気温データによる鉄道トンネル内のつらら発生予測の試み
北海道大学大学院 正会員 ○岩花 剛 北海道旅客鉄道株式会社 正会員 鈴木大樹 北海道旅客鉄道株式会社 正会員 小川直仁 北海道大学大学院 正会員 赤川 敏
1.はじめに
鉄道トンネルに発生するつららは,電気設備への悪影響ならびに車両への損傷をもたらすため,対策が必要 である.最も効果的なつらら対策は,トンネル新設に際して断熱工を伴った NATM 工法を施し,水の供給源を 絶ち,地山の温度を氷点下に下げないような施工をすることである.しかし,現実には施工年代の古いトンネ ルが数多く使用されており,北海道内の鉄道トンネルの 80%につららの発生が見られる(小川他,2007).施 工年代の古いトンネル内のつらら発生箇所に対して部分的に漏水防止工を施すことによって各トンネル内の つらら発生数を減らすことができるが,すべての発生箇所に対策工を施すことは費用や時間の制限があり,現 実的ではない.したがって,鉄道トンネル内に発生したつららはほぼ毎日の巡回により,人力で除去されてい るのが現状である.本論文では,こうした人力によるつらら除去作業の効率化を目的として,気温データを用 いた鉄道トンネル内のつらら発生日を予測する試みについて報告する.
2.トンネル気温及びつらら発生の観測
観測は,北海道・旭川保線所管轄の 5 トンネルで 2006 年 12 月から 2007 年 3 月の間に実施した.各トンネ ル内の 1.5m高に延長方向に沿って 5 箇所ずつ温度ロガー(RTR-51, A&D, Japan)を設置して気温を測定した.
サーミスタ温度センサーは氷点校正を行い,0.1℃の確度とした.第二伊納トンネルに関しては,クラウン部 の気温測定も同様に行った.つららの発生状 況は,毎日のつらら除去作業の際に発生位 置・大きさ別発生本数を記録した.
図
1. 2006−2007
年冬期の第二伊納トンネル内の日最低 気温分布(上)及びつらら発生数分布(下)の時系列.縦軸は,入口からの距離(m)を示す.出口は 1242m 地点.
3.観測結果
図 1 に第二伊納トンネル内の日最低気温分 布(上)及びつらら発生数分布(下)を時系 列で示した.トンネル内最低温度は期間を通 じて出入り口で低く,トンネル中央部で最も 高くなっており,空間的なばらつきは,最大 で 9℃を超えた.つららの発生は,冬のはじ めとおわりには出入り口で多く発生し,真冬 には出入り口での発生は見られずにトンネル 内部にその発生位置が移動することがわかっ た.つららの発生は,氷点下の気温で発生し 始め,ある程度まで気温が下がるとつららへ の水分供給部も凍りつくことから発生が止ま ることが予想された.つららの発生状況は,
キーワード トンネル,つらら,北海道,発生予測,気温
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4-114 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
-227-
-20 -15 -10 -5 0 5 Daily minimum temperature (°C) 0
40 80 120 160
Number of icicles in Inou2 tunnel
>=1000
>=700
>=500 All
-300 -200 -100 0 100
Temperature Index (degree hours) 0
200 400 600 800
Number of icicles
>=1000 mm
>=700 mm
>=500 mm All
図
2.第二伊納トンネルにおけ
るつららの大きさ別つらら発 生数と坑口日最低気温の関係
(左);旭川
5
トンネルにおけ る大きさ別つらら発生数と旭 川測候所における日気温積算 値との関係(右).つらら発生 数は,すべてのつらら(All)長 さ500mm
以上,700mm
以上,1000mm
以上に分けて表示し た.トンネル内の温度分布と非常によい相関があり,予測されたとおり,正の気温領域及び,ある程度の低温領域 においてつららの発生が見られないことが確認できた.また,温度条件が満たされた場合のつららが多数発生 する箇所は,期間を通じて同様の領域であることから,トンネル内の特定箇所におそらくは漏水の激しい場所 が存在することを統計的なデータによって確認することができた.
第二伊納トンネルにおけるつららの大きさ別つらら発生数と坑口日最低気温の関係を図
2
(左)に示す.す べての大きさのつらら発生数は,坑口の日最低気温が約‐7℃のときに最大となり,最低気温がこれよりも高 くても低くても少なくなることがわかる.また,つららの大きさを長さ700mm
以上や1000mm
以上と限定 すると,氷点下数℃以下に最低気温が下がらないとつららが発生しないという結果であった.
4.気温データを用いたつらら発生予測の試み
つらら除去作業は,保線所毎に複数のトンネルを管轄して行われる.従って,管轄トンネルのうちほとんど のトンネルでつららの発生がなく,唯一つのトンネルだけにつららが発生した日においても除去作業に出なけ ればならいことになる.こうした状況を念頭におき,入手が容易である気象庁の旭川測候所の気温データを代 表して用い,管轄区すべてのトンネルにおいてつららの発生が予測可能であったかを検証した.図 2(右)は,
旭川保線所管轄の
5
トンネルにおける大きさ別つらら発生数と旭川測候所における日気温積算値との関係で ある.この関係から,つららの発生がなくなる最大値・最小値を決定し,日気温積算値がこの範囲から外れた 日数を求めた.ここで,ある日の日気温積算値とは,つらら除去作業開始時刻を午前10
時とし,前日の午前10
時から24
時間に渡って時間平均値を足し合わせたものとする.また別の温度指標として,日積算寒度を前 日の午前10
時から24
時間に渡って負の時間平均値を足し合わせたものとして同様の日数を求めた.さらに 日最低気温を指標として同様の予測を行った結果,日最低気温・日気温積算値・日積算寒度を用いて,2006−2007年冬期間においてそれぞれ
2,5,10
日間のつららが発生しない日を予測することが出来た.
5.まとめ
気温が高すぎても低すぎてもつららは発生しないことから,様々な温度指標を用いて除去作業出動の直前に つららの有無を予測できる可能性があることがわかった.予測の精度は,トンネルごとの温度データ取得状況 の改善や,比較的小さなつららの発生を無視するなどの基準を設けることによって高めることが可能であると 考えられる.
参考文献
小川直仁,岩花剛,赤川敏:北海道における鉄道トンネル内のつらら発生実態調査,平成 19 年度土木学会 年次学術講演会講演概要集第 4 部,2007