直径が大きく,また高さが大きいバイオコークスほ ど,内部に負荷される圧力と熱量は不均一となる。その ため,製造されたバイオコークス内部の物性も不均一と なる。したがって,バイオコークスの品質を評価する上 で,マクロ的な密度,強度,細孔構造や比表面積といっ た物性とともに,バイオコークス内部の物性の分布を把 握することが重要となる。
非破壊検査手法の一つである X 線 CT は,供試体内 部の X 線吸収係数の空間分布を可視化することができ る。X 線吸収係数は,材料の物性によって変化する。
すなわち,X 線 CT によるバイオコークスの内部観察に より,非破壊で内部の物性変化を可視化できると考えら れる。
そこで,本研究では,作製手法の異なるバイオコーク スの内部を,X 線 CT により観察し,その内部の違いを 評価できるのかを検証した。
【バイオコークスの製造条件】
水分 10% の間伐木材チップを原料とした。充填重量 を8.0kg,熱風加熱により温度 200℃で製造した。製造 では,異なる加圧方式を採用した。一つは,上面から だけ加圧する上加圧式である。もう一つは,上下面か ら同じ圧力で加圧する上下加圧式である。いずれの加 圧力も26t として供試体を作製した。製造された直径 100mm の供試体は,上加圧式で全長 823mm,平均密
Table 1に,供試体の上端から,高さの1/4ごとに代 表的な試料を切り出し,密度および圧縮強度を調べた結 果を示す。上加圧式では,上部から下部へと密度,圧縮 強度ともに低下している。一方,上下加圧式では,上 部,下部の密度,圧縮強度が高く,物性が比較的安定し ていることがわかる。
【X 線 CT の概要】
近畿大学所有の X 線 CT は,浜松ホトニクス社製 開放型マイクロフォーカス X 線管 L10801(最大電圧 230kV,最大電流 1000μA)と Varian medical systems 製 PaxScan2520V(Active pixels1408 × 1888pixel)の 受感パネルを有している。Fig. 1に撮影の概念図を,
Table 1 作製した供試体の各部位での密度と圧縮強度
記 号 上端からの位置(×高さ) 上加圧式 上下加圧式
密度(g/cm3) 圧縮強度 MPa) 密度(g/cm3) 圧縮強度(MPa)
上 部 0~1/4 1.30 104 1.31 107
中上部 1/4~2/4 1.27 101 1.27 104
中下部 2/4~3/4 1.25 98.3 1.28 105
下 部 3/4~4/4 1.20 86.0 1.36 119
Fig. 1 使用した X 線 CT の撮影概念図 フラットパネルセンサ X線管
試験体
X線管-フラットパネルセンサが360度回転 X線
Fig. 2に装置の外観と内部の写真を示す。X 線管から照 射された X 線は,放射状に照射され,サンプルを透過 し,受感パネルに到達する。受感パネルで得られた透 過画像(透過後の残留 X 線量の2 次元分布)を,サン プルを中心に回転しながら必要数(プロジェクション 数)撮影する。それらの透過画像から再構成ソフトで X 線吸収係数の空間分布を逆解析し,白黒で16bit の輝度 をもつ3 次元の X 線 CT 画像として保存する。なお,
本装置は X 線管と受感パネル,そしてサンプルとの位 置関係は固定されており,1 度に撮影可能な範囲は,
直径 100 ×高さ60mm 程度,その最小 voxel サイズは 0.0613mm となる。
X 線 CT での撮影では,X 線管の電圧,電流,受感パ ネルのビニング(いくつかのピクセルをひとまとめに取 扱うこと)およびプロジェクション数を調整し,適切な コントラストをもつ X 線 CT 画像を得る。
計測精度(1 voxel のサイズ)に合わせてビニングを 決定する。そして,X 線 CT 画像が鮮明となるように,
電圧と電流により,X 線の放射量や強度を調整する。
本研究では,画像処理速度を考慮して,ビニングを 2 × 2,すなわち0.1226 mm/voxel として測定精度を決 定した。そして,撮影条件を Table 2のように決定し た。また,供試体上端から,高さの1/4ごとに , 上部,
中上部,中下部,下部として代表的な箇所を撮影した。
【画像解析手法の概要】
撮影された透過画像を再構成(逆解析)することで,
Fig. 3に示すような X 線吸収係数の空間分布である3 次 元の X 線 CT 画像が得られる。
X 線 CT 画像は,存在する物質の X 線吸収係数の空 間分布を可視化した画像である。X 線吸収係数に比例 した輝度値として表現されている。Fig. 4に,画像内の 輝度値の頻度分布を図示した例を示す。
例えば,Fig. 4であれば,約 10000の輝度値を境に,
大きなピークが2つ見られる。輝度値の小さいピークは 空気層と考えられ,輝度値の大きなピークは固体層と考 えられる。すなわち,輝度値 10000を閾値として2 値化 を行えば,固体層と空気層を区分することができる。区 別した画像から,固体層と空気層の体積を算出し,供試 体の体積率や空隙率を求めることができる。
また,輝度値分布は,X 線吸収係数の分布を表して おり,供試体内部の物性の分布と関係が強いと考えられ る。すなわち,輝度値分布の広がりや高さといった形状 から,内部の物性変化が幅広いのか,均質なのかなどを 把握することができると考えられる。
Table 2 本計測で用いた撮影条件
項 目 本計測で用いた値
X 線管電圧(kV) 100
X 線管電流(uA) 75
プロジェクション数 1200
ビニング 2 × 2
画素サイズ(mm/voxel) 0.1226
Fig. 2 X 線 CT の外観と内部
(外観) (内部)
Fig. 3 3 次元の X 線 CT 画像の断面例
本研究では,撮影画像を確認し,2 値化画像による空 隙率の算出と画像の輝度値分布の比較を行った。
【X 線 CT 画像の比較】
Fig. 5に加圧方式の異なる供試体の下部の3 次元 X 線
CT 画像を示す。上下加圧式の場合,比較的均一な輝度 値を持ち,ひび割れ幅も小さいことがわかる。一方,上 加圧式の場合,輝度値が小さい箇所が多いとともに,ひ び割れ幅も大きい状況がわかる。すなわち,上面からの 加圧だけであれば,密度が均質にならないが,上下加圧 式とするとそれが改善されることがわかる。
【空隙率の比較】
Fig. 6に,各供試体の一断面を,また Fig. 7にその2 値化画像を示す。Fig. 5と同様に,上加圧式では,ひび 割れが明確に見えるが,上下加圧式ではひび割れ幅が小 さいことがわかる。それを Fig. 4のように閾値で2 値化 し,空隙を黄色に色づけし,空隙率を計測した。ひび割 れがあるものの,いずれの供試体も空隙率は,0~0.6%
と非常に小さい値であった。
【輝度値分布の比較】
Fig. 8に,各供試体の X 線 CT 画像の輝度値の分布を 示す。上加圧式では,上部の範囲に比べて,下に行くほ ど輝度値分布が少し大きく,下部の輝度値が最小の範囲 となった。一方,上下加圧式では,上部から中下部まで はほとんど重なっていたが,下部の輝度値が最大の範囲 となった。この結果は,Table 1に示した密度や圧縮強 度の結果と類似している。
Fig. 9に,各供試体の下部の輝度値の分布の比較を示 す。Table 1に示したように,上加圧式の密度が1.20g/
cm3,そして上下加圧式の密度が1.36g/cm3と,0.16g/
cm3の差が見られる。その差によって,両者の輝度値分 Fig. 4 X 線 CT 画像の輝度値分布例
0 0.2 0.4
0 20000 40000 60000 80000
輝度値
Fig. 5 供試体下部の3 次元 X 線 CT 画像の比較
(上加圧式)
(上下加圧式)
布は大きく異なったと考えられる。
以上から,加圧方式によって高さ方向の物性が異なる バイオコークスの内部を,数値化できる可能性を示して いると考えられる。また,本研究での加圧方式による違
いとして,上面からだけでは下部の物性が低下するのに 対して,上下面から圧力を与えることで,下部の品質低 下を防ぐことができていることがわかった。
Fig. 7 2 値化した供試体の断面画像
(上加圧式) (上下加圧式)
Fig. 8 供試体の輝度値分布の比較
(上加圧式) (上下加圧式)
Fig. 6 供試体の断面画像
(上加圧式) (上下加圧式)
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 20000 40000 60000
頻度(%)
輝度値 上部
中上部 中下部 下部
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 20000 40000 60000
頻度(%)
輝度値 上部
中上部 中下部 下部
から圧力を与えることで,下部の品質低下を防ぐことが できていることがわかった。
今後,X 線 CT によるバイオコークスの内部評価につ いて検討を進めたい。
Fig. 9 各供試体下部の輝度値分布の比較 0
0 20000 40000 60000
輝度値