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著者 加賀 宗彦, 平田 昭彦, 松下 安克

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産学連携プロジェクト研究報告 生分解性ポリマー の地盤改良注入材への応用

著者 加賀 宗彦, 平田 昭彦, 松下 安克

雑誌名 工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

号 36

ページ 44‑47

発行年 2014

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00007610/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

(2)

*事事プロジェクト研究報告***

=産学連揖プロジェクト研究報告=

生分解性ポリマーの地盤改良注入材への応用

Application as a Soil Improvement Grouting Material which Used a Biodegradable Resin  加 賀 宗 彦 牢 平 田 昭 彦 料 松 下 安 克 料

.はじめに

注入工法は,小規模な設備で、簡便に地盤改良ができる.

そのため都市土木から山岳トンネル建設まで,さまざま な建設工事に利用されている.例えば山岳トンネル工事 に使用される注入工法は,切羽天端の崩落防止及び地山 の緩み防止に補助工法とし使用されている.現在使用さ れている注入材はウレタン系あるいはセメント系注入材 によって行われる.しかしながら,このように改良した 地山の掘削時に生じる土は,樹脂やセメント等の不要物 が混入していることから,産業廃棄物として取り扱われ るのが現状である.この産業廃棄物の受入れ地の不足や 環境への負荷等は,大きな社会問題となっている.もし この不要物となる注入材が,地中に生存する微生物の働 きにより水,二酸化炭素にまで分解する生分解ポリマー 注入材であれば,掘削土は自然に再生され建設土として 再利用ができる.一般的なポリマーは熱,光,空気中の 酸素や水分によっても分解は生じるがその進行は非常に ゆっくりしたものである.これに対しポリビニルアルコ ール等のポリマーは,短時間に微生物などで最終的に二 酸化炭素と水などに無機化される.そこでポリピニルア ルコール(PVA)に着目して,生分解性ポリマー地盤改良注 入材として使用出来るかどうかを検討した.生分解性地 盤改良注入材として使用するためには次のことが必要で ある

1)地盤に浸透できる

2)地盤に注入後地盤が強固になる 3)所定の期日に分解する

以上のことを考慮してポリピニルアルコール(PVA)を使 用した地盤改良注入材の開発研究を行った.改良された 固結砂の強度の経時変化は,固結砂供試体を養生し所定 の養生日に 1軸圧縮強度試験を行って求めた.養生方法 は、 200C標準養生と 550C促 進 養 生 で 行 っ た 現 在 の と こ ろ研究データは少ないが生分解性ポリマーを地盤改良注 入材として使用できる可能性を得た.

*理工学部都市環境デザイン学科 料日油技研工業株式会社

2.ポ リ ピ ニ ル ア ル コ ー ル (PVA)の地盤改良材への応

2.  1地盤改良材としての必要な機能

我々の周囲は買い物用ポリエチレン袋,飲料水のプラ スチックピン,包装用プラスチック箱などのプラスチッ クのごみで覆われている.このポリマーの集合体である プラスチックは,腐らないことが長所である. しかし使 用済みの処置には腐らないことが逆に短所となっている.

そこで,使用後微生物によって分解される生分解性プラ スチックが開発され徐々に実用化されている.これらの 生分解性プラスチックは,一般のプラスチックと同じで 空気中では,分解しない.しかし土中や水中では最終的 には微生物によって分解され水と二酸化炭素になる.こ れらプラスチックのもとになる生分解性ポリマーを地盤 改良材へ応用する際には,初期は注入することが可能な 低粘度の液体で,何らかの添加剤を混合することで容易 に硬化する原料を選定する必要がある.生分解性ポリマ ーは天然系,化学合成系を含めると数多くあるが,液体 を制御してゲル化させて固体にすることが可能なものと なると,その数はかなり限定される.特に地盤改良材に おいては,コスト面及び環境面からポリマーを溶解する 媒体として有機溶媒等を使用することは好ましくない.

そこで本研究では,水溶性を示し,適当な架橋剤を混合 することで容易に硬化することが可能な生分解性ポリマ ー,ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol(以後PVA

と呼ぶ))に着目した.PVAはフィルムや接着剤,成形材料 等,既に工業的に実用化されている.PVAの硬化メカニ ズムを図.1の模式図に示す.PVAはポリマーの側鎖に水 酸基等の反応基を有しており,適当な架橋剤を混合する ことで,ポリマー鎖聞を架橋することが可能である.ま た,反応基の種類や濃度等の異なる種々の PVAが開発さ れており,硬化するまでの反応性や,強度特性を考慮、し た際,その選択性の自由度も比較的高い.PVAは反応が 進行することで,ポリマー主鎖聞が架橋され,全体とし て網目構造を構築する.この網目構造を形成することで,

‑44‑

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生分解性ポリマーの地盤改良注入材への応用

Application as a Soil  Improvement  Grouting Material whicUseBiodegradable Resin  加 賀 宗 彦 平 田 昭 彦 松 下 安 克

PVAは液体から形状維持が可能なゲノレ状の固体となる. このような性質を示すことから,軟弱な地盤に注入した 際には,砂の間隙にPVAが浸透し固結して地盤の安定化 が実現する.その後、所定の日数で地盤内の微生物によ

り分解される新しい注入材としての可能性が期待される. 以上のことを考慮、してPVAを使用した生分解性地盤改良 注入材の開発を実施した.

2.  2  ポリピニルアルコール(PVA)の生分解反応

PVAは,唯一主鎖がc‑c結合よりなる生分解性の水溶 性ポリマーである.自然界でポリマーの分解に関与で、き る酵素,結合形式及び分解物の末端基を表‑1に示す.PVA 

の生分解は酸化 ・脱水素酵素と加水分解酵素またはアル ドラーゼ、による機構が報告されている.Scheme 1に酵素 分解反応機構を示す.各酵素による分解を受け主鎖が解 裂し PVAは低分子化する.このようにPVAの低分子化 は,上記の網目構造が分解していくことを意味し,形状 維持能が低下していくと考えられる.

3.使用材料と実験概要

前述の考察から生分解性地盤改良注入材としてPVAに 着目した.生分解性地盤改良注入材としての基礎物性を 明らかにするため,注入国結砂を作製してその浸透性及 び強度の経時変化について調査した.

3.  1 使用材料の物性および供鼠体 作 製 法 注入国結砂供試体の作製には豊浦砂を使用した.砂の 土粒子密度(ρs)2.667g/cm3である.使用した注入材は,

主材のPVAと反応材を混合する 2i夜タイプである.PVA 

濃度による固結砂強度の違いを見るため,濃度の異なる 注入材を 3種類準備した.その呼び名(No)とPVA濃度比 およびゲノレタイムを表2に示す.注入国結砂供試体の作 製は内径 5cm,高さ 10cmの透明アクリル円筒モールド を注入孔の付いた底板に載せ,円筒内には砂の乾燥密度 が1.50g/cm3となるように砂を入れて,その後,排水孔の ある上板で密閉した.次に,水を下方から浸透させ砂の 間隙を飽和した.その後,水を注入材に切替えて注入材 が砂の間隙量の2倍排水されるまで圧力浸透を継続した.

水は,注入材でほぼ100%置換されている.

PVA 

l J  

架橋剤

図‑1 PVA硬化のメカニズム模式図

1 生分解に関与する酵素とポリマー及び分解物の 関係

分解に間与する鵬穣 ポリマー 同合理益 分帽帽のJIi:踊轟

量化遺元11ft! r yH, 

‑C‑c‑c‑ I‑c= ‑c=。

1‑‑<( 

O OH  I‑COOH  デヒドロゲナーゼ

オキシダーゼ ヒドロラーゼ

ポリピニルアルコ (PVA

(1) 

OH  OH  OH  OH  oti 

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一 一

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勘....とH-CH~ð.CH・ +H E£H

主A QlIz鯵アルコールすヰシダーゼ BOM:~-I,;ケトンヒドロラーゼ PVADM:PVAヂヒドロザナーゼ

Scheme 1 PVAの酵素分解反応機構

2 注入材の物性 注入材No

主剤(PVA])

ゲルタイム

(min)

3. 2 養生方法

モールドに生分解性注入材を注入後,モールド上下板 に設置されている排水孔のバルブ、を閉め,この状態で 2

日間 200Cの恒温恒湿室で養生をした.その後,脱型して サランラップで包み供試体を水中養生した.養生温度は 200C, 550Cである.200C養生は,恒温恒湿室で養生をし た.550C養生は温度制御のできる水槽で養生した.なお,

注入固結砂供試体作製方法の詳細は文献 1)を参照され たい.

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生分解性ポリマーの地盤改良注入材への応用

Application as  a Soil  Improvement Grouting Material which Used a BiodegradablResin  加 賀 宗 彦 平 田 昭 彦 松 下 安 克

4.実験結果

4.  1 注入材の浸透性

今回着目したPVAを生分解性地盤改良注入材として 使用する考えは新しい発想である(以後 PVA生分解性 地盤改良注入材を生分解性地盤改良注入材と呼ぶ).そ のため,基本データの把握が必要で、ある.最初に注入材 として最も基本的な浸透性を調べる実験を Z‑200注入 材で行った.円筒形の容器内に入れた砂を水で飽和し、

その後生分解性地盤改良注入材を浸透させた.結果とし て生分解性地盤改良注入材は透水係数約 10'3cm/secの 砂に浸透注入が可能で、あった.この結果,水ガラス系注 入材とほぼ同じ浸透'性を持っていると判断できた.

4.  2 強度の経時変化とその予測

次のステップとして生分解性地盤改良注入材を使用 した注入国結砂の強度の経時変化を検討した.実験に用 いた注入国結砂供試体は,実際の注入地盤とほぼ同じ環 境となる浸透法で作成した.これまでの研究から文献 1) に示したように養生温度を上げて注入固結砂強度の経 時変化を促進できることがわかっている.この手法を使 用して経時的な強度の予測は,促進試験からアレニウス の重ね合わせによる外捜方で、行った.200C養生は基本 的な強度の経時変化を見るために行った.550C養生は,

強度変化を促進するための養生である.以後それぞれの 養生を標準養生および促進養生と呼ぶ.この実験は 2010年度から始めた.使用した注入材はZ‑200である.

初年度は標準養生の最長日数は60日だ、った.それ以降 の強度の予測は促進養生から予測した.標準養生および 促進養生のデータは図2(a)に示す.この図に示すよう

に標準養生は,経時的に増加をしている.これに対して 促進養生はピークを持つ曲線となっている.この曲線を 重ね合わせの方法で移動したのが図2(b)青の点線であ る.この予測から生分解性注入材は約 180日でピーク をつけその後強度劣化が進み約500日付近で強度が30

"'80kN/m2まで下がることが予測できた.

'00 

450  a∞ 

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強度の経時変化(20SSOC)

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sc2011 

ドヰヱ~ ~ ; ‘

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10 χ はお

葺 生 回 数(days)

(a)  養生温度と強度の経時変化

強度の経時変化と予測値 20"C 2010 

20"C 2011 

予測値(2010)

: . . . . . . ー 、 〆 : d 4 1 

~イ 予 剥 値 仰1)

一『・守ーず

1 lQC  10 量生日数(days)

(b)  アレニウスの外挿法 図‑2 促進養生による強度の予測

2011年度は前年の強度の経時変化の予測が正しいか どうかを見るため,前年の結果にデータを追加プロット した.結果を図2(a)に示す.企印は2011年度に実施し た550C養生試験結果である.前年の2倍の期間の経時 変化を求めてある. 60日までの経時変化は,前年とほ ぼ同じである.まだ調査されていない60日以上の強度 の変化は赤い点線で示しである.次にこの点線を利用し てアレニウスの外捜法によって強度を予測したのが図

2(b)に示す赤い点線である.2011年度は 1000日まで の強度の予測ができた.結果は前年の予測と同じ傾向を 得た.180日まで強度増加をしてその後分解が進み強度 減少に向かうことが予測できる.今回は 200C標準養生 で得られた新しいデータを予測値にプロットして予測 線が正しし、かどうかもみてみた.結果は図2(b)に赤の

・で示す.今回の結果と予測値を照らし合わせてみると ほぼ等しい値が得られた予測結果からは1000日経過 で 0~50kN/m2 まで強度減少することがわかった.今回 の配合では生分解性注入材がほぼ 100%分解するには 1000日程度の日数が必要と考えられる.また,アレニ

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生分解性ポリマーの地盤改良注入材への応用

Application as  a Soil Improvement Grouting Material which UseBiodegradable Resin  加 賀 宗 彦 平 田 昭 彦 松 下 安 克

ウス反応速度式を利用して長期強度の予測法が可能で

+20"C 

・促進10(E

No. z311 あることもわかった.本実験では550C養生で約 15倍の

一 /

93 800  7∞ 

6∞ 

5∞ 

4∞ 

3∞ 

23 13

}2V

湿

l

促進であった.

PVA湿 度 を 上 げ た 生 分 解 性 注 入 材 の 強 度 の経時変化

4. 

1003 1JO

1αコ 養生日数(8) 1

通常の地盤改良薬液注入工法は,ほとんどの工事で仮設 必要な 1軸圧縮強度は を目的として使用されている.

PVA濃度を大きくした固結砂強度の経時変化 図3

100kP程度である.本研究で得られたZ‑200注入材 100kPa以上の強度 (表‑2)で改良された固結砂強度は,

予測方法は, 前述の 図3には赤の点線で示しである.

よって一般の仮設工事用 を 100日以上保持している.

3から最大一 図2(a)(b)に示したものと同じである.

としては,生分解が始まるまでの期間以内であれば十分

軸圧縮強度は,約800kPaになることがわかる.また強 山岳トンネルなどでは

しカミし,

に目的を達成できる.

度のピークは,養生日数約 250日になることもわかっ そこで,

1MPa以上の注入国結砂強度が必要となる.

PVA濃度を大きくすることで,強度 た結果として,

強度を大きく出来るかを検討 PVA濃度を上げた場合,

PVA濃度が ただ,

は増加することが明らかにできた.

前年まで使用していたZ‑200注入 した.2012年度は,

前述したように浸透性が悪く 大きい Z411注入材は,

PVA濃度を上げて実 材に比較して1.5倍および2倍,

したがって,

なり地盤浸透注入材として問題が生じる.

験を行った.それぞれの呼び名は, Z311Z411とし

さらに高強度な生分解性注入材を開発するためには浸 注入国結砂供試体の作製は 3.2

て表2に示しである.

透性の問題を解決する必要がある.なお,濃度の大きい で説明した方法と同じである.最初に,浸透性について

生分解性注入材の研究は2012年度から始めた.まだ緒 説明する. 1.5PVA濃度が大きいZ311注入材は,

についたばかりなので前述の図3に示すピーク強度以 これまで使用してきた濃度の小さい Z‑200注入材とほ

今後の課題としたい.

降のデータは得られていない.

しかし,濃度が Z‑200注 ぽ同じ浸透'性を持っていた.

入材に比較して 2倍大きい Z411注入材は浸透注入が

おわりに 5. 

この結果PVA濃度が大きくなると浸透 困難であった.

l)PVAは生分解性地盤改良注入材として使用できるこ 性が悪くなることがわかった.今回はこの Z411注入

とが明らかにできた.

材を用いた強度試験は行わなかった.Z311注入材によ

2)現在使用されている地盤改良注入材で改良された地 200C標

この図には,

る強度の経時変化を図 ‑3に示す.

盤の掘削土は,不要物が混入しているため産業廃棄物に 準養生および促進試験結果を示しである.標準養生は青

なる.生分解性地盤改良注入材は最終的に水と炭酸ガス の・で示しである.最大養生日数は40日である.養

に分解されるそのため改良土は建設土としてリサイク 生40日目の 1軸圧縮強度は約500kPaと高い強度を示

ルで、きる.産業廃棄物削減での社会貢献ができる.

す.Z311注入材に比較して濃度の小さいZ‑200注入材 は同じ養生日数で160kPaである.標準養生日数40日 以降の強度の経時変化は,促進養生試験から予測した. 参考文献

1)加賀 ・水ガラス系注入材の安定性と注入固結砂の長期強度の予 測,土木学会論文集,土木学会, No.652/IlI51, pp.195205,  2000.6 

参照

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