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高齢労働者の雇用と管理
田中勉
はじめに
本稿は,1989年度に実施された調査で得られたデータを用いて高齢者の雇用 について考察することを目的としている。人口の高齢化の進展は,当然労働力 人口の高齢化を伴う,そして相対的な若年労働力の減少と結びついている。最 近の人手不足は経済状況の好調さによる一時的な現象ではなく,こうした構造 的な要因によるのであって,将来的により深刻な事態になるという主張も見ら れる。欧米諸国に比べて,日本では高齢者の労働力率は高く(とりわけ男子で は),高齢者の就業への意欲も高い。しかしながら高齢者の雇用機会は少なく,
有効求人倍率でみても,年齢計で1倍を超えた1988年でも,55歳から59歳では 0.31,60歳をこえると0.16である。さらに1989年では,50歳から55歳で1.08と なったのに,55歳以上によると0.44と極端に低くなる。
こうした雇用情勢の厳しさの中で,高齢者の雇用・就業に関して事業所の人 事担当者はそして従業員は,どのような考えを持っているのであろうか。以下 では,今回の調査の中からこの点に関するデータに絞って,考察を加えてみる ことにしよう。
この調査は,(1)事業所アンケート,(2)個人アンケート,(3)事業所インタビュ ー,の3つの部分に分かれているが,とりわけ(1)と(2)での結果を用いることに する。
まずはじめに今回の調査対象について述べておこう。この調査は,東京・
大阪・愛知の3地域の労働市場圏についてのものである。これらの3都府県の 30人以上規模の51,674事業所(農林水産・鉱業を除く)を母集団とし,規模別 に20,053事業所を抽出した。郵送法によるアンケート調査で,回収総数は6,889 票,回収率は34.4%であった。
個人アンケートは,今回対象とした事業所のうち500人以上規模の2,587事業 所から規模・業種・所在地をコントロールして800事業所を選び,1事業所あ
44
たり5人,合計4,000人を対象とした。方法は,事業所調査票を郵送するさい 個人調査票を同封し,人事担当者に従業員の中で定年年齢に近く職種の異なる
5人を選んで調査票を手渡してもらうよう依頼した。調査票の回収は,回答者 による直接郵送によった。このような方法のためサンプリングの厳密性に欠け る点は否定できない。回収数は,男子が731人で女子が数人いたが性別比較で きる数ではなかったので,以下では男子の象を取り上げる。回収率は厳密には 不明だが,発送数4,000人について象れぱ18.3%である。
事業所の人的織成
事業所の業種・規模別構成を表1.表2に示す。製造業(建設を含む)が 30.1%,非製造業が69.8%となり,サンプルとほぼ対応する。「卸・小売」が もっとも多く22.2%,次いで「機械」の12.2%,「構報サービス」の10.6%の 順になっている。その他の業種は5%前後であるが,「鉄・非鉄金属」と「飲 食店」が1%台と少ない。
規模では,サンプリングは30人以上であったのだが,回収票にはその後の規 表1業種の分布
(%.()内は事業所数)
100.0(6,889)
業 種
7.4(507)
5.6(387)
3.1(217)
4.5(309)
1.7(116)
12.2(842)
3.0(210)
22.20,527)
1.5(106)
6.5(445)
7.4(510)
5.3(364)
5.0(347)
3.8(264)
10.6(732)
建設 軽工業 出版・印刷 化学 鉄・非鉄金属 機械 その他の製造業 卸・小売 飲食店 金融・不動産 運輸・通信・公益 サービス業
その他の珈業サービス 医療・教育
情報サービス
45
表2規模の分布
(%.()内は事業所数)
【〕~4E
[)O~29四 [)O~49§
、O~99P
模縮小のためと思われる29人以下が431事業所(6.3%)含まれていた。本稿で はこれらも含めての集計を用いることとする。規模別に象ると30~49人と50~
99人がそれぞれ25%ともっとも多く,あわせて5割になる。これもサンプルと ほぼ等しい分布を示しており,回収票は業種・規模ともにサンプル構成を反映
したものとなっている。
業種ごとの規模分布を染ると,「化学」を除けば99人以下が5割を越してい るが,相対的に規模の小さな業種は,「出版・印刷」「その他の製造業」「卸・
小売」「飲食店」「その他の事業サービス」「情報サービス」である。これに対 し,「化学」「鉄・非鉄金属」「医療・教育」「機械」は,500人以上が16~19%
あり,相対的に規模の大きな業種といえよう。「軽工業(食料品・繊維・木材・
紙などの製造業を含む)」「運輸・通信・公益」はその中間にある。大まかにい って製造業で規模が大きく,非製造業では小規模事業所が多くを占めている。
前述の事業所規模では正規従業員の数を用いてきたが,そのほかの雇用者と して「パート・アルバイト・嘱託・臨時」などの正規従業員以外の従業員がい る。ここではその実数を問題にするよりも,正規従業員数に対するいわゆる非 正規従業数の比率を取り上げることにする。非正規従業員の割合は,9%以下 であるという事業所がもっとも多い。50%以上を占めている事業所もわずかだ がある。性別で差があり,男子よりも女子のほうが非正規従業員の割合は高 い。合計では17.0%となっており,業種別で割合の高いものは,「飲食店」「サ ービス業」「その他の事業所サービス」「軽工業」業となり,女子パートを多く 雇用している業種であることがわかる。逆に低いのは,「化学」「鉄・非鉄金 属」となっている。また,規模別では,1,000人以上が12.3%と少なく,小規 模になるにつれて割合が増え29人以下では33%となる。規模に反比例する結果
1~29人 30~49人 50~99人 100~299人 300~499人 500~999人
1,000人以上
222 6553964 ●●●●印DC 3124632 くくくくくくく 111 000 4776642 1844859 3231538 JJJJ,』J
|規模’
100.0(6,889)46
となっている。この調査は高年齢者の労働市場を問題にしているが,従業員の 年齢構成がどのようであるかが,現在および将来の高年齢労働力の姿を決めて いくと考えられる。そこで,いわゆる高年齢化が進展している程度を知る手掛 かりとして,①平均年齢,②高年齢者比率,を用いることにする。
①平均年齢は,男女計では37.2歳,分布を見ると35~39歳が30%と肢も多 く,次いで30~34歳,40~44歳となる。45歳以上も12%を占める。男子のみで は,39.1歳と高く,45歳以上も15%を越える。50歳以上が4.5%あるのは,い わゆる高年齢者専門会社とゑられろ事業所が含まれているためである。女子は 31.9歳で,25~29歳がもっとも多く,次いで20~24歳である。
これを業種別・男女別に見ると,怖徴的なのは「飲食店」で,女子のほうが 男子より平均年齢が高くなっていることである。男女計では,「サービス業」
「運輸・通信・公益」「鉄・非鉄金属」が40歳を越えている。逆に若い従業員 が多いのは,「情報サービス」「卸小売」「金融・不動産」などである。
では規模別ではどうか,性別を問わず規模が大きくなるにつれて,平均年齢 は若くなっている。これは若年者採用において規模の大きな企業が有利であ る,といわれることのあらわれと見てよい。また高年齢者の企業間移動が,規 模の小さな方へ向っておこなわれることの結果でもあろうと考えられる。
②高年齢者比率とは,「正規従業員に占める50歳以上の従業員の割合」で ある。表3は平均年齢と高齢者比率を規模別に示したものである。合計では50 歳以上の割合は21.0%である。業種別にみると「サービス業」が特に高い。
「サービス業」には「建物サービス」「驚備」など,とりわけ高年齢者が多く 雇用されている事業所が含まれるためである。他には,「鉄・非鉄金属」「運輸
表3規模別平均年齢と高年齢者比率
{模
一規
平均年齢(叙) 高年齢者比率]
(%)、|計一T~颪
女39.1 31.9 21.0
計 37. 2
■
433333 198888 ●●●●●● 956003 333322 420098 ●●●●●● 699345 ”頚、嘔嘔皿 ●●●●●● 022932人人人人人上豹的””的以249
一一一一一叩
0 100000 3m卵釦L 465192●●●●●C 976656 333333
47
・通信・公益」「その他の事業サービス」が高い割合を示し,逆に低いのは「情 報サービス」「卸小売」「金融・不動産」などである。つまり平均年齢について のべたのとほぼ同じ事がいえるわけで,規模別で象ても小規模ほど高年齢者比 率が高いという結果となっている。
さて,こうした事業所の人員構成のありようが,それぞれの事業所の高年齢 者雇用をめぐる様尭な事柄にどのような影響を与え,事業所間に差異をもたら
しているかを次に考察する。
定年制度と高齢者雇用
定年制度を設けているかを尋ねたところ,99.2%が「あり」と答え,「ない」
のはわずかに53事業所0.8%であった。設けていない企業は,規模では49人以 下,業種では「卸:.小売」「飲食店」「建設」に見られた。これは従業員確保の 意味からも,とくに定年制を定める必要のないと考える企業が多いためと承ら れる。
定年年齢をふると,最も多いのは「60歳」の63.2%で,次いで「55歳以下」
の14.7%である。さらに「65歳以上」も3.6%ある。規模別に定年年齢の分布 を表4で示す。規模が大きいほど定年年齢は高くなる。「60歳以上」定年は49 人以下規模では60%台だが,1,000人以上規模になると85%を越えている。
今日では60歳定年が主流となっていることは本調査でも理解できるが,ここ で特に定年年齢「65歳以上」だけを取り出して黙る。244事業所あるが,「サー
表4規模別定年年齢
(単位:%)
蕊~iE電E‘i
計 1~29人 30~49人 50~99人 100~299人 300~499人 500~999人 1,000人以上
=i雲11農!;:F俘雲竺陸崇引雪雲
下81940315以468尻2弘尻3歳121115 5 9745190
?①●ccc■ 1212312 5999150
□●一●■●●C4421221
8898129
■■0q■●● 0795321 5556778
3792017
●■□●●■① 3144238 111111
3.3 4.1 3.7 3.6 2.6 3.2 2.8
48
表5定年年齢別定年実施年
(単位:%)
李年鵬uiiil3o弱年'4oz同年'45
ヨ0年l-fl陸|無口名9菌6(895
3.ZIl8-OIl8011F
(注)()内は事業所数を示す。
ビス業」と「医療・教育」そして「情報サービス」の3業種だけの合計で,半 数を越える数になる。また規模では,99人以下が半数を越える。つまり規模の 大きい事業所は60歳定年に集中していて,「55歳以下」も「65歳以上」もとも に少ないということである。このことは今後の定年延長を考える上での重要な 要素である。
定年年齢について,それがいつから実施されているかを尋ねた,これを定年 年齢別に見たのが表5である。「55歳」定年制の実施では昭和40年代までが多 く,「56歳以上」定年制実施では55年以降が多くなっている。また数は少ない が「65歳以上」定年制実施では40年代以降均等に分布している。昭和60年度に 60歳定年を一般化する,という労働政策が推進された時期に,「60歳」定年制 の実施が集中していることは,この政策が一定の成果を上げていることをあら わしているといってよい。だが「61歳以上」定年を染ると必ずしも最近年に実 施されているわけではない,つまりここ数年,定年延長のテンポはやや鈍化し ているように思える。
定年年齢に達した従業員を,嘱託社員や特別社員などの身分名称を設けて再 雇用ないし勤務延長をするやりかたは広く行われている。もちろんその対象は 退職者すべてではないし,雇用契約期間も長短まちまちで,1年ごとに更新さ れる場合が多く,一般的に賃金は維持されるケースもあるが正社員の時よりも 下がる。
表6は再雇用・勤務延長を行っていると答えた事業所の割合を示している。
合計では73.5%が「実施している」と答えており,かなり高くなっている。規 模別にみると,小規模ほど「実施している」が多く,1,000人以上では「実施 していない」の方が多い。この傾向は定年年齢の分布と似ており,また60歳定
55歳以下(1,012)
56~59歳(899)
60歳(4,318)
61~64歳(150)
65歳以上(244) 1
32333 ●●□■● 47133
174528 ●DC●● 07372 35148 21111 ●●●●● 95370 22058 11111 98074 0●●□● 02930 u皿鋼弘肥 83132 ●●●●■ 2211 48597 ●●●●● 74506 11111 ●●●●● 19308
'三三ii5~室i雪ミ塵以鮒’
30 39年夕- 40~ 48年'4,風隼’
55~ 60年|`liiii縢’
無回答49
表6規模別に承た再雇用・勤務延長制度
「・ し
、~9P
【)O~49§
00~999
年が主流である今日,59歳以下の定年の企業でも実質的には60歳近くまで雇用 を継続しているのではないか。そこで定年年齢別にみると,60歳以上より59歳 以下の定年制を設けているところで再雇用・勤務延長が行われている。また,
先述の定年年齢の施行年で象ると,昭和60年前後実施の企業で「実施している」
が少なくなっている。これらのことは,大企業では60歳定年への移行にともな い各種制度の見直しが行われ,それまで設けられていた定年後の雇用継続制度 を廃止するケースが見られる,とこれまでの調査などで指摘されていることを 裏づけるものである。ただし,60歳以上定年の事業所でも7割が割雇用・勤務 延長を行っているのである。同一企業もしくは企業グループ内での高年齢者の 雇用継続という観点からは,再雇用・勤務延長制度が,どの範囲の従業員に適 用され,実際にどの年齢まで雇用されているか,また賃金などの条件はどう変 化するか,といった事柄に関するデータを収集するという課題が残されてい る。1990年「雇用管理調査」によると,再雇用・勤務延長の対象者の範囲は,
「会社が特に必要と認めた者に限る」が5割,「原則として希望者全員」が3 割となっている。また,これらの制度のある企業のうちの3分の1が「最高雇 用年齢」を定めており,約8割が「65歳以上」としている。ただ,こうした規 定が実際にどう運用されているかが問題であるので,より実態にせまる調査が 必要である。
さて次に,以上のような雇用の終了と継続にかかわる制度を有する事業所 が,高齢者の雇用についてどのような考えを持っているかを取り上げて染よ う。「雇用管理の方針」を尋ねた。表7は,定年年齢を60歳を境に3分割して 示している。「59歳以下」と「61歳以上」で対照的な結果となっている項目があ
規模 制度ありの割合(%)
計 73.5
1~29人 30~49人 50~99人 100~299人 300~499人 500~999人
1,000人以上
布惣而昶、舶姐 0●●●●●● 0562438
50
⑤鎖雇・鮴や 這這悴、O 鄭呂損得
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壱|露冒|脅冒|廼冒
51
る。「高年齢者の採用拡大」をあげるのは定年年齢が高いところで,定年年齢
が低い企業では「定年延長」や「新規学卒者採用の重視」が多い。「59歳以下」ではまだ定年延長の余地があると考えており,新卒採用志向が強い。加えて,
高齢者比率別に象ると,高齢者の割合の高いすなわち高齢者の雇用を実際に行 っている企業では,割合の低い企業よりも「定年延長」や「再雇用」を多く挙
げている。高齢者の割合の低いすなわち若年者中心のところでは「新卒採用」が第一である。ちなZAに,高齢者比率が1割に満たない企業では,77%が「新 卒採用」をあげているのに対し,比率が30%と高齢者を多数雇用している企業
ではこれをあげる割合は半数以下である。このように,現実に高齢者が在職し ていることが雇用管理方針に影響を与えているといえよう。ただし,規模が小さいほど高齢者比率は高く,小規模ほど若年者の採用が困難であることを考え
ると,回答結果が高齢者採用に積極的な姿勢をあらわしているとは一概にいえ ないだろう。このことと関連して高齢者を雇用する理由を考察する。高齢労働者を雇用する場合の主な理由を,高齢者比率の高低二つのグループ
を取り出して対比を示したのが表8である。「知識・技能がある」や「勤務態
度が好ましい」など,よく指摘される項目については差が見られない。高齢者比率が30%以上で特徴的なのは,「勤務時間・職務内容など高齢者に向いた仕
事がある」と「若年労働者の採用が困難である」が多く挙げられていることで ある。「仕事」についていえば,求人側と求職側のニーズのミスマッチは,させたい仕事としたい仕事が一致しないことで,高齢者雇用の拡大における最大 の問題であろう。この調査では,高齢者の採用計画について職種別に回答を求
めてみたが,採用計画ありとする職種は「技能職」と「サービス・保安職」で多く,「管理職」と「事務職」では採用予定はないとする答えが多い。だが,
1988年度の定年到達者の職種別構成を染ると,「管理職」「事務職」をあわせて
37%で,「技能職」「サービス・保安職」は46%と,余り差はない。そうする と,ホワイトカラー職種であったものが非ホワイトカラー職種へ移動しなけれ
ばならないことになる。後でふれるように,ホワイトカラーは再就職にあたっ て,「職種は何でもよい」と柔軟性を示すものは少なく,半数以上は経験職種にこだわりを象せている。
「若年者の採用が困難」の理由は,当然のことながら小規模で多いが,「最近
1~2年の新卒者の採用結果」と「高齢者の採用の有無」との関連で承ると,新卒者の採用が不足していることが高齢者の採用に結びついてはいない。この 調査からは,小規模事業所が若年者の採用が出来なくて,高齢者の採用に向か
52
う,とはいえないのである。最近の論調として,これからの高齢化社会では若 年層の減少を女子と高齢者でカバーしなければならないというものがあるが,
現状では高齢者の雇用がそのことにより進むとは結論を出せないのではないだ
ろうか。
高齢者の就業意識
個人調査の回答者の年齢・職種・年収などと,就業(この調査では定年退職 後の再就職に限っている)をめぐる意識について簡単にふれておく。
1.年齢:50歳代後半が53.6%ともっとも多くなっている。60歳以上は 6%の承である。49歳以下も23.4%いた。
2.職種:もっとも多いのは「管理」で,次いで「一般事務」,他の職種は 少なくいずれも2~7%である。対象とした500人以上規模の企業で,この年 齢の従業員になるとかなりの割合で管理職である可能性が高くなると思われる ので,「管理」がこのように多い結果となっているのだろう。年齢別に職種を 承ると,比較的年齢が低いのは「一般事務」で,44%が49歳以下である。「管 理」は60歳以上を除いて均等に分布している。「研究・企画・開発」と「生産 技能職」「運輸技能職」「サービス・保安」では年齢の高い層が多い。特に「サ ービス・保安」では60歳以上が12%にものぼる。「研究・企画・開発」で高齢 者が多いのは,これらの職種はいわゆる「専門職制度」の対象となっているも ので,大企業では広く導入されている制度であるから,管理職を役職定年など で退いた高齢者がこの職種に配置されていることによると思われる。
3.定年年齢:「60歳」が74.6%と最多で,「55歳以下」は5.5%の承であ る。これは事業所調査の500人以上規模での結果と同じである,この規模では
「60歳定年」が主流であることがわかり,3,000人以上規模では8割にも達し ている。こまかく見ると,500~999人では「55歳以下」もやや多いが,「61歳 以上」も10%ある,これに対して3,000人以上ではその両方とも少なく「60歳」
に集中している。
4.現在の年収(税込み):700万未満が最多で,次いで1,000万未満・500万 未満の順である。1,000万以上も16.4%ある。業種で承ると製造業より非製造 業で高収入であることがいえ,職種では非ホワイトカラーよりホワイトカラー
の方が高く,当然勤続が長くなると高くなり,勤務企業の規模が大きいほど高
い,とよく指摘される傾向が見られる。職位が上がるにつれて年収も増加して53
いる。こうした状況は当たり前のことなのかも知れないが,定年後の再就職を めぐって,給与に不満で入職を渋るケースが多いということは,在職中の収入 との大幅な格差が存在するという理由もあろう。そうすると現在の年収は,再 就職の際の希望収入に影響を与えると染てよい。ここで象たような年収の高い グループは再就職にあたりこうした問題に直面する。職位の高いホワイトカラ ーの再就職が困難である理由の一つとして希望収入と実際の賃金とのギャップ をあげておく。
5.再就職の際の希望:①希望する勤務形態は,「嘱託社員」が多く,次 いで「正社員」で,「パート」と「臨時社員」と答えた者は少なかった。
②週の就業日数では,「5日」がもっとも多く,次いで「3~4日」,平均 4.6日である。年齢による差がないのは注目すべきことでもある。この就業日 数は当然勤務形態と相関しており,「正社員」だと5.0日,「嘱託」では466日,
「パート」は4.0日となる。
③1日の勤務時間数では,「8時間以上」が41.3%で,「7時間」が24.1%
となっている。これも就業日数と同じく,年齢による差は見られず,高年齢者 が短時間労働を望むとは一概に言えない。「正社員」で働きたいものは7.5時 間,「嘱託」では7.0時間,「パート」は5.9時間という結果である。このように 見てくると,どれくらいの日数どれくらいの時間働きたいかは,まず,いかな る形態での雇用を望んでいるかと関連してくるということになる。さらに,嘱 託やパートで働きたいと望んでいる場合でも,必ずしも短時間労働を望んでい るわけではなく,たとえば「週の半分ほど午後だけ働く」などというのではな さそうである。このことは,高年齢者が,現実にはそのような短時間の就業機 会が少ないということの現状認識にたって,やむなく行う選択の反映とも考え
表9年収別・希望の月収
(単位:%)
、130方陪
又’10万円’1( DlZC
【】110-8
10万円未満 万円未満10~15 15~20 万円未満 20~25 万円未満 25~30 万円未満 30万 円以上
計 6.3 ’12.2 20.1 22.8 16.3 19.8
500万円未満 700万円未満 1,000万円未満
1,000万円以上 1
3432 ●0●● 9595 111 7315 ●●●● 3130 2211 9417 0950 5●●● 1328 塑記、照 7717 ●CQ● uu翠皿 ①●可Q ⑫u瀦如 ●の甲● 3750
54
られる゜
④希望の月収は,「20万円以上」が約4割である。さきに「現在の年収」
の項でふれたように,現在の収入水準は再就職の際の収入への期待を規定する という仮説をおいてゑる。表9は,年収別に希望の月収の分布を示している,
年収500万未満では「20万未満」が5割を越しているのに対し,1,000万以上 では「25万以上」の月収を希望するのが6割にのぼる。このように現在の収入 が高いほど再就職の際の希望も高い,ということは当然のことながら再就職の さいの仕事を限定することになり,高齢労働力の需給ギャップにつながってい
くのだろう。
⑤「いつまで働きたいか」については,「65~69歳」が61.6%でもっとも多 く,「70歳以上」も22.4%と高率であった。平均値は65.9歳である。職種・職 位・定年年齢別に,働きたいと答えた年齢の平均値をふると,有意な差とはい えないもののある傾向が見られる。まず「職種」では,ホワイトカラーのほう が非ホワイトカラーよりもやや高い年齢を答えている。また「職位」では,地 位が上がるにつれてほんの少しだが高くなる。はっきりした傾向が見られるの は「定年年齢」である。定年年齢が上がるにつれて働きたいとする年齢もあが ってゆく,このことは,「何歳まで働くか」は,自分がいつ定年になってそれ からあと何年働くか,というようにして考えられているのではないかというこ
とを示唆していると思われる。
表10現在の噸種別・希望の職種
(単位:%)
、…糊!
現在の職種-------~~計
職種は何で もよい
その分野の 職種なら何 でも
経験したも のに限る
その分野の 職種なら+
経験したも のに限る
242レー’’7.0
管理 一般事務 セールス・販売 技術関係(エンジニア)
研究・企画(・開発の専門職 生産工程の技能職 運輸交通の技能職 サービス・保安
33068505
●●●●●●●● 、型似nM拓妬型 39243105
●●●巴●●●●92893306 34223222 14941804 ..。。..。qu辺n羽n羽卯2 43184909 0●●●●●●● 銅弱妬記型団釦妬
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⑥再就職先の規模。再就職先の会社を選ぶとしブtニら,どれくらいの規模を 望んでいるのだろうか。規模を6段階に分け,「規模を問わない」を加えて質 問を作った。ここでは仮説として,「現在規模が大きいところに勤務している ほうが再就職先としてもより大きい規模を選ぶ」を立てていた。しかし結果は この仮説を支持しなかった。「規模を問わない」を入れたためかも知れない が,必ずしも現在の勤務先規模は希望規模を規定しない。「規模を問わない」
というのをどう解釈するかが問題だが,高齢者の再就職が実際には小規模企業 への移動となることはよく知られており,現在と同規模の企業を希望するのは 現実離れしている,という判断が示されたとみてよい。
⑦希望の職種はどうか。再就職をする際どのような職種を希望するか,職 種へのこだわりが有るか無いかに着目して尋ねてみた。「職種は何でもいい」
は24.2%,対して「これまで経験した職種に限る」は17%である。表10で現在 の職種別に象ると,「何でもよい」が多いのは「販売」「生産技能」と「運輸技 能」である。「経験した職種に限る」が多いのは「技術関係」「生産技能」「運 輸技能」である。「技能職」では意見が二分されているが,これは「技能職」
に「熟練技能工群」と「単純作業的技能工群」の二つのグループが含まれてい るためではないかと思われる。
⑧「再就職のために教育・訓練を受ける意思があるか」に対しては,「短期 間なら」が半数以上で,「受ける気はない」と「本格的な教育を受ける気があ
表11職種別・再教育・訓練への態度
(単位:%)
弓!i、霞~雪i`i寶倒'鰊
受ける気はない 短期間なら 本格的に受ける計
nzF5~ ̄
53.9 20.0管理 一般事務 セールス・販売 技術関係(エンジニア)
研究・企画・開発の専門職 生産工程の技能職 運輸交通の技能職 サービス・保安 その他
104579071
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●■●■■●■■● 148735500 2231 111
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る」が2割ずつである。年齢別には,高年齢ほど「受ける気はない」が増え,
年齢が低いほうで「短期間なら」と「本格的に」が多くなる。また表11で職種 別に見ると,「本格的に」が多いのは,「セールス・販売」「事務」「管理」で,
21~38%ほどになる。「受ける気はない」が多いのは,「専門職」「サービス・
保安」で,「短期間なら」というのは,「生産技能」と「運輸技能」および「技 術関係」となっている。ホワイトカラーで積極的な姿勢が承られるが,数値は 決して高くない。
6.まとめ:対象者は平均して66歳まで働きたいとしており,2割は70歳以 上までと答えている。現在の定年年齢は4人に3人が60歳である。そして再就 職するさいは,平均して一週に4.6日,一日に8時間,嘱託社員または正社員 として勤務することを希望している。希望月収は20万円前後がもっとも多く,
30万以上も約2割いる。現在の収入が高くなるほど希望の月収も高くなり,ホ ワイトカラー管理職クラスでの希望が高い。希望する職種では,ホワイトカラ ーで,より現在のまたは経験のある職種へのこだわりが見られる。
こうしてふると,再就職肩あたっての障壁がより高いのは,地位が高く収入 の多いホワイトカラーで,非ホワイトカラーは問題が少ない,としばしば指摘 されていることがこの調査でも明らかになった。さきに見たように,事業所調 査では,55歳以上の人を採用する計画があるという職種は,「技能」がもっとも 多くなっている。「管理職」や「事務職」については6割以上の事業所で「採 用する予定はない」とされており,従業員個人とりわけホワイトカラーの希望 とはギャップが見られる。また高齢者を採用する主な理由の一つは「若年者の 採用が困難」というものであるが,それをあげる業種は人手不足に悩む「飲食 店」「軽工業」「サービス業」などである。こうした業種ではさほど技能・経験 を要しない仕事がある,そこで高齢者を採用しようということだろうが,高齢 者には特にホワイトカラーには,こうした仕事は歓迎されないといえる。
事業所調査では,「知識・技能がある」が,高年齢者採用の理由としてもっ とも多く挙げられている,いつぼう個人調査でゑると,個人の「再教育・再訓 練」への積極度はけっして高くない。「受ける気はない」は少ないが,「本格的 に」受けるとするものも少ない。これまでの仕事経験や知識を生かして再就職 したというのが個人で,事業所もそうした経験や知識に期待しているのであろ うが,今日の技術革新と企業環境の変化のスピードは,高年齢者の蓄積してき た技能・知識を陳腐化する可能性が高い。高年齢者個人の側の努力もさらに期 待されて然るべきだろうが,企業は従業員教育に力を入れるべきであろうし,
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高年齢者が再教育・再訂|l練で得た知識・技能を企業側も適正に評価して,それ に応じた報酬体系を考案すべきだろう。その点事業所調査での「再就職に役立 つ教育訓練・資格取得への援助」を行っている事業所の割合の低さが気になる ところである。ただし雇用管理の方針として「教育訓練の充実」をあげる事業 所は多い。さらに「施策」として「公的機関による再教育・再訓練の必要」を あげる事業所も25%ある。
終わりに
高齢者の雇用をめぐって,事業所と高齢者個人に対するアンケート調査で得 られたデータをもとに考えてきたが,雇用する側の高齢者雇用への取り組糸は 決して積極的とはいえない現状であるし,雇用される側にも課題がある。定年 は60歳へ伸びてきているといっても,それ以上働きたいという人が大多数であ る。また企業の人事管理のありようは,高齢者に対しては,50歳を過ぎると賃 金のダウンや役職からの離脱そして仕事の転換,という処遇が当然のように行 われてきている。定年の延長と引き換えに取り入れられたといえるこれらのこ とも,このまま続けてはゆけなくなるだろう。雇用側にも現在のありかたを見 直す動きがふられる。
高齢者の企業からの退職と再就職という側面だけではなく,在職している高 齢者の問題を視野に入れる必要がある。この調査は,対象地域を変えて継続さ れる予定である,さらなるデータの積訟重ねによって,考察を深めていきた
い。
(本稿は1989年度法政大学特別研究助成金による研究成果の一部である)
注この調査全体については次の報告街が刊行されている。
産業雇用安定センター「高年齢労働力需給動向に関する調査研究報告書」1990年
3月