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爆傷二次衝撃での体内異物を画像読影した1例

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Academic year: 2021

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(1)

は じ め に

近頃,日本国内において爆発事故によるニュース がよく報道されるが,我々医療従事者にとって爆傷 は珍しい外傷であり診断や治療に難渋することがあ る.爆傷による人体の影響は,一次から四次までの 4つの衝撃に分類されている.それぞれの衝撃にて 特有の損傷を来しうることから,受傷形態を理解す ることが重要である.今回,CT 画像の階調処理に より異物を確認できた症例を経験したので報告する.

症   例

患者:40代,男性

主訴:爆傷による顔面・眼球損傷 既往歴:特記すべき事項なし

現病歴:工場で作業中に高圧ガスボンベが爆発し受 傷した.受傷時,意識レベルは清明であったが顔面

を中心に受傷されており加療のため当院へ救急搬送 となる.

入院時現症:

意識レベルは清明で神経学的所見に異常は認めず,

体温37.3度,血圧 142/87 mmHg,脈拍68回/min,

呼吸20回/min であった.胸部・腹部の視診,聴診,

触診上も異常なく,FAST(focused assessment with sonography for trauma)でも心嚢,胸腹腔内に液 体貯留はみられなかった.Primary Survey におい ては異常なしと判断した.来院時検査所見では,胸 部単純X線写真では異常を認めなかった.また,血 液検査所見では,軽度の白血球上昇を認めた(表1). Secondary Survey においては,視診上顔面を中心 に挫創があった.眼球結膜に充血を認めたが瞳孔は 両側 3.0 mm で対光反射は迅速であり,複視はなく 著明な視力障害は認めなかった.眼科受診にて右強 膜損傷と診断された.また,聴力障害もなく外見上

爆傷二次衝撃での体内異物 85

爆傷二次衝撃での体内異物を画像読影した1例

福 田 隆 人

1,2

  濱 口 満 英

  北 澤 康 秀

  村 尾 佳 則

近畿大学医学部救急医学教室  近畿大学医学部総合医学教育研修センター  近畿大学医学部奈良病院

A case report of foreign body injury detected by image interpretation followed with secondary explosion impact

Ryuto Fukuda, Mitsuhide Hamaguchi, Yasuhide Kitazawa, Yoshinori Murao

Department of emergency and critical care medicine, Kindai University faculty of medicine

Center for medical education and clinical training, Kindai university faculty of medicine

Kindai university Nara hospital

抄   録

症例は40代男性.工場で作業中に高圧ガスボンベが爆発し受傷された.受傷時,意識レベルは清明であったが顔 面を中心に外傷を認め当院に救急搬送となった.外傷初期診療の結果,顔面挫創と下顎部の異物,右強膜損傷と診 断した.爆傷においては,一次から四次までの4つの衝撃がありそれぞれに特有の損傷を来しうる.二次衝撃は爆発 による金属やガラスなどの飛来物によって身体に受ける鈍的・鋭的外傷である.この時に,体内異物の残存には注 意を要する.異物にはそれぞれの特性に応じた CT 値があり,画像描出するにあたっては適正な階調が必要である.

今回 CT 画像の階調処理により異物を確認できた症例を経験した.

Key words:爆傷,画像階調,体内異物

近畿大医誌(Med J Kindai Univ)第44巻1・2号 85~88 2019

大阪府大阪狭山市大野東3772(〒5898511)

受付 平成31年1月15日,受理 平成31年3月6日

(2)

鼓膜の損傷もみられなかった.頭部と体幹部 CT で は外傷損傷や異物の混入を認めなかった.顔面 CT

(図1)にて右下顎部の皮下に約 1.5 cm 大の異物を 認めた.異物の摘出を行うと,図2に示すように約 1.5 cm 大のシリコン樹脂の製剤が確認できた.

診断・手術所見:右下顎部挫創,右下顎部異物,右 強膜損傷と診断した.右下顎部に関しては,当科に て局所麻酔を行い創部の確認を行った.約 1.5 cm 大 のシリコン樹脂状の異物を認め,創部を十分に洗浄 し動脈性出血がないことを確認し縫合し,右眼に関 しては,眼科にて結膜下に局所麻酔し結膜を開放し 強膜の創部を確認した.硝子体の脱出は認めず吸収 糸にて縫合した.

考   察

 爆傷における外傷診療においても,Primary sur- vey では生理学的徴候に留意し,Secondary survey においては解剖学的に評価することが重要である.

その中で爆傷特有の外傷について診療していく上で は,4 

つの衝撃を念頭に置く必要がある.

 一次衝撃は、爆発の際に生じる衝撃波によるもの である.爆風の強さは爆心からの2乗に反比例する ため,受傷時の距離は重症度を予測する上で重要な 要素である.損傷としては,爆傷肺,腸管損傷,眼 球損傷,鼓膜損傷などがある.また,衝撃波による 遅発的な肺損傷や腸管損傷があり受傷状態や身体所 見から疑わしきは46時間の経過観察,48時間は 患者・家族の注意喚起を必要とする

 二次衝撃は,爆発による金属やガラスなどの飛来 物によって身体に受ける鈍的・鋭的損傷である.飛 散した破片による損傷であるが多発性の穿通創を認 め銃創よりも重症となりやすい4,5 ほか予想以上に 創が深いこと,破片の性状が不明なことなどから

術前診断に難渋することがある.今回の症例では,

体内異物を意識して CT の撮影条件である WW

(Window Width)と WL(Window Level)を変更 して確認を行った(図1).骨条件では,今回の異 物の確認は困難であるが軟部組織条件に変更すると 異物の確認は可能である.今回の症例のようなシリ コン樹脂の CT 値は 100200 HU(Hounsfield Unit)

であり,CT の WW 値を 400 HU, WL 値を0HU に設定した軟部組織条件の画像(図1b)でも確認 できるが,さらに WW 値を 150 HU, WL 値を 50 HU に設定した画像(図1c)ではより鮮明に描出され ている.このように,異物はそれぞれの特性に応じ て CT 値が異なることを考慮すべきである.また,

6 

種類の木片の CT 値を調べた結果-461~88 HU と差が大きい素材もある.この CT 値の差が大きい 原因としては木片繊維間における空気量を反映して いるためと考えられる.木片は迷入初期では空気を 多く含んでいるため低濃度だが,時間経過とともに 血液や浸出液の木片への浸透によって高濃度に変化 するといった特徴をもつ.CT での異物検索におい ては WW や WL を変更することが重要であるが,

CT だけでなく簡便であり描出方向を変えれば3次 元でみることができるエコーや金属異物が否定でき れば MRI の併用も見落としをなくすためには必要 であると考えられる.特に木片異物において,水は T 強調画像では低信号として描出されるため水分 を吸収しても水の影響はほとんどないため CT 像の ような経時的変化を示さない.T 強調画像では水 は高信号として写るため,最初は低信号として描出 されるが木片が水分を吸収するにつれ高信号に変化 するといった所見から有用性が報告されている.  三次衝撃は,爆風によって飛ばされて地面などで 打撲することによって生じる損傷である.損傷とし 福 田 隆 人他

86

Peripheral blood cell counts /mm3 9,050 WBC

/mm3 495×10 RBC

g/dl 15.7 Hb

% 45.5 Ht

/mm3 22.1×10 Plt

Blood chemistry

IU/l 22 AST

IU/l 20 ALT

mg/dl 0.9 TBil

mg/dl 12 BUN

mg/dl 0.16 Cr

IU/l 116 CK

Mg/dl 105 Glu

mEq/l 139 Na

mEq/l 4.2 K

mEq/l 106 Cl

mg/dl 0.013 CRP

表1

(3)

ては主に頭部外傷や腹部の実質臓器損傷,骨折など があげられる.生命を脅かすような大きな外傷があ ると Primary Survey にて異常を伴うため,循環動 態や切迫するDを意識しながらの加療が必要とされ る.

 四次衝撃は,発生した化学物質や熱による損傷で ある.損傷としては気道損傷や熱傷があげられる.

 異物の体内残存は治療が長期化することがある.

体内の遺残物が金属やガラス片であれば瘢痕組織が 異物を取り囲み安定した形で経過することが多いが,

木などの有機物の場合は膿瘍や瘻孔形成されること もあり9,1 注意が必要であり,外傷性体内異物の治療 は早期完全除去である.小さな創部でも,人骨や汚 染物質による穿通性損傷の可能性があり破傷風,肝

爆傷二次衝撃での体内異物 87

a b

c 図1:顔面 CT

a:骨条件(WW 2500, WL 400)

b:軟部組織条件(WW 400, WL 0)

c:適正条件(WW150 WL 50)

各図の矢印は異物の部位を示している.

図2:摘出した約 1.5 cm 大のシリコン樹脂製剤の異物

(4)

炎などの予防的治療も考慮する必要がある. お わ り に

爆傷においては,4 

つの衝撃を念頭におき加療す べきである.とりわけ,二次衝撃は飛散した破片が 体内に残存することによって膿瘍や瘻孔形成を伴い 難治性となることもある.体内異物を意識して,CT の撮影条件である WW や WL を変更し確認を行う ことや状況によってはエコーや MRI の併用も重要で ある.

本論文の要旨は2018年6月,第32第日本外傷学会 総会・学術集会にて発表した.

著者に開示すべき利益相反はありません.

文   献

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2. Gruss E(2006)A correction for primary blast injury criteria. J Trauma 60: 12841289

3. 一般社団法人日本外傷学会 東京オリンピック・パラリン

ピック特別委員会(2018)銃創・爆傷患者診療指針【Ver.1】,

日本外傷学会雑誌32:Ver11-Ver163

4. Sheffy N, Mintz Y, Rivkind AI, Shapira SC(2006)

Terror-related injuries: a comparison of gunshot wounds versus secondary-fragments-induced injuries from ex- plosives. J.Am Coll Surg 203: 297303

5. Peleg K et al(2004)Gunshot and explosion injuries:

characteristics, outcomes, and implications for care of terror-related injuries in Israel. Amm Surg 239: 311 318

6. 村上耕一郎ら(2018)まれな材質の消化管異物の質的診 断において CT による階調処理が有用であった1例.日本 腹部救急医学会雑誌38:129132

7. Hansen JE, Gudeman SK, Holgate RC, Saunders RA

(1988)Penetrating intracranial wood wounds: clinical limitations of computerized tomography. J Neurosurg 68: 752756

8. 鈴木慎二,金地明星,五十嵐充(1996)MRI が有用であっ た頬部木片異物.耳鼻臨床 89:583586

9. 大塚靖(2006)木片による咬筋内異物の2症例.昭和医 会誌 66:129135

10. 渡邉拓磨,中尾一祐,山田順子,三島清香,別所和久

(2017)顎下部に迷入した木片異物の1例.日本口腔外科学 会雑誌63:399404

福 田 隆 人他 88

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