九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ベラ科魚類の運動活動リズムに関する研究
西, 源二郎
https://doi.org/10.11501/3086580
出版情報:Kyushu University, 1991, 博士(農学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
/
ベラ科魚類の運動活動リズム に関する研究
西 源二郎
188 1
本論文の内容は下記のように印刷済みである .
西 源二郎. 1989. ホンベラとオハグロベラの運動活動リズム . 魚類学雑誌, 36(3): 350-356.
西 源二郎. 1990. ベラ科魚類4種の運動活動リズム . 魚類学雑 誌, 37(2): 170-181.
西 源二郎 ・ 阿部秀直. 1990. ホンベラH alichoeres tenuispinnis の潜砂習性と運動活動リズム . 東海大学紀要海洋, 31:69-75.
西 源二郎. 1991a. イトベラの潜砂習性と運動活動リズム . 魚 類学雑誌, 37(4): 402-409.
西 源二郎. 1991b. ニシキベラとオハグロベラの網膜運動反応に
ついて . 東海大学紀要海洋, 31:243-251.
1 . 緒 言 一一一
目 次
II . 調査場所と対象魚種 …一一一一一一一一一一一一一一一一..一ー一一一ー一一一 7
1 . 調査場所 ……一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・…・・……一一一一一 7
2 . 対象魚種 …一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー ー一一 7
ill. ベラ科魚類6種の運動活動リズム ……・一一ー一一一一一一一一 1 0
1 . 実験方法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 10
2 . ニシキベラの運動活動リズム ー…・…・ー・ーーーーーーーーーーーーーーー ー . . . 1 3
3. オハグロベラの運動活動リズム ・ー……・・一一. . . ... . . . . . 16 4. イトベラの運動活動リズム ・ ・ -一・ー一..一- - -- - .一・ーー・…・・・・・一. . ..
18 5 . ホン ソメワケベラの運動活動リズム ー・ー一. - ...ーーーーーーーーーー・ーー . 22 6 . ホンベラの運動活動リズム ー・・ 一一---- - - --- - - --- -- - - - ,- -一一. 25
7 . イトヒキベラの運動活動リズム ーー. - - - _ . - - - --ーーーーーー・ーーーー ・ .
27
8 . 運動活動リズムの内因性の種聞の比較 …一一……一.. . .
30
N . イトベラとホンベラの潜砂習性と
運動活動リズム …一. . . ... . . . 37
1 . 材料および方法 …一一一一一一一一一一一一一一一一一 一一一一…ー一一一一一 37
2 . イトベラの潜砂習性と運動活動リズム 一一ーーーーーーーーーーーーー. 39
3. ホンベラの潜砂習性と運動活動リズム ・・・…・・・・ ー一... . .. . 42 4. 潜砂習性と運動活動リズムとの関連 ……・…一一一一一..
47
1 1
v . ベラ科魚類3穫の網膜運動反応について 一一一一一一一一一一… 5 1
1 . 材料および方法 ……… …… …………一一 一一……… 52
2 . ニシキベラの網膜運動反応 .. .. . . .. ... .. . . ..… . ...一ー・…・・…--- 53 3 . ホンベラの網膜運動反応 一・……. .. . .. . . _----. _ _ . _ -… ・ ・ ・ ーー・ーーーーー--
55
4. オハグロベラの網膜運動反応 --…・…--- 56 5. 網膜運動反応における内因性の追及 ---……ー一一-…… … 5 8
VI. 総合論議 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-一一一一一一一一一一一一… 62
1 . ベラ科魚類の日周運動活動リズムの
外因性と内因性 一一一一一一一一一- 62 2 . 概日リズムのベラ科魚類における
適応的意義 一一一一 一一一一一一 65
Vll. 要約 一--- _ . . _ --一一一-一一一---_ .一一- _ . ...…・一一一.. .. _--ーー・…--一一一・…ーー・ーー一一--- 6 7
四. 謝辞 .... ...一一一・・…一一一一一一一・…. . .. ......一一一一一…--- - --- 79
IX . 文献 一一一-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…・ー・・……--一一一 ・・ー ー・ー・・ーーーーー- 80
付表 ・ 付図
1 . 実験対象魚種一覧 …一一一一一一一一一一一一一一 一一一一一一…・ー… 一一一一 9 6
2 . 運動活動リズム実験条件一覧
1 1 1
3 . 潜砂習性と運動活動リズム実験条件一覧 一一一一一一一 103
4. 対象魚種採集観察地点概略図 一一一一一一一一一一一一一一一一一一 107 5. 実験対象魚 (写真) 一一一一一 一一一一一一一一一一一-一一一一一一一一一 109
6 . アクトグラム(活動記録装置)概略図 一一… ………一 11 2 7. ニシキベラの運動活動記録 ……"一.. � . - . ---…..…・ ・・… 11 3
8 . オハグロベラの運動活動記録 -一一..一一一・…一一ーーーーーーーーーーー. .. 120
9 . イトベラの運動活動記録 ...一一一ー-一..一------- - -- ---…・ ーー・ ・ ・ ー ー ー 1 2 7 10. ホン ソメワケベラの運動活動記録 --- - - --…ー一. .......
138 11 . ホンベラの運動活動記録 一 '…・一一一- _ .. _ ---一ーーーーー一. . ... . . . .
146 12. イトヒキベラの運動活動記録 -一一---ーーーー一. . ... ......
155 13. イトベラの底砂除去実験運動活動記録 • . . . • • . . . .
1 6 1 14. イトベラのアクリルペレ ッ ト敷設実験
運動活動記録 173 15. ホンベラの底砂除去実験運動活動記録 .. 一一一一一一一一一 181
16. ホンベラのアクリルベレ ッ ト敷設実験
運動活動記録 191 17. 網膜模式図 一一一一・…・…・…ー…・一一一一一一一一一..一一一... ... .. . .. 198 18. 網膜運動反応 . ..ーーーーー一----_ .一..…-. _ _ ._--- _ . . .一一一..一ーー一... ... 199
1 V
緒 一言
生物には, 生まれっきの形態(空間構造) があるように, 加齢に よる成熟, 活動や休息の周期性など (時間構造)にも生まれつきの ものがあり, 生物の諸現象を追及していく上で時間構造 を無視する ことは出来ない . これら生物の時間構造の中で最も主要なものは周 期性である (千葉, 1978) . 生物は地球の自転や公転などによって 生じる環境の周期的変動に, 種々の活動 を対応させて生活してい る . 生物の周期的行動は, 外部刺激の周期的な変化によって作り 出される外図的な行動, 生物それ自身によって起こす内図的な行 動, および, これら両方の成分を持っている行動にわかれ( Park,
1941 ), 外部サイクルと生物の周期活動との関係に ついての知識 は, 生物と環境との関連を理解する上で重要であると考えられる (Olla and Studholme, 1972). 周期活動の中でも日周活動は最も身 近な現象であり, 多くの研究がなされてきた . 内因性の “日周リズ ム" は, 恒常条件の下では, その周期が24時間か ら若干ずれること が普通であるとされ, Hal be rg(1959)によってcircadian rhythm と名付けられ, 日本でもそのま まサー カデア ン ・ リズム(千葉,
1975;本間ほか, 1989)と呼ぶか概日リズム(千葉, 1978)と訳さ れている . 概日リズムの基本となってリズムを刻んでいる生物の内 部機構を時計になぞらえて, 広く生物時計(biological clock)と
呼ばれている.
生物時計の存在が学問的に注目されるようになったのは18世紀で あり, 植物の葉の運動が恒暗条件の中でも起こることが1729年に報 告されている(De Mairan,1729). 19世紀には, 恒暗条件下の植物の 葉の運動の周期が正確な24時間でないことが明らかにされた . しか し, この時代には, 恒常条件下における周期的変化の継続は, それ
以前の明暗サイクルの残存影響として説明されることが多かった . 恒常条件下において, 24時間でない周期のリズムが多く知られるよ うになったのは1900年代になってからである(Schwassmann, 1971;
Bünning, 1973 ;千葉, 1975) . 1960年にアメリカのCold Spring Harberにおいて開催された生物時計に関するシ ンポジウムは, それ までの研究をまとめ, その後の研究方向に大きな影響をあたえると ともに, 概日リズムに関する研究が各方面で急速に発達する契機と なった(千葉, 1975;本間ほか, 1989) . 魚類の活動が一日のうち でいつ始まり, いつ最も盛んに餌を摂るのか, というような日周活 動に関する知識は, 漁業者にとって極めて重要な事象であり関心も
高く, 古くから研究者の注目を集めていた. しかし, これらに関す
る研究の多くは, 時間ごとの漁獲量の変化, 胃内容物量の変化, 水 中での直接観察による野外での周期活動などに関する報告 であっ て, 日周活動が成立する機構や動物体内の要因などに関する詮索は あまりなされていない(羽生 ・ 田畑, 1988) . 魚類の日周活動と環 境要因の日周変動との関連を明かにすることは, 魚類と環境との調
和を理解する上で必須である (Olla and Studoholme, 1972 ) . ま た, 最近強 力に進められている栽培漁業, 海洋牧場構想を進める上 で基礎的な情報を提供するものと思われる .
- 2 -
日周活動の内因性を調べるためには, 光や温度の環境条件を制御 できる実験が必要である(田畑, 1988) . この実験に必要な魚類の 行動測定装置の初期のものとしては, 魚体に糸を結び付けてカイモ グラフに記録したイクチオメーター(ichthyometer)があり(Spen
cer, 1929), 室内で淡水魚数種の日周活動を記録し, キンギ ョ が恒 明条件下で数日間日周活動リズムを持続させたことを報告している (Spencer, 1939 ) . 水中に吊したアルミニウムの板で, 魚が動い た時の水の動揺の感知によって電気的回路の接点を開閉して記録す る機械的スイ ッ チ法が考案され(Spoor, 1941 ) , キンギ ョ の活動 が酸素消費量の変化と共に記録された(Spoor, 1946 ) . 水中にセ ルロイド板を吊した機械的スイ ッ チ法で(Jones, 1955 ) , ミノー
( E hoxinus phoxinu s )の活動が測定されている(Jones,1956)
これらに対して, 赤外線の光電スイ ッ チを利用した方法は, 魚の行 動に与える影響が非常に少なく, ヤツメウナギの1種についての実 験が行われたのをはじめ(Kleerekoper et al., 1961) , 現在では 最も広く利用されている(田畑, 1988)
近年になると, 赤外線の光電スイ ッ チをはじめ優秀な観察 ・ 記録 機器が開発され, 魚類の行動解析ならびに生物リズム学的な研究の 発展に大いに役立つようになってきており( Schwassmann, 1971;
Thorpe, 1978 ;羽生 ・ 田畑, 1988) , 魚類においても多くの研究が なされてきた . その成果は, Schwassmann (1971) による魚類の生
物リズムに関する総説をはじめ, Palmer (1974)が海洋生物全般に おける生物時計に関する著書の中で魚類についても言及している .
1977年にはFish rhythmについての国際シ ンポジウムがイギリスで 開催されrRhythmic Activity of Fishes Jとして報告されている
-3ー
(Thorpe, 1978). さらに, 1983年には “Rhythmicity in Fishes" と 題する国際シ ンポジウムがアメリカで開催され, その内容がTrans.
Amer.Fish.Soci. 誌CVol.113 )に特集されたCSpieler and Ken
dall,1984). 日本におい ても, 1987年に行われたシ ンポジウム 「水 産動物の日周活動」で, 魚類の日周 行動と概日リズムについて報告 された (田畑, 1988) . そ れらの結果, 魚類の活動リズムについて の 特徴が明ら かにされつ つ ある.
しかし, ほかの脊椎動物に比べると , 魚類の概日リズムが 比較的 長期にわたって安定して記録されている例は非常に少ないのが現状 である(田畑, 1988) . また , 日周活動が 光の直接的影響によるの か , あるいは光の直接的影響と内図的リズムとの両者によるの かに
ついて は, まだ明確な解答が ない と言われているCMcFar 1 and,
1986) . 前述の ように, 魚類の 行動解析な らびに生物リズム的な研 究が近年大いに発展し, ヤツメウナギ類( Kleerekoper et al.,
1961;森田 ・ 田畑, 1983) , メクラウナギ類(Ooka-Souda et al.,
1985, 1988; Ooka-Souda and Kabasawa,1988; Kabasawa and Ooka
Souda, 1989), ウナギ類CBohun and Winn, 1966; Van Veen and Andersson, 1982; 田畑,1988), ナマズ類CMashiko, 1979,1881;
Eriksson and Van Veen, 1980; Goudie et al., 1983; Garg and Sundarara, 1986; Tabata et al., 1889) , コイ類C Jones, 1856;
Siegmund and Wolff,1973; Kavaliers,1980;1981) , サケ ・ マス類 (Swift, 1962,1964; Ali, 1964; Varanelliand McCleave, 1974;
Richardson and McCleave, 1974; Müller, 1978a,b; Godin, 1880,
1981) , ハゼ類(石崎,1973 ; 西川 ・石橋,1975 ;西, 1980)など,
多くの研究がな されている.
- 4-
ベラ科魚類は熱帯から温帯の沿岸浅海 にすみ , 日本近海からは 126 種が知られている(益田ほか, 1984) . 比較的小型の種類が多
く , 大規模な漁業の対象ではないが, 瀬戸内海をはじめ西日本では 食用として珍重され, 沿岸部では重要な漁獲対象となっている種 や遊漁の対象としても親しまれている種が含まれる(荒賀ほか,
1985) . ベラ類は古く から一般に昼行性とされ, 夜間は砂中に潜入 し, ある いは砂上や岩かげに体を横たえて休息する特有の習性が知 られている(寺尾, 1916; Boulenger ,1929; 木下, 1935) . さら に, 本類の野外における明瞭な日周活動についての報告は少なく な い( Hobson,1965 , 1972; Collette and Talbot ,1972;中園 ・ 塚原,
1972;益田ほか, 1984; Helfman , 1986). 魚類の運動活動の概日リ ズムは不安定で消えやすく(Tabata et al., 1989), 魚類の生物リズ ムの良い指標ではないとの指摘(Richardson and MaCleave ,1974)
もある. ベラ類は前述のよ うに明瞭な日周活動を行うことが知られ ており, 運動活動リズムの内因性を追及するの に適当な種と考えら れ, 本類の日周活動に関する研究は , 生物リズム学的な立場からの 実験的検討 に興味が持たれる. しかし, ベラ類の運動活動の周期性 について検討された例はまだ少なく , Casimir(1971) による紅海産 ソメワケベラ属の1種( L abroides quadrolineatu s) が恒明条件下 で活動リズムを継続させるとの報告, Schwassmann (1971)がWilkie からの私信にもとづいて行った, カリフ ォ ルニア産ベラ科の1種 ( 0xyjulis californic a)の活動リズムが内因性であるとの報告,
樺沢(1982)によるキュウセン(Hal ichoeres poeci lopteru s)の活動 が概日リズムの影響を受けなかったとの報告 があるだけであり, こ の方面の研究は不十分である.
戸り
そこで, 筆者は駿河湾沿岸で比較的普通に見られるニシキベラ T halass_oma cupid � CTemminck et Schlegel), オハグロ ベラE主主工�- 丘立丘且豆flagellifer � CValenciennes) , イ トベラSuezichthy S丘工主ー 豆� CSteindachner), ホン ソメワケベラL abroides dimidiatus CValenciennes), ホンベラH alichoeres tenuispinni �. G ü n t h e r , イ
トヒキベラC irrhilabrus temmincki i Bleeker のベラ科魚類6種を 対象として, 運動活動リズムの内因性の有無について実験的に追及
し, 夜間の休止場所と運動活動リズムの内因性の強さとの関連を明 らかにするとともに, 一部の魚種については潜砂習性と運動活動リ ズムとの関連, さらに, 網膜運動反応と運動活動リズムとの関連に ついても明らかにし, その結果について検討した .
-6-
1 . 調査場所
11. 調査場所と対象魚種
本研究の対象魚6種のうち, ホン ソメワケベラの一部を除いたほ かの被験魚は, 潜水および釣りにより採集されたものである. 潜水 採集はスキュ ーパダイビングにより, カーテン状の小型巻き網およ びタモ網で行った. 潜水時には, 対象魚の野外行動についての簡単 な観察を行った. 採集と観察は, すべて駿河湾内の沼津市江梨地先 (Fig. 1)および清水市三保地先(Fig. 2)で行った. 江梨地先の 海底は, 転石の多い岩場で, 汀線から水深 5mにかけて緩斜面に転 石が重積し, 所々に露岩や砂泥の堆積も見られる. 水深5-15mにか けては, 急傾斜の転石地帯で, これ以深は緩傾斜の砂泥底となって いる. 三保地先は砂利から人頭大ぐらいまでの転石が重積した海底 で, 汀線から水深 5mにかけては緩傾斜で, 水深5-20mはやや急傾
斜となり, これ以深は緩傾斜の砂泥底となっている.
なお, ホン ソメワケベラの一部は熱帯魚商から購入したフ ィリピ ン産の魚である.
2. 対象魚種
実験対象としたのは, ベラ科カン ムリベラ亜科の5種と, 同科モ -7ー
チノウオ亜科の1種の合計6種で( Table 1 )ある. なお, これら 6種の学名は益田ほか( 1984)に従った .
ニシキベラ Thalassoma cupid o (Temminck et Schlegel)は, 本 州中部以南に分布し, 本州、I , 四国, 九州 の南部では最も普通のベラ であり, 細長い体だが砂の中には潜らない とされる(益田ほか,
1984) . ニシキベラの産卵行動は午前中に行われ, ペア産卵と群れ 産卵の両型が観察されており, 三宅島では6-9月に生殖行動が見ら れる(Moyer, 1974; Meyer, 1977) (Fig. 3)
オハグロベラPteragogus flagellifer a (Valenciennes)は, 千葉 県および島根県以南に分布し, 西日本では普通種で, 夜間はfd、に潜
らず岩陰や海藻の根元で休息する(山下 ・ 岩永, 1963; 益田ほか,
1984) . オハグロベラの産卵行動はペア産卵で, 午後に行われ, 北 九州 の津屋崎では8月下旬から9月上旬の約3週間が産卵期である (中園 ・ 塚原, 1974;中園, 1979) (Fig. 4)
イトベラSuezichthys graci li s (Steindachner)は, 本州中部以 南から九州、|に分布し, 岩礁周辺の砂底にすみ, 夜間は砂中に潜る (益田ほか, 1984) . イトベラの産卵行動は午後に行われ, ペア産 卵が観察されており, 駿河湾では4-9月が産卵期間と考えられる (小林, 未発表)(Fig. 5)
ホン ソメワケベラLabroides dimidiatu � (Valenciennes)は, 千 葉県小湊以南に分布し, 夜間は岩やサンゴの隙聞に入って眠るが,
粘液の膜で体を包んでいることがあるとされる(益田ほか1984) ホン ソメワケベラは, 他の魚の外部寄生虫を捕食する習性が有名
で, 掃除行動についての多くの報告がある(Randall,1958; Feder,
1966 ;奥野, 1969; ほか). 産卵行動はハレ ムを形成するペア産卵 -8-
で, 和歌山県白浜や水槽内では正午前後に行われる(日置, 1979;
Kuwamura, 1981) (Fig. 6)
ホンベラH al ichoeres tenuispinni s来 Günther は, 温帯に良く適
応した種類で, 東京湾および佐渡島以南に分布し, 本州中部より四 国, 九州にかけて, ごく普通に見られ, 夜間は砂中に潜る(木下,
1935;山下 ・ 岩永, 1963;益田ほか, 1984) . ホンベラの産卵行動 はベア産卵と群れ産卵の両型で, 午前と午後の1日2回行われ, 北 九州、|の津屋崎では6月から9月の約3か月が産卵期である(中園,
1979) . 砂泥底では観察されず, 岩礁で採集した個体を砂泥底で放 流すると, 海中の暗部を目標にして最寄りの岩礁に移動すること
(中園 ・ 塚原, 1971) , 朝と夕方には活発に遊泳するが, 正午前後 は不活発になる日周活動を示すことが知られている(中園 ・ 塚原,
1972) (Fig. 7)
イトヒキベラC irrhilabrus temmincki i Bleeker は, 相模湾以南 に分布する(益田ほか1984) . イトヒキベラの産卵行動はペア産卵 で(日置, 1979;鈴木ほか, 1981) , 午後に顕著になり, 三宅島で は7月から9月が産卵期である(Moyer and Shepard, 1975; 8el1,
1983) (Fig. 8)
*日本産魚名大辞典(日本魚類学会, 1981)ではι t enuispini sと なっており, 広く使われているが, ここでは, 益田ほか(1984)に従った.
-9-
ill . ベラ科魚類、6種の運動活動リズム 米
ベラ科魚類の運動活動リズムについて, 生物リズム的な立場から 検討された例は少ない. そこで本章では, 駿河湾沿岸で比較的普通 に見られるベラ科魚類6種を実験水槽で飼育し, 種々の光周期の下 で運動活動を記録した . その結果, これら6種のあいだで, 運動活 動リズムの内因性に相違のあることが明らかになった .
1 . 実験方法
1 ) 被験魚
運動活動リズムの内因性に関する実験の対象とした魚種は, ニシ キベラ以下6種のベラ類である. 実験対象魚は各実験ごとに1尾と し, 実験に用いた個体の数と大きさはニシキベラ14尾(全長67-117 mm) , オハグロベラ 8尾(全長76-114mm), イトベラ13尾(全長65 -115mm) , ホン ソメワケベラ16尾(全長55-83mm ) , ホンベラ13尾 (全長75-120mm), イトヒキベラ12尾(全長59-70mm )である .
2) 飼育条件
実験水槽(ガラス水槽60 X 3 0 X 3 0 cm , または40 X 2 5 X 3 0 cm )は,
*本章の要旨は西(1989, 1990)に発表されている .
- 1 0-
底面に珪砂(有効径約1 mm)を5- 1 0 cmの厚さに敷き, 底面滅過方式 または外部鴻過 方式で飼育水の循環を行った . 飼育水はサーモスタ
ッ トに連結したヒ ーターまたはクーラーで温度調節し, 水温の日較 差が生じるのをできるだけ避けるように努めた . 実験中の水温範囲 は21 . 0 - 2 5 . 0 OCであったが, 1実験中の温度変化は3.0 oc以内, 1
日の較差は0.5 oc以内であった . 水槽は外部からの光の影響を少な くするため, 水槽周辺を暗幕で囲った .
実験の光条件は明状態と暗状態に分け, 明状態では上部30- 50 cm に設置した20W型蛍光灯を点灯して水面直上で500-1500 luxとし,
階状態では消灯して暗黒とした . 点灯と消灯の切替えはタイムスイ ッ チで瞬時に行った . 光周期は06 - 18時を明期とし, それ に続く 18- 06時を暗期とした明 暗サイクル(L D )条件;明期を連続させ た恒明(L L ) 条件; 暗期を連続させた恒暗(D D )条件の3条件 とした . 実験 区は光周期がLD条件だけのLD区, 7-8 日間のL L 条件の前後に3-4日間のLD条件を組合わせたLL区, 同じく DD 条件の前後に2-3 日間のLD条件を組合わせた DD区の3区とし た .
3) 活動記録方法
魚の活動記録には, 光電スイ ッ チ式アクトグラフと8ミリカメラ を用いた . アクトグラフには, 2種類のタイプがある . タイプA は, ゼラチンフ ィルター(Kodak No.88A: 赤外線透過フ ィルター) を装着した12V パイロ ッ トランプの赤外線光束をレ ンズで集光し,
C d S (光導電セル)で受光するようにしたもので, 赤外線光束を
魚が遮ることによって起きる光の変化を電圧変化に変え, それを増 - 1 1 -
幅してポリレ コーダー(東亜, EPR-10A,またはEPR-100A)で記録し た . タイプBは, 赤外線発光ダイオードの光束をフ ォトトランジス ターで受光するようにした光電スイ ッ チ(竹中電子, N T 10 , また は, オムロンE3JK-5S3)で, フ ォトトランジスターからの信号をイ ベントレ コダー(三栄,WI-835,または信和理研SAC-10P-KB)で記録 した(Fig. 9) . いずれの光電スイ ッ チを使用した場合も, 各水槽 ごとに2組を常用し, 光束が砂底に沿って水槽を水平に横切るよう に設置した . 光電スイ ッ チの砂底からの高さは, 各対象魚種の体高 および遊泳層を考慮して, ホンベラ, イトベラ, ニシキベラでは5- 10 cm , イトヒキベラ, オハグロベラでは 11-15 cm , ホン ソメワケベ ラでは16 -2 0 cmとした . 記録計のチ ャ ートスピードはポリレ コ ー ダーでは毎時20-60mm,イベントレ コダーは毎時10-20mm とした . タ イプAは1979年5月から1983年1月まで, タイプBは1982年5月か ら1990年8月まで使用した .
8ミリカメラはメモモーシ ョ ンタイマーに接続し, 魚の活動を1 秒に1コマのフ ィルム速度で擬影した . 撮影時聞は5分または6分
聞につき最初の1 0秒間とした . 撮影したフ ィルムは編集機を用い
て観察し, 連続した1 0コマの活動状況を, 各フィルム間で全く移動の見られなか った場合を0, 全てのフィルム間で移動の見られた場合を5とし, 0 - 5の階級に 分けて活動の指標とした. 8ミリカメラは1979年5月から, 1980年12月間で使用し た.
実験対象魚、は各実験ごとに1尾とし, 実験に先立ち, 対象魚を実 験水槽に収容した後, 明暗サイクル条件下で1-2 週間馴致飼育し た. 思11致期間中は1日1因不定期に給餌した. 実験期間中(7 -15
日)は, 給餌に よる活動に対する影響を避けるために無給餌とし た .
-12-
2. ニシキベラの運動活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨における潜水観察C1980年7-9月)では, ニシキベラは水深 1-10 mの転石底で数 多く見られ, f!1、泥底では全く見られなかった .
朝夕には水深1 m付近の浅場で, 30-50尾の群れが観察されるが,
日中は水深卜4 mの所で単独あるいは数尾の小さい群れで遊泳して いることが多い. 薄暮期になると水深1 m付近の転石が重なり合っ た隙聞に出入りするようになり, 出入りを繰り返した後, 転石の隙 間からでてこなくなった.
2) 実験水槽内 における活動リズム
実験水槽内では, 昼間は水槽壁に沿った上下方向の旋回遊泳を主 に行い, 夜間になると砂中に潜入するのがしばしば観察された . 活 動リズムに関する実験は, L D区を4回(実験Tc1-4), L L区を5 回(実験Tc5-9), D D区を5回(実験Tc10-14 )行ったCTable 2 )
a) L D区
全4実験を通じでほぼ同一結果が得られた. L D条件下における ニシキベラの日周活動は, ほとんど連続して活動が記録された時間
帯と, 活動のほとんど記録されなかった時間帯とに区別することが
?← サうt
できる . 前者を活動期, 後者を休止期と呼ぶ. 活動期の開始時刻は 各実験ごとに毎日ほぼ一定しており, 点灯前( I情期中)である実験 例(実験Tc1,2: Figs.10,11)と, 点灯時刻と一致する実験例(実験
一一一一一Tc3,4: Figs.12,13)とがあった. 活動期の終了(すなわち休止期の
*原則として, 連続的に活動が記録されている時間帯 及び連続的な活動の前後3時間以内に散発的 な活動が記録されている時間帯. 前後の状態を考慮して判断した.
**原則として, およそ3時間以上に渡って活動が全く記録されない時間帯. 前後の状態を考慮して
判断した. -13一一
開始)時刻にも前述の開始時刻におけるのと似た傾向が見られ, 消 灯時刻と一致する場合と, 消灯前(明期中)である場合があった .
升
すなわち, L D条件下におけるニシキベラは光周期に同調した明瞭 な活動リズムを示したが, 活動が必ずしも明期中に限られることは なく, 暗期中にも活動することが認められた .
b) L L区
5実験のうち, L L条件にしてもその終了まで活動リズムが継続 したのが2例(実験Tc5,6), 途中まで継続したのが2例(実験Tc7,
8 )あり, 1日目から活動リズムが消失したのは1例(実験Tc9 ) であった.
実験Tc5 では, 光周期をLD条件からLL条件に変えても, ニシ キベラは約1日に1回の活動期と休止期を示し, 明瞭な活動リズム を持続する結果が得られた . しかし, L L条件下における活動期の 開始時刻は毎日規則的に前進し(早くなり), 1日の平均前進時間 は50分であった . 一方, 活動期の終了時刻には前進傾向が認められ なかった. L L条件後に設定したLD条件下においても活動リズム の継続が認められ, 活動はl情期中にも連続したが, 暗期における活 動は強く抑制され, 明期の活動状態とは区別することが可能であっ
た. 活動期の開始時刻は毎日大きく後退し(遅れ),点灯時刻に近づ いたがLD 3日目までに一致することはなかった(Fig.米 14に ほぼ
同様な結果となった実験Tc6 では, 活動期開始時刻の1日の平均前 進時間は66分であった. 活動期の終了時刻にも前進傾向が認められ た(Fig. 15). L L条件の途中まで活動リズムが継続した実験Tc7
では, 光周期をLD条件からLL条件に変えた当初は, 約1日に1 回活動期と休止期を示し活動リズムを持続した . しかし, 活動期の
*活動リズムの周期が2 4時間であり, 活動期の時間帯と明記の時間帯が一致した場合, 活動リズム が光周期に一致する, と言い, 同様に, 活動期の開始と終了のいずれかが点・ 消灯時刻と一致しない 場合, 活動リズムが光周期に同調する, と言う.
**:次のページに示す.
開始時刻には顕著な前進傾向があり, 終了時刻にもわずかな前進傾 向が認められ, したがって活動期の長さは日を追って延長し, L L 6日目からは1日中連続するようになり, 活動リズムが消失した . その後のLD条件下においても活動は1日中継続したが, 暗期にお ける活動は強く抑制され, 明期の活動状態と明らかに区別すること が可能であり, 活動リズムが認められた . L L 5日固まで継続した 活動リズムの平均前進時聞は54分であった(Fig. 16) . ほぼ同様 な結果となった実験Tc8では, L L 4日目まで活動リズムが継続し たが, L L 5日目からは1日中活動が連続するようになり, 活動リ ズ ム が 消 失 した . L L 4日目まで継続した活動リズムの活動期開 始時刻の1日の平均前進時聞は21分であった(Fig. 17 )
実験Tc9 では, 光周期をLD条件からLL条件に変えると, ニシ キベラは1日白からほとんど1日中活動するようになり, 活動リズ ムは消失した(Fig. 18)
c) D D区
全5実験においてニシキベラの活動はDD条件下で明らかに抑制 されたが, 5例のうち2例(実験Tc10,11 )では抑制が比較的弱く てDD条件終了まで活動リズムが継続した . 抑制が強くて1日目か ら活動が消失したのは3例(実験Tc12-14 )であった
実験Tc10では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると, 活動 は大幅に減少したが約1日に各1回の活動期と休止期がある活動リ ズムは継続した . 活動期の開始時刻は毎日前進する傾向にあり, 1
日 の平 均前進時聞は11分であった . 再びLD条件に戻 すと明期に活 動が活発になった . 活動期の開始は毎日徐々に後退し, 直ぐにはD D条件にする前のLD条件下での時刻に戻ることはなかった(F i g.
-15-
前ページ**活動リズムが新しい光周期lこ一致するまでの期間を移行期と言う.
19) . 実験Tc 11でも, 光周期をLD条件からDD条件に変えると,
活動は大幅に減少したが約1日に各1回の活動期と休止期がある活 動リズムは継続し, 実験Tc10とほぼ同様の結果となった. 活動期開 始時刻は毎日前進し, 1日の平均前進時聞は22分であった(F i g .
20 )
実験Tc12では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると, 1日 目から活動が消失し, 活動リズムが見られなくなった. D D条件か ら再びLD条件に戻すと点灯直後に活動を開始し明らかに活動期が 復活した. 活動期の開始時刻は直ちに点灯時刻に一致したが, 終了 時刻はDD条件にする前のLD条件下での時刻よりも大幅に前進し た. その後, 終了時刻は毎日徐々に後退し元の時刻に戻った(Fig.
21) . 実験Tc13では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると,
活動は強く抑制され, 散発的に見られるだけで, D D 1日目から活 動リズムは消失した(Fig. 22 ). 実験Tc14は, 実験Tc12とほぼ同 様で, 1日目から活動が消失し, 活動リズムが見られなくなった (Fig. 23 )
3. オハグロベラの運動活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨および三保における潜水観察(1979年10, 11月)では, オハ グロベラは海藻の繁茂した岩礁地帯(水深1-3 m)でよく見られ?
単独で緩慢に遊泳していることが多い. 薄暮期になると, 徐々にそ れぞれ1か所に落ち着き? 最終的に海藻の中? 岩陰で静止するのが 見られた . 2,3個体が並んで静止している場合も見られた . 波の荒
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いときには, 海藻の中で, 波に採まれながら静止していた . 夜間に 休止場所を移動させることもあった .
2) 実験水槽内における活動リズム
実験水槽内では, 昼間 は主に上層と中層とをゆっくりと遊泳し?
夜間になっても砂中に潜入することはなく, ガラス面や石にもたれ 掛かるようにして砂の上で静止していた . 活動リズムに関する実験 は, L D区を4例(実験Pfl-4), L L区を2例(実験Pf5,6), D D
区を2例(実験Pf7,8 )行った(Table 3) a) L D区
全4実験においでほぼ同様な実験結果が得られた . L D条件下に おけるオハグロベラの日周活動は, ほとんど連続して活動が記録さ
れる活動期と, 活動のほとんど記録されない休止期に明瞭に区別で きることが分った . 実験Pfl において, 活動期は4日目を除き毎日 ほぼ点灯時刻と同時に始まり, 消灯時刻付近で終了した . 暗期中に わずかながら活動が見られた(Fig. 24 ) . LD区の他の3例(実 験Pf2-4: Figs. 25-27)でも, 活動期は点灯時刻付近で始まり, 消
灯時刻付近で終了した . 暗期中の活動がわずかだが見られた . すな わち, オハグロベラでは光周期にほぼ一致した明瞭 な活動リズムを 示すことが明らかになった .
b) L L区
2実験においでほぼ同様な実験結果が得られた . 実験Pf5 におい て, 光周期をLD条件からLL条件に変えると? オハグロベラは1
日目から活動が ほとんど1日中連続し, 休止期は認められなくな り, L L条件下で活動リズムは消失した. その後, L L条件から再
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ぴLD条件に戻す と, 1日目から消灯直後に休止期が現れ, 活動リ ズムが復活し, 活動リズムは直ちに光周期に一致した(Fig. 28) .
8 mmカメラによる記録でも同様な結果が得られ, 活動が特に活発な 時間帯はなかった(Fig. 29 ) . 実験Pf6 においても, L L条件下 でほとんど1日中連続的に活動し, 休止期は認められなくなり, 活 動リズムは消失した(F i g. 3 0 ) • 8 mmカメラによる記録でも同様 な結果が得られた(Fig. 31 )
c) D D区
2実験においてほぼ同様な実験結果が得られた . 実験Pf7におい て? 光周期をLD条件からDD条件に変えると, オハグロベラはD
D条件下では活動せず, 活動リズム がなくなったものとみなされ た . これを再びLD条件におくと, 点灯直後に活動を再開し, 明ら かに活動期が復活しF 活動リズムは直ちに光周期に一致した(F i g.
32) . 実験Pf8 においても, D D条件になると活動せず, 活動リズ ムがなくなった(Fig. 3 3 )
4. イトベラの運動 活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨お よび三保における潜 水観察(1980年 10, 12月) では, イト ベラは水深5-15mの砂泥底で見られたが, 個体数は少なかった . 単 独で遊泳していることがほとんどで, 2尾でいることもあったが,
それ以上の群れになることはなかった . 薄暮期になると, 頭部を下 に斜めになり, 砂底 の直ぐ上を遊泳することがしばしば観察され
た. その後, 砂底に潜り込んだ . -18-
2) 実験水槽内における活動リズム
実験水槽内でイトベラは, 昼間は主に下層で活動し, 夜間になる と必ず砂中に潜入した . 活動リズムに関する実験は, L D区を4回 (実験Sgl-4 ) , L L区を4回(実験Sg5-8) , D D区を5回(実 験Sg9-13)行った .
a) L D区
この実験区におけるイトベラの日周活動は, 活動期と休止期に明 瞭に区別できた . 活動期の開始は, 4実験全てにおいて毎日点灯と ほぼ同一時刻であった . 活動期の終了(すなわち休止期の開始)は 消灯以前にあるのが2例(実験Sgl,2: Figs. 34,35) , 消灯とほぼ 同一時刻であるのが2例(実験Sg3,4: Figs. 36,37)であった . す なわち, L D条件下のイトベラは明期に活動し暗期にはほとんど完 全に休止し, 光周期に同調した明瞭な日周活動リズムを示した .
b) L L区
4実験全てにおいて, 光周期をL D条件からLL条件に変えて も, イトベラは約1日に1回の活動期と休止期を示し, 明|僚な活動 リズムを持続する, ほぼ同様の結果が得られた . 実験Sg5 におい て, L L条件下における活動期の開始時刻は1日目に41分前進し,
その後も毎日規則的に前進し, 1日の平均前進時間は約21分, L L 7日目には同1日自に比べて126 分前進した . 一方, 活動期の終了 時刻にも前進傾向が認められた . L L条件後に設定したLD条件下 においても活動リズムの継続が認められたが, 暗期には活動せず,
活動期の開始時刻は1日目から後退し, 点灯とほぼ同時刻になった (Fig. 38). この区の他の3例(実験Sg6-8: Figs. 39-41)にお いても, L L条件下における活動期の開始時刻は毎日規則的に前進
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し, 1日の平均前進時間は, 各13分, 15分, 18分であった . c) D D区
5実験全 てにおいて, 光周期をLD条件からDD条件に変える と, イトベラはDD条件下ではほとんど活動しなくな り, 活動期が
なくな ったものとみなされた . 実験Sg9 では光周期をDD条件下か ら再びLD条件にすると, 活動期の出現とともに活動リズムが現れ た . 活動期の開始時刻は点灯から133 分遅れており, その後毎日 徐々に前進した . 活動期の終了時刻は消灯とほぼ同時刻であった (Fig. 42) . D D区の他の4例(実験Sg10-13: Figs. 43-46)にお いても, D D条件下でイトベラはほとんど活動せず活動期は認めら れなかった . D D条件後に再びLD条件にすると, 活動期の出現と ともに活動リズムが現れた . L D 1日目の活動期の開始時刻は点灯 時刻より遅れており, その時聞は各 実験において 24分, 32分, 120 分, 140分であった . その後, 活動期の開始時刻は前進して点灯時
刻!と一致した.
3) 活動リズムの光周期への同調
光電スイ ッ チを用いたアクトグラフによるイトベラの活動記録か ら判断すると, イトベラは暗状態ではほとんど全く活動せず, 活動 期の開始は点灯時刻に同調していることが多い . このような活動リ ズムと光周期との同調がどのような機構で行われているかを知るた
めに, イトベラの活動開始時の行動を, 点灯時刻の前後にわたって 写真撮影によって記録した . 実験は, 底面に珪砂を約10cmの厚さに 敷いたガラス水槽(60X30X30cm )に, イトベラを8尾収容し, L D 条件(06:00点灯, 18: 00消灯 )で1週間馴致飼育後に開始した .
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行動の記録は, モータードライブ付きの35mmカメラで 行った . カメ ラはストロボを同調させて, インターバロメーター(ニ コ ンMT-1) の制御により自動的に1分に1回撮影で きるように設定した . 実験 は5日間を1シ リーズとして2回行い, 第1回実験は1988年11月 14 - 18日に毎日05:43-06:16 の時間, 第2回実験は1989年 6月 9,
10,13-15日に毎日05:47-06:20 の時間に撮影した . ÍI最影されたフ ィ ルムを観察して, イトベラの状態を体の一部を砂の中から出してい る状態( 頭出し) , ほとんど全体あるいは全体を出しているが砂の 上に静止している状態 (休止) , 体を砂底から離して遊泳している 状態(遊泳) の3ランクにわけた .
a) 第1回実験(1988年11月14- 18日)
5日間の実験期間において, t最影開始から点灯直前の05:59まで の暗期中に, 砂の中から体を出した9例のうち, 頭出し状態 を示し たのが6例, 休止状態 を示したのが3例で , 直ちに遊泳した例はな かった . これに対して, 06: 00 の点灯以後に現れた18例のうち, 頭 出し状態を示したのが2例, 休止状態 を示した例はなく, 残る16例 は直ちに遊泳を開始した(Figs. 47,48 )
b) 第2回実験(1989年 6月 9,10,13- 15日)
5日間の実験期間におい て, 撮影開始から点灯直前の05:59まで の暗期中に, 砂の中から体を出した10例のうち, 頭出し状態を示し たのが9例, 休止状態を示したのが1例で , 直ちに遊泳した例はな かった . 頭出し状態 を示した9例のうち, 3例は再び砂中に潜入し た . これに対して,06:00の点灯後に現れた16例のうち, 頭出し状態
を示したのが10例, 休止状態を示した例はなく, 残る 6例は直ちに 遊泳を開始した . また, 再び砂中に潜入する個体はなかった(Fi g s.
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49,50 )
c) まとめ
イトベラは点灯前にす でに砂中から体を現している個体があっ た. しかし, 点灯前に砂中から体を現した19例のうち, 直ちに活動 を開始したことは一度もなく, ほとんど(15例)は頭部だけを出し た状態(頭部出し状態)であり, 全部を出した場合も直ぐに泳ぐこ とはなく休止状態( 4 例)であった. 点灯前に砂中から体を現し,
点灯後も頭部出し状態や休止状態であった個体は, そのほとんどが 点灯後2分以内に遊泳を開始した. これに対して, 点灯後に体を現 した34例では, ほとんどが(22例)直ちに活動を開始している. こ れらのことから, 点灯前に体を現した個体は頭出し状態あるいは休 止状態で, 周囲の照度が活動に適した状態になるまで待機している ものと考えられる.
5 . ホン ソメワケベラの運動活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨における潜水観察( 1982年5,9, 10月)では, ホン ソメワケベ ラは日中, 転石底と砂泥底 の境を中心に水深 10-15mに見られた .
個体数は少なく, 単独または2尾で遊泳し, 他の魚種に掃除行動を 示すこともあった. 薄暮期になると, 水深 2m付近の岩の周りを遊 泳するようになり, 最後には, 岩とその下の砂との隙聞に入って静 止した .
2) 実験水槽内における活動リズム -22-
実験水槽内において, 昼間は主に下層で活動し, 夜間は砂中にも ぐることはなく, 石の陰に入り込んで静止することが多かった . 活 動リズムに関する実験は, L D区を4回(実験Ldl-4), L L区を7 回(実験Ld5-11), D D区を5回行った(実験Ld12-16)(Table 5 )
a) L D区
全4実験を通じでほぼ同様な結果が得られた . L D条件下におけ るホン ソメワケベラの日周活動は, 活動期と休止期に明瞭に区別す ることができた . 活動期の開始時刻はほぼ毎日一定しており, 点灯 時刻と一致する実験例(実験Ld3: Fig. 53)と点灯前である実験例 (実験Ld1,2,4: Figs. 51,52,54 )とがあった . 活動期の終了時刻 にも同様の傾向が見られ, 消灯時五lJと一致する場合と消灯前である 場合があった . すなわち, L D条件下におけるホン ソメワケベラは 光周期に 同調した明瞭な活動リズムを示し, 活動が明期中に限られ ることはなかった .
b) L L区
全7実験のうち, L L条件にしてもその終了まで活動リズムが継 続したのが4例(実験Ld5-7 ) , 1日目から活動リズムが消失した のは3例(実験Ld8-11)であった .
実験Ld5 では光周期をLD条件からLL条件に変えても, ホン ソ メワケベラは約1日に1回活動期と休止期を示し, 活動リズムが持 続した . 活動期の開始時刻はほぼ毎日徐々に前進し, 1日の平均前 進時間は7分であった . その後のLD条件下において, 活動期と休 止期の区別は明らかで, 活動リズムは継続し, 活動期の開始時刻は 点灯時刻にただちに一致した(Fig. 55) . 実験Ld6 でも, 実験Ld5
-23-
とほぼ同様の結果となり, L L条件においてホン ソメワケベラは約 1日に1回活動期と休止期を示し, 活動リズムが持続した . 活動UJl
の開始時刻は毎日徐々に前進する傾向が見られ, 活動期開始時刻の 1日の平均前進時間は53分 であった(Fig. 56 ) . 活動リズムが継 続したLL区の残る2ø� (実験Ld7,8 )では, L L条件において活 動期の開始時刻が毎日徐々に後退し, 平均後退時聞は11分と108分 であった . その後のLD条件下において, 活動期と休止期の区別は
明らかで , 活動リズムは継続し, 活動期の開始時刻は点灯時亥IJに直 ちに一致した(Figs. 57,58 )
L L 1日目から活動リズムが消失した実験Ld9では, 光周期をL
D条件からLL条件にするとホン ソメワケベラは, ほとんど1日中 活動するようになり活動リズムは消失した . その後のLD条件下 で は消灯後に休止期が現れ活動リズムを再開した(Fig. 59) . 他の 2例(実験Ldl0,11: Figs. 60,61)においても同様の結果であっ
た .
c) D D区
全5実験においてホン ソメワケベラの活動はDD条件下で強く抑 制されたが, うち3例(実験Ld12-14 )では強い抑制を受けながら もDD条件終了まで活動リズムが継続し, 2例(実験Ld15,16 )で 1日目から活動が消失した . 実験Ld12では, 光周期をLD条件から D D条件に変えると, 活動期は大|隔に短縮したが約1日に1回活動 期と休止期のある活動リズムは継続した . 活動期の開始時刻は毎日 前進する傾向にあり, D D 7日自には総計で167 分前進した . 再び
LD条件に戻すと明期に活動が活発になった . しかし, 前進してい た活動期の開始時刻は毎日徐々に後退したが, 3日後までには以前
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の時刻に戻らなかった(Fig. 62). 実験Ld13,14 では, D D条件下 において活動はさら に強い抑制を受けたが, 活動リズム は継続し た. 活動期の開始時刻は毎日前進する傾向にあり, 活動期開始の1 日の平均前進時間はそれぞれ19分と22分であった . 再びL D条件に 戻すと明期に活動が活発になった. 前進していた活動期の開始が後 退して, 以前の時刻に戻ったのは2日後であった(Figs. 63,64).
実験Ld15では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると, D D条 件下でホン ソメワケベラの活動は見られなくなり, 活動リズムが消 失した . D D条件から再びLD条件におくと, 点灯後しばらくして 活動を開始し, 明期にほぼ一致した活動期が復活した(Fig. 65).
実験Ld16では, D D条件下で活動がわずか に見られたが, 活動リズ ムは消失した . 再びLD条件におくと, 明期にほぼ一致した活動期
が復活した(Fig. 66 )
6. ホンベラの運動活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨における潜水観察(1986年8-10月)では, ホンベラは水深卜 10mの転石底で数多く見られ, 砂泥底ではほとんど見られなかっ た . 日中は水深5-10mの所で30-50尾の群れで遊泳していることが 多い . ホンベラは薄暮期になると, 数尾の小さい群れ に分散し, 転 石の周囲や岩陰などの狭い範囲内を遊泳するようになり, 最後 に は, 一気に砂の中に潜るのが見られた . 同じ場所で数個体が続いて 潜ることもあった.
2) 実験水槽内における活動リズム -25-
実験水槽内でホンベラは, 昼間は主に下層で活動し, 夜間になる と必ず砂中に潜入した . 活動リズムに関する実験は, L D区を4回 (実験Htl-4), L L区を4回(実験Ht5-8 ) , D D区を5回(実験 Ht9-13)行った(Table 6 )
a) L D区
全4実験を通じでほぼ同様な結果が得られた . L D条件下におけ るホンベラの日周活動は, 活動期と休止期に明瞭に区別できた . 活 動期の開始は毎日ほぼ一定しており, 点灯とほぼ同一時刻である例 (実験Ht4)と, 点灯前である例(実験Htl-3)とがあった . 休止期の 開始(同時に活動期の終了でもある) も比較的一定しており, 消灯 時刻前である例(実験Ht1,4), 消灯とほぼ同一時刻である例(実験 Ht2)と, 消灯後である例(実験Ht3)とがあった(Figs. 67-70 ) 実験の結果, L D条件下のホンベラは光周期に同調した明期活動型 の活動リズムを示すことが明らかとなった .
b) L L区
全4実験を通じて? ホンベラは光周期をLD条件からLL条件に 変えても, 約1日に1回活動期と休止期を示し, 明瞭な活動リズム を持続する, ほぼ同様な結果が得られた . 実験Ht5 では, L L条件 下における活動期の開始時刻は毎日少しずつ前進し, 毎日の平均前 進時間は約16分, L L 7日目には総計で114分前進した. 一方, 休 止期の開始時刻にも前進傾向が認められた . L L条件後に設定した LD条件下においても, 上記の活動リズムの継続が認められた . 活 動期の開始時刻は毎日徐々に後退し, 直ぐに以前の時刻にもどるこ とはなかった . L D条件再開後2日目までは, 暗期の活動量(活動
頻度)に減少が見られた(Fig. 71). L L区の他の3例(実験Ht6 - -28-
8 )でも, L L条件下における活動期の開始時刻は毎日少しずつ前 進し, 1日の平均前進時聞は, それぞれ17分, 30分, 22分であった
(Figs. 72-74). 実験Ht7,8 については, 8 mm カメラによる記録も 行ったが, ほぼ同様の結果が得られた(Figs. 75,76).
c) D D区
全5実験を通じて, ホンベラは光周期をLD条件からDD条件に 変えても, 約1日に1回活動期と休止期を示し, 明瞭な活動リズム を持続する, ほぼ同ーの結果が得られた . 実験Ht9 において, 活動 期の開始時刻は毎日少しずつ後退し, D D条件下における1日の平 均後退時聞は18分であった . D D条件後に設定したLD条件下にお いても, 同様な活動リズムが継続した. 活動期の開始時刻は毎日徐
々に前進し, 3日自にほぼ以前の時刻にもどった(Fig. 77 ) . D D区の他の4例(実験Ht10-13 )において, D D条件下でホンベラ の活動量が低下する場合もあったが活動リズムの継続は認められ た. 活動期の開始時刻は, 実験13では毎日平均約21分前進したが,
実験10-12 では後退し, 平均後退時聞はそれぞれ4分, 10分, 10分 であった(Figs. 78-81 )
7. イトヒキベラの運動活動リズム
1 ) 野外における行動
江梨における潜水観察(1982年 5, 9, 10月)では, イトヒキベラ は急傾斜の転石底(水深 5-10 m)に多く見られ, 砂泥底では僅か に見られるだけであった . 多数が集まって群れていることが多く 遊泳は比較的緩慢であ った. 薄暮期になると, 水深2-6 mに分散する
- 2 7 -
ようになり, 重なりあった小石の隙間や, 岩陰に入り込んで静止し た.
2) 実験水槽内における活動リズム
実験水槽内でイトヒキベラは, 昼間は主に中層と下層で活動し?
夜間になっても砂中に潜入することはなく, 砂底の窪みの中や石の そばで砂の上に静止していた. 活動リズムに関する実験は, L D区 (実験Ctl-4 ) , L L区(実験Ct5-8 ) , D D区(実験Ct9-12)を
それぞれ4回行った(Table 7) a) L D区
全4実験を通じでほぼ同様な結果が得られた . L D条件下におけ るイトヒキベラの日周活動は, 活動期と休止期に区別することがで きた. 実験Ct 1 において, 活動期は毎日点灯時刻からわずかに遅れ て始まり, 消灯時刻とほぼ同時に終了した. 暗期中には全く活動が 見られなかった(Fig. 82). L D区の他の3例(実験Ct2-4)では,
実験Ct4 の5日目以降を除き, 活動期は毎日点灯時刻からわずかに 遅れて始まり, 消灯時刻とほぼ同時に終了した. 実験Ct4 の5日か ら7日目の暗期に若干の活動が見られたが, その活動量は点灯後と 比べると少なかった(Figs. 83-85 ) . L D条件下のイトヒキベラ は, 明期に活動し暗期にはほとんど活動しない光周期に一致した活 動リズムを示した.
b) L L区
4実験のうち, L L条件の終了まで活動リズムが継続したのが2 例( 実験Ct5,6 ) あり, L L条件の1日目から活動リズムが消失し たのが2例(実験Ct7,8 )であった.
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実験Ct5 では, 光周期をLD条件からLL条件に変えると, イト ヒキベラはその活動期を大幅に延長したが, 約1日に1回の活動期
と休止期を示す活動リズムを持続した . 活動期の開始時刻はほぼ毎 日前進し, 1日の平均前進時聞は15分であった . 活動期の終了時刻 に前進 傾向は見られなかった . その後のLD条件下 において, 活動 期と休止期の区別は明らかで活動リズムは継続し, 活動期の開始H寺 刻は1日目から点灯時刻に一致した(Fig. 86) . ほぼ同様な結果 となった実験Ct6 でも, 活動期の開始時刻が前進する傾向が見ら
れ, 活動期開始の1日の平均前進時聞は28分であった . 活動期の終 了時刻にも前進傾向が見られた(Fig. 87 )
実験Ct7,8 では, L L条件にするとイトヒキベラは, L L 1日目 からほとんど1日中活動するようになり活動リズムが消失した . そ の後のLD条件下では消灯後に休止期が現れ活動リズムが復活した (Figs. 88,89 )
c) D D区
全4実験においてDD条件下で活動が強く抑制され, うち1例(
実験Ct9 )では強い抑制を受けながらもDD条件終了まで活動リズ ムが継続したが, 3例(実験Ct10-12 )でDD 1日目から活動が消 失した .
実験Ct9 では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると, 日を 追って活動は低下したが, 散発的な活動がLD条件の明期に相当す る時間帯に毎日見られ, 不明瞭ながら活動期!が存在し, 活動リズム は継続した . 活動期jの開始時刻に規則性は見られず毎日大きく変化 した . 活動期の終了時刻は毎日前進する傾向にあり, D D 7日目に
は 270分 前進した . これを再びLD条件におくと, 点灯直後から活
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動が活発になり明期とほぼ一致した活動期が復活した(Fig.90) .
実験Ct10-12 では, 光周期をLD条件からDD条件に変えると,
D D 1日目から 活動が強く抑制されてほとんどあるいは全く見られ なくなり, 活動リズムが消失した . 再びLD条件におくと点灯直後 に活動を開始し明期と一致した活動期が復活した(Figs.91-93)
8. 運動活動リズムの内因性の種聞の比較
本研究対象のベラ類6種では, L L ・ DD両条件下のオハグロ ベ ラとDD条件下のイトベラを除き, L L ・ DD両条件下で1 つ以上
の 実験において 活動リズムを継続する結果が得られた . これら自 由継続リズムの周期の長さは活動期の開始時刻を基準とすると次の 通りであ った:ニシキベラ, L L条件下で22時間54 -23時間39分 (平均23時間12分) , D D条件下で23時間38- 50分(平均23f1寺間44 分) ;イトベラ, L L条件下で23時間39- 47分(平均23時間43分) ; ホン ソメワケベラ, L L条件下で23時間07- 25時間48分(平均24f1寺
間15分), D D条件下で23時間36 -41分(平均23時間38分) ;ホンベ ラ, L L条件下で23時間30 -44分(平均23時間39分) , D D条件下 で23時間39 -24時間18分(平均24時間04分) ;イトヒキベラ, L L
条件下で23時間32 -45分(平均23時間39分) , D D条件下で23時間 21分. すなわち, いずれも24時間からはずれている . したがって,
これらの自由継続リズムは概日リズムとみなされる .
L L条件下とDD条件下の概日リズムの周期の長さを比べてみる と, ニシキベラとホンベラではDD条件下よりLL条件下の方が短
い . これは, í Aschoff の法則(1960)Jが昼行性動物の概日リズム
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の周期はDD条件下よりLL条件下で短く, 夜行性動物では逆にな るとしているのと良く適合する . Lissman and Schwassmann (1965) のGymnorhamphichthys hypostomu �, Eriksson and Van Veen(1980) のI ctalurus nebulosu s, Kavaliers (1980)のF undulus heter 0- c1 i t u sなどがこの様な例である . 一方, ホン ソメワケベラとイトヒ キベラの概日リズムの周期の長さはLL条件下よりD D条件下の 方が短くr Aschoff の法則」 には適合 し ない . この様な 魚 類 には Godin (1981)のカラフトマス (0nc orhynchus gorbusch �)の幼魚,
Tabata et al. (1989)のナマズ(Si 1 urus asotu s)などがある .
オハグロベラ, イトベラ, ホンベラでは, 各実験区を複数回行っ た実験で同じ結果が得られた . これに対してニシキベラ, ホン ソメ ワケベラ, イトヒキベラではLL, D D両条件下において, 同一種 でも活動リズムの継続した例と, 消失した例の両方があり, 被験個 体によって異なる結果が得られた . Tabata et el., (1989)によれ ば, 同一種で活動リズムの継続性に相違が現れるのは魚類ではむし ろ普通とされ, Richardson and McCleave (1974)のSalmo salar の幼魚, 西(1980)のササハゼ(Eleotriode ê.. }Y_主工止上) とダテハゼ
(A mblyeleotris japonic a), Eriksson and Van Veen (1980)の
I ctalurus nebulosu s, Godin (1981)のカラフトマスの幼魚などで 知られている .
自由継続した概日リズムが新しく与えられた光周期に同調する 時, 直ちに同調することは少なく, 何周期かの期間を必要とするこ とが多い . この新しい光周期に同調するまでの期間を移行期と呼ん
でいる(千葉, 1975) . 本報告で概日リズムが確認された実験にお いても, イトベラ(L L区), ホンベラ(LL, DD区)の運動活
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動リズムが自由継続した 後にLD条件に戻したとき, すべての実験
で移行期が見られ, ニシキベラ(LL, DD区)では, 大部分の実 験で移行期が見られた . こ の様な新し く与えられた光周期に同調 する過程で移行期が出現する例は, Lissmann and Schwassmann (19
65)の G ymnorhamphichthys hypostom �s, Nelson and Johnson (19 70)の H eterodontus francisc iについて報告されており, いずれ も内因性の強いl珂|僚な活動リズムを持つ魚種である . 一方, ホン ソ メワケベラのLL区の実験では移行期が見られず, D D区では一部 の実験にだけ移行期が認められた . イトヒキベラ(LL, DD区) ではすべての実験で移行期が見られなかった . これについては, 田
畑(1988)がナマズの概日リズムに関する実験で, 恒常条件下の後 のLD条件下の活動リズムに移行期は認められなかったという結果 から, 日周行動の成因に概日リズムの関与が比較的少ないことを示 唆している . すなわち本研究のホン ソメワケベラとイトヒキベラに ついても同様のことが考えられる .
イトベラは LL条件下で明瞭な活動リズムを継続したが, D D条 件下でほとんど活動が現れず, D D条件から LD条件に戻すと活動 リズムが復活した . しかし1日目の活動期の開始時刻は 点灯時刻よ
りも大きく遅れ, 毎日徐々に前進し, 2 - 4日目に点灯時刻に一致 した . この結果は, ホンベラのDD区で見られた現象と同様で移行 期と考えられる . すなわち, D D条件下のイトベラは暗状態によっ て活動が抑制されて活動リズムが見られなくなったが, その基本と なる生物リズムは継続し, かっその位相(リズム全体, あるいはリ ズムの特定の点が時間軸上で位置している場所)が毎日徐々に後退 していて, 再びLD条件になって生物リズムと結び付いた活動期が
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復活すると, 活動期の開始時刻が元の位相より大きく遅れることに なったと考えられる. D D条件下で活動がほとんど現れなかったニ
シキベラの3例でも, 再びLD条件に戻すと移行期が見られた . ホ ン ソメワケベラの2ø� , およびイトヒキベラの3例でも, D D条件 下で活動がほとんど現れなかった. しかしこれらの実験においては いずれもその後のLD条件下の活動リズムに移行期は認められなか った.
生物リズムの基本となる生物時計は, 真核生物以上の生物に広く 備わっている(千葉, 1975)とされているので, 硬骨魚類のベラ類 にも当然広く見出されるはずである. しかし, 恒常条件下における 活動リズムの継続性, すなわち活動リズムの内因性の強さはベラの 種類によって異なることが確かめられた. これは運動活動と生物時 計との結び付きの強さが魚種によって異なるためと考えられる. 本 研究の6種のベラの運動活動と生物時計との結び付きの強さは, L L, D D両区の全ての実験で活動リズムが継続したホンベラで最も 強く, D D条件下で活動は抑制されたが生物リズムは継続していた イトベラに, これに次いで強い結合が認められる. この2種に, L L, D D両区の実験の一部で活動リズムが継続したニシキベラ, ホ ン ソメワケベラ, イトヒキベラの3種が続く. その3種の内, L D 区の実験でLD条件と同調した活動リズムを示し内因性の存在を示 唆したニシキベラ, ホン ソメワケベラがイトヒキベラよりも, 運動 活動と生物時計との結び付きがやや強いと考えられる . そして運動 活動と生物時計との結び付きが最も弱いと考えられるのがL L, D D両区の全ての実験で活動リズムが継続しなかったオハグロベラで ある.
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