『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2) : 繊維・織物類・紙類を中心に
著者 松森 智彦
雑誌名 文化情報学
巻 12
号 1
ページ 1‑10
発行年 2016‑10‑20
権利 同志社大学文化情報学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015490
1
『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2)
Vol. 12 No.1
1.はじめに
『斐太後風土記』とは明治六年に完成した岐阜 県飛騨地方の物産誌である。この資料には飛騨地
方の
3 郡 25 郷 415 村落について、人口、戸数等
と共に、生産物の構成と収量が記載されている。
前稿(松森
2016)では産物の生産量と地理分布、
そして人口との関係について、主要な農作物であ る穀物類と豆類に着目し、報告した。本稿では主 要な手工業製品である繊維・織物類と紙類を中心 に分析を進め、報告を行う。『斐太後風土記』に
記載されている諸産物は、同一の産物であっても、
アユ・鮎・年魚のような表記ゆれを持つ。この表 記ゆれを整理した後の産物数は
381
品目である。これらの記載頻度を郡ごとに集計し、103村以上 に記載があるものを図
1
に示した。ただし「木の 実」は栃・楢・栗をまとめている。図の30
品目 のうち、非食用の手工業製品とみなせる産物は、繭・楮コウゾ・布・桑・麻・真綿・生糸・煙草の
8
品目 である。このうち、6品目は繊維・織物業関連の 産物であり、残りは製紙業に関わる楮と、煙草で ある。また荏と菜種は可食の産物ではあるが、採Journal of Culture and Information Science, 12 ( 1 ) , 1-10,
(October 2016)研究論文
『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2)
―繊維・織物類・紙類を中心に―
松森 智彦
『斐太後風土記』とは明治六年に完成した岐阜県飛騨地方の物産誌である。この資料には飛騨地方の3 郡25郷415村落について、人口、戸数等と共に、生産物の構成と収量が記載されている。本稿では、記 載頻度および生産量の高い繊維・織物類と紙類、そして煙草と油類を合わせた12品目を対象に、その生 産量と地理分布について考察した。結果、次の事が示された。①飛騨地方では繭と生糸が主な商用の産物 である。②益田郡に集中/欠落する産物がある。生糸・紬の生産が集中し、布・麻・桑・荏・菜種・煙 草の記載が欠落する。吉城郡に集中する産物には紙と菜種がある。③産物の二次的な加工は集約している。
楮を原料とする紙の生産は吉城郡小鷹狩郷に、繭を原料とする生糸・紬の生産は益田郡に集中している。
図 1 産物の記載頻度(404 ~ 103 村)
図1(
PNG
で出力したものをグループ化しています)真
2
Journal of Culture and Information Science
October 2016油目的の利用が考えられる。本稿では繊維・織物 類と紙類、そして煙草と油類の産物に注目して、
その生産量と地理分布について考察を行う。
2.主な産物の生産量と金額
まず、記載頻度の高い産物について、その生産 量を集計する。図
1
において全体の6
割以上の 村落に産物記載のある13
品目のうち、商品作物 また手工業製品とみなせる産物は繭・楮・布・桑・荏の
5
品目である。これらは収量の単位が異なる ため、金額および重量換算を行い、量の比較を行 う。楮・布については『斐太後風土記』下巻附録 の「國産諸品賣出價槪記」(明治三年)に金額換 算値が示してある。また繭については『岐阜県史〈通史編 近世 下〉』に「明治五年物産概略表で繭 一貫が金二両一分」とあるため、この値を用いる1。 桑、荏については金額換算することができないた め、重量比較に留める。また生糸は記載頻度が高 くは無いが、当時最大の輸出品であったことが「國 産諸品賣出價槪記」に記されている。その輸出量 は
7,650
貫目すなわち28.6875t、また金額にして
255,000
両と書かれている2。そのため、これも加えて繭・楮・布・桑・荏・生糸の
6
品目で金額 および重量の比較を行う3。図
2
に主な産物の生産金額と重量について示 す。図の縦軸は対数目盛となっている。最も生産 金額の大きい産物は繭である。生産量は79,455.8
貫(297,959.25kg)である。金額換算値は2.25
両/貫であるため、その金額は178,776
両となる。次に生産金額の大きい産物は生糸である。生産量 は
3,188.5
貫(11,956.875kg) で あ る。 金 額 換算値は
33.3333
両/貫であるため、その金額は106,283
両となる。布の生産量は14,414
反であ る。後述するがこの布は麻布と考えられる。重 量換算値は不明だが、一反400
匁すなわち1.5kg
と仮定すると、合計重量は21,621kg
である。金 額換算値は0.3125
両/反であるため、その金額 は4,504
両 と な る。 楮 の 生 産 量 は22,584.85
貫(84,693.1875kg)である。金額換算値は
0.1
両/貫であるため、その金額は
2,258
両となる。桑の 生産量は688,290.2
貫(2,581,088.25kg)と極め て多い。しかし換算値が不明であるため、金額へ の換算は行えなかった。荏の生産量は548.07
石 である。荏一石あたり99kg
と仮定すると4、その重量は
54,258.93kg
である。荏についても換算1『岐阜県史〈通史編近世下〉』に次の記載がある。「本 書記載の明治四年ごろの繭生産合計七万九千貫、これを 一戸当りにすると五貫六百匁で、米二石一斗に相当する。
明治五年物産概略表で繭一貫が金二両一分、米一斗七升 が金一両相当。」(本書とは『斐太後風土記』を指す。岐 阜県1972,p.440)。
う 。 楮 ・ 布 に つ い て は 『 斐 太 後 風 土 記 』 下 巻 附 録 の 「 國 産 諸 品 賣 出 價 槪 記 」 ( 明 治 三 年 ) に 金 額 換 算 値 が 示 し て あ る 。ま た 繭 に つ い て は『 岐 阜 県 史 』 通 史 編 近 世 下 に「 明 治 五 年 物 産 概 略 表 で 繭 一 貫 が 金 二 両 一 分 」 と あ る た め 、 こ の 値 を 用 い る1。 桑 、 荏 に つ い て は 金 額 換 算 す る こ と が で き な い た め 、 重 量 比 較 に 留 め る 。 ま た 生 糸 は 記 載 頻 度 が 高 く は 無 い が 、 当 時 最 大 の 輸 出 品 で あ っ た こ と が 「 國 産 諸 品 賣 出 價 槪 記 」 に 記 さ れ て い る 。 そ の 輸 出 量 は 6,750 貫 目 す な わ ち25.3125t、 ま た 金 額 に し て 225,000 両 と 書 か れ て い る 。そ の た め 、こ れ も 加 え て 繭・楮・布・桑・荏・生 糸 の 6 品 目 で 金 額 お よ び 重 量 の 比 較 を 行 う2。
図 2 に 主 な 産 物 の 生 産 金 額 と 重 量 に つ い て 示 す 。 図 の 縦 軸 は 対 数 目 盛 と な っ て い る 。 最 も 生 産 金 額 の 大 き い 産 物 は 繭 で あ る 。生 産 量 は79,455.8 貫(297,959.25kg)で あ る 。金 額 換 算 値 は2.25 両
/ 貫 で あ る た め 、 そ の 金 額 は 178,776 両 と な る 。 次 に 生 産 金 額 の 大 き い 産 物 は 生 糸 で あ る 。 生 産 量 は3,188.5 貫 (11,956.875 kg) で あ る 。 金 額 換 算 値 は33.3333 両 / 貫 で あ る た め 、 そ の 金 額 は 106,283 両 と な る 。 布 の 生 産 量 は14,414 反 で あ
1 『 岐 阜 県 史 』 通 史 編 近 世 下 に 次 の 記 載 が あ る 。
「 本 書 記 載 の 明 治 四 年 ご ろ の 繭 生 産 合 計 七 万 九 千 貫 、 こ れ を 一 戸 当 り に す る と 五 貫 六 百 匁 で 、 米 二 石 一 斗 に 相 当 す る 。 明 治 五 年 物 産 概 略 表 で 繭 一 貫 が 金 二 両 一 分 、 米 一 斗 七 升 が 金 一 両 相 当 。」( 本 書 と は『 斐 太 後 風 土 記 』を 指 す 。岐 阜 県1972,p.440)。
2 他 に 、全 体 の6 割 未 満 で 、記 載 頻 度 の 比 較 的 高 い 商 品 作 物 ・ 手 工 業 製 品 に 麻 ・ 菜 種 ・ 真 綿 ・ 煙 草 が あ る 。 し か し 、 こ れ ら の 金 額 換 算 値 は 不 明 で あ り 、 ま た 記 載 頻 度 も 劣 る た め 、 こ こ で は 上 述 の6 品 目 の み を 取 り 上 げ る 。
る 。 後 述 す る が こ の 布 は 麻 布 と 考 え ら れ る 。 重 量 換 算 値 は 不 明 だ が 、一 反400 匁 す な わ ち1.5kg と 仮 定 す る と 、合 計 重 量 は21,621 kg で あ る 。金 額 換 算 値 は0.3125両 / 反 で あ る た め 、 そ の 金 額 は 4,504 両 と な る 。 楮 の 生 産 量 は22,584.85 貫
(84,693.1875kg) で あ る 。 金 額 換 算 値 は0.1 両
/ 貫 で あ る た め 、そ の 金 額 は2,258 両 と な る 。桑 の 生 産 量 は688,290.2 貫(2,581,088.25kg)と 極 め て 多 い 。 し か し 換 算 値 が 不 明 で あ る た め 、 金 額 へ の 換 算 は 行 え な か っ た 。 荏 の 生 産 量 は548.07 石 で あ る 。荏 一 石 あ た り99kg と 仮 定 す る と3、そ の 重 量 は54,258.93kg で あ る 。荏 に つ い て も 換 算 値 が 不 明 で あ り 、 金 額 へ の 換 算 は 行 え な か っ た 。 金 額 換 算 の で き た4 品 目 の う ち 、繭 と 生 糸 の 合 計 は285,059 両 で あ る 。楮 と 布 の 合 計 は6,762 両 で あ る が 、 こ れ は 繭 と 生 糸 の 合 計 の わ ず か2.37%
で あ る 。 す な わ ち 、 商 品 作 物 ま た 手 工 業 製 品 よ り 得 ら れ る 収 入 の ほ と ん ど は 、 繭 と 生 糸 か ら 得 ら れ て い る と 考 え る こ と が で き る 。 桑 の 生 産 重 量 は 、 二 番 目 に 生 産 重 量 の 重 い 繭 の 、8.7 倍 で あ る 。 桑 は 養 蚕 に 不 可 欠 な も の で あ り 、 桑 市 な ど で 売 買 さ れ た と 考 え ら れ る 。 そ の た め 、 一 定 の 収 入 に は な っ た と 思 わ れ る 。 た だ し 、 繭 の 原 料 で あ る た め 、 繭 の 合 計 金 額 を 超 え る こ と は な い で あ ろ う 。 ま た 荏 は 菜 種 と あ わ せ て 採 油 目 的 で 栽 培 さ れ た と 考 え ら れ る が 、 金 額 換 算 は で き な か っ た 。 菜 種 の 換 算 値 で あ る が 、 仮 に1.6 両 / 石 と す る と4、
3 小 山 ら 1982,p.394 よ り 。
4 天 保 期 の 河 内 国 河 内 郡 四 条 村 の 中 塚 家 の 菜 種 の 売 値 段 を 用 い た 。 天 保4, 5, 7, 8, 9, 10, 12, 13, 15 年 の 一 斗 あ た り の 金 額 が あ る 。 先 よ り7.9, 10.3, 8.7, 12.6, 11.0, 11.0, 10.7, 7.5, 7.6 匁 で あ 図 2 . 主 な 産 物 の 生 産 金 額 と 重 量 図 2 主な産物の生産金額と重量
2刊本に「絲八百五十箇此目方六千七百五十貫目、此代 金二十五萬五千兩」とあるが、「一把三百目、一箇三十把 目九貫目、代三百兩」とも併記してある(蘆田編1916, p.286)。850箇×9=7,650貫であり、7,650貫×(300/9)
=255,000両である。「六千七百五十貫目」は「七千六百五十
貫目」の誤記と考えられる。
3他に、全体の6割未満で、記載頻度の比較的高い商品作 物・手工業製品に麻・菜種・真綿・煙草がある。しかし、
これらの金額換算値は不明であり、また記載頻度も劣る ため、ここでは上述の6品目のみを取り上げる。
4小山ら1982,p.394 より。
3
『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2)
Vol. 12 No.1
値が不明であり、金額への換算は行えなかった。
金額換算のできた
4
品目のうち、繭と生糸の合 計は285,059
両である。楮と布の合計は6,762
両 であるが、これは繭と生糸の合計のわずか2.37%
である。すなわち、商品作物また手工業製品より 得られる収入のほとんどは、繭と生糸から得られ ていると考えることができる。桑の生産重量は、
二番目に生産重量の大きい繭の、8.7倍である。
桑は養蚕に不可欠なものであり、桑市などで売買 されたと考えられる。そのため、一定の収入には なったと思われる。ただし、繭の原料であるため、
繭の合計金額を超えることはないであろう。
また荏は菜種とあわせて採油目的で栽培された と考えられるが、金額換算はできなかった。荏の 換算値が見つからなかったので、ここでは菜種の 換算値で代用して荏の生産金額を試算する。換算 値を仮に
1.6
両/石とすると5、荏の金額は877
両となる。多く見積もって2.1
両/石であったとしても
1,151
両であり、楮の金額の半分である。やはり、商品作物・手工業製品の主は繭・生糸で あったと考えられる6。
布は、『岐阜県史』に指摘のあるように、絹織 物ではなく麻布を指すと思われる7。木綿の産物 記載のある村は
48
村であるが、このうち39
村(81%)において木綿と布は共起する。すなわち 別の産物として書き分けられている。そのため、
布は木綿ではない。絹の産物記載のある村は
11
村であるが、絹と布は共起しない。しかし繭・生 糸の価格と比べ安価であるため8、織賃を考える と布は絹ではないだろう。また、産物の中に麻緒・麻種・麻の品目は存在するが、麻布はない。麻の 単位は全て重量の単位である貫・目であるため、
原料の麻と考えられる。このように、布は麻布を 指すと考えられる。
図
2
には含まれないが、繭・生糸に関係する 絹と紬について述べる。絹は11
村において産物 記載があるが、生産量が分かるのは10
村である。その合計は
84
反である。一般的な絹織物は一反0.7kg
であるため、その重量は58.8kg
である。換 算値が不明であるため、金額には換算できない。また紬(紬・シケ紬・紬縞)は
70
件の産物記載 があるが、生産量が分かるのは63
件である。そ の合計は2,730
反と2
貫である。一反0.7kg
と仮 定すると、2貫は7.5kg
であるため、10.7反とな る。その合計は2,740.7
反である。『斐太後風土記』下巻附録「必要品他國より買入高凡積」(明治三年)
の紬に「百疋代二百兩」とあるので、紬の金額換 算値は
1
両/反である。すなわち紬の生産量の合計金額は
2,740.7
両である。この金額は、繭の合計金額の
1.53%、生糸の合計金額の 2.58%
と大きくはない。また紬の合計重量は
1918.49kg
であ る。これは繭の合計重量の0.64%
である。仮に 蛹サナギを除いた重量を
1
割と仮定しても、6.4%であ る。また生糸の合計重量の16.0%
である。この ように、紬の生産重量は少なくはないが、繭・生5天保期の河内国河内郡四条村の中塚家の菜種の売値段を 用いた。天保4, 5, 7, 8, 9, 10, 12, 13, 15年の一斗あたり の金額がある。先より7.9, 10.3, 8.7, 12.6, 11.0, 11.0, 10.7, 7.5, 7.6匁である(宮下1968,p.70)。平均を取ると1.6 両/石であり、最大値を取ると2.1両/石である(一両 銀60匁)。また同じく菜種の例であるが、油垂口(菜種 一石から絞り取れる油の割合)は、江戸期に1割7分か ら2割5・6分とのことである(石川1998,p.119)。荏 と菜種では油垂口も異なると思うが、試みに2割と仮定 すると、先の荏から絞り取れる油は109.614石になる。
近世において菜種油は1合40文と知られているので、一
両=4,000文より菜種油一石は10両である。先の荏に適
用すると1096.14両となり、これも本文と同様に楮の金
額の半分ほどである。
6繭の1kgあたりの金額は0.6000両である。一方、生糸 の1kgあたりの金額は8.8889両である。繭の重量は蛹と 水分がほとんどで、一般的に繭重量の1から2割程度が 生糸になるとされている。繭10kgより生糸1kgが取れ ると仮定しても、6両と8.8889両には開きがある。これ は糸引きその他の作業による付加的な価値であろう。
7「元来布といわれるものは、麻・葛・楮などの繊維で織っ た織物で、絹に対していわれていた。近世において一般 に布といわれたのは、多く麻布を指している。この麻布は、
近世初以前の、いわゆる木綿以前の時代における庶民の 代表的衣料であった。」(岐阜県1972,p.491)
8図2より、布の1kgあたりの金額は0.2083両である。
繭は0.6両/kg、生糸は8.9両/kgである。
表 1 郡ごとの産物記載頻度と生産量表1(拡張メタファイル形式です)
表2(拡張メタファイル形式です)
繭 生 糸
真
綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 荏 菜 種
煙 草 173 47 55 4 134 132 139 18 137 146 125 57
(43) (41) (43) (7) (52) (54) (49) (67) (54) (58) (72) (55)
132 7 35 7 124 114 86 3 118 99 49 46
(33) (6) (28) (13) (48) (46) (30) (11) (46) (39) (28) (45)
98 62 37 44 60 6 7
(24) (53) (29) (80) (21) (22) (3)
吉
城 38 35 40 10 59 43 58 92 59 45 95 83 大
野 24 4 24 3 41 57 17 0 41 55 5 17 益
田 38 61 37 87 0 0 25 8 0 0 0 0 0
生産量(%)
記載頻度(村数、括弧内は%)
益 田 吉 城 大 野
0 0 0 0
繭 生糸 真綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 煙草 荏 菜種 人口 標高 生産量合計 単位 繭 105 0.28 0.31 0.13 0.62 0.59 0.71 0.06 0.63 0.25 0.62 0.43 - 0.97 79455.80 貫 生糸 0.75 13.5 0.31 0.44 0.12 0.1 0.35 0.15 0.09 0.04 0.13 0.16 - 0.28 3188.50 貫 真綿 0.71 0.73 3 0.21 0.24 0.21 0.32 0.09 0.24 0.13 0.26 0.24 - 0.31 791.41 貫 紬 0.35 0.25 0.5 40 0.03 0.02 0.16 0.11 0.02 0.01 0.02 0.02 - 0.13 2740.70 反 布 0.65 0.24 0.27 -0.9 40 0.74 0.49 0.06 0.73 0.36 0.66 0.46 - 0.62 14414 反 麻 0.28 -0.1 0.17 0.82 0.27 15.3 0.48 0.03 0.86 0.38 0.64 0.47 - 0.59 7378.80 貫 楮 0.15 -0 0.01 -0.1 0.26 0.22 45 0.08 0.53 0.26 0.53 0.46 - 0.69 22584.85 貫 紙 -0 -0.2 -0.5 0.99 -0.1 0.38 0.28 80 0.02 0.01 0.05 0.07 - 0.07 5260.00 束 桑 0.76 0.55 0.66 0.1 0.49 0.25 0.24 0.29 1550 0.4 0.68 0.48 - 0.61 688290.20 貫 煙草 0.08 -0.2 0 -1 0.19 0.11 0.29 - 0.22 12.8 0.28 0.23 - 0.25 3367.14 貫 荏 0.05 0.01 0.11 -0 0.13 0.21 0.64 0.07 0.07 0.14 0.9 0.56 - 0.61 548.07 石 菜種 0.43 0.23 0.19 1 0.4 0.19 0.49 -0.1 0.3 0.48 0.23 0.9 - 0.42 391.30 石 人口 0.7 0.83 0.89 0.27 0.62 0.24 0.15 0.04 0.55 0.1 0.07 0.29 140 1 92081人 標高 -0.3 -0 -0.1 -0.1 -0.1 0.08 -0.1 0.58 -0.2 -0.4 0.12 -0.2 -0.1 585 - - (記載数) 403 116 127 55 258 246 285 27 255 103 252 174 415 415
4
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October 2016糸には遠く及ばない。また生産金額も楮より大き く、布より小さい程度で、繭・生糸に比べれば微々 たるものである。やはり絹製品の中心は、繭と生 糸である。
ほか、表
1
に各産物の郡ごとの記載頻度と生産 量(%)を示す。図1
にて取り上げた繭・生糸・真綿・布・麻・楮・桑・煙草・荏・菜種、そして 紬と紙を対象とする。また表
2
に産物記載の共起 率と産物生産量の相関係数を示す。これらの表は 次節以降にて参照する。3.繭・生糸・真綿・紬・絹の生産量と地 理分布
繭の記載村数は稗に次いで多く、403村(全体
の
97%)において記載がある(図 1,図 5
9)。その生産量も
298
トンと大きい。郡ごとの繭の生産 量の合計は、吉城郡30231.5
貫、大野郡19175.1
貫、益田郡
30049.2
貫であるが、人口で除して一人あたりの生産量を求めると、先より
1、0.5、1.3
貫 となる。すなわち、吉城郡に対し、大野郡は半分、益田郡は
1.3
倍の生産である。村ごとの生産量は100
貫以下を最頻値とし、200貫以下の村が全体の
7
割を占める(図3)。図の折れ線グラフからは、
特定の階級(more:1000貫より大など)への生 産量の偏りは無いことが分かる。
生糸の記載村数は
116
村と、繭に比べ少ない。生糸は大野郡において記載頻度が低い。大野郡が
7
村に対し、吉城郡が47
村、益田郡は62
村であ る。またその生産量は大野郡が127.5
貫(4.0%)に対し、吉城郡が
1121.1
貫(35.2%)、益田郡が1939.9
貫(60.8%)である。益田郡では、阿多野郷
37
村を除く全村(8郷63
村)において生糸の9地図には産物の生産量を丸の大きさで表している。この 丸の大きさ(村落の地点のシンボル)は生産量の差異を 表現する事を目的としており、地図から生産量そのもの を読み取る事を目指していない。凡例に値が含まれない のは以下の理由による。①階級数が32と多い。②分類方
法(Jenksの自然分類)が値の読み取りに向いていない。
表 2 産物記載の共起率と産物生産量の相関係数 そ の 生 産 量 も298ト ン と 大 き い 。郡 ご と の 繭 の 生
産 量 の 合 計 は 、吉 城 郡30231.5貫 、大 野 郡 19175.1 貫 、益 田 郡30049.2貫 で あ る が 、人 口 で 除 し て 一 人 あ た り の 生 産 量 を 求 め る と 、先 よ り1、0.5、1.3 貫 と な る 。 す な わ ち 、 吉 城 郡 に 対 し 、 大 野 郡 は 半 分 、 益 田 郡 は1.3倍 の 生 産 で あ る 。 村 ご と の 生 産 量 は100貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、200貫 以 下 の 村 が 全 体 の7割 を 占 め る( 図 3 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、 特 定 の 階 級 (more: 1000貫 よ り 大 な ど ) へ の 生 産 量 の 偏 り は 無 い こ と が 分 か る 。
図 3 . 繭 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
図 4 . 生 糸 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
生 糸 の 記 載 村 数 は116村 と 、 繭 に 比 べ 少 な い 。 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 頻 度 が 低 い 。 大 野 郡 が 5 村 に 対 し 、 吉 城 郡 が 47 村 、 益 田 郡 は63 村 で
あ る 。ま た そ の 生 産 量 は 大 野 郡 が127.5 貫(4.0%) に 対 し 、 吉 城 郡 が 1121.1 貫 (35.2%) 、 益 田 郡 が 1939.9 貫 (60.8%) で あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷 37村 を 除 く 全 村 (8郷 63村 ) に お い て 生 糸 の 記 載 が あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷 を 除 き 製 糸 業 が 盛 ん で あ っ た こ と が 分 か る 。 こ の 生 糸 の 益 田 郡 へ の 偏 り は 、 生 糸 の 売 却 先 か ら 考 え る こ と が で き る 。 生 糸 は 当 時 の 飛 騨 の 、 他 国 へ の 主 な 輸 出 品 で あ っ た 。 生 糸 の 売 却 先 は 京 都 西 陣 、 ま た 横 浜 が 中 心 で あ る 。 生 糸 を 買 い 付 け に 来 る 商 人 は 、 飛 騨 の 南 よ り 益 田 郡 の 益 田 街 道 を 通 っ て 高 山 に 入 る 。 品 質 が 良 け れ ば 、 生 糸 商 人 は 飛 騨 の 南 端 で 生 糸 を 買 い 込 む で あ ろ う 。飛 騨 南 端 か ら 高 山 ま で は 、 か な り の 距 離 が あ る た め で あ る 。 そ の た め 、 益 田 郡 で は 生 糸 の 生 産 が 盛 ん に な っ た と 推 測 さ れ る 。 村 ご と の 生 産 量 は 10貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、20貫 以 下 の 村 が 全 体 の 6割 を 占 め る( 図 4 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、moreの 階 級 が 全 体 の2割 を 占 め る こ と が 分 か る 。 こ れ は 古 川 町 方 村 と 舟 津 町 村 の 二 村 で 、 合 計 は720貫 で あ っ た 。
真 綿 の 記 載 村 数 は128村 、郡 ご と に は 、吉 城 郡 55村 、 大 野 郡 35村 、 益 田 郡 38村 で あ る 。 真 綿 と は 木 綿 で は な く 、 煮 た 繭 を 引 き 伸 ば し 、 綿 と し た も の で あ る 。 生 糸 を 引 く に は 品 質 の 低 い 繭 を 、 真 綿 に す る 事 が 多 い た め 、 生 糸 と 真 綿 の 地 理 分 布 は 類 似 し て い る 。 一 方 で 、 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 が 少 な い 特 徴 が あ る が 、 真 綿 に そ れ は な い 。 生 糸 と 真 綿 の 共 起 率 も0.3と 低 い 。 生 糸 と 真 綿 の 生 産 量 の 相 関 係 数 は0.73と 高 い が 、生 糸 ま た 真 綿 は そ れ ぞ れ 人 口 と 相 関 係 数 が 高 い た め (0.83, 0.89) 人 口 の 影 響 が 考 え ら れ る 。 人 口 の 影 響 を 除 い た 偏 相 関 係 数 は-0.04と な り 、 生 糸 と 真 綿 の 生 表 2 . 産 物 記 載 の 共 起 率 と 産 物 生 産 量 の 相 関 係 数
2種 の 産 物 ( 及 び 人 口 ・ 標 高 ) をA、Bと し た 際 に 、 対 角 成 分 の 上 部 に 共 起 率 (A∩B/A∪B)
を 、 下 部 に 生 産 量 の 相 関 係 数 (A、B共 に 正 ) を 示 す 。 対 角 成 分 に は 生 産 量 の 中 央 値 を 示 す 。 繭 生糸 真綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 煙草 荏 菜種 人口 標高 生産量合計 単位 繭 105 0.28 0.3 0.12 0.61 0.58 0.69 0.06 0.62 0.25 0.59 0.41 - 0.96 79455.80 貫 生糸 0.75 13.5 0.3 0.41 0.11 0.09 0.35 0.13 0.1 0.04 0.13 0.15 - 0.27 3188.50 貫 真綿 0.71 0.73 3 0.18 0.23 0.2 0.33 0.07 0.24 0.14 0.27 0.24 - 0.29 791.41 貫 紬 0.35 0.25 0.5 40 0.01 0.01 0.17 0.06 0.02 0.01 0.02 0.01 - 0.12 2740.70 反 布 0.65 0.24 0.27 -0.9 40 0.72 0.47 0.05 0.73 0.36 0.67 0.46 - 0.61 14414 反 麻 0.28 -0.1 0.17 0.82 0.27 15.3 0.45 0.02 0.87 0.38 0.64 0.45 - 0.57 7378.80 貫 楮 0.15 -0 0.01 -0.1 0.26 0.22 45 0.08 0.51 0.25 0.51 0.44 - 0.67 22584.85 貫 紙 -0 -0.2 -0.5 0.99 -0.1 0.38 0.28 80 0.02 0 0.05 0.07 - 0.06 5260.00 束 桑 0.76 0.55 0.66 0.1 0.49 0.25 0.24 0.29 1550 0.39 0.68 0.46 - 0.61 688290.20 貫 煙草 0.08 -0.2 0 -1 0.19 0.11 0.29 - 0.22 12.8 0.29 0.24 - 0.24 3367.14 貫 荏 0.05 0.01 0.11 -0 0.13 0.21 0.64 0.07 0.07 0.14 0.9 0.56 - 0.59 548.07 石 菜種 0.43 0.23 0.19 1 0.4 0.19 0.49 -0.1 0.3 0.48 0.23 0.9 - 0.4 391.30 石 人口 0.69 0.83 0.89 0.27 0.6 0.24 0.15 0.04 0.53 0.1 0.07 0.29 140 1 91876 人 標高 -0.3 -0 -0.1 -0.1 -0.1 0.08 -0.1 0.58 -0.2 -0.4 0.12 -0.2 -0.1 585 - - (記載数) 403 117 128 55 258 237 285 27 255 103 252 174 415 415
( 村 ) ( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 )
( 村 )
( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 )
表1(拡張メタファイル形式です)
表2(拡張メタファイル形式です)
繭 生 糸
真
綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 荏 菜 種
煙 草
173 47 55 4 134 132 139 18 137 146 125 57
(43) (41) (43) (7) (52) (54) (49) (67) (54) (58) (72) (55)
132 7 35 7 124 114 86 3 118 99 49 46
(33) (6) (28) (13) (48) (46) (30) (11) (46) (39) (28) (45)
98 62 37 44 60 6 7
(24) (53) (29) (80) (21) (22) (3)
吉
城
38 35 40 10 59 43 58 92 59 45 95 83
大野
24 4 24 3 41 57 17 0 41 55 5 17
益田
38 61 37 87 0 0 25 8 0 0 0 0 0
生産量(%)
記載頻度(村数、括弧内は%)
益 田 吉 城 大 野
0 0 0
0
繭 生糸 真綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 煙草 荏 菜種 人口 標高 生産量合計 単位 繭 105 0.28 0.31 0.13 0.62 0.59 0.71 0.06 0.63 0.25 0.62 0.43 - 0.97 79455.80 貫 生糸 0.75 13.5 0.31 0.44 0.12 0.1 0.35 0.15 0.09 0.04 0.13 0.16 - 0.28 3188.50 貫 真綿 0.71 0.73 3 0.21 0.24 0.21 0.32 0.09 0.24 0.13 0.26 0.24 - 0.31 791.41 貫 紬 0.35 0.25 0.5 40 0.03 0.02 0.16 0.11 0.02 0.01 0.02 0.02 - 0.13 2740.70 反 布 0.65 0.24 0.27 -0.9 40 0.74 0.49 0.06 0.73 0.36 0.66 0.46 - 0.62 14414 反 麻 0.28 -0.1 0.17 0.82 0.27 15.3 0.48 0.03 0.86 0.38 0.64 0.47 - 0.59 7378.80 貫 楮 0.15 -0 0.01 -0.1 0.26 0.22 45 0.08 0.53 0.26 0.53 0.46 - 0.69 22584.85 貫 紙 -0 -0.2 -0.5 0.99 -0.1 0.38 0.28 80 0.02 0.01 0.05 0.07 - 0.07 5260.00 束 桑 0.76 0.55 0.66 0.1 0.49 0.25 0.24 0.29 1550 0.4 0.68 0.48 - 0.61 688290.20 貫 煙草 0.08 -0.2 0 -1 0.19 0.11 0.29 - 0.22 12.8 0.28 0.23 - 0.25 3367.14 貫 荏 0.05 0.01 0.11 -0 0.13 0.21 0.64 0.07 0.07 0.14 0.9 0.56 - 0.61 548.07 石 菜種 0.43 0.23 0.19 1 0.4 0.19 0.49 -0.1 0.3 0.48 0.23 0.9 - 0.42 391.30 石 人口 0.7 0.83 0.89 0.27 0.62 0.24 0.15 0.04 0.55 0.1 0.07 0.29 140 1 92081 人 標高 -0.3 -0 -0.1 -0.1 -0.1 0.08 -0.1 0.58 -0.2 -0.4 0.12 -0.2 -0.1 585 - - (記載数) 403 116 127 55 258 246 285 27 255 103 252 174 415 415
そ の 生 産 量 も 298ト ン と 大 き い 。郡 ご と の 繭 の 生 産 量 の 合 計 は 、吉 城 郡30231.5貫 、大 野 郡19175.1 貫 、益 田 郡 30049.2貫 で あ る が 、人 口 で 除 し て 一 人 あ た り の 生 産 量 を 求 め る と 、先 よ り1、0.5、1.3 貫 と な る 。 す な わ ち 、 吉 城 郡 に 対 し 、 大 野 郡 は 半 分 、 益 田 郡 は 1.3倍 の 生 産 で あ る 。 村 ご と の 生 産 量 は 100貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、200貫 以 下 の 村 が 全 体 の 7割 を 占 め る( 図 3 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、 特 定 の 階 級 (more: 1000貫 よ り 大 な ど ) へ の 生 産 量 の 偏 り は 無 い こ と が 分 か る 。
図 3 . 繭 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
図 4 . 生 糸 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
生 糸 の 記 載 村 数 は 116村 と 、 繭 に 比 べ 少 な い 。 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 頻 度 が 低 い 。 大 野 郡 が 5 村 に 対 し 、 吉 城 郡 が47 村 、 益 田 郡 は 63 村 で
あ る 。ま た そ の 生 産 量 は 大 野 郡 が127.5 貫(4.0%) に 対 し 、 吉 城 郡 が1121.1 貫 (35.2%) 、 益 田 郡 が1939.9 貫 (60.8%) で あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷37村 を 除 く 全 村 (8郷 63村 ) に お い て 生 糸 の 記 載 が あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷 を 除 き 製 糸 業 が 盛 ん で あ っ た こ と が 分 か る 。 こ の 生 糸 の 益 田 郡 へ の 偏 り は 、 生 糸 の 売 却 先 か ら 考 え る こ と が で き る 。 生 糸 は 当 時 の 飛 騨 の 、 他 国 へ の 主 な 輸 出 品 で あ っ た 。 生 糸 の 売 却 先 は 京 都 西 陣 、 ま た 横 浜 が 中 心 で あ る 。 生 糸 を 買 い 付 け に 来 る 商 人 は 、 飛 騨 の 南 よ り 益 田 郡 の 益 田 街 道 を 通 っ て 高 山 に 入 る 。 品 質 が 良 け れ ば 、 生 糸 商 人 は 飛 騨 の 南 端 で 生 糸 を 買 い 込 む で あ ろ う 。飛 騨 南 端 か ら 高 山 ま で は 、 か な り の 距 離 が あ る た め で あ る 。 そ の た め 、 益 田 郡 で は 生 糸 の 生 産 が 盛 ん に な っ た と 推 測 さ れ る 。 村 ご と の 生 産 量 は10貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、20貫 以 下 の 村 が 全 体 の6割 を 占 め る( 図 4 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、moreの 階 級 が 全 体 の 2割 を 占 め る こ と が 分 か る 。 こ れ は 古 川 町 方 村 と 舟 津 町 村 の 二 村 で 、 合 計 は720貫 で あ っ た 。
真 綿 の 記 載 村 数 は128村 、郡 ご と に は 、吉 城 郡 55村 、 大 野 郡35村 、 益 田 郡 38村 で あ る 。 真 綿 と は 木 綿 で は な く 、 煮 た 繭 を 引 き 伸 ば し 、 綿 と し た も の で あ る 。 生 糸 を 引 く に は 品 質 の 低 い 繭 を 、 真 綿 に す る 事 が 多 い た め 、 生 糸 と 真 綿 の 地 理 分 布 は 類 似 し て い る 。 一 方 で 、 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 が 少 な い 特 徴 が あ る が 、 真 綿 に そ れ は な い 。 生 糸 と 真 綿 の 共 起 率 も0.3と 低 い 。 生 糸 と 真 綿 の 生 産 量 の 相 関 係 数 は0.73と 高 い が 、生 糸 ま た 真 綿 は そ れ ぞ れ 人 口 と 相 関 係 数 が 高 い た め (0.83, 0.89) 人 口 の 影 響 が 考 え ら れ る 。 人 口 の 影 響 を 除 い た 偏 相 関 係 数 は-0.04と な り 、 生 糸 と 真 綿 の 生 表 2 . 産 物 記 載 の 共 起 率 と 産 物 生 産 量 の 相 関 係 数
2種 の 産 物 ( 及 び 人 口 ・ 標 高 ) をA、Bと し た 際 に 、 対 角 成 分 の 上 部 に 共 起 率 (A∩B/A∪B) を 、 下 部 に 生 産 量 の 相 関 係 数 (A、B共 に 正 ) を 示 す 。 対 角 成 分 に は 生 産 量 の 中 央 値 を 示 す 。
繭 生糸 真綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 煙草 荏 菜種 人口 標高 生産量合計 単位 繭 105 0.28 0.3 0.12 0.61 0.58 0.69 0.06 0.62 0.25 0.59 0.41 - 0.96 79455.80 貫 生糸 0.75 13.5 0.3 0.41 0.11 0.09 0.35 0.13 0.1 0.04 0.13 0.15 - 0.27 3188.50 貫 真綿 0.71 0.73 3 0.18 0.23 0.2 0.33 0.07 0.24 0.14 0.27 0.24 - 0.29 791.41 貫 紬 0.35 0.25 0.5 40 0.01 0.01 0.17 0.06 0.02 0.01 0.02 0.01 - 0.12 2740.70 反 布 0.65 0.24 0.27 -0.9 40 0.72 0.47 0.05 0.73 0.36 0.67 0.46 - 0.61 14414 反 麻 0.28 -0.1 0.17 0.82 0.27 15.3 0.45 0.02 0.87 0.38 0.64 0.45 - 0.57 7378.80 貫 楮 0.15 -0 0.01 -0.1 0.26 0.22 45 0.08 0.51 0.25 0.51 0.44 - 0.67 22584.85 貫 紙 -0 -0.2 -0.5 0.99 -0.1 0.38 0.28 80 0.02 0 0.05 0.07 - 0.06 5260.00 束 桑 0.76 0.55 0.66 0.1 0.49 0.25 0.24 0.29 1550 0.39 0.68 0.46 - 0.61 688290.20 貫 煙草 0.08 -0.2 0 -1 0.19 0.11 0.29 - 0.22 12.8 0.29 0.24 - 0.24 3367.14 貫 荏 0.05 0.01 0.11 -0 0.13 0.21 0.64 0.07 0.07 0.14 0.9 0.56 - 0.59 548.07 石 菜種 0.43 0.23 0.19 1 0.4 0.19 0.49 -0.1 0.3 0.48 0.23 0.9 - 0.4 391.30 石 人口 0.69 0.83 0.89 0.27 0.6 0.24 0.15 0.04 0.53 0.1 0.07 0.29 140 1 91876人 標高 -0.3 -0 -0.1 -0.1 -0.1 0.08 -0.1 0.58 -0.2 -0.4 0.12 -0.2 -0.1 585 - - (記載数) 403 117 128 55 258 237 285 27 255 103 252 174 415 415
( 村 ) ( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 )
( 村 )
( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 ) 図 3 繭生産量のヒストグラム
そ の 生 産 量 も 298ト ン と 大 き い 。郡 ご と の 繭 の 生 産 量 の 合 計 は 、吉 城 郡 30231.5貫 、大 野 郡19175.1 貫 、益 田 郡 30049.2貫 で あ る が 、人 口 で 除 し て 一 人 あ た り の 生 産 量 を 求 め る と 、先 よ り1、0.5、1.3 貫 と な る 。 す な わ ち 、 吉 城 郡 に 対 し 、 大 野 郡 は 半 分 、 益 田 郡 は 1.3倍 の 生 産 で あ る 。 村 ご と の 生 産 量 は 100貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、200貫 以 下 の 村 が 全 体 の 7割 を 占 め る( 図 3 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、 特 定 の 階 級 (more: 1000貫 よ り 大 な ど ) へ の 生 産 量 の 偏 り は 無 い こ と が 分 か る 。
図 3 . 繭 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
図 4 . 生 糸 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
生 糸 の 記 載 村 数 は 116村 と 、 繭 に 比 べ 少 な い 。 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 頻 度 が 低 い 。 大 野 郡 が 5 村 に 対 し 、 吉 城 郡 が47 村 、 益 田 郡 は 63 村 で
あ る 。ま た そ の 生 産 量 は 大 野 郡 が127.5 貫(4.0%) に 対 し 、 吉 城 郡 が1121.1 貫 (35.2%) 、 益 田 郡 が1939.9 貫 (60.8%) で あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷37村 を 除 く 全 村 (8郷 63村 ) に お い て 生 糸 の 記 載 が あ る 。 益 田 郡 で は 、 阿 多 野 郷 を 除 き 製 糸 業 が 盛 ん で あ っ た こ と が 分 か る 。 こ の 生 糸 の 益 田 郡 へ の 偏 り は 、 生 糸 の 売 却 先 か ら 考 え る こ と が で き る 。 生 糸 は 当 時 の 飛 騨 の 、 他 国 へ の 主 な 輸 出 品 で あ っ た 。 生 糸 の 売 却 先 は 京 都 西 陣 、 ま た 横 浜 が 中 心 で あ る 。 生 糸 を 買 い 付 け に 来 る 商 人 は 、 飛 騨 の 南 よ り 益 田 郡 の 益 田 街 道 を 通 っ て 高 山 に 入 る 。 品 質 が 良 け れ ば 、 生 糸 商 人 は 飛 騨 の 南 端 で 生 糸 を 買 い 込 む で あ ろ う 。飛 騨 南 端 か ら 高 山 ま で は 、 か な り の 距 離 が あ る た め で あ る 。 そ の た め 、 益 田 郡 で は 生 糸 の 生 産 が 盛 ん に な っ た と 推 測 さ れ る 。 村 ご と の 生 産 量 は10貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、20貫 以 下 の 村 が 全 体 の6割 を 占 め る( 図 4 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、moreの 階 級 が 全 体 の 2割 を 占 め る こ と が 分 か る 。 こ れ は 古 川 町 方 村 と 舟 津 町 村 の 二 村 で 、 合 計 は720貫 で あ っ た 。
真 綿 の 記 載 村 数 は128村 、郡 ご と に は 、吉 城 郡 55村 、 大 野 郡35村 、 益 田 郡38村 で あ る 。 真 綿 と は 木 綿 で は な く 、 煮 た 繭 を 引 き 伸 ば し 、 綿 と し た も の で あ る 。 生 糸 を 引 く に は 品 質 の 低 い 繭 を 、 真 綿 に す る 事 が 多 い た め 、 生 糸 と 真 綿 の 地 理 分 布 は 類 似 し て い る 。 一 方 で 、 生 糸 は 大 野 郡 に お い て 記 載 が 少 な い 特 徴 が あ る が 、 真 綿 に そ れ は な い 。 生 糸 と 真 綿 の 共 起 率 も0.3と 低 い 。 生 糸 と 真 綿 の 生 産 量 の 相 関 係 数 は0.73と 高 い が 、生 糸 ま た 真 綿 は そ れ ぞ れ 人 口 と 相 関 係 数 が 高 い た め (0.83, 0.89) 人 口 の 影 響 が 考 え ら れ る 。 人 口 の 影 響 を 除 い た 偏 相 関 係 数 は-0.04と な り 、 生 糸 と 真 綿 の 生 表 2 . 産 物 記 載 の 共 起 率 と 産 物 生 産 量 の 相 関 係 数
2種 の 産 物 ( 及 び 人 口 ・ 標 高 ) をA、Bと し た 際 に 、 対 角 成 分 の 上 部 に 共 起 率 (A∩B/A∪B) を 、 下 部 に 生 産 量 の 相 関 係 数 (A、B共 に 正 ) を 示 す 。 対 角 成 分 に は 生 産 量 の 中 央 値 を 示 す 。
繭 生糸 真綿 紬 布 麻 楮 紙 桑 煙草 荏 菜種 人口 標高 生産量合計 単位 繭 105 0.28 0.3 0.12 0.61 0.58 0.69 0.06 0.62 0.25 0.59 0.41 - 0.96 79455.80 貫 生糸 0.75 13.5 0.3 0.41 0.11 0.09 0.35 0.13 0.1 0.04 0.13 0.15 - 0.27 3188.50 貫 真綿 0.71 0.73 3 0.18 0.23 0.2 0.33 0.07 0.24 0.14 0.27 0.24 - 0.29 791.41 貫 紬 0.35 0.25 0.5 40 0.01 0.01 0.17 0.06 0.02 0.01 0.02 0.01 - 0.12 2740.70 反 布 0.65 0.24 0.27 -0.9 40 0.72 0.47 0.05 0.73 0.36 0.67 0.46 - 0.61 14414 反 麻 0.28 -0.1 0.17 0.82 0.27 15.3 0.45 0.02 0.87 0.38 0.64 0.45 - 0.57 7378.80 貫 楮 0.15 -0 0.01 -0.1 0.26 0.22 45 0.08 0.51 0.25 0.51 0.44 - 0.67 22584.85 貫 紙 -0 -0.2 -0.5 0.99 -0.1 0.38 0.28 80 0.02 0 0.05 0.07 - 0.06 5260.00 束 桑 0.76 0.55 0.66 0.1 0.49 0.25 0.24 0.29 1550 0.39 0.68 0.46 - 0.61 688290.20 貫 煙草 0.08 -0.2 0 -1 0.19 0.11 0.29 - 0.22 12.8 0.29 0.24 - 0.24 3367.14 貫 荏 0.05 0.01 0.11 -0 0.13 0.21 0.64 0.07 0.07 0.14 0.9 0.56 - 0.59 548.07 石 菜種 0.43 0.23 0.19 1 0.4 0.19 0.49 -0.1 0.3 0.48 0.23 0.9 - 0.4 391.30 石 人口 0.69 0.83 0.89 0.27 0.6 0.24 0.15 0.04 0.53 0.1 0.07 0.29 140 1 91876 人 標高 -0.3 -0 -0.1 -0.1 -0.1 0.08 -0.1 0.58 -0.2 -0.4 0.12 -0.2 -0.1 585 - - (記載数) 403 117 128 55 258 237 285 27 255 103 252 174 415 415
( 村 ) ( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 )
( 村 )
( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 ) 図 4 生糸生産量のヒストグラム
5
『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2)
Vol. 12 No.1
図 5 繭・生糸・真綿・紬・絹の地理分布 繭 の 地 理 分 布
(403村 ,79455.8貫 )
真 綿 の 地 理 分 布
(127村 ,791.41貫 )
生 糸 の 地 理 分 布
(116村 ,3188.5貫 )
紬 ・ 絹 の 地 理 分 布
(55村 ,2740.7反 ・11村 ,84反 )
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
図 5 . 繭 ・ 生 糸 ・ 真 綿 ・ 紬 ・ 絹 の 地 理 分 布
6
Journal of Culture and Information Science
October 2016産 量 に 相 関 が 無 い こ と が 分 か る 。
紬 の 記 載 村 数 は 55村 、郡 ご と に は 吉 城 郡4村 、 大 野 郡 7村 、 益 田 郡44村 で あ る 。 紬 は 紬 糸 を 用 い て 織 っ た 織 物 で あ る 。 紬 糸 と は 真 綿 よ り 糸 を 紡 ぎ 出 し た も の で 、 生 糸 と 異 な り 撚 り を か け る 。 太 さ が 不 均 一 で 節 の あ る 丈 夫 な 糸 で 、 織 ら れ た 紬 布 は 絹 と は 異 な る 独 特 の 織 物 と な る 。 記 載 は 益 田 郡 に 偏 り 、記 載 頻 度 で は8割 、生 産 量 で は87%が 益 田 郡 で あ る 。
絹 ( 織 物 ) の 記 載 村 数 は11村 、 郡 ご と に は 大 野 郡 に 欠 落 し 、 吉 城 郡 2村 、 益 田 郡9村 で あ る 。 そ の 生 産 量 は 84反 と 少 な く 、 こ れ は 紬 の 生 産 量 2740.7反 の3%で あ る 。生 産 量 が 少 な い こ と か ら 、 飛 騨 国 内 で 絹 織 物 を 織 る こ と は 盛 ん で は な く 、 絹 の 原 料 で あ る 生 糸 の 形 で 、 商 品 と し て 国 外 に 売 却 さ れ て い た と 考 え ら れ る 。
4.
布・麻・楮・紙の生産量と地理分布 布( 麻 布 )の 記 載 村 数 は 258村 、郡 ご と に は 益 田 郡 に 欠 落 し 、吉 城 郡 が134村 、大 野 郡 が124村 で あ る ( 図 7 ) 。 ま た 、 布 の 原 料 で あ る 麻 は 、 記 載 村 数 は 237村 、郡 ご と に は や は り 益 田 郡 に 欠 落 し 、吉 城 郡 に130村 、大 野 郡 に107村 で あ る 。生 産 量 は 布・麻 と も に 吉 城 郡 が59%を 占 め 、大 野 郡 が 41%で あ る 。布 と 麻 の 地 理 分 布 は 類 似 し 、共 起 率 も0.72と 高 い 。し か し 生 産 量 の 相 関 係 数 は0.27 と 低 く 、 量 に 関 係 は 無 さ そ う で あ る 。 麻 布 を 織 る 村 は 、 原 料 の 麻 を 生 産 ・ 採 取 す る た め 、 余 剰 分 の 売 却 は 考 え ら れ る 。 そ の た め 布 と 麻 の 共 起 率 は 高 ま る で あ ろ う 。 布 の 重 量 合 計 は 先 述 の 重 量 換 算 で は 21,621kgで あ る 。麻 の 生 産 量 は27,670kgで あ り 、こ れ は 布 の 約1.28倍 で あ る 。布 を 織 る の に 必 要 な 麻 と 、同 量 強(1.28倍 )の 麻 が 産 物 と し て 記 載 さ れ て い る 。 な お 、 本 稿 で は 麻 に 麻 苧 を 含 め て い る 。 産 物 記 載 249件 中 、 麻 が 199、 麻 苧 が 50 で あ る 。 し か し 麻 と 麻 苧 が 併 記 し て あ る 村 は246 村 中 2村( 鼠 餅・岩 井 村 )の み で あ る9。鼠 餅 村 で は 麻 苧 の 量 記 載 が 無 く 、 岩 井 村 で は 麻 と 麻 苧 の 量 記 載 が 同 量 で あ っ た 。 多 く の 村 で は 麻 と 麻 苧 の い ず れ か 片 方 の み を 記 載 し て い た た め 、 こ れ ら を 併 合 し 、 麻 と し た10。9 山 之 山 村 で は 麻 の 記 載 が 重 複 し て い た 。量 の 記 載 は 片 方 の み で あ っ た 。
10 『 斐 太 後 風 土 記 』の 小 八 賀 郷 の 項 に 麻 の 記 述 が あ る 。「 大 麻ア サ 右 三 組 の 村 々 に は 、 麻 も 繁 茂 し て 、 六 月 土 用 ま で に は 、 其 長 一 丈 餘 に も 成 て 、 家 は 宛 然 竹 林 中 に 棲 ご と し 。 土 用 す ぎ て 、 大 麻 の 下 葉 の 一 葉 二 葉 、 自 然 落 る を 見 て 、 村 毎 に 苅 て 、 多 く は
楮 の 記 載 村 数 は285村 、郡 ご と に は 吉 城 郡 139 村 、大 野 郡86村 、益 田 郡 60村 で あ る 。楮 は 阿 多 野 郷 を 除 く3郡 全 て の 郷 に て 記 載 が あ る 。特 に 益 田 郡( 阿 多 野 郷 を 除 く )で は83%以 上( 平 均 96%) の 村 落 に 記 載 が あ る 。一 方 で 、生 産 量 は58%が 吉 城 郡 に 偏 っ て お り 、17%が 大 野 郡 、25%が 益 田 郡 で あ る 。図 2 に お い て 、楮 の 合 計 重 量 は 第3位 で あ り 、 楮 の 生 産 金 額 は 布 の お よ そ 半 分 で あ る 。 養 蚕 業 と 並 行 し 、麻 製 品 と あ わ せ て 、楮 の 利 用 は 村 々 の 重 要 な 産 業 で あ っ た と 考 え ら れ る 。 村 ご と の 生 産 量 は20貫 以 下 を 最 頻 値 と し 、100貫 以 下 の 村 が 全 体 の76%を 占 め る( 図 6 )。図 の 折 れ 線 グ ラ フ か ら は 、moreの 階 級 が 全 体 の38%を 占 め る こ と が 分 か る 。23村 で8653.8貫 で あ る 。
図 6 . 楮 生 産 量 の ヒ ス ト グ ラ ム
紙 の 記 載 村 数 は27村 、郡 ご と に は 吉 城 郡18村 、 大 野 郡3村 、益 田 郡 6村 で あ る 。生 産 量 は92%が 吉 城 郡 に 偏 っ て お り 、 残 り8%は 益 田 郡 と な る 。 大 野 郡 で は 高 山 一 之 町 、 二 之 町 、 三 之 町 に て 紙 類 の 記 載 が あ る が 、 生 産 量 は 記 さ れ て い な い 。 益 田 郡 で は 八 寸 紙 、 半 紙 と 竹 原 紙 の 記 載 が あ る 。 吉 城 郡 で は 紙 、 端 不 切 紙 、 丈 高 ( 長 ) 紙 、 半 紙 、 懐 中 紙 ( 懐 紙 ) 、 傘 紙 の 記 載 が あ る 。 吉 城 郡18村 中 12村 が 小 鷹 狩 郷 に 含 ま れ て お り 、特 に 小 鷹 狩 郷 の 稲 越 村 で は6種 で 2,330束( 全 体 の44%)の 記 載 が あ る 。 紙 の 記 載 村 は 楮 の 記 載 村 の わ ず か9%で あ る た め 、 紙 の 生 産 は 特 定 の 村 に て 集 約 的 に 行 わ れ て い た こ と が 分 か る 。 紙 の 製 造 に は 専 用 の 装 置 ・ 道 具 と 技 術 が 必 要 で あ る た め 、 原 料 で あ る 楮 の 栽 培 は 広 く 行 わ れ る 一 方 で 、 製 紙 業 は 一 部 の 村 に て 専 業 的 に 行 わ れ た の で あ ろ う 。
煑 扱 芋 と し 、 又 は 苅 て 、 數 日 の 間 日 に 乾 し て 、 其 を 水 に 浸 し て 後 、 土 中 に 埋 、 又 は 畑 に 積 て 、 古 筵 或 は 芥 を 被 置 き 、 日 を 歴 て 取 出 て 、 箆 も て 粗 皮 を 刮 去 て 、仕 上 る を 最 上 と す 。故 に 白 麻 苧シ ロ ソ・靑 麻 苧ア ヲ ソ( ア サ ヲ の 約 ソ 也 。) の 名 有 。( 神 代 の 白 丹 寸 出 ・ 靑 丹 寸 出 の こ と 、可 思 合 。)其 村 々 に て 、布 に 織 て 着 用 の 餘 は 、 皆 高 山 町 、 又 は 他 國 へ 賣 出 す こ と 、 古 し へ よ り 爾 り 。」(p.117)
( 村 ) ( 生 産 量 の 累 積 % )
( 貫 ) 図 6 楮生産量のヒストグラム
記載がある。益田郡では、阿多野郷を除き製糸業 が盛んであったことが分かる。この生糸の益田郡 への偏りは、生糸の売却先から考えることができ る。生糸は当時の飛騨の、他国への主な輸出品で あった。生糸の売却先は京都西陣、また横浜が中 心である。生糸を買い付けに来る商人は、飛騨の 南より益田郡の益田街道を通って高山に入る。品 質が良ければ、生糸商人は飛騨の南端で生糸を買 い込むであろう。飛騨南端から高山までは、かな りの距離があるためである。そのため、益田郡で は生糸の生産が盛んになったと推測される。村ご との生産量は
10
貫以下を最頻値とし、20貫以下 の村が全体の6
割を占める(図4)。図の折れ線
グラフからは、moreの階級が全体の2
割を占め ることが分かる。これは古川町方村と舟津町村の 二村で、合計は720 貫であった。
真綿の記載村数は
127
村、郡ごとには、吉城 郡55
村、大野郡35
村、益田郡37
村である。真 綿とは木綿ではなく、煮た繭を引き伸ばし、綿と したものである。生糸を引くには品質の低い繭を、真綿にする事が多いため、生糸と真綿の地理分布 は類似している。一方で、生糸は大野郡において 記載が少ない特徴があるが、真綿にそれはない。
生糸と真綿の共起率も
0.31
と低い。生糸と真綿 の生産量の相関係数は0.73
と高いが、生糸また 真綿はそれぞれ人口と相関係数が高いため(0.83,0.89)人口の影響が考えられる。人口の影響を除
いた偏相関係数は-0.04となり、生糸と真綿の 生産量に相関が無いことが分かる。紬の記載村数は
55
村、郡ごとには吉城郡4
村、大野郡
7
村、益田郡44
村である。紬は紬糸を用 いて織った織物である。紬糸とは真綿より糸を紡 ぎ出したもので、生糸と異なり撚りをかける。太 さが不均一で節のある丈夫な糸で、織られた紬布 は絹とは異なる独特の織物となる。記載は益田郡 に偏り、記載頻度では8
割、生産量では87%
が 益田郡である。絹(織物)の記載村数は
11
村、郡ごとには大 野郡に欠落し、吉城郡2
村、益田郡9
村である。その生産量は
84
反と少なく、これは紬の生産量2740.7
反の3%
である。生産量が少ないことから、飛騨国内で絹織物を織ることは盛んではなく、絹 の原料である生糸の形で、商品として国外に売却 されていたと考えられる。
4.布・麻・楮・紙の生産量と地理分布 布(麻布)の記載村数は
258
村、郡ごとには 益田郡に欠落し、吉城郡が134
村、大野郡が124
村である(図7)。また、布の原料である麻は、
記載村数は
246
村、郡ごとにはやはり益田郡に 欠落し、吉城郡に132
村、大野郡に114
村であ る。布と麻の地理分布は類似し、共起率も0.74
と高い。しかし生産量の相関係数は0.27
と低く、量に関係は無さそうである。麻布を織る村は、原 料の麻を生産・採取するため、余剰分の売却は 考えられる。そのため布と麻の共起率は高まる であろう。布の重量合計は先述の重量換算では
21,621kg
である。麻の生産量は27,670kg
であり、これは布の約
1.28
倍である。布を織るのに必要 な麻と、同量強(1.28倍)の麻が産物として記 載されている。なお、本稿では麻に麻苧を含めて いる。産物記載249
件中、麻が199、麻苧が 50
である。しかし麻と麻苧が併記してある村は246
村中2
村(鼠餅・岩井村)のみである10。鼠餅村 では麻苧の量記載が無く、岩井村では麻と麻苧の 量記載が同量であった。多くの村では麻と麻苧の いずれか片方のみを記載していたため、これらを 併合し、麻とした11。楮の記載村数は
285
村、郡ごとには吉城郡139
10山之山村では麻の記載が重複していた。量の記載は片方 のみであった。
11『斐太後風土記』の小八賀郷の項に麻の記述がある。「大ア麻サ 右三組の村々には、麻も繁茂して、六月土用までには、其 長一丈餘にも成て、家は宛然竹林中に棲ごとし。土用すぎ て、大麻の下葉の一葉二葉、自然落るを見て、村毎に苅て、
多くは煑扱芋とし、又は苅て、數日の間日に乾して、其を 水に浸して後、土中に埋、又は畑に積て、古筵或は芥を被 置き、日を歴て取出て、箆もて粗皮を刮去て、仕上るを最 上とす。故に白シ ロ ソ麻苧・靑ア ヲ ソ麻苧(アサヲの約ソ也。)の名有。(神 代の白丹寸出・靑丹寸出のこと、可思合。)其村々にて、布 に織て着用の餘は、皆高山町、又は他國へ賣出すこと、古 しへより爾り。」(p.117)
7
『斐太後風土記』記載産物の生産量と地理分布(2)
Vol. 12 No.1
布 の 地 理 分 布
(258村 ,14414反 )
楮 の 地 理 分 布
(285村 ,22584.85貫 )
麻 の 地 理 分 布
(246村 ,7378.8貫 )
紙 の 地 理 分 布
(27村 ,5260束 )
図 7 . 布 ・ 麻 ・ 楮 ・ 紙 の 地 理 分 布
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
吉 城 郡
益 田 郡 大 野 郡
図 7 布・麻・楮・紙の地理分布