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夜尿,吃音等の症状を示す一情緒障害児の遊戯療法

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夜尿,吃音等の症状を示す一情緒障害児の遊戯療法

その他のタイトル Playtherapy for an Emotionally Disturbed Child with Symptoms of Enuresis Nocturna and

Stuttering : A Case Study

著者 石川 啓

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 23

号 1

ページ 125‑140

発行年 1991‑09‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00022591

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関西大学『社会学部紀要」第23巻第1 1991, pp.  125140  ISSN 02876817 

夜尿,吃音等の症状を示す一情緒障害児の遊戯療法*

11 

Playtherapy for An Emotionally Disturbed Child with Symptoms  of Enuresis Noctuma and Stuttering : A Case Study 

Akira ISHIKAWA  Abstract 

This  article  is  a report  of  the treatment,  by means of  both  individual‑

and group‑play therapy,  administered to an emotionally disturbed  child  with  the  symptoms  of  enuresis  nocturna  and stuttering.  The  client  is  a male  child  (five  and eight  months old)  who has  been  reared  in  a family  consisting  of  his  parents,  grand parents,  and  his  aunt  together with  his  elder  sister. 

The way of  rearing  this  infant  by these adult  family  members was quite  different. 

Since  the  child  was  liable  to  ill  until  he  was 4 years  old,  the grand  parents and his  aunt  were  indulgent  to the  child.  While  his  father was  indifferent  to his  training,  his  mother  started to  severely discipline  the  child  after  he  became to 4 years old.  From  that  time  on,  a disagreement  of  opinions  as  to the  rearing method among his  mother and three "substitute  mothers" became very evident. 

His  stuttering became  severe,  and he  wet  his  bed almost  every night.  The family  had  not  given  him  toilet  training.  When the  child  entered to a  kindergarden at  the  age  of  4 and 8 months  years,  he  was  completely  isolated  in  the  ki nde rga rden. 

Since  the  symptoms were  conjectured as  purely psychogenic  and were  considered  to be  caused mental  tension and frustration  based on a careful  study of the  case  history,  we  decided  to  administer  psychotherapy. to  the  child  (once  in  a week)  and counseling  to his  mother  (once  in  two weeks). 

After about  one year of  psychotherapy  (play therapy)  and  counseling,  the stuttering disappeared,  the enuresis nocturna  has  significantly  improved  and  the  client  has  developed an ability  for  self  display.  The  cause of onset of the  symptoms,  the  role  of  aggression  for the  ego‑development,  and the problems  of toilet  training  by means of  instrumental  conditioning  are discussed. 

Key words : enuresis  nocturna,  stuttering,  emotionally  disturbed  child,  psychotherapy,  playtherapy,  groupplaytherapy,  psychogenic,  overprotection,  over‑medding,  mental tension, frustration, frustrationaggression hypothesis,  catharsis,  rep ression, strengthening  of ego, toilet training method, instrumental  condition ing, Kimmel method, social ability 

抄 録

夜尿,吃音等の症状を示す情緒障害児 (58月の男児)に実施した39回の遊戯療法の過程とその 結果についての報告である。患児は,母親の強迫的な性格,厳しいしつけ方,養育態度が異なる同居 の 5人の成人(父母,祖父母,叔母)による過保護,過干渉などの環境要因がからみあって,情緒障 害をきたしたものと考えられ,夜尿と吃音は,患者の精神的緊張や欲求不満に帰因する症状であると

*注)遊戯療法の施行においては,平成 2年度卒業生の亀山和夫君の献身的な協力があり,また原稿作成に あたっては,高橋雅春,高橋依子両先生から御助言を戴いた。ここに記して謝意を表します。

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関西大学『社会学部紀要』第23巻第1

推測された事例である。 したがって, これらの症状の除去を目的に患者に対して週1回の心理療法 と,母親に対する2週に1回のカウンセリングを行うことにした。毎週50分の個別遊戯療法を6カ月 (20回)行ったところ,プレイルームにおける患者の行動は,消極的,受動的なものから,抑圧して きた感情を発散し,攻撃行動を経て,自己主張をするようになり,また自信と共に協調性も芽生えて きた。これに伴って,発語の量も多くなり,プレイルーム内での吃音に対する抵抗は消失した。また 母親による夜間の排尿訓練を続けさせたところ,夜尿も約 3カ月後に殆ど消失した。しかし瀕尿は持 続しているようであったので,この時点から母親の介助による夜間の排尿訓練をやめて,代わりに膀 脱訓練(キンメル法)を始めさせ排尿の自立を一層促進することにした。患児の場合の夜尿は,二次 性の夜尿であり,治療はこの段階から「自発性対罪悪感」の段階への移行を促進するために, 21回目 から,集団遊戯療法を行うことにした。集団遊戯療法を開始した当初は「引っ込み思案」の状態で,

他児との交流は全く希薄であったが,集団遊戯療法を開始して約 3カ月が過ぎた頃から, ようやく Th. を煤介としないで他児と交流するようになった。患児は他児や他の Thにも話しかけるように なり,縄とびなど自分が得意とする遊びでは自己主張も行うようになった。また積極的に集団の中へ 入り込み,集団のなかでも安定してきた。この頃から,患児はプレイルームでの行動を徐々に家庭,

幼稚園の順に汎化させていった。吃音は治癒し,よほど緊張する場合を除いては消失した。しかし夜 尿は完全には消失しなかった。発症の原因,自我の発達における攻撃性の役割,道具的条件づけによ る排尿訓練の問題点について考察した。

キーワード:夜尿症,吃音,情緒障害児,心理療法,遊戯療法,集団遊戯療法,心因性,過保護,過 干渉,精神的緊張,欲求不満,欲求不満ー攻撃説,カタルシス,抑圧,自我の強化,排 尿訓練法,道具的条件づけ,キンメル法,社会的能力

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夜尿,吃音等の症状を示すー情緒障害児の遊戯療法(石川)

事例の概要

クライエントは,夜尿,吃音等の症状を示す情緒障害児で,母親の強迫的な性格,厳しいしつ け方,養育態度が異なる同居の5人の成人(父母,祖父母,叔母)による過保護,過干渉などの 環境要因がからみあって,情緒障害をきたしたものと考えられ,夜尿と吃音は,患児の精神的緊 張や欲求不満に帰因する症状であると推測された事例である。

〔症児) 来所当時幼稚園年中組の男児 58 知能指数 I.  Q.=106  M. A.=6: 0  (1987年新版田中ピネー式知能検査)

〔主訴) 夜尿,殆ど毎晩夜尿する。頻尿,幼稚園では頻繁にトイレに行く。

吃音,幼稚稚の休み明けや,母親の機嫌の悪い時にひどくなる。

引っ込み思案,幼稚園で他児の前では何も出来ずに孤立している。

〔家族) 父(会社員),母(パート・タイマー), 叔母(父の姉),父方の祖父母, 患児の姉の 6人家族(なお治療期間中に祖父が結核のため入院し,治療終了時も入院療養中であ った)。母親によると,家族成員の状態は次の通りであった。

父親 (41オ)一子供に対して放任的で,一緒に遊ぶことはほとんどない。

叔母 (56オ)ーお手伝いさん役で主に家事を担当している。

祖父 (76オ)一男の子の孫である患児を溺愛している(治療開始後2カ月ほど経過し た頃,結核のため入院し,以後入院療養中である)。

祖母 (74オ)一祖父と同様,患児を溺愛しており,患児が一番甘えられる人。

(10オ)一引っ込み思案な小学4年生の女児。

筆者の母親に対する印象は,次の通りであった。

母親 (36オ)一神経質そうな顔立ちでやせており,感情を顔にすぐ出すクイプで,過 度に几帳面で完全癖がある。例えば,初回の面接時,テープルカバー がテープルにきちんと掛けられていないとイライラしてた様子で,そ れを揃えたりしていた。

(生育史および問題歴)

妊娠中および周産期において特記事項なし。

患児は乳幼児期 (1 2オ)から,大病はなかったが発熱,下痢等が多く病弱であっ 3オになっても病気をしがちであり, 家庭に常時3人以上の成人(祖父母,叔 母,母親)がいたので,患児は大変過保護に育てられた。

母親は仕事で外出することが多かったので,昼間は育児を主に祖母と叔母にまかせて

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関西大学『社会学部紀要」第23巻第1 おくことが多かった。

その頃までは,家族の全員が患児をただ可愛がるというだけで養育態度の一致が見ら れたが,患児が4オになって健康になり,病気の心配が無くなったので母親は患児が 過保護になりすぎていると思い,着衣,食事,玩具の整理・整頓などを患児が自分で するように厳しくしつけ始めた。そして母親の言いつけが守れない時は,患児を厳し く叱りつけた。その際,いつも祖父母は母親が患児の年令に相応する以上の要求をし ていると批判し,特に祖父母と母親との間で育児に関する意見の不一致が目立つよう になった。

母親としては患児の姉が,このような家庭環境のもとで「引っ込み思案な子」に育っ たのだと思い,患児は男子であるので,もっと強い子に育てねばならないと思い厳し いしつけ方は変えなかった。 410カ月になった時,患児は幼稚園の年中組に入園し た。その後吃音が目立つようになり(発吃は4オ時), また毎晩のように夜尿するよ うになった。幼稚園の入園前も夜尿はあったが毎晩ではなかった。吃音や夜尿は夏休 み,冬休み明けに特にひどくなった。吃音は母親の機嫌が悪い時に激しくなる傾向が ある。幼稚園では,頻繁にトイレに行っているようで,また他児との交流を避け,引 っ込み思案の状態であり何か新しい遊戯をする時は,いつも「できない」といって参 加していない。

〔来所時面接における所見)

患児の外見は,おとなしい感じであるが,表情は固かった。

筆者の簡単な質問に答える時は,母親の顔色を窺ってから答えた。

吃音のタイプは,間代性吃音で,伸発性や難発性吃音は認められなかった。

母親は,上述のとおり,やせ気味の神経質そうな外見で,前述のテーブルクロスの例 からも明らかなように強迫的で,過度に几帳面,完全癖,また勝ち気なところが散見 された。患児の育児に関して,母親の意図と母親が実際に行ってきた行動には差異が 大きいように思われた。例えば,患児の夜尿に困惑していると訴えながら,これまで に患児に対して適切な排尿訓練を行っておらず, 「おしめ」をさせている状態であっ た。夜尿を治癒させたいという母親の意欲は強いように思われたが,患児は吃音は大 変気にしているが,夜尿はあまり気にしていないとのことであった。祖母や叔母は小 学校に入学する迄は,子供の夜尿は仕方がないと言っているとのことであった。患児 の育児について,母親は自分が全面的に責任を持とうとし,患児と接している時は患 児を厳しくしつけていたが, 日常の患児の面倒は祖母や叔母に任かせているようであ

った。

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夜尿,吃音等の症状を示すー情緒障害児の遊戯療法(石川)

I

l

治 療 方 針

来所時における患児の母親との面接の結果,患児の症状(夜尿と吃音)は,いづれも器質的な 原因によるものでなく,心理的な原因によるものであることが強く示唆された。すなわち,患児 の夜尿は4オ時前半にはほぼ消失して,排尿の自立が完成しかけていたが,その後,母親が厳し いしつけを始め,また養育に関して,母親と祖父母との意見の不一致が起こった頃から再発し,

さらに幼稚園へ入園後再びひどくなっているところから,獲得性,二次性のものと考えられる。

吃音はその器質的原因の確たる証拠がないうえに,夜尿児に吃音を伴うことも多く,患児の場合 の吃音は,母親の機嫌が悪い時にひどくなると母親自身が認めていることからも極めて心因的で ある。また幼稚園の行動が引っ込み思案で孤立していることは,心理的不適応であることは言う までもない。

そこで,これらの症状の除去と患児の社会的,対人的能力を高めることを意図して心理療法を 行うことにした。

患児は,母親の強迫的性格,厳しいしつけ方,養育態度が異なる同居の5人の成人(父母,祖 父母,叔母),過保護, 過干渉などの環境要因がからみあって, 情緒障害をきたしていると考え られ,夜尿と吃音は,患児の精神的緊張や欲求不満に帰因する症状であると推論されたので,次 のような治療方針を決定した。

1)  患児に週1回の個別遊戯療法を行い,欲求不満や精神的緊張を解消させで情緒を安定させ る。同時に,セルフエステームを高め,自我を強化する。

2)  2週に1回,母親にカウンセリングを行い,母親が自己を理解し,育児態度や患児への環 境的圧力となっている家庭の環境を調整するように働きかける。また母親に患児へのおし めの着用をやめさせ,排尿訓練法や患児の吃音に対する対処法を指導する。

3)  ある程度,患児のセルフエステームが高まり,さらに症状が軽快した段階で,それを完全 なものにすると共に社会的能力を高めるために集団遊戯療法を行う。

なお,吃音は心因性のものと考えられたので,患児の年令も考慮して,発声,発音の訓 練等による吃音の矯正は行わないことにした。

(母親に対する指導,助言)

夜尿と吃音に関して,母親に対する緊急な指導を要すると判断したので,初回面接の後,下記 のような指導を母親に行った。

排尿,摂水訓練

1)  夜間の「おしめ」の着用をやめる。

2)  患児の午後7時以降の飲水を禁止する。

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関西大学『社会学部紀要』第23巻第1

3)  夜間一定時刻に覚醒排尿させる。明け方に近いほうが望ましいが,母親の通常の就寝時で ある午後12時でもよい。

4)  夜尿失敗の有無を記録する。

吃音に対する対応

1)  患児の嫌う緊張場面では人前に押し出したり,発言を強制しない。

2)  正しい発声や発語をした時は,細かに笑顔や言葉でほめる。

3)  手本になる喋り方をそれとなく聞かせる。

4)  吃音には苛立った気配を示さない。

5)  どもる言葉は無視し注意しない。

6)  早口で表現しようとする時は,細分整理して応対してやる。

心理療法の経過

患児に対して毎週1 50分の遊戯療法をプレイルームで行い,母親に対しては, 2週に1 30分のカウンセリングを行った。治療は 1年間実施し,母子共に筆者が担当した。

(治療期間) 平成元年2月〜平成二年2月,計39 (H県内の某福祉センクーにて)。

1 (1 4回)導入とラポールの形成

この時期は患児を治療場面に導入し, Thとのラポールを形成した時期である。

初回のプレイルームの入室の際,母子分離不安を示さないが,緊張した固い表情であった。 Th が「ここでは思ったように,好きなようにしてもかまわないよ』と言っても,無表情なまま,扉 にもたれて部屋の中をぼんやり眺めていた。 Thは積極的に働きかけはしないが,見守るように していると,後半になって黒板に近づき,なぐり書きを始めた。 Thが傍に行って微笑しながら 患児の行動を受容していると,やがて「123」と数字を書き, Thの顔を見て『いっ・

いーち』『にっ・に一い』『さっ• さーん』と読んだ。 Thが『数字をかいたのだね」言とうと,

平仮名を書き出した。黒板の余白がなくなるほど文字や数字を書いて,黒板消しで消す時,左上 隅から右下隅まで非常に丁寧に強迫的に消していった。

2 4回目は室内を探索するように,遊具を順次触れていったが,遊具のレバー押しやボクン 押しなどの遊びを好んだ。患児は Thに直接言葉で要求することはなかった。 Thは患児の行動 を批判することなく見守り,時には取りにくい遊具を取ったり,動かしにくいレバーを動かすな ど,必要な援助を行うことによって, Thと患児のラポールが次第に形成されていった。

母親との面接と指導

遊戯療法 4回目の時の母親面接で,寝る時に未だに患児が「おしめ」をつけていることが分っ

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夜尿,吃音等の症状を示す一情緒障害児の遊戯療法(石川)

たので, 「おしめ」はやめて,夜間の摂水制限と深夜の覚醒排尿の実行を強く勧め, また母親の 治療への参加意識を強めるよう説得した。殆ど毎晩夜尿するので, 「おしめは離せない」と言う ので,このやり方は3カ月続けるならば87彩の治癒率が報告されている方法であるので,根気よ く続ける必要があること,さらに「おしめ」をつけさせることは,患児に劣等感を抱かせること になり,患児の発育に良くないと説得した。

その際の母親の反応は,訓練の実行を約束したが,『100彩治る方法でないと……』という跨躇 があり,寝具の洗濯をして貰っている患児の叔母に対する遠慮もあるようであった。吃音は前に 説明した対処法を続けて行けば,自然に良くなっていくと説明した。

全般的な問題として,患児の育児,教育を主に母親の責任で行うことはまことに結構なことで あるが, そのことを患児の父親, 祖父母, 叔母とよく話し合い, 納得してもらう必要のあるこ と,患児の前で大人の間の意見の相違を見せないようにすること,時間の許す限り患児の面倒を 自分でみること,患児をあまり叱り過ぎないようにすること,患児に何でも完全,完璧を要求し ないこと,子供の学習には,罰よりも褒めるほうが効果があることなどを話した。

2 (5 11回)感情の発散

この時期は Thの受容的態度によって,患児と Thの間の二者関係が形成され,それによっ てこれまで抑圧してきた感情を発散した時期である。

患児は Thに言葉で直接要求を表明することはないが,『何をしようかな』と言って, Th 反応をうかがうようになった。 さらに患児の行動は, 導入期とは一変して, 非常に活動的にな

り,攻撃的な行動も目立つようになった。初期には玩具を対象にカタルシスを行っていたが,後 期には, Thとの交流と身体的接触を求め始めるようになった。

5回目に患児は,「ぬり絵」をしている時,枠から線を絶対にはみださないように丁寧に描き,

また実物の色と同じ色でないと承知しなかった。また黒板にテレビ番組の登場人物であるロボラ イダーとオニワトリを描き,ロボライダーは描き終えると一旦消してしまったが,すぐに『ロボ ライダーは強いから大丈夫』といって描き直し,さらに手に持っていた剣を非常に大きく書き加 ぇ,オニワトリを攻撃するような形にした。 6回目から, Thの顔色を窺うような仕種がなくな り,戸棚から色々な遊具を一人で取り出して叩いたりしていたが,その中でアンパンマンのパン チキックが一番気に入ったようで長期間,叩いたり,蹴ったりしていた。 7回目には,アンパン マンの空気を抜いてしまい, 起き上がらないようになると, 「やった一,勝った』と言って喜ん 8回目では,空気を抜いてしまったアンパンマンをクイヤチュープの中に入れてしまい,上 から蓋をして「いらないものは,ここに入れる」と言って手を合わせた。 9回目は最もアンパン マンヘの攻撃が激しい時で,蹴る,投げる,砂に埋める等アンパンマンを攻撃している時は夢中 になり, Thの存在も無視して没頭していた。さらに輪投げの台をひっくり返したり,あたりの 遊具を蹴飛ばす等の粗暴な行動が目立ち,セッションの終了を告げられると,空気を抜いたアン

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関西大学「社会学部紀要」第23巻第1

パンマンに,再び空気を入れて復元し,戸棚になおして他児に触れられないようにして帰って行 った。これは遊戯療法中によく見られる死と再生の儀式であると考えられる。 9回目以降はアン パンマンに対する攻撃は殆ど無くなり,たまに叩いたりすることはあっても,それまでのような 執拗なものではなかった。 10回目では,患児は遊具のスクークーに乗ってThに対して,初めは パンチキックに向かうような勢いで突進してきたが,結局はThに軽く手を触れるだけに終わっ た。しかしこれまでの一人遊びや Thとの平行遊びではなく, Thとの交流を求め始めたのであ 11回目には, Thとキャチボールをした。患児はThの投げたボールを思いきり蹴ったり,

打ったりした。自分からThに話しかけるようになり,その場合吃音はかなり減少するようにな った。

母親との面接と指導

夜尿は,母親の話によると,遊戯療法6回目の時点で週に2回夜尿をしない日があり,遊戯療 11回目の時点では,完全に夜尿をしない週もあるとのことであった。幼稚園での頻尿は持続し ているようなので, その治療と排尿の自立を完全にするため, これまでの摂水訓練は続ける一 方,母親の介助による夜間の覚醒排尿はやめて,キンメル法による膀脱訓練を開始するように指 導した。すなわち膀脱括約筋の排尿閾値を高めるための排尿の我慢訓練をさせることにした。す なわち最初5分間の我慢から始めて, 5回実行できれば10分間に上げ,これを繰り返して最高30 分まで我慢できるようになるまで訓練するように指示した。この時の母親の反応は,夜尿の消失 に励まされてか,訓練の実行に意欲的であった。この時期に,患児の家庭の育児環境にかなり大 きな変化があった。すなわち,母親の舅にあたる患児の祖父が結核のため入院し,姑である患児 の祖母がその付き添いで病院へ行くことが多くなったため,家庭に常時いるのは患児の叔母だけ になり,母親にすれば,口うるさい舅,姑がいなくなったので,自分の意志を通しやすくなり,

母親自身の精神的緊張も和らいでいるようであった。

家庭での患児の吃音に関しては,幼稚園の春休み明け,年長組に進級してからひどくなったと のことであったので,それは一時的なものと思われるので,根気よく前に指示したやり方で対応 するように指導した。

3 (12 20回)セルフエステームの向上

この時期は, Thとの二者関係が確立し,深まった段階で,患児はThとの交流を楽しみなが ら活動的な遊びを行うことが多くなった。患児が遊びをリードし, Thに直接言葉で指示して自 己主張をはっきり行うようになり,これに伴って発語の量も多くなり,プレイルーム内では吃音 は消失した。

12回目にキャッチボールをするときから, Thは新しいルールを導入した。ボールを箱に入れ るとかリングの中を通るように投げるようにした。その目的は,目標を設定して,患児に目標を

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夜尿,吃音等の症状を示すー情緒障害児の遊戯療法(石川)

達成することの喜びを味わあせ,目標の達成によって自信をつけさせることであった。その時,

患児は無表情に淡々と行っていたが, 13回目に行った時は, 「やった一」と身体全体を使って喜 びを表現した。 16回目の前半は,患児とテレビ漫画の主題歌を集めたカセットテープを聞いた。

患児は Thの側で横になりながら,『次は〜の歌が入っているねんで』等ニコニコと Thに話し ていた。 15分ほどそうしていたが,患児は退屈したのか,プレイルームを走り回り,アンパンマ ンのパンチキックを攻撃し始めたので, 『相撲とろうか』と誘うと,すぐに乗ってきた。患児は 非常に元気よく Thに向かってきて,足がふらついてしまうほど疲れても,いつまでも相撲をと りたがりセッションの終了まで相撲を続けた。そして勝負にこだわり, 自分が勝つと『やった ー,勝った一」と喜び, Thが患児を持ち上げて投げたりすると『先生,相撲はそんなんせーへ んねんで』と言って,負けを認めようとはしなかった。黒板に1勝を 1点として,患児が記録し 始め, 『先生, 10点になったら, 勝ちゃで」と,患児自身がルールを設定して,遊びを楽しむよ うになった。この時始めてThのような大人との接触において,自信と喜びを体験したようであ った。この頃,患児の吃音はプレイルーム内では消失した。 18回目に患児が『僕,おしっこがし たい』と言ってきたので, 『もう少し我慢してからしよう」と言って遊びを続けたが, 我慢する ことなどは初めてのことのようで, 5分もしない内に再度「おしっこがしたい』と言うので, イレヘ連れて行こうとすると『お母さんとじゃないとできない」と慌てた。しかし結局, Th 二人でトイレに行き, トイレに入ってからも『先生も横」と一緒にいてもらおうとした。家庭で の排尿訓練や膀脱訓練の不完全さがうかがわれた。

母親との面接と指導

母親に膀脱訓練の様子を尋ねたところ, 『夜尿がほぼ無くなったので一安心しており, おしっ こを我慢させるのは身体によくないと思ってやらなかった』という答えであった。そして夜間の 覚醒排尿を続けているとのことであった。母親の膀脱訓練に対する動機の低さは,母親自身が患 児からの依存を持続させることで,家庭内の姑や小姑(患児の叔母)からの患児への干渉を排除 して,母子関係を守ろうとする動機が顕著なためであると思われた。そこで子供の養育には家族 全員の理解と協力が必要であること,排尿の自立は子供の発達に必須のことであって今確実なも のにしておかねばならないこと,そのために膀脱訓練が必要であり,それは身体の健康に害がな いこと,昼間に母親自身が膀脱訓練が出来ない時は,患児の祖母や叔母にして貰うようにするこ となどについて話をして,指導した。患児の祖母,叔母による過干渉は続いている様子で,母親 はその干渉を排除することのみ関心があるようであった。

個人遊戯療法の経過と結果

毎週50分の個別遊戯療法を6カ月 (20回)行ったところ,プレイルームにおける患児の行動は,

消極的,受動的なものから,抑圧してきた感情を発散し,攻撃行動を経て,自己主張をするよう

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関西大学『社会学部紀要』第23巻第1

になり,また自信と共に協調性も芽生えてきた。これに伴って,発語の量も多くなり,プレイル ーム内での吃音に対する抵抗は消失した。また母親による夜間の排尿訓練を続けさせたところ,

夜尿も約3カ月後に殆ど消失した。しかし瀕尿は持続しているようであったので,この時点から 母親の介助による夜間の排尿訓練をやめて,代わりに膀脱訓練(キンメル法)を始めさせ排尿の

自立を一層促進することにした。

患児の場合の夜尿は,二次性の夜尿であり,エリクソンのいう「自律性対恥と疑惑」の段階へ の固着であると考えられ,治療はこの段階から「自発性対罪悪感」の段階への移行を促進するた めに, 21回目から,集団遊戯療法を行うことにした。

集団遊戯療法の目的は,筆者 (Th.)とのつながりを媒介にして, 患児が経験してきた幼稚園 児との関係とは異なる同年代の他児との関係を経験させることによって,患児の社会性,自発性 を発達させ,新たな対人関係で養った自信や協調性を家庭や幼稚園といった現実場面に汎化させ ようとするものであった。

4 (21 30回)集団遊戯療法,他児との関わり

プレイルーム内での吃音, 家庭での夜尿がほぼ消失したので, Thとの間で形成されたつなが りを基盤にして,患児の社会的,対人関係能力を高めるために集団遊戯療法を行うことにした。

そのために幼稚園での集団生活に問題のある4人に実施中の集団療法 (6カ月前から開始してい た開放集団)に参加させた。

この時期は集団志向段階であり, 患児の他児への自発的な働きかけはみられなかった。 しか し,他の Thに対しては,他児の悪口を告げ,優越欲求,承認欲求を満たすという型での交流が 認められた。

21回目(集団遊戯療法初回)において,患児は入口の所で他児を眺めているだけで何もしよう としなかった。筆者とのみ遊ぼうとして筆者(}.J傍を離れようとしなかった。筆者と患児はキャッ チボールをした。他児が傍に来たので,筆者が誘って他児がキャッチボールに加わると,患児は すぐにキャッチボールをやめて,筆者の横に立ちつくしていた。 22回目 Cl全員で「黒髪危機一 発」や「双六」などのゲームをした。患児は筆者の横に座ってゲームに参加したが,勝敗ばかり 気にしてゲームを楽しむという様子は見られなかった。 25回目ぐらいになると, ゲームに勝つ と,『僕,うまいやろう』『すごいやろう』と筆者に自慢して報告し,負けると途端に困ったよう な表t青になり,『暑い』『疲れた』『飽きた』などと言って,ゲームをやめて,一人遊びをするか,

筆者に相撲をもちかけることが多かった。双六で他児が目をごまかして進むと,その子には言わ ずに筆者に『あの子はずるい,やめさせて』と言いつけた。他児に直接話しかけることは全くな かったが,筆者と他のThには,他児が自分より劣っていることを告げて盛んに自己主張を行っ ていた。 26回目,患児は始めて自分から幼稚園での出来事を筆者に話した。『今日,折り紙でイ

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夜尿,吃音等の症状を示すー情緒障害児の遊戯療法(石川)

ルカ作ってん。青と黒とな,白の3つで作ってん。 白がおなかでね。青が海やねん』。筆者が相 撲について尋ねると, 『僕ね,相撲負けてばっかりやねん』, 『本当に負けてるねん』と答えた。

28回目から,患児は他児との関係で変化が現われてきた。それまでは,他児に直接話しかけるこ とはなく,他児の悪口を筆者や他のThに告げるのみであったが,この時から,他児に直接言葉 をかけて, 自分を主張するようになった。この時, Cl全員が双六を行っていた。患者はサイコ ロを輪の中に投げず,大きく外に投げ,それを走って見に行くということを繰り返していた。他 児がそれに関心を示して,一緒に走っていくようになると,最初は他児を無視していたが,患児 は他児に対して『見るなや』と唐接文句を言い始めた。 29回目の前に,筆者は患児の幼稚園での 行動を観察するために,患児の幼稚園へ見学に行った。その時の患児の行動は次のようである。

幼稚園での観察記録

始業前,園児達がはしゃいでいる時も患児は自分の席に着席したままで,一人でじっと座って いた。先生が出席を取った時は,大きな声で『はい』と返事した。先生のヒ゜アノの伴奏に合わせ て,全員が教室内をスキップして回った。他児は楽しそうな表情で回っていたが,患児は緊張し た表情で誰とも視線を合わせずに一周して席についた。先生の提案で,教室内をスキップして一 周してから,誰かにタッチして,タッチされた子をそれを繰り返すゲームが始まった。患児にタ

ッチする子はいなかった。先生が『まだやってない人は手をあげて」と言って,手を挙げた子を 立たせたが, 患児は手を挙げなかった。立っている子が二三人になった時, ようやく立ち上が り,タッチをして貰い,緊張して回り終えたが,誰にもタッチ出来ずに自分の席に戻ってきて泣 きそうな表情をした。先生にタッチすることで,そのゲームは続けられたが,その後患児は沈み 込んでしまって,全員が歌を歌う場面でも,うつむいて参加しなかった。その後,庭に出て,縄 飛びを何回連続して飛べるかの競争が,男女に分かれて始まった。患児は50回ほどで失敗してし

まって,また沈みこんでいた。

幼稚園の先生の観察

吃音は, 4月に年長組に進級した頃は多発しており,また夏休み明けにも見られたが最近では 殆どない。吃音を気にして歌を歌わないようなことはない。瀕尿も気になるほどではない。他児 とは交流せず,いつも孤立している。失敗を大変気にする子供であるが,足が速く徒競争などに は,積極的に参加するようになってきた。

母親との面接と指導

母親によると,患児の夜尿は一旦消失していたが,幼稚園の夏休み明けに再発したので,夜間 に起こして排尿させるようにしている。膀脱訓練は昼間は自分が仕事で外出しているので実行が 難しい。吃音は殆ど見られないようになった。家庭内の患児は,脱いだ服をハンガーに掛けない

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関西大学『社会学部紀要』第23巻第1

など言いつけを守らないようになり,祖母に『ババア』など汚い言葉を言ったり,テープルの上 に足を乗せるなど行儀の悪い行動が目立つようになったとのことであった。それに対して,その ような行動はどの子にもみられる行動で,子供の発達の過程で必ず現われることであるのであま り気にしないこと,叱り過ぎないようにすること,夜尿をしたときは,寝具を洗濯するところを 患児に見せること,患児の養育に関して,家族の理解と協力を得るために一層の話し合いをする

こと,特に父親に依頼して患児が父親と遊ぶ機会を作ることなどについて指導した。

5 (31 39回)集団遊戯療法,自己統制の現われ

この時期には,患児と他のThとのつながりが見られるようになり,また自分の得意とする縄 飛びなどの運動を軸として他児と交わり,他児の働きかけにも応ずるようになって,患児は集団 の中で安定してきた。失敗にたいする不安と自信の欠如から,新しい遊びや人間関係を拒絶して いた患児が, セルフエステームの高まりと共に,筆者とのつながりにこだわることなく, 他の Thや他児と交流し,集団の中の一員としての行動が展開できるようになった。そして自己統制

が見られるようになった。

31回目,患児は他児を蛇腹の奪い合いをして, 最初は『やめろや』『あっち, いってーや』と 言っていたが,他児がそれに構わずに蛇腹と遊んでいると,その子につかみかかって行き,靴を 手にしてその子を殴った。他児に対する,最初の身体的な攻撃行動であった。 33回目,患児は他 児と「輪投げ」をしていて, 他児が輪がないと言うと, 他児に黙って輪を数個分けてやってい 34回目,患児はフラフープを器用に腰の当たりで回したり,フラフープを使って,縄飛びの ようなことをしていた。そこへ二人の他児が加わり,フラフープを使って,後ろ蹴りの練習を始 め競争になった。他児が先に成功して,『二回飛べた』と他の Thに言いに行ったが,患児は以 前のように疲れたなどと言って止めることがなく,練習を続けていた。 37回目,筆者が他児と相 撲を取っている時も,患児はニコニコ笑って側で見ていた。この頃から,患児は自信をつけて,

のびのびと行動するようになり,また行動に自己統制が見られるようになった。

母親との面接と指導(心理療法の結果)

最終回の遊戯療法後の面接で,母親は『吃音が出なくなり,夜尿も殆どしなくなったので,こ れで安心して小学校へ進学させられる』,『幼稚園の走りで一等になったなど,最近は幼稚園での 出来事を,家へ帰ってからよく話すようになった』などと言って感謝の言葉を述べた。しかし,

夜尿が完全に消失しておらず,幼稚園では相変わらず「引っ込み思案」な行動が目立つようであ る。患児の養育環境は,患児の祖父の入院後はかなり変化したようであるが,患児に対する母親 や叔母,祖母による過干渉は続いている様子であった。プレイルームでの集団に対する適応は出 来てきたが,小学校の学級集団への適応には,まだまだ乗り越えるべき壁が多いと思われる。こ れまでの話し合いの内容をよく参考にして,これまでやってきたやり方を,今後も根気よく続け

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夜尿,吃音等の症状を示すー情緒障害児の遊戯療法(石川)

て欲しいと話した。

集団遊戯療法の経過と結果

個別遊戯療法に引き続き, 6カ月間,計19回の集団遊戯療法を行ったが,当初は「引っ込み思 案」の状態で,他児との交流は全く希薄であったが,集団遊戯療法を開始して約 3カ月が過ぎた 頃から, ょうやく Th.を媒介としないで他児と交流するようになった。患児は他児や他の Th にも話しかけるようになり,縄とびなど自分が得意とする遊びでは自己主張も行うようになり,

積極的に集団の中へ入り込み,集団のなかでも安定してきた。この頃から,患児はプレイルーム での行動を徐々に家庭,幼稚園の順に汎化させていた。すなわち,家庭内でも良く話すようにな り,幼稚園でも自分が得意とする遊びやスボーツには自発的に参加するようになった。吃音は治 癒し,よほど緊張する場合を除いては消失した。しかし夜尿は完全には消失しなかった。

W

考 察

1)  発症の原因について

発症の原因については,治療過程の(治療方針〕のところで,簡単に触れたが,その後の治療 過程やそれにともなう症状の変化,患児の自我の発達過程とも密接に関係するので,ここで再整 理をしておきたい。

乳幼児期,エリクソン流にいえば肛門期の4オ時まで,患児には母親のほかに,祖父母,叔母 という 3人の母親代理者がいた。 この家族構成から, 患児は母親の言うように, 単純に「過保 談」に育てられたと図式的に理解することには問題があるように思われる。この時期まで, 3人 の母親代理者によって育てられた患児は, 3人の大人に取り囲まれ,いろいろと世話を焼かれな がらも,なおかつ母親との心の触れ合いの不足に悩んでいたことであろう。患児の養育環境は過 保護というより過干渉であったと推測される。心の触れ合いの不足と過干渉はむしろ共存するこ とが多い。そのような環境下で,患児は 3人の大人から与えられた基準に従って生きざるを得な かった,そこにはそれのの大人の期待通りに動く良い子としての患児の姿があったと想像される

(このことは,集団遊戯療法の開始後,母親が近頃『ババア』など汚い言葉を言うようになった と言ったことからも裏づけられる)。

患児は良い子として生きるために,母親に甘える,母親のぬくもりを求める。母親に我が儘を 言う等々の子供として当然もつべき情感を抑圧してしまった。そして4オになった時,母親との 情緒関係が希薄なまま,分離一個体化の過程を経ることもなく,母親が強大な権威者として前面 に現われ出て, しつけに伴う制裁の反復をやり始めた。その母親の性格は非常に強迫的で,神経 質であり(来所時面接の際のずれているテープル・クロスに対する苛立ち,夜間の排尿訓練を指 導した際の反応など随所に現われていた), その養育態度は, 内山 (1982)による典型的な「完

参照

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