教職員 を対象 とした栄養教 室の効果
長崎大学保健管理 セ ンター 鷺 池 トミ子 大 坪 敬 子 石 井 伸 子 長崎大学医学部附属病院
豊 里 英 子
前 田 真 由美 土 橋 時 代
【は じめに】
長崎大学では教職員 に対 して肝 ・脂質等検 診 を実施 しているが,例年異常率が高い。 こ の異常 に対 しては日常生活 の改変が必要であ り, それ をめざした効果的な指導方法 は,私 達 に とって重要 な課題 となっている。 これ ま で呼 び出 しによる個別指導,料理教室やパ ン フレッ トの配布等 を実施 して きたが,十分 な 参加 が得 られず生活 の改変へつなげる事 はな かなか困難 であった。今 回は人事課 との連携
をはか り,集団 による栄養教室 を各学部毎 に 開催 す る指導方法 を試みた。 その結果,参加 者数,食生活 に対 す る認識,行動,食事調査 及 び血液検査結果等 に何 らかの変化が見 られ たか どうか栄養教室 の効果 について検討 した。
【 対象及び方法】
対象 長崎大学教職員で肝 ・脂質等検診 の受 検者 5 7 6 名
方法 平成 1 0 年 1 0 月 〜1 1 月 肝 ・脂質等検診 ( 血液検査①,食事調査①) を実施 平成 1 1 年 2 月 栄養教室 開催 ( 各学部
毎,計 9 ヶ所)
平成 1 1 年 5 月 ア ンケー ト調査 A ( 食 生活 に対 す る認識)回収 2 3 8 名 /5 7 6 名
平成 1 1 年 7 月 再検査 ( 血液検査② 8 0
名 /3 5 5 名, 食事調査② 6 8 名 /3 5 5 名) ア ンケー ト調査 B ( 行動 の変化)
回収 6 3 名 /3 5 5 名
以上 の検診 ・調査 を もとに栄養教室 に参加 した人 とそ うでない人 の食生活 に対 す る認識, 行動,食事調査結果,血液検査結果 について 差があるか どうか検討 した。
【 栄養教室の実際】
保健管理セ ンターで はこれ まで も種々の方 法で異常者 の指導 を試 みたが, なかなか人 を 集 めに くいのが現状 であった。 そ こで,今 回 人事課主催 にして各部局長名 で教職員全員 を 対象 に呼びか けて もらい, さらに血液検査 の 異常者 には保健管理 セ ンターか らも参加 をよ びか けた。従来 の個別呼び出 しで は受診者が 少 なか ったので集団指導 とし, こち ら側が各 学部 に出向 いて約 1 ヶ月か けて 9 ヶ所 で開催
した。
指導 は,医師 によ りそれぞれの検査 の意義, 異常値 が続 くとどうなるか, また各 自の標準 体重,適正エネルギー,食事調査表 の見方 に ついて説明 を行 った。 その後,栄養士 によ り, 食生活 のわずかな偏 りが積 み重 なった結果異 常が起 こること, 1日に何 を どれだ け食 べた ら良いか を説明 して予防 ・改善 して もらう事 にした。指導時間 は食事時間 を含 め 1 時間半
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献立 塩サバ ・卵焼 き
煮物 ( 人参 ・かぼちゃ ・はす ・厚揚 げ ・こんにゃ く ・里芋 ・こんぶ) 小松菜 のお浸 し ・シーチキンサラダ ( キャベ ツ ・もや し)
1
日必要量 に対 する割合 (%)栄毒素
お弁 当に含 まれている分量計 1
日必要量1 日必要乱 射する% 2 . 0 4 . 0 6ー 0 8. 0 1 9
主食 糖質 ごはん
200g
ごはんパン 200g
ごはん660g 30%
主
莱 質たんぱく
肉 負 鯖 シーチキン3g 309 那 卵 40
g 大豆製品厚揚30g肉 卵 魚
大豆製 品33g 40g 30g
納豆豆腐1 609 60g 50g 00g 50g 40% 28% 80%
副 ネ タ ミ ヒ
緑 黄色 野菜小松 菜30g
淡 色 野菜キャベツ 10g一一類 千 里芋 40g 海藻類 昆布1
g緑黄色 野菜淡色野 菜他70 30g g 200g 100 g 70% 1 5%
莱 フ ミ
ル '
ノ にんじん南瓜25g 15g
もやしれんこん1 1 0g 0g
こんにゃく1 2g 海藻類 芋類 40g 1 g 1 00g 2 40% 50% ○ .
==.〟
間
食 果物乳製品200g 1 50g
覗 脂
油
砂 糖 堤 その他油 5g 1 0g 50% ○
エネルギー 600kcal
図 1 教材用弁 当 ( 試食用)
献立 白身魚のサクサク揚 げ ・ゴボウ とブタ肉の妙 り煮 ハムロールカツ ・ミニオム レツ ・いんげん煮 生野菜 ・三色漬
1
日/必要量 に対 する割合 (%)弁 当
1
日必要量1 E l 必要量に対する割合 ( %) 20 l 40 【 60 l 80 】 1 00 l 1 20
ごはん
250g
小麦粉
20g
ごはん660g 38%
肉 23g
魚 199
卵
21 g
大豆製品
g g
豆腐納 豆1 609 60g 50g 00g 50g 38% 32% 42% 0% 0%
緑黄 色野菜
1 0g
淡色 野菜他88g
芋類 g
海草類 g 200g 1 1 00g 00g 2g 1 44% 0% 0% 0%
果物
g
乳製 品
5g 200g 1 509 0% 3%
油 1 8g
砂糖
4g
塩 g
その他
g g
みそ1 1 15g 0g 0g 1 80% 40%
塩 g
その他
g
みそ1 1 15g 0g 0g 1 80% 40%
エネルギー 793kcal
図 2 生協弁 当
として,参加費 5 0 0 円は教材の弁当代 とした。
教材用の弁当は,「 惣菜や」で選 んで詰 め合わ せ,保健管理センターで栄養計算 した。御飯, 卵焼 き,焼 き魚,野菜の煮物,お浸 し,サラ ダ という和食中心のいわゆるおふ くろの味で あ る 。 1 8 0 0 kc al の 3 分 の 1 に 当 る 6 0 0 kc al で,各食品の 1 日必要量 に対す る割合 を示す プ リン トを配布 した ( 図 1)
。理想的な食事 を 実際 に食べる事で理解 を深めて もらうように した。 また外食 について理解す るために,良 く利用 されている生協弁当を実物大の写真で 表わ し, これ も割合 を示 した ( 図 2)
。生協弁 当は, 1 日必要量のおおよそ 3 分の 1を占め て理想的である一方, 油 に関 しては 1 8 0% と 1 食で約 2 日分 に相当す る
。この例か ら外食 は 油が多い という問題点 を説明 した。指導 した い内容 はた くさんあったが,改善の方法 とし ては油 を減 らす具体的な方法,食物繊維の取
り方, コレステロールの減 らし方,アルコー ルについて と絞 った。話だけでは印象に残 ら ないので,テフロン加工のフライパ ンの油 を 拭 き取 って使 う等の実際や, ドレッシングの 油の割合,スキム ミルク,ハーフマヨネーズ などの実物 を見て もらう事 を多 く取 り入れた。
【 結 果】
1 .栄養教室参加者数
今 回の栄養教室参加者 は合計 1 9 0 名 であっ た。 この数字 はこれ までの個別呼び出しと比 べ最 も多い数である 。 この中で検診受検者 は 8 4 名で,内訳 は血液検査の正常者が 1 2 名,異 常者が 7 2 名であった。表 1 に呼び出 しに応 じ 指導で きた者の数 を経年的に示 した。過去, 精密検査 には,ある程度受検す るものの,食 事指導の呼び出 しでは受診者 は非常 に少ない。
今回の栄養教室 に参加 して食事指導 を受 けた 血液検査異常者 は 7 2 名 ( 2 0. 3%) で従来の方
表 1 経年的受検者数
精 密 検 査 食 事 指 導 年 度 呼び出し数 受検者 ( %) 呼び出し数 受検者 ( %) 平成 7 年 2 0
4( 2 0 . 0 ) 1 6 0 2 ( 1 . 3 ) 8 年 1 8 0 8 7 ( 4 8 . 3 ) 8 7 5 ( 5 . 7 ) 9 年 7 7 4 3 ( 5 5
.8 ) 1 5 2 4 ( 2 . 6 )
法 と比べ,かな り増加 した。
2. 食生活 に対す る認識
( アンケー ト調査 A)
アンケー ト調査 により食生活 に対する認識 を検討 した。保健指導の評価 をどのようにす るかは日常私達が苦労 しているところである。
評価の視点 は血液検査の値や行動 の変化 に求 めるが, もともとこのような保健指導 は相手 の認識への働 きかけである。その認識の変化 の結果 として行動の変化が見 られ るようにな り,その行動の結果が食事調査や血液検査 に 反映 されることになる。
そこで まず指導により相手の認識が変わっ たのか どうかを評価 した。検診受検者全員 に アンケー トを発送 して,血液検査結果 と同時 に送 った食事調査結果 について, どのように 認識 したか回答 して もらった。 アンケー トに 答 えた人 は 2 3 8 名 ( 回収率 41. 3%) である。
「 食 品の適正量 は自分が思っていた量 と比 べていかがで したか」の質問に対 して栄養教 室参加群 は 5 2% が 「自分が思 っていた量 と大 きくズレていた 」 と答 えたのに対 し非参加群 では 1 8% と差があった。特 に 「ズレていた」
のは油で他 を大 き く引 き離 した。他 に 「あな たの食事の問題 を解決する方法 を見つけるこ とがで きましたか」の問いに 「 解決の方法 を 見つけた」のは,参加群で 8 2% ,非参加群 5 0%
と,参加群 の方に解決方法 を見つける傾向が 見 られた。「 問題 はないので何 もす る事 はな
‑ 1
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‑い 」 と答 えた人達 を見 ると,参加群では血液 検査正常,異常共 に 0に対 し,非参加群 では 正常者の約 2 割が そ う答 えた。別 に,栄養教 室 に参加 していた血液検査の対象外や末検査 の者 1 0 6 名 に も同 じ質問 を実施 したが,「 問題 はないので何 もす る事 はない」 と答 えた者 は いなかった。つ ま り参加群 にはこの ように答 えた人 はいない。 これは集団指導の効果だ と 思われ る
。集団指導 は , 「 異常な しの人であっ て も集団でや ることによ り他 との対比 の中で 自分 にかかわ る問題 になる」 とい う利点があ る 。 今 自分が異常 を指摘 されていな くて も, 異常値が どうい う状態か ら起 るのか, また ど うすれば予防で きるのかを他の人 のデータか ら学習す る事 で, 自分の将来 を見据 え認識す る 。 集団での栄養教室 は,異常 を指摘 されな かった人達へ も自分の問題 として認識 させ る 働 きかけがで きた と思われ る
。3 .行動 の変化 ( アンケー ト調査 B) 認識 の変化 の次 に,行動 は どうなったかを 検討 した。 ア ンケー トの対象 は血液検査結果 の異常者で, 7 月の血液再検査 と同時 に調査 した。過去 にさかのぼって,検診時 ( 1 0月),
2 月 ( 栄養教室), 7 月 ( 再検査時)に何か実 行 したか を質問 した。ア ンケー ト回答者 は 63 名 ( 回答率 1 7 .7 %) である
。検診時,参加群 の 4 割,非参加群 の約 6 割 が,すでに何 らかの対策 を実施 していた ( 図
3) 。 その後,参加群ではほ とん どの者が,何 らかの対策 を始 めている。実行 した事 は 1 位が
「 野菜 をもっ と摂 るようにした」,次いで 「コ レステロールの多い食品を少ない食品に変 え た」 ,「 油 を減 らした」 ,等であった。
( %) 100 80 60 40 20
0 10 月 2 月 7 月 10 月 2 月 7 月 参加群 ( ∩‑20) 非参加群 ( ∩‑43)
図 3 アンケー ト B 何 らかの食事 の 対策 を実行 した人の割合 4. 食事調査結果
食事調査 は平成 9 年か ら実施 したが,当時 は自分で記入す るだ けだったので,少ない量 の記載が 目立 ち, ほ とん どの者が必要量 を下 回 り正確 さに欠 けた。 それで今 回は事前 に配 布 した調査表 に記入 して検診 当 日持参 して も
らい, その場で栄養士が フー ドモデル を用い なが ら再確認 した。女性 は正確 さが増 したが, 男性 は量的な把握が難 しかった ようで必要量
を下回る傾 向がみ られた。正確 な調査 はなか なか難 しい とい うのが実感である
。+ 参加群 ( ∩‑19)
‑ ‑ 戯‑ 非参加群 ( n‑49)
( g) 13 12 日 10
食物繊維 の摂取量 n̲ H‑Ll rl r‑ ㈲ 20 10 00 90 80 70 60
油脂の目標 量 に対 する割合
p <0. 05
10 月 7 月 10 月 7 月
図 4 食事調査結果
参加群 と非参加群 で,教室開催前後の食事 の変化 を比較検討 した。対称 は血液検査結果 の異常者で,調査で きた人 は 6 8 名 ( 1 9. 2 %)
であった。食物繊維,油脂 については参加群
に改善が見 られた ( 図 4)。実施 した対策 とし て も「 野菜 をもっ と摂 るようにした 」 「 油 を減
らした」等,関連の項 目で差があった。 しか し油脂 は全体的に低 く,正確 さの点で まだ疑 問が残 る結果であった 。
5. 血液検査結果
血液検査結果の異常者で,教室開催前後 と もに受検 した 8 0 名 について総 コレステロール, LDL コレステロール, HDL コレステロー ル,中性脂肪, GPT,γ‑GTP ,空腹時血 糖,尿酸の変化 を検討 した。参加群 と非参加 群 とも残念なが ら最終 目標である血液検査結 果 には差がな く,両群 ともに改善 は見 られな かった。
【まとめ】
今回の栄養教室の試みでは,食事指導を受 けた人 の数が増加 した。参加群 には食事調査 の結果,食物繊維,油脂の項 目で摂取状況 に 改善が見 られた。 また自分の食事 と適正量 と が大 き くズレていると認識できた者が多 く,
異常 を指摘 されなかった人 に対 して も集団で 指導 した ことにより自分の問題 として認識す ることがで きた。 また何 らかの対策 「 野菜 を 多 く取 る 」 「 油 を減 らす」等 を実行 した人の割 合が高かった。 しか し行動の変容があった も のの,血液検査結果 を見 る限 り改善 は見 られ ず,当初私達が 目的 とした効果的な改変 には 至 らなかった と思われ る 。 今回は集団のみの 指導 を行 ってお り,具体的なその人の状況 に 応 じた個別の指導 は行 っていない。異常値 を 示す者 に対 しては,長年の生活習慣是正の為 に,個々の状況 に応 じた より適切 な個別指導 も考 えていかなければならない。今回の事 を ふ まえ,平成 1 1 年度 は新 た な指 導 方法 で ス ター トし現在 それをフォロー中である 。
【 参考文献】
久常節子 :健診結果か らの出発,勤草書房, 1 9 9 2
( 本論文 の要 旨は第 3 0 回九州地 区大学保健 管理研究協議会で発表 した)
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