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大学院生の就職活動に思う

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Academic year: 2021

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!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 私が国立大学を定年退職したのは1999年の春である.それから13年あまり,大学の教育,研究環境も大 きく変わった.この間,国立大学は独立行政法人(国立大学法人)となり,中期目標・計画とかかわりなく 運営費交付金が定率削減されたり,評価結果とかかわりなく文部科学大臣が「組織及び業務全般の見直し」 の方針について指示を下すなど,法人化以前に比べて,政府の統制は格段に強まっている.おそらく,現在 現役の先生がたは,私が現役の頃と比べて,いろんな面でご苦労が多いのではないだろうか.それに加え て,バブルの崩壊,リーマンショック,欧州金融危機とつづく経済情勢の悪化である.研究費の獲得も大変 厳しくなったという.研究者にとっては真に受難の時代の到来である.そんな中で,現在の大学院生の就職 事情について,私なりに気になっていることがある. ぼけ老人と笑われるかもしれないけど,最近になって大学院生も就職活動にかなりの時間を費やしている ことを知った.日本では,大学の研究を支えているのは,昔も今も殆どが大学院生である.その大学院生が 貴重な研究時間を犠牲にして就職活動に奔走することなど,私が現役の頃にはあまり考えられないことで あった.当時は,大学院生の就職には指導教官が責任を持っていた.10月頃に就職希望者の希望を聞き, 企業のしかるべき筋に電話する.その後,学生が企業を訪問し面接を受ける.これで殆どの就職が決まっ た.また,こんなこともあった.A 社に内定していた学生が突然,A 社を止めてどうしても B 社へ行きた いと言い出した.この時はさすがに困惑したが,直接両社に出向き,鄭重に事情を説明して諒解を得,学生 の希望を叶えさせることが出来た.今思うと夢のような話である. 学生個人がコンピューターで複数の企業にエントリーし,研究時間を割いて企業の説明会に出席したり, 会社訪問したりする現在の就活制度が,何時頃から始まったかは知らない.まれな例かも知れないが,自分 の指導する学生がどのような就職活動をしているか,全く感知しない指導教官もいると言う.このようなこ とになった背景には,経済の悪化,企業の求める人材の多様化,当局による大学の規制強化,など様々の要 因があるものと思われる.いずれにしても,就職活動が大学院生の研究を妨げている事実があるとすれば, 日本の科学技術の発展にとって由々しい問題である. また最近の傾向として,大学院修了後いわゆるポスドクとして海外に留学する学生の数が大変少なくなっ ていると言う.私が現役の頃は,将来アカデミックポジションを希望する大学院修了者の殆どが海外に留学 した.そして数年後,留学を終えて帰国するまでに適当なポジションを準備するのも指導教官の役目であっ た.だから,学生達も安心して日本を離れることが出来たのである. 15年以上前だと思うけど,いわゆるポスドク1万人計画というものがあった.大学や公的研究機関にお ける学位取得者の任期付雇用を増やし,わが国の学術研究の下支えを計ろうというものである.このため, 海外へ出かけなくても国内でポスドク研究が出来る機会が増えた.しかし,任期終了後に就くべき正規研究 者のポストが大幅に不足しているため,学位取得者でありながら非正規の技術補佐員として働かざるを得な いようなケースも出てきているという.海外留学などしていると正規研究者のポストがますます遠くなる, という大学院生の危機意識が,海外留学者数の減少につながっているのではないか.アメリカへの留学生数 が多い国のトップスリーは,中国,インド,韓国で,しかもその数はここ数年,年々増加の傾向にある.日 本は10年以上前にトップの座を明け渡し今では7位に後退,しかもその数は年々減少しているという.こ の事実は深刻に受け止める必要があるだろう. 私みたいな過去の人間がとやかくいうことではないが,就職活動のために,思い切って研究に専念できな い.あるいは,海外留学はしたいけど,留学後のポスト獲得が不安で出かけられない.こういった大学院生 が抱える悩みに何らかの対応が必要ではないだろうか.日本の科学技術水準の維持,向上のために,関係者 の一考を促したい.

大学院生の就職活動に思う

名 取 俊 二

* 〔生化学 第84巻 第10号,p.817,2012〕

アトモスフィア

東京大学名誉教授,(独)農業生物資源研究所 顧問

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