈将来への糧〉(3) 「優れた才能を持つ子どもにとって,将来につながる思う」
【目的と活動のギャップへの気づき】(4)
〈違和感〉(3) 「深く知らないが人材育成に至るまでの期間がかかる(ある)のか」
〈条件付き肯定〉(1) 「効果的。 1,2,3 年の学別とかやるとよい」
【参加への抵抗感】(9)
〈職務への負担〉(3) 「良いことだと思うが,現場に十分な理科教員が確保されていない」
〈代替案〉(4) 「理科室の設備の充実に予算をつけてほしい」
〈専門性への悩み〉(2) 「自分自身の指導がおいついていかない」
指導経験者
【目的の受け入れ】(13)
〈シンプルな肯定〉(8) 「いいことだと思う」「大事なことだと思う」
〈生徒の姿〉(4) 「チームで行うことで,それぞれが刺激をもらっていたようです」
〈学校の目標〉(1) 「いくつかの学校にとって,学校をあげての目標となっている」
【目的と活動のギャップへの気づき】(4)
〈違和感〉(1) 「科学の甲子園ジュニアだけでは人材育成限界があります」
〈出題内容の指摘〉(2) 「一部に既習事項よって問題の解きやすさに違いがあります」
〈高すぎる難度〉(1) 「一部の生徒にはその目的までなかなかたどりつかないかも…」
4.考察
4.1 指導経験回数について
科学の甲子園ジュニアの指導経験がある教員は 100 名中 20 名であり,その半数を超える 11 名の指導経験の回数は 1 回であった(表1)。大分県教育委員会(2018)に示されるように,1次 予選に参加した学校数は第1回と第2回は 3,4 校と極めて少ない状況であったが,その後徐々 に増加し始め,2017 年の第5回大会で 11 校となり初めて 10 校を超え,2018 年の第6回大会 で 18 校へと増加した。指導経験の回数が少ない教員が多いのは,参加校数が増加しつつある現 状を示しているものと考えられる。
4.2 指導未経験者の把握状況について
科学の甲子園ジュニアの名称やチームで参加することについての把握状況は,指導経験の有 無による差異があるかは不明であり,指導未経験者も 8 割以上は知っていた(表 2)。指導の経 験に関わらず,ある程度は周知されているといえる。ただし,競技内容や問題文を読んだ経験,
競技に取り組んでいる様子を見た経験については経験の有無による差異が認められ(表 2),指 導を共有していない教員が 74%いた(表 5)。具体的に何を活動しているかまでは把握できてい
ない教員は多いと推測される。また,知らなかったので参加に至らなかった教員が 21%いたり
(表 3),【情報提供の必要性】を感じさせられる回答をした教員がいたりした(表 13)。今後も 科学の甲子園ジュニアがどのような活動を行っているのかを伝える機会が必要であろう。
4.3 指導経験者の指導状況について
参加する生徒の選出は,教員からの呼び出しや他の生徒からの勧誘という手法を経験してい る教員がどちらも半数以上いた(表 6)。人数を絞った手法を経験した教員はやや少なめであっ た。まずは参加人数を集めようとした学校が多かったといえる。
指導回数や時間は,30 分以上 60 分未満で 2 回行った教員が 21%と最も多かったが,特に偏 っているとは言い難い(表 7)。〈指導時間確保〉による【指導して実感した厳しさ】を述べた意 見があったことから(表 13),余裕があれば更に指導の時間を割きたいと思う教員がいたと考 えられる。
大分県大会 1 次予選に向けて行った指導は競技内容の説明,各自または複数人で過去に出題 された問題を解かせた教員が多く,競技説明に留まった教員は 10%であった(表 8)。指導の一 例としてチームでの動き方を考えさせる方法があり(室田・三次,2019),協力する場面が出て くる活動であるため選択肢に入れたが,20%とやや少なめであった(表 8)。無意識の内に教員 が何らかの教育的介入を行っているのか,特に介入する必要はなかったと判断したのかは,本 調査結果だけでは明らかにできない。
4.4 指導の難しさについて
科学の甲子園ジュニアに向けての指導のしやすさに関する印象は,指導経験の有無による差 異があるかは判断できず,指導未経験者と指導経験者の双方ともに,否定的な意見に偏ってい た(表 10)。指導経験者は【指導して実感した厳しさ】を抱いており(表 13),指導未経験者に とっても〈専門性への悩み〉による【参加への抵抗感】につながると考えられる(表 13,表 15)。
〈出題内容の非公開〉に触れた回答は,全国大会で出題された問題はウェブサイトに掲載さ れているが(例えば,国立研究開発法人科学技術振興機構,2017b),代表選考会のものは公開 されていないから述べたのであろう。〈数学分野の指導〉は理科教員にとって専門外であり(表 13),数学教員と連携した教員は,今回は 1 名しか見当たらなかった(表 9)。また,理科に該 当する問題であっても普段の授業とは異なる内容であったり,指導方法に関する知見が少なか ったりするため,〈専門性への悩み〉に触れる回答も出たのだと考えられる(表 13,表 15)。
4.5 指導による職務負担について
「自身の都合がつかなかった」教員が 18%であり,その他の回答にも時間の余裕のなさや引 率の問題に触れたものがあった(表 3)。さらに,〈職務への負担〉や〈他の活動との連携〉とい った【参加への抵抗感】を抱く教員が多かった(表 13)。
指導の楽しさに関する印象は,指導経験の有無による差異は判断できず,指導未経験者と指 導経験者の双方ともに肯定的な意見に偏っていた(表 11)。【目的の受け入れ】をしている教員 も少なくなかった(表 14,表 15)。しかし,指導を今後行う意欲に関する印象は,指導経験の 有無による差異は認められ,指導未経験者は今後指導を行うことに否定的であった(表 12)。
新しい取組として今までの職務に上乗せするのは,教員にとって受け入れられにくいといえる。
田中ほか(2014)によると科学部に所属している生徒は代表選考会時点で 22%であり,(独)科
学技術振興機構理数学習支援センター(2013)によると科学部が中学校にないという回答は 73%
であった。必ずしも科学部の活動と関連付けられるとは限らない。
4.6 教員から見た効果と課題について
科学の甲子園ジュニアは中学校段階での理科離れや進路選択,科学好きが切磋琢磨して評価 される場が不足している背景を踏まえて開催されたコンテストである(科学技術・学術審議会,
2015)。指導経験者が【教育的効果の実感】(表 13)や,〈生徒の姿〉を踏まえて【目的の受け入 れ】(表 14,表 15)を述べているため,科学の甲子園ジュニアによる一定の効果は認められる。
一方で,【公立中学生にとっての障害】を感じている教員や(表 13),【目的と活動のギャップ への気づき】を述べた教員が指導経験の有無に関わらず存在していた(表 14,表 15)。総じて,
以下の 2 点が一致していない点として挙げられる。1 点目は,出題内容が中学校の第 1,2 学年 に適しておらず,授業進度の違いによる差が生じるため,科学好きの裾野を広げられないこと である。2 点目は,長期的な取組でないため,人材育成までは図れないことである。これらは,
教員から見た科学の甲子園ジュニアの課題として指摘できる。
科学の甲子園ジュニアの参加に至らなかった経緯では,「自身が興味を抱かなかった」教員が 23%,「所属校の生徒に合っていないと判断した」教員が 19%存在していた(表 3)。上述した課 題は,このような経緯に関係している可能性がある。表 14や表 15には代表的なテキストデー タとして記さなかったが,「授業で増やす」「今の学校教育の中でもできるとは思います」とい った記述も見受けられた。【参加への抵抗感】の一つだといえる。
5.科学の甲子園ジュニアへの提言
これまでに述べた実態を踏まえて,事業を発展させるための案について,執筆者らの見解を 4 点述べる。なお,永澤(2015)は「この事業の主体は科学技術振興機構(JST)であるが,各都 道府県の教育委員会にご協力いただき,県下の公立校・私立校・国立校の生徒にも出場の機会 を与えられるよう,その選抜の方法や手順,選考規準についてはすべてお任せした」と述べて いる。本研究は代表選考会に関する実態を明らかにしたものであるため,以下の提言は都道府 県レベルの予選の主催者や学校教員を主な対象とする。ただし,多くの回答で述べられていた 教員の多忙化については,本稿では言及しない。
1 点目は,出題内容の改善である。科学の甲子園ジュニアは,冒頭で記載した才能教育Ⅱ-a に相当すると考えられる。理数好きな子どもを育むことだけが,目的ではないのである。また,
永澤(2015)は,「問題が難しければ,翌年から応募者が減るかもしれないし,理数科目の印象 が悪くなってしまうだろう。しかし選抜のためには,多少レベルの高い問題をつくる必要があ る」と述べている。したがって,高等学校以降に学習する内容を題材として扱ったとしても,
解答に必要な知識等は中学校第 2 学年の夏季休業前までに学習した内容に限定すべきである。
その他の必要な知識等は前文等で補足し,科学的な思考力等を生かせば解答できるような問題 を作成したらよいのではないか。未習による不利な状況を改善すれば,問題の難易度が高すぎ るという理由で,参加を見送る可能性が低くなると考える。
2 点目は,事業についての丁寧な周知活動である。具体的に何をしているか把握していない 以上,取組を具体的に説明する必要がある。これまでにも報告は行っているため(例えば,大
分県教育委員会,2014),研修等で時間をとって説明した方が良いと捉えられる。また,人材育 成につながらないという違和感を抱く教員もいたため,目的[2]の文言だけでなく,根本である 才能教育における,本事業での位置付け等を説明したよいのではないか。
3 点目は,指導経験者との知見等の共有である。指導の見通しがつかない教員に対して,本 稿等で明らかになった実態だけではなく,実際に指導した教員から具体的な指導方法や指導に ついての考え方を聞ける機会を設ければよいと考える。参加に至った経緯の半数弱が,学校の 引継ぎや周囲からの勧誘といった(表 4),自主的なものではなかった。一方で,指導の楽しさ や今後指導を行う意欲については,肯定的な教員が 7 割以上であった(表 11,表 12)。指導を 通じて,科学の甲子園ジュニアの良さを見出した教員がいると捉えられる。その教員から,自 身が見出した科学の甲子園ジュニアの教育的価値を語ってもらうのもよいのではないか。
4 点目は,学校外での学習による効果の示唆である。小林(2001)は「青少年のための科学の 祭典」に出展した理科教員への質問紙調査によって,「理科教員は科学の祭典を学校教育とは独 立させた,原体験をはじめとするさまざまな科学に対する体験を拡大する場として高く評価し ていることが明らかとなった」と述べている。また,三次・小泉(2008)は学会での児童・生 徒のポスター発表について,発表会の目的を達成できたと伺える感想を,児童生徒や引率教員 から寄せられたと報告している。一例として「自分たちの発表に対してたくさんのアドバイス をもらうことができてよかったと思う」「他の人たちの発表のレベルの高さに驚いた」という感 想が挙げられる。科学の甲子園ジュニアについても,室田・三次(2019)は「科学に関するハ イレベルな問題を他のチームを意識しながら協力して解決するという,授業では得られにくい 経験をさせるねらい」を見通している指導経験者がいたと報告している。本事業に関わらず,
学校外での発展的な学習を促進したいのであれば,授業等の学校内だけでは経験できないと見 込まれる点も触れたり,学校外での学習を想像できるように意識を変容させたりしたらよいの ではないか。
6.研究のまとめと今後の課題
本稿の目的は,学校現場における科学の甲子園ジュニアの実態を解明することである。よっ て,指導未経験者と指導経験者の双方を対象とした質問紙調査を行った。具体的には大分市と 別府市にある国公立中学校に所属する理科教員に質問票を郵送した。39 校中 34 校の 100 名分 を回収でき,学校を単位とした回収率は 87%となった。なお,回収できた教員の 80%が指導未経 験者,20%が指導経験者であった。分析によって得られた知見は,次の 5 点である。
(1)指導未経験者の多くは科学の甲子園ジュニ アという名称やチームで参加することは知っ ていた。一方で具体的な競技の形式や内容,実際の様子,指導内容まで把握できている教員は 多くない。
(2)指導経験者が参加する生徒の決定には,教員による呼び出しや他の生徒からの勧誘をさせ ることが多かった。指導には競技説明や過去に出題された問題の練習が大半であった。練習す る時間の確保が困難である教員が見受けられた。
(3)指導未経験者と指導経験者ともに科学の甲子園ジュニアの指導は難しいという印象を抱 いている教員が多かった。全国大会で出題された問題しか公開されていないことや授業とは扱 う内容が異なること,自分の専門以外の内容を指導する場面があることが要因として考えられ
る。
(4)科学の甲子園ジュニアを新しい取組として,普段の職務に上乗せすることは,教員にとっ ては負担が大きいといえる。一方で,科学部がない中学校も多いため,必ずしも部活動として 活動できるとは限らない。
(5)指導をして科学の甲子園ジュニアによる効果を実感した教員もいた。一方で,公立の中学 生には参加しづらい活動であると感じていたり,科学の甲子園ジュニアの目的と実施している 活動が一致していないと感じていたりする教員もいた。
科学の甲子園ジュニアは中学生を対象とした事業ではあるが,教員もこの事業に関わる機会 がある。科学の甲子園ジュニアへの理解や指導の見通しを教員が得られれば,参加校が増え,
事業が盛んになり,生徒もより切磋琢磨し合えると考えている。科学の甲子園ジュニアへの理 解を得るには,出題内容や周知活動の見直しを考慮するべきであろう。そして,指導の見通し を得るには,指導経験者との知見等の共有を行う必要がある。さらに,科学の甲子園ジュニア に留まらず,学校外での発展的な学習を促すのであれば,学校外による学習によって見込まれ る効果を示す機会があってもよい。
科学技術系の才能教育は,社会の困難な課題を解決できる人材を育成するきっかけになり得 る。それには,中学校理科教員の関わりも求められている。本稿は,現場教員における才能教 育への参画の実態を明らかにし,提言を述べたものである。
今後は大分市や別府市以外の異なる地域,特に複数の学校で都道府県代表チームを編成して いる地域を調査対象とした場合,数学教員を調査対象とした場合等を検討する必要があると考 えられる。
謝辞
大分市と別府市の国公立中学校に所属する理科教員の方々には質問紙調査に協力いただいた。
また,大分県教育庁義務教育課指導主事兼課長補佐の舟越宣之氏には,大分県大会に関する資 料について提供いただいた。記して謝意を表する。
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The Realities of the Japan Junior High School Science Championships, from the Perspective of Lower Secondary School Science Teachers with and Without Coaching Experience in Oita City and Beppu City
Tokuji MITSUGI and Kazuaki MUROTA
Abstract
To clarify the realities of how the Japan Junior High School Science Championships impact the school environment, we conducted a questionnaire survey of science teachers employed at national and other public lower secondary schools in Oita City and Beppu City. Teachers who had never coached students for the competition accounted for 80% of the respondents, and teachers who had such coaching experience accounted for 20%. The results of the analysis revealed the following points. (1) Many teachers without coaching experience knew the name of the competition and were aware of the fact that students participate in teams, but few of them had concrete knowledge of the substance of the competition’s events.
(2) The majority of the coaching consisted of explaining the events and practicing questions from past competitions. (3) Many teachers, both those with and without coaching experience, held the impression that coaching students for the Japan Junior High School Science Championships was difficult. (4) Respondents suggested that imposing preparation for the Japan Junior High School Science Championships as a new effort in addition to ordinary duties places a large burden on teachers. (5) Some teachers felt that the competition was difficult for public lower secondary school students to participate in and that the purpose of the competition did not match the activities being carried out. Based on these realities, we made recommendations that include a review of the content of the questions and how the competition had been publicized; the sharing of knowledge and other important information with teachers who have coaching experience; and the presentation of the results anticipated from out-of-school enrichment programs.
【Key words】 lower secondary school, science teacher, science and technology contest, questionnaire