北海道の雪氷 No. 26(2007)
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鉄道トンネル内のつららの観測(第1報)
小川直仁(JR北海道)、岩花 剛、赤川 敏(北海道大学大学院工学研究科)
1. はじめに
鉄道トンネル内に発生するつららは、車両窓ガラスの破損並びに電気設備に損傷を与えるなどの 要因となっている。そのため、JR 北海道では車両装備及び施設設備による対策と人員によるつら ら除去作業(写真-1)の両面から保守管理を行なっている。
これまで、JR北海道及びJR東日本において行なわれているつらら対策を整理すると、図-1とな った。これらのつらら対策により、JR北海道では平成17年度にはつららによる運転阻害事故(旅 客列車の30分以上の遅延、運休等)をゼロ件としている。
しかし、JR北海道が調査した年度別ガラス損傷件数(図-2)では、つらら等によるガラス損傷は 減少傾向にあるが依然として解消されてはいない。
写真-1 つらら除去作業 (撮影:2007 年)
図-1 鉄道トンネル内つらら対策の分類 図-2 年度別車両ガラス損傷件数
そこで、本報告では北海道における鉄道トンネル内のつらら発生実態調査を行い、今後の鉄道ト ンネル内つらら対策における基礎情報を取得するとともに、平成 18 年度冬期から開始した鉄道ト ンネル内のつらら観測に関する概要について報告する。
漏水防止工 全面的な防止工法
局所的な防止工法 シート工法
吹付工法
塗布工法
打継目止水工
導水工法
排水工法 注入工法
凍結防止工 加熱工法
保温工法
超撥水性塗料
つらら除去 人力によるつらら除去
油圧式アーチ型除去装置
おとり架線
窓ガラスのポリカーボネート化 ヒートパイプ工法 電熱温風ヒーター 面発熱体
Uカット断熱材挿入工 Vカット断熱処理工 表面断熱処理工
断熱2重巻覆工 エアカーテン 電熱線ヒータ 電熱線付導水管
温風方式 空気循環方式 在来工法による防水 NATM工法による防水 ゴムアスファルト系
合成樹脂系 アスファルト系
コンクリート・モルタル系
埋設型止水板 表面型止水板 接着型止水板
導水樋工法 Uカット工法 Vカット工法
電力設備対策
車両対策 トンネル対策
つらら切り 列車徐行
0 20 40 60 80
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 年度(年)
ガラス損傷件数(件)
外側ガラス損傷件数 前面窓ガラス損傷件数 前面窓ガラス損傷件数
(冬期:11月~3月)
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2. 調査概要
JR北海道のトンネル全178箇所におけるつらら発生実態を把握するため、トンネルを管理する 職場(全 13 箇所)を対象としてアンケート調査を実施した。調査項目は、フリーアンサーを含め て全 10 項目である。本報告では、その中からつらら発生率についてを抜粋して報告する。調査概 要は表-1の通りである。
対象トンネルの総延長は203.9 kmであり、JR北海道の全路線延長2499.8 kmの8 %にあたる。
建設年代は昭和(戦後)に建設されたものが多く箇所数にして65 %、延長にして81 %を占めてい る(表-2)。
表-1 つらら発生実態調査概要 表-2 調査対象トンネル
3. 調査結果
3.1 つらら発生実績のあるトンネル箇所
JR北海道の鉄道トンネル全178箇所における、つらら発生状況は、「つらら発生が有る」とされ るトンネルが142箇所あり全体の80 %を占める結果となった(図-3)。
80%
16%
3% 1%
有 無 無回答 無効
図-3 つらら発生実績のあるトンネル箇所数の割合
3.2 経過年数別つらら発生率
次にトンネル完成年からの経過年数を10年毎として、つらら発生有無を確認した170箇所のト ンネルにおけるつらら発生率の整理を行った(図-4)。ここで、本報告において定義するつらら発生 率は経年別トンネル箇所数とつらら発生トンネルの箇所数の割合である。この結果、経過年数「20
~30(年)」以内と「30~40(年)」以上のつらら発生率に顕著な差異があった。
ここで、図-4 の本報告での結果と既往研究結果を比較するため、野沢ら1)及び黒川 2)が報告す る昭和 54年度に国鉄で実施した調査のトンネル漏水発生率を図-5、図-6に示す。なお、この調査 での対象は国鉄における3,808箇所のトンネルである。野沢らの定義するトンネル漏水発生率は経 年別のトンネル延長と漏水トンネルの延長の割合であり、黒川の定義するトンネル漏水発生率は経
建設年代 箇所数 延長(km)
明治 13 5.4
大正 15 4.2
昭和(戦前) 29 17.7 昭和(戦後) 115 164.5
平成 6 12.0
合計 178 203.9
項目 内容
調査方法 質問紙法
調査対象 トンネルを管理する職場(運輸営業 所、工務所、保線所):全13箇所 調査期間 H18年8月1日~H18年8月18日
回収率 配布数13、回収数13、回収率100%
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年別のトンネル箇所数と漏水トンネルの箇所数の割合である。本報告で定義するつらら発生率は箇 所数の割合であるので、黒川の定義と同様である。
この結果では、「0~10(年)」以内と「10~20(年)」以上のトンネル漏水発生率に差異があった。
本報告の調査と国鉄調査から経過年数によって漏水発生率およびつらら発生率が増加傾向にあるこ とがわかる。
ここで、野沢らによれば図-5 の「20~40(年)」の漏水発生が顕在した考察として「戦中戦後の 時期であり施工管理、材料品質に問題があったものと推察される」としている。また、黒川によれ ば図-6 の「20~40(年)」の漏水発生が顕在した考察として「ちょうど戦中、戦後にまもなく施工 されたもので、材質、施工ともに問題があったものと考えられる」としている。このように両者と も材料及び施工に関する問題を指摘している。
そこで、工法別によるつらら発生率の比較を次節にて行った。
図-4 経年別トンネルつらら発生率(発生箇所数/全箇所数)
図-5 S54 年度国鉄調査による経年別 図-6 S54 年度国鉄調査による経年別 トンネル漏水発生率(発生延長/全延長)1) トンネル漏水発生率(発生箇所数/全箇所数)2)
3.3 工法別つらら発生率
工法別つらら発生率を図-7に示す。この図は、178箇所の内、工法及びつらら発生有無を確認で きた 101 箇所を対象として整理したグラフである。対象となる工法を大別すると、NATM 工法、
開削工法、在来工法となった。ここで、既往研究調査により 1980 年に新設トンネルのつらら防止 工法として、NATM工法の断熱2重巻覆工が室蘭線蘭法華トンネルで施工されたことが分かった。
この工法は、1970年代から始まった国鉄の全国新幹線網の雪害対策に関わる研究成果の一つである。
そこで、上記3区分をさらに1980年を閾値として区分すると共に、NATM工法については断熱2 重巻覆工とそれ以外を区別して整理した。
その結果、NATM工法における断熱2重巻覆工のつらら発生率は0 %であった。断熱二重巻覆工 ではないNATM工法のトンネルに関しても29 %であり、つらら発生率が他の工法に比べ低減して いることがわかる。
また、在来工法に関しても、1980年以前とそれ以降では、つらら発生率に大きな差異が見られた。
開削工法に関しては、1980 年以前完成のトンネルが一箇所のつらら発生トンネルのみであるため 100 %となっている。1980年以降のつらら発生率は50 %であった。
100% 100%
80%
100% 100% 100%
86% 91%
39%
50%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
100~105 90~100 80~90 70~80 60~70 50~60 40~50 30~40 20~30 10~20
経過年数(年)
つらら発生率
76% 76% 78% 90% 97%
76%
55%
75%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
70~ 60~70 50~60 40~50 30~40 20~30 10~20 ~10
経過年数(年)
漏水発生率 59% 65%
57% 62%
86%
54%
35%
60%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
70~ 60~70 50~60 40~50 30~40 20~30 10~20 ~10
経過年数(年)
漏水発生率
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Copyright © 2007 (社)日本雪氷学会北海道支部 29%
0%
50%
33%
100% 97%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
NATM NATM
(断熱二重巻)
開削 在来工法
工法
つらら発生率
1980年以降 1980年以前
図-7 工法別つらら発生率
4. トンネル内つらら観測の概要
既往研究で最もつらら発生に影響していると考察されるトンネル坑内気温を営業線にて計測し、
気温データと毎日のトンネル内つらら発生記録(本数、長さ)からつらら発生と坑内気温の関係を 明らかにする。また、気温、湿度、風速、風向のトンネル内微気象を計測し、10分間隔で撮影した つらら成長画像による観察も実施している。なお、観測サイトは前者の観測を函館線熊碓トンネル 他2トンネルと神居トンネル他4トンネルにおいて実施し、後者の観測を函館線於多萌トンネルと 室蘭線旧栗山トンネルにて実施している。図-8は観測サイトの位置図である。
調査結果については、第2報以降報告していきたい。
図-8 観測サイト位置図 5. おわりに
本報告では、北海道における鉄道トンネル内のつらら実態調査を行った。その結果、全トンネル の内80 %となるつらら発生トンネルは1980年以前の在来工法トンネルに集中していることが明ら かとなった。
また、平成18年度冬期より実施しているトンネル内つらら観測の概要について報告した。
参考・引用文献
1) 野沢太三、後藤明、吉田博:トンネル漏水防止工の実態調査:鉄道土木No.22-9、日本鉄道施 設協会、pp.11~12、1980年
2) 黒川義範:トンネルつらら防止の現状と問題点:トンネルと地下 Vol.11,No.12、p.868、1980 年
函館線 神居トンネル他 4 トンネル
函館線 熊碓トンネル他 2 トンネル 函館線 於多萌トンネル 室蘭線 旧栗山トンネル