(6)観光資源調査(欧州人観光客向け観光資源リストの作成)
A.調査の目的
本事業にて実施した外国人訪問目的調査(P15~)により、欧州人旅行者の行動には、自然
の風景を静かに眺めて楽しむよりも、スリリングなスポーツやアクティビティーを通じて、
自 然 に 積 極 的 に 触 れ 合 お う と す る 傾 向 が 強 く 見 ら れ た 。 ま た 、 北 海 道 の 原 生 自 然
(Wilderness)とそこに棲む野生動物をはじめ、アイヌ文化や日本の温泉と食の文化に対し
ても、興味や好奇心が強く、訪れた風土について多くのことを学ぼう、体験しようという
積極的な姿勢が見られた。
国内観光客、アジア観光客の視点ではなく、欧州人観光客の嗜好に合った北海道の観光
資源は何かを明らかにし、また、そうした情報を北海道プロモーション素材として活用す
るため、欧州人旅行者向け道内の観光資源をリストアップすることを目的に、
「体験型観
光事業者アンケート」を実施し、本業務で実施したその他の調査結果をもとに欧州人向け
観光資源リストを作成した。さらに、リストに挙げた観光資源一つ一つについて、欧州か
らの観光客受け入れ態勢整備の優先順位づけの目安とするため、欧州人の来訪が増える可
能性について評価した。
B.欧州人観光客向け観光資源リストの作成ステップ
「体験型事業者アンケート」を実施し、観光資源のリストアップのステップと抽出根拠
は図
4-8 に示したとおり、前項までに挙げた本事業の調査結果も入れながら、欧州人の嗜
好に合った観光資源を抽出・整理した。本事業の調査の他、外国人訪問目的調査でも欧州
人観光客の半数以上が参考としていたガイドブック「ロンリープラネット」に掲載されて
いる観光資源も、欧米人にとっては魅力ある観光資源であることは間違いないため、併せ
て観光資源としてリストに加えた。
図 4-8 欧州人観光客向け道内資源リストの作成ステップ1
北海道観光におけるツーリズムの定義づけ 1.スポーツツーリズム/2.カルチャーツーリズム 3.ネイチャーツーリズム/4.ガーデンツーリズム 5.グリーンツーリズム 外国人訪問目的調査 [4-3(2)]2
欧州人の嗜好に合致した資源分類の抽出 例) スポーツツーリズム:ハイキング・マラソン etc.. ネイチャーツーリズム:野生動物・植物・野鳥 etc...3
資源分類ごとの道内観光資源のリスト化 例)バックカントリー:旭岳 黒岳4
各資源の欧州人来訪可能性の評価 観光資源リストアップ・資源評価のステップ 抽出根拠・評価基準 欧州人観光客向け道内観光資源リスト 道内観光実態調査 [4-3(1)] 市町村アンケート [4-3(3)] ガイドブック「ロンリープラネット」 市町村アンケート [4-3(3)] スポーツ交流実態調査 [4-3(4)] 外国人訪問目的調査 [4-3(2)] 道内観光実態調査 [4-3(1)] ワークショップ [4-3(5)] 体験型観光事業者アンケート 体験型観光事業者アンケート①北海道における欧州人旅行者の特性と北海道のツーリズムの定義
■欧州人旅行特性
欧州人旅行者の特性を、アンケートやヒアリング等から、次の
3 点に整理した。
①異文化体験への知的好奇心が強い
日本文化に関心は強いが、北海道にしかない文化を探求する。②自然に対して、アグレッシブに行動する
北海道の自然やそれを代表する国立公園に高い関心を示すが、その中における行動は、自 然に畏敬の念を持つ日本人の行動とは異なり、チャレンジングでスリリングな行動を好む。③SIT(Special Interest Tour)という旅行形態をとる。
物見遊山型旅行ではなく、SIT(Special Interest Tour)という、自然や文化に対して、特 別な目的を設定したツアー形態が主流になっていると思われる。例えば、登山、スキー、バ ードウォッチング、バックパッキングなどにその典型的なスタイルが見受けられる。また、 全体的には、個人旅行の形態が主流であるが、目的や情況など合理的な理由や必要性から、 団体旅行を利用することがある。 <バックパッキングとは> 背中(バック)に衣食住のすべてを担ぎ(パッキング)、野や山をはいかいするスポーツのこと。 自然の中で生活すること自体を楽しもうというネイチャリストのメンタルなアウトドアラ イフである。目的地に真っすぐ到着することよりも、途中で寄り道をしながら、風景や生 活、動物や植物を楽しみながら歩くスタイル。 (北海道アウトドアライフ全科、木下法行 氏著書から引用)
■欧州人の嗜好に沿った北海道の観光資源の特性
欧州人旅行者の嗜好に合致する北海道の観光資源の強みは以下であると分析した。
①アイヌ文化
欧州人が求める日本を代表する公家文化や武家文化はないが、先住民族であるアイヌ民族の 文化が存在している。また、北海道には、縄文文化やオホーツク文化の時代があり、関係する 遺跡や出土品は、道内の博物館や資料館で展示されている。②保全された自然
北海道には、6 の国立公園と 5 の国定公園、12 の北海道立自然公園、13 のラムサール条約 登録湿地、世界自然遺産「知床」そして3 つの自然環境保全地域があり、北海道には豊かな自 然が残されている。そこには、北海道独自の自然環境があり、野生動物が棲息し、人々がそれ らの自然と親しむための環境が整備されており、豊かな観光資源として利用されている。③自然と調和した食
森や流氷が作り出した豊富な海産物や、冷涼な気候の元で品種改良や土地改良で作り出した 稲や野菜などの農産物、大規模な酪農地帯で作り出した乳製品があり、北海道は、日本の食料 基地として位置づけられ、北海道の食は、代表的な観光資源になっている■5 つのツーリズム
本事業において、道内の幅広い観光資源を体系的に整理するため、欧州人の旅行形態を
踏まえ、道内観光を
5 つのツーリズムに分類し、定義づけた。
○スポーツツーリズム
北海道を訪れた欧州人旅行者は、夏季は、登山やトレッキング、サイクリング、冬季に
はスキー、スノーボードなどのスポーツを楽しんでいることや(4-3(2)外国人訪問目的調
査結果)
、
2010 年東京オリンピック・パラリンピック開催によりスポーツの合宿や各種ス
ポーツ、アクティビティーの関心が高まることが予想されることから、「スポーツツーリ
ズム」を重要なツーリズムと捉え、このツーリズムに関する観光資源をリストアップした。
但し、欧州人のウォーキングは、単に歩くことだけでなく、自然観察の要素が強いため、
ネイチャーツーリズムに位置づけた。
<スポーツツーリズムとは> 日本には、プロ野球や J リーグをはじめ高いレベルを誇る競技を応援する「観るスポーツ」や ランニング、ウォーキング、サイクリングなど世代を超えて人気を集める「するスポーツ」、地域 密着のスポーツチームの運営や地域のイベントをボランティアとして活動するなどの「支えるス ポーツ」があり、これらの魅力あるスポーツ資源を最大限に活用し、異なる地域や国の人々の交 流を呼び起こし、国内観光の振興やインバウンド拡大の促進を求める、と定義されている。 (観 光庁HP より要約) ○カルチャーツーリズム
欧州人は、アイヌ文化などの先住民族の文化に興味があり、白老のアイヌ民族博物館
でのヒアリングによれば、アジア系旅行者と違い、熱心に耳を傾け、質問も多いという
(4-3(1)道内実態調査)。また、ワークショップでも参加した 4 か国すべてが、温泉を魅力
的な観光として取り上げたことから(4-3(5)ワークショップ)、アイヌ文化、温泉、食、祭
りなどの北海道の文化に関するツーリズムについて観光資源をリストアップした。但し、
北海 道の歴史的背景から外国人が考える公家文化や武家文化が道内には少ないため、伝
統的な日本文化である茶、書などは、リストアップの対象から外した。
<カルチャーツーリズムとは> 観光庁は、平成22 年 1 月 14 日の「観光立国推進基本計画におけるニューツーリズムの位置づ けについて」で、文化観光を「日本の歴史、伝統といった文化的な要素に対する知的欲求を満た すことを目的とするもの」と定義づけた。○ネイチャーツーリズム
欧州人旅行者は、北海道の野生動物に対する興味が高く、タンチョウ、オオワシ、シマ
フクロウなどのバードウォッチングやクジラ、イルカなどの海洋哺乳類のウォッチングな
どの関心が高い。また、阿寒湖のマリモの特異な生態系に、強い関心を持ったという事例
がある。ウォーキングを含む自然観察系のツーリズムに関する観光資源をリストアップし
た。外国人訪問アンケートでは、興味のある項目に「国立公園」
「自然」の回答が多かっ
た。
<ネイチャーツーリズムとは> 自然環境をフィールドとし、そこに生息する野生動物の生態や自然と人間の関わり、生物の多様性を テーマとした旅行と定義づけた。ホエールウォッチングやバードウォッチング、ナイトウォッチングな どをいう。ここでは、エコツーリズムの要素である環境保全や先住民族、地元民の生活改善、自然豊か な地域への責任ある旅行であるかどうかについては考慮していない。
○ガーデンツーリズム
アジア系の旅行者は、ラベンダーや芝桜などの花観光の人気が高い。また、最近の北
海道では、低木、樹木を主体とし、宿根草や一・二年草などを組み合わせて作られた
北海道ガーデンを巡る旅行がブームになっている。アジア系旅行者と比較するために、
このツーリズムに関する観光資源をリストアップした。
<ガーデンツーリズムとは> ラベンダー、ひまわり、芝桜など、人工的に造園された花畑やガーデンを巡る旅行と定義づけた。○グリーンツーリズム
欧州人訪問目的調査では、WWOOF の制度を利用して旅行するケースがあった。また
日本の田舎を知りたいという欲求から、農漁村を訪問地とするケースも見かけられる。北
海道の産業を特徴づける農業・漁業は北海道独自の文化・景観をもたらしていることから、
農家や漁師の家での民泊やファームレストランの食事、農産物等の収穫体験、漁業の体験
などのグリーンツーリズムに関する観光資源をリストアップする。
<グリーンツーリズムとは> 前帰の「観光立国推進基本計画におけるニューツーリズムの位置づけについて」で、グリーンツーリ ズムを「農山漁村地域において、自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動(農作業体験、 農林漁家民泊、食育など)」と定義づけた。 <WWOOF とは>World Wide Opportunities on Organic Farms(世界に広がる有機農場での機会)の略称。WWOOF とは、お金のやりとりなしで、「食事・宿泊場所」と「力」そして「知識・経験」を交換するしくみです。 有機農場や、環境を大事にする人たち、自然が豊かに残っている場所、または人と人との交流を大切に しているところと、農業や、生き方について学びたく、仕事の手伝いやカジノ手伝いをしてみたい人た ちをつないでいます。何をしたら相手が喜んでくれるかをお互いに念頭に置きながら一緒 に生活する ものです。(WWOOF ジャパンの HP から引用)
②「体験型事業者アンケート」調査の実施
上記のツーリズムに含まれる観光について、欧州人の嗜好に合致した資源分類や実際に
欧州人観光客の体験実績があるか実態を調査するための「体験型事業者アンケート」を実
施した。表
4-28 の実施概要と回答結果を示す。
表 4-28 体験事業者アンケート実施概要と回答結果 方法 アンケート調査 アンケート 対象 北海道が提供する「ほっかいどう体験型観光ガイド」で紹介されている北海道 内体験型観光施設・事業者一覧」より抽出した62 施設 (ほっかいどう体験型観光型観光ガイド: http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/hokkaido-taikenkanko.htm) 実施期間 平成26 年 11 月 15 日から 12 月 12 日 内容 ①提供するアクティビティー <スポーツ>□スキー(ゲレンデ)□クロスカントリー・スキー□バックカントリ ースキー□歩くスキー □スケート □スキューバ・ダイビング □サーフィン □ ウインドサーフィン □ヨット □スカイダイビング □パラセール □自転車 □ヒルクライム □マウンテンバイク □トレッキング□登山 □カヌー □ シーカヤック □ラフティング □釣り □ゴルフ □パークゴルフ □その他 <グリーン> □農漁業の収穫体験 □ファームイン □ファームレストラン <自然>□バードウォッチング □ホエールやイルカなど海洋動物ウォッチン グ □トレイル・ライディング □流氷アクティビィティー □その他( ) <文化>□アイヌ文化(学習、体験、見学)□縄文文化(同) □オホーツク文化 (同)□POP カルチャー □ガーデン □その他( ) ②外国人受け入れ実績有無と年間利用者数について ③外国人に人気のアクティビティー ④受け入れ態勢 ⑤外国人旅行者誘客について、意見や要望 回収結果 21 事業者よりアンケートを回収した。(回収率:34%) ●TAC とかちアドベンチャークラブ ●イルムの丘 YH ●ノーアスク ●ノースイ ーストカヌーセンター ●知床らうすリンクル ●北海道ライオンアドベンチャー ●NAC ニセコアドベンチャーセンター ●シンラ(知床ナチュラリスト協会) ●然別 湖ネイチャーセンター ●ニセコアウトドアセンター ●タルターガ ●佐々木果樹 園 ●釧路マシュー&リバー ●ゆにガーデン ●星人の宿ペンション和田 ●ノー ザンホースパーク ●真鍋庭園 ●標津町エコ・ツーリズム交流推進協議会 ●十勝 ネイチャーセンター ●うに採り体験 ●天売観光バス 回答内容 A:提供しているアクティビティー ツーリズム 資源分類 スポーツツーリズム (18 種) スキー、バックカントリー、クロスカントリー、 歩くスキー、スノーモービル、スノーシュー、自 転車、マウンテンバイク、フィッシング、パーク ゴルフ、スキューバダイビング、トレッキング、 登山、沢登り、ラフティング、ダッキー、カヌー、 シーカヤック ナチュラルツーリズム (7 種) 流氷ウォッチング、ガイドウォーク、森の散歩、 クジラウォッチング、アザラシウォッチング、 バードウォッチング、熱気球 グリーンツーリズム (4 種) ファームイン、収穫体験、ジャムつくり、ハーブ 体験 カルチャーツーリズム (4 種) アイヌ文化、縄文文化、産業文化、歴史(北方領 土)回答内容 B.外国人旅行者の受け入れ実績 外国人受け入れ実績 20 事業者(うち、欧州人の受入 11 事業者) 外国人利用者数 4980 人(統計を取っている12 事業者の実績) うち、欧州人 60 名(12 事業者のうち 4 事業者) C.外国人受け入れ態勢について 外国人対応の状況 外国語対応を行っている事業者:
7
事業者 (英語7 事業者、繁体字 3 事業者、簡体字 1 事業者) 外国人受け入れの 積極性について 積極的に受け入れたい事業者、受け入れたい事業者 を合わせると90%に上ったが、受け入れたい事業者 の中には、積極的に受け入れたいが、日本人の対応 で余力がないという事業者が1 事業者あった。 D.アクティビティーの内容について 外国人に人気のある アクティビティー <スポーツ> スキー/バックカントリースキー(主に欧米人) スノーシュー/キャットスキー/スキーレッスン/ラフティ ング/カヌー/フライフィッシング/わかさぎ釣り <ナチュラル> バードウォッチング/クジラウォッチング/ナイトウォッ チング/流氷ネイチャリング/アイスウォーク <その他> 市場のせりや荷揚げ風景/氷のグラス作り/いちごや さくらんぼ狩/押し花を使ったコースター作り/観光 引き馬/観光馬車/水産加工体験 E.その他の意見など ・日常会話は英語にて対応が可能。 ・公共交通機関の情報提供を、多言語で行ってほしい。外国からの問合せの半分くら いがアクセス方法や時刻表についての質問になっている。 ・ヨーロッパ、欧米型の観光については、必要なガイド力がないので、今後は多くの 機会があると良いと思う。 ・まず、一つ一つの施設自体が外国語を話せるスタッフを置くとか外国語のパンフレ ットや看板を設置する等の努力は勿論必要ですが、オール北海道、オールジャパン で上っ面だけの呼び込み CM ではない、温かいウエルカムの雰囲気を作らなけれ ば駄目かと思います。特に北海道はサービスレベルが低い。 ・天売島はまだ外国人観光客はほとんどおりません。しかし、80 万羽のウトウ帰巣 シーンは世界的資源であると思います。これからの利用客が増えることを期待した い。 ・性別、年代別、地域別に分け、どんなアクティビティーを望んでいるのか、詳細な ニーズを把握したい。 ・スタッフ用の多言語対応マニュアルの作成や研修などを行政主導でやってほしい。 積極的に受け 入れたい, 8, 38% 受け入れたい, 11, 52% 今後検討する , 2, 10%③資源分類の抽出
「体験型事業者アンケート」で寄せられた欧州人に人気のアクティビティーに加え、
「道
内観光実態調査」
「外国人訪問目的調査」の結果より、すでに欧州観光客が訪れていたり、
前述した、欧州人観光客の特性と合致する観光を「資源分類」として抽出した。資源分類
として最もバリエーションが豊富なのがスポーツツーリズムで、夏季
8 種、冬季 5 種を抽
出した。
表 4-29 欧州人の嗜好に合った観光資源分類ツーリズム
資源分類
スポーツツーリズム
<夏季>
登山・トレッキング/サイクリング/カヌー/カヤック/ラ
フティング/釣り/トライアスロン/マラソン
<冬季>
スキー/スノーボード/バックカントリースキー/クロス
カントリースキー/スノーシュー
カルチャーツーリズム
アイヌ文化/縄文文化/温泉/食文化/生活文化/産業施設/
歴史的建造物/祭り/イベント/ジオパーク
ネイチャーツーリズム
動物(各種ウォッチングツアーを含む)/植物/流氷/ウォ
ーキング/キャンプ
ガーデンツーリズム
都市公園
グリーンツーリズム
農業/酪農/民泊/収穫体験
④資源分類ごとの道内観光資源抽出
ここまでは、どの分野に欧州人が興味をもっているか、という大きな傾向を明らかにし、
道内の観光資源を整理するための枠組みを設定した。
道内の観光資源の抽出にあたっては、観光資源分類が体験・観覧できる場所や施設を抽
出する。抽出する基準は、以下の
3 つである。
1. 市町村が外国人に勧める観光資源、および、外国人の来訪実績がある観光資源
2. 道内観光実態調査・スポーツ交流実態調査より欧州人の参加や交流があると挙げ
られた観光資源
3. 体験観光事業者がツアー資源として利用している観光資源
4. ロンリープラネットで特に推薦されている観光資源
※※「ロンリープラネット(Lonely Planet)」の中で、「Best Hikes」、「Must-visit Recommendation」 「Don’t Miss」、「Worth a Trip」の 4 つのお勧めの特記があるものと別枠コラム「Remark Spot」 に挙げられたもの。
まず、市町村アンケート設問中の、「欧州人旅行者が訪れる観光資源」と「野外アクテ
ィビティーを楽しむ欧州人の有無」、「そのアクティビティーの内容」の情報を対照して、
観光資源を抽出した。また、体験型観光事業者アンケートで、欧州人旅行者への取り扱い
があるという事業者のアクティビティーを対照し、アクティビティーを実施する具体的な
地名などは、アンケートの回答に明記されていないため、その体験型観光事業者のホーム
ページで確認したフィールドを特定しながら、調査を進めた。さらに、外国人観光客に最
も参考とされているガイドブック「ロンリープラネット」に掲載されている観光資源につ
いては、観光客の嗜好を踏まえており、また外国人の訪れる可能性が高いことから、掲載
されている観光資源の中から特に観光客に訪れることを勧める特記があるものを観光資
源として抽出した。抽出した観光資源は表
4-30~表 4-35 である。欧州人の来訪実績につ
いては、A:市町村アンケートで欧州実績有、B:体験事業者・宿泊事業者アンケートでの欧
州人来訪実績あり(ヒアリング外国人有)、C:観光事業者ヒアリングにより来訪実績有で
示した。
スポーツツーリズム
スポーツツーリズムに関係する
87 の観光資源(観光施設、大会を含む)のうち 62 の観光
資源(表 4-30)は、国立公園と国定公園にあることから、国立公園、国定公園が、スポーツ・
アクティビティーの宝庫といえるだろう。
登山トレッキングついて
登山トレッキングで人気がある観光資源は、ロンリープラネットでも、重点的に紹介さ
れた日本百名山の、利尻山、羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、大雪山、トムラウシ山、十勝岳、
幌尻岳、羊蹄山などがあげられる。一方、花の百名山といわれる富良野岳、アポイ岳、夕
張岳等については、欧州人の来訪の実績が確認できなかった。ロンリープラネットでも、
高山植物についての記載がなく、筆者の特徴かもしくは欧州人旅行者の特性として、高山
植物への関心が薄いかは判断できない。
サイクリングについて
サイクリングは欧州で人気のあるスポーツであり、北海道の自然あふれる景観はサイク
リングに最適と考えられたが、サイクリングのための道路整備が進んでおらず、自転車専
用道設置や公共交通機関への自転車の積み込みなどの整備が進んだ欧州人にとっては、ま
だ安心して楽しめる環境が整っていないことに注意が必要である。
スキー等ウィンタースポーツについて
スキー関係では、欧州人旅行者にとっての最大の魅力は、バックカントリー(Off-piste)
にあるようだ。それを楽しむため、最新の情報を交換しながら、道内の広範囲な地域を移
動していることが分かった。また、パウダースノーは、バックカントリーだけのものでは
なく、クロスカントリースキーにとっても、その価値は高く評価されており、道北と道東
で、クロスカントリースキーを楽しんでいる。パウダースノーやバックカントリーは、冬
季に欧州人旅行者を地域に呼び込むためには、最大の価値ある資源であり、各市町村での
有効な活用が望まれる。
表 4-30 欧州人向け北海道観光資源一覧~スポーツツーリズム~ 資源分類 資源名(一部、観光施設、大会イベント名) 市町村名 欧州人の 来訪実績1
登山
トレッキング
代表的な山岳 ( )内は標高 単位m 利尻山(1721) 利尻町、利尻富士町 A 十勝岳連峰・十勝岳(2077) 上富良野町 A 十勝岳連峰・美瑛岳(2052) 美瑛町 A トムラウシ山(2141) 新得町 C 表大雪・黒岳(1984) 上川町 A 表大雪・旭岳(2290) 東川町 A 斜里岳(1547) 斜里町 A 羅臼岳(1660)~硫黄山(1536)縦走 羅臼町、斜里町 C 羅臼岳(1660) 斜里町 C 知床湖五湖 斜里町 C 雌阿寒岳(1499) 釧路市 A 雄阿寒岳(1371) 釧路市 A 白湯山(650) 釧路市 A 摩周岳(857) 弟子屈町 ニセコアンヌプリ(1309) ニセコ町 A 羊蹄山(1898) 倶知安町 A 目国内岳(1220) 蘭越町 A 駒ケ岳(1131) 森町 A 駒ケ岳(1131) 鹿部町 A 駒ケ岳(1131) 七飯町 幌尻岳(2053) 新冠町 恵庭岳(1320)、風不死岳(1102) 千歳市 昭和新山(398)、有珠山(729) 壮瞥町 C 樽前山(1041) 苫小牧市 岬めぐりトレッキングコース 礼文町 恵山(618)、函館山トレッキング 函館市 ニセコ・サーキット・ハイキング ニセコ町サイクリング
ニセコ山系(ニセコ HANAZONO ヒルクライム 8 月) 倶知安町 A 網走~サロマ湖 網走市 利尻島自転車道路 利尻町 ニセコ山系(ニセコクラシック 7 月) ニセコ町 A 優駿浪漫街道 新ひだか町 A 春国岱〜別海町〜中標津町〜標津町 別海町 A 湿原の夢ロード 釧路市 A インターナショナル・オホーツクサイクリング 雄武町他 A 噴火湾海岸コース、大沼駒ヶ岳コース 森町 Aカヌー
カヤック
ラフティング
尻別川 ニセコ町 B 屈斜路湖、釧路川源流、釧路湿原、 弟子屈町 B 相泊~知床岬 羅臼町 十勝川 音更町 B 空知川、かなやま湖 南富良野町 A 塘路湖、釧路川、シラルトロ湖、釧路湿原 標茶町 B 釧路川 釧路町 A 尻別川 倶知安町 B 然別湖 鹿追町 B釣り
尻別川(フライフィッシング) ニセコ町 B 然別川、然別湖、十勝川(フライフィッシング) 鹿追町 B1 『欧州人の来訪実績ランク』 A:市町村アンケート欧州人の来訪実績有と回答を得た資源 B:体験事業者ヒアリングにより欧州人の来訪実績と回答を得た資源 C:観光関連事業者ヒアリングで欧州人の来訪実績の可能性有と指摘があった資源
資源分類 資源名(一部、観光施設、大会イベント名) 市町村名 欧州人の 来訪実績1 網走川(フライフィッシング) 網走市 B 塘路湖(ワカサギ釣り) 標茶町 A
トライアスロン
大雪山忠別湖トライアスロンin東川 東川町 A アイアンマン・ジャパン・北海道 洞爺湖町 Aマラソン
北海道マラソン 札幌市 Aスキー
スノーボード
富良野スキー場 富良野市 A ニセコマウンテンリゾート グランヒラフ 倶知安町 A ニセコビレッジスキー場、アンヌプリ国際スキー場 ニセコ町 A ルスツリゾート 留寿都村 C テイネスキー場 札幌市 C 旭岳、キャンモアスキー場 東川町 A 星野リゾートトマムスキー場 占冠村 A クラブメッド、サホロリゾート 新得町 A 国設南ふらのスキー場 南富良野町 A 天狗山スキー場、朝里川温泉スキー場 小樽市 A 三段山 上富良野町 A チセヌプリスキー場 蘭越町 A 名寄ピヤシリスキー場 名寄市 Aバックカントリー
旭岳 東川町 B 黒岳 上川町 B 三段山 上富良野町 A ニセコいわない国際スキー場(キャットスキー) 岩内町 A 石勝高原など 音更町 B 音江山 深川市 B ニセコ山系、羊蹄山(キャットスキー) 倶知安町 B ニセコ山系、羊蹄山麓 ニセコ町 B 藻琴山 弟子屈町 Bクロスカントリー
クロスカントリー名寄大会なよろ健康の森クロスカント リーコース 名寄市 A 旭岳クロスカントリーコース 東川町 A オホーツク歩くスキーの集い 網走市 A ちとせホルメンコーレンマーチ 千歳市 A 大滝国際スキーマラソン 伊達市 A バーサーロペット・ジャパン 旭川市 A 札幌国際スキーマラソン(クロスカントリーと歩くスキー) 札幌市 A 宮様スキー大会国際競技会 札幌市 A 屈斜路湖周辺 弟子屈町 B 然別港横断クロスカントリースキー 鹿追町 B ニセコ山系、羊蹄山麓 ニセコ町 A イルムの丘 深川市 Bスノーシュー
ニセコ山系、羊蹄山麓 ニセコ町 Aネイチャーツーリズム
日本、特に北海道の固有種である野生動物への関心が高い。特に、趣味として一つの分
野を確立しているバードウォッチングは、オオワシ、シマフクロウ、タンチョウの
3 ビッ
グバードを求めて、イギリス人のバードウォッチングツアーが、根室市や鶴居村、羅臼町
を訪れている実績がある。
ヒグマやクジラを見学するために、知床半島へ来ているという、体験型観光事業者アン
ケートでの回答があった。また、フランス人を中心に、流氷シーズンに網走市やオホーツ
ク沿岸を訪れるという情報があり、北海道でしか見ることのできない野生動物や自然現象、
阿寒湖のマリモなどは、SIT の旅行者にとって、貴重な観光資源である。
表 4-31 欧州人向け北海道観光資源一覧~ネイチャーツーリズム~ 資源分類 資源名 市町村名 欧州人の 来訪実績2野生動物
知床羅臼沖のクジラ、イルカ 羅臼町 C 抜海村のタテゴトアザラシ 稚内市 襟裳岬のゼニガタアザラシ えりも町 ベア・マウンテンのヒグマ 新得町 網走沖のクジラ、イルカ 網走市 C 知床半島海岸のヒグマ 斜里町 C 釧路湿原のタンチョウ 釧路市 C キタキツネ、ナキウサギ 道内 エゾリス、シマリス、エゾシカ 道内 春国岱のオオワシ、オジロワシ 根室市 A 野付半島のタンチョウ 別海町 A 屈斜路湖のオオハクチョウ 弟子屈町 C 網走沿岸のミズナギドリ 網走市 C 鶴見台のタンチョウ 鶴居村 A 夜の動物観察 鹿追町 B植物
能取湖のサンゴ草群落 網走市 高山植物の群落 礼文町 サロベツ原野の原生花園 豊富町 大雪山の高山植物群落 上川町 C 小清水原生花園 斜里町 阿寒湖のマリモ 釧路市 C流氷
オホーツク海 オーロラ号 網走市 C オホーツク海 雄武町 A オホーツク海 斜里町 B オホーツク海 羅臼町 Bウォーキング
和琴半島ネイチャートレイル 弟子屈町 つつじヶ原ネイチャートレイル 弟子屈町 オンネトーネイチャートレイル 釧路市 大沼周遊ウォーキングパス 七飯町 C 知床五湖ネイチャートレイル 斜里町 C 釧路湿原塘路湖周辺コース 標茶町 Aキャンプ
和琴半島湖畔キャンプ場 弟子屈町 阿寒湖温泉キャンプ場 釧路市 利尻北麓野営場 利尻町 久種湖畔キャンプ場 礼文町 まあぶオートキャンプ場など 深川市 A レークサイド桜岡キャンプ場など 剣淵町 A 達古武オートキャンプ場 釧路市 A 浜中海浜公園など 留萌市 A2 『欧州人の来訪実績ランク』 A:市町村アンケート欧州人の来訪実績有と回答を得た資源 B:体験事業者ヒアリングにより欧州人の来訪実績と回答を得た資源 C:観光関連事業者ヒアリングで欧州人の来訪実績の可能性有と指摘があった資源
カルチャーツーリズム
カルチャーツーリズムにおいて、北海道においては日本の伝統文化よりはアイヌ文化・
オホーツク文化・縄文文化など日本他地域にはない文化が観光資源としての価値が高い。
市町村アンケートでは、アイヌ関連施設への欧州人訪問実績があったのは
2 市 1 町のみ
の回答であったが、
JNTO 認定観光案内の紹介で旭川市立博物館を訪れた旅行者から、ア
イヌ文化に感銘したという話や、白老のアイヌ民族博物館でが、熱心に耳を傾け、質問も
多いというヒアリング結果などから、アイヌ文化は欧州人旅行者の知的好奇心を満足させ
る最大の文化的資源であると考える。また、市町村アンケートによって、全道の郷土資料
館等にも、アイヌ文化に関する資料が展示されていると報告を受けたが、そうした情報が、
地域のあらゆる場面で欧州人旅行者に提供されることになれば、更に関心・理解が高まる
ものと推察する。
オホーツク文化は、大勢のフランス人旅行者が、道立北方民族博物館を訪問している実
績から、重要な資源だと推測する。
縄文文化については、資源価値を判断できる調査はできていないが、東北、北海道が一
体となってその価値をアピールするべき資源と思われる。
温泉は、日本の文化を楽しもうという旅行者にとって、極めてユニークな体験ができる
資源であることは間違いがない。今回の市町村アンケートでは、歌志内市、士幌町、妹背
牛町、雄武町からの回答を予想していなかったが、登山やバックカントリースキーの後に、
温泉を楽しむ欧州人旅行者がいるという市町村アンケートがあった。また、北海道には、
自然に囲まれた野趣ゆたかな露天風呂があり、北海道ならではの温泉体験が、チャレンジ
ングな欧州人旅行者にとって有力な観光資源となる。
表 4-32 欧州人向け北海道観光資源一覧~カルチャーツーリズム~資源分類
資源名
市町村名
欧州人の 来訪実績3アイヌ文化
縄文文化
弟子屈町屈斜路コタン、アイヌ民族資料館(縄文文化) 弟子屈町 A 阿寒湖アイヌシアター、阿寒湖アイヌコタン 釧路市 A サッポロピリカコタン 札幌市 北大植物園 札幌市 北海道アイヌ総合センター 札幌市 旭川市立博物館、川村カ子トアイヌ記念館 旭川市 C アイヌ民族博物館 白老町 C 函館市立博物館、函館市立北方民族資料館 函館市 A 二風谷アイヌ文化博物館 平取町 C 萱野茂二風谷アイヌ文化博物館 平取町 C 道立北方民族博物館 網走市 C 小樽市総合博物館、手宮洞窟保存館 小樽市 斜里町立知床博物館 斜里町 A 江別市郷土資料館、道立埋蔵文化財センター 江別市 A温泉
十勝岳温泉 上富良野町 A 吹上温泉 上富良野町 谷地頭温泉 函館市 湯の川温泉 函館市 C3 『欧州人の来訪実績ランク』 A:市町村アンケート欧州人の来訪実績有と回答を得た資源 B:体験事業者ヒアリングにより欧州人の来訪実績と回答を得た資源 C:観光関連事業者ヒアリングで欧州人の来訪実績の可能性有と指摘があった資源
資源分類
資源名
市町村名
欧州人の 来訪実績3 大沼温泉 七飯町 C 層雲峡温泉 上川町 A 旭岳温泉 東川町 C 岩尾別温泉、カムイワッカ湯の滝 斜里町 C ウトロ温泉 斜里町 C 熊の湯、セセキ温泉、相泊温泉 羅臼町 川湯温泉足湯 弟子屈町 C 砂湯、池の湯、コタンの湯、和琴湯 弟子屈町 五色温泉 ニセコ町 ひらふ温泉 倶知安町 C 新見温泉 蘭越町 C 定山渓温泉 札幌市 丸駒温泉、支笏湖温泉 千歳市 C 登別温泉 登別市 C うたしない温泉 歌志内市 A 十勝川温泉 音更町 A 北湯沢温泉 伊達市 A しほろ温泉 士幌町 A 妹背牛温泉 妹背牛町 A オホーツク温泉 雄武町 A食文化
さっぽろラーメン・スープカレー 道内 C ジンギスカン、ルイベ、石狩鍋 C カニ料理、寿司 C生活文化
函館朝市 函館市 二条市場 札幌市 和商市場 釧路市 副港市場 稚内市産業施設
函館ビール 函館市 サッポロビールの札幌ビール園 札幌市 C 小樽ビール 小樽市 大雪地ビール 旭川市 網走地ビール 網走市 森林工芸館 置戸町 A セラミックアートセンター 江別市 A 菓子工場 音更町 A 羅臼漁港の市場(セリ、荷揚) 羅臼町 A歴史的建造物
赤レンガ倉庫 函館市 C 旧函館区公会堂 函館市 C 松前城 松前町 横山家、中村家住宅、旧檜山爾志郡役所 江差町 小樽運河 小樽市 C 駅前通歴史的建造物群など 増毛町 A祭り、イベント
さっぽろ雪まつり 札幌市 C さっぽろオータムフェスト 札幌市 冬祭り、コタン祭り 旭川市 オホーツク流氷まつり 網走市 オロチョンの火祭り 網走市 まりも祭り 釧路市 へそ祭り、富良野ワインフェスティバル 富良野市 ジャパンカップドッグレース 稚内市ジオパーク
アポイ岳ジオパーク(日本ジオパーク) 様似町 A 洞爺湖有珠山ジオパーク(世界ジオパーク) 伊達市 Aガーデンツーリズム
アジア系旅行者が花観光で訪れる施設への欧州人観光客の来訪実績は極めて少なかっ
た。ガーデンの体験型観光事業者のアンケート結果でも、「欧州人旅行者の実績はない、
不明」という回答がほとんどだったことから、ガーデンツーリズムへの欧州人旅行者のニ
ーズは他のツーリズムに比べて低いと思われる。
ただし、市町村アンケートにおいて、欧州人旅行者の来訪実績があるとの回答はあった
国定公園内の公園や、スポーツ施設が併設されているような公園はスポーツやアクティビ
ティーとの組み合わせにより、それらの活動拠点として観光資源と捉える必要があると考
えられる。
表 4-33 欧州人向け北海道観光資源一覧~ガーデンツーリズム~資源分類
資源名
市町村名
欧州人の 来訪実績公園
大通り公園 札幌市 C モエレ沼公園 札幌市 C 大沼国定公園 七飯町 A ファーム富田 富良野市 C しかべ間歇泉公園 鹿部町 A 道立サンピラーパーク 名寄市 A さるふつ公園 猿払村 A チューリップ公園 湧別町 A ラベンダー園 中富良野町 A 野幌森林公園 江別市 A コスモス公園 遠軽町 A 十勝が丘公園 音更町 A 黄金岬海浜公園など 留萌市 A 『欧州人の来訪実績ランク』 A:市町村アンケート欧州人の来訪実績有と回答を得た資源 B:体験事業者ヒアリングにより欧州人の来訪実績と回答を得た資源 C:観光関連事業者ヒアリングで欧州人の来訪実績の可能性有と指摘があった資源グリーンツーリズム
ファームインやファームレストラン、農業体験などは、ドイツ人は身近な体験・景観で
あることがワークショップで指摘され、欧州人旅行者にとって有効な資源であるかは、今
回の調査では特定できなかった。ただし、有機農場などで働きながら、長期滞在・周辺の
観光をするシステムがあることから、そのような志向のある外国人にとっては、北海道で
は有望な資源になる可能性がある。
市町村アンケートからは、欧州人観光客の旅のスタイルの一つであるバックパッキング
の愛好者は、キャンプ場利用が多いことが示唆された。グリーンツーリズムを補完する資
源として価値は高い。
食に関する関心度は来道の第
1 の目的にはなり得ないことが明らかになったが、昭和
28 年に始めたえりも式緑化工法の魚付保安林が、日高の昆布を再生させたことや、昭和
63 年に、道漁業婦人連合会が、厚岸のカキを再生させるために「お魚を殖やす植樹活動」
を開始した事例などを、グリーンツーリズムの資源として再評価すると、環境問題や地産
池消の意識が高い欧州人旅行者にとっては、SIT や、旅行の満足度を高めるなど、資源価
値が高いと考えられる。
表 4-34 欧州人向け北海道観光資源一覧~グリーンツーリズム~ 資源分類 資源名 市町村名 欧州人の 来訪実績農業、酪農
田園 美瑛町 十勝平野 帯広市 ワイン 池田町 チーズなど乳製品 富良野市 ワイン 富良野市民泊収穫体験
都市農村交流アグリ工房まあぶ 深川市 A イルムの丘 深川市 B 『欧州人の来訪実績ランク』 A:市町村アンケート欧州人の来訪実績有と回答を得た資源 B:体験事業者ヒアリングにより欧州人の来訪実績と回答を得た資源 C:観光関連事業者ヒアリングで欧州人の来訪実績の可能性有と指摘があった資源4-4.道内における欧州旅行者動態分析
(1)分析方針
本項では、4 章に報告した一連の調査報告分析を実施し、ターゲット 6 か国での動態・
志向における差異がないか、また各国における特性について分析した。
分析においては、
「4-3(1)道内実態調査におけるヒアリング」、
「北海道宿泊統計、法務省
出入国管理統計、
JNTO 認定観光案内所外国人対応人数データ」および、
「4-3(2)外国人訪
問目的調査における夏季および冬季欧州人観光客アンケート」
、「4-3(5)欧州人ワークショ
ップ」の結果を国別に解析した。なお、本調査でサンプル数が多く、実際に来道者数統計
でも数が多い上位
3 か国、イギリス・フランス・ドイツの国別データをまとめ、その動向
と志向について分析を行った。なお、分析対象としたのは以下の
8 項目である。
A.北海道への交通手段
B.道内の移動方法
C.日本・北海道での滞在期間
D.北海道での滞在期間
E.宿泊施設種別と、月別来訪者数(北海道の統計)
F.北海道に対する関心
G.北海道で実際に行ったアクティビティー
H.道内の訪問地
なお、イタリア、スペイン、オランダについては、それぞれサンプル数が少ないため
※データからの分析は行わず、対面アンケート調査時に聞き取った内容により動態分析を後
述する。
※イタリア:【夏季】回答数3、【冬季】回答数 0 スペイン:【夏季】回答数7、【冬季】回答数 3 オランダ:【夏季】回答数8、【冬季】回答数 7(2)国別分析結果
A.イギリス・フランス・ドイツ
「イギリス」
「ドイツ」
「フランス」の
3 か国についての分析結果を以下に述べる。分析
結果として挙げたグラフは、すべて「4-3(2)外国人訪問目的調査」データより作成したも
のである。
旅行動態
【来道時期】
○来道者数のイギリス:フランス:ドイツのおよその比率は 4:2:1 ○イギリス人は、2 月をピークに冬季に集中する(1~3月) ○フランス人は、8 月と 2 月の来道者数が拮抗。8 月にはイギリス人を上回る。 ○イギリス・ドイツは 2 月をピークとした冬季に、フランス人は 7~8 月の夏季に北海道を訪 問する傾向が強い。 4-3(1)の北海道宿泊統計から、来道者数のおよその比率はイギリス:フランス:ドイツ 4:2:1である が、アンケートはサンプル数が少ないため 3 か国の差は小さくなるものの(夏季 1.5:1:1、冬季 1.7:1:1) イギリス人は他の 2 か国の 1.5 倍以上の来道者数がある。 来道者数は、イギリス人は 2 月をピークに 1 月~3 月の冬季に集中する。これに対しフランス人 は 8 月と 2 月の来道者数が拮抗しており、8 月にはイギリス人より実数においても勝る。ドイツ人 はほぼ通年一定している。JNTO 認定観光案内所への来所者数データからも同様の傾向が読み取れ る。ただし、観光案内所ではドイツ人は 2 月にピークがある。以上のことから、イギリス・ドイツ は 2 月をピークとした冬季に、フランス人は 7~8 月の夏季に北海道を訪問する傾向が強いと考えら れる。来道目的は志向分析で述べる。【滞在期間】
<滞在期間> ○欧州全体で夏季は 2~3 週間。1 週間以下の短期旅行者は極めて少ない ○冬季は夏季よりも短いが、1 週間以下の短期は少数。そのうち北海道での滞在期間は 1 週間 以下であるが、フランス人については冬季でも 1~2 週間道内に滞在する人が最も多い。 日本の滞在期間については、アンケートによると、欧州全体で夏季は 2~3 週間という人が最も多く、 1 週間以下の短期旅行者は極めて少ない。【図 1-1、図 1-2 参照】 冬季は夏季よりも短くなるものの、 1 週間以下の短期の訪日旅行は変わらず少数派である。そのうち北海道での滞在期間は 1 週間以下であ るが、フランス人については冬季でも 1~2 週間道内に滞在する人が最も多く、他国と比較すると北海 道を長く旅行する傾向があるといえる。【図 2-1、図 2-2 参照】 【図 1-1】日本滞在期間(夏季) 【図 1-2】日本滞在期間(冬季)【図 2-1】北海道滞在期間(夏季)
【交通手段について】
<道外~北海道の移動手段> ○各国共通して、夏季は JR 利用が全体の 1/3。冬季は飛行機利用が圧倒的に多い。 (冬季はスキー客が多く、日本国内周遊よりも、スキー場を目的として来道していると考えられる) ○フランス人は冬季でも北海道へ移動に JR を利用する層が一定割合ある。 <道内の交通手段> ○各国共通して、 JR、バスといった公共交通機関の利用が圧倒的に多い。 北海道への移動手段として、夏季は JR 利用が全体の 1/3 を占めるが冬季は飛行機利用が圧倒的 に多いという傾向は各国にほぼ共通していた。4-3(1)の新千歳空港への入国者数データによると、 12 月~3 月の 1 ヶ月平均の入国者数は、次いで多い 7~8 月の平均の 2.5 倍近くに増加することか らもその事実がうかがえる。 道内の交通手段では、欧州全体で JR、バスといった公共交通機関の利用が圧倒的に多かった。【図 3-1、図 3-2 参照】 そのなかでフランス人は冬季でも北海道へ移動に JR を利用する層が一定割合 であり、季節を問わない JR ユーザーといえる。【図 4-1、図 4-2 参照】 4-3(1)の道内実態調査に おけるヒアリングでも、フランス人のジャパンレールパス利用率が高いとの結果があり、欧州人ワ ークショップにおいても唯一フランス人から北海道新幹線への言及(期待)があったことから、特 に対フランスにとって有効な PR 素材になると考えられる。 【図 3-1】道内の交通機関(夏季)【図 3-2】道内の交通機関(冬季)
【図 4-1】北海道への移動手段(夏季)
【宿泊の傾向について】 ○各国共通して、ジネスホテル、ユースホステル、ゲストハウスなど比較的安価な施設を選択す る傾向が顕著 宿泊施設の利用については、欧州人全体でビジネスホテル、ユースホステル、ゲストハウスなど 比較的安価な施設を選択する傾向が顕著だった。その理由として、滞在日数が比較的長いため旅行 中の消費に占める割合が大きい宿泊費を抑えたいものと推測される。【図 5-1、図 5-2 参照】 【図 5-1】宿泊施設(夏季)
欧州人(イギリス・フランス・ドイツ)の北海道旅行における志向
【関心の傾向について】
○各国共通、季節を問わず「自然」 ○夏季は「自然」、「国立公園」、「景色・景観」が関心の上位を占める。 ○冬季は、「雪・自然」に次いで、「スポーツ(スキー)」への関心が高い ○冬季、イギリス・ドイツでは、「雪・自然」+「スポーツ」の組み合わせが全体の半分を占めて おり、目的をスキーに特化して北海道を訪れている。 ○フランスでは「国立公園」への関心が夏季・冬季に渡り高く、フランス人の北海道の国立公園 に対する関心の度合いは他国に比べて高い。 欧州人の北海道に対する関心は、季節を問わず「自然」である。それはアンケート結果にも表れ ており、ワークショップで欧州人参加者が作成したポスター、発言からもうかがえる。夏季は「自 然」、「国立公園」、「景色・景観」が関心の上位を占めた。冬季は、「雪・自然」に次いで、夏季では 回答の少なかった「スポーツ」があがるが、これはスキーに対する関心の高さである。特にイギリ ス・ドイツでは、「雪・自然」+「スポーツ」の組み合わせが全体の半分を占めており、目的をスキ ーに特化して北海道を訪れると考えられる。一方、夏季に関心が高かった「国立公園」は冬季は欧 州全体で関心が低くなる(イギリス、ドイツではゼロ)ものの、フランスでは引き続き上位を占め、 フランス人の北海道の国立公園に対する関心の度合いは他国に比べて高いといえる。【図 6-1、図 6-2 参照】 【図 6-1】北海道に対する関心(夏季)【行動傾向】
○欧州全体の傾向として「観光」、「温泉」などの一般的な観光行動に続いて「登山・トレッキン グ」を行う人が多い ○冬季は欧州全体で「スキー・スノーボード」が最多 ○基本的に団体旅行をせず、自分たちのペースで自由に行動したい欧州人にとっては、プログラ ム化された体験は好まない ○欧州人の描く自然体験 <特定の目的(趣味)を持たない一般観光客> ■体験内容がプログラム化されていないこと(体験の自由度が高いこと) ■体験に必要な道具が少ないこと <特定の目的(趣味)のために来道した観光客> ■必要なガイドや装備への準備・費用をいとわない 実際に北海道で行ったアクティビティーについては、夏季は欧州全体の傾向として「観光」、「温 泉」などの一般的な観光行動に続いて「登山・トレッキング」を行う人が多い。それは、4-3(1)の 道内実態調査のヒアリングにもあるように、自然(国立公園を含む)に対する関心の高さと相関す る。一方、冬季は欧州全体で「スキー・スノーボード」が最多となる。【図 7-1、図 7-2 参照】 【図 6-2】北海道に対する関心(冬季)【図 7-1】北海道で行ったアクティビティー(夏季)
自然を楽しむアクティビティとして、登山・トレッキングが突出しており、その他のカヌーやゴ ルフ、釣り、流氷体験を選ぶ人は少なかった。これは地図とコンパスが使えれば初めての山でも可 能な登山と違い、地図だけでは現地の川の様子は分からず、道具と技術を要するカヌーは自分たち だけで容易にできない、もしくはガイドが必要になるという難しさがあるからであろうと思われる。 また、欧州人は基本的に団体旅行をせず、その土地土地に出向いて自分たちのペースで自由に行動 する特徴がある。したがって、特定の体験を目的にしている場合は別として、ふらりと立ち寄った 場所での観光を選ぶ際、プログラム化された体験、例えば、体験ツアーとして催行される流氷体験 を選択することは少ないのではないかと推測される。またゴルフ場は自然の範疇に入らず、釣りは 釣った後の処理の問題がある。 欧州の人々にとって北海道での自然体験は季節を問わず最大の魅力であることは明らかである が、なかでも彼らが描く自然体験には次のような基準のようなものがあると考えられる。 ■人間による過剰な維持管理がされていないこと(できるだけ元の自然の姿を保っていること) <特定の目的(趣味)を持たない一般観光客> ■体験内容がプログラム化されていないこと(体験の自由度が高いこと) ■体験に必要な道具が少ないこと <特定の目的(趣味)のために来道した観光客> ■必要なガイドや装備への準備・費用をいとわない 自然を楽しむ術を身につけている彼らには、これらの基準をふまえたうえで、自然のフィールド と様々なアクティビティーの情報発信を行っていく必要がある。料理にたとえると、一流の味を一 度に味わえるコース料理より、豊富なメニューのなかから食べたいものを自分で選ぶアラカルト料 理のイメージかもしれない。 このほか、夏には少なかった「イベント・祭り」が冬季には 2 番目、3 番目の上位にあがるが、 これはさっぽろ雪まつりの影響である。毎年この時期には欧州各国で雪まつりがニュースで取り上 げられるとのヒアリング結果もあることから欧州での認知度も高く、スキーを目的に来道する欧州 からの旅行者にとって 2 月はプラスαの北海道の魅力を楽しめる季節といえる。