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ネットワーク形態の段階的発展と進化

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著者 太田 進一

雑誌名 同志社政策科学研究

巻 2

ページ 1‑14

発行年 2000‑12‑20

権利 同志社大学大学院総合政策科学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004716

(2)

ネットワーク形態の段階的発展と進化

太 田  進 一

あらまし

 1990 年代以降において、現代の企業経営を取 り巻く環境は大きく三つの傾向において変化し てきた。①メガ・コンペチティブ化(大競争化)、

②ネットワーク化(情報網化)、③インタラク ティブ化(双方向化)である。ここでは、ことに

②のネットワーク化を中心に考察を加えること にする。

 ネットワークの変化・発展をマトリックスか らみると、縦軸に空間スペースの広がりを、横軸 に時系列をとると、①外注化(アウトソーシン グ・ネットワーク)が拠点的、コア的に展開され、

②世界化(グローバル・ネットワーク)が広域的 に展開し、③協調化(コーポラティブ・ネット ワーク)が拠点的に将来へと展開しようとして いる。さらに、以上の三つのネットワーク形態 は、統合されて④仮想化(ヴァーチャル・ネット ワーク)として、広域的に将来へと発展しようと している。

 外注化は、米国でIT部門において展開され 始め、コスト削減と専門機能の利用によって広 範に普及してきた。世界化は、自動車や電機産業 で、資材・部品調達、研究開発が国境を越えて連 係し発展してきた。協調化は、相互の得意分野を 補完し合いながら発展している。仮想化は、自動 車や航空機産業で、空間や国境も超え部品や加 工の大規模から零細企業まで参加して、仮想巨 大工場を形成しコスト削減と納期短縮を実現し ている。

1. はじめに

 現代の企業経営において、ことに 1990 年代以 降に企業を取り巻く環境が大きく変化してきた。

それは、三つのトレンドとして把握できる。すな わち、①メガ・コンペチティブ化(大競争化)、② ネットワーク化(情報網化)、③インタラクティ ブ化(双方向化)である。この③インタラクティ ブ化(双方向化)は、国際化、グローバル化を前 提にして進展している。ここでは、そのうち、こ とに、②のネットワーク化を中心にさらに考察 を加えることにしたい。

 なお、これまでは、まず①メガ・コンペチティ ブ化に伴いリストラクチャリングがいっそう進 展していることをみてきた[太田 99]。また、ネッ トワーク化との関連に限定すると、次の通りの 分析を行った。第 1 に、ネットワーク化とリエン ジニアリングとの関連性を考察して、日本とア メリカでは、情報化との関連でみると、それぞれ リエンジニアリングへの過程が異なることを指 摘した。さらに、第2に、ネットワーク化に伴い CIM(Computer Integrated Manufacturing)が導 入されたが、CIMの導入そのものが、チーム制 や多能工制度、QC・TQC(Quality Control・

Total Quality Control)や改善活動(Kaizen)など の小集団活動、JIT(Just In Time Method)シ ステムやリーン・プロダクション・システム

(Lean Production System)などの日本的経営への プロセスが前提となっていることを指摘した。

 本稿では、情報化、国際化(グローバル化)を 前提にしてネットワークがどのように発展して きているかを考察したい。ネットワークには、大 別すると 2 種類あり、一つは、人的ネットワーク ともいえるもので、自然に社会で形成されてい

(3)

  1[太田 96 b]354 ページ。

くものである。もう一つは、物理的ネットワーク で、今日の通信ネットワークである[96b 太田]1。 この通信ネットワークには、インターネットの

「チャット」のように、同時にパソコン上で会話 がワープロによって進められ、そこには人的な ネットワークがサイバー空間上で自然に形成さ れたりもしている。ここでは、主として後者の物 理的ネットワークを対象として考察していくが、

それに限定することなく、その情報化、ネット ワーク化を取り巻く周辺事情をも明らかにしつ つ、最近のネットワークの発展をみていくこと にしたい。

 なお、ネットワークを対象に考察を加えてい く意義は、年代別に発展してきた経済の変容に よるものであり、今後の 21 世紀経済において ネットワークがいっそう進展することが予想さ れるからである。これまでの経済の発展をたど ると、1960 年代から 70 年代前半までは「規模の 経済」を中心とした大量生産に支えられた高度 経済成長の時代であった。1980年代に入ると「範 囲の経済」となり、企業の多角化、国際化、系列 化が進展し、いわば外延的に事業の範囲が膨張 していく時代であった。また、経済も低成長経済 へと移行した。それに対して90年代に入ると、経 済は激変する環境変化に伴い大きく胎動した。

国際化・グローバル化がいっそう進展し、他方で 通信技術の発展とインフラの整備によってネッ トワーク化が急速に普及・進展した。いわば「結 合の経済」とでも言えるものへと発展してきた のである。その結合も、従来の点と点を線上に結 ぶものから、新たにネットワークを基盤にした、

放射線上やウェブ(web 蜘蛛の巣)状に結合され ていくタイプへと変化してきた。その結合に よって従来の縦型や横型の結合以上の効果が現 れてきている。2000 年代になると、サイバーや、

デジタル、ネットワーク経済の時代となり、その 傾向がいっそう進展していくものと想像できる。

2.ネットワークの変化・発展

 ここでは、第 1 図に見る通り、ネットワークの 変化・発展をマトリックスとしてみることにす る。縦軸においては、空間(スペース)の広がり

の視点からみて、拠点的なものから広域的なも のへ、さらに横軸においては、時系列的な視点を 加えて、現在から将来へとみていくことにした い。

 ①外注化は、現状においては、拠点的、コア的 にアウトソーシング・ネットワークとして展開 されている。②世界化は、現在、広域的にグロー バル・ネットワークによって展開されている。③ 協調化は、拠点的に将来にわたって、コーポラ ティブ・ネットワークとして進展しようとして いる。④仮想化は、広域的に将来へと、ヴァー チャル・ネットワークが展開されようとしてい る。仮想化は、①のアウトソーシング・ネット ワーク、②のグローバル・ネットワーク、③の コーポラティブ・ネットワークの発展形態であ り、いわば統合されたネットワークである。

第 1図 ネットワークの変化・発展

 ネットワークは変化・発展しているが、第 1 図 で見るように、ネットワークの形態としては、ま ず①外注化(アウトソーシング・ネットワーク)

が端緒的な形態として発展し、次には、②世界化

(グローバル・ネットワーク)へとネットワーク 形態が国際的・地球規模的な広がりを見せてい く。さらに、③協調化(コーポラティブ・ネット ワーク)が国内から海外へと発展していき、近年 においては海外において、あるいは国際的な提 携へとネットワークが進展している。最終的に は、④仮想化(ヴァーチャル・ネットワーク)へ と発展している。この仮想化は、一国に留まらず に、国際的・地球規模的に拡大されてきている。

②世界化 グローバル ネットワーク

(Global network)

④仮想化 ヴァーチャル ネットワーク

(Virtual network)

①外注化 アウトソーシング ネットワーク (Outsourcing network)

③協調化 コーポラティブ ネットワーク (Cooperative network)

現   在 将   来

(4)

もちろん、これらのネットワークの形態は、同 時・併存的・多発的にも存在しており、時にはこ れらのいくつかの形態が組合わされた複合形態 としても発展してきている。

2.1 外注化(アウトソーシング・ネッ トワーク)

2.1.1 アウトソーシングの概念

 アウトソーシングとは、あるまとまりを持つ 主要な契約の遂行に、部分的に貢献する契約と 定義しうる。製造業の場合は、元請が下請に3種 の契約内容から業務委託を行うものを指してい る。すなわち、①部品開発・製造・加工、②完成 品委託開発・製造・加工、③特定の製造・加工・

設計工程ないし諸々のサービスを遂行するための 補助的技術・労働・施設・能力の提供2[西口 96-1]

である。

 しかし、一般的には外部機能や資源の活用を アウトソーシングとみなすならば、むしろ対象 はサービス業となる。従来は企業内で行ってい たような業務や、あるいは企業の業務の変化に 伴い、サービス業を利用した外部化することを いっている[中小企業庁 99-1]3

 今日成功しつつある新しい外部委託の主な特 徴は、①バウンダリーレス(脱境界)化と、②共 生進化、③クラスター管理、それに④集団的ウイ ン・ゲーム[西口 96-2]4、であるという。

 また、アウトソーシングのモデルには二つあ り、一つは搾取型で、他の一つは共生進化型であ る。i.「搾取型」アウトソーシングは、組織の境 界は明瞭な輪郭によって識別でき、情報処理は 直列的、継時的になされる。いわば、旧来型の日 本的な下請である。もう一つのモデルである、ii.

「共生進化型」アウトソーシングでは、組織の輪 郭は脱境界的ないし横断的であり、情報処理は 並列的かつ共時的になされるという[西口96-3]5。 このようにアウトソーシングは時系列的には、

発展・進化していくものである。もちろん古典的

な搾取型から、近代型の共生進化型へと発展・進 化してきたわけである。

 「搾取型」アウトソーシング・モデルの制御の 仕組みは、「数多くを庸い、分断統治せよ」の原 則に従い、下請型個別管理の「腕長型」を基本に 成り立っていた。それに対して、「共生進化型」ア ウトソーシング・モデルでは、最小有効多用性の 原則に基づき、クラスター管理型が採用される。

搾取モデルの要件は、元請、下請双方の「駆け引 き」であり、共生進化モデルにおけるそれは、参 与者間の互恵的な「貢献」(コミットメント)で ある[西口 96-4]6

 現実のアウトソーシングの推移をたどると、

まず、アウトソーシングは情報システム部門で 始まった。これは、コンピュータの進歩がきわめ て速く、設備投資による陳腐化が顕著なためで あり、外部に依存した方が結果的にコスト節約 になるからである。多くの中小・下請ソフトハウ スを利用することで、結果的に労務コストを節 約 で き る 。 他 方 で 、 専 門 家 集 団 で あ る S E

(system engineer)の知識と経験に依存できるので ある。

2.1.2 日本におけるアウトソーシング

 日本におけるアウトソーシング展開と形態を みると第2図の通りである。

 アウトソーシングに近い概念のビジネスとし て、「コンサルティング」「人材派遣」「業務代行」

が存在する。

 「業務の設計・計画」をするか、しないか、「業 務の運営」をするか、しないかで、マトリックス により区分すると、自分で設計し、運営までを行 うのがアウトソーシング、両方しないで人を出 すだけが人材派遣、設計や企画はするが運営し ないのがコンサルティング、決められた設計の もとで運営だけするのが業務代行である。

  2[西口 96-1]157 ページ。なお、加工については原文にはなく、太田が追記したものである。

  3[中小企業庁 99-1]124 ページ。

  4[西口 96-2]159-172 ページ。

  5[西口 96-3]152 ページ。

  6[西口 96-4]152-154 ページ。

(5)

 中小企業庁の 1998 年「企業経営実態調査」に よると、アウトソーシングを行っている企業は、

中小企業で21%、大企業で40%となっている。中 小企業では行いたいと思っている企業を加える と過半数に達しており、中小企業においてもア ウトソーシングが浸透しつつあるといえよう。

製造業の中間投入において、サービス業が占め る割合は、1980 年から 95 年にかけて中小企業で 約 2.2 倍、大企業で約 2.9 倍となっており、この 点からもアウトソーシングが広がっていること が推測される。アウトソーシングを行っている 企業の今後の方針としては、「いっそうの推進を 図りたい」が中小企業で 36%、大企業で 51%に 達し、今後もアウトソーシングの利用が拡大し ていくと予測される[中小企業庁 99-2]7。  アウトソーシングと売上高経常利益率との関 連を見ると、大企業より中小企業の方が利益率 向上への影響力が大きい。

 アウトソーシングを行うメリットに関する回 答では、「外部の専門性が活用できる」や「自社 の得意分野に経営資源を集中できる」といった 自社に不足するかあるいは不得意な分野の経営 資源を外部から調達しようとするもの、「人員・

人件費が削減できる」といったコストダウンを 図ろうとするもの、「業務が迅速化する」といっ た企業の活動速度を向上させようとするものが 目立っている[中小企業庁 99-3]8

 ただし、アウトソーシングに伴うトラブルや、

結果的にコストアップや効率性の低下につなが る例も散見される。中長期的な経営戦略に基づ き、自社の得意分野が何かを見極め、提供される

サービスが必要とする経営資源に合致するのか に留意しつつ、アウトソーシングを行っていく 必要があろう[中小企業庁 99-4]9

  管理的な視点からすると、外部調達者(主要 な契約者)が下請企業ヘ外注したり、海外立地を 利用したりする際に、アウトソ−シングはもっ と複雑でリスクのあるものとなる。

  情報システムの契約者は、下請企業に徐々に 依存しつつある。最近の調査では、ITのアウト ソーシング契約の 36%とシステム統合の契約の 25%は、下請企業を含んでいる。顧客がアウトサ イダーへと変更しているのと同じ理由で、外部 調達者は下請契約している。いくつかの事例で は、下請企業から高度に専門化した技術を求め たり、外国のプログラマーのようにコスト的に 労働力を削減したりすることを求めている。大 企業の契約者やその顧客にとっては、下請企業 を利用することは、経済と技術の両面から理解 できる。幾人かの契約者は、限られた重要な能力 である専門技術を丹念に育て上げてきた。

  外部調達者は、他の重要な理由から海外へ発 注する。インドやイスラエル、フィリピンのよう な国々では、いっそう低いプログラミング・コス トで調達できる。アメリカではプログラマーは 短期に供給されている。多くの事例では、全体に 派遣業務者で占められている、専属のプログラ ミング「工房」となっている。しかし遠隔地であ ることと文化的なギャップは、下請企業と連係 したリスクをいっそう募らせるのである[Kathy &

Sayles99]。

3.世界化(グローバル・ネットワーク)

 自動車や電機産業における主要な企業は海外 へ直接投資を実施し、日本の本社と海外の工場 間でグローバル・ネットワークを展開している。

欧米の多国籍企業もまた、日本よりもかなり早 くから海外工場を展開し、同様にグローバル・

ネットワークを展開してきた。工場間や、本社と の連携は、欧米の企業ではVANやEDIが、日 本企業では企業のLANや国際VAN、また最近 は日米欧の企業ともインターネット、イントラ 第2図 アウトソーシングの発展

業務の 設計・

計画 あり

なし

コンサルティング アウトソーシング

人材派遣 外注(代行)

なし

業 務 の 運 営 あり

出所:[日経ビジネス]123ページ。

  7[中小企業庁 99-2]125 ページ。

  8[中小企業庁 99-3] 125 〜 126 ページ。

  9[中小企業庁 99-4] 127 ページ。

(6)

ネット、エクストラネットが利用され始めている。

 グローバル・ネットワークを利用して、資材・

部品調達や補修部品の在庫補給、研究開発の拠 点間を連係した共同開発が実施されている。

 たとえば、アジアにおける部品の地域間の相 互補給体制から、自動車産業に見られるように、

徐々に系列を超えたネットワークへと発展して きている。また、膨大な研究開発費の節約の必要 性から、自動車や電機のような機械工業では、国 境を越えたグローバル・ネットワークを利用し たニューモデルの開発が実施されてきている。

これは新たな企業連携と、時差を利用した継続 的な連係開発による、経費節約と早期開発の同 時達成という一挙両得をねらっている。

 「世界を日米欧亜の3極ないし4極の地域に分 割しながら、世界中に張り巡らされた生産拠点 の中で最適な場所で適切な部品や製品の生産・調 達を行う世界最適地生産体制が構築されつつあ る」[秋野98-1]10といえよう。これらの国際的な情 報ネットワークは、1980 年代後半以降に構築さ れてきたのである。80 年代末にアジアへの海外 進出が急増し、アジアの拠点は、世界各地への部 品・製品の供給拠点としての役割が高まってき た。アジアでのインフラの整備に伴い、次第に米 欧日との3極グローバル・ネットワークと結ばれ、

世界最適地生産体制の構築をしていくための技術 的基盤が形成され始めたのである[秋野 98-2]11。  グローバル情報システムとして現実に稼動し ている端緒的な形態は、CIMに見られる。業務 の組合せによる統合化により、上部構造である 基本情報と下部構造としての基盤情報を整理し て活用することで進められ、基本情報から業務 に関する指示を入手して、実施結果を報告する。

基盤情報からは共有情報を必要な際に活用して 蓄積する。この基盤情報は利用すればするほど 蓄積量が増大して価値は高まるが、これは事業 部単位で言うと、販売・技術・生産の部門間の統 合化である。製販統合のように在庫情報や生産 進捗情報の一元管理、共有化が推進される。多角 化や事業部制を実施している企業では、全社的 な観点から事業部間の統合化が課題となる。事 業部経営情報の共通化が統合化の前提になる[目

代・渡辺・松島共編 92-1]12。企業間の統合によっ て、たとえばミスミ・グループでは、データベー ス付きの金型専用のパーソナルCAD/CAM システムを導入し、金型設計に必要なすべての 部品を登録し、設計者が必要部品を呼び出して、

編集設計を行い、購入部品の決定を行う。部品に 関する技術情報・発注情報をユーザーとメーカー で共有し、受発注業務の企業間ネットワークに よって生産性向上と納期短縮が実現されている。

これはCAD/CAM/CAP(Computer Aided Purchasing)と呼ばれている。

 これら国内のシステムを前提に、事業の国際 展開の効率化と即応性を求めて、海外拠点間、海 外と国内の業務の統合化、グローバル・オペレー ションの統合に取組んでいる。業務間、部門間、

事業部間、企業間、各国間のグローバルな統合へ と重層的に拡張されていく。部品体系の標準化、

コード体系や受発注方式・伝票の統一が必要とな る。さらには、生産拠点の現地化、部品の海外調 達の増加によりモノ作りはグローバル化が必要 となる。世界のどこの工場で製造し、部品を内製 化するか外注するか、どこに発注するかを決定 しなければならない。多種多様な受発注と生産 手配がグローバルに駆け巡る。グローバルな視 点からの標準化の体系、共通部品化、基盤として のデータベースやネットワーク構築などの情報 システムが活用される。

 また、グローバルな段階に対応した情報の活 用として、第1段階では、国内の受発注処理や生 産管理、CADシステムなどのアプリケーショ ンが現地へ移植される。海外の販売拠点からの 販売・受注・出荷依頼情報はネットワークを通じ て日本に送られる。第2段階では、現地経営者に 大幅な権限委譲がなされる。各国の経営管理シ ステムがグローバルな情報システムと結合し、

グローバル企業体として経営情報システムを形 成する。連結決算、資金運用、投資執行管理が全 世界レベルで行われ、各国ごとに販売・生産・技 術の統合が進められる。第3段階は、グローバル 企業全体としての情報システムの統合である。

全世界レベルでの販売・生産・技術の統合が図ら れるのである[目代・渡辺・松島共編 92-2]13

10[秋野 98-1]86 ページ。

11[秋野 98-2]87 ページ。

12[目代・渡辺・松島共編 92-1]141 ページ。

13[目代・渡辺・松島共編 92-2]149 ページ。

(7)

4.協調化(コーポラティブ・ネットワーク)

 高度な専門性を持ったアウトソーシングの企 業を利用しながら、さらにそのサービスを組織 に取り込み、新たな付加価値を生み出していこ うとする手法であるコ・ソーシングへと発展す る。アウトソーシングには、なお元請、下請的な 要素が残っているとすると、コ・ソーシングは、

企業同士がイコール・パートナーとして問題解 決に当たり、アライアンス(戦略的提携)の要素 が強まってくる。いわば、アウトソーシングその ものが、協調的な関係へと移行し、コーポラティ ブ・ネットワークへの端緒的な萌芽としてみら れ始める。

 インターネット対応に遅れたマイクロソフト 社は、アウトソーシングによる技術戦略提携で 1996年前半において30件の事業提携を結んでい る。企業間の連合も、インテル、コンパック、D EC、タンデム、アメリカ・オンライン、コンピュ サーブ、ドイツ・テレコム、NTT、VISA、

NBC、カシオ、オラクル、サン、モトローラな どと結んでいる[伊藤 96]14。オープンな互換機路 線は、いっそうのコーポラティブ・ネットワーク を発展させていくことになる。

 自動車業界における日産とルノーの提携は、

ほぼ対等の関係を前提にしたコーポラティブ・

ネットワークの形成と見られる。

 共同購買の政策や共通プラットフォーム(車 台)の開発が2002年を目標に進められている。日 産のマーチ、キューブとルノーのトウインゴ、ク リオ向けの共通プラットフォームの開発が日産 主導で進められている。日産、ルノーの両社で 2010年までにプラットフォームを10に統合する 計画である。また、提携戦略を検討する実働部隊 として、商品企画・戦略、車両開発、製造などの 部門別やヨーロッパ、南米、アジア・オセアニア など地域別に 12 のクロス・カンパニー・チーム

(CCT)が設置されている。さらに、両社の業 務の基盤整備、情報システムや技術標準、品質基 準、会計、法務などの統一化を図るために、ファ ンクショナル・タスク・チーム(FTT)を設け

て、提携に関する各組織の調整や情報管理を行 う事務局として、東京とパリにアライアンス・

コーディネーション・ビューローを置いたのであ る。このように、両社のパートナーシップ関係が 強く意識されているのが特徴である。ダイム ラーとクライスラーの合併は、強者であるダイ ムラーが弱者であるクライスラーを呑み込む形 で収斂したが、日産とルノーは対等のまま双方 に提携効果を出していこうとしている。ゴーン が日産復活に躍起となっているのは、ルノーが 生残るためには日産を必要としているためであ る[日経ビジネス編 00]15

 日産リバイバルプランは、1999 年 10月 18日に 発表された。その組織は、地域別組織からグロー バル組織への変革を目標とし、世界本社の設立 とグローバルレベルでの機能別管理を開発や財 務、製造システム、購買、人事において行う [www.nissan00]16

 また、日産のグローバル生産として最適生産 と最適コストの達成を目標に、車両組立・ユニッ ト生産能力の削減、生産組織の合理化・簡素化、

グローバルレベルでの管理によるコスト削減と して物流やベストプラクティス、ベンチマーキ ングが、またFMS(Flexible Manufacturing System)の採用拡大が活動として展開される。

 国内工場では、車両組立工場の閉鎖として、村 山工場、日産車体京都工場、愛知機械港工場が 2001 年3月を目標に閉鎖される。また、ユニッ ト工場として、久里浜工場、九州ユニット工場が 2002 年 3 月を目標に閉鎖される。また、購買で は、3年間で20%のコスト削減が目標とされ、他 方でサプライヤー数は、1999 年の 1,145 社から 2002 年には 600 社へと 50%削減される。

 このような発表を契機に、フランスや日本の 部品メーカー、サプライヤーは、グローバルな視 点からの国際調達・部品調達に向けて活発な展開 を始めている。フランスの大手部品メーカーの ヴォレオは、日産系の部品メーカーであるユニ シアゼックスとクラッチ事業の合弁会社の設立 へ向けて活動するとともに、今後ルノーと日産 との部品共通化が進展するなら、ビジネスチャ ンスが拡大すると見ている。日産系のカンセイ は、電子制御系装置や走行系メーター、インスツ

14[伊藤 96]49 ページ。

15[日経ビジネス 00]235 〜 239 ページ。

16[www.nissan.00]

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ルメント・パネルなどを供給するサプライヤー で、エアコンやラジエーターのカルソニックと 合併を進め、インパネを大型のモジュールとし て納入することにより、コスト削減を図り、さら にはルノーにも納入を検討してもらうことで、

さらにコスト削減を図ろうとしている[日経ビジ ネス 00]17

 企業の協力的、協調的な関係、分散している中 核的能力の協力的、協調的な関係は、パートナー シップ、合弁企業、戦略的同盟、コンソシアム、

ロイヤリティ契約、ライセンス契約の関係を通 じて企業にとっては、十分に馴染みがあるもの となっている。

 すなわち、協力的・協調的なものとしては、

パートナーシップ、合弁企業、戦略的同盟、

共同出資による新規企業設立、発注⇔受注関係 である供給元企業/二次請負業者、ロイヤリ ティまたはライセンス、ウェブ(網状組織)

[Goldman,Nagel & Preiss 95-1]18などがある。

 以上の関係は、コーポラティブ・ネットワーク として現実に企業間において協調関係として結 ばれている形態である。これらのコーポラティ ブ・ネットワークの強弱や永続的か一時的か、関 係が一部的なものか、全体的なものかは、それぞ れ内容によって異なっている。

 ここでいうウェブとは、あらかじめ参加資格 を認められたパートナーの開かれた集合体で、

多数の供給企業を一つの資源集団にまとめるこ とによって、そこから必要なだけの数または種 類の企業を集め、特定の産業において総合的顧 客サービスを提供したり、その産業で最大の企 業と直接競争する 1[Goldman,Nagel & Preiss 95- 2] 19ことをいう。

5.仮想化(ヴァーチャル・ネットワーク)

 コーポラティブ・ネットワークの萌芽である コ・ソーシングが相互補完的に増殖すると、より いっそう高い付加価値を生み出すネットワーク として、「ヴァーチャル・コーポレーション」な

どと呼ばれるヴァーチャル・ネットワークの形 態へと発展していくことになる。これは、アウト ソーシング・ネットワーク、グローバル・ネット ワーク、コーポラティブ・ネットワークが統合化 されたものと見てよい。 ネットワーク利用に よる共同設計を通したヴァーチャル・ネット ワークの先駆的な事例にボーイング 777 がある。

模型や青写真なしでデザインされた最初の飛行 機とされている。ワークグループ・デザインチー ムには顧客と部品供給業者も加わっていた。機 体は同時並行的に開発され、製造期間は劇的に 短縮された。あらゆるパフォーマンス状況と天 候を考慮したネットワーク上の「飛行」テストが 繰り返し行われた。重要な鍵は、双方向性が確保 されたマルチメディアであった[Tapscot96-1]20。  乗用車の部品数は何万点の規模であるが、旅 客機の部品数は何十万点にも及んでいる。一部 品について図面と書類数は最低でも 100 点を超 えるとみられるので、全体の図面や書類数は何 千万点では済まず、億の桁に及ぶことになる。手 作業を排除し、ネットワークによる情報共有に よって解決した。ボーイング社内だけでも、超大 型コンピュータ7台、ワークステーション 2800 台が利用された。設計開始から1号機の納入ま での期間5年を守り、開発費を 20%節約し、当 初の目標である50億ドルの予算の範囲に止めた。

日本から、三菱重工業、川崎重工業、富士重工業 が参加した。機首の操縦室を除く胴体と主翼の 取付部はこの3社が分担した[赤木 96-1]21。  ボーイング777は、デジタル航空機としてデザ インされた。機体の部品は何百という供給業者 によって製造されており、ネットワークに組み 込まれていた。ビット単位の情報としてデザイ ン、仕様、その他が構成されているが故に、供給 業者はそれぞれ違う仕事を通して協力しあうこ とができた。ネットワークを使うことで、ボーイ ング社は拡張された企業を作り上げ、多くのビ ジネス・パートナーが顧客の要求を満たすデザ インと機体を製造可能であるかを確認できたの である[Tapscot96-2]22

 ボーイングは1990年に777の開発に踏み切り、

17[日経ビジネス 00]96 〜 97、 104 〜 107 ページ。

18[Goldman,Nagel & Preiss 95-1] 、前掲訳書、268-269 ページ。

19[Goldman,Nagel & Preiss 95-2] 、前掲訳書、283 ページ。

20[Tapscot96-1]、邦訳書、150 ページ。

21[赤木 96-1]45 〜 46 ページ。

22[Tapscot96-2] 159 〜 160 ページ。

(9)

目標通りに95年6月に1番機の出荷に成功した。

すべてがデジタル信号でコントロールされ、画 期的なコンピュータの利用に授与される「スミ ソニアン賞」を獲得している。

 ①航空会社8社の言い分を聞き、ユーザーと 協同開発の方式を取った。②納期と仕上がりが 確実な日本の3メーカーと組み、設計から製造 までを進めた。③機体を238のサブシステムに区 分して、各部分の責任をもって担当する238の設

計・製作チームを組織した。各チームに、ユー ザーから機体設計者、治具工具設計者、下請メー カーを参加させ、円滑な情報交換をはかった。④ チーム内またはチーム間で情報が共有できるよ うに、すべての設計をコンピュータ・グラフィッ クスによることで一貫させた。その結果や進行 状況についてネットワークを通じて引き出して お互いに利用できるようにした。部品や部材の 接続(インターフェース)がうまくいくかどうか

マクドネル ダグラス本社 McDonnell Douglas Aerospace  プロジェクト管理部

インターネット 納期・図面等の確認

E-Mail

インターネット 納期管理

CAD

データ 電話回線

ユーカー 構成部品会社:

UCAR Composites

NC機械言語(安全確保)

1993年に独立

(spin-off)

アエロテク社 Aero Tech

顧客 事例:

アメリカ軍

NC機械言語(安全確保)

1993年 50社 1994年 400社 1996年 数千社 電話回線

注:[Upton and McAfee96]から太田が作成。

インターネット 納期管理 E-Mail

協力会社 partners サプライヤー suppliers 下請企業 subcontractors 中小下請工場 small machine shops

第3図 マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)の仮想現実工場ネットワーク

(10)

は、すべて3次元のコンピュータ・グラッフィッ クスによるプリアセンブリィによって確認され た。⑤グループワークによる横断的な組織に組 み替え、協力関係にある他社の労働力を利用す ることによって、ボーイング本社は 90 年の 16 万 人を94年には約12万人へと大幅に削減している [赤木 96-2]23

 同様にマクドネル・ダグラス社(現ボーイング 社)は、イントラネットによる仮想現実工場をす でに構築している。ダグラス社では、ネットワー クはそれまで 50 社とのみ接続していたが、1994 年秋までに400社の内外工場と、1996年には優秀 な中小下請工場の数千社と接続した。それまで は入札するのにサプライヤーの代表を呼び、設 計図面や製造工程の仕様を含む入札条件を閲覧 させ、決定するのに2〜3日を要していた。しか し、現在はイントラネットを利用して入札その ものが2〜3秒で可能になった。変換コストは 従来のテープ代と速達郵便料金の 400 ドルから、

現在は4ドルへと実に1/100(1%)へと削減され た。大小取り混ぜたサプライヤーや部品工場、下 請工場を、あたかも一つの工場として有機的に 稼働させることができるメリットには計り知れ ないものがあるといえよう。

 このように、仮想化は夢物語ではなく現実感 のある空間を超えた有機的なネットワーク工場 として稼動している。

 仮想的組織は、中核的(中枢的)能力、資源、

顧客機会を統合して作られている。製品または サービスを基盤とした機会を共有している企業 のネットワークにとっては、通常のビジネスよ りも遙かに優れている。

 市場参入へのコストが高くなるにしたがって、

競争以前の段階である技術、施設、資源が共有さ れることにより、いっそう多くの資源を製品の 特徴やサービスに傾注できる。それにより、仮想 的組織に参加している個々の企業の競争優位も 向上する[Goldman,Nagel & Preiss 95-3] 24。  仮想的企業は、機会中心主義、卓越性、技術、

無境界、信頼に究極的に順応する。

 アンブラ・コンピュータは、東南アジアから

ノース・カロライナまで広がる協力関係企業の ネットワークによって製造されている。各企業 はその活動の中から選ばれた一部分だけをネッ トワークに提供している[Goldman,Nagel  &

Preiss 95-4] 25

 フォードは、7つのデザイン・スタジオのデザ イナーが電子的に集結して仮想的なデザイン・

スタジオを組織し、自動車のスタイルを決定し た。1994 年式ムスタングを設計するために統合 されたワークグループ・コンピューティング・

ネットワークで世界中のエンジニアをリンクし た。デザインチーフは、「バーチャル・コロケー ション(仮想共同空間)」と名付けた[Tapscot96- 3]26

 企業が仮想的企業組織モデルを用いる動機付 けとなる戦略的理由は以下の6つである。

①インフラストラクチャー(基盤)、研究開発、リ スク、コストを共有できる。②中核的(中枢的)

能力を相互補完的に結合できる。③共有を通じ てコンセプトから市場化への時間を短縮できる。

④設備と見かけ上の規模を拡大できる。⑤市場 へのアクセスが得られ、市場と顧客のロイヤリ ティ(使用料)が共有できる。⑥製品を売ること から解決を売るようになれる[Goldman,Nagel &

Preiss 95-5]27

 企業で仮想的組織が採用されてきた理由や背 景は次の通りである。

 第一に、世界的な外注化や販売を可能にする ところの世界的な通信・輸送システムが発達し たことがある。グローバルな競争、ボーダレス経 済、航空会社や遠距離電話会社のような、ビジネ スにおける世界的な事業ニーズが増大してきて いることが、仮想的組織を生み出した大きな背 景である。

 第二に、製品やサービスをあらゆる生産単位 数で作り出せる、高度な生産システムとサービ ス体制が発展してきていることがある。

 第三に、顧客を個人の集まりとして扱うのに 必要な、情報処理能力が発展していることもあ る。

 第四に、情報技術がコミュニケーションの強

23[赤木 96-2]43 〜 45 ページ。

24[Goldman,Nagel & Preiss 95-3] 262-263 ページ。

25[Goldman,Nagel & Preiss 95-4] 266 ページ。

26[Tapscot96-3] 150 ページ。

27[Goldman,Nagel & Preiss 95-5]271 ページ。

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化を可能にする、鍵としての役割を担いつつあ ることである。

 第五に、より高度な投資家、顧客、株主などは、

ごく短期間の機会に対して、以上のすべての能 力と複雑さを企業に対して要求してきているこ とである[Goldman,Nagel & Preiss 95-6]28。  これらの仮想的組織は、ヴァーチャルコーポ レーションと呼ばれ、仮想企業体あるいは仮想 組織とも言われる。経営戦略との関連で触れる と、戦略目的ごとに他企業の経営資源を柔軟に 借用しようというのが組織のモデルである。情 報ネットワーク・システムを企業間連携の媒介 として活用しながら、自社の能力や知識ベース を仮想的に拡大するような「機動的系列」の構築 を狙いとしている。ライバル企業であっても、限 られた能力しか持たない企業同士が、高質な資 源を臨時的に共有し、急変する複雑な市場ニー ズに迅速に対応しようという試みである。

 この新語を造ったコンピュータ・メーカーで あるDEC社(現コンパック・コンピュータ社)

のジャン・ホップランドは、ヴァーチャル・コー ポレーションを「社内外と協力し、自社が持つよ りも多くの資源を結集できる企業」と定義して いる。企業群が「事実上の一組織」として機能す る。アメリカでは、インターネットを利用した ネットワーク型企業などが登場している[紺野・

野中 95]29

 また、情報ネットワークを利用した仮想共同

体によるモノ作りを段階的に捉えると次の第4図 のようになる。

 企業を中心とした経済から、ネットワークを 中 心 と す る 経 済 に 移 り 変 わ る 過 程 に あ る

[Tapscot96-3]30ことが理解できるであろう。

6.アウトソーシングの展開

 ここでは、本稿の3においてすでに見てきた アウトソーシング・ネットワークをより深く理 解するために、さらにアウトソーシングそのも のについて詳しく見ていこう。

 日本よりも先進的に発展しているアメリカの IT産業やソフトウェア部門において、いち早 く一般の企業から、それら情報処理関係へとア ウトソーシングがなされた、アメリカを事例に してアウトソーシングの展開を以下に見ていく ことにしよう。

6.1 アメリカのアウトソーシング

 アメリカでは 1980 〜 85 年の時期に、人材派遣 が急速に伸展した。アメリカの企業は生産性を 高めるため大幅に正社員数を減らし始めたため である。1980 年代後半には、アメリカでは、給 与計算など事業所向けサービス業が進展し、ア ウトソーシングが一般化していった。80 年代の

技  術 インターネット 企業間

コンピューティング 企業インフラストラクチャー

ワーク・グループ・

コンピューティング パーソナル・

マルチメディア

将 来 像 インターネット ワーク・ビジネス 拡張された企業 統合された組織

生産性の高いチーム

有効に機能する個人

変  化 富の創造、社会開発 外部との関係の見直し 組織の変革

ビジネス・プロセスと 業務内容の再設計 業務・学習の効率化 第 4 図 新たなメディアによるビジネス変革

出所:[Tapscot96]140 ページ。

28[Goldman,Nagel & Preiss 95-6]、292‐293 ページ。

29[紺野・野中 95]18-19 ページ。

30[Tapscot96-3] 139 ページ。

(12)

アウトソーシングの目的は、コスト削減を主と したものといえよう。アメリカ企業の業績回復 においてアウトソーシングが果たした役割は大 きかった。

 1990 年代に入ると、アメリカでは新たなタイ プのアウトソーシングが台頭してきた。環境、バ イオ、医療、福祉、情報通信などの分野で、自社 の持つ専門的な知識を公開し、ネットワークを 通じて提供しようとする企業が出現してきた。

アウトソーシングも 80 年代の単なる労働力の提 供から、90 年代には高度な専門性の提供へと移 行してきたのである[日経ビジネス 96]31。  アウトソーシングはアメリカにおいては 1980 年代に広範化した。それは国内の製造業が衰退 したためであり、多くの企業は、製造や組立、検 査、流通を外部の企業へと移すことにしたので ある。

 1990 年代までにアメリカでは、アウトソーシ ングは、再組織化と規模縮小のための主要な ツールとなった。この動きは、ことに情報処理の 企業で顕著であった。

 1991 年以降、アメリカでもっとも速く成長し たアウトソーシングは、情報およびデータ処理 サービス、システム開発、マーケティング・サー ビスであった。過去5年以内で成長が速かった アウトソーシング・サービスは、職業紹介所、雇 用調査サービス、給料支払い管理、人事管理サー ビス、研究開発、保険退職基金管理、宣伝活動が 含まれている。

 収益がない事業は、外注企業へ出される可能 性が強い。たとえば、自社の経理部門を縮小して いく企業は今後とも増える見通しである。アメ リカのアウトソーシング市場は、2000 年まで毎 年 20%ずつ成長するであろうと指摘する産業分 析家が何人かいる。日本やドイツ、その他の国々 との競争に直面して、いくつかのアメリカの多 国籍企業は、競争力をさらに強化するために、世 界的規模のアウトソーシング企業へ発注しつつ ある[松浦 97]32

6.2 人的資源活動のアウトソーシング と購買・調達・下請との違い

 人的資源活動のアウトソ−シングは、人的資源 管理部門が滅亡することを意味するかどうかと いう問題がある。この現象は、一つには、1990年 代のアメリカにおける企業の規模縮小への短期 的な対応にすぎないと理解すべきか、それとも 一つには、上席の人的資源管理重役は、重役チー ムからのアウトソーシングの圧力を受けている のか、あるいはそれに抵抗しているのであろう か。人的資源のアウトソーシングの役割に関連 する、このような疑問や他の疑問に対しては、上 席の人的資源管理重役が人的資源管理の機能の 役割をどのようにみているかによる。これらの 疑問に取組むために、アウトソーシングした経 験があって、25 の異なった組織に所属し、上席 の人的資源管理経営幹部を含む、26 人の経営幹 部と専門家に面談した結果が報告されている。

大企業の多くは産業のリーダーであり、アメリ カでもっとも賞賛される企業のうち『フォー チューン』誌にリストアップされた特定産業の うちで、7 社はトップ5位にある33

 人的資源管理重役は、アウトソーシングの過 程は、購買や調達、下請とは異なるとみている。

彼らの見解では、企業によって以前に遂行され た活動を遂行するために売主と企業が契約する 際にアウトソ−シングは発生する。対照的に、調 達は一般的には企業が以前に活動を遂行しな かったことを意味している。またアウトソーシ ングは一時的な次元を持っている。しかし、何人 かの重役は、下請は一時的でありアウトソーシ ングは永続的であるとみている。このように、下 請契約した活動は、いくつかの点で企業に戻さ れることが期待されるのに対して、アウトソー シングはそうではない。遂行されるアウトソー シングに言及すれば、原則的には外部者によっ て人的資源の仕事に関して社内で遂行される。

 あらゆるタイプのアウトソーシングされた サービス提供者の市場は、急速に成長しつつあ る。1996 年で、アメリカの企業はアウトソーシ

31[日経ビジネス 96]122 ページ。

32[松浦 97]33 〜 34 ページ。

33[Greer, Youngblood and Gray99] pp.85‐86.

(13)

ング事業活動に1000億ドル以上を支出している。

全世界に対するアウトソーシングの利用は、

1997 年6月から 12ヶ月で 35%も成長した。アウ トソーシングのサービスに対する全市場は、

2000年までには2000億ドルにまで増加すること が期待されている。ヒューイット・アソーシエイ ト(Hewitt Associates)による大規模雇用者に関 する 1996 年調査によると、人的資源管理機能の うち、いくつかをアウトソーシングしているの は回答者のうち 93%にも達した。同様にアメリ カ管理協会(American Management Association)

調査によると、人的資源活動のうちのいくつか をアウトソーシングしている企業は、1994 年の 60%から 1996 年には 77%にまで達した。1700 の 組織に関して、1 9 9 7 年の人的資源傾向調査

(Survey of Human Resource Trends)は、53%の組 織は将来さらにアウトソーシングすることを計 画していることを報告した。アウトソーシング のサービスや製品を配慮する際に、他の機能分 野に対抗させるために、内製か購買かという古 典的な決定に人的資源部門は直面しているわけ である。

 アウトソーシングの文献や人的資源管理の専 門家との面談から、5つの競争力を確認した。そ れは人的資源活動のうちのすべてか、いくつか をアウトソーシングするために、さらに企業を 追い立てつつある。すなわち、①規模縮小、②急 速な成長もしくは減退、③グローバル化、④競争 の激化、⑤リストラクチャリングである。過去10 年以上にわたって、これらの力は多くの企業の 戦略と構造を顕著に変更させてきた。この間、増 大するサービスに対してコストをいっそう低下 させ、将来の事業への挑戦に応じるために能力 を改善するということに、企業はその事業を再 集中することを試みてきた。

 人的資源管理重役にとっては、肝要なことは 同じである。人的資源管理機能の再集中によっ て、重役は事業戦略と人的資源実践との密接な 提携を達成することを希望している。その結果、

人的資源管理部長は、ライン管理者とのパート ナーに対して、高付加価値のサービスを低コス トで行うことを勧告した。内外の顧客に対して サービスの対応時間を改善するために、人的資 源管理重役はさらに圧力を感じている。教授で コンサルタントのデーヴ・ウルリッチ(D a v e Ulrich)の表現では、「することができる」と同様

に「交付可能である」ことを生み出すために人的 資源管理の世界は発展してきた。しばしば人的 資源管理の仕事や機能、完全な部門は、人的資源 管理活動が必要であり、誰が最善に提供するこ とができるかをみるために、再試験されてきた。

5 つの競争力の 1 つである規模縮小は、過去 10年 間人的資源管理の思考を支配してきたけれども、

この傾向が減少しつつあるといういくつかの徴 候が現れている。1990 年代初めには、1 日当り 3100 人のレイオフが通告され、各年次で 65 万人 以上の仕事が失われた。全体の産業での避けら れないリストラクチャリングは、事業合体の規 模縮小と、人的資源管理部門自体を規模縮小の 目標とした、考案者と実践者としての人的資源 管理部門を作り直してきた。人的資源に関する アウトソーシングの決定は、しばしば人的資源 サービスに対するコスト削減への圧倒的な需要 への対応である。

7.おわりに

 以上の通り、環境変化である①メガ・コンペチ ティブ化(大競争化)、②ネットワーク化(情報 網化)、③インタラクティブ化(双方向化)は、結 果的に企業や企業間のネットワーク化を進展さ せていく要因となる。

 企業におけるネットワークの発展は、まず、① 外注化(アウトソーシング・ネットワーク)とし て現れ、さらに②世界化(グローバル・ネット ワーク)へと自然に発展していく。さらには、企 業間のアライアンスや企業間連携は2企業間に とどまらずにグループ間の連携へと飛躍してい く。それが③協調化(コーポラティブ・ネット ワーク)である。最終的には、以上の3種類の ネットワーク化が統合されて、④仮想化(ヴァー チャル・ネットワーク)へと発展していくことに なる。

参考文献

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参照

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