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就職活動における大学ブランドのシグナリング効果

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Academic year: 2021

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就職活動における大学ブランドのシグナリング効果

13D8104013D

平塚祐希

中央大学理工学部情報工学科 田口研究室

2017

3

概要 : 本研究では,実際の大学別就職実績のデータを用い て,学歴が採用にどの程度影響を与えているのかを明らかにす ることを目的とする.大学のレベルごとの企業の採用率を求め る.そのうえで,就職活動に関する企業側・学生側の利得,学 生が教育を受ける際のコストを仮定したモデルを設定する.モ デルの中で,企業が学生の質をどう見ているかというパラメー タを仮定して,シグナリング効果の有無を計算し,企業が大学 のランクに対応して、学生の質をどう見ているのかを探る.

キーワード:学歴,採用比率,シグナリング,Fisher の正確 確率検定

1 はじめに

現在の就職活動には”学歴フィルター”というもの が存在していると言われている. ”学歴フィルター”と は,企業が学歴によって学生への対応に差をつけること を指している.

本研究の目的は,実際のデータを用いて企業が大学の ランクに対応して,学生の質をどう見ているのか探るこ とである.

2 使用するデータ

本章では使用するデータについて説明を行う.本研 究では

2016

年有名

77

大学人気

342

社就職実績デー タ,および大学群ランキングのデータを扱う.

3 採用率及びFisher

の正確確率検定

3.1 採用率

本研究では採用率を用いる.採用率は,各業界の大学 群ごとの就職者数を

universities,業界問わず大学群全

体の就職者数

total

として,両者の比として推定する.

(3.1)

3.1

に沿って採用率を算出すると,東京一工は電気機 器・電子の業界に強く,早慶上智になると銀行・証券・

損保・生保の業界に強く.MARCH は早慶上智に劣りは するが上記

4

業界,それに加え自動車業界が強く,成成 明学も銀行業界は強い.成成明学や日東駒専になると,

人気

342

社の企業への就職率は低い.

3.2 Fisher

の正確確率検定

3.2.1 概要

フィッシャー(Ronald Fisher)の正確確率検定は,分割表

(クロス集計表)の各行(各列)が独立かどうかを調べるノ

ンパラメトリック検定である.

3.2.3 分析結果

今回の研究では,棄却域の確率を

1%とする.その中

で有意差があり,差が大きいものは以下の表の項目であ った.

3.1

差が大きかったものの業界別大学群採用率

以上の表から,負の差のほとんどが東京一工・早慶上 智間,業界的には銀行・商社・保険を除く第

3

次産業に 分類される業界であること,正の差は第

2

次産業や通信 など理学系の業界が占めていることが明確になった.

4

シグナリングゲーム

4.1 シグナリングゲームの概要

シグナリングゲームとは非協力ゲームの中の,不完備 情報の展開型ゲームである.各プレイヤーは他のプレイ ヤーが知らない個人情報を持っており,確率によって相 手の持つ個人情報を推測して,その期待値によって行動 を決める.

4.1.1 基本構造

シグナリングゲームは以下の要素から成る.

1.

プレイヤーの集合

N:意思決定をする主体.今回

の論文では

N={i|i=1,2}とする.

2.

意思決定点

v:各プレイヤーが意思決定,つまり戦

略の決定を行う点.

3.

情報集合

H:ある1

人のプレイヤーの意思決定点 を有している.2 つ以上の意思決定点を持つ情報集 合では,プレイヤーはその情報集合において自分が どの意思決定点にいるか識別できない.

4.

行動集合

A:受け手であるプレイヤーの行動(戦略)

の集合.

5.

タイプ集合

T:プレイヤーのタイプ(特性)の集合.

6.

シグナル集合

M:送り手であるプレイヤーが送る

シグナル(メッセージ)の集合.

7.

利得

u:プレイヤーの利得.

8.

信念p:各プレイヤーがすべての情報集合におい

て,どの意思決定点にいるのか推測 する確率のこと.

9.

自然:初期点で混合戦略を選ぶ仮想的なプレイヤー

4.1.2 要素間の関係

シグナリングゲームとは以下のようなゲームである.

(1)自然が,シグナルの送り手のタイプt

をある確率分布

p(t)に従ってタイプの集合T

から選ぶ.この時,送り手

は自分のタイプを知るが受け手は確率分布

p(t)しかわか

らない.

(2)送り手はt

を知った後,あるシグナル

m

をシグナル

の集合

M

から選び,受け手に送る.

(3)受け手はシグナルm

を知った後(タイプは正確には知

らない),ある行動

a

を行動集合

A

から選ぶ.

(4)送り手の利得Us(t,m,a)と,受け手の利得Ur(t,m,a)

が決まる.

4.1

シグナリングゲームの木

4.2 完全ベイズ均衡

不完備情報ゲームの解を導く代表的な考え方は,完全 ベイズ均衡がある.

完全ベイズ均衡は,以下の

2

つの条件を満たす,すべて のプレイヤーの戦略と信念の組み合わせのことである.

4.2.1 逐次合理性の条件

すべてのプレイヤーは,すべての情報集合において,

与えられた戦略と与えられた信念によって期待利得を計 算する.そのとき,その戦略で与えられた行動は,他の どんな行動と比較しても期待利得を最大にしている.そ のような戦略は,与えられた信念の下で最適反応とい う.

4.2.2 整合性の条件

すべてのプレイヤーのすべての情報集合において,与 えられた信念は,与えられた戦略と整合的である.

total es universiti employment

(2)

4.4 信念

不完備情報ゲームの解となる信念は,適当に与えられ るものではなく,予測される戦略と一貫してなければな らない.

5 就職活動モデル 5.1 学生の設定

学生にはタイプがあり,𝑡

11=生産能力が高い学生,

𝑡12=生産能力の低い学生とする.学生は自身がどちらの

タイプであるか分かったうえで,発するシグナル

m

を 選択する.学生側の利得の設定方法は,進学する大学に よって異なる.下位の大学に行く学生の利得は,コスト が

0

であるため学生の収入そのものである.一方,上位 の大学に行く学生の利得は,学生の収入から合格にかか るコストを引いたものとする.各モデルの学生の利得は 以下のようになる.

5.1 モデル1(東京一工・早慶上智)の学生の利得

5.2 モデル2(早慶上智・MARCH)の学生の利得

5.3 モデル3(MARCH・成成明学)の学生の利得

5.4 モデル4(成成明学・日東駒専)の学生の利得

5.2 企業の設定

企業は,学生がどちらのタイプであるかわからない状 態で学生の出すシグナル

m

を受け取り,その学生を雇 うか雇わないか(a)を選択する.企業の利得の求め方は,

企業が選択する行動によって異なる.企業が学生を採用 した(𝑎

1

を選択した)場合は,社員がもたらす成果と社員 に支払う給料の差となる.社員がもたらす成果を

results

とすると以下の式のようになる.

gain = results − salary (5.3)

一方,学生を採用しなかった(𝑎

2

を選択した)場合は,プ レイヤー𝑁

1

の代わりに雇った学生がもたらす成果と支払 う給料の差と,学生を雇っていれば得られるはずだった 利得を機会損失として計上し求める.代わりに雇った学 生がもたらす成果を𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡𝑠

𝑁̅̅̅̅1

,プレイヤー𝑁

1

がもたらす はずだった成果を𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡𝑠

𝑁1

とすると,以下の式のように なる.

gain = (𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡𝑠𝑁̅̅̅̅1− salary) − (𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡𝑠𝑁1− salary) (5.4)

上の式で企業側の利得を算出すると,以下のようにな

る.

5.5 モデル1(東京一工・早慶上智)の企業の利得

5.6 モデル2(早慶上智・MARCH)の企業の利得

5.7 モデル3(MARCH・成成明学)の企業の利得

5.8 モデル4(成成明学・日東駒専)の企業の利得

6 就職活動モデルにおけるシグナリング効

シグナリングゲームを適用し,完全ベイズ均衡と自然 が選ぶ確率を算出すると,以下のような結果になった.

モデル

1(東京一工・早慶上智)

・能力が高い学生が偏差値の高い大学へ行く割合は

0.28

・𝐻

21

において𝑣

21

である確率が

1,𝑣23

である確率が

0,

𝐻22

において𝑣

22

である確率が

0,𝑣24

である確率が

1

とい う信念のとき,𝐻

11

にいる学生は東京一工に通い,𝐻

12

に いる学生は早慶上智に通い,𝐻

21

にいる企業は学生を雇 い,𝐻

22

にいる企業は学生を雇わない

6.1 モデル1(東京一工・早慶上智)

・自然が与える割合は,𝑝

能力が高い

:𝑝

能力が低い= 3:7

モデル

2(早慶上智・MARCH)

・能力が高い学生が偏差値の高い大学へ行く割合は

0.47

・モデル

1

と同じ信念のとき,𝐻

11

にいる学生は早慶上 智に通い,𝐻

12

にいる学生は

MARCH

に通い,𝐻

21

にい る企業は学生を雇い,𝐻

22

にいる企業は学生を雇わない

・自然が与える割合は,𝑝

能力が高い

:𝑝

能力が低い= 5:5

モデル

4(成成明学・日東駒専)

・能力が高い学生が偏差値の高い大学へ行く割合は

0.51

・モデル

1

と同じ信念のとき,𝐻

11

にいる学生は成成明 学に通い,𝐻

12

にいる学生は日東駒専に通い,𝐻

21

にいる 企業は学生を雇い,𝐻

22

にいる企業は学生を雇わない.

・自然が与える割合は,𝑝

能力が高い

:𝑝

能力が低い= 6:4 7 まとめ

・大学受験を考える際,第

2

次産業や通信などの理学系 の企業,銀行・商社・保険業界をすでに志望しているの ならより偏差値の高い大学へ進学したほうが有利である

・東京一工の学生には,学力以外に採用されにくくなる 要因がある可能性がある

・東京一工の学生は本研究で取り扱った業界以外の職業

(行政機関など)に就いている可能性がある

・東京一工に比べ、早慶上智・MARCH・成成明学・日 東駒専の方が,大学のレベルに応じた学生が集まってい ると企業はとらえている

参考文献

[1]サンデー毎日編集部(2016),「有名77

大学人気

342

社就職実績」 ,『サンデー毎日』,2016 年

8

7

日号,

pp.86-97.

[2]ヒューマンデザイン総合研究所,“学生フィルターは

大学群で決まる!?理系なら通過!?”,

(オンライン),入手先< http://career-

information.com/1111>,(参照日 2017

1

10 (参照日 2017

1

10

日).

参照

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