長崎大学工学部研究報告 第32巻 第58号 平 成14年 1月 57
傾斜 した平板巽 か ら発生す るエオルス音 に関す る実験的研究
井 上 篤 **・林 秀千人*
佐 々木 壮 ‑ * ・児 玉 好 雄 *
Ex pe r i me n t a l St ud yo fAe r i a l No i s eg e n e r a t e df r o mI nc l i n e dFl a tPl a t e
by
AtushiINOUE,HidechitoHAYASHI SouichiSASAKI,YoshioKODAMA
TheAerialNoisegeneratedfrom theinclinedplateswereinvestigatedexperimentally.Thewake vorticeswhichgeneratefrom eachedgeofthebodyandshedalternatively,it'scallKarmanvortices, governtheaerialnoiseandtheflowinducedvibration.Atfirst,wefoundthatthenoiselevelbecomeslar‑ gestnotat0inclinedangle,twodimensionflowcondition,butat5to10degreeinclined.Anditisfoundthat thespanwiselengthofeachwakevortexbecomesabout3timeslargeatthecaseof5to10degreetothe caseof0degree.Whentheinclinedanglebecomeslargerthan10degree,thenoiselevelandthespanwise lengthofwakevortexbecomessmall.Thesecond,thefrequencyofnoiseisnotcoincidetothatofthewake vortexshedding.Thefrequencyofthenoisebecomeslowwiththeinclinedangle,butthatofwakevortices becomeshigllthatisrepresentedbythefrequencyofthemaximumvelocityfluctuationinthewake,thatis,
themainsheddingvortexdoesnotmaketheaerialnoise.Thespanwiselengthofthewakevortexbecomes largenotatthefrequencyofmaximumvelocityfluctuation,butattheotherfrequencyatwhichthephaseof cross‑co汀elationis180degree.Andthespanwiselengthofwakevortexbecomeslargeandthefrequency becomeslowwithinclinedangle.Thatis,theaerialnoiseiscloselyrelatedtothevortexthatthephaseis coincidealOngthespan.
1.緒 言
輸送機 械 や産 業機 器 また建造 物 な どさまざ まな所 で,流れに伴 って発生す る騒音 が問題 とな ってお り, その発生原因の解 明が求め られている。 その中で も物 体の後流中に発生 す る渦 に よって発生す るエオル ス音 については,以前 か らさまざまな研究が進め られて き た。今 まで行われて きた研究の多 くは,二次元的な流 動状態 の も とに進 め られて きた。 1ト 2)物 体後縁 か ら 放 出され るカルマン渦 が物体の後縁近傍の渦度の変動 を もた らし,それが物体表面の圧 力変動 を引 き起 こし て,エオル ス音 が発生 す る。 また,その時のエオル ス
音の周波数 と騒音 レベルの予測 も可能 であ る。 しか し なが ら,後流渦の三次元性 及び騒音源の三次元的広が りにつ いては,実験値 あ るいはその時 々の仮定が用い られ,ほ とん どがわかっていないのが現状であ る。
円柱 を傾斜 させて後流渦 に三次元性 を持 たせた時, 発 生 す る騒音 に関 す る研究 は い くつ か進 め られ て い る。騒音周波数は,傾斜角度の単純 な関係で表せ る と している。3)しか し,騒音 の レベル については特異性 を持 ち,現象その ものを適確 に現 した もの とな ってい ない。 この場合,円柱 を通過 す る後流 が,前縁部 で生 じる二次流 れの影響 を強 く受け,後流の特性 のみを正
平 成13年10月30日受理
*機械 システム工学科 (DepartmentofMechanicalSystemsEngineering)
**大学院修士課程機械 システム工学科専攻(GraduateStudent,DepartmentofMecllanicalSystemsEngineering)
58 井上 篤 ・林 秀千人 ・佐 々木壮一 ・児玉 好雄
し く理解することは困難である。 しか しなが ら,円柱 以外の物体 について,従来なされた研究はほ とん どな く三次元性の理解が進んでいないのが現状である。そ こで,本研究では,弦長 を もたせた前縁が半 円形状 を した平板巽で後流へ放 出される渦 は前縁の影響が及ば ない状況の三次元的な構造 を調査 した。すなわち,紘 長 を有する二次元巽 を流れに対 して,傾斜 させ ること で三次元的な流れを形成 させ,その場合の後流渦の組 織構造の特性及びエオルス音 との関係を明 らかにす る
ものである。
2.主 な記号
C :翼弦長方 向長 さ か :翼厚
′ :周波数
Is :スパン方向相関長 さ SPL :音圧 レベル
Uo :一様流速度
肝 :スパン方向速度
Ⅳ' :スパン方向速度変動
x,y,Z':一様流方向を基準に した座標系 (図1)
¢ :傾斜角度
β :クロススペ ク トルの位相
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mmmm叫mm咽叫叫叫叫
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3.実験装置及び測定方法
図1は実験装置の概要 を示 した ものである。図1(a) は本実験 で使 用 した測定部 の概 略 で あ る。 縦 横230 mmの四角の断面形状 を した ノズルか ら‑様 な流れを 流 出す る。最大流速 は60m/S,その時の ノズル出口で の速度偏差率は0.3%, ノズル 出口での乱 れ度は0.35
%であるO座標は主流方 向にx軸,翼厚方 向にy軸 , また図中に示 す ように平板巽 のスパ ン方 向にZ'軸 を 取 る。平板巽 の傾斜角度 少はOdeg.か ら30deg.まで 変化 させた。
ノズル出口の上下端 には吸音処理 を施 した端板 を置 き,巽は両端版 で挟 まれた状態 になっている。使用 し た巽は図 1(ち)に断面 を示 した平板巽 であ る。弦長 C は60mmであ り,厚み β は12mmである。平板巽では, 前縁部分が厚みを直径 とする半 円形状 を してお り,後 縁 が90deg.の角 をな してい る。騒音 はスパ ン中心位 置 で流れに対 して垂直方 向に巽 か ら1.5m離 れた位置 で1/4インチ精密 マ イクロフ ォンに よ り測定 した。 そ の出力を FFT アナ ライザで解析 し,騒音の周波数特 性 においてピー クの レベルを巽か らの騒音 とした。後 流速度変動及び速度変動の測定は トラバース装置 を用 いてZ'‑0の断面 (巽の中央)において,‑2.OD≦y
(α)風洞装置
(b)使用巽の断面図 図1 実験装置
≦2.OD,0≦x≦4.ODの範 囲で,I型熱線 を使用 して 計測 し FFT アナライザで解析 した。
スパ ン方 向相関相関長 さの測定 は2本の Ⅰ型熱線 を 使用 した (図1(a))。一方の熱線 をスパン中央で,後 流渦の放 出に よって速度変動 が最大 となる位置 (∫/刀
‑1.0,y/D‑0.5)に固定 し, もう一方の熱線 を 2'軸 の負の方 向に移動 させる。それぞれの熱線 か らの速度 変動の信号 を FFT アナ ライザで解析 して コヒー レン ス及び位相スペ ク トルを求めた。
4.実験結果及び考察
図2は平板巽か ら発生す るエオルス音の傾斜角度に よる変化を表 した ものである。一般 に,傾斜角度¢‑
Odeg.の二次元の場合は後流渦が強 くな り,騒音 レベ ルが もっ とも高 く,角度が付 くにつれて流れの二次元 性が弱 くな り,騒音 レベルが低下す る と考 え られる.
しか し,図か らわか るようにβ‑Odeg.付近で騒音 レ ベルは最大ではない。傾斜角度が小 さい うちは角度 と ともに騒音 レベルが上昇 し,傾斜角度 が10deg.付近 で最大 となって,それ よ り角度が大 き くなる と傾斜角 度が増加するにつれてだんだん と減少す る傾 向が得 ら れた。
傾斜 した平板翼か ら発生するエオルス音 に関す る実験的研究 59
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0
07′05
4[np]7dS'TaAaTaJ
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s[tm]GFl'uO !Jt!1
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U・aS!Jhut!ds1/
SPLpeaklevel
r=1I.5【m1 l l NF1260
\
0 10 20 30
A
n gleofinclination,Q5ldeg]
図2 傾斜角 による平板巽の騒音特性の変化
00
′人U 4
200 10 20 30 40
A喝1eofinclination,♂【deg】
図3 スパン方 向相関長 さ
図3はスパン方向相関長 さの傾斜角度 による変化 を 表 した ものであ る。 スパン方 向の後流渦の規模 を代表 す る量 として,相関の測定結果 より得 られ る。 スパン 方 向相 関長 さは角度¢‑OoではIs22Dであ り,一般 にいわれ る2D‑3Dとはば合 ってい る。 それがわずか に50か ら100と傾斜 を付 け るこ とに よって,5D〜6D 程 度 に まで急増 して¢‑Ocの お よそ3倍 にな って い
る。 さ らに,角度を増加 させ る と次第 に減少 し,¢ ‑
300は ど傾斜 させた場 合 に,二次元の場合 (¢‑Oo) とほぼ同程度 に小 さ くな る。 この スパン方 向相関長 さ の変化の傾 向は,前述の騒音 ピー クレベルの傾 向に極 めて よ く似てい る。
図4は各傾斜角度 について騒音 と後流の速度変動の 周波数特性 を表 している。図中の実線 は騒音の周波数 特性 であ り,図(a)ではf‑300‑400Hz付近 で顕著な ど‑ クが表 れている。 これが後縁 か ら放 出される渦 に よるエオル ス音 であ る。傾斜角度がOdeg.では騒音の 周波数 と速度変動の周波数は きわめて よ く一致 してい る。 しか し,傾斜角度が増加す るにつれ,速度変動の
000000004つ︼′04つ︼′b4つ︼︻qp]1JS'T
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Sl l ‑‑ I . l t NF1260 (a)4‑ 0tdeg] Ub=19.2lm/S]
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l ■ l ‑ l ■NF1260
.仏)d=10tdeg] Ud‑19.2lmJs]
/ ●‑ nOISe
′ 一一一votlex
t ■ l ■ l 一 NFl260 (C)4= 20【deg] Uj=19.2tm/S] ,J
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=l 1 2 9 6
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︻>一n'Jgoop^uo!)ヨー。n
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001001001
0 200 400 600 800 1000 FrequencyflHz]
図4 騒音 と速度変動 の周波数特性
周波数 と騒音の周波数 との間にわずかなずれが出て く る。すなわち,角度 少の増加 とともに騒音 (実線)は 周波数 (横軸 の′軸)が減少す るが,速度変動 の ピー
ク周波数は逆 に増 加す る傾 向が見 られ る。
図5は スパ ン方 向相関長 さの測定の際 に計測 した, スパン中央 とスパ ン各位置 での後流速度変動 の クロス スペ ク トルの位相 を表 した ものであ る。 図 (a)は傾 斜 角度 を与 えない とき,図 (b)〜 (d)は傾 斜角度 を与 え た ときの図であ る。 図中 に示 されて い る記 号jTvは速 度変動 スペ ク トルでピー クの周波数 を表 してい る。fp は位相が一点で交 わった所の周波数 を示 している。(a) では位相は一点で交わ らない。 この こ とは,スパンの 位置で後流渦 が放 出され るタイミングが一致せず,互 いの相関が小 さい ことを表 す ものであ る。一万,傾斜 角度 が与 え られてい る(b)〜 (d)ではそれぞれあ る一 点で交わ る。
この こ とは,スパンの広い範 囲にわた って同 じ位相 で渦が放 出されることを表 している。即 ちあ る瞬間 に おいてはスパン方 向に大 きな渦 が発生す る と考 え られ る。 この周波 数fuは傾斜角 度の増加 と ともに減少 す る傾 向がみ られ 騒音の周波数の傾 向 と一致 してい る。
図6は図5によ り得 られたんエオルス音の周波数, 及び速度変動の ピー ク周波数の傾斜角度 に よる変化 を 表 した ものであ る。傾斜角度 が10deg.まではいずれ もはば一定 で一致 してい る。 しか し,10deg.以上 に な る と騒音 と位相の周波数 はほぼ一致 し,傾斜角度の 増加 とともに低下するが,速度変動 の周波数だけが他
60
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oJ3509St2ttd井上 篤 ・林 秀千人 ・佐 々木壮一 ・児玉 好雄
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、、‑‑l〜‑.芯へ.〜帆.(C)¢=20【deg]
j v T
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4 4
0000 5000
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‑400
0 100 200 300 400 500 Frequency,flHz]
‑ 2'/D=‑0.0 ‑ Z'/D‑・0.8333
‑ Z'/D=lI.6666 2'/D‑‑I.5
‑‑zl/D=̲3.3333‑ 21/D=4.1666 (NF1260,Uo=I9.2【m/S])
図5 クロススペ ク トルの位相のスパン方 向の変化 000000005432
︻zH
]J.buanbaJh l lIlllU0‑19.2lm/S]:〟‑1.5【m] :l
l lNF1260'
O Noisel l
xn>1.0:
0 10 20 30
A
n gleofinclination,〆【deg.]
図6 位相 ・騒音 ・速度変動 の関係
の二 つ とは異 な った変化 を している。 この こ とか らエ オルス音 が,かな らず Lも強い後流渦 に よって支配 さ れ るのではな く,スパン方 向の規模の大 きな渦 が影響 を持 つ こ とがわか る。
5.まとめ
一様流中に二次元の平板 を傾斜 させて設置 し,それ か ら発生 す るエオル ス音 と流 れの特 性 につ いて調 べ て,以下の結果 を得 た。
(1)傾斜 した平板巽 か ら発生す るエオル ス音の音圧 レ ベ ル は傾 斜 角 度5deg.か ら10deg.付近 で最 大 とな
り,その後低下 す る。
(2)音圧 レベルの変化の傾 向はスパン方 向相関長 さの 変化 が影響 を及ぼ してい る。
(3)傾 斜角度10deg.付近 で スパ ン方 向相関長 さが最 大 にな る ときスパ ン方 向の放 出渦の タイミングが同
じにな り大 きな渦 が放 出され る。
参 考 文 献
1)深野 ,はか3名,機論,5ト469,B (1985),2828 2)佐 々木 ,はか2名,長崎大学工学部研究報告 ,第
29巻,第52号,平成11年
3) 白樫 ,はか2名,機論,5卜486,B (昭和60‑8), 2499